説明

コーティング方法およびコーティング装置

【課題】本発明は、医療用インプラントの少なくとも一部分をコーティングするための方法および前記方法を用いて医療用インプラントをコーティングするための装置に関する。
【解決手段】本発明の課題は、コーティングされる医療用インプラントの表面を、少なくとも1種の製薬学的活性物質および/または骨成長促進物質を含む粉末と接触させ、この接触によりインプラント表面に粉末を運搬し、かつこの粉末の少なくとも一部分が接触後にコーティングされる表面に付着する方法、ならびに医療用インプラントと接触した際に医療用インプラント上に粉末が運搬しうる程度に、少なくとも1種の製薬学的活性物質および/または骨成長促進物質を含む粉末を含む装置により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用インプラント、好ましくは人工関節または関節固定器具の少なくとも一部分を塗装するための方法に関する。
【0002】
さらに本発明は、医療用インプラントの少なくとも一部分を、前記方法によって塗装するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
医療用インプラントの医薬製剤での被覆は、近年、益々注目されている。インプラント材料表面の抗菌的保護は、これに関するコーティング方法の中心的な適用例である。骨性統合改善目的のため、セメントレス医療用インプラントの表面適合性の改善は、もう一つの重要な適用例である。
【0004】
関節のエンドプロテーゼおよび骨接合材料のインプラント手術のいずれも、微生物汚染の一定のリスクを伴う。インプラント表面上の微生物性病原体の十分なコロニー形成は、術後の骨炎/骨髄炎の発症を招きうる。骨炎/骨髄炎は、患者にとって深刻な合併症である上に相当のコストを伴う。
【0005】
ゲンタマイシンでドープされたPMMA骨セメントは、セメント固定された関節のエンドプロテーゼを用いる臨床的使用において10年に亘り多くの成功をおさめてきた。骨セメント中に含まれる広範性の抗菌薬ゲンタマイシンは、骨セメント表面を効果的に細菌感染から保護する。
【0006】
セメントレスの関節のエンドプロテーゼおよび骨接合材料に関して、さらにインプラント表面の局所的抗菌的保護を獲得するための数多くの試みが提案されている。
【0007】
たとえば、水溶性に乏しい抗菌薬の塩の使用が、いくつかの文献に記載されている。たとえばEP 0623 349A1、EP 1470829A1、EP 1374923A2、DE 101 42 465 A1およびDE 44 04 018 A1をこの内容において引用することができる。前記の水溶性に乏しい塩は、体液の作用により、その中に含まれる抗菌薬を放出しながら溶解する。この薬剤の長期に亘る放出は有利である。しかしながら、前記の塩の手間のかかる製造が欠点である。
【0008】
代替的に、水溶性の抗菌薬の塩を使用することも可能である。これは、インプラント表面上に抗菌薬を固定することに関する問題を伴う。
【0009】
従来示されている塗料の多くは、好ましくは、工業的条件下でコーティングされたインプラントの製造を意図している。これは、前記インプラントの工業的コーティングが、大規模での使用に関連して2、3の薬剤のみを含むことができることを意味し、それによって工業的製造が十分に大きい流量により経済的であることを保証することができる。
【0010】
特に抗菌薬コーティングの場合には、増加する耐性菌の問題および多剤耐性病原菌、たとえばMRSAおよびMRSEの確実に増加する発現を考慮して、一段階または二段階の腐敗性関節エンドプロテーゼ置換術における再生されたプロテーゼのコーティングのために、特に近くの微生物に適合する抗菌薬または抗菌薬の組合せを使用することは重要であり、それによってインプラント表面の当初からの抗菌的保護を効果的に保証する。
【0011】
これは、医療用インプラントのコーティングのための方法が、かなり手間がかかるという欠点を有する。不確定な短期間の適用には適していない。したがって、種々のシナリオは、種々の患者の要求を満たすために、種々のコーティングされた医療用インプラントのストックを保管する必要がある。これは、高価なストックの保管を必要とし、かつ特別な場合のために一般的でない混合を妨げる。
【0012】
一般に、セメントレスの関節エンドプロテーゼはチタン合金から製造され、かつ通常は粗面化された(たとえば、サンドブラストによるもの)か、あるいは構造化され、かつ多孔質の表面を有し、それによって骨組織の統合を改善するものである。このようにして使用された合金は、保証された医療的安定性および保全性を提供する。この理由から、骨組織に対するインプラント表面の相溶性を改善する試みがなされた。ヒト骨組織の無機相は、カーボネートアパタイト/ヒドロキシルアパタイトによって提供される。したがって、医療用インプラント表面の相溶性を改善するための主な力点は、リン酸カルシウム層の形成である。
【0013】
広範囲の方法(熱射出法、電気化学的堆積法、ゾルゲル技術、イオンビームスパッタ法、レーザー切除)は、骨組織の接触部位(股関節、膝関節、肩関節のエンドプロテーゼ)における表面相溶性を改善するための試みにおいて使用されている。これまで、工業的規模において、プラズマスプレー法(De Groot ら:Plasma-sprayed coating of calcium phosphate. CRC Press, Boca Raton, Ann Arbor, Boston, 1990; De Grootら:Chemistry of calcium phosphate bioceramics. CRC Hand-book of bioactive ceramics, 2, 1996, 3-16: WO 2009/062671 A2)およびリン酸カルシウム層の電気化学的堆積法(BanおよびMaruno: Morphology and microstructure of electrochemically deposited calcium phosphates in a modified simulated body fluid. Biomaterials, 19, 1998, 1245-1253.: DE 4431862 A1; WO2009/147045 A1; CN 101485901 A; CN 101406711A; WO 2007/147246 A1; US 2006/134160 A1; WO 2004/ 098436 A2; WO 2004/024201 A2; EP 1264 606 A1; EP 0232 791 A2)のみが確立されている。刊行物US 2002/110541 A1、US 5807567 A、US2002/197315 A1、US6652887 B1、US 5756127 A およびUS 5614206 Aは、本質的にα−およびβ−リン酸カルシウムの混合物から成る骨置換材料を記載しており、かつ、医薬製剤の「薬物輸送」系としての使用のためにデザインされている。
