説明

コーティング用組成物

【課題】 特定の分子量を有するオルガノシロキサンオリゴマーを含有し、塗膜耐久性、特に耐クラック性に優れた、オルガノシラン系コーティング組成物およびこのコーティング組成物が充填されたエアゾール缶を得る
【解決手段】 (a)下記式(1)
Si(OR4−n (1)
(式中、Rは、炭素数1〜12の有機基を示し、2個以上存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよい。Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示す。nは0〜3の整数である。)
で表される少なくとも1種のオルガノシラン、該オルガノシランの加水分解物および該オルガノシランの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物
ならびに
(b)−(RO)−(R′O)−R″(式中、RおよびR′は、同一または異なり、炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R″は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示し、pおよびqは、p+qの値が2〜50となる数である)で表される基およびエポキシ基を有する重量平均分子量が300〜500,000ポリシロキサン
を含むことを特徴とするコーティング用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング組成物に関し、さらに詳しくは、特定の分子量を有するオルガノシロキサンオリゴマーを含有し、塗膜耐久性、特に耐クラック性に優れた、オルガノシラン系コーティング組成物およびこのコーティング組成物が充填されたエアゾール缶に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、耐候性、耐汚染性、耐薬品性に優れ、しかも硬度の高い塗膜を形成させることのできるコーティング組成物が求められており、さらに今後は汎用性の高いものが求められる。これまでには、シリル基含有ビニル系樹脂とオルガノシラン化合物からなる組成物として、特開平01−69673号公報や特開平01−69674号公報があるが、いずれも、基材が限定されている。また、特開平04−108172号公報や特開平04−117473号公報などがあるが、いずれも、対象基材は広いが、具体的な塗装仕様については述べられていない。
【0003】
一方、オルガノシラン系コーティング材は、耐候(光)性、耐汚染性などに優れたメンテナンスフリーのコーティング材として技術開発が進められている。このようなオルガノシラン系コーティング材に対する要求性能はますます厳しくなっており、近年では、塗膜の外観、密着性、耐候性、耐熱性、耐アルカリ性、耐有機薬品性、耐湿性、耐(温)水性、耐絶縁性、耐摩耗性、耐汚染性などに優れ、硬度の高い塗膜を形成することのできるコーティング材が求められている。
【0004】
他方、オルガノシラン系コーティング材、特にゾル−ゲル法で作製されたコーティング材により得られた塗膜は、その縮合反応時の内部応力や硬化収縮により、初期あるいは経時的にクラックが発生しやすいことが大きな課題であった。
【0005】
特に、例えば屋外建材のシーリング材やパテ材のように、周囲の気温や湿度により伸び縮みしやすい箇所に使用する場合には、塗膜のマイクロクラックの経時的な発生が避けられず、解決策が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−286610
【特許文献2】特開2001−192616
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の技術的課題を背景になされたものであり、保存安定性に優れ、かつ密着性、耐候性、耐アルカリ性、耐有機薬品性、耐湿性、耐(温)水性、耐汚染性にも優れ、しかも周囲の環境下で伸縮しやすい基材上でも、マイクロクラックの発生しない塗膜を形成できるコーティング組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、下記コーティング組成物およびエアゾール缶が提供されて、本発明の目的が達成される。
[1]
(a)下記式(1)
R1nSi(OR2)4−n (1)
(式中、R1は、炭素数1〜12の有機基を示し、2個以上存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよい。R2は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示す。nは0〜3の整数である。)
で表される少なくとも1種のオルガノシラン、該オルガノシランの加水分解物および該オルガノシランの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物
ならびに
(b)−(RO)p−(R′O)q−R″(式中、RおよびR′は、同一または異なり、炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R″は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示し、pおよびqは、p+qの値が2〜50となる数である)で表される基およびエポキシ基を有する重量平均分子量が300〜500,000ポリシロキサン
を含むことを特徴とするコーティング用組成物。
【0009】
[2]
さらに(c)加水分解性基および/または水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を含有するビニル系重合体を含有する[1]記載のコーティング組成物。
[3]
さらに(d)数平均粒径0.001〜10μmのシリカ粒子を含有する[1]または[2]記載のコーティング組成物。
[4]
[1]〜[3]いずれかに記載のコーティング組成物が充填されたエアゾール缶。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のコーティング組成物を構成要件別に説明する。
(a)成分
(a)成分は、本発明の組成物中においては結合剤としての働きをするものである。(a)成分は、上記一般式(1)で表されるオルガノシラン(以下「オルガノシラン(1)」という)、オルガノシラン(1)の加水分解物およびオルガノシラン(1)の縮合物からなる群から選択される少なくとも1種(該群に属する成分を以下「シラン化合物(a1)」という)であり、これら3種のシラン化合物(a1)のうち、1種のシラン化合物だけを用いてもよく、任意の2種のシラン化合物を混合して用いてもよく、または3種すべてのシラン化合物を混合して用いてもよい。また、(a)成分として、オルガノシラン(1)を使用する場合、オルガノシラン(1)は1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、上記オルガノシラン(1)の加水分解物および縮合物は、1種のオルガノシラン(1)から形成したものでもよいし、2種以上のオルガノシラン(1)を併用して形成したものでもよい。
ここで、上記オルガノシラン(1)の加水分解物は、オルガノシラン(1)に1〜4個含まれるOR2 基がすべて加水分解されている必要はなく、例えば、1個だけが加水分解されているもの、2個以上が加水分解されているもの、あるいはこれらの混合物であってもよい。
上記のように、(a)成分として、オルガノシラン(1)を加水分解物として使用する場合は、あらかじめ加水分解させて(a)成分として使用することもできるが、オルガノシラン(1)を残りの成分と混合して組成物を調整する際に、適量の水を添加することにより、オルガノシラン(1)を加水分解させて(a)成分とすることが好ましい。
本発明において、(a)成分は、単独または2種以上を混合して使用することができる。
上記オルガノシラン(1)の縮合物は、オルガノシラン(1)が加水分解して生成する加水分解物中のシラノール基が脱水または脱アルコール反応により縮合してSi−O−Si結合を形成したものである。本発明では、シラノール基がすべて縮合している必要はなく、前記縮合物は、僅かな一部のシラノール基が縮合したもの、大部分(全部を含む)のシラノール基が縮合したもの、さらにはこれらの混合物などをも包含する。
【0011】
一般式(1)において、R1 の炭素数1〜12の1価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基などのアルキル基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基、カプロイル基などのアシル基;ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、エポキシシクロアルキル基、グリシジル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アミド基、フルオロアセトアミド基、イソシアナート基などのほか、これらの基の置換誘導体などを挙げることができる。
R1 の置換誘導体における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアナート基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アンモニウム塩基などを挙げることができる。ただし、これらの置換誘導体からなるR1 の炭素数は、置換基中の炭素原子を含めて12以下である。
一般式(1)中に、R1 が2個存在するときは、相互に同一でも異なってもよい。
【0012】
また、R2 の炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基などを挙げることができ、炭素数1〜6のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、カプロイル基などを挙げることができる。
一般式(1)中に複数個存在するR2 は、相互に同一でも異なってもよい。
【0013】
このようなオルガノシラン(1)の具体例としては、
4個の加水分解性基で置換されたシラン化合物として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラベンジロキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン等;
1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物として、
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、メチルトリアセチルオキシシランなどのトリアルコキシシラン類;
【0014】
2個の非加水分解性基と2個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−デシルジメトキシシラン、ジ−n−ドデシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン類のほか、ジメチルジアセチルオキシシラン等;
