説明

コーティング剤組成物

本発明に係る、(A)分子鎖側鎖に、式:−COO−Q−SiR(OR3−nで示される加水分解性シリル基と、式:−COO−Q−Si(OSiRで示されるオルガノシロキシシリル基を有する重量平均分子量3,000〜100,000のアクリル系共重合体、(B)縮合反応促進触媒からなることを特徴とするコーティング剤組成物は、硬化前は保存安定性、塗工性に優れ、硬化後は撥水性、耐久性に優れた高硬度の硬化皮膜を形成する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコーティング剤組成物に関し、詳しくは、硬化前は塗工性に優れ、硬化後は撥水性、耐久性に優れた高硬度の硬化皮膜を形成するコーティング剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂を主剤とするコーティング剤組成物は、各種建築外装用基材のコーティング剤として使用されている。しかし、この種のコーティング剤組成物は、基材に対する密着性、硬度、撥水性、耐久性に劣るという欠点があった。従来、このような欠点を解消するために数多くのコーティング剤組成物が提案されている。例えば、加水分解性シリル基含有アクリル系共重合体を主成分とする硬化性組成物(特開平2−64110号公報および特開平3−24148号公報参照)や、加水分解性シリル基含有アクリル系重合体、シラノール基含有オルガノポリシロキサンおよび縮合反応触媒からなる組成物(特開平3−252414号公報参照)、水酸基と加水分解性シリル基を含有するアクリル系重合体、シラノール基含有オルガノポリシロキサンおよび縮合反応促進触媒からなる組成物(特開平7−150105号公報参照)が提案されている。しかしながら、これらの組成物のコーティング皮膜はいずれも、撥水性や耐久性が不十分であるという問題がある。
【0003】
また、アルキルメタクリレート、低分子シロキサン含有メタクリレート、加水分解性官能基とラジカル重合性不飽和基を有するシラン化合物を共重合してなるシロキサン含有アクリル系共重合体からなる室温硬化性塗料組成物(特公平3−69950号公報参照)が提案されている。しかしながら、この室温硬化性塗料組成物のコーティング皮膜は、低分子シロキサン含有メタクリレートのシロキサン単位の数が十分でないため撥水性が不十分であったり、低分子シロキサン含有メタクリレートにジアルキルシロキサン単位が含まれるので硬化皮膜が柔らかく耐久性が不十分であったりするという問題がある。また、その低分子シロキサン含有メタクリレートは、白金触媒を用いたヒドロシリル化反応により製造されるので、室温硬化性塗料組成物中に残留する白金触媒によりそのコーティング皮膜が変色しやすいという問題もある。
【発明の開示】
【0004】
本発明者らは上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち、本発明の目的は、硬化前は塗工性に優れ、硬化後は撥水性、耐久性に優れた高硬度の硬化皮膜を形成するコーティング剤組成物を提供することにある。
【0005】
本発明は、(A)(A1)一般式(1):
CH=C(R)−COO−Q−SiR(OR3−n ・・・(1)
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Qは炭素原子数2〜6の二価脂肪族炭化水素基であり、Rは非置換もしくは置換の炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、Rは炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、nは0〜2の整数)で示されるシラン化合物
100重量部、
(A2)アクリル系化合物(但し、(A1)成分を除く)、ビニル系化合物及びスチレン系化合物から選ばれる1種又は2種以上のビニル重合性不飽和結合含有化合物
80〜250重量部、
(A3)一般式(2):
CH=C(R)−COO−Q−Si(OSiR ・・・(2)
(式中、RおよびQは前記と同じであり、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基)で示されるシロキシシラン化合物 10〜50重量部、
をラジカル共重合して得られた重量平均分子量3,000〜100,000のアクリル系共重合体 100重量部、
(B)縮合反応促進触媒 触媒量
からなることを特徴とするコーティング剤組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(A)成分は本発明のコーティング剤の主剤であり、(A1)〜(A3)成分をラジカル共重合して得られるアクリル系共重合体である。
(A1)成分は、一般式(1):
CH=C(R)−COO−Q−SiR(OR3−n ・・・(1)
で示され、上式中、Rは水素原子またはメチル基である。Qは炭素原子数2〜6の二価脂肪族炭化水素基であり、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基が好ましい。Rは非置換もしくは置換の炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基が挙げられる。Rは炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基が例示される。nは0〜2の整数であり、0または1が好ましい。このような(A1)成分としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリトキシプロピルトリ(イソプロペキシ)シラン、3−アクリロキシプロピルトリ(イソプロペキシ)シランが例示される。
