説明

コーティングされた基体の修復

本発明は、コーティングされた基体の修復方法に関し、上記方法は、a)修復を必要とするコーティングされた基体の一部分に、液状の、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物を施与する工程、ここで、上記2成分コーティング組成物の硬化は、成分が混合すると開始しかつUVもしくは電子ビーム照射または熱エネルギーの供給を必要としない、b)施与されたコーティング組成物の上にフィルムを施与する工程、c)施与されたコーティング組成物を硬化させる工程、およびd)基体上の硬化されたコーティング組成物から上記フィルムを除去する工程を含む。本発明はまた、フィルムおよび液状の、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物を含む、上記方法を行うための部品のキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングされた基体を修復するための方法および上記方法を行うための部品のキットに関する。特に、本発明は、1以上の箇所に小さい損傷を示すコーティングされた基体の修復に関する。例えば、コーティングされた表面には、染み、小さいへこみ、またはかき傷があり得、あるいは局所的に基体がコーティングされていないでむき出しであり得る。本発明の文脈において、用語「コーティングされた基体」は、有機のまたは主として有機のバインダー物質、例えばラッカーまたは塗料、を含むコーティング組成物の1以上の層を基体上に施与することにより得られ得る基体を表す。
【背景技術】
【0002】
国際特許公開WO03/074198は、第一工程で、照射硬化可能なコーティングが基体および/または照射透過性フィルム上に施与され、次いで上記基体および上記フィルムが、上記コーティングがそれらの間に挟まれるように一緒にプレスされ、その後、コーティングが、フィルムを通る照射によって硬化され、その後の工程で、コーティングされた基体からフィルムが除去されるところの、基体をコーティングするための方法を記載している。改善された機械的特性を有する耐久性のある硬化されたコーティングが得られる。
【0003】
国際特許公開WO03/092912は、コーティングされた基体表面を熱硬化可能なコーティング組成物によって修復する方法に関する。上記方法は特に、小さい汚傷部分の修復のために、例えば塗装工場での車両修復コーティングの状況において、適する。上記方法は、熱硬化可能なコーティング組成物の硬化されていないまたは少なくとも部分的に硬化されたコーティング層で片側がコーティングされた裏張りフィルムを提供する工程、上記フィルムのコーティングされた側を、修復されるべき汚傷部分に施与する工程、上記施与されたコーティングに熱エネルギーを供給する工程および裏張りフィルムを除去する工程を含む。上記方法で使用されるべきコーティング組成物のためのバインダーを選択するときには、熱エネルギー供給の前の貯蔵中に安定である熱架橋可能なバインダーのみを使用するよう注意しなければならない。
【0004】
目に見えない修復を達成するために、プロの車体修理工場では通常、パネル全体または一部が、あるいは車両全体すらが、研磨されそして再コーティングされる。プロの車体修理工場では、コーティングが一般に噴霧によって施与される。修復コーティングの噴霧施与に関して、修復の必要がない車体の部分、例えば隣接する車体パネル、窓、ミラーまたはラバー部分、はこれらの部分に噴霧滴が沈着するのを防ぐために、一時的な保護層で被覆しておかなければならない。噴霧施与は、噴霧室で行われなければならず、また、身体の保護対策を必要とする。この方法の欠点は、研磨、被覆(taping-off)、および再コーティングが非常に時間を要することである。さらに、上記方法は、対応して、コーティングの小さい損傷を修復するために多量のコーティング物質を必要とする。
【0005】
外側または内側の車体部分上の小さいかき傷はしばしば、未熟な人、例えば自動車の所有者、によっても修復される。この方法は一般に、「DIY(do-it-yourself)」法と呼ばれる。DIY法の欠点は、そのために一般に使用される水系または溶媒系のコーティング組成物が、最初の工業的に施与されたコーティングと比較して劣った特性を有するコーティングをもたらすことである。
【0006】
国際特許公開WO03/074198およびWO03/092912から公知の方法の欠点は、それらが、コーティングを硬化させるために紫外線(UV)または電子ビーム照射あるいは熱エネルギーの供給を必要とすることである。UVまたは電子ビーム照射の適する源は、しばしばかなり高価であり、また照射されるべき特定の箇所へ照射を案内するように運ぶことが困難であり得る。照射硬化の実際の工業的プラクティスでは、照射されるべきものがそこを通って案内されるところの固定照射ゾーンがしばしば使用される。さらに、障害を防ぐべく、人が有害なUVまたは電子ビーム照射にさらされるのを防ぐために保護対策が取られなければならない。同様に、熱エネルギー、例えば赤外線照射源、の供給のための装置は、小さい企業ではいつも利用できるとは限らず、DIY環境ではなおさらそうである。
【0007】
上記点を鑑みると、公知方法は、小さい企業にはあまり適さず、DIY用途ではなおさらである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記欠点によって妨害されない方法を提供することを目的とする。特に、良好な機械的、化学的および光学的特性を有する耐久性のある硬化コーティングをもたらし、かつ周囲の部分における最初のコーティング層と同様の良好なコーティング特性を有する、コーティングされた基体の修復法であって、小さい企業および特にDIY用途のために、ならびにプロの環境のために適するべき方法のための要求がある。上記方法は、コーティングされた基体のほとんど目に見えない修復をもたらし、コーティング物質をあまり使用せず、そしてその結果、プロの車体工場で通常適用される方法よりも少ない汚染をもたらすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この要求を満たすために、本発明は、コーティングされた基体の修復方法であって、
a)コーティングされた基体の修復される必要がある部分に、液状の、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物を施与する工程、ここで、2成分コーティング組成物の硬化は、成分が混合すると開始しかつUVもしくは電子ビーム照射または熱エネルギーの供給を必要としない、
b)施与されたコーティング組成物の上にフィルムを施与する工程、
c)施与されたコーティング組成物を硬化させる工程、および
d)基体上の硬化されたコーティング組成物から上記フィルムを除去する工程
を含む方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従う方法は、小さい企業および特にDIY用途における適用のために非常に適するが、プロの環境でも等しく良好に適用され得る。液状の、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物の使用故に、コーティング組成物の硬化のためのUVもしくは電子ビーム照射または熱エネルギーの供給を必要としない。