【0014】
しかしながら、長期に亘る臨床的研究は、一般には長期に亘って安定であると考えられてきたプラズマスプレーされたリン酸カルシウム層が、その生物学的環境下において部分的に崩壊することを示した。これは、骨組織周囲との境界における相変異のみならず、さらにプラズマスプレー法が、リン酸カルシウム層の結晶質成分のほとんどのカプセル化および/または剥離を招き、かつそれによって妨害粒子を生じた。
【0015】
すべての電気化学的堆積法に共通するもう一つの欠点は、これまでは、関節のエンドプロテーゼに前記リン酸カルシウム層をコーティングすることを可能にするために、相当の設備および時間的労力が必要とされてきたことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】EP 0623 349A1
【特許文献2】EP 1470829A1
【特許文献3】EP 1374923A2
【特許文献4】DE 101 42 465 A1
【特許文献5】DE 44 04 018 A1
【特許文献6】WO 2009/062671 A2
【特許文献7】DE 4431862 A1
【特許文献8】WO2009/147045 A1
【特許文献9】CN 101485901 A
【特許文献10】CN 101406711A
【特許文献11】WO 2007/147246 A1
【特許文献12】US 2006/134160 A1
【特許文献13】WO 2004/ 098436 A2
【特許文献14】WO 2004/024201 A2
【特許文献15】EP 1264 606 A1
【特許文献16】EP 0232 791 A2
【特許文献17】US 2002/110541 A1
【特許文献18】US 5807567 A
【特許文献19】US2002/197315 A1
【特許文献20】US6652887 B1
【特許文献21】US 5756127 A
【特許文献22】US 5614206 A
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】De Groot ら:Plasma-sprayed coating of calcium phosphate. CRC Press, Boca Raton, Ann Arbor, Boston, 1990
【非特許文献2】De Grootら:Chemistry of calcium phosphate bioceramics. CRC Hand-book of bioactive ceramics, 2, 1996, 3-16
【非特許文献3】BanおよびMaruno: Morphology and microstructure of electrochemically deposited calcium phosphates in a modified simulated body fluid. Biomaterials, 19, 1998, 1245-1253
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の課題は、従来技術における前記欠点を解消するものである。特に、進行中の手術(ongoing surgery; OR)を妨害することなしに医療用プロテーゼをコーティングするために使用することができるといった目的のために、単純かつ簡単な方法および装置を提供すべきである。同一の方法および同一の装置を用いて、可能なかぎり多くの異なる医療用インプラントを塗布することを可能にすることが狙いである。さらに、この方法および装置は、医学的要求、特に患者に適した治療法に適用するように変更可能に使用することが望ましい。手術室において要求される清浄度は、考慮すべきもう一つの要因である。
【0019】
さらに本発明の課題は、可能な単純であり、かつ進行中の手術の間にORスタッフにより使用することができるコーティング方法を開発することであり、その際、最も少ないコストで、任意の製造手段から極めて異なるインプラントを医薬製剤でコーティングする。さらに本発明の課題は、可能な限り少ない労力で、OR条件下で、ORスタッフがインプラントのコーティングを可能にする簡単なコーティングを開発することである。さらにこの装置は、コーティング製造からの過剰量の材料がOR領域を汚染しえない可能な範囲でデザインされるべきである。もう一つの課題は、この装置が、特に、セメントレスの関節のエンドプロテーゼおよび骨接合材料のコーティングに適していることが望ましいことである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の課題は、コーティングされる表面を有する医療用インプラントを提供し、かつこのコーティングされる医療用インプラント表面を、少なくとも1種の製薬学的活性成分および/または1種の骨成長促進物質を含有する粉末と接触させ、それにより粉末が、接触を介して医療用インプラント表面に運搬され、かつ粉末の少なくとも一部分が、接触後にコーティングされる表面に付着することにより解決された。好ましくは、接触は、コーティングされる医療用インプラント表面を、少なくとも1種の製薬学的活性物質および/または1種の骨成長促進物質を含む粉末に含浸させるか、あるいは前記粉末上にプレスするように行い、それにより含浸またはプレスされる粉末を医療用インプラント表面に運搬し、かつコーティングされる表面をその後に粉末から引き抜くか、あるいは圧力を放出し、それにより粉末の少なくとも一部分がコーティングされる表面に付着する。
【0021】
本発明による方法は、医療用インプラントを挿入する前に実施する。したがって、当該方法は"ex vivo"で実施する。
【0022】
本発明によれば、製薬学的活性成分とは、製薬学的に有効な手段であるか、あるいは薬理学的効果を有する手段ならびに薬理学的効果をサポートするか、またはその他生体の自己治癒力(self-healing forces)をサポートする手段を意味するものとして理解することができる。この例は、抗菌薬、有機性防腐薬、銅塩、酸化銅、ガリウム塩、ストロンチウム塩、リチウム塩、銀塩、酸化銀、ビスホスホネート、成長因子、ステロイドホルモン、非ステロイドホルモン、止血剤、消炎薬、プラスミド、コスミド、線状DNA、およびこれらの組合せである。
【0023】
