説明

コーナーパッド

【課題】 直方体状の被包装物または包装箱の角部に粘着させて緩衝能力を与えるコーナーパッドであって、廃棄したときの環境への負荷が低く、簡単な加工手段で実現することができ、保管や輸送に手数がかからず、かつコストが低廉なものを提供する。
【解決手段】 キャップフィルム(1)にバックフィルム(2)を貼り合わせてなる二層構成のプラスチック気泡シート、またはさらにライナーフィルム(3)を貼り合わせてなる三層構成のプラスチック気泡シートを材料として使用し、中央に位置する正方形の領域(4)と、その隣接する二辺から伸びる同大の二つの領域(5A,5A)とからなる等辺山形形状のシートを打ち抜き加工により得、それぞれの正方形の領域ごとに、それより小さい面積の両面粘着テープ(7,7A,7A)を貼り、その露出する面に剥離紙(8,8A,8A)を載せる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック気泡シートを材料として製作した、包装用の緩衝材、とくに直方体状の被包装物または包装箱の角部に緩衝能力を与えるための、コーナーパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
包装箱の材料として好んで使用される段ボール紙は、緩衝性能の観点からはあまり性能の高いものではない。そこで、被包装物を段ボール箱に収容するに当たって、被包装物を緩衝包装材で包んだり、段ボール箱の外側に緩衝材を当てたりして、緩衝性能の不足をおぎなうことが行なわれている。このような目的に使用される緩衝材としては、たとえば発泡スチロール(EPS)の成型品が、その高い緩衝性能を買われて多用されているが、用途ごとに設計された成形型を用意する必要があるから、よほどの大量生産を行なわない限りコストが高い上、なによりも、廃棄によって環境に与える負荷が大きいことが問題である。
【0003】
緩衝材の廃棄に伴う問題を軽減するため、最近は、段ボール紙を加工し、適宜の形状に打ち抜いたものを複数枚重ねるなどして使用することが多くなったが、段ボール紙は水濡れに弱いという大きな欠点に加えて、紙粉が出やすく、とくに切断面が多い緩衝材はその危険が高いため、精密機械などの緩衝材として使用するには向いていないという問題がある。
【0004】
これに対し、包装用の緩衝材としてこれも多用されているプラスチック気泡シート、すなわち、プラスチックフィルムを真空成形して多数のキャップ状の突起を形成したキャップフィルムの、キャップの底部にプラスチックの平坦なバックフィルムを貼り合わせてなる材料(以下「気泡シート」)は、水に強く、紙粉が出ることもなく、また、環境に対してより軽い負荷しか与えない点で、有利である。
LCA−COリストに掲げられた値(COkg/kg):
EPS 3.01 気泡シート 1.24
【0005】
気泡シート、とくに、汎用されているキャップがあまり大きくないもの(径5〜10mm)は、1枚では緩衝能力が不足である。そこで、この問題の解決策の一つとして、出願人は、平坦な面に粘着剤を適用した気泡シートを繰り返し折り畳んで厚くしたものを熱加工し、または熱加工に切断を組み合わせて加工し、平当て、稜当て、角当てまたは隅当てなど、直方体状または板状の被包装物の緩衝のため適した、さまざまな形状をもったパッドを開発し、すでに提案した(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−292046
【0006】
この緩衝パッドは高性能であって、種々の局面に広く使用できる緩衝材であるが、何段階かの加工を経ているので、若干のコストがかかる。ところが、緩衝包装においては、多くの場合に、直方体状の被包装物または箱の四隅において、少し緩衝性能を高めてやれば、それで足りる場合が少なくないことが日常経験された。そのような、比較的軽い緩衝性能向上の必要を満たし、高度の加工を施す必要がなく、したがってコスト的には極めて有利であって簡単に実現することができ、かつ、保管や輸送が容易であり、環境への負荷が軽減された緩衝包装用の補助材料が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述した需要に答え、環境への負荷が低くて済む気泡シートを材料として使用し、簡単な加工手段で実現することができ、保管や輸送に手数がかからず、かつコストが低くて済む、直方体の角部に緩衝能力を与えることができるコーナーパッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコーナーパッドの基本的な態様は、図1に展開図を示すように、プラスチックフィルムを真空成形して多数のキャップ状の突起を形成したキャップフィルム(1)の、キャップの底部にプラスチックの平坦なバックフィルム(2)を貼り合わせてなる二層構成のプラスチック気泡シート、またはこの二層構成のプラスチック気泡シートのキャップの頂を連ねてもう1枚のプラスチックの平坦なライナーフィルム(3)を貼り合わせてなる三層構成のプラスチック気泡シートを材料として使用し、中央に位置する正方形の領域(4)と、その隣接する二辺から伸びる同大の二つの領域(5A,5A)とからなる等辺山形形状のシートを打ち抜き加工により得、それぞれの正方形の領域ごとに、両面粘着テープ(7,7A,7A)を貼り、それらの露出する面に剥離紙(8,8A,8A)を載せた構成の、被包装物または包装箱の角部に粘着させて緩衝能力を与えるコーナーパッド(I)である。図1のI−I方向の断面の一部を拡大して示せば、図3のようになる。