3個の非加水分解性基と1個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物として、トリブチルメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリブチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等をそれぞれ挙げることができる。
【0015】
本発明では、シラン化合物(a1)として1種のオルガノシラン(1)を単独で使用してもよいが、2種以上のオルガノシラン(1)を併用してもよい。シラン化合物(a1)として使用した2種以上のオルガノシラン(1)を、平均化して上記式(1)で表した場合、平均化したn(以下、「nの平均値」ともいう)は好ましくは0.5〜2.0、より好ましくは0.6〜1.8、特に好ましくは0.7〜1.6である。nの平均値が上記下限未満にあると得られたコーティング組成物の貯蔵安定性や塗布膜のクラック耐性が劣ることがあり、上記上限を超えるとコーティング組成物の硬化性が劣ることがある。
【0016】
nの平均値は、1官能〜4官能のオルガノシラン(1)を適宜併用して、その配合割合を適宜調整することにより、上記範囲に調整することができる。
なお、これは、シラン化合物(a1)としてオルガノシラン(1)の加水分解物または縮合物を使用した場合も同様である。
【0017】
本発明では、シラン化合物(a1)として、オルガノシラン(1)をそのまま使用してもよいが、オルガノシラン(1)の加水分解物および/または縮合物を使用することができる。オルガノシラン(1)を加水分解物および/または縮合物として使用する場合、オルガノシラン(1)を予め加水分解・縮合させて製造したものを用いてもよいが、コーティング組成物を調製する際に、オルガノシラン(1)を加水分解・縮合させて、オルガノシラン(1)の加水分解物および/または縮合物を調製することもできる。
【0018】
(シラン化合物(a1)の製造方法)
上記式(1)で表されるシラン化合物(a1)を加水分解・縮合させる条件は、上記式(1)で表されるオルガノシラン(1)の少なくとも一部を加水分解して、加水分解性基をシラノール基に変換し、又は縮合反応を起こさせるものである限り、特に限定されるものではないが、一例として以下のように実施することができる。
【0019】
(水)
上記式(1)で表されるオルガノシラン(1)の加水分解に用いられる水は、逆浸透膜処理、イオン交換処理、蒸留等の方法により精製された水を使用することが好ましい。このような精製水を用いることによって、副反応を抑制し、加水分解の反応性を向上させることができる。水の使用量は、上記式(1)で表されるオルガノシラン(1)の加水分解性基(−OR2)の合計量1モルに対して、好ましくは0.1〜3モル、より好ましくは0.3〜2モル、さらに好ましくは0.3〜1.8モルの量である。このような量の水を用いることによって、加水分解の反応速度を最適化することができる。
【0020】
(有機溶剤)
上記式(1)で表されるオルガノシラン(1)の加水分解・縮合に使用することができる溶剤としては、特に限定されるものではない。このような溶剤の好ましい例としては、プロピルアルコール、ブチルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピオン酸エステル類が挙げられる。これらの溶剤の中でも、プロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又は3−メトキシプロピオン酸メチルが、好ましい。
【0021】
(触媒)
上記式(1)で表されるオルガノシラン(1)の加水分解・縮合反応に使用することができる触媒としては、特に限定されるものではない。このような触媒の好ましい例としては、酸触媒(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、蟻酸、シュウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、酸性イオン交換樹脂、各種ルイス酸)、塩基触媒(例えば、アンモニア、1級アミン類、2級アミン類、3級アミン類、ピリジンなどの含窒素化合物;塩基性イオン交換樹脂;水酸化ナトリウムなどの水酸化物;炭酸カリウムなどの炭酸塩;酢酸ナトリウムなどのカルボン酸塩;各種ルイス塩基)、又は、アルコキシド(例えば、ジルコニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド)等の触媒の存在下で行われる。例えば、アルミニウムアルコキシドとしては、テトラ−i−プロポキシアルミニウムを用いることができる。触媒の使用量としては、加水分解反応の促進の観点から、加水分解性シラン化合物のモノマー1モルに対して、好ましくは0.2モル以下であり、より好ましくは0.00001〜0.1モルである。
【0022】
上記式(1)で表されるオルガノシラン(1)の加水分解・縮合における反応温度及び反応時間は、適宜に設定される。例えば、下記の条件が採用できる。反応温度は、好ましくは40〜200℃、より好ましくは50〜150℃である。反応時間は、好ましくは30分〜24時間、より好ましくは1〜12時間である。このような反応温度及び反応時間とすることによって、加水分解反応を最も効率的に行うことができる。この加水分解・縮合においては、反応系内に加水分解性シラン化合物、水及び触媒を一度に添加して反応を一段階で行ってもよく、あるいは、加水分解性シラン化合物、水及び触媒を、数回に分けて反応系内に添加することによって、加水分解及び縮合反応を多段階で行ってもよい。なお、加水分解・縮合反応の後には、脱水剤を加え、次いで必要に応じてエバポレーションにかけることによって、水及び生成したアルコールを反応系から除去することもできる。
【0023】
上記オルガノシラン(1)の縮合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」と表す)が、好ましくは300〜100,000、より好ましくは500〜50,000である。
【0024】
本発明におけるシラン化合物(a1)としてオルガノシラン(1)の縮合物を用いる場合、上記オルガノシラン(1)から調製してもよいし、市販されているオルガノシランの縮合物を用いてもよい。市販されているオルガノシランの縮合物としては、三菱化学(株)製のMKCシリケート、コルコート社製のエチルシリケート、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のシリコーンレジンやシリコーンオリゴマー、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ(株)製のシリコーンレジンやシリコーンオリゴマー、信越化学工業(株)製のシリコーンレジンやシリコーンオリゴマー、ダウコーニング・アジア(株)製のヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。これらの市販されているオルガノシランの縮合物は、そのまま用いても、さらに縮合させて使用してもよい。
【0025】
(b)成分
(b)成分のポリシロキサンは−(RO)p −(R′O)q −R″(式中、RおよびR′は、同一または異なり、炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R″は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示し、pおよびqは、p+qの値が2〜50の整数である)で表される基およびエポキシ基を有するものである。
炭素数1〜5のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基などを挙げることができる。
−(RO)n −(R′O)m −R″で表される基の具体例としては、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)基などのポリオキシアルキレン基である。(b)成分がこのような末端官能基を有することにより、本発明の組成物による塗布膜のクラック耐性が向上するほか、ポリオキシアルキレン基の部分が(d)成分に吸着しやすいため、(d)成分の分散安定性が向上する。
さらに(b)成分のポリシロキサンは、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜15の有機基〔例えば、アルキル基、アシル基、アルコキシル基、アルコキシシリル基、ビニル基、アリル基、アセトキシル基、アセトキシシリル基、シクロアルキル基、フェニル基、グリシジル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アミド基、フルオロアセトアミド基、イソシアナート基〕を含有することができる。これらの基は、部分的に加水分解・縮合したものであってもよく、あるいはアルキル基および/またはエーテル基を介してシロキサン主鎖に結合していてもよく、置換誘導体であってもよい。
【0026】
本発明において、(b)成分のポリシロキサンが有することができるハロゲン原子としては、フッ素、塩素などが挙げられる。
また、炭素数1〜15のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられ、アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基などが挙げられ、アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられ、アルコキシシリル基としては、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシシリル基、ブトキシシリル基などが挙げられる。
【0027】
上記置換誘導体における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアナート基、3−グリシドキシアルキル基、3,4−エポキシシクロヘキシルアルキル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アンモニウム塩基、ケトエステル基などを挙げることができる。
(b)成分の製法は、特に規定はないが、主にクロロシランの縮合物あるいはアルコキシシランの縮合物が好ましい。
【0028】
(b)成分の重量平均分子量(以下「Mw」ともいう)は、300〜500,000、特に好ましくは600〜200,000である。300未満では、得られる塗膜の柔軟性が不足し、一方、500,000を超えると、得られるコーティング組成物が保存安定性に乏しいものとなるため、好ましくない。
また、(b)成分としては、Mwの異なる2種のオリゴマーを混合して用いてもよく、例えば、Mw=400〜2,800のオリゴマーと、Mw=3,000〜200,000のオリゴマーとを混合して用いても良い。
【0029】
