説明

コーヒー抽出液の製造方法

【課題】コクと香りに富み、かつ後味のキレの良いコーヒー抽出液の製造方法を提供すること。
【解決手段】焙煎コーヒー豆を水蒸気蒸留し留分を得る第1の工程と、水蒸気蒸留後の焙煎コーヒー豆を水系溶媒と接触させ原料コーヒー抽出液を得る第2の工程と、該原料コーヒー抽出液を多孔質吸着体に接触させ吸着体処理物を得る第3の工程と、該吸着体処理物と前記留分とを混合する第4の工程を含むコーヒー抽出液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー抽出液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーに含まれるクロロゲン酸類は生理効果を持つことが知られている。しかし、共存するヒドロキシヒドロキノンにより、生理効果の発現が阻害されることが知られている。このため、ヒドロキシヒドロキノンを除去する方法として、活性炭によりコーヒー抽出液を処理する方法が提案されている(特許文献1及び2)。
【0003】
一方、コーヒー飲料は嗜好品として広く愛好されている。コーヒー飲料の風味には、コク、キレ、香り等の多くの要素があり、バランスの取れたものが求められている。しかしながら、活性炭等の吸着剤で処理を行う場合、コクの低下や香りの低下が起きる場合があった。
【0004】
香りに富むコーヒー飲料の製造方法として、例えば、焙煎コーヒー豆を粉砕する工程で放出されるアロマ成分を、不活性ガスを用いて搬送し、溶媒にて捕集し、コーヒー抽出液に混合するコーヒー飲料の製造方法が知られている(特許文献3及び4)。また、オフフレーバーを改善し、コーヒー本来の風味を生かしたコーヒーエキスの製造方法として、コーヒー原料を2段階の水蒸気蒸留に供し、得られた留出液をコーヒー抽出液と混合する方法が知られている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−54057号公報
【特許文献2】特開2007−54058号公報
【特許文献3】特開2003−250447号公報
【特許文献4】特開2004−159583号公報
【特許文献5】特開2007−129937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの方法では香りの低下は改善されるものの、後味については改善されず、コク、香り及び後味のキレの両立について、なお改善が求められていた。
本発明の課題は、コクと香りに富み、かつ後味のキレの良いコーヒー抽出液の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
コーヒー抽出液の香りは、その揮発度の面から、トップノート、ミドルノート及びラストノートの3つのパートに分類することができる。本発明者らは、コーヒー抽出液を香味の観点から分析した結果、コーヒー抽出液の香りはトップノート及びミドルノートにより特徴付けられ、コーヒー抽出液の味はラストノートと密接に関連するとの知見を得た。
そして、焙煎コーヒー豆を水蒸気蒸留することにより香気成分を留分として分離し、水蒸気処理後の焙煎コーヒー豆から原料コーヒー抽出液を得、当該原料コーヒー抽出液に多孔質吸着体処理を施し、次いで吸着体処理物と上記留分を混合することにより、コクと香りに富み、かつ後味のキレの良いコーヒー抽出液を製造できることを、本発明者らは見出した。ここで、本明細書において「後味」とは、JIS Z 8144:2004に記載の「口内に残る感覚」をいう。
【0008】
すなわち、本発明は、
焙煎コーヒー豆を水蒸気蒸留し留分を得る第1の工程、
水蒸気蒸留後の焙煎コーヒー豆を水系溶媒と接触させ原料コーヒー抽出液を得る第2の工程、
該原料コーヒー抽出液を多孔質吸着体に接触させ吸着体処理物を得る第3の工程、及び
該吸着体処理物と上記留分とを混合する第4の工程
を含むコーヒー抽出液の製造方法を提供するものである。
【0009】
本発明はまた、上記製造方法により得られたコーヒー抽出液を含有する容器詰コーヒー飲料、及び上記製造方法により得られたコーヒー抽出液を用いて製造されるインスタントコーヒーを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コクと香りに富み、かつ後味のキレの良いコーヒー抽出液を提供することが可能であり、このようなコーヒー抽出液を工業的に有利に製造することができる。また、当該コーヒー抽出液を用いることで、嗜好性の高い容器詰コーヒー飲料及びインスタントコーヒーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(コーヒー抽出液)
先ず、本発明のコーヒー抽出液について説明する。