【0009】
本発明のコーナーパッドの変更態様は、図2に展開図を示すように、プラスチックシートを真空成形して多数のキャップ状の突起を形成したキャップフィルム(1)の、キャップの底部にプラスチックの平坦なバックフィルム(2)を貼り合わせてなる二層構成のプラスチック気泡シート、またはこの二層構成のプラスチック気泡シートのキャップの頂を連ねてもう1枚のプラスチックの平坦なライナーフィルム(3)を貼り合わせてなる三層構成のプラスチック気泡シートを材料として使用し、中央に位置する正方形の領域(4)と、その隣接する二辺から伸びるほぼ同大の二つの領域(5B,5C)とからなるほぼ等辺山形形状のシートであって、一方の領域(5B)の延長端に山型の内側に向かう突出片(6)をそなえたシートを打ち抜き加工により得、それぞれの正方形の領域ごとに、両面粘着テープ(7,7B,7C)を貼るとともに、突出片(6)にも両面粘着テープ(7A)を貼り、その露出する面に剥離紙(8,8A,8B,8C)を載せた構成の、被包装物または包装箱の角部に粘着させて緩衝能力を与えるコーナーパッド(II)である。
【0010】
図1に示した基本的な態様のコーナーパッド(I)の使用法は、つぎのとおりである。まず、被包装物または包装箱である直方体状の物体の角部の上面(または天地した下面)に対して、中央に位置する正方形の領域(4)を、上記した隣接する二辺がちょうど角部を構成する二辺に合致するようにのせ、両面粘着テープ(7)でその位置を固定し、ついで、残りの同大の二つの領域(5A,5A)を直方体状の物体の側面に沿わせ、それぞれの両面粘着テープ(7A,7A)によって貼り付け、固定する。
【0011】
別法としては、コーナーパッド(I)を平面上に置き、その上から直方体状の物体を、その角部がコーナーパッド(I)の中央に位置する正方形の領域(4)と合致するようにのせ、両面粘着テープ(7)によって両者の関係を固定した後、残りの同大の二つの領域(5A,5A)を直方体状の物体の側面に沿わせ、それぞれの両面粘着テープ(7A,7A)によって貼り付けて固定する、という手順に従ってもよい。
【0012】
図2に示した変更態様のコーナーパッド(II)の使用法は、上述したコーナーパッド(I)の使用法と同じ、直方体状の物体の上からコーナーパッド(II)を貼り付ける手順と、コーナーパッド(II)の上から直方体状の物体を載せる手順の、2種の方法に従うことができる。そのほか、図4にみるように、コーナーパッド(II)をして、あらかじめ直方体状の物体の角部に近い形状をとらせておく、という方法が可能である。このとき、前記した突出片(6)の両面粘着テープを利用して、ほぼ同大の二つの領域(5B,5C)を結合させることにより、この形状をとるべきことはいうまでもない。
【0013】
場合によっては、本発明のコーナーパッド、とくにコーナーパッド(I)は、複数枚重ねて使用することができる。図5はその一例を示したものであって、両面粘着テープ(7,7A)を貼り付けることにより、所望に応じて多数枚を重ね、必要な緩衝能力を与えたり、緩衝に適した空間を形成したりすることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のコーナーパッド(I)および(II)は、簡単な操作で、直方体状の包装箱や被包装物の角部に、緩衝能力を与えることができる。このコーナーパッドは、常用の気泡シートから製造したものであるから、使用済みのものは回収してプラスチックを再利用することができるし、再利用ができない場合は焼却処理することになるが、もともとプラスチックの使用量がすくなく、焼却が環境に与える負荷は低くて済む。その製造は、長尺の気泡シートを材料として使用し、打ち抜き・両面粘着テープの貼り付けなどの簡単な加工手段でできる。したがって、EPS緩衝材の製造に必要な金型とか加熱装置のような、特別な装置は不要である。製造したコーナーパッドは、使用まで平面状であるから、保管や輸送に手数がかからない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
上記のように、このコーナーパッドは低コストで製造できるが、とくに、長尺の気泡シートの打ち抜きを、図6(Iの場合)および図7(IIの場合)に示すようなパターンで行なえば、長尺の気泡シートから連続的に、無駄なく素材が得られ、推奨すべき態様である。
【0016】
コーナーパッドには、緩衝材として使用中は常に荷重がかかっていて、キャップ内に密閉されている空気は、圧力を受けて、キャップ外部に、プラスチックフィルムを通して押し出される傾向にある。キャップ内の空気が容易に逸出してしまえば、緩衝能力は低下し、輸送中の衝撃によって包装箱や被包装物が損傷を受けるおそれがある。したがって、要求される緩衝能力とくにその持続力にもよるが、気泡シートの材料としては、ガスバリヤ性の高いプラスチックを使用することが好ましい。そのようなプラスチックには、よく知られているように、ナイロンおよびエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂がある。所望であれば、帯電防止剤や防錆剤など、特別の機能をもった助剤を添加したプラスチックを材料とすることにより、機能性をもったコーナーパッドを製造することができる。
【0017】