【0007】
(A2)成分のアクリル系化合物としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好ましく、具体的には、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチルアクリレートが例示される。これらの内ではアルキルメタクリレートが好ましく、特にメチルメタクリレートが好ましい。ビニル系化合物としては、酢酸ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、エチルビニルケトンが例示され、これらの中でも酢酸ビニルが好ましい。スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンが例示される。このような(A2)成分は、これらの化合物の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上の混合物を使用してもよい。
【0008】
(A3)成分は、一般式(2):
CH=C(R)−COO−Q−Si(OSiR ・・・(2)
で示され、上式中、RおよびQは前記と同様である。Rは炭素原子数1〜4のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が例示される。このような(A3)成分としては、次式で示されるトリス(トリアルキシシロキシ)シラン化合物が例示される。
下式中、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基である。
CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
CH=CH−COO−C−Si(OSiMe
CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
CH=CMe−COO−C−Si(OSiEt
CH=CH−COO−C−Si(OSiEt
CH=CMe−COO−C−Si(OSiEt
CH=CMe−COO−C−Si(OSiPr
CH=CH−COO−C−Si(OSiPr
CH=CMe−COO−C−Si(OSiPr
【0009】
(A3)成分の製造方法は特に限定されないが、トリス(トリアルキルシロキシ)シランを白金触媒の存在下にアリルアクリレートまたはアリルメタクリレートと反応させる方法や、特開平11−217389に記載されている、カルボン酸と酸触媒の存在下で、メタクリロキシアルキルトリアルコキシシランとヘキサアルキルジシロキサンとを反応させる方法などにより得られる。しかし、白金触媒を使用するとモノマー中に白金が残留し、最終製品の保存安定性や物性に悪影響を及ぼす可能性があることから、酢酸と酸触媒の存在下で、メタクリロキシアルキルトリアルコキシシランとヘキサアルキルジシロキサンとを反応させる方法により製造することが好ましい。
【0010】
(A1)〜(A3)成分の配合量は、(A1)成分100重量部に対して、(A2)成分が80〜250重量部であり、(A3)成分が10〜50重量部である。好ましくは、(A2)成分が80〜150重量部であり、(A3)成分が10〜40重量部である。これは、(A2)成分が250重量部を超えると、(A1)成分の比率が減少して硬化性が低下するためである。また、(A3)成分が10重量部より少ないと硬化皮膜の撥水性が十分に発現せず、50重量部を超えると硬化皮膜の硬度及び耐久性が低下するためである。
【0011】
(A)成分は、前記(A1)〜(A3)成分をラジカル共重合することにより製造されるが、該成分の合計量100モルに対して0.30〜0.99モルとなる量のアゾ化合物を用いて共重合すると、重量平均分子量3,000〜100,000のアクリル系共重合体を効率よく合成できる。これは、アゾ化合物が0.30モル未満ではアクリル系共重合体の重量平均分子量が100,000より大きくなって保存安定性が不十分となり、0.99モルを超えるとアクリル系共重合体の重量平均分子量が3,000未満となって本発明組成物の塗工性が不十分になるためである。このような特定量のアゾ化合物を重合開始剤として使用すると、(A)成分の分子量が制御されて、塗工性、保存安定性に優れたコーティング剤組成物が得られやすい。アゾ化合物として具体的には、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等の2,2’−アゾビスイソブチロニトリル以外のアゾ化合物が挙げられる。アゾ化合物以外にも、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の有機過酸化物のようなラジカル重合触媒を使用してもよい。(A)成分の製造方法としては、例えば、不活性雰囲気下、後述する(C)成分の有機溶剤中で(A1)〜(A3)成分をアゾ化合物により共重合する方法が挙げられる。このような(A)成分は、分子鎖側鎖に、(A1)成分に由来する式:−COO−Q−SiR(OR3−nで示される加水分解性シリル基含有基と(A3)成分に由来する式:−COO−Q−Si(OSiRで示されるオルガノシロキシシリル基含有基を有するアクリル系共重合体である。またその重量平均分子量は3,000〜100,000であり、5,000〜80,000であることが好ましい。
【0012】