本発明のコーヒー抽出液は、香ばしさに富む(A)ピラジン類及び甘い香りに富む(B)フラン類と、後味のキレを低下させる物質である(C)グアヤコール類を含有するが、(C)グアヤコール類の含有量が顕著に低減されている。そのため、本発明のコーヒー抽出液は、コーヒー抽出液中の(A)ピラジン類及び(B)フラン類の存在比率が高められ、コクと香りが増強される結果、コクと香りが豊かで、かつ後味のキレが良いコーヒー抽出液となる。
【0012】
具体的には、本発明のコーヒー抽出液中の(A)ピラジン類と(B)フラン類の総量に対する(C)グアヤコール類の割合{(C)/[(A)+(B)]}は0.1以下が好ましく、より一層のコクと香ばしさの増強、後味のキレ改善の観点から、更に0.09以下、更に0.08以下、更に0.07以下であることが好ましい。他方、下限は特に限定されず0であってもよいが、製造効率の観点から、0.0001、更に0.001であることが好ましい。なお、本明細書において、各成分の含有量の測定方法は、後掲の実施例に記載の方法にしたがうものとする。
【0013】
また、本発明のコーヒー抽出液中の(A)ピラジン類と(B)フラン類との質量比[(B)/(A)]は、コク、香り及び後味のキレのバランスの観点から、0.005〜0.12、更に0.01〜0.11、更に0.02〜0.1であることが好ましい。
【0014】
ここで、本明細書において「(A)ピラジン類」とは、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、エチルピラジン、2−エチル−5−メチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、2−エチル−3−メチルピラジン、2−エチル−3,5−ジメチルピラジン及び3,5−ジメチル−2−メチルピラジンを包含する概念であり、本発明においてはこれらのうち少なくとも1種を含有すればよい。なお、本発明のコーヒー抽出液中の(A)ピラジン類の含有量は上記9種の合計量に基づいて定義される。
また、本明細書において「(B)フラン類」とは、2−メチルフラン、2-アセチルフランを包含する概念であり、本発明においてはこれらのうち少なくとも1種を含有すればよい。なお、本発明のコーヒー抽出液中の(B)フラン類の含有量は上記2種の合計量に基づいて定義される。
更に、本明細書において「(C)グアヤコール類」とは、グアヤコール、4−エチルグアヤコール及び4−ビニルグアヤコールを包含する概念であり、本発明においてはこれらのうち少なくとも1種を含有すればよい。なお、本発明のコーヒー抽出液中の(C)グアヤコール類の含有量は、上記3種の合計量に基づいて定義される。
【0015】
本発明のコーヒー抽出液には(D)クロロゲン酸類が含まれており、本発明のコーヒー抽出液中の(D)クロロゲン酸類の含有量は、コク、香り及び後味のキレのバランス、生理効果の観点から、0.01〜7質量%、更に0.01〜1質量%、更に0.05〜0.5質量%、殊更に0.1〜0.3質量%であることが好ましい。ここで、「クロロゲン酸類」とは、3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸及び5−カフェオイルキナ酸のモノカフェオイルキナ酸と、3−フェルラキナ酸、4−フェルラキナ酸及び5−フェルラキナ酸のモノフェルラキナ酸と、3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸及び4,5−ジカフェオイルキナ酸のジカフェオイルキナ酸を併せての総称である。クロロゲン酸類の含有量は上記9種の合計量に基づいて定義される。
【0016】
また、本発明のコーヒー抽出液は、(E)ヒドロキシヒドロキノンを含有していてもよく、本発明のコーヒー抽出液中の(E)ヒドロキシヒドロキノンの含有量は、風味及び生理効果の観点から、クロロゲン酸類量に対して0.1質量%未満、更に0.05質量%未満、更に0.03質量%未満、殊更に0.01質量%未満であることが好ましく、他方下限は特に限定されず0質量%であってもよい。
【0017】
(コーヒー抽出液の製造方法)
次に、本発明のコーヒー抽出液の製造方法について説明する。
本発明のコーヒー抽出液の製造方法は、第1から第4の工程を含むものである。以下、各工程について詳細に説明する。
【0018】
〔第1の工程〕
第1の工程は、焙煎コーヒー豆を水蒸気蒸留し留分を得る工程である。これにより、トップノートとミドルノートの一部を構成する香気成分を回収することができる。
【0019】
(コーヒー豆)
本発明において使用するコーヒー豆種としては、アラビカ種、ロブスタ種等が挙げられる。コーヒー豆の種類は特に限定されないが、例えば、ブラジル、コロンビア、タンザニア、モカ、キリマンジェロ、マンデリン、ブルーマウンテン等が挙げられる。中でも、コーヒー豆としては、コク、香り及び後味のキレのバランスの観点から、ブラジル産アラビカ種を含むことが好ましい。コーヒー豆は1種でもよいし、複数種をブレンドして用いてもよい。
【0020】
(焙煎)