好ましい実施態様によれば、粉末との接触は、粉末への含浸または粉末上へのプレスを介して実施する。本発明によれば、含浸は、多量の粉末中に含浸する意味のみではないと理解されるべきである。用語「プレス」とは、本発明の範囲内において、たとえば、粉末を、コーティングされる医療用インプラントのように成形された表面に、粉末のまさに薄い層が提供される程度に配置することを意味する。医療用インプラントに対するプレスは、粉末の医療用インプラントへのほぼ完璧な運搬を導く。
【0024】
さらに本発明の範囲は、コーティングされるインプラントを装置に導入し、かつ、適切な場合には、この装置から反復的に引き抜くことを含む。
【0025】
さらに本発明は、セメントレスの股関節エンドプロテーゼ、肩関節エンドプロテーゼ、肘関節エンドプロテーゼ、骨髄内爪(marrow nails)および骨接合プレートから選択される、コーティングされる医療用インプラントを提供することができる。
【0026】
特に有利な改良点によれば、本発明は、コーティングされる医療用インプラント表面を、粉末と接触させる前に、好ましくは粉末中に含浸させるか、あるいは粉末上にプレスする前に液体と接触させ、好ましくは液体中に含浸させるか、あるいは液体で塗装または湿潤させることを提供することができる。粉末は、乾燥した医療用インプラントよりも液体で湿潤させた医療用インプラントに対してより良好に付着することができる。さらに液体は、製薬学的活性物質を含有することもできる。
【0027】
これに関連して、本発明の範囲はさらに、液体が抗菌薬の水性溶液、好ましくは、10.0〜88.0質量%の硫酸ゲンタマイシン含量を有する水性硫酸ゲンタマイシン溶液を含む液体を使用することを提供することができ、その際、特に好ましくは、75.0〜80.0質量%の硫酸ゲンタマイシン含量を有する硫酸ゲンタマイシン溶液を使用する。前記硫酸ゲンタマイシン溶液は、油性〜粘性のコンシステンシーを有し、かつ金属表面に対して極めて良好に付着する。
【0028】
これに関連して、本発明はさらに、通常の製薬学的安定化剤が、硫酸ゲンタマイシン溶液中に含まれることを提供することができる。これらは、耐久性を改善し、かつそれによって適用される液体の使用性能をも改善する。
【0029】
さらに本発明は、他のアミノグリコシド系抗菌薬溶液、たとえば硫酸トブラマイシン、硫酸アミカシン、硫酸ネチルマイシン、および硫酸シソマイシンの水性溶液を、液体または液体成分として使用することを提供することができる。さらに、バンコマイシン、ダルババンシン、ラモプラニン、ダプトマイシン、モキシフロキサシン、クリンダマイシン、およびリンコマイシンの水性溶液の使用も適している。
【0030】
さらに、本発明の範囲は、液体として異なる抗菌薬の溶液の組合せを使用することを提供することができる。例は、硫酸ゲンタマイシンと塩酸バンコマイシンとの2種の抗菌薬の組合せ、ダプトマイシンと硫酸ゲンタマイシンとの2種の抗菌薬の組合せ、および硫酸ゲンタマイシンとクリンダマイシンとの2種の抗菌薬の組合せ、ならびに硫酸ゲンタマイシンと塩酸バンコマイシンと塩酸クリンダマイシンとの3種の抗菌薬の組合せを含む。
【0031】
さらに本発明は、液体として使用すべき防腐薬溶液、特にクロロヘキシジンジグルコネート、オクテニジン二塩酸塩、およびポリヘキサニドの溶液を提供することができる。
【0032】
これに関連して、本発明による方法は、医療用インプラントが弾性変形可能な運搬手段によりさっと通過することを特徴とすることができ、その際、液体、好ましくは少なくとも1種の製薬学的活性物質を含む液体を、この運搬手段からコーティングされる医療用インプラントに運搬し、それと同時にこの運搬手段によりさっと通過する。弾性変形可能な運搬手段を用いて達成されるのは、運搬手段により適用された液体がさらに広範囲に拡げるよう不規則に成形された医療用インプラント上に塗布することができることである。運搬手段がさらに多孔質であることは好ましく、それによって、液体が運搬手段の孔中に貯蔵される。したがって、運搬手段は、粉末中に液体が滴り落ちることなしに、粉末上に配置することができる。これは、特に、粉末を覆うための膜との組合せにおいて有利である。
【0033】
本発明による方法のもう一つの改良点は、開口部を有する容器中に供給される粉末を提供できることであり、それによって、医療用インプラントは、開口部を介して導入されて、コーティングされる表面をコーティングする。
【0034】
これに関連して、本発明は、容器中に導入される医療用インプラントを提供することができ、その際、粉末と接触する前に、好ましくは粉末中に含浸されるか、あるいは粉末上にプレスされる前に、粉末を配置し、かつ粉末を医療用インプラントに運搬した後に容器から引き抜く。前記2つの手段によって、当該方法は異なる位置においても使用することが容易であり、それというのも、使用される装置の運搬が容易であるためである。
【0035】
さらに本発明は、医療用インプラントを膜を介して押し出すか、あるいは医療用インプラントと粉末が接触する前に膜を開放し、それによって、膜が粉末の少なくとも一部分を覆い、好ましくは、膜は容器中において粉末の全ての部分を覆う。この膜は、粉末がその使用前に汚染されるのを防ぐ。膜の穿孔は、保護膜をその使用直前にのみ開放することを可能にする。この目的のために、膜の構造は、膜の断片またはその他の部分が粉末中に入り込むものでもなければ、医療用インプラントと付着するものでもない程度であることが望まれる。
【0036】
本発明による方法のもう一つの改良点は、治療モデルに適合する粉末を提供することができることである。
【0037】
さらに本発明は、治療モデルに適合した抗菌薬または抗菌薬の混合物を、粉末中に導入することを提供する。これらの2つの手段は、それぞれの患者の実際の治療モデルを個人的に適合させることを可能にする。
【0038】
本発明のために特に好ましいのは、運搬された粉末の一部を拭き取ることを提供することであり、特に、医療用インプラントを容器から引き抜く際に、好ましくはこの目的のためにデザインされたワイパーで行う。これは、周囲環境、すなわち特にORエリアの粉末、および適切である場合には液体による汚染を回避するか、あるいは少なくとも減少させることができる。これは、殊に、抗菌薬の使用の際に有利であり、それというのも、ORエリアにおける耐性菌の発生を回避することができるためである。
【0039】
さらに本発明は、医療用インプラント表面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%がコーティングされていることを提供することができる。
【0040】
コーティングされた領域およびコーティングの完成度を明確にするために、本発明は、粉末を着色されたものであってよく、これによって、医療用インプラントのコーティングされた領域が色により同定することができる。