(b)成分の市販品には、東レ・ダウコーニング社製MAC2101、同SF8421、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のシリコンレジン、信越化学工業(株)製のシリコンレジン、ダウコーニング・アジア(株)製のヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサン、などがあり、これらをそのまま、または縮合させて使用してもよい。
本発明において、(b)成分は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0030】
(a)成分と(b)成分との使用割合は、(a)成分50〜99重量%、好ましくは60〜98重量%、(b)成分1〜50重量%、好ましくは2〜40重量%〔ただし、(a)+(b)=100重量%〕である。(a)成分が50重量%未満では、得られるコーティング組成物が硬化性に乏しいものとなる場合があり、一方、99重量%を超えると、耐クラック性が低下する場合がある。
なお、本発明の組成物において、(b)成分は、通常、上記の(a)成分とともに、共・加水分解、縮合することができる。逆浸透膜処理、イオン交換処理、蒸留等の方法により精製された水を使用することが好ましい。このような精製水を用いることによって、副反応を抑制し、加水分解の反応性を向上させることができる。
この場合、オルガノシラン(1)や(b)成分のシロキサンの加水分解・縮合時の水の使用量は、オルガノシラン(1)および(b)成分のシロキサンの加水分解性基(アルコキシシリル基)の合計量1モルに対して、通常、0.1〜3モル、好ましくは、0.3〜2モル程度である。このような量の水を用いることによって、加水分解の反応速度を最適化することができる。
この際の加水分解・縮合反応、すなわち本発明の組成物の調製時における反応は、温度30〜80℃、好ましくは40〜70℃、反応時間0.5〜10時間、好ましくは1〜7時間程度である。
また、本発明の組成物において、(a)成分と(b)成分とが共加水分解・縮合した場合の共加水分解縮合物(加水分解物および/またはその縮合物)の重量平均分子量は、通常、300〜500,000、好ましくは、600〜200,000程度である。
【0031】
(c)シリル基含有ビニル系重合体
本発明に用いられる(c)特定のシリル基を含有するビニル系重合体(以下、「(c)特
定シリル基含有ビニル系重合体」ともいう)は、加水分解性基および/または水酸基と結
合したケイ素原子を有するシリル基(以下「特定シリル基」という)を含有する。
この(c)特定シリル基含有ビニル系重合体は、重合体分子鎖の末端および/または側
鎖に特定シリル基を有することが好ましい。
本発明のコーティング組成物において、(c)成分は、塗膜を硬化させる際に、そのシ
リル基中の加水分解性基および/または水酸基が上記(a)成分と共縮合することにより、優れた塗膜性能をもたらす成分である。
(c)成分における特定シリル基の含有量は、ケイ素原子の量に換算して、特定シリル基の導入前の重合体に対して、通常、0.001〜20重量%、好ましくは0.01〜15重量%である。
【0032】
(特定シリル基)
上記特定シリル基は、下記式(3)

【0033】
【化1】

(式中、Xはハロゲン原子、アルコキシル基、アセトキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシル基、アミノ基などの加水分解性基または水酸基を示し、R5は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアラルキル基を示し、iは1〜3の整数である。)で表される基であることが好ましい。
【0034】
((c)特定シリル基含有ビニル系重合体の製造方法)
このような(c)特定シリル基含有ビニル系重合体は、たとえば、下記(I)や(II)の方法により、製造することができる。
(I)上記式(3)で表される特定シリル基を有するヒドロシラン化合物(以下、単に
「ヒドロシラン化合物(I)」ともいう)を、炭素−炭素二重結合を有するビニル系重合体(以下、「不飽和ビニル系重合体」という)中の該炭素−炭素二重結合に付加反応させる方法。
(II)下記式(4)
【0035】
【化2】

(式中、X、R5、iはそれぞれ上記式(3)におけるX,R5,iと同義であり、R6は重合性二重結合を有する有機基を示す)
で表されるシラン化合物(以下、「不飽和シラン化合物(II)」という)と、ビニル系単量体とを共重合する方法。
【0036】
上記(I)の方法に使用されるヒドロシラン化合物(I)としては、たとえば、メチル
ジクロルシラン、トリクロルシラン、フェニルジクロルシランなどのハロゲン化シラン
類;メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、ト
リメトキシシラン、トリエトキシシランなどのアルコキシシラン類;メチルジアセトキシ
シラン、フェニルジアセトキシシラン、トリアセトキシシランなどのアシロキシシラン
類;メチルジアミノキシシラン、トリアミノキシシラン、ジメチル・アミノキシシラン
などのアミノキシシラン類などを挙げることができる。これらのヒドロシラン化合物(I)
は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0037】
また、上記(I)の方法に使用される不飽和ビニル系重合体は、水酸基を有する重合体以
外であれば特に限定されず、たとえば、下記(I−1)や(I−2)の方法あるいはこれ
らの組み合わせなどによって製造することができる。
【0038】
(I−1)官能基(以下、「官能基(α )」という)を有するビニル系単量体を(共)
重合したのち、該(共)重合体中の官能基(α)に、該官能基(α)と反応しうる官能基(以下、「官能基(β)」という)と炭素・炭素二重結合とを有する不飽和化合物を反応さ
せることにより、重合体分子鎖の側鎖に炭素−炭素二重結合を有する不飽和ビニル系重合体を製造する方法。
【0039】
(I−2)官能基(α)を有するラジカル重合開始剤(たとえば、4,4’−アゾビス
−4−シアノ吉草酸など)を使用し、あるいは、ラジカル重合開始剤と連鎖移動剤の双方
に官能基(α)を有する化合物(たとえば、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸とジチオグリコール酸など)を使用して、ビニル系単量体を(共)重合して、重合体分子鎖の片末端あるいは両末端にラジカル重合開始剤や連鎖移動剤に由来する官能基(α)を有する(共)重合体を合成したのち、該(共)重合体中の官能基(α)に、官能基(β)と炭素・炭素二重結合を有する不飽和化合物を反応させることにより、重合体分子鎖の片末端あるいは両末端に炭素−炭素二重結合を有する不飽和ビニル系重合体を製造する方法。
【0040】
(I−1)および(I−2)の方法における官能基(α)と官能基(β)との反応としては、たとえば、カルボキシル基と水酸基とのエステル化反応、カルボン酸無水物基と水酸基との開環エステル化反応、カルボキシル基とエポキシ基との開環エステル化反応、カルボキシル基とアミノ基とのアミド化反応、カルボン酸無水物基とアミノ基との開環アミド化反応、エポキシ基とアミノ基との開環付加反応、水酸基とイソシアネート基とのウレタン化反応や、これらの反応の組み合わせなどを挙げることができる。
【0041】
(ビニル系単量体)
(i)官能基(α)を有するビニル系単量体
官能基(α)を有するビニル系単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸;
無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリ
レート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルなどの水酸基含有ビニル系単量体;
2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ基含有ビニル系単量体;
【0042】
1,1,1−トリメチルアミン(メタ)アクリルイミド、1−メチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシプロピル)アミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−フェニル−2’−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−ヒドロキシ−2’−フェノキシプロピル)アミン(メタ)アクリルイミドなどのアミンイミド基含有ビニル系単量体;
グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有ビニル系単量体などを挙げることができる。これらの官能基(α)を有するビニル系単量体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0043】
(ii)他のビニル系単量体
官能基(α)を有するビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−エトキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,4−ジエチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、1−ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル単量体;
【0044】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン−8−イルなどのアルキル(メタ)アクリレート化合物;
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能性単量体;
【0045】
(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどの酸アミド化合物;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、脂肪酸ビニルエステルなどのビニル化合物;
1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−ネオペンチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、イソプレン、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基などの置換基で置換された置換直鎖共役ペンタジエン類、直鎖状および側鎖状の共役ヘキサジエンなどの脂肪族共役ジエン;
【0046】
アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロオクチル(メタ)アクリレートなどのフッ素原子含有単量体;
4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンなどのピペリジン系モノマー;