【0011】
さらに、上記方法は、車体のコーティングされた基体またはその一部を修復するために、プロの車体工場において通常適用される方法よりも少ないコーティング物質を必要とし、そしてその結果、より少ない汚染をもたらす。さらに、コーティング層の小さい損傷、例えばへこみ、かき傷または剥き出しの部分、を、より短い処理時間で、より少ないエネルギーコストで修復することができ、さらに、損傷を受けた部分の周囲の部分に損傷を与えない。コーティング組成物を噴霧によって施与する必要なしに平らで光沢のある表面を得ることができる。従って、噴霧滴の沈着に対する保護の必要がないので、損傷を受けた部分に隣接するコーティングの部分をテープで覆う必要がない。
【0012】
上記方法の特定の利点は、硬化の間、修復コーティングがフィルムによって、そうでなければ修復コーティングの品質および外観に影響を及ぼし得るところのほこり、水分および機械的損傷から保護されることである。従って、硬化が完了した後、例えば硬化の1日ないし数日後にフィルムを取り除くことができるので、比較的遅い乾燥速度および従って長いポットライフを有する、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物を使用することが可能である。従って、DIY環境での取り扱いが困難であるところの、短いポットライフを有する、速く硬化する2成分コーティング組成物を使用する必要がない。
【0013】
本発明に従う方法は、審美的な修復を行うだけでなく、コーティング層を実際に回復するために使用することができる。さらなる利点は、コーティング層に向かい合うフィルムの面上の表面形状が、修復コーティングに与えられ得ることにある。これは、原則として任意の装飾的効果を伴って、コーティングされた基体のほとんど目に見えない修復を可能にする。例えば、高光沢のコーティングされた基体を高光沢フィルムを使用して修復することができる。低光沢の基体は、低光沢フィルムを使用して修復され得る。これは、コーティング組成物にマット剤を添加する必要がないという利点を有する。また、織り目のある(textured)コーティングされた基体、例えば皮革様構造表面を有する基体を修復することも可能である。また、本発明方法の工程d)の後に最終の磨き工程を行うことも可能である。そのような磨き工程は、修復された部分とその周囲コーティングとの間の任意の残存する目に見える差を最少にすることができる。
【0014】
さらに、本発明方法によれば、周囲の部分における最初のコーティング層と同一の良好なコーティング特性を有する修復された部分を得ることができる。例えば、基体は、最初の、恐らく工業的に施与された、コーティング層の場合と実質的に同じ方法で保護され得、そして同様の化学的耐性および摩耗耐性が得られ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明方法の1実施態様では、工程a)において、修復される必要のある損傷部分に、極く少量過剰のコーティング組成物が施与される。次いで、フィルム上に圧力をかけることによって、損傷部分上のコーティング物質の余分な量が、損傷部分の周りの小さい部分にわたって広げられる。これは、(トップ)コートの最初の表面と修復された部分との間の滑らかな移行をもたらす。
【0016】
本発明に従う方法は、任意のコーティングされた基体、特にコーティングされた金属およびプラスチックの基体の修復に適する。金属は、コーティングが施与され得る任意の金属または合金であり得る。特定の例として、鉄、アルミニウムおよびマグネシウムが挙げられ得る。鉄は、鋼、ステンレス鋼、ならびに亜鉛めっきされたおよび他の前処理された鋼を包含すると理解されるべきである。さらに、車両のコーティングされた構成要素として使用される金属および合金が特に挙げられ得る。
【0017】
プラスチックは、コーティングが施与され得る任意の主として有機のポリマー物質であり得る。特定の例として、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ならびにそれらの混合物およびブレンドが挙げられ得る。また、コポリマー、例えばポリアクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元ポリマー、およびスチレン−ブタジエンコポリマーも包含される。有機ポリマー物質は、有機または無機のフィラーおよび/または強化手段、例えば繊維、をも含み得る。また、ラミネートも包含される。さらに、車両のコーティングされた構成要素として使用される有機ポリマー物質が特に挙げられ得る。必要ならば、本発明に従う方法を行う前に、周知の標準的洗浄操作によって、コーティングされた基体の損傷部分から、任意の汚れや固定していない破片が除去され得る。
【0018】
上記方法は、自動車または輸送車両あるいはそれらの部品のコーティング層における小さい損傷、例えばかき傷およびへこみ、の修復に非常に適する。上記方法はまた、車両上でしばしば遭遇する多層コーティングの修復に非常に適する。これらの多層コーティングはしばしば、色彩付与性または効果付与性ベースコート上にクリアトップコートを含む。本発明に従う方法は、色彩付与性の発色されたトップコートを有する基体を修復するためにも同様に適する。
【0019】
修復を必要とする基体が多層コーティングでコーティングされているならば、これらの層を、本発明の方法を用いて連続して修復することもできる。例えば、ベースコートクリアコート系が修復されるべきならば、最初に色彩および/または効果付与性ベースコート組成物を本発明方法を使用して施与し、次いで、クリアコートを再び本発明方法を使用して施与することができる。あるいは、最初に、色彩および/または効果付与性の慣用のベースコート層を標準的方法、例えば刷毛塗り、によって損傷部分に施与し、次いでクリアコート層の施与を本発明方法に従って行うことにより、ベースコートクリアコート系を修復することもできる。
【0020】
本発明はまた、本発明に従う方法を行うための部品のキットに関する。上記キットは、
a)フィルム、および
b)液状の、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物、ここで、上記2成分コーティング組成物の硬化は、成分を混合すると開始しかつUVもしくは電子ビーム照射または熱エネルギーの供給を必要としない、
を含む。
【0021】
上記部品のキットはまた、コーティングされた基体を修復する間に有用であり得る他の構成要素を含み得る。その例は、洗浄具、例えば、所望により洗浄液で含浸され得る洗浄クロス、または磨き具、例えば磨きペーストまたは磨き液および生綿または磨きクロスである。
【0022】
環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物