【0041】
これに関連して、本発明は、コーティングされた領域のコーティングの完成度を、前記着色によって試験することができる。
【0042】
さらに本発明は、コーティングされる医療用インプラント表面の完全なコーティングを得るためにしばしば要求される反復的方法を提供することができる。特に、液体の着色および前記着色によるコーティングの完成度の評価に関して、これは、本発明によれば、十分にコーティングされた医療用インプラントを生じさせるために有利である。
【0043】
本発明のもう一つの改良点は、医療用インプラントの完全なコーティングを得るために、空気流により粉末を巻き上げることを提供する。これに関連して、インプラントが挿入された容器を早期に閉じるか、および/または密閉することが有利であってもよい。これは、この目的のためにデザインされた蓋により実施することができる。
【0044】
さらに本発明は、インプラントを含む容器の簡単な振とうを提供することができる。
【0045】
さらに本発明の課題は、前記方法を用いて、医療用インプラントの少なくとも一部分をコーティングするための装置によって解決され、その際、前記装置は、少なくとも1種の製薬学的活性物質および/または1種の骨成長促進物質を含有する粉末を、医療用インプラントと接触した場合、好ましくは医療用インプラントを含浸またはプレスした場合に、粉末を医療用インプラントに運搬することができるように含む。
【0046】
これに関連して、本発明は、医療用インプラントを出し入れするための開口部を含む容器中に配置すべき粉末を提供することができる。
【0047】
さらに本発明は、プルオフ型の(pull-off)蓋により閉じられる開口部を提供することができる。これは、容器内部の汚染を回避することを可能にする。
【0048】
本発明の特に有利な改良点は、好ましくは開口部領域中、特に開口部と粉末との間に配置されたワイパーを含む装置を提供することができる。
【0049】
これに関連して、本発明は、円板形状であり、かつ円板の上部と下部をつなぐ少なくとも1個の刻み目(notch)を含むワイパーを提供することができる。このインプラントは、前記少なくとも1個の刻み目を介して装置中に導入することができる。特に、ワイパー中に形成された放射上の刻み目を有することも有利である。これは、コーティングを完了した後に、インプラントの全外周を拭き取ることを可能にし、これによって溶液または懸濁液の過剰量をコーティングされたインプラント表面から除去することを可能にする。さらに、インプラントを運搬手段から引き抜く際に生じうる粉末および/または液体の液滴または粒子の放出を効率よく防止することが可能である。これにより、手術中の汚染が大幅に回避される。
【0050】
さらに本発明は、ワイパーを円錐体の外被部分(envelop)または半球外面のような形状とすることもでき、その際、円錐体または半球の先端部を粉末に向けられ、かつコーンまたは半球は好ましくは、ワイパー上部と下部をつなぐ少なくとも1個の刻み目を含む。
【0051】
さらに本発明は、液体を医療用インプラントに運搬するのに使用することができる粉末上に配置すべき運搬手段を提供することができ、その際、液体は運搬手段中に含まれる。
【0052】
これに関連して本発明は、運搬手段が孔を含むように、かつこの運搬手段の孔が液体を、好ましくは溶液および/または懸濁液の形で含むように提供することができ、その際、液体は、好ましくは、第二の製薬学的活性物質を含有する。
【0053】
本発明の改良点は、運搬手段が少なくとも1個のローラーを、少なくとも1個の回転可能な球および/または少なくとも1個のスポンジを含むように提供し、この場合、これらは、液体を、コーティングされる医療用インプラント表面に運搬するために使用することができる。これは、使用される液体の量を減少させ、かつ液体の主要量と粉末との不注意による混合を防止することを可能にする。
【0054】
特に好ましい改良点によれば、本発明は、調製すべきコーティングが製薬学的に活性の用量を含む程度に、粉末、および好ましくはさらに液体が、抗菌薬および/または有機性防腐薬を含有するよう提供する。
【0055】
さらに本発明は、真空源と接続することができ、かつ好ましくは、ワイパーと粉末との間に配置することができる真空接続部を含む装置を提供することができる。さらにこれは、適切である場合には、粉末の任意の残余物および液滴の吸引により、医薬製剤を介する手術室の汚染が生じないよう保証することができる。
【0056】
本発明によれば、液体を適用するための運搬装置を有する本発明による装置は、容器および/またはワイパーが好ましくは疎水性材料から製造され、かつ運搬装置が好ましくは親水性材料から製造されるように提供することができる。好ましくは、液体に関して医薬製剤の水性溶液および/または懸濁液を使用する。運搬手段が、親水性材料、水性溶液および/または懸濁液から製造される場合には、好ましくは、容器およびワイパーの疎水性表面上ではなくむしろ多孔質の親水性材料中に配置する。この挙動は、水性溶液および/または懸濁液で予め満たされたコーティング装置が、前記水性溶液または懸濁液の最も少ない量であってもなんとか運転でき、かつなおも確実なコーティングを可能にする。
【0057】
さらに本発明は、生体適合性のエラストマー、熱可塑性材料および/または金属箔であるか、あるいは金属エラストマーの組合せまたは金属プラスチックの組合せから製造される複合材料から製造されるワイパーを提供することができる。
【0058】
さらに本発明は、容器の中心に対して放射状であるよう配置されるブリストル(bristles)を含有する環としてのワイパーを提供することができる。前記ブリストルは、プラスチック材料から製造することができ、それによって、ブリストルの機械的安定性および取り付けは、可能である場合には、前記ブリストルが分解しないかまたは脱着しない程度の十分な強度である。
【0059】
改良点によれば、本発明は、ワイパーを、弾性の接続手段により容器に対して接続される回転可能または回転不能なローラーおよび/または球の形で提供する。前記構造は、過剰量の粉末、および適切である場合には過剰量の液体を、特に簡単に拭き取ることを可能にする。
【0060】
本発明によれば、装置は、ORスタッフが簡単に装置を開放する必要がある程度に、薬剤の粉末、溶液および/または懸濁液で予め充填することができ、かつこれによって、瞬時にインプラントのコーティングを実施することができる。これに関連して、前記コーティングのための消費時間は、数秒の範囲であることが有利であり、かつこれによって貴重なOR時間を削減することができる。
【0061】
