説明

コードスイッチの製造方法及びコードスイッチ

【課題】簡易にコードスイッチ本体をゴムカバーに内包させるコードスイッチの製造方法及びコードスイッチを提供する。
【解決手段】ゴムカバー2の一部である台座部3のみを形成し、台座部3にコードスイッチ本体31を載置し、コードスイッチ本体31が載置された台座部3に未硬化のゴムカバー材料を塗布してコードスイッチ本体31を埋め込み、その後、ゴムカバー材料を硬化させることで台座部3と一体のゴムカバー2の残りの一部である圧力伝達部4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易にコードスイッチ本体をゴムカバーに内包させるコードスイッチの製造方法及びコードスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
自動開閉機能を有したドア、窓、シャッタ等の開閉装置が、ビル、店舗、ガレージ等多くの建造物や自動車において普及している。これに伴い、安全対策として、開閉部にセンサ類を取り付けることが検討されている。従来、このためのスイッチとして、例えば、図3(a)、図3(b)のような断面を有し、断面に直交する長手方向に所定の長さに形成された感圧センサ(以下、コードスイッチという)がある。図3(a)のコードスイッチ31は横断面が長方形のもの、図3(b)のコードスイッチ31は横断面が円形のものである。
【0003】
コードスイッチ31は、弾性を有する絶縁材料(例えば、発泡体)で構成された中空の弾性絶縁体32と、弾性絶縁体32の内面に複数本、間隔をおいて対向配置された導電部材(電極)33とを有する。コードスイッチ31は、例えば、シャッタの下端に取り付けられ、シャッタの下降中に何か(以下、反応物という)を挟んだとき、強く挟む前の軽い加圧段階で弾性絶縁体32が変形することで、2つ以上の導電部材33同士が導通し、これによりシャッタの下降を停止させるための検出信号が出力される。
【0004】
コードスイッチ31は、シャッタ等の開閉装置に取り付ける際、コードスイッチ31に傷が付かないように保護する目的、衝撃を吸収する目的、開閉装置に支持、固定する目的で、ゴム部品(以下、ゴムカバーという)の中に入れ込む。
【0005】
図4(a)、図4(b)に示されるように、従来のゴムカバー41は、コードスイッチ(以下、コードスイッチ本体という)31を収容するための空隙42と、その空隙42を囲う弾性体外殻43とからなる。弾性体外殻43は、反応物からの圧力により変形してその圧力を空隙42内のコードスイッチ本体31に伝える圧力伝達部44と、ゴムカバー41を所望の取り付け場所に固定する台座部45とからなる。圧力伝達部44には、コードスイッチ本体31に圧力を効率よく伝えるため、低硬度のゴムや発泡ゴムが用いられる。
【0006】
図4(a)のゴムカバー41は、図3(a)のコードスイッチ本体31を収容するためのものであり、圧力伝達部44内の空隙42が略長方形の断面に形成される。図4(b)のゴムカバー41は、図3(b)のコードスイッチ本体31を収容するためのものであり、圧力伝達部44内の空隙42が略円形の断面に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−72395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、コードスイッチ本体31をゴムカバー41に収容する方法は、長手方向の端からゴムカバー41の空隙42にコードスイッチ本体31を挿入するという方法である。
【0009】
しかし、長手方向の端からゴムカバー41の空隙42にコードスイッチ本体31を挿入する作業は、大変であり時間がかかる。特に、設置場所が曲がっていることを考慮してゴムカバー41に曲げ加工(例えば、図4(b)の曲げ部46)が事前に施されている場合やコードスイッチ本体31及びゴムカバー41が長尺の場合は、挿入が非常に困難で作業に時間がかかる。
【0010】
更に、従来は、ゴムカバー41へのコードスイッチ本体31の挿入をし易くするため、ゴムカバー41の空隙42の径をゴムカバー本体31の径に対してクリアランスを持たせて大きくしている。この結果、コードスイッチ本体31がゴムカバー41に収容された状態でしっかり固定されておらず、反応物に対しての検知性が悪化してしまう。
【0011】