プロの車両再仕上げ操作においてしばしば使用される、当業者に一般的に公知の、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物が、本発明に従う方法での使用に適する。2成分コーティング組成物は、別々の容易に貯蔵されそして輸送される、少なくとも2の成分、例えばバインダーおよび硬化剤成分、を一緒にしそして混合することによって使用前に調製されるコーティング組成物を意味し、上記2成分コーティング組成物の硬化は、成分が混合すると開始しかつUVもしくは電子ビーム照射または熱エネルギーの供給を必要としない。2成分コーティング組成物は、第3または第4の成分、例えば希釈剤および/または活性剤、が使用前に添加されるところの組成物を包含すると理解されるべきである。
【0023】
本発明に従う方法の1実施態様では、コーティング組成物の成分が、工程a)の前、すなわち組成物を基体に施与する前に混合される。上記方法の別の実施態様では、コーティング組成物の少なくとも1の成分が工程a)において基体に施与され、コーティング組成物の少なくとも1の他の成分が工程a1)において上記フィルムの一方の表面に施与される。次いで、フィルムのコーティングされた表面が、工程a)およびa1)で施与された成分が接触しそして少なくとも部分的に混合されるように、工程a)の施与された組成物の上に施与される。この実施態様では、施与の前に成分を混合する必要がないので、混合された2成分組成物の限られたポットライフに関する不都合が回避される。
【0024】
2成分コーティング組成物は、上記少なくとも2の成分が混合すると環境温度で開始する化学的架橋反応によって硬化する。本発明に従う方法の目的のために、水系および溶媒系の2成分コーティング組成物が使用され得る。
【0025】
噴霧施与の方法と違って、本発明に従う方法では、コーティング組成物を細かい粒子で噴霧する必要がない。平らな光沢表面の生成は、施与されたコーティング組成物を均一にすることのみによるのではなく、上記方法の工程b)におけるフィルムの施与によって助けられおよび/または引き起こされる。従って、本発明に従う方法において使用されるコーティング組成物の粘度は、特に限定されない。コーティング組成物の施与温度での粘度は例えば、5mPa・s〜15,000mPa・s、もしくは10mPa・s〜10,000mPa・sの範囲であり得る。慣用の方法、すなわち噴霧または刷毛塗り、によって施与される場合よりも高い粘度を有するコーティング組成物が本発明に従う方法での使用に適する。そのようなより高い粘度のコーティング組成物は、揮発性有機溶媒または水の形態の希釈剤をあまり必要としない。より高い粘度のコーティング組成物のさらなる利点は、垂直表面に施与したときの垂れの傾向が低下することである。従って、低い揮発性有機含量、すなわち450g/リットル未満、または420g/リットル未満の揮発性有機含量を有するコーティング組成物が非常に適する。コーティング組成物は、40重量%未満の揮発性有機化合物、または30重量%未満の、さらには5重量%未満の揮発性有機化合物を含み得る。組成物はまた、水を、例えばコーティング組成物の総重量に基づいて計算して40重量%までの水、または5重量%未満の水を含み得る。
【0026】
コーティング組成物が揮発性有機化合物および/または水を含むならば、これらの少なくとも主要な部分が一般に、組成物の施与の後で、施与されたコーティング組成物の上にフィルムを施与する前に蒸発させられる。その結果、本発明に従う方法では、施与されたコーティング組成物はまた、いわゆる100%固形の硬化可能なコーティング組成物、すなわち3重量%未満の揮発性有機化合物および2重量%未満の水を含む組成物、であり得る。100%固形系は、施与とフィルム配置との間に蒸発段階をほとんど必要としない。
【0027】
慣用の噴霧施与される組成物よりも高い粘度を有するコーティング組成物を使用することができることは、施与されたコーティングの垂れの傾向に関する好ましい効果をも有する。すなわち、より厚い層厚みを有するコーティング層が、垂れなしに垂直表面に施与され得る。本発明方法の工程b)で施与されるフィルムが垂れの防止をさらに助ける。その結果、修復されるべきコーティングされた基体における比較的深いくぼみ、へこみまたはかき傷が、別個のフィラーまたはパテ物質を施与する必要なく、単一プロセスで埋められそしてカバーされ得る。
【0028】
修復されるべきコーティングされた基体に応じて、コーティング組成物はクリアコート組成物または1以上の顔料を含むコーティング組成物であり得る。コーティング組成物が顔料を含むならば、顔料は、修復されるべき基体の色に合うように適切に選択される。
【0029】
本発明に従う方法で使用されるコーティング組成物は、1以上のフィラーまたは添加剤をも含み得る。フィラーは、当業者に公知の任意のフィラー、例えば硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、シリカまたはシリケート(例えばタルク、長石およびカオリン)であり得る。添加剤、例えば酸化アルミニウム、炭化ケイ素、例えばカーボランダム、セラミック粒子、ガラス粒子、安定剤、酸化防止剤、均染剤、沈降防止剤、帯電防止剤、マット剤、レオロジー調節剤、表面活性剤、アミン相乗剤、ワックス、または付着促進剤、も添加され得る。一般に、本発明に従う方法において使用されるコーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて計算して0〜50重量%のフィラーおよび/または添加剤を含む。
【0030】
環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物は、成分の少なくとも1にポリイソシアネート架橋剤を含み得る。有効な数のイソシアネート基を有する適する化合物は、ポリウレタン化学から公知の任意のイソシアネートを包含する。適するイソシアネートの例は、1,6−ジイソシアナトヘキサンのイソシアヌレート三量体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート三量体、1,6−ジイソシアナトヘキサンのウレトジオン二量体、1,6−ジイソシアナトヘキサンのビウレット、1,6−ジイソシアナトヘキサンのアロファネートおよびそれらの混合物である。イソシアネート基はまた、樹脂に共有的に付着され得る。2成分コーティング組成物の1成分がポリイソシアネート架橋剤を含むとき、少なくとも1の他の成分はイソシアネート反応性基を含む樹脂または化合物を含む。そのようなイソシアネート反応性基は例えば、ヒドロキシル基、アミン基、カルボン酸基およびチオール基を含む。チオール基を有する適する樹脂および化合物の例は、国際特許公開WO01/92362に記載されている。イソシアネート反応性基を含む適する樹脂は、ヒドロキシル官能性ポリ付加(polyaddition)ポリマー、例えばポリ(メタ)アクリレート樹脂、ヒドロキシル官能性ポリエステルおよびヒドロキシル官能性ポリウレタン、例えば米国特許第5155201号および米国特許第6096835号に記載されたもの、を包含する。イソシアネート反応性基を有する他の適する化合物は、潜在的(latent)ヒドロキシル化合物、例えば2環式オルトエステル官能性化合物であり、例えば国際特許公開WO97/31073に記載されている。
【0031】