代替的に、粉末での充填および/または薬剤の溶液または懸濁液の注入により、まさにOR中で、1種またはそれ以上の医薬製剤で予め充填されていない装置を提供することも適している。抗菌薬コーティングの場合には、これは、存在する耐性の状態に基づいて抗菌薬および抗菌薬の組合せの適切な選択を可能にし、かつこれによって、コーティングが抗菌薬感受性のパターンに適合することを保証する。
【0062】
さらに、コーティングが、手術中で時間の遅延なしに実施することができる程度に、手術前に、各病院の薬局で、予めの充填のない装置を、薬剤の適した溶液または懸濁液で充填することも適している。
【0063】
使用することができる製薬学的活性物質の例は、抗菌薬、有機性防腐薬、銅塩、酸化銅、ガリウム塩、ストロンチウム塩、リチウム塩、銀塩、酸化銀、ビスホスホネート、成長因子、ステロイドホルモン、非ステロイドホルモン、止血剤、消炎薬、プラスミド、コスミド、線状DNA、およびこれらの組合せを含む。
【0064】
本発明によれば、抗菌薬の水性溶液、好ましくは10.0〜88.0質量%の硫酸ゲンタマイシンを有する硫酸ゲンタマイシン水性溶液を液体として提供することができ、その際、75.0〜80.0質量%の硫酸ゲンタマイシン含量を有する硫酸ゲンタマイシン溶液は特に好ましい。前記硫酸ゲンタマイシン溶液は、油性−粘性のコンシステンシーを有し、かつ金属表面に対して極めて良好に付着する。さらに、通常の製薬学的安定化剤が、硫酸ゲンタマイシン溶液中に存在していてもよい。
【0065】
さらに本発明の範囲は、他のアミノグリコシド系抗菌薬、たとえば硫酸トブラマイシン、硫酸アミカシン、硫酸ネチルミシン、および硫酸シソマイシンの水性溶液の使用を含む。さらに、バンコマイシン、ダルババンシン、ラモプラニン、ダプトマイシン、モキシフロキサシン、クリンダマイシン、および/またはリンコマイシンの水性溶液の使用も適している。種々の抗菌薬の溶液の組合せの使用は、さらに本発明の範囲内に含まれる。例は、硫酸ゲンタマイシンと塩酸バンコマイシンとの2種の抗菌薬の組合せ、ダプトマイシンと硫酸ゲンタマイシンのとの2種の抗菌薬の組合せ、および硫酸ゲンタマイシンとクリンダマイシンとの2種の抗菌薬の組合せ、ならびに硫酸ゲンタマイシンと塩酸バンコマイシンと塩酸クリンダマイシンとの3種の抗菌薬の組合せを含む。さらに、抗菌薬の溶液の代わりに防腐薬の溶液を使用することも適している。例は、クロロヘキシジングルコネート、オクテニジン二塩酸塩またはポリヘキサニドの溶液を含む。
【0066】
さらに本発明の範囲は、溶剤として、有機溶剤、有機溶剤の組合せ、または有機溶剤と水との組合せを含む、抗菌薬および防腐薬の溶液の使用も含む。
【0067】
これは、たとえば、水溶性に乏しい抗菌薬の塩、たとえばラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、およびステアリン酸塩も同様に使用することを可能にする。さらに、水溶性に乏しい抗菌薬または抗菌薬の塩を、水性懸濁液の形で使用することもできる。
【0068】
本発明によれば、骨成長促進物質としての粉末は、β−リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウム、非晶質リン酸カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、ヒドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、硫酸カルシウム半水塩、硫酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウム無水物、抗菌薬粉末、有機性防腐薬、銅塩、酸化銅、ガリウム塩、ストロンチウム塩、リチウム塩、銀塩、酸化銀、ビスホスホネート、成長因子、ステロイドホルモン、非ステロイドホルモン、止血剤、消炎薬、プラスミド、コスミド、線状DNA、およびこれらの混合物から成る群から選択された、少なくとも1種の化合物を含む。さらにこの粉末は、ワイパーからインプラント表面に運搬される医薬製剤と、水溶性に乏しい錯体または塩を形成する錯化剤または塩を含有する。したがって粉末は、たとえばゲンタマイシンまたは他のカチオン性抗菌薬と、水溶性に乏しい錯体を形成するテイコプラニンを含有していてもよい。たとえば、この粉末は、脂肪酸または硫酸アルキルのN−メチルグルコアンモニウム塩を含有することも適しており、この場合、この塩は、相互の塩交換により、カチオン性抗菌薬の水性溶液に暴露する際に、抗菌薬の水溶性に乏しい脂肪酸塩または硫酸アルキルを形成することができるものである。この手段は、医薬製剤、特に抗菌剤の水溶性に乏しい錯体または塩を、インプラント表面に塗布することを可能にする。
【0069】
反応性無機粉末、たとえば、非晶質のリン酸四カルシウムおよび硫酸カルシウム半水塩から製造されたリン酸カルシウムの使用は特に有利であり、これは、水の存在下で硬化するものである。したがって、安定なコーティングを形成するのに適している。たとえば、硫酸カルシウム半水塩を粉末として、核化剤としての少量の硫酸カルシウム二水和物、および促進剤としての硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムまたは硫酸カリウムを硫酸カルシウム半水塩に添加することによって、ほんの数秒内での硬化を達成することができる。さらに、β−リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウム、およびリン酸四カルシウムの使用もこの場合、水性の酸、特にリンゴ酸、酒石酸、およびクエン酸の水性溶液の影響に暴露する際には、ほんの数秒内で硬化するので有利である。
【0070】
さらに本発明の範囲は、薬剤または医薬品としての装置の提供も含む。
【0071】
本発明による装置と医療用インプラントとの組合せも同様に提供することができる。前記組合せは、この装置およびインプラントにより形成され、それによって、前記組合せは0.1秒最小運転寿命を有する。この組合せは、コーティングプロセス中で生じる。
【0072】
本発明は、医療用インプラントのコーティングのために使用される粉末が、インプラントを粉末中に簡単に含浸することにより、その使用直前であっても、医療用インプラントに適用することができるという驚異的な発見に基づくものである。したがって簡単な方法および装置は、同様にORエリア中での使用適性を保証する。
【0073】
この研究は、電気化学的方法により金属ベースの塊に塗布された、十分に分解可能なバイオアクティブ層の高い効率を実証するものである。動物試験および臨床試験の分析は、高い溶解性を有するリン酸カルシウム層の迅速かつ完全な分解にもかかわらず、インプラント表面における確実な骨性統合挙動を実証する。