特許文献1に記載のように、ゴムカバーの空隙を拡張処理してコードスイッチ本体を挿入し、その後、空隙を収縮処理する方法もあるが、工程が増えて煩雑になってしまう。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、簡易にコードスイッチ本体をゴムカバーに内包させるコードスイッチの製造方法及びコードスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明のコードスイッチの製造方法は、中空部を有する弾性絶縁体の前記中空部に複数の導電部材が間隔をおいて対向配置されたコードスイッチ本体をゴムカバーに内包させたコードスイッチの製造方法において、
前記ゴムカバーの一部である台座部のみを形成し、前記台座部に前記コードスイッチ本体を載置し、前記コードスイッチ本体が載置された前記台座部に未硬化のゴムカバー材料を塗布して前記コードスイッチ本体を埋め込み、その後、前記ゴムカバー材料を硬化させることで前記台座部と一体の前記ゴムカバーの残りの一部である圧力伝達部を形成するものである。
【0014】
前記圧力伝達部を発泡体ウレタンゴムで形成してもよい。
【0015】
また、本発明のコードスイッチは、中空部を有する弾性絶縁体の前記中空部に複数の導電部材が間隔をおいて対向配置されたコードスイッチ本体がゴムカバーに内包されたコードスイッチであって、前記ゴムカバーは、前記ゴムカバーの一部である台座部と、前記台座部に前記コードスイッチ本体が載置された状態で前記コードスイッチ本体を埋め込むように前記台座部に塗布された未硬化のゴムカバー材料が硬化することで形成された、前記台座部と一体の前記ゴムカバーの残りの一部である圧力伝達部と、を有するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、簡易にコードスイッチ本体をゴムカバーに内包させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態を示すコードスイッチの製造工程を示す横断面付き斜視図である。
【図2】本発明のコードスイッチを取り付け場所に取り付けた横断面図である。
【図3】図3(a)、図3(b)は、コードスイッチ(本体)の横断面図である。
【図4】図4(a)、図4(b)は、従来のコードスイッチの横断面付き斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
図1(b)に示されるように、本発明のコードスイッチ1は、中空部を有する弾性絶縁体(図3参照)32の中空部に複数の導電部材33が間隔をおいて対向配置されたコードスイッチ本体31がゴムカバー2に内包されたコードスイッチ1であって、ゴムカバー2は、ゴムカバー2の一部である台座部3と、台座部3にコードスイッチ本体31が載置された状態でコードスイッチ本体31を埋め込むように台座部3に塗布された未硬化のゴムカバー材料が硬化することで形成された、台座部3と一体のゴムカバー2の残りの一部である圧力伝達部4とを有する。
【0020】
ゴムカバー材料は、未硬化の状態では塗布可能な流動体であり、硬化後は固形となる。ゴムカバー材料は、例えば、未架橋の樹脂であり、未架橋の状態では未硬化であるが加熱等によって架橋すると硬化する。
【0021】
本発明のコードスイッチ1の製造方法は、図1(a)に示されるように、ゴムカバー2の一部である台座部3のみを形成する第1工程と、台座部3にコードスイッチ本体31を載置する第2工程と、図1(b)に示されるように、コードスイッチ本体31が載置された台座部3に未硬化のゴムカバー材料を塗布してコードスイッチ本体31を埋め込む第3工程と、その後、ゴムカバー材料を硬化させることで台座部3と一体のゴムカバー2の残りの一部である圧力伝達部4を形成する第4工程とを有する。
【0022】
コードスイッチ本体31は、図3(a)、図3(b)のどちらのコードスイッチ本体31を用いてもよいが、ここでは図3(b)のコードスイッチ本体31を用いるものとする。
【0023】
第1工程で製造されるゴムカバー2の台座部3は、略長方形の断面を有し、取り付け場所との接合面3aに溝5が形成されたものである。台座部3は、接合面3aの背面にあたる載置面3bにコードスイッチ本体31を載置するようになっている。
【0024】
第2工程では、この台座部3の載置面3bにコードスイッチ本体31を沿わせるように載置する。
【0025】