(B)成分の縮合反応促進触媒は、(A)成分中のアルコキシシリル基同士やアルケニロキシシリル基同士を縮合させて架橋可能とする。具体的には、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジマレート、オクチル酸スズなどの有機スズ化合物;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、テトラアルキルチタネートなどの有機チタネート化合物;テトラブチルジルコネート、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトライソブチルジルコネート、ブトキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウムなどの有機ジルコニウム化合物;トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウムなどの有機アルミニウム化合物が例示される。(B)成分の配合量は触媒量であり、通常、(A)成分100重量部に対して0.1〜8重量部の範囲が好ましい。
【0013】
本発明のコーティング剤組成物は上記(A)成分と(B)成分からなるが、これらの成分に加えて(C)有機溶剤を含有することが好ましい。かかる(C)有機溶剤としては、(A1)〜(A3)成分および(A)成分を溶解できるものであれば特に限定されず、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類;およびこれらの混合物が例示される。(C)成分の配合量は(A)成分を溶解させるのに十分な量であり、通常、(A)成分100重量部に対して100〜1900重量部の範囲であり、本発明組成物中の不揮発分が5重量%〜50重量%の範囲になる量が好ましい。なお、(A)成分が常温で液状であり、コーティングに適する場合は、(C)成分は不要である。
【0014】
本発明のコーティング剤組成物は上記(A)成分と(B)成分または(A)〜(C)成分からなるが、これらの成分に加えて、密着性を向上させるために、(D)アミノシランカップリング剤を含有することが好ましい。かかるアミノシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシランが例示される。その含有量は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲が好ましい。
【0015】
さらに本発明のコーティング剤組成物は、必要に応じて脱水剤、レベリング剤、増粘剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有することができる。脱水剤としては、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル等が挙げられる。レベリング剤としては、各種のポリエーテル変性シリコーンオイルが例示される。また本発明組成物に、各種顔料、染料等の着色剤、カーボンブラック、電荷調整剤、アルミニウムペースト、タルク、ガラスフリット、金属粉等を添加することにより、塗料としても使用できる。
【0016】
本発明組成物は各種基材に塗布した後、室温下で放置あるいは加熱により硬化皮膜を形成する。基材への塗布方法としては、刷毛塗り、スプレー、浸漬、フローコーター、ナイフコーター、スピンコーター等従来公知の方法を用いることができる。コーティング皮膜の厚さは任意であるが、0.1〜50μmの範囲が好ましい。また、本発明組成物に各種顔料を添加配合して塗料として使用する場合には、塗膜の厚さは5〜100μmの範囲が好ましい。本発明組成物が適用される基材としては、材質上は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、アルマイト、デュラルミン等の金属;酸化鉄、フェライト、アルミナ、酸化亜鉛等の金属酸化物;モルタル、スレート、コンクリート、ガラス、セラミック等の無機基材;木材、合板;熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、FRP等の樹脂が例示される。基材の形状は、板状、ブロック状、皮膜状、粒子状、粉末状が例示される。本発明組成物は、これらの中でも特に金属系微粉末、金属酸化物系微粉末、磁性微粉末に対する密着性が良好なので、そのコーティング剤として有用である。
【0017】
以上のような本発明のコーティング剤組成物は、側鎖に加水分解性基であるアルコキシシリル基とトリス(トリアルキルシロキシ)シリル基を有する重量平均分子量100,000以下のアクリル系共重合体を主剤として用いるので、(B)成分の作用により容易に縮合反応して架橋するという利点および比較的少量の有機溶剤による希釈で良好な塗工性を有し、均一な皮膜が得られるという利点を有する。さらに硬化後は、撥水性、耐久性、各種基材に対する密着性に優れた高硬度の透明な皮膜を形成するという特徴を有する。このような本発明組成物は、金属基材や無機基材等のコーティング剤として有用であり、特に、金属系微粉末、金属酸化物系微粉末、磁性微粉末の表面コーティング剤に好適である。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。なお、実施例中、%とあるのは重量%である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算でもとめた。粘度は25℃でJIS−K2283に準じて測定した。また、不揮発分はコーティング剤組成物1gをアルミ皿に秤取り、150℃で1時間加熱した後の重量を測定して、次式に従って算出した。
不揮発分(%)=(加熱前の重量−加熱後の重量)×100/加熱前の重量
鉛筆硬度は、JIS−K5400に準じて測定し、水に対する接触角は、接触角計[協和界面科学(株)製;CA−Z]を用いて測定した。
【0019】