【0074】
したがって、迅速な溶解可能なリン酸カルシウム層は、良好な臨床的結果を導きうる。したがって、インプラント表面上での長期安定性を備えたコーティングは要求されない。
【0075】
当初の抗菌的保護に関して、インプラント表面で1種またはそれ以上の抗菌薬の十分に高い濃度を24〜72時間に亘って保つことは十分である。したがって、医療用インプラントの十分な一時的な局所的抗菌的保護は、簡単な水溶性抗菌薬を液体中に局所的に導入する際であっても獲得することができる。
【0076】
微細な粉末は、電気的干渉の結果として、純粋な金属性のインプラントであってさえもわずかな程度に付着する。粉末中への含浸後に医療用インプラント上に残存するダスト層は、挿入された医療用インプラントの領域中で、骨基質の成長の改善を獲得するのにすでに十分であってもよい。粉末のより厚い層は、液体での医療用インプラントの最初のコーティングにより製造することができる。有利には、コーティングのために使用される液体はさらに、液体に含まれる抗菌薬または他の水溶性の製薬学的活性物質の医療用インプラントへの塗布に良好に適している。このようにして製造されたコーティングは、多数の異なる物質を含有することができる。前記物質は、インプラントの挿入直前に塗布するので、一定の時間を超えて互いに干渉しあうことで長期に亘っては粉末または液体と容易には混和しない物質であっても、粉末および液体と混合することができる。
【0077】
したがって、医療用インプラントのコーティングはむしろその製造中よりもより簡単であり、さらにその挿入直前にもコーティングすることができる。これは同様に、かなり短時間で作用するコーティングの使用を可能にする。
【0078】
本発明は、以下2つの概略図において例証することができるが、これは本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明による装置の断面図
【図2】本発明による装置の透視図
【0080】
図1は、本発明による装置1の断面を概略的に示す。装置1は、容器4をその上部が開放されたタンクの形で含む。容器4の側壁は円筒状であり、かつやや肉厚である。ワイパー6は容器4内部で、開口部すぐ下の開口領域に配置され、かつ開口部を閉じる。
【0081】
容器4の床および側壁およびワイパー6は疎水性材料から製造されるか、あるいは疎水性の層でコーティングされている。ワイパー6の中心から、ワイパー6は8つの方向に切り目(slitte)または刻み目をいれる。
【0082】
8個の切り目/刻み目(示していない)は、容器4の側壁には全く到達しておらず、ワイパー6を介して医療用インプラントの導入が可能であることを意味する。このようにしてワイパー6は、医療用インプラントを出し入れする際にこれを拭き取る8個の軟質のセグメントを有し、これは、前記セグメントがインプラント表面上をさっと通過することを意味する。これは、ワイパー6が医療用インプラントのほぼ全表面をさっと通過し、したがって特に引き抜く場合には医療用インプラントを拭き取る。
【0083】
同様に切り目が入れられた運搬手段8は、容器4内部に配置される。運搬手段8は、軟質の多孔質材料、たとえばスポンジから製造される。運搬手段8は、抗菌薬を含有する水性溶液で飽和される。この材料は親水性である。これは、水性液体を吸い上げることができることを保証する。容器4およびワイパー6が疎水特性を有することにより、水性液体は運搬手段8中に配置される。
【0084】
ワイパー6は、容器4内部の開口部領域中に配置されたブラケットリング10により支持される。同様に、運搬手段8は、第2のブラケットリング12により支持される。過剰量の水性液体を取り上げることが可能な受け溝は、第2のブラケットリング12中に提供することができる。これは、圧力が運搬手段8に適用される場合、すなわち、運搬手段8が絞り出される場合には、運搬手段8中に含まれる液体が、容器4中の運搬手段8よりも下方の領域中に流れることを防止する。その後に、ブラケットリング12中に保持される液体の一部分を、運搬手段8をほぐすことにより再度吸い上げることができ、かつそれによって次の塗布が可能になる。
【0085】
膜14は、容器4中の運搬手段8の下方に配置され、かつ第3のブラケットリング16により、容器4の床と平行に取り付ける。膜14は、外部からの汚染および運搬手段8中に含まれる液体の滴が膜14の下の領域中に浸透することができない程度に密閉するように容器4を閉じる。製薬学的活性物質または骨成長促進物質を含有する粉末18は、容器4中の膜14下方に含まれる。骨成長促進物質は、たとえば硫酸カルシウム半水塩、硫酸カルシウム二水和物および硫酸アンモニウムからなる混合物であってもよいか、あるいはリン酸カルシウムであってもよい。これに関連して、粉末18の粒径は、コーティングすべきインプラントを効果的にコーティングし、かつ生体における製薬学的活性物質または骨成長促進物質の使用適性を保証するために、80μm未満であってもよい。
【0086】
示された装置1は、本発明による方法を実施するために使用することができる。運搬手段8を、少なくとも1種の使用される製薬学的活性物質を含有する水性溶液で浸漬して、医療用インプラントをコーティングする。運搬手段8は、接続部(示していない)を介して液体で浸漬することができる。代替的に、運搬手段8を、ワイパー6により作業されるシリンジを用いて充填することができる。
【0087】
医療用インプラント(示していない)を、ワイパー6を介して運搬手段8と接するように押し込む。医療用インプラントを介して運搬手段8に及ぶ圧力によって、医療用インプラントは、この目的のためにデザインされた割れ目を介して運搬手段8に押し当てられるのみならず、さらに運搬手段8の孔中に含まれる液体が運搬手段8から押出され、かつ医療用インプラント表面に塗布される。
【0088】
引き続いて、液体でコーティングされた医療用インプラントは、粉末18を外部の影響から保護する、その下の膜16を穿孔する。その後に、この医療用インプラントを、粉末18中に含浸させる。医療用インプラント表面上の液体フィルムは、粉末18とインプラント表面との良好な付着を生じさせる。
【0089】
医療用インプラント表面を粉末18で被覆するやいなや、この医療用インプラントを容器4から引き出す。医療用インプラントのコーティングした表面を、このプロセスにおいて運搬手段8およびワイパー6を通過させて引き出す。このようにして過剰量の粉末18および過剰量の液体を、医療用インプラント表面から拭き取る。容器4から引き抜かれた医療用インプラントをその後にコーティングするが、しかしながらもはやしたたり落ちることはなく、かつダストを放出することはない。さらに、コーンの外被として提供され、かつその先端部がワイパー6の方向に示す運搬手段8の勾配は、液体が飛び散るのを防ぐ。これらの手段は、液体および粉末18による周囲環境の汚染を防止する。粉末18および液体でコーティングされた医療用インプラントはその後に、手術での使用に提供される。
