説明

コーティング粒子の製造方法、及び該製造方法で製造されたコーティング粒子

【課題】薬物を安定に、かつ効率よくコーティングすることが可能なコーティング方法を提供すること。
【解決手段】(A) コア粒子をワックスでコーティングしたワックスコーティング粒子に、バインダー及び被覆用化合物粒子を付着させる工程
(B) 工程(A)で得られる粒子を、前記ワックスの融点以上にまで加熱する工程
を含む、被覆用化合物がコーティングされたコーティング粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング粒子の製造方法、及び該製造方法で製造されたコーティング粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
製剤に胃溶性、腸溶性、徐放性などの様々な機能性を付与するため、製剤にコーティングを施したコーティング製剤が利用されている。コーティング剤を製剤にコーティングする方法は湿式法と乾式法とに分類されるが、湿式法が一般的である。
【0003】
湿式法ではコーティング剤を溶解又は懸濁させた液を製剤に噴霧した後、液体を蒸発させるコーティング方法が代表的である。しかし、コーティング剤の溶媒が水である場合には噴霧後の蒸発に多くのエネルギーが必要となることや、核中に水によって劣化する成分が含まれている場合にはこれが劣化するためそのような成分の使用が制限されるなどの問題があった。また、コーティング剤の溶媒に有機溶媒を使用する場合には、有機溶媒の除去を完全にしないと有機溶媒が残存するという問題があった。
【0004】
一方、乾式法では、溶媒を使用しないためこれらの問題は発生しない。但し、溶媒なしでコーティング剤を製剤にコーティングすることは困難であり、乾式の結合剤などの添加剤の使用が試みられている。しかし、依然としてコーティングの効率は良くなっていないのが現状である。例えば、コアとなるセルフィア粒子に、ワックスバインダーとしてラウリン酸を用いて水溶性薬物カルバゾクロムスルホン酸ナトリウムの固定コーティングを行い、これに更にエチルセルロース水懸濁液の凍結乾燥粉末からなるコーティング剤をコーティングした例が公表されている(非特許文献1参照)。しかし、この方法では、薬物(非特許文献1ではカルバゾクロムスルホン酸ナトリウムを使用)の固定が十分でなく、製造途中又は製造後に多量の薬物が剥がれてしまうという問題があった。このため、コーティング可能な薬物量は限られることになり、薬物コーティング効率も悪かった。
【0005】
またさらに、薬物をコーティングした後、さらにポリマー等で2次コーティングを行う場合、コーティングされていた薬物が剥がれて2次コーティング層へ混入するという問題もあった。2次コーティング層に混入した薬物は、コーティング粒子表面近くに存在することになるため、溶出するまでの時間が早まることになることから、当該方法により得られたコーティング製剤は、薬物の溶出速度の制御が困難であった。このため、コーティング製剤としての性能は十分とはいえなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Preparation of Controlled Release Microcapsules by a High-Speed Elliptical-Rotor Type Mixer(要旨集), Proceedings of the World Congress on Particle Technology 3, No. 121, Brighton, UK, July 7-9, 1998 (英国化学工学協会主催)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、薬物を安定に、かつ効率よくコーティングすることが可能なコーティング方法(特に乾式コーティング方法)、及び薬物が安定にかつ比較的多量にコーティングされたコーティング粒子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、驚くべき事に、コア粒子をワックスでコーティングしたワックスコーティング粒子に、バインダー及び被覆用化合物粒子を付着させ、さらにこれを、前記ワックスの融点以上にまで加熱することにより、被覆用化合物粒子を安定(すなわち強固に)、かつ効率よくコーティングすることが可能であることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は例えば以下の項のコーティング粒子の製造方法及びコーティング粒子を包含する。
項1.
(A) コア粒子をワックスでコーティングしたワックスコーティング粒子に、バインダー及び被覆用化合物粒子を付着させる工程
(B) 工程(A)で得られる粒子を、前記ワックスの融点以上にまで加熱する工程
を含む、被覆用化合物がコーティングされたコーティング粒子の製造方法。
項2.
バインダーが、クエン酸トリエチル、トリアセチン、ジブチルセバケート、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、中鎖脂肪酸、及びトリグリセリドからなる群より選択される、少なくとも1種である、項1に記載のコーティング粒子の製造方法。
項3.
ワックスが、有機脂肪酸、有機脂肪酸のエステル誘導体、高級アルコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、油脂硬化油及び天然ワックスからなる群より選択される、少なくとも1種である、項1又は2に記載のコーティング粒子の製造方法。
項4.
コア粒子の平均粒子径が1〜1000μmである、項1〜3のいずれかに記載のコーティング粒子の製造方法。
項5.
被覆用化合物が薬物である、項1〜4のいずれかに記載のコーティング粒子の製造方法。
項6.
被覆用化合物粒子の平均粒子径が、コア粒子の平均粒子径の1/5以下である、項1〜5のいずれかに記載のコーティング粒子の製造方法。
項7.
さらに、
(C) 工程(B)を経て得られる粒子をコーティングポリマーでコーティングする工程
を含む、項1〜6のいずれかに記載のコーティング粒子の製造方法。
項8.
コーティングポリマーが、セルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、及び生体内分解性ポリマーからなる群より選択される、少なくとも1種である、項7に記載のコーティング粒子の製造方法。
項9.
項1〜8のいずれかに記載のコーティング粒子の製造方法により製造される、コーティング粒子。
項10.
コア粒子上に被覆用化合物粒子コーティング層を有し、該被覆用化合物粒子コーティング層にワックス、バインダー及び被覆用化合物粒子が含有される、被覆用化合物コーティング粒子。
項11−1.
ワックスが、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、及びこれらのいずれかの脂肪酸とグリセリンとのモノエステル、並びにポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種である、
項10に記載の被覆用化合物コーティング粒子。
項11−2.
バインダーが、クエン酸トリエチル、トリアセチン、ジブチルセバケート、及びポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種である、
項10又は11−1に記載の被覆用化合物コーティング粒子。
項11−3.
被覆用化合物が薬理活性物質である、
項10、11−1、又は11−2に記載の被覆用化合物コーティング粒子。
項12.
さらに、被覆用化合物粒子コーティング層上に、ポリマーコーティング層を有する、項10〜11−3のいずれかに記載の被覆用化合物コーティング粒子。
項13.