コーヒー豆を焙煎により焙煎コーヒー豆とする方法については、特に制限はなく、焙煎温度、焙煎環境についても制限はないが、好ましい焙煎温度は100〜300℃であり、更に好ましくは150〜250℃である。好ましい焙煎方法としては、直火式、熱風式、半熱風式があり、回転ドラムを有している形式が更に好ましい。また、風味の観点より、焙煎後1時間以内に0〜100℃まで冷却することが好ましく、更に好ましくは10〜60℃である。
焙煎コーヒー豆の焙煎度としては、ライト、シナモン、ミディアム、ハイ、シティ、フルシティ、フレンチ、イタリアンがあり、ライト、シナモン、ミディアム、ハイ、シティが好ましい。焙煎度を色差計で測定したL値としては、通常10〜35、好ましくは15〜30、より好ましくは22〜28である。また、本発明においては、焙煎コーヒー豆として焙煎度の異なるコーヒー豆を混合してもよく、例えば、L値が15〜20のコーヒー豆と、L値が30〜35のコーヒー豆を混合し、L値の平均値が上記範囲内となるように組み合わせて使用することもできる。なお、L値の平均値は、使用する焙煎コーヒー豆のL値に、当該焙煎コーヒー豆の含有比率を乗じた値の総和として求められる。
【0021】
(仕込み)
焙煎コーヒー豆は粉砕を行わないまま水蒸気蒸留カラムへ仕込んでも差し支えないが、水蒸気蒸留カラム中で次工程の抽出操作をそのまま行う場合にはあらかじめ粉砕した上でカラムへ仕込むことが好ましい。その際の粉砕度合いは、極細挽き(0.250-0.500mm)、細挽き(0.300-0.650mm)、中細挽き(0.530-1.000mm)、中挽き(0.650-1.500mm)、中粗挽き、粗挽き(0.850-2.100mm)、極粗挽き(1.000-2.500mm)、あるいは平均粒径3mm、同5mm又は同10mm程度のカット品が挙げられる。
【0022】
(水蒸気蒸留)
本発明では、焙煎コーヒー豆中の香気成分を水蒸気により留出させる。
水蒸気蒸留は、公知の方法及び装置で行えばよく、特に制限されるものではない。
水蒸気蒸留の温度条件としては、香気成分を十分に留出させるために、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましく、90℃以上が更に好ましい。また、香気成分の変質防止の観点から、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。
水蒸気蒸留は、減圧、常圧、及び加圧のいずれの条件を採用することができる。すなわち、絶対圧で10〜1000kPaで行うことができるが、香気成分の確保の面から、50〜300kPaが好ましく、常圧が更に好ましい。
水蒸気の供給は、十分に香気成分を流出させるという観点より、焙煎コーヒー豆質量に対して、0.05〜5倍が好ましく、0.1〜2倍がより好ましい。また、流速は、焙煎コーヒー豆質量に対して、毎分0.01〜1倍、更に0.02〜0.5倍、更に0.03〜0.2倍で行うことが好ましい。
【0023】
(凝縮)
焙煎コーヒー豆から留出された蒸気は、凝縮器により液化され回収される。
留分の回収量(凝縮量)は、十分に香気成分を回収するという観点より、焙煎コーヒー豆質量に対して0.05倍以上が好ましく、0.1倍以上がより好ましい。また、雑味発生を抑制する観点より、凝縮量は、焙煎コーヒー豆質量に対して3倍以下が好ましく、2倍以下がより好ましく、1.5倍以下が更に好ましく、1倍以下が更に好ましく、0.5倍以下が更に好ましく、0.4倍以下が殊更に好ましく、0.3倍以下が殊更好ましい。かかる範囲にすることにより、程良い苦味のコーヒー抽出液を得ることができる。
また、本発明においては、凝縮温度を高く設定して蒸気の一部のみを回収することで、自然でバランスのよいコーヒー抽出液を得ることができる。凝縮温度は通常0℃以上であるが、かかる観点より、20℃以上が好ましく、70℃以上が更に好ましく、75℃以上が更に好ましく、80℃以上が殊更好ましい。液の回収率の観点より、凝縮温度は120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、95℃以下が更に好ましい。
凝縮率は、程良い苦味のコーヒー抽出液を得るという観点から、水蒸気供給量に対して80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が更に好ましい。また、十分な香気成分を回収するという観点から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上が更に好ましく、20質量%以上が更に好ましい。
【0024】
〔第2の工程〕
第2の工程は、水蒸気蒸留後の焙煎コーヒー豆に水系溶媒を接触させて抽出する工程である。これにより、ミドルノートの一部とラストノートを構成する香味成分を含む原料コーヒー抽出液を得ることができる。
【0025】
(抽出)
