説明

コーティングされた粒状発泡性ポリ乳酸

本発明は、発泡成形体を製造するための出発物質として機能する粒状発泡性ポリ乳酸に関する。本発明の粒状発泡性ポリ乳酸には、融着特性を改善するためのコーティングが設けられる。本発明は、粒状発泡性ポリ乳酸の製造方法、ならびに発泡成形体の製造方法、およびこれによって得られた成形体にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状発泡性ポリ乳酸に関する。本発明はさらに、粒状発泡性ポリ乳酸の製造方法、ならびに発泡成形体の製造方法およびこれによって得られた発泡成形体に関する。
【0002】
粒状発泡性ポリ乳酸は、US2006/0167122によって公知となっており、ポリ乳酸、ポリオレフィン樹脂および発泡剤を含むベース樹脂からなる。前記粒状発泡性ポリ乳酸の欠点の1つは、前記発泡性ポリ乳酸を主成分とする発泡成形体の形成中にポリ乳酸の個別の粒子間の不十分な融着が発生することである。現在のところ良好な融着を実現するためには、高圧および高温が必要となる。しかし、ポリ乳酸は熱安定性が限定されているため、ポリ乳酸の分解または発泡体の崩壊を引き起こさずにこのような高温高圧を使用することはできない。従って、その結果、発泡成形体が要求される機械的性質を有さなくなり、このことは発泡成形体が建築の目的で使用される場合には望ましくない。
【0003】
JP2001−098104は、ポリ乳酸を主成分とする生分解性発泡粒子であって、高級脂肪酸、またはこの金属塩、エステルもしくはアミドと混合される生分解性発泡粒子に関する。
【0004】
JP2005−068306は、食料品の包装に使用されるポリ乳酸系樹脂組成物の粒子に関する。
【0005】
US4,020,133は、ポリスチレンビーズ用の凝固防止剤(anti−lumping agent)に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0167122号明細書
【特許文献2】特開2001−098104号公報
【特許文献3】特開2005−068306号公報
【特許文献4】米国特許第4,020,133号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、粒状発泡性ポリ乳酸から発泡成形体への融着の改善が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、発泡成形体の形成に使用した場合に改善された融着を示す粒状ポリ乳酸を提供することが本発明の目的の1つである。
【0009】
これに加えて、個別の粒子間で良好な融着を示す発泡成形体が得られる、発泡成形体の形成方法を提供することが本発明の目的の1つである。
【0010】
良好な機械的性質を有する発泡成形体を得る方法を提供することも本発明の目的の1つである。
【0011】
良好な機械的性質を有する発泡成形体を提供することも本発明の目的の1つである。
【0012】
これに加えて、かなりの程度でまたはさらには完全に生分解性である発泡成形体を提供することが本発明の目的の1つである。この文脈に使用される用語「生分解性」は、製品の分解が、堆肥化に関する現行の欧州規格、即ちEN−13432:2000に適合することを意味するものと理解されたい。
【0013】
これらの1つ以上の目的が、粒状ポリ乳酸にコーティングが設けられることを特徴とする序文による方法を提供することで本発明によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
現在、発泡成形体は、特に、石油化学的な供給源から得られるポリエチレンなどのポリマーから製造される。
【0015】
しかし、過去数年にわたって、人々は、前記石油化学的な供給源は無尽蔵ではなく、その結果、再生可能な原材料などの代替物を見つけ出す必要があることをますます実感してきている。
【0016】
さらに、廃棄物量の増加がますます問題となっている。従って、多くの研究は、生分解性製品を探し出すことで、多量の廃棄物を減少させることを目的としている。
【0017】
従って、再生可能な原材料を主成分とする生分解性発泡成形体が必要とされている。
【0018】
その結果、過去数年で、広範囲の用途での再生可能な生分解性材料としてポリ乳酸(PLA)への関心が非常に高まっている。ポリ乳酸は、乳酸モノマーを主とするポリマーに対して使用される総称であり、ポリ乳酸の構造は、完全な非晶質から半結晶性または結晶性まで組成により変動し得る。ポリ乳酸は乳製品から、または例えばトウモロコシから製造することができる。
【0019】