ポリマーコーティング層が、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、及びポリ乳酸からなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含んでなる層である、項12に記載の被覆用化合物コーティング粒子。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコーティング粒子の製造方法により、被覆用化合物粒子を安定(すなわち強固に)、かつ効率よくコア粒子へコーティングすることができる。これにより、得られるコーティング粒子の安定性が改善される。また、コーティング途中で被覆用化合物が剥がれ、他のコーティング層(例えば被覆用化合物含有層にポリマーコーティング層を積層させる場合の、ポリマーコーティング層)へ被覆用化合物が混入することもなくなるため、被覆用化合物の徐放性も大きく改善される(つまり、被覆用化合物が意図したよりも早く溶出してしまうことを防止でき、溶出速度をコントロールし易くなる)。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本願発明のコーティング粒子の製造方法の概要を示す。
【図2】コア粒子をワックスでコーティングするため、又はワックスコーティング粒子にバインダー及び被覆用化合物粒子を付着させるため等に用い得る、攪拌羽根付き恒温混合機の模式図を示す。
【図3】1次粒子にコーティングポリマーをコーティングするため等に用い得る、恒温円錐型回転混合機の模式図を示す。
【図4】2次コーティング粒子を用いた、被覆用化合物粒子(モデル薬物であるカルバゾクロムスルホン酸ナトリウム(CCSS))の溶出試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0013】
本発明は、被覆用化合物がコーティングされた、コーティング粒子の製造方法に係る。当該製造方法は、(A):コア粒子をワックスでコーティングしたワックスコーティング粒子に、バインダー及び被覆用化合物粒子を付着させる工程、及び(B):工程(A)で得られる粒子を、前記ワックスの融点以上にまで加熱する工程、を含む。
【0014】
ワックスコーティング粒子
本発明に用いるワックスコーティング粒子は、コア粒子をワックスでコーティングして得られる。
【0015】
コア粒子の素材は特に制限されず、本発明の製造方法により製造されるコーティング粒子の使用目的等に応じて、適宜選択することができる。例えば、有機物粒子(例えばポリマー粒子)、無機物粒子(例えば金属粒子、酸化物粒子)等を用いることができる。
【0016】
ポリマー粒子を形成するポリマーとしては、ビニル系ポリマーが好ましく、その製造に使用するビニル系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等のエチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル等を例示できる。これらのモノマーは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記モノマーと、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジアリルフタレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート等の共重合可能なモノマーとの共重合体も使用できる。
また、例えば、金、銀、銅、ニッケル等の金属粒子やマグネタイト等の磁性粒子を用いることもできる。
また、例えば、アルミナ、含水二酸化ケイ素、乾燥水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、薬用炭、硫酸カルシウム、結晶セルロース、小麦粉、部分アルファー化デンプン、トウモロコシデンプン(コーンスターチ)、コメデンプン、コムギデンプン、バレイショデンプン、可溶性デンプン、タピオカデンプン等の粒子をコア粒子として用いる事もできる。また、下記医薬分野で本発明を用いる場合について記載したコア粒子素材も、医薬分野以外の分野でも適宜用いることができる。
【0017】
医薬分野(医薬コーティング粒子の製造)で本発明を用いる場合は、例えば、コア粒子は活薬理活性成分(例えば医薬であれば薬物)のみからなる粒子であってもよく、薬理活性成分及び薬学的に許容される担体との混合物からなる粒子であってもよく、他の担体表面を薬理活性成分で覆った粒子でもよく、薬理活性成分を一切含まない担体からなる粒子であってもよい。コア粒子に薬理活性成分を含む場合、薬理活性成分としては医薬として用いられる成分が好ましい。コア粒子は、速放性製剤および放出持続型製剤(徐放性製剤)などの放出制御型製剤であってもよい。また、コア粒子は適当な添加剤を含有していてもよい。該添加剤としては、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、pH調整剤、界面活性剤、徐放化剤、安定化剤、酸味料、香料、流動化剤など例示できる。これら添加剤は、医薬の製剤分野において適当な量を適宜設定して用いることができる
特に、コア粒子として、丸剤、顆粒剤、散剤、薬物の単結晶、薬物粉末の凝集物、乳糖粒子、ヒドロキシアパタイト粒子、炭酸カルシウム粒子、イソマルト粒子、医薬の製剤領域ではコーティング核粒子として市販されている結晶セルロース(粒)、乳糖・結晶セルロース球状粒、D−マンニトール球形粒等を好ましく使用できる。これらは、市販品を用いることもできる。例えば、結晶セルロース粒は旭化成工業株式会社のセルフィア(登録商標)を、スクロース球形粒、マンニトール球形粒としてフロイント社製のノンパレル(登録商標)を、用いることができる。
【0018】
なかでも特に、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、銀、アルミナ、結晶セルロース粒、マンニトール球形粒、乳糖結晶、薬物結晶粒子(アセトアミノフェン等)等を好ましく用いることができる。
【0019】
コア粒子は、特に制限はされないが、平均粒子径が1〜1000μmのものが好ましく、2〜1000μmのものがより好ましく、5〜500μmのものがさらに好ましく、5〜200μmのものがよりさらに好ましい。
【0020】
コア粒子の平均粒子径は、ふるい分け法により求められる重量平均粒子径である。より詳しくは、当該平均粒子径は、ふるい分け法(ロータップシェイカー;飯田製作所製)により求めた重量平均粒子径である。但し、当該方法により求めた値が30μmより小さい場合は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定により、メジアン径(d50)を求め、当該メジアン径を平均粒子径とする。当該測定には、市販のレーザー回折・散乱式粒度分布測定機器(LDSA−2400A,:東日コンピュータアプリケーション)を用いることができる。
【0021】
なお、以下、各粒子についての平均粒子径に言及する場合、被覆用化合物粒子の平均粒子径を除き、特に断りのない限り、平均粒子径はふるい分け法(ロータップシェイカー;飯田製作所製)により求めた重量平均粒子径である。具体的には、標準ふるいを用いてふるい分け(ロータップシェイカー;飯田製作所製)を行って求めた50重量%径である。被覆用化合物粒子の平均粒子径はメジアン径(d50)であり、レーザー回折・散乱式粒度分布測定により求められ、当該測定には、市販のレーザー回折・散乱式粒度分布測定機器(LDSA−2400A,:東日コンピュータアプリケーション)を用いることができる。
【0022】
コア粒子はワックスでコーティングされ、ワックスコーティング粒子として本発明に用いられる。本発明で用いるワックスとしては、有機脂肪酸、有機脂肪酸のエステル誘導体、高級アルコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、天然ワックス等が例示できる。
【0023】