さらなる実施態様では、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物が、成分の少なくとも1にエポキシド基を含み得る。有効な数のエポキシド基を有する適する化合物は、コーティング化学から公知の任意のエポキシド、例えばグリシジルエーテル、グリシジルエステル、およびエポキシ化された不飽和炭素−炭素結合含有化合物、を包含する。例としては、(シクロ)脂肪族または芳香族ヒドロキシル化合物、例えばエチレングリコール、グリセロール、シクロヘキサンジオール、および単核または多核2官能性または3官能性フェノールおよびビスフェノール、例えばビスフェノールAおよびビスフェノールF、のジグリシジルまたはポリグリシジルエーテル;エポキシ化されたオイルおよびエポキシ化された脂肪族および/または脂環式アルケン、例えばジペンテンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、およびビニルシクロヘキセンジオキシドを包含する。エポキシド基はまた、少なくとも1の樹脂に共有的に付着され得る。
【0032】
2成分コーティング組成物の1成分がエポキシド基を含むとき、少なくとも1の他の成分は、エポキシド反応性基を含む樹脂または化合物を含む。そのようなエポキシド反応性基は、例えば、チオール基、ホスホン酸基、カルボン酸基、ヒドロキシル基またはアミン基を含む。エポキシド反応性基を含む適する樹脂は、アミン官能性樹脂、チオール官能性樹脂、カルボン酸官能性樹脂、ヒドロキシル官能性樹脂、およびホスホン酸官能性樹脂を包含する。
【0033】
上記アミン基はまた、Jeffamineとして商業的に入手可能なポリオキシアルキレンアミン型であり得る。さらなる例は、ポリエポキシドと少なくとも2の活性水素原子を有するアミノ化合物とをエポキシド1当量につき高々0.5当量の活性水素原子の比で反応させ、次いで残留エポキシド基をアンモニアで転化することによって得られ得るポリアミン、およびブロックされたアミン樹脂、例えばポリケチミンまたはポリアルジミン、である。
【0034】
さらなる実施態様では、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物が、成分の少なくとも1にミハエル(Michael)受容体基を含み得る。有効な数のミハエル受容体基を有する適する化合物は、国際公開WO00/64959に記載されているように、2以上のオレフィン性不飽和基を含み、オレフィン性不飽和基が不飽和結合の炭素原子に結合した少なくとも1の電子引き抜き官能基を含む、任意の化合物を包含する。上記文献は、引用することにより本明細書に組み入れられる。ミハエル受容体基はまた、少なくとも1の樹脂に共有的に付着され得る。この種の適する樹脂は、(メタ)アクリロイル官能性ポリ付加ポリマー、ポリウレタンおよびポリエステルを包含する。そのような樹脂の例は、米国特許第4990577号およびそこに引用されている文献に記載されている。
【0035】
2成分コーティング組成物の1成分がミハエル受容体基を含むとき、少なくとも1の他の成分は、ミハエル供与体基を含む樹脂または化合物を含む。そのようなミハエル供与体基は、例えば、2,4−ペンタジオン基、アセトアセテート基、マロネート基、チオール基およびアミン基を含む。ミハエル供与体基を含む適する樹脂は、欧州特許公開EP0161697Aおよび米国特許第4772680号により詳細に記載されている。
【0036】
さらなる実施態様では、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物が、成分の少なくとも1に電子リッチの炭素−炭素二重結合含有基を含み得る。有効な数の電子リッチの炭素−炭素二重結合含有基を有する適する化合物は、エーテル、エステルおよびアルキル基で置換された炭素−炭素二重結合を含む任意の化合物を包含する。このような種の炭素−炭素二重結合を有する基の例は、アリル、アリルエーテル、ビニルエーテル、ビニルエステルおよび不飽和脂肪酸基である。電子リッチの炭素−炭素二重結合含有基はまた、少なくとも1の樹脂に共有的に付着され得る。この種の適する樹脂は、アリルエーテル基、不飽和脂肪酸官能基またはビニルエーテル基を有するポリエステルを包含する。そのような樹脂の例は、国際公開WO99/47617に記載されている。
【0037】
2成分コーティング組成物の1成分が電子リッチの炭素−炭素二重結合含有基を含むとき、少なくとも1の他の成分は、電子リッチの炭素−炭素二重結合と反応性の基を含む樹脂または化合物を含む。そのような、電子リッチの炭素−炭素二重結合と反応性の基は、例えば、米国特許第5446073号および同第6271339号に記載されているような、電荷移動重合機構によって硬化を受け得る電子不足の炭素−炭素二重結合を含む。電子リッチの炭素−炭素二重結合が、適するジエンであるならば、それらはまた、ディールス−アルダー付加反応によって硬化され得、例えば欧州特許公開EP0357110Aに記載されている。本発明の特定の実施態様では、上記で定義された電子リッチの炭素−炭素二重結合含有基がまた、カチオン性重合反応によって硬化され得る。
【0038】
さらなる実施態様では、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物が、成分の少なくとも1にアセタール基を含み得る。有効な数のアセタール基を有する適する化合物は、下記式によって表されるアミノアセタールに基づくものを包含する。
【0039】
【化1】

ここで、nは1〜10の整数であり、RおよびR’は同じでも異なっていてもよく、1〜4の炭素原子を有するアルキル基を表す。そのような化合物および樹脂は公知である。米国特許第4663410号には、アミノアセタールからの重合可能なアミドアセタールの調製および使用が記載されている。また、アミノアセタールと、重合可能なモノイソシアネート、例えばm−イソプロペニルジメチルベンジルイソシアネートとの、またはポリイソシアネートとの直接反応は、アセタール官能性化合物および樹脂への適するルートであり、例えば欧州特許公開EP1050550Aに記載されている。式IIのアミノアセタールによるエステルのアミド化によって得られ得るアセタール官能性化合物および樹脂も使用され得る。この種の適するアセタール官能性バインダーの調製は、例えば、米国特許第5360876号に記載されている。
【0040】
2成分コーティング組成物の1成分がアセタール基を含むとき、少なくとも1の他の成分は、アセタール反応性基を含む樹脂または化合物を含む。そのようなアセタール反応性基は、例えば、チオール基、ヒドロキシル基、カルバメート基、およびアセタール基を含む。
【0041】
さらなる実施態様では、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物が、成分の少なくとも1にシクロカーボネート基を含み得る。有効な数のシクロカーボネート基を有する化合物および樹脂は、上記したように、エポキシド官能性前駆体から便利に調製され得る。エポキシドと二酸化炭素との反応は環式カーボネートをもたらし、そして周知である。
【0042】