乳酸はポリ乳酸を構成するモノマーであり、このモノマーには2つの立体異性体、特にL−乳酸およびD−乳酸が存在する。そのためポリ乳酸は、ある比率のL−乳酸モノマーおよびある比率のD−乳酸モノマーを含む。ポリ乳酸中のL−およびD−乳酸モノマーの間の比率によってこの性質が決定される。これはD値またはD含有率としても公知で、この値はポリ乳酸中のD−乳酸モノマーの%値を表している。現在市販されているポリ乳酸は、100:0から75:25の間のL:D比を有し、言い換えると0から25%の間、または0から0.25の間のD含有率を有する。ポリ乳酸がおおよそ12%を超えるD−乳酸を含有するともはや結晶化できなくなり、そのため完全に非晶質となる。D含有率がおおよそ5%の場合には、半結晶性ポリ乳酸と呼ばれる。ポリ乳酸の結晶化度は、示差走査熱量測定(DSC)によって求めることができる。用語「半結晶性」は、このポリマーが結晶化可能であり溶融も可能であることを意味すると理解されたい。従って、D含有率が低いほど、ポリ乳酸の結晶化度が高くなると言うことができる。D含有率は、通常、ポリマーを完全に加水分解させた後でガス液体クロマトグラフィー(GLC)を使用するいわゆるR−ラクテート測定などの公知の方法によって求められる。別の標準的な方法は、旋光による測定である(クロロホルム中、589nmの波長でジャスコ(Jasco)DIP−140偏光計を使用して測定される。)。
【0020】
本発明によるポリ乳酸のD含有率は、好ましくは0から15%の間、特に0.1から10%の間、より特に0.5から5%の間、およびとりわけ1から4.7%の間である。D含有率は特に5重量%未満である。本発明の非晶質ポリ乳酸と半結晶性ポリ乳酸との間の比は、好ましくは0から90%の間の非晶質であり、好ましくは10から75%の間、特に30から60%の間である。
【0021】
粒子状発泡性ポリ乳酸を主成分とする成形体の製造において、製品を得るために個別の粒子間の融着が十分となり、わずかな荷重下で個別の粒子が分解することないことが最も重要である。プロセス条件も非常に重要である。ポリ乳酸の熱安定性は石油化学ポリマーよりも限定されていることを考慮すれば、穏やかなプロセス条件下でさえも良好な融着が実現されることが非常に重要である。
【0022】
本発明者らは、粒状発泡性ポリ乳酸がコーティングされると、穏やかなプロセス条件下で良好な融着を実際に実現可能であることを発見した。
【0023】
これに関連して、発泡成形体は2つの異なる方法で得ることができることに留意されたい。粒状発泡性ポリ乳酸にコーティングし、続いて発泡および発泡成形体への成形を1ステップで行う、または粒状発泡性ポリ乳酸を最初に予備発泡させ、次にコーティングし、続いて発泡成形体に成形する。従って、コーティングは、ポリ乳酸粒子、またはすでに予備発泡させたポリ乳酸粒子に直接適用することができる。コーティングの適用後、粒子を(再び)発泡性にするために発泡剤を粒子に加える必要がある。
【0024】
すでに予備発泡させたポリ乳酸粒子にコーティングが適用される場合、さらなる利点が得られ、即ち、予備発泡させた粒子からの発泡剤の拡散が減少し、そのため信頼性がより高くより堅牢なプロセスが実現される。
【0025】
コーティングの使用によって、個別の粒子間で改善された融着を示す発泡成形体の製造が可能となる。これによって、より低い密度、および同等または改善された強度、ならびに優れた熱安定性を有する成形体を形成することが可能となる。
【0026】
これより、多数の好ましい実施形態を参照しながら、本発明およびこの利点をさらに説明する。
【0027】
好ましくはコーティングは、粒状発泡性ポリ乳酸の重量を基準にして0.5重量%から15重量%の間の量で存在する。本発明者らは、この量によって、一方で粒子間の良好な融着と、他方で良好な発泡体特性との間の良好な妥協を実現可能なことを見出した。0.5重量%未満のコーティングが使用されると、融着が不十分になる。15重量%を超えるコーティングが使用されると、発泡体特性があまり良好でなくなる。
【0028】
特に好都合なコーティング量は、2重量%から10重量%の間の範囲の量であり、この理由はこれによって最適な妥協が得られるからである。
【0029】
既に前述したように、ポリ乳酸は生分解性である。従って、完全に生分解性である発泡成形体が得られるように、コーティングも同様に生分解性であることが好ましい。
【0030】
このコーティングは、好ましくはポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル系ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクトン、ポリエステル、ポリエステルアミド、タンパク質系材料、多糖、天然のワックスまたはグリース、ならびにアクリレート、またはこれらの1種類以上の組み合わせからなる群より選択される。コーティングは、非晶質ポリ乳酸、またはこれと他のコーティングとの組み合わせであってもよい。