有機脂肪酸としては、高級脂肪酸が好ましく、炭素数8〜20の脂肪酸がより好ましく、炭素数10〜18の脂肪酸がさらに好ましい。また、当該脂肪酸は、炭素−炭素二重結合(C=C)を0、1、又は2有するものが好ましく、0有するもの(すなわち飽和脂肪酸)がより好ましい。また、直鎖又は分岐鎖を有する脂肪酸であり得、好ましくは直鎖脂肪酸である。好ましい有機脂肪酸としては、具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等が例示でき、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が中でも好ましい。
【0024】
有機脂肪酸のエステル誘導体としては、例えば上記有機脂肪酸のエステル誘導体を挙げられる。
【0025】
高級アルコールとしては、炭素数8〜18のアルコールが例示できる。また、炭素−炭素二重結合(C=C)を0、1、又は2有するものが好ましく、0有するもの(即ち当該二重結合を有さないもの)がより好ましい。直鎖又は分岐鎖を有するアルコールであり得、好ましくは直鎖アルコールである。好ましい高級アルコールとしては、具体的には、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール等が例示でき、中でもセチルアルコール、ステアリルアルコールが好ましい。
【0026】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、上記有機脂肪酸とグリセリンのモノエステル、ジエステル、又はトリエステルが例示できる。好ましいグリセリン脂肪酸エステルとしては、具体的には、グリセリルモノステアレート等が例示できる。
【0027】
ポリエチレングリコール(PEG)としては、重量平均分子量1500〜10000程度のものが好ましく、4000〜8000程度のものがより好ましい。例えば、市販品であるマクロゴール6000(重量平均分子量約6000のPEG)を好ましく用いることができる。
【0028】
油脂硬化油としては、植物油や魚油に水素付加を行うことで製造されるものが例示できる。
【0029】
天然ワックスとしては、例えばカルナバワックス、ライスワックス等が例示できる。
【0030】
なお、ワックスは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
ワックスは、ワックス粒子とし、これをコア粒子のコーティングに用いるのが好ましい。ワックス粒子の製造は、公知の方法で行うことができる。例えば、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル等を用いてワックスを粉砕及び造粒してワックス粒子を製造することができる。また、ワックスが常温で液体である場合などは、適宜冷却して粉砕すればよい。ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、マクロゴール6000などは融点が44〜69℃程度であるため、製造時の温度管理が容易である点でも好ましい。
【0032】
ワックス粒子の粒径は、平均粒子径が例えば約2〜100μmであることが好ましく、約3〜50μmであることがより好ましく、約3〜30μmであることがさらに好ましい。
【0033】
ワックスをコア粒子にコーティングする方法としては、例えば、コア粒子とワックス粒子を混合する方法が挙げられる。具体的には、例えば撹拌羽根付き恒温混合機にコア粒子及びワックス粒子を仕込み、加熱しながら撹拌して混合する方法が挙げられる。加熱は、例えば、ワックス粒子の融点より数℃(例えば1〜5℃)高い程度(例えば60〜75℃程度)まで熱すればよい。また、加熱後は撹拌をしつつ冷却することが好ましい。コア粒子及びワックス粒子の使用量は特に制限されない。コア粒子に対しワックス粒子を過剰量用いてもよい。また、混合は、他の公知の混練機を用いて行ってもよい。
【0034】
このようにして得られるワックスコーティング粒子は、コア粒子表面にワックス層を有する粒子である。当該粒子中、ワックスの含有量は約3〜40質量%が好ましく、約5〜30質量%がより好ましい。また、ワックスコーティング粒子の平均粒子径は、コア粒子の平均粒子径を5としたとき、7程度が好ましい。具体的には、例えば12〜1020μm程度であり、好ましくは15〜1000μm程度である。
【0035】
バインダー及び被覆用化合物粒子
本発明のコーティング粒子の製造方法においては、ワックスコーティング粒子にバインダー及び被覆用化合物粒子を付着させる。
【0036】
バインダーとしては、製剤学的に許容される液状のバインダーを用いることができる。このようなバインダーは公知であり、例えば医薬品添加物時点2000(日本医薬品添加剤協会編集:薬事日報社)等に記載されている。常温で油状のものが好ましく、具体的には、クエン酸トリエチル、トリアセチン、ジブチルセバケート、ポリエチレングリコール(重量平均分子量100〜1000程度、特に200〜800程度が好ましい(例えばマクロゴール400))、プロピレングリコール、中鎖脂肪酸(例えば炭素数4〜8の脂肪酸)トリグリセリド(例えばミグリオール;カプリン酸トリグリセリド)等が例示できる。中でもクエン酸トリエチル、トリアセチン、ポリエチレングリコール等は、特に好ましい。
【0037】
バインダーは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
被覆用化合物粒子は、コア粒子にコーティングを施したい化合物の粒子である。当該粒子の平均粒子径は、コア粒子の平均粒子径の1/5以下が好ましく、1/10以下がより好ましい。具体的には、例えば0.005〜50μm程度が好ましく、0.01〜50μm程度がより好ましく、0.1〜10μm程度がさらに好ましい。
【0039】
被覆用化合物粒子は、特に制限されるものではなく、薬理活性物質(例えば医薬、農薬)、食品、香料、染料、顔料、金属、トナー等の粒子が例示できる。中でも薬物粒子であることが好ましい。つまり、医薬や農薬として用いられる化合物を含んでなる粒子であることが好ましい。薬理活性物質としては、特に制限されず、例えば中枢神経系用薬(アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナックナトリウム、塩酸メクロフェノキサート、クロルプロマジン、トルメチンナトリウム、塩酸ミルナシプラン、フェノバルビタール等)、末梢神経系用薬(エトミドリン、塩酸トルペリゾン、臭化エチルピペタナート、臭化メチルベナクチジウム、フロプロピオン等)、循環器官用薬(アミノフィリン、塩酸エチレフリン、塩酸ジルチアゼム、ジギトキシン、カプトプリル等)、呼吸器官用薬(塩酸エフェドリン、塩酸クロルプレナリン、クエン酸オキセラジン、クロペラスチン、クロモグリク酸ナトリウム等)、消化器官用薬(塩化ベルベリン、塩酸ロペラミド、シメチジン、塩酸ラニチジン、ファモチジン等)、冠血管拡張薬(ニフェジピン、ニカルジピン、ベラパミル等)、ビタミン剤(アスコルビン酸、塩酸チアミン、パントテン酸カルシウム、酪酸リボフラビン等)、代謝性製剤(メシル酸カモスタット、ミゾリビン、塩化リゾチーム等)、アレルギー用薬(塩酸シプロヘプタジン、塩酸ジフェンヒドラミン、酒石酸アリメマジン、トシル酸スプラタスト、マレイン酸ジフェンヒドラミン等)、化学療法剤(アシクロビル、エノキサシン、オフロキサシン、ピペミド酸三水和物、レボフロキサシン等)、抗生物質(エリスロマイシン、塩酸セフカペンピボキシル、セフテラムピボキシル、セフポドキシムプロキセチル、セファクロル、セファレキシン、クラリスロマイシン、ロキタマイシン等)などが挙げられる。
【0040】
被覆用化合物は、公知の方法により粉砕及び造粒することにより、その粒子径を調整することができる。例えば、被覆用化合物を公知の方法により粉砕して、所望の平均粒子径を有する粉末とし、当該被覆用化合物粉末を本発明に用いることができる。粉砕は、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル、ボールミル、遊星ボールミル等を用いて行い得る。また、パルスジェットやスプレードライ等の方法により得られる薬物粉末を用いることもできる。また、マイクロフルイダイザーを用いて薬物を微細化したナノクリスタルを、粉末化し、これを用いることもできる。凍結粉砕により得られた薬物粉末であってもよい。