第3工程では、コードスイッチ本体31が載置された台座部3に未硬化のゴムカバー材料を塗布してコードスイッチ本体31を埋め込む。このときゴムカバー材料は、所望する圧力伝達部4の形状に成形する。
【0026】
第4工程では、ゴムカバー材料を硬化させる。これにより、コードスイッチ本体31が埋め込まれているゴムカバー材料が硬化し、圧力伝達部4となると共に台座部3と一体化する。
【0027】
その後、このコードスイッチ1を図2のように、凸部を有する取り付け場所6に取り付ける。凸部が台座部3の溝5に嵌合することで、固定が達成される。
【0028】
この製造方法によれば、台座部3にコードスイッチ本体31を載置した後に、圧力伝達部4を成形するようにしたので、従来課題であった挿入作業がなくなる。特に、曲げ部7などの複雑な形状のゴムカバー2についても、まず、その複雑な形状の台座部3を形成しておき、コードスイッチ本体31を台座部3に沿わせて載置し、その状態で未硬化のゴムカバー材料を塗布してコードスイッチ本体31を埋め込み、その後、ゴムカバー材料を硬化させることで、容易にコードスイッチ本体31がゴムカバー2に内包されることになる。特に、コードスイッチ1に曲げ部7を形成する場合、従来ではコードスイッチ本体31をゴムカバー41に挿入することが非常に困難であったが、本発明では、台座部3に曲げ部7を形成しておくだけでよいので、製造が容易になる。
【0029】
コードスイッチ1は、圧力伝達部4を発泡ウレタンゴムのような変形しやすい材料で構成することにより、反応物からの圧力を効率よくコードスイッチ本体31に伝えることができる。一方、台座部3は、圧力伝達部4よりも固い材料で構成することにより、取り付け場所6に対して強固に取り付けることができると共に、反応物からの圧力に対する反力をよく生じさせて検知性を向上させることができる。
【0030】
また、コードスイッチ1は、圧力伝達部4及び台座部3とコードスイッチ本体31との間に隙間が無くなるので、コードスイッチ本体31がゴムカバー2にしっかり固定され、反応物に対しての検知性が向上する。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
図1のコードスイッチ1を作製した。図3(b)のコードスイッチ本体31を外径4.5mm、長さ1.3mで作製し、ゴムカバー2の台座部3は、EPゴムにより長さ1.3m、押出成形により作製した。台座部3には、長手方向の端から0.7mの位置に角度90°、曲げ半径15mmの曲げ部7を作製した。
【0032】
その後、コードスイッチ本体31を台座部3に沿わせて載置し、その上に圧力伝達部4となるゴムカバー材料を厚さ1mmで塗布成形した。ただし、ゴムカバー材料の台座部3に近い箇所ではゴムカバー材料の厚さが1mmより厚くなるのは許容し、少なくともコードスイッチ本体31の中心より上部はゴムカバー材料の厚さが均一に1mmとなるようにした。このゴムカバー材料としては、発泡ウレタンゴムであるサンスター技研(株)製ペンギンフォーム(登録商標)3170タイプを用い、発泡倍率2倍(硬度アスカーC 35)で塗布し、その後、80℃×10分で硬化させた。なお、2倍発泡とは、未発泡状態の材料を発泡させることで体積が2倍となる発泡倍率である。
【0033】
[実施例2]
図1のコードスイッチ1を作製した。図3(b)のコードスイッチ本体31を外径4.5mm、長さ1.5mで作製し、ゴムカバー2の台座部3は、EPゴムにより長さ1.5mで作製した。台座部3には、長手方向の端から0.8mの位置に角度90°、曲げ半径10mmの曲げ部7を作製した。
【0034】
その後、コードスイッチ本体31を台座部3に沿わせて載置し、その上に圧力伝達部となるゴムカバー材料を厚さ1mmで塗布成形した。ただし、ゴムカバー材料の台座部3に近い箇所ではゴムカバー材料の厚さが1mmより厚くなるのは許容し、少なくともコードスイッチ本体31の中心より上部はゴムカバー材料の厚さが均一に1mmとなるようにした。このゴムカバー材料としては、発泡ウレタンゴムであるサンスター技研(株)製ペンギンフォーム(登録商標)3151タイプを用い、発泡倍率2.5倍(硬度アスカーC 25)で塗布し、その後、80℃×10分で硬化させた。
【0035】
[比較例1]
図4のように台座部45と圧力伝達部44が一体のゴムカバー41を押出成形により作製し、その後、コードスイッチ本体31を挿入した。コードスイッチ本体31の外径は4.5mm、ゴムカバー41の圧力伝達部44の空隙42は、内径5mmとした。他の条件(ゴムカバーに曲げ部がある点など)は実施例1と同じとした。