2成分コーティング組成物の1成分がシクロカーボネート基を含むとき、少なくとも1の他の成分は、シクロカーボネート反応性基を含む樹脂または化合物を含む。適するシクロカーボネート反応性基は、エポキシド反応性基としてすでに記載されたのと同じ基を包含する。
【0043】
さらなる実施態様では、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物が、成分の少なくとも1にカルボジイミド基を含み得る。カルボジイミド基を含む適する化合物および樹脂は商業的に入手可能であり、例えばダウケミカル社からのXL−29SEが挙げられる。2成分コーティング組成物の1成分がカルボジイミド基を含むとき、少なくとも1の他の成分は、カルボジイミド反応性基を含む樹脂または化合物を含む。そのようなカルボジイミド反応性基の例は、カルボン酸およびカルボキシレート基である。
【0044】
2成分コーティング組成物はまた、アルデヒド基およびアルデヒド反応性基を含み得、例えば国際公開WO02/14399に記載されている。
【0045】
さらに別の実施態様では、2成分コーティング組成物がアセトアセテート基および、所望によりブロックされた、第1級または第2級アミン基を含み、例えば米国特許第4772680号に記載されている。
【0046】
環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物が、硬化のために水分を必要とするならば、硬化のための十分な水分が利用できることを確実にするための手段が取られなければならない。これは、例えば、コーティング組成物の成分の1つに必要量の水を添加することにより達成され得る。あるいは、施与されたコーティング組成物に十分な量の大気水分が入るまで、本発明方法の工程b)でのフィルムの施与が延期され得る。また、工程b)において、水または水蒸気透過性フィルムを施与することもできる。水硬化可能な2成分コーティング組成物の例は、アルコキシシラン基を含む組成物およびアルジミンまたはケチミン架橋剤を含む組成物である。有効な数のアルコキシシラン基ならびにアルコキシシラン反応性基を有する化合物および樹脂は周知である。例は国際公開WO98/23692に記載されている。水硬化可能な2成分コーティング組成物のさらなる例は、潜在的ヒドロキシル化合物およびヒドロキシル反応性架橋剤を含む組成物であり、例えば国際公開WO97/31073に記載されている。
【0047】
上記したように、2成分コーティング組成物は、少なくとも2の成分が混合すると環境温度で開始する化学的架橋反応によって硬化する。
【0048】
工程c)におけるコーティング組成物の硬化が所望により加熱によって促進されることも本発明の範囲内である。加熱の程度は、もちろん、基体またはフィルムに影響を及ぼさない温度に制限されなければならない。これは、低融点を有するポリマーからなるプラスチックの基体またはフィルムの場合には特に重要である。当業者は、個々の場合に適用され得る最大温度をよく知っているであろう。加熱は、例えば、赤外線または近赤外線の照射によって行われ得る。あるいは、本発明の方法がDIY環境において行われるときには特に、加熱が熱風送風機、例えば家庭のヘアドライヤー、によって行われ得る。
【0049】
工程c)におけるコーティング組成物の硬化は、フィルムを通る化学線の照射によって促進されることも可能である。この場合には、化学線照射透過性のフィルムが選択される。本発明の骨格内において、化学線照射は、化学反応を開始しまたは促進することができる電磁照射である。化学線照射の例は、UV照射、電子ビーム照射および日光である。
【0050】
塩基および塩基によって触媒される重合可能なまたは硬化可能な物質を含む、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物が、本発明に従う方法において使用され得る。塩基がフォトラテント(photolatent)塩基として存在するならば、硬化が、上記したように、化学線の照射によって促進され得る。適するフォトラテント塩基の例は、欧州特許公開EP0882072A、国際公開WO94/28075および国際公開WO01/92362に記載されている。
【0051】
フォトラテント塩基は、アルキルエーテルおよび/またはアルキルエスエル基によって所望により置換された4−(オルトニトロフェニル)ジヒドロピリジン、第4級有機ホウ素光開始剤、およびα−アミノアセトフェノンから選択され得る。α−アミノアセトフェノンの例は、下記式(I)に従う化合物である。
【化2】

【0052】
このα−アミノアセトフェノンの利点は、それが、塩基によって触媒される2成分組成物の遅い硬化を招くのに十分強い塩基であるということである。このα−アミノアセトフェノンを含む、塩基によって触媒される2成分組成物に化学線を照射すると、相当により強い塩基が放出され、硬化が促進される。更なる利点は、このα−アミノアセトフェノンの活性化が、日光による照射によって行われ得ることである。すなわち、このα−アミノアセトフェノンを含む、塩基によって触媒される2成分組成物が本発明に従う方法において使用されるならば、施与されたコーティング組成物の硬化が、日光への暴露によって促進され得る。例えば自動車上のかき傷または小さいへこみが修復される場合、自動車が使用中でありそして修復される箇所が日光に暴露される間に、施与されたコーティング組成物の硬化が促進される。
【0053】
ミハエル供与体、例えば多官能性アセトアセテートまたはマロネート、および多官能性ミハエル受容体、例えばアクリロイル官能性化合物、を含む混合物が、塩基によって触媒される硬化可能な物質として適する。そのような混合物は、上記した欧州特許公開EP0882072Aおよび国際公開WO94/28075にさらに詳細に記載されている。
【0054】
特定の実施態様では、液体の、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物が少なくとも1のポリイソシアネート、少なくとも1のチオール基を含む少なくとも1の化合物、およびα−アミノアセトフェノンフォトラテント塩基を含む。そのようなコーティング組成物は、国際公開WO01/92362に記載されている。
【0055】
コーティング組成物の他の成分
1実施態様では、本発明に従う方法において使用される硬化可能なコーティング組成物が、クリアコーティング組成物、すなわち、色彩および/または効果付与性顔料を本質的に含まないコーティング組成物である。そのようなクリアコーティング組成物は一般に、クリアコート、例えば多層コーティングにおける上層であるクリアコート、を修復するために使用される。色彩または効果付与性コーティングを有する基体の修復の場合には、本発明に従う方法において使用される硬化可能なコーティング組成物が、1以上の顔料をも含み得る。原則として、当業者に公知の全ての顔料が使用され得る。この場合には、着色は一般に、損傷した最初のコーティングの色彩および/または作用に合うように適合される。
【0056】