【0041】
被覆用化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。つまり、被覆用化合物粒子は、1種又は2種以上の被覆用化合物を含んでなる粒子であり得る。
【0042】
またさらに、被覆用化合物粒子には、被覆用化合物以外にも任意成分が含まれてもよい。このような任意成分としては、例えば薬学的に許容される添加物が挙げられ、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、pH調整剤、界面活性剤、徐放化剤、安定化剤、酸味料、香料、流動化剤等が例示できる。これら任意成分の被覆用化合物粒子への配合量は適宜設定できる。また、被覆用化合物及び任意成分の混合及び造粒は公知の方法により行い得る。
【0043】
被覆用化合物粒子は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。すなわち、本発明のコーティング粒子は、1種又は2種以上の被覆用化合物粒子を含んでなる粒子である。
【0044】
ワックスコーティング粒子へバインダー及び被覆用化合物粒子を付着させる方法としては、これら(ワックスコーティング粒子、バインダー、及び被覆用化合物粒子)を混合する方法が例示できる。これらは、一度に混合を行ってもよいし、まずワックスコーティング粒子及びバインダーを混合した後、さらに被覆用化合物粒子を加えて混合してもよい。つまり、ワックスコーティング粒子にバインダー及び被覆用化合物粒子を一度に付着させてもよいし、ワックスコーティング粒子にバインダーを付着させた後、被覆用化合物粒子をさらに付着させてもよい。
【0045】
これらの混合は、圧縮力又は剪断力を作用させ得る公知の混合機を用いて行い得る。例えば、乳鉢;傾斜円筒型タンブラー、V型タンブラー、二重円錐型タンブラー等の回転容器式固体混合機;リボン型混合機、回転円盤型混合機、等の機械攪拌式混合機;内部羽根付V型タンブラー、内部羽根付二重円錐型タンブラー、万能混合機、ブラブレンダー型混合機、高速攪拌造粒機、高速楕円ロータ型混合機等の複合型固体混合機;ニーダーミキサー、インターナルミキサー、ミューラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ロールミル等の混合機;タービン型攪拌機、プルマージュ型攪拌機等の機械攪拌機;メカノミル、ハイブリダイザー等の、高速気流による衝撃力またはそれと機械攪拌とを用いる攪拌機、等が例示できる。より具体的には、例えば、撹拌羽根つき恒温混合機を用いて混合することができる。撹拌羽根を、例えば100〜300rpm程度で回転させて混合することができる。当該混合は例えば1〜60分程度行えばよい。
【0046】
これらを混合する比率は、例えばワックスコーティング粒子100質量部に対して、バインダー3〜60質量部が好ましく、4〜50質量部がより好ましく、5〜40質量部がさらに好ましい。また、ワックスコーティング粒子100質量部に対して、被覆用化合物粒子30〜200質量部が好ましく、40〜150質量部がより好ましい。
【0047】
バインダー及び被覆用化合物粒子が付着したワックスコーティング粒子の加熱
ワックスコーティング粒子にバインダー及び被覆用化合物粒子を付着させた後、当該粒子(即ち、バインダー及び被覆用化合物粒子が付着したワックスコーティング粒子)を加熱する。
【0048】
当該加熱は、バインダー及び被覆用化合物粒子を付着させる操作と同時に行ってもよい。つまり、例えば、ワックスコーティング粒子、バインダー、及び被覆用化合物粒子を混合しつつ、加熱を行ってもよい。また、ワックスコーティング粒子及びバインダーを混合し、さらに被覆用化合物粒子を加えて混合しつつ加熱を行ってもよい。
【0049】
加熱は、ワックスの融点以上まで行う。ワックスが融点以上まで加熱されることで、ワックスが溶解する。その後冷却(ワックスの融点以下まで)すれば、ワックスは再度固まる。当該加熱冷却操作により、被覆用化合物粒子が強固に固定される。つまり、被覆用化合物粒子が強固にコーティングされる。ワックスの溶解及び再固化により、被覆用化合物粒子が強固に固定されるとも考えられるが、当該効果は、ワックスのみを溶融し再度固化しても得ることができない。つまり、ワックスのみでは、被覆用化合物粒子は強固には固定されず、むしろ剥がれやすい。限定的な解釈を望むものではないが、溶解したワックスはバインダーと混じり合い、被覆用化合物粒子間に充填されて固まることとなり、被覆用化合物粒子がより強固に固定されると考えられる。なお、これらの説明から明らかなように、加熱後は、融点程度以下(好ましくは融点より5〜10℃低い温度)まで冷却し、ワックスを再度固める必要がある。
【0050】
上記の通り、加熱温度はワックスの融点が目安となるため、加熱温度は用いるワックスの種類に応じて適宜設定することができる。例えば、35〜85℃程度、好ましくは45〜75℃程度が例示できる。また、加熱時間も適宜設定できる。例えば10分〜2時間程度が例示できる。
【0051】
このようにして得られる被覆用化合物コーティング粒子の平均粒子径は、好ましくは2〜1000μm程度、より好ましくは5〜1000μm程度である。
【0052】
なお、このようにして得られる被覆用化合物コーティング粒子は、強固に被覆用化合物粒子がコーティングされるため、製造時において被覆用化合物粒子が剥がれて汚染が起こるということもない。例えば、被覆用化合物が生理活性物質等人体に影響を与えるものである場合は、それが剥がれて皮膚若しくは呼吸経由で人体に取り込まれるのは好ましくない。また、被覆用化合物がトナー等着色するものである場合、それが剥がれて周囲を汚染するのは好ましくない。本発明の被覆用化合物コーティング粒子であれば、被覆用化合物粒子が強固にコーティングされるため、製造時及び完成後において被覆用化合物が剥がれて周囲を汚染するという問題が解消される。この点においても、本願発明は優れている。
【0053】
コーティングポリマーによる更なるコーティング
本発明のコーティング粒子の製造方法では、上記のようにして被覆用化合物粒子をコア粒子へコーティングした後、さらにコーティングポリマーによりコーティングを行うことができる。つまり、さらに、(C):工程(B)を経て得られる粒子をコーティングポリマーでコーティングする工程、を含むことができる。
【0054】
被覆用化合物粒子を含む層(被覆用化合物粒子コーティング層)を1次コーティング層とすれば、ポリマーコーティング層は、当該1次コーティング層上にコーティングされる2次コーティング層といえる。以下、このような表記(「1次コーティング層」及び「2次コーティング層」)を用いる場合がある。また、当該1次コーティング層のみを有するコーティング粒子を、以下1次コーティング粒子ということがある。また、当該1次コーティング層及び2次コーティング層を有するコーティング粒子を、2次コーティング粒子ということがある。なお、当該1次コーティング層にはワックス、バインダー、及び被覆用化合物粒子が含有される。当該2次コーティング層はコーティングポリマーを含有してなる。本発明のコーティング粒子の製造方法において、コーティングポリマーによるコーティングをも施した場合、得られるコーティング粒子は2次コーティング粒子であり、当該粒子はコア粒子、1次コーティング層、及び2次コーティング層からなる。コーティングポリマーによるコーティングを施す前の粒子は1次コーティング粒子であり、当該粒子はコア粒子、及び1次コーティング層からなる。さらに言えば、上述の方法で得られる粒子が1次コーティング粒子である。つまり、上述のようにして、バインダー及び被覆用化合物粒子が付着したワックスコーティング粒子を加熱冷却することで、1次コーティング粒子を製造することができる。
【0055】