【0031】
ポリ酢酸ビニルおよびポリ酢酸ビニル系ポリマーを主成分とするコーティングの例は、ワッカー・ケミー(Wacker Chemie)より供給されるビネックス(Vinnex)およびビナパス(Vinnapas)ポリマーである。
【0032】
タンパク質系材料を主成分とするコーティングは、好ましくはゼラチン、コラーゲン、カゼインおよび大豆タンパク質、ならびにこれらの1種類以上の組み合わせからなる群より選択される。
【0033】
多糖を主成分とするコーティングは、好ましくはセルロース、セルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体、キトサン、アルギナート、ペクチン、カラギーナン、アラビアゴムおよびジェランガムからなる群より選択される。
【0034】
天然のワックスまたはグリースを主成分とするコーティングは、好ましくは蜜蝋、カルナウバ蝋、カンデリラ蝋、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸、モノグリセリドおよびセラックからなる群より選択される。
【0035】
コーティングは、好ましくはグリセロールおよび尿素を含む群より選択される可塑剤も場合により含有することができる。この可塑剤はソルビトールであってもよい。
【0036】
生分解性コーティングの代替物の1つとして、アクリレートコーティング、例えばDSMより供給されるネオクリル(Neocryl)などの非生分解性コーティングを使用することもできる。
【0037】
好ましくはコーティングは、ポリ酢酸ビニル、カゼイン、エチルセルロース、ポリカプロラクトン、非晶質ポリ乳酸およびこれらの1種類以上の組み合わせから選択される。
【0038】
融着特性は、これらのコーティングの融点によって大きな部分が決定される。コーティングの融点は、材料の選択および可能性のある可塑剤の添加によって調整することができ、所望の用途に依存して当業者により選択することができる。
【0039】
本発明によるポリ乳酸は、好ましくは半結晶性ポリ乳酸、非晶質ポリ乳酸およびこれらの混合物からなる群より選択することができる。ポリ乳酸を別の(生分解性)ポリマーと混合することもできる。この例は、ブタンジオール、アジピン酸およびテレフタル酸のコポリエステル(BASFより商品名エコフレックス(Ecoflex)で供給される。)デンプンおよび水との混合物、ならびにデンプンである。
【0040】
ポリ乳酸は、ポリスチレンと、場合により発泡性の形態で、好ましくは0.1から35重量%、好ましくは1から10重量%の量のポリスチレンと混合することもできる。
【0041】
好ましくはポリ乳酸は、全ポリマー組成物中に少なくとも50重量%、特に少なくとも75重量%、およびとりわけ少なくとも90重量%、またはさらに少なくとも99重量%の量で存在する。結局、その結果として、ポリ乳酸の好都合な性質が、最終的に得られる成形体において最適な状態で表面化する。従って、使用されるポリマーの大部分は常にポリ乳酸であり、従って、本明細書の説明および特許請求の範囲中では、別のポリマーが存在する場合でも用語「粒状ポリ乳酸」が使用される。
【0042】
非晶質ポリ乳酸は約55℃のガラス転移温度(Tg)を有する。このような低いガラス転移温度では、非常に限定された熱安定性を有する材料が得られる。半結晶性ポリ乳酸は、より高いガラス転移温度、即ち90℃(温度の高さは結晶化度の関数となる。)を有するため、半結晶性ポリ乳酸の熱安定性はより優れている。従って、非晶質および半結晶性のポリ乳酸の混合物を使用することが好ましい。
【0043】
選択されるポリ乳酸の種類によって、最終的に得られる発泡成形体の硬度および熱安定性が決定される。
【0044】
本発明の好ましい一実施形態では、ポリ乳酸は鎖延長剤を含み、これらの鎖延長剤は好ましくはポリエポキシド類およびジエポキシド類(BASFより供給されるジョンクリル(Joncryl)4368C)、ジイソシアネート類、オキサジン類およびオキサゾリン類、環状二無水物類(例えばPMDA)、過酸化物類(例えばアクゾ・ノーベル(Akzo Nobel)より供給されるトリゴノックス(Trigonox)タイプ)などからなる群より選択される。
【0045】
ポリ乳酸の溶融強度を増加させるために、このような鎖延長剤を加えることができる。このような鎖延長剤の一例は、BASFより供給されるジョンクリル4368Cである。ステアリン酸亜鉛を触媒として場合により加えることができる。
【0046】
本発明の別の一実施形態では、ポリ乳酸は、核剤または発泡核剤も含み、これらの核剤は、好ましくはポリエチレンワックスまたはポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、または滑石、もしくはナノクレイからなる群より選択される。このような核剤を加えることによって、発泡体品質が改善される。この一例は、ベーカー・ヒューズ・コーポレーション(Baker Hughes Corp.)より供給されるポリワックス(Polywax)P3000である。