気泡シートを緩衝包装に使用したとき、その緩衝能力を支配するものは、一般に、キャップの寸法・形状であって、キャップが大きい方が有力である。したがって、本発明のコーナーパッドの材料とする気泡シートは、これも当然に用途によって異なるが、通常は、キャップが、直径20〜50mm、高さ6〜20 mmのものが好適である。形状は、常用の円柱状が適切であるが、角柱状そのほか、異形断面のものでも差し支えない。
【0018】
本発明のコーナーパッドの材料とする気泡シートは、前述のように、キャップ+バックの二層構成、キャップ+バック+ライナーの三層構成のどちらでもよい。しかし、キャップが大きくなると三層構成のものは折り曲げ部分の歪みが問題になってくるので、二層構成の方が使いやすいといえる。二層構成の気泡シートを使用した場合は、キャップが直方体状のものの外側に向く態様の方が、キャップどうしのぶつかり合いという問題が原理的に生じないから、これが適切なものになる。こうした差が出るのは、キャップの径が50mm以上、高さが25mm以上の大型のキャップを採用した場合である。キャップを外側に向けて使用する態様では、当然に、バックシートの側に両面粘着テープ(7)を貼った構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のコーナーパッドの基本的な態様(I)の展開図。
【図2】本発明のコーナーパッドの変更態様(II)の展開図。
【図3】図1のI−I方向の断面の一部を拡大した図。
【図4】コーナーパッド(II)の、別の使用態様を説明する斜視図。
【図5】コーナーパッド(I)の、別の使用態様を説明する斜視図。
【図6】コーナーパッド(I)を、長尺の気泡シート原反から経済的に製造する打ち抜き方法を説明する図。
【図7】コーナーパッド(II)を、長尺の気泡シート原反から経済的に製造する打ち抜き方法を説明する図。
【符号の説明】
【0020】
1 キャップフィルム
2 バックフィルム
3 ライナーフィルム
4 中央に位置する正方形の領域
5A 同大の二つの領域
5B,5C ほぼ同大の二つの領域
6 突出片
7,7A,7B,7C 両面粘着テープ
8,8A,8B,8C 剥離紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムを真空成形して多数のキャップ状の突起を形成したキャップフィルム(1)の、キャップの底部にプラスチックの平坦なバックフィルム(2)を貼り合わせてなる二層構成のプラスチック気泡シート、またはこの二層構成のプラスチック気泡シートのキャップの頂を連ねてもう1枚のプラスチックの平坦なライナーフィルム(3)を貼り合わせてなる三層構成のプラスチック気泡シートを材料として使用し、中央に位置する正方形の領域(4)と、その隣接する二辺から伸びる同大の二つの領域(5A,5A)とからなる等辺山形形状のシートを打ち抜き加工により得、それぞれの正方形の領域ごとに、両面粘着テープ(7,7A,7A)を貼り、それらの露出する面に剥離紙(8,8A,8A)を載せた構成の、被包装物または包装箱の角部に粘着させて緩衝能力を与えるコーナーパッド。
【請求項2】
プラスチックシートを真空成形して多数のキャップ状の突起を形成したキャップフィルム(1)の、キャップの底部にプラスチックの平坦なバックフィルム(2)を貼り合わせてなる二層構成のプラスチック気泡シート、またはこの二層構成のプラスチック気泡シートのキャップの頂を連ねてもう1枚のプラスチックの平坦なライナーフィルム(3)を貼り合わせてなる三層構成のプラスチック気泡シートを材料として使用し、中央に位置する正方形の領域(4)と、その隣接する二辺から伸びるほぼ同大の二つの領域(5B,5C)とからなるほぼ等辺山形形状のシートであって、一方の領域(5B)の延長端に山型の内側に向かう突出片(6)をそなえたシートを打ち抜き加工により得、それぞれの正方形の領域ごとに、両面粘着テープ(7,7B,7C)を貼るとともに、突出片(6)にも両面粘着テープを貼り、それらの露出する面に剥離紙(8A,8B,8C)を載せた構成の、被包装物または包装箱の角部に粘着させて緩衝能力を与えるコーナーパッド。
【請求項3】
プラスチック気泡シートの材料として、ガスバリヤ性の高いプラスチックを使用した請求項1または2のコーナーパッド。
【請求項4】
キャップが、直径5〜50mm、高さ1.5〜25mmの円柱形状を有する請求項1〜3のいずれかのコーナーパッド。
【請求項5】
キャップが、直径5〜50mm、高さ1.5〜25mmの円柱形状を有する二層構成のプラスチック気泡シートを使用し、バックシートの側に両面粘着テープを貼った構成を有し、被包装物または包装箱の角部に粘着させたときに、キャップが外側に向く請求項1〜3のいずれかのコーナーパッド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のコーナーパッドを、複数個重ねて被包装物または包装箱の角部に粘着させることにより、所望の緩衝能力を与え行なう緩衝包装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−18305(P2010−18305A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179642(P2008−179642)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】