コーティングポリマーとしては、例えばセルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、生体内分解性ポリマー等が例示できる。
【0056】
セルロース系ポリマーとしては、具体的には、エチルセルロース(例えば、信越化学社製EC N-10F、日本カラコン社製Surerease)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(例えば、信越化学社製AQOAT)、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース等が例示できる。好ましくはエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートである。
【0057】
アクリル系ポリマーとしては、具体的には、例えば、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(E100、EPO)、メタアクリル酸−メチルメタアクリレートコポリマー(L100、L100-55)メタアクリル酸−メチルメタクリレートコポリマー(S-100)、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(RL100、RLPO)アミノアルキルメタクリレートコポリマー(RS100、RSPO)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(FS30)などが挙げられる。例えば、市販品としてオイドラギットシリーズを好ましく用いることができる。なお、これらポリマー名の後の括弧内の記載はオイドラギットシリーズの名称である。好ましくは、オイドラギットEPO、L100、L100-55、S-100、RLPO、RSPOである。
【0058】
生体内分解性ポリマーとしては、具体的には、例えば、ポリ乳酸(ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−DL−乳酸)、グリコール酸、ε−カプロラクトン、N−メチルピロリドンなどのホモポリマー、コポリマー又はこれらポリマーの混合物、ポリカプロラクタム、キチン、キトサン等が挙げられる。
【0059】
また、コア粒子の説明において“ポリマー粒子を形成するポリマー”として述べた“ビニル系ポリマー”も、コーティングポリマーとして用いることができる。
なお、コーティングポリマーは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。乾式コーティングでは、コーティングポリマーとして多種多用なポリマーを組み合わせて用いることが容易であり、この特性を利用して様々な効果をコーティング粒子に付与することができる。例えば、アミノアルキルメタクリレートコポリマーと水溶性高分子をコーティングポリマーとして用いることで、コア粒子又は被覆用化合物粒子が苦みを有する物質である場合、苦み物質の溶出速度を制御するため等に有効である。この場合、水溶性高分子としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PVA(ポリビニルアルコール)コポリマー、プルラン、ポリエチレンオキサイド等が例示できる。なお、PVAコポリマーは、例えばWO02/017848に記載される硬カプセルの主体として用いられるPVAコポリマーを好ましく用いることができる。
【0060】
コーティングポリマーを被覆用化合物粒子コーティング層上にコーティングする際には、コーティングポリマー粒子として用いるのが好ましい。コーティングポリマー粒子とするには、具体的には、例えば、市販品のポリマーを粉砕する、液状ポリマーであれば乾燥させて粉砕する、等の処理を行えばよい。また、例えば、ポリ乳酸等のエマルジョン粒子は、乾燥してからジェットミル等で処理すればよい。
【0061】
コーティングポリマーを造粒する方法は特に制限されず、公知の方法を用い得る。例えば、上述の被覆用化合物の粉砕及び造粒について例示したのと同様にして、コーティングポリマーを造粒することができる。コーティングポリマー粒子は、特に制限はされないが、平均粒子径が好ましくは0.05〜10μm程度、より好ましくは0.1〜10μm程度である。
【0062】
コーティングポリマーによるコーティングは、コーティングポリマー粒子を1次コーティング粒子に付着させ、これを溶解して造膜させることで行う。
【0063】
コーティングポリマーを1次コーティング粒子にコーティングする方法も特に制限されない。例えば、混合機を用いて、1次コーティング粒子及びコーティングポリマー粒子を混合することでコーティングを行い得る。混合機としては、例えば、傾斜円筒型タンブラー、V型タンブラー、二重円錐外タンブラー等の回転容器式固体混合機を好適に用い得る。混合時には加熱を行う。加熱は、使用するポリマーの融点(ガラス転移が起きるポリマーの場合はガラス転移温度)以上(好ましくは当該温度+1〜10℃)の温度で行う。よって、加熱温度は使用するポリマーの種類に応じて適宜設定できる。特に制限されないが、例えば50〜90℃程度が例示できる。
【0064】
これにより、コーティングポリマーが1次コーティング粒子に付着し、造膜される。限定的な解釈を望むものではないが、加熱により1次コーティング粒子のワックスが若干溶解し、溶解したワックスによりコーティングポリマー粒子の付着効率が高められていると考えられる。そして、付着したコーティングポリマー粒子そのものが加熱により融解して造膜されるものと考えられる。なお、このため、加熱温度をワックスの融点以上としてコーティングポリマーの付着を行った後、さらに加熱温度を高めてコーティングポリマーの融点(又はガラス転移温度)以上として造膜を行うこと(即ち、付着と造膜を2段階で行うこと)もできる。
【0065】
また、当該コーティング処理において、凝集防止剤(コーティングポリマー粒子が凝集するのを防止する)を用いてもよい。例えば、1次コーティング粒子及びコーティングポリマー粒子を混合する際、さらに凝集防止剤をも加えて混合することで、コーティングポリマー粒子が凝集するのを防止することができる。このような凝集防止剤としては、軽質無水ケイ酸、タルク、酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム等が例示できる。
【0066】
当該コーティングを混合により行う好適な一態様として、具体的には例えば、1次コーティング粒子、コーティングポリマー粒子、及び凝集防止剤を恒温円錐型回転混合機に入れ、60〜80℃程度の熱を加えながら、0.5〜6時間程度混合する方法が挙げられる。
【0067】
コーティングポリマーの使用量は、例えば、1次コーティング粒子を100質量部用いる場合、好ましくは5〜250質量部程度、より好ましくは10〜200質量部程度である。
【0068】
このようにして得られるコーティング粒子(2次コーティング粒子)の平均粒子径は、通常5〜1000μm程度であり、好ましくは10〜500μm程度である。
【0069】
1次コーティング粒子及び2次コーティング粒子
本発明は、上記1次コーティング粒子及び2次コーティング粒子を包含する。
【0070】
1次コーティング粒子は、コア粒子、及び1次コーティング層からなり、当該1次コーティング層にはワックス、バインダー、及び被覆用化合物粒子が含有される。また、2次コーティング粒子は、コア粒子、1次コーティング層、及び2次コーティング層からなり、当該2次コーティング層はポリマーコーティング層であって、コーティングポリマーを含有してなる。上記工程(A)及び(B)を経て得られる粒子は1次コーティング粒子といえ、また、さらに工程(C)を経て得られる粒子は2次コーティング粒子といえる。
【0071】
1次コーティング粒子及び2次コーティング粒子の各構成成分や平均粒子径等の各種条件は、上述の内容の通りである。
【0072】