【0047】
本発明のさらに別の好ましい一実施形態では、ポリ乳酸は、例えばステアリン酸亜鉛またはその他のステアリン酸金属塩からなる群より選択される潤滑剤も含む。前記潤滑剤は、外部潤滑剤として機能する。ステアリン酸亜鉛が選択される場合、これは鎖延長剤の触媒として機能することもできる。
【0048】
粒状押出成形体の粒度は、好ましくは0.5mmから5mmの間の範囲となる。0.5mm未満の粒度では、所望の性質を失わずに供給することが非常に困難となり、5mmを超える粒度では、粒子の面積と体積との間の比が減少するために発泡体特性があまり好都合でなくなる。
【0049】
最適な発泡体特性を得るためには、粒度は特に0.5mmから1.5mmの範囲である。
【0050】
予備発泡させていない本発明によるポリ乳酸粒子の(タップ)かさ密度は、好ましくは700g/lから1000g/lの間の範囲である。
【0051】
予備発泡させたポリ乳酸粒子の密度は、好ましくは10g/lから100g/lの間、特に15g/lから60g/lの間の範囲である。本発明者らは、これによって、特に、最終的に得られる発泡成形体の形成において良好な結果が得られることを見出した。本発明らは、これによって、コーティングの使用において最適な結果が得られ、この目的で改善された融着が得られることも見出した。
【0052】
本発明は、前述の粒状発泡性ポリ乳酸の製造方法であって、
a)ポリ乳酸を提供するステップ;
b)ステップa)で得たポリ乳酸から粒子を形成するステップ;
c)ステップb)で得た粒状ポリ乳酸にコーティングするステップ;
d)ステップc)で得たコーティングされた粒状ポリ乳酸に発泡剤を充填して、粒状発泡性ポリ乳酸を得るステップを含む方法にも関する。
【0053】
この方法を使用することによって、本発明による粒状ポリ乳酸が最適な様式で得られる。
【0054】
コーティングは、例えば浸漬または霧化によって、場合により流動床反応器中で適用することができる。
【0055】
ステップb)は押出機、例えば2軸スクリュー押出機を使用して行うことができる。鎖延長剤、核剤、および潤滑剤の1種類以上を含む、ポリ乳酸、またはポリ乳酸および1種類以上の他の生分解性ポリマーの混合物を、押出機で加工して粒子を形成することができる。押出機の末端には、いわゆる水中造粒機を有するダイを取り付けることができる。
【0056】
使用できる発泡剤の例は、CO、MTBE、窒素、空気、(イソ)ペンタン、プロパン、ブタンなど、またはこれらの1種類以上の組み合わせである。予備発泡が行われる場合、この目的の発泡剤はステップb)前または最中のポリ乳酸溶融物中に注入することができるし、後で粒子に発泡剤を充填することもできる。
【0057】
コーティングの適用後、粒子は常に発泡剤を再充填する必要がある。
【0058】
既に前述したように、コーティングを適用する前に、最初に粒子を予備発泡させることも可能である。これは前述の方法の好ましい実施形態を使用して行うことができ、このステップb)は2つのサブステップ、即ち、
b1)ステップa)で得たポリ乳酸から発泡性粒子を形成するステップ;
b2)ステップb1)で得た粒状発泡性ポリ乳酸を10から100g/lの密度に予備発泡させて予備発泡粒状ポリ乳酸を得るステップを含み;
ならびにステップc)は、ステップb2)で得た予備発泡粒状ポリ乳酸にコーティングすることを含む。
【0059】
ステップb1)は種々の方法で行うことができる。2つの前記方法について以下に説明する。
【0060】
第1の方法によると、例えば押出成形プロセスによって、ポリ乳酸から粒子が形成され、これらの粒子は、後に粒子に発泡剤が充填されることで発泡性となる。
【0061】
第2の方法によると、ポリ乳酸が発泡剤と混合され、この混合物から、例えば押出成形プロセスによって、発泡性粒子が直接形成される。
【0062】
本発明は、発泡成形体の製造方法であって、
i)本発明による粒状発泡性ポリ乳酸を提供するステップ;
ii)ステップi)の粒状発泡性ポリ乳酸を、特定の温度および圧力の条件下におくことで、発泡成形体を得るステップを含む方法にも関する。
【0063】
密度、可撓性および熱安定性などの最終成形体の性質は、特に、ポリ乳酸の種類、発泡剤の種類および量、ならびにプロセス条件に依存する。
【0064】
本発明の方法の好ましい一実施形態では、ステップii)で粒状ポリ乳酸を60から160℃の温度を有する空気または蒸気と接触させる。本発明者らは、これらの温度、特に60℃から100℃の間の範囲の温度で、温度上昇とともによくなる良好な融着と、温度上昇とともに熱的に不安定となるために劣化するポリ乳酸の良好な機械的性質との間の良好な妥協点が得られることを見出した、