【0047】
2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノンなどの紫外線吸収モノマー;
ジカプロラクトン、アリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独あるいは2種以上を併用して用いることができる。
【0048】
官能基(β)と炭素・炭素二重結合とを有する不飽和化合物としては、たとえば、官能基(α)を有するビニル系単量体と同様のビニル系単量体や、上記水酸基含有ビニル系単量体とジイソシアネート化合物とを等モルで反応させることにより得られるイソシアネート基含有不飽和化合物などを挙げることができる。
【0049】
(不飽和シラン化合物)
また、上記(II)の方法に使用される不飽和シラン化合物(II)としては、
CH2=CHSi(CH3)(OCH3)2、CH2=CHSi(OCH3)3、
CH2=CHSi(CH3)Cl2、CH2=CHSiCl3、
CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、
CH2=CHCOO(CH2)2Si(OCH3)3、
CH2=CHCOO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2、
CH2=CHCOO(CH2)3Si(OCH3)3、
CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)Cl2、CH3
CH2=CHCOO(CH2)2SiCl3、
CH2=CHCOO(CH2)3Si(CH3)Cl2、
CH2=CHCOO(CH2)3SiCl3、
CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、
CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(OCH3)3、
CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2、
CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OCH3)3、
CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)Cl2、
CH2=C(CH3)COO(CH2)2SiCl3、
CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)Cl2、
CH2=C(CH3)COO(CH2)3SiCl3、
【0050】
【化3】


を挙げることができる。これらは、1種単独あるいは2種以上を併用して用いることができる。
また、不飽和シラン化合物と共重合させる他のビニル系単量体としては、たとえば、上記(I−1)の方法において例示した官能基(α)を有するビニル系単量体や他のビニル系単量体などを挙げることができる。
【0051】
上記(c)特定シリル基含有ビニル系重合体の製造方法としては、たとえば、一括して各単量体を添加して重合する方法、単量体の一部を重合したのち、その残りを連続的にまたは断続的に添加して重合する方法、あるいは、単量体を重合開始時から連続的に添加する方法などが挙げられる。また、これらの重合方法を組み合わせてもよい。
【0052】
好ましい重合方法としては、溶液重合が挙げられる。溶液重合に使用される溶媒は、(c)特定シリル基含有ビニル系重合体を製造できるものであれば特に制限されないが、たとえば、アルコール類、ジエチレングリコールアルキルエーテル類、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などを挙げることができる。
【0053】
上記アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジアセトンアルコールなどが挙げられ、ジエチレングリコールアルキルエーテル類として、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルなどが挙げられ、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類として、例えばメチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられ、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類として、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられ、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類として、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセ テート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられ、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類として、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノブチルエーテルプロピオネートなどが挙げられる。
【0054】
また、芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、エーテル類としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられ、ケトン類としては、アセトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどが挙げられ、エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ノルマルプロピル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸プロチル、3−ヒドロキシプロピオン酸ブチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸ブチル、プロポキシ酢酸メチル、プロポキシ酢酸エチル、プロポキシ酢酸プロピル、プロポキシ酢酸ブチル、ブトキシ酢酸メチル、ブトキシ酢酸エチル、ブトキシ酢酸プロピル、ブトキシ酢酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、炭酸プロピレン、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
また、上記重合では、重合開始剤、分子量調整剤、キレート化剤、無機電解質は、公知のものを使用することができる。
【0055】
本発明では、(c)特定シリル基含有ビニル系重合体として、上記のようにして重合された特定シリル基含有ビニル系重合体の他に、特定シリル基含有エポキシ樹脂、特定シリル基含有ポリエステル樹脂などの他の特定シリル基含有ビニル系重合体を使用することもできる。上記特定シリル基含有エポキシ樹脂は、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族ポリグリシジルエーテル、脂肪族ポリグリシジルエステルなどのエポキシ樹脂中のエポキシ基に、特定シリル基を有するアミノシラン類、ビニルシラン類、カルボキシシラン類、グリシジルシラン類などを反応させることにより製造することができる。また、上記特定シリル基含有ポリエステル樹脂は、たとえば、ポリエステル樹脂中に含有されるカルボキシル基や水酸基に、特定シリル基を有するアミノシラン類、カルボキシシラン類、グリシジルシラン類などを反応させることにより製造することができる。
【0056】
(c)特定シリル基含有ビニル系重合体のGPC法により測定したポリスチレン換算のMwは、好ましくは2,000〜100,000、さらに好ましくは3,000〜50,000である。本発明において、(c)特定シリル基含有ビニル系重合体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0057】
本発明においては、シラン化合物(a1)と(c)特定シリル基含有ビニル系重合体とを共縮合させても良い。好ましくは、シラン化合物(a1)と(c)特定シリル基含有ビニル系重合体との混合物に、加水分解・縮合反応用触媒および水を添加して共縮合させることにより調製できる。
【0058】
このとき、シラン化合物(a1)の含有量(Wa1)と(c)特定シリル基含有ビニル系重合体の含有量(Wc)との重量比(Wa1/Wc)は、Wa1+Wc=100として、5/95〜95/5であり、好ましくは15/85〜85/15である。なお、Wa1はシラン化合物(a1)の完全加水分解縮合物換算値、Wcは(c)特定シリル基含有ビニル系重合体の固形分換算値である。重量比(Wa1/Wc)が上記範囲にあると透明性や耐候性に優れる。
尚、本発明において、完全加水分解縮合物とは、シラン化合物の−OR基が100%加水分解してSi−OH基となり、さらに完全に縮合してシロキサン構造になったものをいう。
【0059】
シラン化合物(a1)と(c)特定シリル基含有ビニル系重合体との共縮合により得られる重合体(以下「重合体A1」)は、具体的には下記(1)〜(3)の方法により調製することが好ましい。
【0060】
(1)シラン化合物(a1)と(c)特定シリル基含有ビニル系重合体と加水分解・縮合反応用触媒との混合液に、水を加えて、温度40〜80℃、反応時間0.5〜12時間でシラン化合物(a1)と(c)特定シリル基含有ビニル系重合体とを共縮合させて、重合体(A1)を調製する。その後、必要に応じて、安定性向上剤などの他の添加剤を加えてもよい。
【0061】
(2)シラン化合物(a1)に水を加えて、温度40〜80℃、時間0.5〜12時間でシラン化合物(a1)の加水分解・縮合反応を行う。次いで、(c)特定シリル基含有ビニル系重合体および加水分解・縮合反応用触媒を加えて混合し、さらに温度40〜80℃、反応時間0.5〜12時間で縮合反応を行い、重合体(A1)を調製する。その後、必要に応じて、安定性向上剤などの他の添加剤を加えてもよい。加水分解縮合触媒として有機金属化合物を使用した場合には、反応後に上記安定性向上剤を添加することが好ましい。
【0062】
上記方法により得られる重合体(A1)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値で通常2,500〜200,000、好ましくは3,000〜150,000、より好ましくは3,500〜100,000である。
【0063】
(触媒)