1次コーティング層の厚さは、特に制限されないが、被覆用化合物粒子の平均粒子径より厚くなるのが通常である。例えば、好ましくは1〜30μm程度、より好ましくは1〜25μm程度である。また、2次コーティング層の厚さも特に制限されない。例えば、好ましくは3〜200μm程度、より好ましくは5〜150μm程度である。なお、各コーティング層の厚さは、コーティング粒子の平均粒子径の差を2で割ることで算出できる。つまり、例えば1次コーティング層の厚さは、以下の式で算出できる。
(1次コーティング粒子平均粒子径−コア粒子平均粒子径)/2
また、2次コーティング層の厚さは、以下の式で算出できる。
(2次コーティング粒子平均粒子径−1次コーティング粒子平均粒子径)/2
【0073】
また、1次コーティング粒子における、ワックスコーティング粒子、バインダー、及び被覆用化合物粒子、それぞれの質量部比は、ワックスコーティング粒子を100とした場合、バインダーは0.1〜30程度が好ましく、被覆用化合物粒子は0.5〜200程度が好ましい。特に、コーティングの目的が表面改質等である場合は、コーティング膜は薄くなるため、バインダーは0.1〜5程度、被覆用化合物粒子は0.5〜40程度が好ましい。また、被覆用化合物粒子として薬理活性物質を用いる場合(特にコーティング粒子を医薬として用いる場合)は、バインダー5〜30、被覆用化合物粒子30〜200程度が好ましい。
【0074】
さらに、2次コーティング粒子における、ワックスコーティング粒子、バインダー、被覆用化合物粒子、及びコーティングポリマー、それぞれの質量部比は、ワックスコーティング粒子を100とした場合、バインダー及び被覆用化合物粒子は上記1次コーティング粒子の場合と同様であり、コーティングポリマーは0.5〜500程度が好ましい。特に、コーティングの目的が表面改質等である場合は、コーティング膜は薄くなるため、コーティングポリマーは0.5〜70程度が好ましい。また、被覆用化合物粒子として薬理活性物質を用いる場合(特にコーティング粒子を医薬として用いる場合)は、コーティングポリマーは20〜500程度が好ましい。
【0075】
このような1次コーティング粒子及び2次コーティング粒子は、例えば、医薬、農薬、化粧品、トナー、塗料、衛生用品(トイレタリー)、触媒等として好ましく用いることができる。特に医薬分野では、苦味マスク製剤、持続性製剤、腸溶性製剤等として好ましく用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、図1に、本願発明のコーティング粒子の製造方法の概要を示す。また、以下“回収率”は、投入した原料の質量を100%とした場合の、回収できた製造物の質量の割合(%)を示したものである。また、以下、粒子の平均粒子径は、被覆化合物粒子は除き、特に断らない限り、目開きが0、32、44、53、63、74、90、106、125、149、177、210、250、297、355、420(μm)のメッシュを備えたロータップシェイカー(飯田製作所製)を用いてふるい分けを行い、その結果から、ふるい下積算重量%と粒子径の関係を求め、50重量%径を算出して求めた重量平均粒子径である。
【0077】
被覆用化合物粒子の平均粒子径はメジアン系(d50)であり、レーザー散乱式粒子径測定装置(LDSA-2400A、東日コンピュータアプリケーション)を用いて求めた。
【0078】
製造例1:ワックスコーティング粒子の製造1
〔原料〕
[コア粒子]
結晶性セルロース球形顆粒(セルフィアSCP-100;旭化成社製)を53〜90μmに分級(ロータップシェイカー)したものをコア粒子として使用した。当該コア粒子の平均粒子径は79.5μmであった。なお、以下、当該セルフィアSCP-100をSCPと称することがある。
【0079】
[ワックス]
ステアリン酸(日油化学社製)を、分級ローター内設流動層式ジェットミル(ポケットジェット;栗本鐵工所製)により、分級ロータ回転速度15000rpm、操作圧0.6MPaの条件下で処理し、得られた平均粒子径5.5μm(レーザー散乱式粒子径測定装置; LDSA−2400A, 東日コンピュータアプリケーションで測定)の粒子をワックス粒子として使用した。なお、以下、当該ステアリン酸をSAと称することがある。
【0080】
〔製造方法〕
SCP17gとSA3gを攪拌羽根付き恒温混合機(図2に模式図を示す。当該混合機を以下AMTと称することがある)に仕込み、攪拌羽根回転数200rpmで10分間混合した後、65℃に昇温して攪拌羽根回転数200rpm、1時間の恒温下でさらに混合を行った。その後回転は継続し、系を冷却(30℃程度まで)した。冷却時間は、1時間45分であった。当該操作により、ワックスコーティング粒子が得られた。当該ワックスコーティング粒子(SAで乾式コーティングされたSCP)を以下、SCP/SAと称することがある。なお、AMTからの回収率は96.4%であった。
【0081】
〔ワックスコーティング粒子の評価〕
マイクロスコープ(キーエンス社製)を用いて得られたSCP/SAを観察したところ、SCP/SAの表面はSAの光沢を有していた。また、コア粒子のSCPの形状に類似した形状を有していた。これらのことから、SAがSCPの表面を均一に被覆(コーティング)していることが確認された。さらに、SCPとSCP/SAを水に分散させたところ、SCPは直ぐに沈降するが、SCP/SAは沈降しなかった。このことからも、SCP表面がSAによってコーティングされていることがわかった。
【0082】
また、当該SCP/SAの平均粒子径は82.3μmであった
コーティング操作により、粒子が凝集したり、あるいはほとんどコーティングされなかったりする割合が少ない方が好ましい。そこで、当該コーティング操作において良好なコーティング粒子が得られた割合(収率)を計算した。
具体的には、当該収率(以下、マイクロカプセル化率と称することがある)は次の計算式によって求めた。

マイクロカプセル化率(%)= 100−(凝集率+SA単独凝集粒子率)

ここで、凝集率(%)はロータップシェイカーにより分級した際に106μm以上の粒子の画分率とした。また、SA単独凝集粒子率(%)は内部にSCP核粒子を含有しないSA単独凝集粒子の割合とし、具体的にはロータップシェイカー分級により53μm以下の粒子の画分率とした。その結果、凝集率は4.2%、SA単独凝集率は0%であり、マイクロカプセル化率は95.8%と算出された。このことから、当該コーティング操作により、非常に高効率に、良好なワックスコーティング粒子が得られることがわかった。
【0083】
製造例2:ワックスコーティング粒子の製造2
コア粒子として、結晶性セルロース球形顆粒(セルフィアSCP-100;旭化成社製)を32〜74μmに分級(ロータップシェイカー)したもの(平均粒子径57.6μm)を使用した以外は、製造例1と同様にしてワックスコーティング粒子を製造した。
【0084】
このようにして得られたワックスコーティング粒子(SCP/SA)のAMTからの回収率は97.5%であった。また、当該SCP/SAの平均粒子径は67.4μmであった。またさらに、ロータップシェイカーにより分級して90μm以上の粒子の分級画分率を凝集率(%)とし、32μm以下の粒子の分級画分率をSA単独凝集粒子率(%)としたところ、凝集率は3.0%、SA単独凝集率は0%であり、マイクロカプセル化率は97.0%と算出された。
【0085】
さらに、当該SCP/SA約3g程度をエタノール50mLに分散させ、SAを抽出し、これを乾固した後、SA量を計測して、SAコーティング率(用いたSA量に対するコーティングされたSA量)を算出したところ、96.9%であった。
【0086】
以上のことから、当該製造方法により高効率に良好なワックスコーティング粒子が得られること、及びコア粒子へのワックスのコーティング効率も良好であることがわかった。
【0087】
実施例1:1次コーティング粒子の製造1
〔原料〕
[ワックスコーティング粒子]
製造例1で得たSCP/SA(粒子径53〜106μmに分級されており、平均粒子径は約81.8μm)をワックスコーティング粒子として使用した。
【0088】
[バインダー]
クエン酸トリエチル(ナカライテスク;試薬特級)(以下、TECと称することがある)をそのまま使用した。
【0089】
[被覆用化合物粒子]