他のポリマーもコーティング組成物に組み入れられ得る。これらのポリマーは、コーティング組成物の粘度、粘着性、付着性または膜形成特性を調節するために、および/または硬化されたコーティングの一般的な膜特性、例えば耐汚染性、可撓性または付着性、を調節するために使用され得る。例は、セルロースアセテートブチレート(種々の等級、Eastman製)、Laropal物質(BASF製)、Paraloid物質(Rohm&Haas製)、およびUcar物質(Union Carbide製)である。一般に、本発明に従う方法において使用されるコーティング組成物は、0〜20重量%のそのようなポリマーを含む。
【0057】
施与されたコーティング組成物の上に施与されるフィルム
一般に、コーティングからの良好な剥離性を示すフィルムが選択される。良好なフィルム剥離があると、フィルムは、修復コーティングが本質的に損傷を受けないままで、コーティングされた基体から取り除かれ得る。本発明に従う方法において使用されるコーティング組成物は、未処理のフィルムを包含する広範囲のフィルムの種類との組合せに適する。フィルムの良好な剥離性を確実にするために、フィルムは処理され得る。使用されるフィルム処理の種類は、本発明に従う修復方法において使用されるフィルムの種類およびコーティングの種類に適合されるべきである。フィルムは例えば、剥離コーティングでコーティングされ得る。そのような剥離コーティングは、シリコーンまたはフルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン、を剥離剤として含み得る。例えば米国特許第5037668号は、アクリレート型の剥離コーティングを含む、シリコーンを含まないフルオロポリマーを記載している。
【0058】
フィルムは、例えばアルミニウムホイルまたはアルミ箔を貼り合わせた層、例えばアルミ箔を貼り合わせたポリエステルフィルム、プラスチックまたは紙を含み得る。フィルムは、剛性または可撓性であり得、また、任意の所望の厚さであり得る。一般に、本発明方法において使用されるフィルムは、基体の外形に従うように十分可撓性である。しかし、スポット(spot)修復の場合には、上記スポットはしばしば、それが平面であるかのように処理されるのに十分小さい。
【0059】
容易に理解されるように、フィルムは、施与されたコーティング組成物と接触したときにコーティング組成物またはその成分によって溶解されまたは膨潤されるべきではない。そうでなければ、コーティング組成物のポリマーマトリックスおよび膨潤されたフィルムが小さい距離にわたってブレンドし、フィルムの除去の後に、施与されたコーティングの表面欠陥をもたらし得る。フィルムの膨潤はまた、フィルムの寸法安定性を弱め得るので望ましくない。
【0060】
コーティングの硬化がUV照射および/または可視光、例えば日光、によって促進されまたは助けられるべきならば、フィルムは、照射に対して十分透過性でなければならない。通常のUV照射による硬化は、工業では有用であるが、上記したように、DIY環境ではあまり実際的でない。その場合には、フィルムは低エネルギーUV照射に対して透過性でなければならない。従って、(低エネルギー)UV照射による硬化の場合には、フィルムは、石英ガラスまたはガラス板またはポリマー物質、例えばポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、アクリルポリマー、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレートまたはポリカーボネート、を含み得る。
【0061】
本発明方法の1実施態様では、施与されたコーティング組成物の上に施与されるフィルムが水溶性である。水溶性フィルムは、水溶性有機ポリマーから作られ得る。そのようなポリマーは周知であり、適する例として、ポリビニルアルコール、天然のまたは改変された澱粉、ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレンオキシドまたはそれによって改変されたポリマー、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸または他の塩形成性モノマーのポリマーおよびコポリマー、が挙げられ得る。水溶性フィルムが使用されるとき、硬化されたコーティング組成物からのフィルムの除去は、フィルムを水でまたは水性溶液で洗い流すことにより行われ得る。修復されるべき基体が車両であるならば、フィルムは例えば、水溶性フィルムが洗い流されるところの、例えば洗車設備での、次の洗浄操作まで、修復された基体上に残され得る。
【0062】
施与の器具および方法
コーティング組成物を損傷部分に施与するために、当業者に公知の器具、例えば刷毛、シリンジ、ロッドまたはスパウト、が使用され得る。施与の前の、2成分コーティング組成物の要求される混合比での混合を促進するために、少なくとも2の成分が、成分を必要量で含む別々のチャンバーを有する容器中に提供され得る。適する2成分カートリッジおよびディスペンサーは、使い捨てのスタティックミキサーと結合した2成分シリンジの形態で、例えばTAHインダストリーから市販されている。
【0063】
そのような2成分カートリッジは、末端使用者が、別個のシリンジ、チューブまたはジャーから物質を量り取る必要を除去する。成分のクロス汚染が回避され、廃棄物質の量が最少にされ、そして未使用物質の貯蔵寿命が改善される。スタティックミキサーは、施与の後に処分され得、一方、2成分の残りは、別個のカートリッジ中で未反応のままであり、新しいスタティックミキサーによる使用のために備えられる。従って、1実施態様では、2成分コーティング組成物が、2成分カートリッジで提供され、特に、本発明の方法を行うために適するフィルムと共に部品のキットの形態で提供される。
【0064】
フィルムの下のコーティングを滑らかにするために、当業者に公知の器具、例えばナイフ、親指、ロッド、またはローラーコーターが使用され得る。硬化を促進するために使用され得る化学線照射源は、電子ビームおよびUVのための通例のものである。例えば、高圧、中圧、および低圧の水銀ランプなどのUV源が使用され得る。さらなる例は、蛍光灯、重水素ハロゲン光源、レーザー光源、水銀−キセノンランプ、UV光放出ダイオード(LED)および金属ハライドランプである。また、例えば、ガリウムおよび他のドープされたランプも、特に、着色されたコーティングのために、使用され得る。化学線照射の短パルスによってコーティング組成物の硬化を促進することもできる。
【0065】
本発明の1実施態様では、特に、クリアコートの硬化を促進するときには、施与されたコーティング組成物が低エネルギーUV源を使用して照射される。すなわち、いわゆる自然光による硬化である。低エネルギーUV源は、慣用のUV源よりも長波長の照射を発する。低エネルギーUV源は、UV−C照射をほとんど発しない。それは、主にUV−AおよびUV−BとUV−Aとの境界の波長の照射を発する。200nm≦λ≦500nmの波長の照射を発する照射源を使用することの利点は、比較的多量のUV−Cおよび/またはUV−B照射を発する慣用のUV源よりも安全に使用できることである。これは、DIY環境において特に重要である。他の利点は、自然光硬化ランプが慣用のUVランプよりも安価であることである。
【0066】