本発明では、重合体(A1)を調整する際に、上記シラン化合物(a1)や(c)特定シリル基含有ビニル系重合体の加水分解・縮合反応を促進するために、上記シラン化合物(a1)と(c)特定シリル基含有ビニル系重合体との混合物に触媒を添加することが好ましい。触媒を添加することにより、得られる重合体(A1)の架橋度を高めることができるとともに、オルガノシラン(1)の重縮合反応により生成するポリシロキサンの分子量が大きくなり、結果として、強度、長期耐久性などに優れた重合体を得ることができる。さらに、触媒の添加は、上記シラン化合物(a1)と(c)特定シリル基含有ビニル系重合体との反応を促進し、重合体(A1)に十分な反応サイト(アルコキシ基)が形成される。このような加水分解・縮合反応を促進するために用いられる触媒としては、たとえば、塩基性化合物、酸性化合物、塩化合物および有機金属化合物が挙げられる。
【0064】
(塩基性化合物)
上記塩基性化合物としては、アンモニア(アンモニア水溶液を含む)、有機アミン化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属のアルコキシドが挙げられる。これらのうち、アンモニアおよび有機アミン化合物が好ましい。
【0065】
有機アミンとしては、アルキルアミン、アルコキシアミン、アルカノールアミン、アリールアミンなどが挙げられる。
アルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどの炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルアミンなどが挙げられる。
【0066】
アルコキシアミンとしては、メトキシメチルアミン、メトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、メトキシブチルアミン、エトキシメチルアミン、エトキシエチルアミン、エトキシプロピルアミン、エトキシブチルアミン、プロポキシメチルアミン、プロポキシエチルアミン、プロポキシプロピルアミン、プロポキシブチルアミン、ブトキシメチルアミン、ブトキシエチルアミン、ブトキシプロピルアミン、ブトキシブチルアミンなどの炭素数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシアミンなどが挙げられる。
【0067】
アルカノールアミンとしては、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルメタノールアミン、N−エチルメタノールアミン、ミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン、N−エチルプロパノールアミン、N−プロピルプロパノールアミン、N−ブチルプロパノールアミン、N−メチルブタノールアミン、N−エチルブタノールアミン、N−プロピルブタノールアミン、N−ブチルブタノールアミン、N,N−ジメチルメタノールアミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,N−ジプロピルメタノールアミン、N,N−ジブチルメタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジエチルプロパノールアミン、N,N−ジプロピルプロパノールアミン、N,N−ジブチルプロパノールアミン、N,N−ジメチルブタノールアミン、N,N−ジエチルブタノールアミン、N,N−ジプロピルブタノールアミン、N,N−ジブチルブタノールアミン、N−メチルジメタノールアミン、N−エチルジメタノールアミン、N−プロピルジメタノールアミン、N−ブチルジメタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−エチルジプロパノールアミン、N−プロピルジプロパノールアミン、N−ブチルジプロパノールアミン、N−メチルジブタノールアミン、N−エチルジブタノールアミン、N−プロピルジブタノールアミン、N−ブチルジブタノールアミン、N−(アミノメチル)メタノールアミン、N−(アミノメチル)エタノールアミン、N−(アミノメチル)プロパノールアミン、N−(アミノメチル)ブタノールアミン、N−(アミノエチル)メタノールアミン、N−(アミノエチル)エタノールアミン、N−(アミノエチル)プロパノールアミン、N−(アミノエチル)ブタノールアミン、N−(アミノプロピル)メタノールアミン、N−(アミノプロピル)エタノールアミン、N−(アミノプロピル)プロパノールアミン、N−(アミノプロピル)ブタノールアミン、N−(アミノブチル)メタノールアミン、N−(アミノブチル)エタノールアミン、N−(アミノブチル)プロパノールアミン、N−(アミノブチル)ブタノールアミンなどの炭素数1〜4のアルキル基を有するアルカノールアミンが挙げられる。
【0068】
アリールアミンとしてはアニリン、N−メチルアニリンなどが挙げられる。
さらに、上記以外の有機アミンとして、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイドなどのテトラアルキルアンモニウムハイドロキサイド;テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラプロピルエチレンジアミン、テトラブチルエチレンジアミンなどのテトラアルキルエチレンジアミン;メチルアミノメチルアミン、メチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルアミノブチルアミン、エチルアミノメチルアミン、エチルアミノエチルアミン、エチルアミノプロピルアミン、エチルアミノブチルアミン、プロピルアミノメチルアミン、プロピルアミノエチルアミン、プロピルアミノプロピルアミン、プロピルアミノブチルアミン、ブチルアミノメチルアミン、ブチルアミノエチルアミン、ブチルアミノプロピルアミン、ブチルアミノブチルアミンなどのアルキルアミノアルキルアミン;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミンなどのポリアミン;ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モルホリン、メチルモルホリン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセンなども挙げられる。
このような塩基性化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、ピリジンが好ましい。
【0069】
(酸性化合物)
上記酸性化合物としては、有機酸および無機酸が挙げられる。有機酸としては、たとえば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、ミキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、メタンスルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。上記無機酸としては、たとえば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸などが挙げられる。
このような酸性化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、マレイン酸、無水マレイン酸、メタンスルホン酸、酢酸が特に好ましい。
【0070】
(塩化合物)
上記塩化合物として、ナフテン酸、オクチル酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸などのアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0071】
(有機金属化合物)
上記有機金属化合物としては、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物(以下、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物をまとめて、「有機金属化合物類」という)が挙げられる。
上記有機金属化合物類としては、たとえば、下記式(b)
M(OR7)r(R8COCHCOR9)s (b)
(式中、Mは、ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムからなる群からを選択される少なくとも1種の金属原子を表し、R7および8は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基などの炭素数1〜6個の1価の炭化水素基を表し、R9は、前記炭素数1〜6個の1価の炭化水素基、または、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリルオキシ基、ステアリルオキシ基などの炭素数1〜16個のアルコキシ基を表し、rおよびsは、それぞれ独立に0〜4の整数であって、(r+s)=(Mの原子価)の関係を満たす)で表される化合物(以下、「有機金属化合物(b)」という)で表される化合物、
1つのスズ原子に炭素数1〜10個のアルキル基が1〜2個結合した4価のスズの有機金属化合物(以下、「有機スズ化合物」という)、あるいは、これらの部分加水分解物などが挙げられる。
【0072】
また、有機金属化合物類として、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタンなどのテトラアルコキシチタン類;メチルトリメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、n−プロピルトリメトキシチタン、i−プロピルトリエトキシチタン、n−ヘキシルトリメトキシチタン、シクロヘキシルトリエトキシチタン、フェニルトリメトキシチタン、3−クロロプロピルトリエトキシチタン、3−アミノプロピルトリメトキシチタン、3−アミノプロピルトリエトキシチタン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシチタン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリエトキシチタン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシチタン、3−アニリノプロピルトリメトキシチタン、3−メルカプトプロピルトリエトキシチタン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシチタン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシチタン、3−ウレイドプロピルトリメトキシチタンなどのトリアルコキシチタン類;ジメチルジエトキシチタン、ジエチルジエトキシチタン、ジ−n−プロピルジメトキシチタン、ジ−i−プロピルジエトキシチタン、ジ−n−ペンチルジメトキシチタン、ジ−n−オクチルジエトキシチタン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシチタン、ジフェニルジメトキシチタンなどのジアルコキシチタン類などのチタンアルコレートおよびその縮合物を用いることができる。
【0073】
有機金属化合物(b)として、たとえば、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウムなどの有機ジルコニウム化合物;