水溶性薬物であるカルバゾクロムスルホン酸ナトリウム(三和化学社製)(以下、CCSSと称することがある)を、製造例1で用いたのと同一のジェットミルで処理して粉砕、造粒した。得られた粒子の平均粒子径は5.0μmであった。これを被覆用化合物粒子として使用した。
【0090】
〔製造方法〕
製造例1で得たSCP/SA(53−106μm)6gとTEC1.2gをAMTにて混合した(回転数200rpm、1分間)。当該混合により、系は湿潤した状態となる、ここにCCSS7.2gを加えて、さらに66℃、回転数200rpm、40分間の条件で混合を行った。その後、混合は継続しつつ系を冷却(30℃程度まで)した。冷却時間は、約30分であった。当該操作により、1次コーティング粒子が得られた。当該1次コーティング粒子(TEC及びCCSSでコーティングされたSCP/SA)を以下、TEC−CCSS粒子と称することがある。なお、AMTからの回収率は98.0%であった。また、当該TEC−CCSS粒子の平均粒子径は99.5μmであった。
【0091】
〔1次コーティング粒子の評価〕
得られたTEC−CCSS粒子をマイクロスコープにより観察した。CCSSは、非常に強い黄色の物質である。TEC−CCSS粒子は黄色に着色され、色むらはなかった。このことから、SCP/SA粒子はCCSS粒子により均一にコーティングされていることがわかった。
得られたTEC−CCSS粒子の平均粒子径は99.5μmであった。
また、ロータップシェイカーにより分級した際の149μm以上の粒子の分級画分率を凝集率(%)とし、32μm以下の粒子の分級画分率をCCSS単独凝集粒子率(%)として、マイクロカプセル化率を算出した。その結果、凝集率は5.1%、CCSS単独凝集率は3.5%であり、マイクロカプセル化率は91.4%と算出された。
また、TEC−CCSS粒子のCCSS含量(水によりCCSSを抽出し、抽出液を分光光度計(波長363nm)により測定して算出)からCCSSコーティング率(用いたCCSSに対するコーティングされたCCSSの割合)を算出したところ、90.4%であった。
当該手順は、具体的には次の通りである。すなわち、約30mgのTEC−CCSSを精秤し、500mLの蒸留水に加えて20分間攪拌し、この上清5mLに10mLの蒸留水を加えて363nmにて吸光度を測定した。別に作成した検量線からCCSS濃度を算出し、TEC−CCSS粒子のCCSS含量を求めた。
【0092】
さらに、TEC−CCSS粒子におけるCCSSの固定化の強度を次の方法で調べた。すなわち、分級して得られた53−149μmのTEC−CCSS粒子に対して、目開き20μmの篩を備えたエアージェットシーブ(ALPINE社製)を用い、減圧処理(2.5kPa、3分)を行った。当該処理前後の重量減少は認められなかった。このことから、CCSSは強固に固定されていることがわかった。
【0093】
実施例2:1次コーティング粒子の製造2
〔原料〕
バインダーとしてトリアセチン(ナカライテスク;試薬特級)(以下、TAと称することがある)を用いた。ワックスコーティング粒子及び被覆用化合物粒子は、実施例1と同じものを用いた。
【0094】
〔製造方法〕
製造例1で得たSCP/SAを3.9gとTAを1.2g、AMTにて混合した(回転数200rpm、1分間)。当該混合により、系は湿潤した状態となる、ここにCCSS4.7gを加えて、さらに66℃、回転数200rpm、35分間の条件で混合を行った。その後、混合は継続しつつ系を冷却(30℃程度まで)した。冷却時間は、約30分であった。当該操作により、1次コーティング粒子が得られた。当該1次コーティング粒子(TA及びCCSSでコーティングされたSCP/SA)を以下、TA−CCSS粒子と称することがある。なお、AMTからの回収率は97.9%であった。また、当該TA−CCSS粒子の平均粒子径は97.5μmであった。
【0095】
〔1次コーティング粒子の評価〕
実施例1と同様にして、マイクロカプセル化率を検討した。その結果、凝集率は1.4%、CCSS単独凝集率は2.5%であり、マイクロカプセル化率は94.2%と算出された。
【0096】
実施例3:1次コーティング粒子の製造3
〔原料〕
バインダーとしてポリエチレングリコール(ナカライテスク社製:重量平均分子量400)(PEG400と称することがある)を用いた。ワックスコーティング粒子は製造例2で得た粒子(SCP/SA)を用いた。被覆用化合物粒子は、実施例1と同じもの(CCSS)を用いた。
【0097】
〔製造方法〕
製造例2で得たSCP/SA(32-90μmを使用した。平均粒子径は67.3μmである)を4gとPEGを0.8g、AMTにて混合した(回転数200rpm、1分間)。当該混合により、系は湿潤した状態となる、ここにCCSS4.8gを加えて、さらに67℃、回転数200rpm、30分間の条件で混合を行った。その後、混合は継続しつつ系を冷却(30℃程度まで)した。冷却時間は、約30分であった。当該操作により、1次コーティング粒子が得られた。当該1次コーティング粒子(PEG及びCCSSでコーティングされたSCP/SA)を以下、PEG−CCSS粒子と称することがある。なお、AMTからの回収率は95.0%であった。また、当該PEG−CCSS粒子の平均粒子径は74.4μmであった。
【0098】
〔1次コーティング粒子の評価〕
実施例1と同様にして、マイクロカプセル化率を検討した。その結果、凝集率は(125μ以上の粒子重量分率)4.3%、CCSS単独凝集率は1.7%であり、マイクロカプセル化率は94.0%と算出された。
【0099】
比較例1:バインダーを用いない1次コーティング粒子の製造1
バインダー(クエン酸トリエチル)を用いない以外は、実施例1と同様にして1次コーティング粒子を製造した。当該1次コーティング粒子を以下No−CCSS粒子と称することがある。No−CCSS粒子のCCSSの固定化の強度を、実施例1と同様の方法(エアージェットシーブを用いた減圧処理)で検討したところ、CCSSの86.4%が剥離した。なお、当該値は、シーブ処理前後の重量から算出した。
【0100】
実施例4:2次コーティング粒子の製造1
〔原料〕
[1次コーティング粒子]
実施例1と同様にして得たTEC−CCSS粒子(53−125μmに分級され、平均粒子径は96.9μm)を使用した。
【0101】
[コーティングポリマー]
アミノアルキルメタクリレートコポリマー(RSPO;エボニック社製)(以下、RSPOと称することがある)をコーティングポリマーとして用いた。具体的には、RSPOを分級ローター内設流動層式ジェットミル(分級ロータ回転速度6000rpm、操作圧0.6MPa)により処理し、平均粒子径5.0μm(レーザー散乱式粒子径測定装置; LDSA−2400A, 東日コンピュータアプリケーション)の粒子として、これをコーティングに用いた。なお、当該ポリマー粒子の凝集防止のため、凝集防止剤として軽質無水ケイ酸(アエロジル#200;日本アエロジル社製)を用いた。
【0102】
〔製造方法〕
TEC−CCSS粒子1gとRSPO1.5gを恒温円錐型回転混合機(内部にテフロン(登録商標)シートバッフルを装てん)(図3に模式図を示す。以下、当該混合機をRMTと称することがある。)に投入し、RMTの回転数60rpm、30℃で5分間混合した。その後、回転数60rpmにて、昇温して45℃になった時点(開始から合計時間15分)で、回転を止め、アエロジル25mgを投入し、再び、回転数60rpmにて昇温した。(66℃になった時点;投入開始から合計時間45分)で30分間RSPOを固定した。その後、再昇温して72℃、30分間造膜し、10分間冷却して2次コーティング粒子(RSPOでコーティングされた1次コーティング粒子)を得た。工程の総時間は125分であった。なお、以下得られた当該2次コーティング粒子を、RSPOマイクロカプセル(略してRSPO−MC)と称することがある。得られたRSPO−MCの収率は97.0%であった。
【0103】
〔2次コーティング粒子の評価〕