【0090】
コーティング装置1は、ポリプロピレンから製造され、25cmの高さおよび6cmの直径を有する。さらにワイパー6は、ポリプロピレンから成る。運搬手段8は、ディスク形状のエラストマースポンジ(ポリウレタンスポンジ)であり、かつ膜14は、アルミニウムコンパウンドフィルムから製造される。ワイパー16のブラケットリング10、12、16、運搬手段8、および膜14はそれぞれ、ポリプロピレンから製造される。ポリプロピレンリング10、12、16は、プレス嵌めにより、容器4の内部領域にプレスされる。その使用前に、容器4の開口部を閉じるアルミニウムコンパウンドフィルム(示していない)により、微生物の侵入を防ぐよう閉じる。
【0091】
図2は、本発明による方法のための、本発明による第2の装置21の透視図を示す。この装置21は、容器24、ならびに容器24をその中間部分の円形の開口部を除いてその上部においてほぼ完全に閉じるワイパー26を含む。軟質のワイパー26は、6個の切り目27または刻み目27を有し、これは、ワイパー26の上部と容器24の内部に面したワイパー26の下部とを、医療用インプラント(示されていない)が、この状態で折り重なる切り目27に沿ってワイパー26を介して容器24の内部に導入できる程度につなぐものである。
【0092】
容器24の内部に粉末が配置され(示されていない)、容器24中に挿入される医療用インプラントを粉末中に含浸するか、あるいは粉末上でプレスすることができる。容器24中の粉末の汚染を防止するために、粉末は、容器24の内部に配置され、かつ医療用インプラントにより穿孔される膜(示されていない)により覆うことができる。ワイパー26は、医療用インプラントが容器24から引き抜かれる場合に、医療用インプラント表面から過剰量の粉末を拭き取ることを保証する。
【0093】
本発明によれば、通常のツバイミューラー型(Zweymueller)股関節エンドプロテーゼをステム遠位に対して、粉末および液体、あるいは粉末のみで充填された装置1、21中に簡単に挿入することができ、かつその後、再度瞬時に引き抜くことができる。このようにして、ツバイミューラー型股関節エンドプロテーゼは粉末コーティングで加工され、かつ適切である場合には、さらにステム表面で液体フィルムで加工される。粉末および液体の双方を使用する場合には、ツバイミューラー型股関節エンドプロテーゼは、ステム表面で最大30秒以内に硬化し、表面に対して付着するホワイトコーティングを有する。このようにして股関節エンドプロテーゼは手術中に要時調製される。
【実施例】
【0094】
本発明による方法のための粉末および液体の保護の例、ならびに本発明による装置のもう一つの例は、以下のようにして例証される。
【0095】
例1:本発明による装置:
膜により閉じられる容器を、150gの硫酸カルシウム半水塩(ふるい画分<64μm)、15.0gの硫酸カルシウム二水和物(ふるい画分<64μm)および1.5gの硫酸アンモニウム(ふるい画分<64μm)の粉末混合物で充填する。
【0096】
例2:本発明による装置:
例1からの容器を、100gの硫酸カルシウム半水塩(ふるい画分<64μm)、50.0gの炭酸カルシウム(ふるい画分<64μm)、15.0gの硫酸カルシウム二水和物(ふるい画分<64μm)および1.5gの硫酸アンモニウムからなる粉末混合物で充填する。
【0097】
例3:本発明による装置:
例1からの容器を、150gのβ−リン酸三カルシウム(ふるい画分<64μm)で充填する。
【0098】
例4:本発明による装置:
例1からの容器を、150gのα−リン酸三カルシウム(ふるい画分<64μm)で充填する。
【0099】
例5:本発明による装置:
例1からの容器を、150gのα−リン酸四カルシウム(ふるい画分<64μm)で充填する。
【0100】
例6:硫酸ゲンタマイシンを含有するコーティング溶液の製造:
全部で16.0gの硫酸ゲンタマイシン(Fujian Fukang Ltd.)を、4.0mlの滅菌されたパイロジェンフリー水と一緒に室温で混合した。マグネットステーラーを用いて24時間に亘って室温での攪拌後に、油性−粘性の黄みがかった溶液が形成された。このようにして医療用インプラントをコーティングするための液体として、硫酸ゲンタマイシンを含有するコーティング溶液が得られた。
【0101】
例7:硫酸ゲンタマイシンおよび塩酸クリンダマイシンから成る2成分の組合せを含有するコーティング溶液の製造:
全部で12.0gの硫酸ゲンタマイシン(Fujian Fukang Ltd.)を、4.0mlの塩酸クリンダマイシン(Sigma-Aldrich)および4.0mlの滅菌されたパイロジェンフリー水と一緒に室温で混合した。室温で24時間に亘るマグネットステーラーを用いての攪拌後に、油性−粘性の黄みがかった溶液が形成された。
【0102】
例8:硫酸ゲンタマイシン、塩酸クリンダマイシン、および塩酸バンコマイシンとの3成分の組合せを含有するコーティング溶液の製造:
全部で4.0gの硫酸ゲンタマイシン(Fujian Fukang Ltd.)、4.0gの塩酸クリンダマイシン(Sigma-Aldrich)、および4.0gの塩酸バンコマイシン(Sigma-Aldrich)を、8.0mlの滅菌されたパイロジェンフリー水と一緒に、室温で混合した。マグネットステーラーを用いての24時間に亘って室温での攪拌後に、粘性の黄みがかった溶液が形成された。
【0103】
例9:硫酸ゲンタマイシンおよびリンゴ酸含有コーティング溶液の製造:
全部で100mgのリンゴ酸および16.0gの硫酸ゲンタマイシン(Fujian Fukang Ltd.)を、4.0mlの滅菌されたパイロジェンフリー水と一緒に室温で混合した。マグネットステーラーを用いて24時間に亘って室温で攪拌した後に、油性−粘性の黄みがかった溶液が形成された。
【0104】
例10:硫酸ゲンタマイシンおよびクエン酸を含有するコーティング溶液の製造:
全部で100mgのクエン酸および16.0gの硫酸ゲンタマイシン(Fujian Fukang Ltd.)を、4.0mlの滅菌されたパイロジェンフリー水と一緒に室温で混合した。マグネットステーラーを用いて24時間に亘って室温で攪拌した後に、油性−粘性の黄みがかった溶液が形成された。
【0105】
例11−15:骨成長促進物質を含有する粉末ならびに製薬学的活性物質を含有する運搬手段を含む、本発明による装置の製造:
例1からの容器は、当初から、弾性変形可能な運搬手段を備えていた。その後に、常用の10mlのプラスチックシリンジを使用して、例6〜10のコーティング溶液をそれぞれ5mlまで引き抜き、かつこの充填されたプラスチックシリングを使用して、相当する薬剤の溶液4mlを、装置の多孔質の運搬手段上に噴霧した。このようにして薬剤溶液を、多孔質の運搬手段を介して吸い上げた。
【0106】
発明の詳細な説明および特許請求の範囲、図面および実施例において開示された発明の特徴は、単独および任意の組合せの双方で、本発明の種々の実施態様を具現化するために本質的なものであってもよい。
【符号の説明】
【0107】
1、12 装置、 4、24 容器、 6、26 ワイパー、 8 運搬手段、 10、12、16、30 ブラケットリング、 14 膜、 18 粉末、 27 切り目/刻み目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用インプラントの少なくとも一部分をコーティングするための方法において、コーティングされる表面を有する医療用インプラントを提供し、かつこのコーティングされる医療用インプラント表面を、少なくとも1種の製薬学的活性物質および/または1種の骨成長促進物質を含む粉末と接触させ、この粉末は、接触を介して医療用インプラント表面に運搬され、かつ、接触後にこの粉末の少なくとも一部分がコーティングされる表面に付着し、この際、この粉末は、開口部を有する容器中に供給されており、医療用インプラントをこの開口部を介して導入することで、コーティングすべき表面がコーティングされ、かつ、この医療用インプラントを、粉末との接触前に粉末が配置された容器中に導入し、かつ、医療用インプラントへの粉末の運搬後にこの容器から引き抜くことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
コーティングされる医療用インプラント表面を、粉末との接触前に液体と接触させ、好ましくは液体中に含浸するか、あるいは液体で塗装または湿潤させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
医療用インプラントを、弾性変形可能な運搬手段上を通過させることで、液体、好ましくは少なくとも1種の製薬学的活性物質を含有する液体が、この運搬手段上を通過する間に、運搬手段からコーティングされる医療用インプラント表面に運搬される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
医療用インプラントを膜を介して押し通すか、あるいは膜を医療用インプラントと粉末との接触前に開放し、この際、この膜は、粉末の少なくとも一部分を覆い、好ましくはこの膜は、粉末を容器中に密閉している、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
運搬された粉末の一部分が、特に医療用インプラントを容器から引き抜く際に、好ましくはこの目的のためにデザインされたワイパーで拭き取られる、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
医療用インプラント表面の少なくとも50%、好ましくは80%、特に好ましくは少なくとも90%がコーティングされている、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
粉末が、空気流により巻き上げられることで、医療用インプラントの完全なコーティングを獲得する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法により、医療用インプラントの少なくとも一部分をコーティングするための装置(1,21)において、この装置(1,21)が、少なくとも1種の製薬学的活性物質および/または骨成長促進物質を含有する粉末(18)を、医療用インプラントとの接触により医療用インプラントに運搬できるように含み、この際、この粉末(18)は、医療用インプラントを出し入れするための開口部を含む容器(2,24)中に配置されていることを特徴とする、前記装置。
【請求項9】
開口部が、プルオフ型の蓋により閉じられている、請求項8に記載の装置(1,21)。
【請求項10】
装置(1,21)が、好ましくは開口部領域中、特に開口部と粉末(18)との間に配置されたワイパー(6,26)を含む、請求項8または9に記載の装置(1,21)。
【請求項11】
ワイパー(6,26)が円板形状であり、かつこの円板の上部と下部をつなぐ少なくとも1個の刻み目(27)を含む、請求項10に記載の装置(1,21)。
【請求項12】
ワイパー(6,26)が円錐体の外被部分のような形状(6)であるか、あるいは半球外面のような形状であり、この際、円錐体または半球の先端部が粉末(18)に向けられており、かつ、好ましくはこの円錐体または半球は、ワイパー(6,26)の上部と下部をつなぐ少なくとも1個の刻み目(27)を含む、請求項10に記載の装置(1,21)。
【請求項13】
運搬手段(8)が粉末(18)上方に配置されており、かつ医療用インプラントに対して液体を運搬するために使用することができ、この際、この液体は、運搬手段(8)中に含まれている、請求項8から12までのいずれか1項に記載の装置(1,12)。
【請求項14】
運搬手段(8)が孔を含み、かつこの運搬手段(8)の孔が液体を、好ましくは溶液および/または懸濁液の形で含み、この際、この液体は、好ましくは第2の製薬学的活性物質を含んでいる、請求項13に記載の装置(1,12)。
【請求項15】
骨成長促進物質が、リン酸カルシウム粉末、特に好ましくはα−リン酸カルシウムとβ−リン酸カルシウムとの混合物を含む、請求項8から14までのいずれか1項に記載の装置(1,12)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−130708(P2012−130708A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−281619(P2011−281619)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【出願人】(508316210)ヘレーウス メディカル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (21)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Medical GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp−Reis−Str. 8/13, D−61273 Wehrheim, Germany
【Fターム(参考)】