参考例1 3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランの調製
撹拌機付きフラスコに38.7gのヘキサメチルジシロキサン、0.05gのトリフルオロメタンスルホン酸、および28.6gの酢酸を投入して、50℃まで昇温した。ついで、これに3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン26.3gを滴下し、2時間反応を継続した。水洗を2度繰り返した後、60℃まで再び昇温し、0.016gのトリフルオロ酢酸および6.32gのヘキサメチルジシラザンを加え、反応を完結させた。水洗を2度繰り返し、最後に100℃、10Torrで、2時間かけて残留しているヘキサメチルジシロキサン、酢酸、その他の低沸点物をストリッピングして、目的生成物を得た。
【0020】
合成例1
撹拌機付きフラスコにトルエン70gを投入して、窒素ガス気流下で90℃まで昇温した。次いでこれに、メタクリル酸メチル21g(210ミリモル)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン21g(85ミリモル)、
式:CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
(式中、Meはメチル基である。)で示される参考例1で調製した3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン4.2g(10ミリモル)、および、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.18gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.02gをトルエン5gに溶解した溶液を加えて(2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルの合計量0.2g=1ミリモル)、90〜100℃で3時間混合してラジカル共重合させてメタクリル系共重合体を得た。得られたメタクリル系共重合体の重量平均分子量は26,000であった。次いでメタノール10gを加え、このメタクリル系共重合体溶液の不揮発分が20重量%になるようにトルエンで希釈した。このようにして得られた共重合体溶液の粘度は8mm/sであり、屈折率は1.49であり、比重は0.91であった。このメタクリル系共重合体溶液を室温で3ヶ月間放置したところ、外観の変化は認められなかった。
【0021】
合成例2
撹拌機付きフラスコにトルエン35gを投入して、窒素ガス気流下で90℃まで昇温した。次いでこれに、メタクリル酸メチル8.6g(86ミリモル)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン8.2g(33ミリモル)、
式:CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
(式中、Meはメチル基である。)で示される参考例1で調製した3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン1.6g(3.8ミリモル)、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート4.8g(31ミリモル)、および、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.14gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.01gをトルエン5gに溶解した溶液を加えて(2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルの合計量0.15g=0.78ミリモル)、90〜100℃で3時間混合してラジカル共重合させてメタクリル系共重合体を得た。得られたメタクリル系共重合体の重量平均分子量は20,000であった。次いでメタノール5gを加え、このメタクリル系共重合体溶液の不揮発分が20重量%になるようにトルエンで希釈した。このようにして得られた共重合体溶液の粘度は10.8mm/sであり、屈折率は1.487であり、比重は0.92であった。このメタクリル系共重合体溶液を室温で3ヶ月間放置したところ、外観の変化は認められなかった。
【0022】
合成例3
撹拌機付きフラスコにトルエン70gを投入して、窒素ガス気流下で90℃まで昇温した。次いでこれに、メタクリル酸メチル21g(210ミリモル)、スチレン4g(38ミリモル)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン21g(85ミリモル)、
式:CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
(式中、Meはメチル基である。)で示される参考例1で調製した3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン4.2g(10ミリモル)、および、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.18gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.02gをトルエン5gに溶解した溶液を加えて(2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルの合計量0.2g=1ミリモル)、90〜100℃で3時間混合してラジカル共重合させてメタクリル系共重合体を得た。得られたメタクリル系共重合体の重量平均分子量は27,000であった。次いでメタノール10gを加え、このメタクリル系共重合体溶液の不揮発分が20重量%になるようにトルエンで希釈した。このようにして得られたメタクリル系共重合体溶液の粘度は8mm/sであり、屈折率は1.49であり、比重は0.91であった。このメタクリル系共重合体溶液を室温で3ヶ月間放置したところ、外観の変化は認められなかった。