【0036】
[比較例2]
図4のように台座部45と圧力伝達部44が一体のゴムカバー41を押出成形により作製し、その後、コードスイッチ本体31を挿入した。コードスイッチ本体31の外径は4.5mm、ゴムカバー41の圧力伝達部44の空隙42は、内径5mmとした。他の条件(ゴムカバーに曲げ部がある点など)は実施例2と同じとした。
【0037】
実施例1のコードスイッチ1は、コードスイッチ本体31とゴムカバー2との間に隙間がなく、良好なコードスイッチ1となった。また、30本のコードスイッチ1についてコードスイッチ本体31を圧力伝達部4に内包させる作業に25分を消費した。すなわち、1本当たりの塗布時間が30秒であり、
30秒×30本=全数塗布時間15分
全数塗布時間15分+硬化時間10分=25分
である。
【0038】
実施例2のコードスイッチ1は、コードスイッチ本体31とゴムカバー2との間に隙間がなく、良好なコードスイッチ1となった。また、30本のコードスイッチ1についてコードスイッチ本体31を圧力伝達部4に内包させる作業に30分を消費した。すなわち、1本当たりの塗布時間が40秒であり、
40秒×30本=全数塗布時間20分
全数塗布時間20分+硬化時間10分=30分
である。
【0039】
比較例1のコードスイッチは、ゴムカバー41の空隙42にコードスイッチ本体31を挿入する際、ゴムカバー41に曲げ部があることも起因して、非常に入れづらく、時間を要した。この結果、コードスイッチ本体31とゴムカバー41との間に隙間が生じた。また、30本のゴムカバー41にコードスイッチ本体31を挿入する作業に90分を消費した。すなわち、1本当たりの挿入時間が3分であり、
3分×30本=90分
となった。
【0040】
比較例2のコードスイッチは、ゴムカバー41の空隙42にコードスイッチ本体31を挿入する際、ゴムカバー41に曲げ部があることも起因して、非常に入れづらく、時間を要した。この結果、コードスイッチ本体31とゴムカバー41との間に隙間が生じた。また、30本のゴムカバー41にコードスイッチ本体31を挿入する作業に120分を消費した。すなわち、1本当たりの挿入時間が4分であり、
4分×30本=120分
となった。
【0041】
以上の結果を比較すると、本発明のコードスイッチ1は、従来に比べて簡易にコードスイッチ本体31をゴムカバー2に内包させることができることが分かる。
【符号の説明】
【0042】
1 コードスイッチ
2 ゴムカバー
3 台座部
4 圧力伝達部
5 溝
6 取り付け場所
7 曲げ部
31 コードスイッチ本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する弾性絶縁体の前記中空部に複数の導電部材が間隔をおいて対向配置されたコードスイッチ本体をゴムカバーに内包させたコードスイッチの製造方法において、
前記ゴムカバーの一部である台座部のみを形成し、前記台座部に前記コードスイッチ本体を載置し、前記コードスイッチ本体が載置された前記台座部に未硬化のゴムカバー材料を塗布して前記コードスイッチ本体を埋め込み、その後、前記ゴムカバー材料を硬化させることで前記台座部と一体の前記ゴムカバーの残りの一部である圧力伝達部を形成することを特徴とするコードスイッチの製造方法。
【請求項2】
前記圧力伝達部を発泡体ウレタンゴムで形成することを特徴とする請求項1記載のコードスイッチの製造方法。
【請求項3】
中空部を有する弾性絶縁体の前記中空部に複数の導電部材が間隔をおいて対向配置されたコードスイッチ本体がゴムカバーに内包されたコードスイッチであって、
前記ゴムカバーは、
前記ゴムカバーの一部である台座部と、
前記台座部に前記コードスイッチ本体が載置された状態で前記コードスイッチ本体を埋め込むように前記台座部に塗布された未硬化のゴムカバー材料が硬化することで形成された、前記台座部と一体の前記ゴムカバーの残りの一部である圧力伝達部と、
を有することを特徴とするコードスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−9061(P2011−9061A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151219(P2009−151219)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】