別の好ましい一実施形態では、ステップii)で0.1から2.0barの圧力が使用される。
【0065】
本発明は、本発明の方法を使用することで得られた発泡成形体にも関する。
【0066】
最終発泡成形体の密度は、好ましくは10g/lから100g/lの間の範囲である。このようにして予備発泡粒状ポリ乳酸が使用される場合、最終成形体を形成するステップにおいて、発泡が起こったとしてもほとんど起こらない。このような場合、粒子間の融着のみが起こる。
【0067】
当然ながら、予備発泡ポリ乳酸が使用される場合でも、発泡成形体を形成するステップ中に、融着および発泡の両方が起こる可能性は存在する。
【0068】
以下の非限定的実施例を参照しながら、これより本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0069】
(予備発泡ステップおよびコーティングステップを含む。)
2つの種類のポリ乳酸、即ち第1の半結晶性ポリ乳酸(テート・アンド・ライル(Tate & Lyle)より供給される商品名:HM1010)および第2の非晶質ポリ乳酸(カーギル・ダウ(Cargill Dow)より供給される商品名:ネイチャー・ワークス(Natureworks)4060)のそれぞれ1部の混合物を調製する。さらに、0.6重量%の鎖延長剤(BASFより供給される商品名:ジョンクリル4368C)、0.4重量%のポリエチレンワックス系核剤(商品名:ベーカー・ヒューズ・コーポレーションより供給されるポリワックスP3000)、およびステアリン酸亜鉛であり鎖延長剤の触媒としても機能する0.2重量%の潤滑剤を前記1:1混合物に加える。
【0070】
上記混合物を2軸スクリュー配合押出機(タイプ番号:ベルシュトルフ(Berstorff)ZE75 36xD UTX)に加える。押出機から、いわゆるメルトポンプを介して、均一な溶融物が押出機ダイ(タイプ番号:ガラ(Gala)A6水中造粒機)へのトランスポーター(transporter)となる。前記ダイは192個の孔を有し、それぞれが0.7mmの直径を有し、製造される粒状ポリ乳酸は1.1から1.5mmの粒径を有する。
【0071】
続いて、圧力容器中20barの圧力で5時間かけて、粒状ポリ乳酸に発泡剤、即ちCOを充填する。注入後、粒状ポリ乳酸は約5重量%のCOを含有する。
【0072】
次に、熱風(約90℃の温度)を1分間使用して粒状ポリ乳酸を予備発泡または予備膨張させる。予備発泡させた粒状ポリ乳酸は約60g/lの密度を有する。
【0073】
次に、予備発泡させた粒状ポリ乳酸に、流動床反応器(商品名:グラット(Glatt))中でコーティングし、このコーティングは、コーティング後の粒状ポリ乳酸の全量の4.9重量%を構成する。このコーティングは、ポリ酢酸ビニル(商品名:ワッカー・ケミー(Wacker Chemie)より供給されるビネックス(Vinnex)2501)の50重量%水溶液によって適用される。コーティング後、予備発泡させコーティングした粒状ポリ乳酸を、圧力容器中20barで20分間処理することによって発泡剤、即ちCOを再充填する。再充填した粒状ポリ乳酸は約7重量%のCOを含有する。
【0074】
次に、再充填した粒状ポリ乳酸を発泡成形体の工業生産装置に供給し、この中で蒸気を使用して予備発泡させた粒状ポリ乳酸のさらなる膨張および融着を行って、60g/lの密度を有する発泡成形体を得る。
【0075】
粒状ポリ乳酸の融着および得られた成形体の機械的強度の評価を行い、その結果を表1に示している。
【実施例2】
【0076】
(予備発泡ステップは含まないが、コーティングステップを含む。)
実施例1に記載のように粒状ポリ乳酸を調製する。しかし、押出成形ステップ後、粒状ポリ乳酸は、発泡剤の充填も予備発泡も行わない。
【0077】
次に、粒状ポリ乳酸に流動床反応器(商品名:グラット)中でコーティングし、このコーティングは、コーティング後の粒状ポリ乳酸の全量の4.9重量%を構成する。このコーティングは、ポリ酢酸ビニル(商品名:ワッカー・ケミーより供給されるビネックス2501)の50重量%水溶液によって適用される。
【0078】
コーティング後、コーティングした粒状ポリ乳酸を、圧力容器中20barで20分間処理することによって発泡剤、即ちCOを充填する。充填した粒状ポリ乳酸は約7重量%のCOを含有する。
【0079】
次に、充填した粒状ポリ乳酸を発泡成形体の工業生産装置に供給し、この中で蒸気を使用して予備発泡させた粒状ポリ乳酸の膨張および融着を行って、60g/lの密度を有する発泡成形体を得る。
【0080】
粒状ポリ乳酸の融着および得られた成形体の機械的強度の評価を行い、その結果を表1に示している。
【実施例3】