【0023】
[実施例1]
トルエン30g、テトラブチルチタネート0.3g、合成例1で得たメタクリル系共重合体溶液(不揮発分20%)70gを混合して、コーティング剤組成物を調製した。これをステンレス鋼鈑に流し塗りした後、200℃で1時間加熱して、透明な硬化皮膜を得た。得られた硬化皮膜はヨリの発生もなく均一であった。この硬化皮膜の鉛筆硬度は5Hであり、水に対する接触角は90度であった。硬化皮膜表面を、日本スチールウール株式会社製ボンスタースチールウールNo.0000で10回擦ったところ、キズの発生はほとんど認められなかった。
【0024】
[実施例2]
実施例1において、テトラブチルチタネート0.3gの替わりに、ジブチル錫ジラウレート0.4gを用いた以外は実施例1と同様にして、コーティング剤組成物を調製した。これをステンレス鋼鈑に流し塗りした後、200℃で30分間加熱して、透明な硬化皮膜を得た。得られた硬化皮膜はヨリの発生もなく均一であった。この硬化皮膜の鉛筆硬度は5Hであり、水に対する接触角は90度であった。硬化皮膜表面を、日本スチールウール株式会社製ボンスタースチールウールNo.0000で10回擦ったところ、キズの発生はほとんど認められなかった。
【0025】
[実施例3]
トルエン20g、テトラブチルチタネート0.3g、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン0.2g、合成例1で得たメタクリル系共重合体溶液(不揮発分20%)80gを混合して、コーティング剤組成物を調製した。これをステンレス鋼鈑に流し塗りした後、200℃で1時間加熱して、透明な硬化皮膜を得た。得られた硬化皮膜はヨリの発生もなく均一であった。この硬化皮膜の鉛筆硬度は5Hであり、水に対する接触角は90度であった。硬化皮膜表面を、日本スチールウール株式会社製ボンスタースチールウールNo.0000で10回擦ったところ、キズの発生はほとんど認められなかった。
【0026】
[実施例4]
トルエン30g、テトラブチルチタネート0.3g、合成例2で得たメタクリル系共重合体溶液(不揮発分20%)70gを混合して、コーティング剤組成物を調製した。これをステンレス鋼鈑に流し塗りした後、200℃で1時間加熱して、透明な硬化皮膜を得た。得られた硬化皮膜はヨリの発生もなく均一であった。この硬化皮膜の鉛筆硬度は6Hであり、水に対する接触角は90度であった。硬化皮膜表面を、日本スチールウール株式会社製ボンスタースチールウールNo.0000で10回擦ったところ、キズの発生はほとんど認められなかった。
【0027】
[実施例5]
トルエン30g、テトラブチルチタネート0.3g、合成例3で得たメタクリル系共重合体溶液(不揮発分20%)70gを混合して、コーティング剤組成物を調製した。これをステンレス鋼鈑に流し塗りした後、200℃で1時間加熱して、透明な硬化皮膜を得た。得られた硬化皮膜はヨリの発生もなく均一であった。この硬化皮膜の鉛筆硬度は5Hであり、水に対する接触角は90度であった。硬化皮膜表面を、日本スチールウール株式会社製ボンスタースチールウールNo.0000で10回擦ったところ、キズの発生はほとんど認められなかった。
【0028】
比較例1
撹拌機付きフラスコにトルエン106gを投入して95℃まで昇温した。次いでこれに、メタクリル酸メチル58g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン25g、および、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.9gの混合物を、滴下漏斗を用いて1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.1gとトルエン10gの混合溶液を滴下して、95℃で3時間混合してラジカル共重合させて、メタクリル系共重合体を得た。このメタクリル系共重合体のトルエン溶液の不揮発分が20重量%になるように、さらにトルエン約200gを加えて希釈した。このようにして得られたメタクリル系共重合体溶液の25℃における粘度は5mm/sであり、比重は、0.91であった。
トルエン20g、テトラブチルチタネート0.3g、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン0.2g、上記で得たメタクリル系共重合体溶液(不揮発分20%)80gを混合して、コーティング剤組成物を調製した。これをステンレス鋼鈑に流し塗りした後、180℃で30分間加熱して透明な硬化皮膜を得た。得られた硬化皮膜の水に対する接触角は80度であり、撥水性が不十分であることが判明した。
【0029】
比較例2
撹拌機付きフラスコにトルエン70gを投入して、窒素ガス気流下で90℃まで昇温した。次いでこれに、メタクリル酸メチル21g(210ミリモル)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン21g(85ミリモル)、
式:CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