市販の自然光硬化ランプは、例えば、ソーラリウム型ランプおよび特定の蛍光灯、例えばTL03、TL05またはTL09ランプ(Philips製)およびBLB UVランプ(CLEDesign製)である。短光パルスを発する市販の自然光硬化ランプの例として、キセノンの、水銀を含まないUV/VISフラッシュランプが挙げられ得る。あるいは、硬化の促進は、照射の人工源を使用する代わりに自然の日光による照射によっても達成され得る。
【0067】
本発明を下記実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0068】
使用された材料:
Autosurfacer 940 HS:Akzo Nobel Car Refinishes製のプライマー
Autobase Plus:Akzo Nobel Car Refinishes製の溶媒系ベースコート
Autoclear LV Ultra:Akzo Nobel Car Refinishes製の、ポリエステル樹脂およびポリイソシアネート架橋剤に基づく2成分溶媒系クリアコート
Melinex 377:DuPont Teijin Films製のポリエステルフィルム
Tolonate HDT LV:Rhodia製のポリイソシアネート
Byk306:Byk-Chemie製の表面活性剤
【0069】
前処理された鋼パネルに多層コーティングを施与することによって、標準の、損傷を受けたコーティングされた基体が作製された。Autosurfacer 940 HS、Autobase PlusおよびAutoclear LV Ultraの連続層が噴霧施与され、これらの製品の技術的文書に指示されているように硬化された。次いで、クリアコート層が、ナイフでの引掻きにより損傷を与えられた。
【0070】
実施例1
Autoclear LV Ultraのバインダーおよび硬化剤成分を、その製品の技術的文書に指示されているように3:1の体積比で混合することにより、液状の2成分クリアコート組成物が調製された。しかし、噴霧可能なクリアコート組成物を調製するために指示された追加のシンナー成分は、クリアコート組成物に添加されなかった。シリンジが、液状のクリアコート組成物で満たされ、組成物が、上記した標準の、損傷を受けたコーティングされた基体の損傷部分、すなわちかき傷、に施与された。少し過剰のコーティング組成物が施与された。次いで、Melinex 377ポリエステルフィルムの1片が、施与されたコーティング組成物の上に施与された。損傷部分の周りの小さい範囲にわたって余分のコーティング物質を広げるために、フィルムに親指で少し圧力がかけられた。その結果、最初の表面と修復された部分との間の滑らかな移行が得られた。施与されたコーティング組成物を室温で約4時間硬化させた後、硬化されたコーティング組成物からフィルムを取り除いた。その結果、滑らかに修復されたコーティングされた基体が得られた。
【0071】
実施例2
実施例1と同様の手順が行われた。しかし、フィルムを施与し、余分のコーティング物質を広げた後に、パネルを60℃で30分間加熱し、その後、室温に冷却した。冷却後直ちに、硬化されたコーティング組成物からフィルムが取り除かれた。その結果、滑らかに修復されたコーティングされた基体が得られた。
【0072】
実施例3
Autoclear LV Ultraのバインダーおよび硬化剤成分が上記2成分のための、3:1体積比を有する2成分カートリッジシリンジに入れられた。シリンジにスタティックミキサーが取り付けられた。2成分が同時に混合され、上記した標準の、損傷を受けたコーティングされた基体の損傷部分、すなわちかき傷、に上記2成分カートリッジシリンジによって施与された。コーティング組成物の施与の後、スタティックミキサーが処分され、そしてシリンジの開口部が、シリンジ中の成分の残りの、後での使用を可能にするために閉じられた。その後の工程は、実施例1と同様に行われた。施与されたコーティング組成物が室温で約4時間硬化された後、硬化されたコーティング組成物からフィルムが取り除かれた。その結果、滑らかに修復されたコーティングされた基体が得られた。
【0073】
実施例4
実施例3と同様の手順が行われた。しかし、フィルムを施与し、余分のコーティング物質を広げた後に、パネルを60℃で30分間加熱し、その後、室温に冷却した。冷却後直ちに、硬化されたコーティング組成物からフィルムが取り除かれた。その結果、滑らかに修復されたコーティングされた基体が得られた。
【0074】
実施例5
国際公開WO01/92362に記載された液状のコーティング組成物が、下記成分を混合することによって調製された。
ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート) 10.0g
Tolonate HDT LV 17.9g
n−ブチルアセテート中のByk306の10重量%溶液 0.6g
n−ブチルアセテート中の式(I)に従うα−アミノアセトフェノンの10重量%溶液
1.1g
【0075】
シリンジが液状のクリアコート組成物で満たされ、上記組成物が、上記した標準の、損傷を受けたコーティングされた基体の損傷部分、すなわちかき傷、に施与された。少し過剰のコーティング組成物が施与された。次いで、Melinex377ポリエステルフィルムの1片が、施与されたコーティング組成物の上に施与された。損傷部分の周りの小さい範囲にわたって余分のコーティング物質を広げるために、フィルムに親指で少し圧力がかけられた。その結果、最初の表面と修復された部分との間の滑らかな移行が得られた。施与されたコーティング組成物を暗室で24時間硬化させた。次いで、硬化されたコーティング組成物からフィルムが取り除かれた。その結果、滑らかに修復されたコーティングされた基体が得られた。平行実験において、ほんの4時間の硬化の後にフィルムの除去を行うと、施与されたコーティングは、硬化が不十分であったため、粘着性不足によって損傷をうけた。
【0076】
実施例6
実施例5と同様の手順が行われた。しかし、施与されたコーティングは、戸外で4時間硬化された。すなわち、曇りの日に通常の日光に暴露された。その後、硬化されたコーティング組成物からフィルムが取り除かれた。その結果、滑らかに修復されたコーティングされた基体が得られた。
【0077】
実施例7
実施例5と同様の手順が行われた。しかし、フィルムの施与の1分後に、サンプルがUV−H254ハンドランプ(Panacol Elosol GmbH製)で1分間照射された。照射の10分後に、硬化されたコーティング組成物からフィルムが取り除かれた。その結果、滑らかに修復されたコーティングされた基体が得られた。
【0078】
実施例5のコーティング組成物は、化学線の照射の不存在下で、非常に長いポットライフおよび遅い硬化を有する。実施例5は、そのようなコーティング組成物が本発明に従う方法において使用されると、コーティングされた基体のほとんど目に見えない修復が可能であることを示す。実施例6は、日光への暴露によって硬化が促進され得ることを示す。実施例7は、UV光への暴露によって硬化がさらに一層促進され得ることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、かき傷1によって損傷を受けたコーティングされた基体2の模式図である。
【図2】図2は、コーティングされた基体2の損傷を受けた部分1上にシリンジ3を使用して液状コーティング組成物4を施与することの模式図である。