【0081】
(予備発泡ステップは含まないが、コーティングステップを含む。)
実施例2の方法を繰り返し、充填した粒状ポリ乳酸を、小型の金型(茶こし器(tea ball))中、蒸気を使用して発泡させ、膨張および融着させることで発泡成形体を得る。前記発泡成形体の融着は、成形体を手で押しつぶすことによって手作業で求められ、1から10の評点が割り当てられ、10は優秀な融着を示し、1は融着が全くないことを示す。使用したコーティングを表2に示すように変更し、この表は融着の評点も示している。コーティングは、ワッカー・ケミーより供給されるビネックス2501、ビネックス2504およびビネックス2510およびビネックス2502、25%のソルビトールを含むカルボキシメチルセルロース、ゼラチン(ソルビトール可塑剤を含む。)、カゼイン(グリセリン可塑剤を含む。)、ポリビニルアルコールタイプ3−98およびタイプ3−88(グリセリン可塑剤を含む。)、エチルセルロース(グリセリン可塑剤を含む。)、CAPA(ソルベー(Solvay)のポリカプロラクトン)、非晶質ポリ乳酸、コーティングを含まないがグリセリンモノステアラートおよびグリセリントリステアラートを含む、である。
【実施例4】
【0082】
(予備発泡ステップおよびコーティングステップを含む。)
4.5%のD含有率を有する半結晶性ポリ乳酸(ネイチャーワークス・タイプ4042)をベルシュトルフZE4038Dの2軸スクリュー配合押出機に計量供給する。押出機から、均一な溶融物が、0.7mmの直径を有する64個の孔が設けられたガラ水中造粒機に給送され、これより製造される粒子(マイクロビーズ)は1.1から1.5mmの直径を有する。これらの粒子に、圧力容器中20barの圧力で16時間かけてCOを充填し、この充填後、粒子は約8%のCOを含有する。次に、熱風(110℃)によって1分間粒子を予備発泡させる。予備発泡させた粒子は約45g/lの密度を有する。予備発泡させた粒子に、ワッカー・ケミーの4.9%ビネックス2501をコーティングし、続いて圧力容器中10barで10分間COを再充填する。再充填した粒子は約3.5%のCOを含有する。再充填した粒子を発泡成形体の工業生産装置に計量供給し、この中で蒸気を用いて予備発泡させた粒子を融着させる。
【実施例5】
【0083】
(予備発泡ステップおよびコーティングステップを含む。)
4.7%のD含有率を有する50%のタイプ3051および50%のタイプ4046(どちらもネイチャー・ワークス)を含む混合物をベルシュトルフZE4038Dの2軸スクリュー配合押出機に計量供給する。押出機から、均一な溶融物が、0.7mmの直径を有する64個の孔が設けられたガラ水中造粒機に給送され、これより製造される粒子(マイクロビーズ)は1.1から1.5mmの直径を有する。製造した粒子に、圧力容器中20barの圧力で16時間かけてCOを充填し、この充填後、粒子は約8%のCOを含有する。次に、熱風(110℃)によって1分間粒子を予備発泡させる。予備発泡させた粒子は約45g/lの密度を有する。予備発泡させた粒子に、ワッカー・ケミーの5.0%ビネックス2501をコーティングし、続いて圧力容器中10barで10分間COを再充填する。再充填した粒子は約3.5%のCOを含有する。再充填した粒子を発泡成形体の工業生産装置に計量供給し、この中で蒸気を用いて予備発泡させた粒子を融着させる。優秀な結果が得られる。
【0084】
[比較例1]
(予備発泡ステップを含み、コーティングステップを含まない)
実施例1に記載のように粒状ポリ乳酸を調製する。次に実施例1に記載のように粒状ポリ乳酸を予備発泡させる。しかしコーティングは適用しない。
【0085】
次に、予備発泡させた粒状ポリ乳酸に、圧力容器中20barで20分間処理することによって発泡剤、即ちCOを再充填する。再充填した粒状ポリ乳酸は約7重量%のCOを含有する。
【0086】
続いて、再充填した粒状ポリ乳酸を発泡成形体の工業生産装置に供給し、この中で予備発泡させた粒状ポリ乳酸のさらなる膨張および融着を行って、60g/lの密度を有する発泡成形体を得る。
【0087】
粒状ポリ乳酸の融着および得られた成形体の機械的強度の評価を行い、その結果を表1に示している。
【0088】
[比較例2]
(予備発泡ステップなし、コーティングステップなし)
実施例2に記載のように粒状ポリ乳酸を調製する。しかしコーティングは適用しない。
【0089】
次に、予備発泡させた粒状ポリ乳酸に、圧力容器中20barで20分間処理することによって発泡剤、即ちCOを充填する。粒状ポリ乳酸は約7重量%のCOを含有する。
【0090】
続いて、充填した粒状ポリ乳酸を発泡成形体の工業生産装置に供給し、この中で予備発泡させた粒状ポリ乳酸のさらなる膨張および融着を行って、60g/lの密度を有する発泡成形体を得る。
【0091】