(式中、Meはメチル基である。)で示される参考例1で調製した3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン4.2g(10ミリモル)、および、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.05gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.007gをトルエン5gに溶解した溶液を加えて(2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルの合計量0.057g=0.3ミリモル)、90〜100℃で3時間混合してラジカル共重合させてメタクリル系共重合体を得た。次いでメタノール10gを加え、このメタクリル系共重合体溶液の不揮発分が20重量%になるようにトルエンで希釈した。得られたメタクリル系共重合体の重量平均分子量は10万を超えていた。このメタクリル系共重合体溶液(不揮発分20%)70gを室温で放置したところ3ケ月後にゲル化し、保存安定性が不十分であった。
【0030】
比較例3
撹拌機付きフラスコにトルエン70gを投入して、窒素ガス気流下で90℃まで昇温した。次いでこれに、メタクリル酸メチル21g(210ミリモル)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン21g(85ミリモル)、
式:CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
(式中、Meはメチル基である。)で示される参考例1で調製した3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン4.2g(10ミリモル)、および、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル3.8gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.2gをトルエン5gに溶解した溶液を加えて(2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルの合計量4.0g=20.8ミリモル)、90〜100℃で3時間混合してラジカル共重合させてメタクリル系共重合体を得た。得られたメタクリル系共重合体の重量平均分子量は2000であった。次いでメタノール10gを加え、このメタクリル系共重合体溶液の不揮発分が20重量%になるようにトルエンで希釈した。このメタクリル系共重合体溶液(不揮発分20%)70gを、トルエン30g、テトラブチルチタネート0.3gと混合して、コーティング剤組成物を調製した。これをステンレス鋼鈑に流し塗りした後、180℃で30分間加熱して硬化皮膜を得た。得られた硬化皮膜はヨリのある不均一な皮膜であり、塗工性が不十分であることが判明した。
【0031】
比較例4
撹拌機付きフラスコにトルエン70gを投入して、窒素ガス気流下で90℃まで昇温した。次いでこれに、メタクリル酸メチル21g(210ミリモル)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン21g(85ミリモル)、
式:CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
(式中、Meはメチル基である。)で示される参考例1で調製した3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン0.5g(1.2ミリモル)、および、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.18gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.02gをトルエン5gに溶解した溶液を加えて(2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルの合計量0.2g=1ミリモル)、90〜100℃で3時間混合してラジカル共重合させてメタクリル系共重合体を得た。得られたメタクリル系共重合体の重量平均分子量は22,000であった。次いでメタノール10gを加え、このメタクリル系共重合体溶液の不揮発分が20重量%になるようにトルエンで希釈し、テトラブチルチタネート0.3gを加えて、コーティング剤組成物を調製した。これをステンレス鋼板へ流し塗りした後、200℃で1時間硬化して、透明な硬化皮膜を得た。この硬化皮膜の水に対する接触角は80度であり、撥水性が不十分であることが判明した。
【0032】
比較例5
撹拌機付きフラスコにトルエン70gを投入して、窒素ガス気流下で90℃まで昇温した。次いでこれに、メタクリル酸メチル21g(210ミリモル)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン21g(85ミリモル)、
式:CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