テトラ−i−プロポキシチタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどの有機チタン化合物;
トリ−i−プロポキシアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートアルミニウム、i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどの有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0074】
有機スズ化合物として、たとえば、
【0075】
【化4】

などのカルボン酸型有機スズ化合物;
【0076】
【化5】

などのメルカプチド型有機スズ化合物;
【0077】
【化6】

などのスルフィド型有機スズ化合物;
【0078】
【化7】

などのクロライド型有機スズ化合物;
【0079】
(C4H9)2SnO、(C8H17)2SnOなどの有機スズオキサイドや、これらの有機スズオキサイドとシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル化合物との反応生成物;などが挙げられる。
【0080】
このような有機金属化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジオクチルスズ・ジオクチルマレエート、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、あるいはこれらの部分加水分解物が好ましい。
【0081】
また、上記触媒は、その他の反応遅延剤と混合して使用することもできる。
上記触媒の使用量は、上記触媒が有機金属化合物類以外の場合には、シラン化合物(a1)100重量部(オルガノシラン(1)の完全加水分解縮合物換算)に対して、通常0.001〜100重量部、好ましくは0.01〜80重量部、さらに好ましくは0.1〜50重量部である。上記触媒が有機金属化合物類の場合には、シラン化合物(a1)100重量部(オルガノシラン(1)の完全加水分解縮合物換算)に対して、通常100重量部以下、好ましくは0.1〜80重量部、さらに好ましくは0.5〜50重量部である。上記触媒の使用量が上記上限を超えると、重合体(A1)の保存安定性の低下によりゲル化したり、塗膜の架橋度が高くなりすぎてクラックが発生することがある。
【0082】
(安定性向上剤)
本発明では、重合体(A1)の保存安定性などを向上させるために、重合体(A1)を調製した後、必要に応じて、安定性向上剤を添加することが好ましい。本発明に用いられる安定性向上剤は、下記式(6)
R10COCH2COR11 (6)
(式中、R10は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基などの炭素数1〜6個の1価の炭化水素基を表し、R11は、前記炭素数1〜6個の1価の炭化水素基、または、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリルオキシ基、ステアリルオキシ基などの炭素数1〜16個のアルコキシル基を表す。)で表されるβ−ジケトン類、β−ケトエステル類、カルボン酸化合物、ジヒドロキシ化合物、アミン化合物およびオキシアルデヒド化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0083】
上記触媒として有機金属化合物類を使用した場合、上記式(6)で表される安定性向上剤を添加することが好ましい。安定性向上剤を用いることによって、安定性向上剤が有機金属化合物類の金属原子に配位し、この配位が、シラン化合物(a1)と(c)特定シリル基含有ビニル系重合体との過剰な共縮合反応を抑制し、得られる重合体(A1)の保存安定性をさらに向上させることができると考えられる。
【0084】
このような安定性向上剤として、たとえば、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、ヘキサン−2,4−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、ヘプタン−3,5−ジオン、オクタン−2,4−ジオン、ノナン−2,4−ジオン、5−メチルヘキサン−2,4−ジオン、マロン酸、シュウ酸、フタル酸、グリコール酸、サリチル酸、アミノ酢酸、イミノ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グリコール、カテコール、エチレンジアミン、2,2−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、ジエチレントリアミン、2−エタノールアミン、ジメチルグリオキシム、ジチゾン、メチオニン、サリチルアルデヒドなどが挙げられる。これらのうち、アセチルアセトンおよびアセト酢酸エチルが好ましい。
【0085】
また、安定性向上剤は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に用いられる安定性向上剤の量は、前記有機金属化合物類の有機金属化合物1モルに対して、通常2モル以上、好ましくは3〜20モルが望ましい。安定性向上剤の量が上記下限未満であると、得られる組成物の保存安定性の向上効果が不充分となること。
【0086】
(水)
本発明では、上記シラン化合物(a1)と(c)特定シリル基含有ビニル系重合体との混合物に水を添加して、シラン化合物(a1)と(c)特定シリル基含有ビニル系重合体とを共縮合して重合体(A1)を調製することができる。
このとき添加される水の量は、シラン化合物(a1)中の全てのOR2基1モルに対して、通常0.1〜1.0モル、好ましくは、0.2〜0.8モル、より好ましくは、0.25〜0.6モルである。水の添加量が上記範囲にあるとゲル化が発生しにくく、組成物は良好な貯蔵安定性を示す。また、水の添加量が上記範囲にあると十分に架橋した重合体(A1)が得られ、このような重合体(A1)を含む組成物を用いることによって、塗膜を得ることができる。
【0087】
(有機溶剤)
本発明では、シラン化合物(a1)と(c)特定シリル基含有ビニル系重合体とを有機溶剤中で加水分解・縮合反応させてもよい。このとき、(c)前記シリル基含有ビニル系重合体の調製時に使用した有機溶媒をそのまま使用することもできる。また、重合体(A1)調製時の固形分濃度を調整するために、必要に応じて、有機溶媒を添加することもできる。さらに、(c)前記シリル基含有ビニル系重合体の調製時に使用した有機溶媒を除去し、新たに有機溶媒を添加してもよい。
【0088】
上記有機溶媒は、重合体(A1)調製時の固形分濃度が、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは15〜60重量%、特に好ましくは20〜50重量%の範囲となる量を添加することができる。なお、前記(c)シリル基含有ビニル系重合体の調製時に使用した有機溶媒をそのまま使用して重合体(A1)調製時の固形分濃度が上記範囲にある場合には、有機溶媒を添加しても、添加しなくてもよい。
【0089】
重合体(A1)調製時の固形分濃度を調整することによって、シラン化合物(a1)と(c)特定シリル基含有ビニル系重合体との反応性のコントロールをすることができる。 重合体(A1)調製時の固形分濃度が上記下限未満になるとシラン化合物(a1)と(c)特定シリル基含有ビニル系重合体との反応性が低下することがある。重合体(A1)調製時の固形分濃度が上記上限を超えるとゲル化することがある。なお、ここで言う固形分濃度における固形分量は、シラン化合物(a1)の完全加水分解縮合物換算の使用量(Wa1)と(c)特定シリル基含有ビニル系重合体の固形分換算の使用量(Wc)の総量である。
【0090】
上記有機溶媒としては、上記成分を均一に混合できるものであれば特に限定されないが、上記(c)特定シリル基含有ビニル系重合体の製造に用いられる有機溶媒として例示した、アルコール類、ジエチレングリコールアルキルエーテル類、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などを挙げることができる。また、これらの有機溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0091】
(d)シリカ粒子
(d)シリカ粒子は、本発明のコーティング組成物に添加することにより、基材・塗膜の耐久性を向上させることができる。
シリカ粒子を配合する場合は、粉体、またはイソプロピルアルコールなどの極性溶媒やトルエンなどの非極性溶媒に分散した溶媒系のゾルもしくはコロイドなどの形態で使用することもできる。シリカ粒子の分散性を向上させるために表面処理して用いてもよい。
(d)シリカ粒子は製法により乾式シリカと湿式シリカと分類することもできる。乾式シリカは四塩化ケイ素と水素を混合し1000℃以上の気相中で燃焼させる燃焼法が代表的な製法である。一方、湿式シリカは基本的にはケイ酸ソーダと酸を水溶液中で反応させて得られる。本発明では、乾式シリカ・湿式シリカのいずれのシリカ粒子も使用することができる。
これらの(d)シリカ粒子の数平均粒子径は、通常0.001〜10μm、さらに好ましくは0.002〜7μm、特に好ましくは0.005〜5μmである。
シリカ粒子溶媒系のゾルもしくはコロイドである場合、その固形分濃度は通常0重量%を超えて70量%以下、好ましくは0.01重量%以上60重量%以下である。
【0092】
本発明では、表面処理未処理の粉末状シリカとしては、日本アエロジル社製の#150、#200、#300、デグザ社のOK520、疎水化処理の粉末状シリカとして、日本アエロジル社製のR972、R974、R976、RX200、RX300、RY200S、RY300、R106、東ソー社製のSS50A、富士シリシアのサイロホービック100、サイロホービック200、等が挙げられる。
また、溶剤分散のコロイダルシリカとしては、日産化学工業社製のイソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤分散コロイダルシリカ、メチルイソブチル等のケトン系溶剤分散コロイダルシリカ、トルエン等の非極性溶剤分散コロイダルシリカ、あるいは触媒化成社の溶剤分散コロイダルシリカ等が挙げられる。(d)シリカ粒子は、(a)成分および(b)成分および/または(c)成分の合成時に添加してもよく、配合調製時に添加してもよい。
(d)シリカ粒子の分散は、溶剤分散のコロイダルシリカを用いる場合は溶液系で分散することができるが、粉体シリカを用いる場合は、ボールミル、サンドミル(ビーズミル,ハイシェアビーズミル)、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、プロペラミキサー、ハイシェアミキサー、ペイントシェーカーなどの公知の分散機を用いることができ、特に高分散の微粒子分散体ボールミル、サンドミル(ビーズミル,ハイシェアビーズミル)、ペイントシェーカーが好適に使用される。