粒状ポリ乳酸の融着および得られた成形体の機械的強度の評価を行い、その結果を表1に示している。
【0092】
ポリ乳酸個別の粒子間の融着は、以下のように測定する。発泡成形体を手で2つに破壊し、前記破壊中の抵抗の程度を定性的に求める。
【0093】
機械的性質は、圧縮強度および破壊強度として求める。
【0094】
最終成形体の圧縮強度は、欧州規格(EN)826(1969)に準拠して求めた。
【0095】
最終成形体の破壊強度は、欧州規格(EN)12089(1998)に準拠して求めた。
【0096】
金型の公称寸法の形状安定性を求め、最終的に得られる成形体をこれと比較することで、収縮が起こったかどうかを評価する。
【0097】
【表1】

【0098】
表1の結果から、本発明による粒状ポリ乳酸は、コーティングを使用することによって融着および機械的性質に関して従来技術のポリ乳酸よりも改善された結果を示すことが分かる。従って、本発明の1つ以上の目的が本発明によって達成されることが明らかである。
【0099】
さらに、予備発泡ステップの使用が好ましいことも明らかである。
【0100】
【表2】

【0101】
上記の表は、ソルビトールまたはグリセリンを可塑剤として加えても融着に影響しないことを示している。さらに、以下のコーティング、ポリ酢酸ビニル、カゼイン、エチルセルロース、ポリカプロラクトンおよび非晶質ポリ乳酸が好ましいことが明らかである。
【0102】
さらなる好ましい実施形態は特許請求の範囲において規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングが設けられることを特徴とする、粒状発泡性ポリ乳酸。
【請求項2】
粒状ポリ乳酸の重量を基準にして、コーティングが0.5重量%から15重量%の間、好ましくは2から10重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の粒状ポリ乳酸。
【請求項3】
前記コーティングが生分解性であることを特徴とする、請求項1から2のいずれか一項または両方に記載の粒状ポリ乳酸。
【請求項4】
コーティングが、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル系ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクトン、ポリエステル、ポリエステルアミド、タンパク質系材料、多糖、天然のワックスもしくはグリース、ならびにアクリラート、またはこれらの1種類以上の組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項以上に記載の粒状ポリ乳酸。
【請求項5】
タンパク質系材料を主成分とするコーティングが、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、および大豆タンパク質、ならびにこれらの1種類以上の組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、請求項4に記載の粒状ポリ乳酸。
【請求項6】
コーティングが、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル系ポリマー、カゼイン、エチルセルロース、ポリカプロラクトン、非晶質ポリ乳酸およびこれらの1種類以上の組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、請求項4または5のいずれか一項または両方に記載の粒状ポリ乳酸。
【請求項7】
コーティングが、好ましくはグリセリン、ソルビトールおよび尿素、ならびにこれらの1種類以上の組み合わせからなる群より選択される可塑剤をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の粒状ポリ乳酸。
【請求項8】
多糖が、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体、キトサン、アルギナート、ペクチン、カラギーナン、アラビアゴムおよびジェランガムからなる群より選択されることを特徴とする、請求項4に記載の粒状ポリ乳酸。
【請求項9】
天然のワックスまたはグリースが、蜜蝋、カルナウバ蝋、カンデリラ蝋、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸、モノグリセリドおよびセラックからなる群より選択されることを特徴とする、請求項4に記載の粒状ポリ乳酸。
【請求項10】
ポリ乳酸が、半結晶性ポリ乳酸、非晶質ポリ乳酸およびこれらの混合物、ならびにポリ乳酸および1種類以上の別の生分解性ポリマーの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項以上に記載の粒状ポリ乳酸。