(式中、Meはメチル基である。)で示される参考例1で調製した3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン41g(97ミリモル)、および、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.18gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.02gをトルエン5gに溶解した溶液を加えて(2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルの合計量0.2g=1ミリモル)、90〜100℃で3時間混合してラジカル共重合させてメタクリル系共重合体を得た。得られたメタクリル系共重合体の重量平均分子量は25,000であった。次いでメタノール10gを加え、このメタクリル系共重合体溶液の不揮発分が20重量%になるようにトルエンで希釈し、テトラブチルチタネート0.3gを加えて、コーティング剤組成物を調製した。これをステンレス鋼板へ流し塗りした後、200℃で1時間硬化して、透明な硬化皮膜を得た。この硬化皮膜の鉛筆硬度はBであり、皮膜強度が不足していることがわかった。日本スチールウール株式会社製ボンスタースチールウールNo.0000で10回擦ったところ、皮膜表面が白化することが判明した。
産業上の利用の可能性
【0033】
本発明のコーティング剤組成物は、硬化前は塗工性に優れ、速やかに硬化し、硬化後は撥水性、耐久性に優れ、各種基材への密着性に優れた高硬度の透明な硬化皮膜を形成するので、金属基材や無機基材等コーティング剤として有用であり、とりわけ、金属微粉末や金属酸化物微粉末のコーティング剤として好適に用いることができる。この他にも、建築物、土木建築物、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、電気製品機器、電子機器などで使用される基材のコーティング剤としても好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(A1)一般式(1):
CH=C(R)−COO−Q−SiR(OR3−n ・・・(1)
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Qは炭素原子数2〜6の二価脂肪族炭化水素基であり、Rは非置換もしくは置換の炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、Rは炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、nは0〜2の整数)で示されるシラン化合物 100重量部、
(A2)アクリル系化合物(但し、(A1)成分を除く)、ビニル系化合物及びスチレン系化合物から選ばれる1種又は2種以上のビニル重合性不飽和結合含有化合物
80〜250重量部、
(A3)一般式(2):
CH=C(R)−COO−Q−Si(OSiR ・・・(2)
(式中、RおよびQは前記と同じであり、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基)で示されるシロキシシラン化合物 10〜50重量部、
をラジカル共重合して得られた重量平均分子量3,000〜100,000のアクリル系共重合体 100重量部、
(B)縮合反応促進触媒 触媒量、
からなることを特徴とするコーティング剤組成物。
【請求項2】
さらに(C)有機溶剤を(A)成分を溶解するのに十分な量含有することを特徴とする請求項1に記載のコーティング剤組成物。
【請求項3】
さらに(D)アミノシランカップリング剤を(A)成分100重量部に対して0.1〜10重量部含有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のコーティング剤組成物。
【請求項4】
(D)成分が3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、および3−アニリノプロピルトリメトキシシランからなる群から選ばれてなることを特徴とする請求項3に記載のコーティング剤組成物。
【請求項5】
(A)成分が、(A1),(A2),(A3)各成分の合計量100モルに対して0.30〜0.99モルとなる量のアゾ化合物を用いてラジカル共重合したアクリル系共重合体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング剤組成物。
【請求項6】
(A2)成分がアルキルメタクリレートであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング剤組成物。
【請求項7】
硬化して鉛筆硬度4H以上の硬化皮膜を与えることを特徴とする請求項6に記載のコーティング剤組成物。
【請求項8】
(A1)成分が3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、および3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランからなる群から選ばれてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング剤組成物。
【請求項9】
(B)成分が有機スズ化合物、有機チタネート化合物、有機ジルコニウム化合物、および有機アルミニウム化合物からなる群から選ばれてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング剤組成物。

【国際公開番号】WO2005/000981
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【発行日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511128(P2005−511128)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009403
【国際出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】