【図3】図3は、施与されたコーティング組成物4の上へのフィルム5の施与の模式図である。
【図4】図4は、損傷を受けた部分1の周りの小さい部分にわたって広げられた施与されたコーティング組成物4の上の施与されたフィルム5の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされた基体の修復方法であって、
a)コーティングされた基体の修復される必要がある部分に、液状の、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物を施与する工程、ここで、上記2成分コーティング組成物の硬化は、成分が混合すると開始しかつUVもしくは電子ビーム照射または熱エネルギーの供給を必要としない、
b)施与されたコーティング組成物の上にフィルムを施与する工程、
c)施与されたコーティング組成物を硬化させる工程、および
d)基体上の硬化されたコーティング組成物から上記フィルムを除去する工程
を含む方法。
【請求項2】
液状の、環境温度で硬化可能な上記2成分コーティング組成物が、2成分カートリッジ中で提供されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
コーティングされた基体の修復方法であって、
a)コーティングされた基体の修復される必要がある部分に、液状の、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物の少なくとも1の成分を施与する工程、
a1)上記液状の、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物の少なくとも1の他の成分を、フィルムの一方の表面に施与する工程、
b)工程a)およびa1)において施与された成分が接触しそして少なくとも部分的に混合されるように、工程a)において施与されたコーティング組成物の上に上記フィルムのコーティングされた表面を施与する工程、
c)施与されたコーティング組成物を硬化させる工程、ここで、施与されたコーティングの硬化は、工程a)およびa1)において施与された成分が混合すると開始しかつUVもしくは電子ビーム照射または熱エネルギーの供給を必要としない、および
d)基体上の硬化されたコーティング組成物から上記フィルムを除去する工程
を含む方法。
【請求項4】
工程a)および/またはa1)において、少し過剰のコーティング組成物が施与されること、および、未硬化のコーティング組成物の上にフィルムが置かれた後に、損傷部分上の余分のコーティング物質が、フィルム上への圧力によって損傷部分の周りの小さい範囲にわたって広げられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
コーティングされた基体が金属またはプラスチックの基体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
コーティングされた基体が、自動車または輸送車両またはそれらの一部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
修復されるべきコーティングされた基体が、多層コーティングでコーティングされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
多層コーティングが、色彩付与性または効果付与性ベースコートの上にクリアトップコートを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
液状の、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物が、少なくとも1のポリイソシアネート、少なくとも1のチオール基を含む少なくとも1の化合物およびα−アミノアセトフェノンフォトラテント塩基を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物が、40重量%未満の揮発性有機化合物を含むコーティング組成物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物の硬化が、加熱によって促進されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
フィルムが化学線照射透過性であり、かつ環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物の硬化が、フィルムを通る化学線の照射によって促進されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
化学線照射としてUV照射が使用されることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
化学線照射として日光が使用されることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項15】
硬化可能なコーティング組成物が、フォトラテント塩基および塩基によって触媒される重合可能なまたは硬化可能な物質を含むことを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
施与されたコーティング組成物の上に施与されるフィルムが水溶性であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
工程d)が、水によってまたは水性溶液によってフィルムを洗い流すことにより行われることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
a)フィルム、および
b)液状の、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物、ここで、上記2成分コーティング組成物の硬化は、成分を混合すると開始しかつUVもしくは電子ビーム照射または熱エネルギーの供給を必要としない
を含む、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法を行うための部品のキット。
【請求項19】
a)フィルム、および
b)液状の、環境温度で硬化可能な2成分コーティング組成物を含む2成分カートリッジ、ここで、上記2成分コーティング組成物の硬化は、成分を混合すると開始しかつUVもしくは電子ビーム照射または熱エネルギーの供給を必要としない
を含む、請求項2記載の方法を行うための部品のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−523974(P2008−523974A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546056(P2007−546056)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056783
【国際公開番号】WO2006/064021
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】