【請求項11】
ポリ乳酸が、好ましくはポリエポキシド類およびジエポキシド類、ジイソシアネート類、オキサジン類およびオキサゾリン類、環状二無水物類、有機過酸化物ならびにこれらの1種類以上の組み合わせからなる群より選択される鎖延長剤を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項以上に記載の粒状ポリ乳酸。
【請求項12】
ポリ乳酸が、好ましくはポリオレフィンワックス、ポリ乳酸の立体異性体、滑石、ナノクレイまたはこれらの1種類以上の組み合わせからなる群より選択される核剤も含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項以上に記載の粒状ポリ乳酸。
【請求項13】
ポリ乳酸が、潤滑剤、好ましくはステアリン酸金属塩、特にステアリン酸亜鉛も含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項以上に記載の粒状ポリ乳酸。
【請求項14】
粒度が0.5mmから5mmの間、好ましくは0.5mmから1.5mmの間の範囲であることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項以上に記載の粒状ポリ乳酸。
【請求項15】
前記粒状ポリ乳酸の(タップ)かさ密度が700g/lから1000g/lの範囲であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項以上に記載の粒状ポリ乳酸。
【請求項16】
前記粒状ポリ乳酸が10g/lから100g/lの間の範囲の密度を有することを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項以上に記載の粒状ポリ乳酸。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項以上に記載の粒状発泡性ポリ乳酸の製造方法であって、
a)ポリ乳酸を提供するステップ;
b)ステップa)で得たポリ乳酸から粒子を形成するステップ;
c)ステップb)で得た粒状ポリ乳酸にコーティングするステップ;
d)ステップc)で得たコーティングされた粒状ポリ乳酸に発泡剤を充填して、粒状発泡性ポリ乳酸を得るステップを含む方法。
【請求項18】
ステップb)が2つのサブステップ、即ち、
b1)ステップa)で得たポリ乳酸から発泡性粒子を形成するステップ;
b2)ステップb1)で得た粒状発泡性ポリ乳酸を10から100g/lの密度に予備発泡させて予備発泡粒状ポリ乳酸を得るステップを含み;
ステップc)が、ステップb2)で得た予備発泡粒状ポリ乳酸にコーティングすることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
発泡成形体の製造方法であって、
i)請求項1から16のいずれか一項以上に記載の粒状発泡性ポリ乳酸、または請求項17から18のいずれか一項または両方に記載の方法によって製造される粒状発泡性ポリ乳酸を提供するステップ;
ii)ステップi)の粒状発泡性ポリ乳酸を、特定の温度および圧力の条件下におくことで、発泡成形体を得るステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項20】
ステップi)で得た粒状ポリ乳酸を、ステップii)において60から160℃の温度を有する空気または蒸気と接触させることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ステップii)において0.1から2.0barの圧力が使用されることを特徴とする、請求項19または20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項17から21のいずれか一項以上に記載の方法を使用することによって得られた発泡成形体。
【請求項23】
10g/lから100g/lの間の密度を有することを特徴とする、請求項22に記載の発泡成形体。

【公表番号】特表2010−525099(P2010−525099A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503996(P2010−503996)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【国際出願番号】PCT/NL2008/000109
【国際公開番号】WO2008/130226
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(509287913)シンブラ・テクノロジー・ベスローテン・フエンノートシヤツプ (2)
【Fターム(参考)】