(d)シリカ粒子の使用量は、(a)成分および(b)成分および/または(c)成分合計の固形分100重量部に対して、固形分換算で通常0重量部を超えて100重量部以下、好ましくは2重量部以上50重量部以下である。この場合、(d)成分の使用量が80重量部を超えると、得られるコーティング剤の成膜性が劣り、割れや剥離を生ずる場合がある。
以上の(d)シリカ粒子は、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0093】
他の添加剤
また、本発明の組成物には、得られる塗膜の着色、厚膜化などのために、別途充填材を添加・分散させることもできる。
このような充填材としては、例えば、非水溶性の有機顔料や無機顔料、顔料以外の、粒子状、繊維状もしくは鱗片状のセラミックス、金属あるいは合金、ならびにこれらの金属の酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物などを挙げることができる。
上記充填材の具体例としては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、亜鉛、フェライト、カーボンブラック、ステンレス鋼、二酸化ケイ素、顔料用酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、合成ムライト、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、ケイソウ土、消石灰、石膏、タルク、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、雲母、亜鉛緑、クロム緑、コバルト緑、ビリジアン、ギネー緑、コバルトクロム緑、シェーレ緑、緑土、マンガン緑、ピグメントグリーン、群青、紺青、ピグメントグリーン、岩群青、コバルト青、セルリアンブルー、ホウ酸銅、モリブデン青、硫化銅、コバルト紫、マルス紫、マンガン紫、ピグメントバイオレット、亜酸化鉛、鉛酸カルシウム、ジンクエロー、硫化鉛、クロム黄、黄土、カドミウム黄、ストロンチウム黄、チタン黄、リサージ、ピグメントエロー、亜酸化銅、カドミウム赤、セレン赤、クロムバーミリオン、ベンガラ、亜鉛白、アンチモン白、塩基性硫酸鉛、チタン白、リトポン、ケイ酸鉛、酸化ジルコン、タングステン白、鉛、亜鉛華、バンチソン白、フタル酸鉛、マンガン白、硫酸鉛、黒鉛、ボーン黒、ダイヤモンドブラック、サーマトミック黒、植物性黒、チタン酸カリウムウィスカー、二硫化モリブデンなどを挙げることができる。
これらの充填材は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
充填材の使用量は、組成物の全固形分100重量部に対して、通常、300重量部以下である。
【0094】
さらに、本発明の組成物には、所望により、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、テトラエトキシシランなどの公知の脱水剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、ポリカルボン酸塩、ポリリン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリアミドエステル塩、ポリエチレングリコールなどの分散剤;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース類や、ひまし油誘導体、フェロけい酸塩などの増粘剤;炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、カルシウムアジドなどの無機発泡剤や、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホヒドラジンなどのヒドラジン化合物、セミカルバジド化合物、トリアゾール化合物、N−ニトロソ化合物などの有機発泡剤のほか、界面活性剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、染料などの他の添加剤を配合することもできる。
【0095】
さらに、本発明の組成物には、耐候性、耐久密着性を向上させる目的で、紫外線吸収剤、紫外線安定剤などを配合してもよい。紫外線吸収剤としては、ZnO2 、TiO2 (光触媒機能を示さないもの)、CeO2 などの無機系半導体;サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系などの有機系紫外線吸収剤が挙げられる。また、紫外線安定剤としては、ピペリジン系などが挙げられる。
また、組成物のコーティング性をより向上させるためにレベリング剤を配合することができる。このようなレベリング剤のうち、フッ素系のレベリング剤(商品名。以下同様)としては、例えば、ビーエムケミー(BM−CHEMIE)社のBM1000、BM1100;エフカケミカルズ社のエフカ772、エフカ777;共栄社化学(株)製のフローレンシリーズ;住友スリーエム(株)のFCシリーズ;東邦化学(株)のフルオナールTFシリーズなどを挙げることができ、シリコーン系のレベリング剤としては、例えば、ビックケミー社のBYKシリーズ;シュメグマン(Sshmegmann)社のSshmegoシリーズ;エフカケミカルズ社のエフカ30、エフカ31、エフカ34、エフカ35、エフカ36、エフカ39、エフカ83、エフカ86、エフカ88などを挙げることができ、エーテル系またはエステル系のレベリング剤としては、例えば、日信化学工業(株)のカーフィノール;花王(株)のエマルゲン、ホモゲノールなどを挙げることができる。
【0096】
このようなレベリング剤を配合することにより、塗膜の仕上がり外観が改善され、薄膜としても均一に塗布することができる。
レベリング剤の使用量は、全組成物に対して、好ましくは、0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.02〜3重量%である。
レベリング剤を配合する方法としては、組成物を調製する際に配合してもよく、また塗膜を形成する段階で組成物に配合してもよく、さらには組成物の調製と塗膜の形成との両方の段階で配合してもよい。
【0097】
なお、本発明に用いられる組成物には、他の樹脂をブレンドしてもよい。他の樹脂としては、アクリル−ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂エマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、ポリウレタンエマルジョン、ポリエステルエマルジョンなどが挙げられる。
本発明の組成物の全固形分濃度は、通常、3〜60重量%、好ましくは、5〜50重量%で調整され、本発明の組成物をコーティングする場合は使用目的に応じて適宜調整される。組成物の全固形分濃度が60重量%を超えると、保存安定性が低下する傾向がある。基材の種類、塗装方法、塗装膜厚なに応じて適宜調整される。
【0098】
本発明の組成物を基材に塗布する際には、いずれの組成物の場合も、刷毛塗り、筆塗り、流し塗り、バーコーター、ナイフコーター、ドクターブレード、スクリーン印刷、スプレー塗布、スピンコーター、アプリケーター、ロールコーター、フローコーター、遠心コーター、超音波コーター、(マイクロ)グラビアコーター、ディップコート、フレキソ印刷、ポッティング等の手法を用いることができ、他の基材(転写基材)上に塗布した後に転写して用いてもよい。
本発明の組成物の場合、乾燥膜厚として、1回塗りで厚さ0.05〜20μm程度、2回塗りでは厚さ0.1〜40μm程度の塗膜を形成することができる。その後、常温で乾燥するか、あるいは、30〜200℃程度の温度で、通常、1〜60分程度加熱して乾燥することにより、塗膜を形成することができる。
【0099】
基材
本発明の組成物を適用しうる基材としては、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属;セメント、コンクリート、ALC、フレキシブルボード、モルタル、スレート、石膏、セラミックス、レンガなどの無機窯業系材料;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)などのプラスチック成型品;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリイミド、アクリル、トリアセチルセルロースなどのプラスチックフィルムや、木材、紙、ガラスなどを挙げることができる。また、本発明の組成物は、劣化塗膜の再塗装にも有用である。
【0100】
これらの基材には、下地調整、密着性向上、多孔質基材の目止め、平滑化、模様付けなどを目的として、予め表面処理を施すこともできる。
金属系基材に対する表面処理としては、例えば、研磨、脱脂、メッキ処理、クロメート処理、火炎処理、カップリング処理などを挙げることができ、プラスチック系基材に対する表面処理としては、例えば、ブラスト処理、薬品処理、脱脂、火炎処理、酸化処理、蒸気処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、イオン処理などを挙げることができ、無機窯業系基材に対する表面処理としては、例えば、研磨、目止め、模様付けなどを挙げることができ、木質基材に対する表面処理としては、例えば、研磨、目止め、防虫処理などを挙げることができ、紙質基材に対する表面処理としては、例えば、目止め、防虫処理などを挙げることができ、さらに劣化塗膜に対する表面処理としては、例えば、ケレンなどを挙げることができる。
【0101】
本発明の組成物による塗布操作は、基材の種類や状態、塗布方法によって異なる。例えば、金属系基材の場合、防錆の必要があれば、下塗り用コーティング組成物以外に、プライマーを用い、無機窯業系基材の場合、基材の特性(表面荒さ、含浸性、アルカリ性など)により塗膜の隠ぺい性が異なるため、プライマーを用いる場合がある。また、劣化塗膜の再塗装の場合、旧塗膜の劣化が著しいときはプライマーを用いる。
それ以外の基材、例えば、プラスチック、木材、紙、ガラスなどの場合は、用途に応じてプライマーを用いても用いなくてもよい。
【0102】
プライマーの種類は特に限定されず、基材と組成物との密着性を向上させる作用を有するものであればよく、基材の種類、使用目的に応じて選択する。プライマーは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができ、また顔料などの着色成分を含むエナメルでも、該着色成分を含まないクリヤーでもよい。
【0103】
プライマーの種類としては、例えば、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリル樹脂エマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、ポリウレタンエマルジョン、ポリエステルエマルジョンなどを挙げることができる。また、これらのプライマーには、厳しい条件での基材と塗膜との密着性が必要な場合、各種の官能基を付与することもできる。このような官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基、アミン基、グリシジル基、アルコキシシリル基、エーテル結合、エステル結合などを挙げることができる。さらに、プライマーには、紫外線吸収剤、紫外線安定剤などが配合されていてもよい。