得られたRSPO−MCをマイクロスコープにより観察した。RSPO−MCの色は1次コーティング粒子のCCSSに由来する黄色であり、色むらはなかった。このことから、RSPOが均一に造膜されてコーティングがなされていることがわかった。
【0104】
また、RSPO−MCの平均粒子径は121.8μmであった。
【0105】
また、ロータップシェイカーにより分級した際の177μm以上の粒子の分級画分率を凝集率(%)とし、53μm以下の粒子の分級画分率をRSPO単独凝集粒子率(%)として、マイクロカプセル化率を算出した。その結果、凝集率は4.1%、RSPO単独凝集率は0%であり、マイクロカプセル化率は95.9%と算出された。
【0106】
試験例1:2次コーティング粒子の溶出試験
RSPO-MCの製剤学的有用性を検証するために以下の溶出試験を実施した。
【0107】
コア粒子として結晶性セルロース顆粒(以下、CPと称することがある)(セルフィアCP-203;旭化成社製、平均粒子径238.0μm)を用いて、実施例1と同様にして得たワックスコーティング粒子(CP/SA)をえた。そして、当該CP/SAを用い、実施例3と同様にして1次コーティング粒子(TEC−CCSS粒子)を得た。さらに、当該TEC−CCSS粒子を用い、実施例5と同様にしてRSPOをコーティングし、以下の各2次コーティング粒子(CP−RSPO−MC)を得た。
【0108】
CP-RSPO-MC(20) (RSPOコーティング膜量が20wt%のもの)
CP-RSPO-MC(24) (RSPOコーティング膜量が24wt%のもの)
CP-RSPO-MC(30) (RSPOコーティング膜量が30wt%のもの)
【0109】
また、実施例1及び実施例4と同様にして、以下の各2次コーティング粒子(SCP−RSPO−MC)を得た。
【0110】
SCP-RSPO-MC(51) (RSPOコーティング膜量が51wt%のもの)
SCP-RSPO-MC(53) (RSPOコーティング膜量が53wt%のもの)
SCP-RSPO-MC(59) (RSPOコーティング膜量が59wt%のもの:上記実施例3で得られたもの)
【0111】
なお、各2次コーティング粒子のRSPOコーティング膜量は、次のようにして求めた。すなわち、RSPOコーティングに使用した核粒子であるTEC−CCSS粒子のCCSS含量、及び各2次コーティング粒子のCCSS含量を測定して(分光学的測定法;363nmの吸光度を用いて求めた)、そのCCSS濃度比から各2次コーティング粒子のRSPOコーティング膜量を求めた。
【0112】
以上の各2次コーティング粒子を溶出試験に用いた。溶出試験は、第15改正日本薬局方に記載の溶出試験法第2法(パドル、100rpm)に従って行った。溶出試験液として蒸留水900mL、37℃を使用した。溶出試験液注に溶出するCCSS量を吸光度(363nm)から求めた。結果を図4に示す。なお、図4下図は、図4上図の溶出時間1時間までの部分を拡大した図である。
【0113】
図4から、いずれの2次コーティング粒子であっても、良好な徐放性を有していることが確認できた。また、コア粒子の粒径や種類によって、溶出速度が異なることが確認できた。そして、RSPOコーティング量が増加するに伴って、CCSSの溶出速度が減少したことが確認できた。さらに、小サイズのコア粒子(SCP:平均粒子径;79.5μm)を用いて得られた各SCP-RSPO-MCであっても、試験開始から徐々に溶出が起こっており(図4下図)、溶出のバーストの無い膜が得られていることがわかった。
【0114】
以上のことから、コア粒子のサイズや種類等を変更する、又はポリマーコーティング量を調整する等により、様々な溶出速度を有し、かつ溶出のバースト等のない優れた品質を有するコーティング粒子を製造できることが解った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) コア粒子をワックスでコーティングしたワックスコーティング粒子に、バインダー及び被覆用化合物粒子を付着させる工程
(B) 工程(A)で得られる粒子を、前記ワックスの融点以上にまで加熱する工程
を含む、被覆用化合物がコーティングされたコーティング粒子の製造方法。
【請求項2】
バインダーが、クエン酸トリエチル、トリアセチン、ジブチルセバケート、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、中鎖脂肪酸、及びトリグリセリドからなる群より選択される、少なくとも1種である、請求項1に記載のコーティング粒子の製造方法。
【請求項3】
ワックスが、有機脂肪酸、有機脂肪酸のエステル誘導体、高級アルコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、油脂硬化油及び天然ワックスからなる群より選択される、少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のコーティング粒子の製造方法。
【請求項4】
コア粒子の平均粒子径が1〜1000μmである、請求項1〜3のいずれかに記載のコーティング粒子の製造方法。
【請求項5】
被覆用化合物が薬物である、請求項1〜4のいずれかに記載のコーティング粒子の製造方法。
【請求項6】
被覆用化合物粒子の平均粒子径が、コア粒子の平均粒子径の1/5以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のコーティング粒子の製造方法。
【請求項7】
さらに、
(C) 工程(B)を経て得られる粒子をコーティングポリマーでコーティングする工程
を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のコーティング粒子の製造方法。
【請求項8】
コーティングポリマーが、セルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、及び生体内分解性ポリマーからなる群より選択される、少なくとも1種である、請求項7に記載のコーティング粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のコーティング粒子の製造方法により製造される、コーティング粒子。
【請求項10】
コア粒子上に被覆用化合物粒子コーティング層を有し、該被覆用化合物粒子コーティング層にワックス、バインダー及び被覆用化合物粒子が含有される、被覆用化合物コーティング粒子。
【請求項11】
ワックスが、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸、及びこれらのいずれかの脂肪酸とグリセリンとのモノエステル、並びにポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
バインダーが、クエン酸トリエチル、トリアセチン、ジブチルセバケート、及びポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
被覆用化合物が薬理活性物質である、
請求項10に記載の被覆用化合物コーティング粒子。
【請求項12】
さらに、被覆用化合物粒子コーティング層上に、ポリマーコーティング層を有する、請求項10又は11に記載の被覆用化合物コーティング粒子。
【請求項13】
ポリマーコーティング層が、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、及びポリ乳酸からなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含んでなる層である、請求項12に記載の被覆用化合物コーティング粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−87073(P2012−87073A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233050(P2010−233050)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(505030074)有限会社ファーマポリテック (3)
【Fターム(参考)】