また、本発明の組成物から形成した塗膜の表面には、塗膜の耐摩耗性や光沢をさらに高めることを目的として、例えば、米国特許第3,986,997号明細書、米国特許第4,027,073号明細書などに記載されたコロイダルシリカとシロキサン樹脂との安定な分散液のようなシロキサン樹脂系塗料などからなるクリア層を形成することもできる。
以上、本発明により、保存安定性に優れ、かつ密着性、耐候性、耐アルカリ性、耐有機薬品性、耐湿性、耐(温)水性、耐汚染性にも優れ、しかも周囲の環境下で伸縮しやすい基材上でも、マイクロクラックの発生しない塗膜を形成できるコーティング組成物が得られる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものでない。なお、実施例および比較例中の部および%は、特記しない限り重量基準である。また、実施例および比較例における各種の測定・評価は、下記の方法により行った。
(1)GPC測定
ポリシロキサンの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより下記条件で測定し、ポリスチレン換算値として示した。装置:HLC−8120C(東ソー社製)カラム:TSK−gel MultiporeHXL−M(東ソー社製)溶離液:THF、流量0.5mL/min、負荷量5.0%、100μL、測定温度:40℃
(2)保存安定性
得られた高屈層用組成物をポリエチレン製容器内で常温で1ヶ月間密栓保存して、ゲル化および粒子沈降の有無を目視により判定した。ゲル化していないものについては東京計器社製のBM型粘度計により25℃で粘度測定を行い、下記基準で評価した。A:保存前後の粘度変化率が20%以下、B:保存前後の粘度変化率が20%超
(3)固形分濃度
得られた組成物溶液をアルミ皿に2g程度測り、ホットプレート上で200℃で30分加熱した後の重量変化から求めた。
(4)塗布膜のタック性
所定の基材上で塗布乾燥して得られた塗布膜の表面を指で触り、タック性を調べた。A:タック無し、B:僅かにタック有(跡なし)、C:タック有(指の跡が残る)、
(5)耐湿性
基材上の塗布膜を、温度50℃、湿度95%の環境下に、連続1,000時間保持したのち、取り出して塗膜の状態を目視により観察した。A:クラック、白化とも無し、B:クラック有、白化無し、C:クラック無し、白化有、D:クラック、白化とも有
(6)耐候性
基材上の塗布膜をJIS K5400により、サンシャインウエザーメーターで3,000時間照射試験を実施して、塗膜の外観(クラック、白化など)を目視により観察した。A:クラック、白化とも無し、B:クラック有、白化無し、C:クラック無し、白化有、D:クラック、白化とも有
【0105】
<合成例1>
還流冷却器および攪拌機を備えた反応器に、メチルメタクリレート70部、2−エチルヘキシルアクリレート10部、シクロヘキシルメタクリレート9部、ブチルアクリレート20部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン7部、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン5部、i−ブチルアルコール75部、メチルエチルケトン50部およびメタノール25部を加えて混合した後、攪拌しながら80℃に加温した。この混合物にアゾビスイソブチロニトリル3部を酢酸ブチル8部に溶解した溶液を30分間かけて滴下した後、80℃で5時間反応させた。冷却後、メチルエチルケトンを40部加えて、固形分濃度が40%、Mwが15000の重合体(1)溶液を得た。
【0106】
<合成例2>
撹拌機および還流冷却器を備えた反応器に、メチルトリメトキシシラン60部とジメチルジメトキシシラン32部、上記重合体(1)を含む溶液55部、有機溶媒としてi−プロピルアルコール20部、および加水分解・縮合反応触媒としてジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウムのi−プロピルアルコール75%希釈液2部を加えて混合し、攪拌しながら50℃に昇温した。これに水を13部を30分間かけて滴下した後、60℃で4時間反応させた。その後、安定性向上剤としてアセチルアセトン4部を加えて1時間撹拌した後、室温まで冷却し、固形分濃度が40重量%、Mwが18000の重合体(2)溶液を得た。
【0107】
<合成例3>
還流冷却器および攪拌機を備えた反応器に、メチルトリメトキシシラン142部、ジメチルジメトキシシラン49部、溶媒としてメチルイソブチルケトン763部、水90部、触媒としてトリエチルアミン8部を混合し、60℃で3時間加水分解縮合反応させた。室温に冷却し、6%シュウ酸水溶液156部を加えて室温で1時間中和反応を行った。その後、水層を分離し、有機相を水150部で洗浄した。この水洗操作を3回行った後、溶媒を留去し、Mwが8000の重合体(3)を得た。
【0108】
実施例1
重合体(3)30部にメチルイソブチルケトン20部、メチルエチルケトン50部、下記式(5)で表される重量平均分子量7000のポリシロキサン0.6部、固形分濃度30%のコロイダルシリカ(日産化学工業製;商品名:MIBK−ST)9部を室温下でよく混合し、組成物(1)を得た。保存安定性を表1に示す。ガラス板上に組成物(1)をバーコーター(#20)で塗布し、80℃で10分乾燥して塗布膜を得た。耐湿性と耐候性を表1に示す。
式(5)
【0109】
【化8】

【0110】
実施例2
重合体(2)溶液30部にメチルエチルケトン10部、末端にアルコキシシリル基、下記式(6)で表される重量平均分子量30000のポリシロキサン0.25部を室温下でよく混合し、組成物(2)を得た。保存安定性を表1に示す。ガラス板上に組成物(2)をバーコーター(#20)で塗布し、80℃で10分乾燥して2ミクロン厚の塗布膜を得た。耐湿性と耐候性を表1に示す。
式(6)
【0111】
【化9】

【0112】
実施例3
重合体(2)溶液30部にメチルエチルケトン10部、実施例2と0.25部を室温下でよく混合し、アモルファスシリカ(富士シリシア化学製;商品名:サイリシア350)2.5部を加えてホモディスパーで2000回転で10分間混合し、組成物(3)を得た。保存安定性を表1に示す。ガラス板上に組成物(3)をバーコーター(#20)で塗布し、80℃で10分乾燥して2ミクロン厚の塗布膜を得た。耐湿性と耐候性を表1に示す。
【0113】
実施例4
重合体(2)溶液30部にメチルエチルケトン10部、上記式(5)で表される重量平均分子量7000のポリシロキサン0.25部、固形分濃度30%のコロイダルシリカ(日産化学工業製;商品名:MIBK−ST)8部を室温下でよく混合し、組成物(4)を得た。保存安定性を表1に示す。ガラス板上に組成物(4)をバーコーター(#20)で塗布し、80℃で10分乾燥して2ミクロン厚の塗布膜を得た。耐湿性と耐候性を表1に示す。
【0114】
実施例5
重合体(2)溶液30部にメチルエチルケトン10部、上記式(5)で表される重量平均分子量30000のポリシロキサン1部、固形分濃度30%のコロイダルシリカ(日産化学工業製;商品名:MIBK−ST)8部を室温下でよく混合し、組成物(5)を得た。保存安定性を表1に示す。ガラス板上に組成物(5)をバーコーター(#20)で塗布し、80℃で10分乾燥して2ミクロン厚の塗布膜を得た。耐湿性と耐候性を表1に示す。
【0115】
比較例1
重合体(2)溶液30部にメチルエチルケトン10部を加えて室温下でよく攪拌し組成物(6)を得た。保存安定性を表1に示す。ガラス板上に組成物(6)をバーコーター(#20)で塗布し、80℃で10分乾燥して2ミクロン厚の塗布膜を得た。耐湿性と耐候性を表1に示す。
【0116】
比較例2
重合体(2)溶液30部にメチルエチルケトン10部と固形分濃度30%のコロイダルシリカ(日産化学工業製;商品名:MIBK−ST)8部を加えて室温下でよく攪拌し、組成物(7)を得た。保存安定性を表1に示す。ガラス板上に組成物(7)をバーコーター(#20)で塗布し、80℃で10分乾燥して2ミクロン厚の塗布膜を得た。耐湿性と耐候性を表1に示す。
【0117】
比較例3
重合体(3)30部にメチルイソブチルケトン20部、メチルエチルケトン50部、固形分濃度30%のコロイダルシリカ(日産化学工業製;商品名:MIBK−ST)9部を室温下でよく混合し、組成物(8)を得た。保存安定性を表1に示す。ガラス板上に組成物(8)をバーコーター(#20)で塗布し、80℃で10分乾燥して2ミクロン厚の塗布膜を得た。耐湿性と耐候性を表1に示す。
【0118】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記式(1)
Si(OR4−n (1)
(式中、Rは、炭素数1〜12の有機基を示し、2個以上存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよい。Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示す。nは0〜3の整数である。)
で表される少なくとも1種のオルガノシラン、該オルガノシランの加水分解物および該オルガノシランの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物
ならびに
(b)−(RO)−(R′O)−R″(式中、RおよびR′は、同一または異なり、炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R″は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示し、pおよびqは、p+qの値が2〜50となる数である)で表される基およびエポキシ基を有する重量平均分子量が300〜500,000ポリシロキサン
を含むことを特徴とするコーティング用組成物。
【請求項2】
さらに(c)加水分解性基および/または水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を含有するビニル系重合体を含有する請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項3】
さらに(d)数平均粒径0.001〜10μmのシリカ粒子を含有する請求項1または請求項2記載のコーティング組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載のコーティング組成物が充填されたエアゾール缶。

【公開番号】特開2012−116969(P2012−116969A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268630(P2010−268630)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】