抽出方法は特に制限されないが、例えば、ボイリング式、エスプレッソ式、サイホン式、ドリップ式(ペーパー、ネル等)等が挙げられる。また、水蒸気蒸留カラム中でそのまま抽出を行うことも差し支えない。抽出時間は抽出方法により適宜選択可能であるが、例えば、10秒〜120分、好ましくは10〜30分である。
水系溶媒としては、水、アルコール水溶液、ミルク、炭酸水等が挙げられる。
水系溶媒のpH(20℃)は、通常4〜10であり、風味の観点から、5〜7が好ましい。なお、水系溶媒中にpH調整剤、例えば、重炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸、L−アルコルビン酸Naを含有させ、pHを適宜調整しても良い。
水系溶媒の温度は、60℃以上が好ましく、90℃以上が更に好ましい。なお、温度の上限は、100℃であることが好ましい。
水系溶媒の使用量は、焙煎コーヒー豆に対して、1〜12質量倍が好ましく、2〜7質量倍が更に好ましい。
原料コーヒー抽出液の固形分量は、抽出液のハンドリング効率の観点より1%以上が好ましく、2%以上がより好ましい。また、多孔質吸着体処理においてクロロゲン酸類の損失を防ぐという観点から、通常70%以下、30%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、20%以下が更に好ましい。ここで、本明細書において「固形分量」とは、後掲の実施例に記載の「Brixの測定方法」により測定されるものをいう。
また、本発明においては、原料コーヒー抽出液に、通常の焙煎コーヒー豆からの抽出液を添加してもよい。
【0026】
〔第3の工程〕
第3の工程は、原料コーヒー抽出液を多孔質吸着体で処理し、吸着体処理物を得る工程である。これにより、ラストノートに含まれる(C)グアヤコール類やヒドロキシヒドロキノン等の不要成分を除去することができる。ここで、本明細書において「吸着体処理物」とは、吸着体処理液、その濃縮物、及びその乾燥物も含む概念である。
【0027】
(多孔質吸着体)
本発明に用いる多孔質吸着体の種類としては、吸着技術便覧―プロセス・材料・設計−(平成11年1月11日、エヌ・ティー・エス発行、監修者:竹内 雍)に記載されている、炭素質吸着材、シリカ・アルミナ系吸着材、高分子吸着材、キトサン樹脂などが使用できる。コーヒー風味を残存させる観点から、炭素質吸着材が好ましい。
炭素質吸着材としては、ヒドロキシヒドロキノンを高い選択性をもって吸着する観点から、粉末状活性炭、粒状活性炭、活性炭繊維等の活性炭が好ましい。
【0028】
粉末状及び粒状活性炭の由来原料としては、オガコ、石炭やヤシ殻などがあるが、ヤシ殻由来のヤシ殻活性炭が好ましく、水蒸気などのガスにより賦活した活性炭が更に好ましい。このような水蒸気賦活活性炭の市販品としては、白鷺WH2c(日本エンバイロケミカルズ株式会社)、太閣CW(二村化学工業株式会社)、クラレコールGL(クラレケミカル株式会社)等が挙げられる。
【0029】
多孔質吸着体の使用量は、後味の雑味の原因物質を十分に除去するために、原料コーヒー抽出液の固形分量に対して0.1質量倍以上が好ましく、0.2質量倍以上がより好ましく、0.3質量倍以上が更に好ましく、0.4質量倍以上が殊更に好ましくい。また、コクを残すために、2質量倍以下が好ましく、1質量倍以下がより好ましく、0.8質量倍以下が更に好ましく、0.7質量倍以下が殊更に好ましい。
【0030】
(接触処理)
接触処理手段としては、例えば、バッチ法又はカラム通液法が挙げられる。
バッチ法としては、原料コーヒー抽出液に、多孔質吸着剤を加え−10〜100℃で0.5分〜5時間撹拌した後、吸着剤を除去すればよい。処理時の雰囲気としては、空気下、不活性ガス下(窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素)が挙げられるが、風味の観点より不活性ガス下が好ましい。
カラム通液法としては、吸着カラム内に吸着剤を充填し、原料コーヒー抽出液をカラム下部又は上部から通液させ、他方から排出させる。吸着剤の充填高さL及びD(径)の比L/Dは0.1〜10が好ましい。吸着剤のカラム内への充填量は、通液前に吸着カラムに充填できる量であれば良い。吸着カラムは、その上段又は下段の少なくとも1つにメッシュ(網)又はパンチングメタルなどの、実質的に吸着剤が漏れ出さない分離構造体を有していることが好ましい。分離構造体の開口径は、吸着剤の平均粒径より小さければ特に限定されず、好ましくは吸着剤の平均粒径の1/2以下、更に好ましくは1/3以下の目開きが良い。具体的な開口径は、0.1〜1000μmが好ましい。
【0031】
吸着処理温度は、−10℃〜100℃が好ましく、風味の観点より、0〜40℃がより好ましい。
【0032】
〔第4の工程〕
第4の工程は、第3の工程で得られた吸着体処理物と、第1の工程で得られた留分とを混合する工程である。これにより、コクと香りに富み、かつ後味のキレの良いコーヒー抽出液を得ることができる。
【0033】
(混合)
吸着体処理物と留分の混合比率は、それぞれ全量混合してもよく、あるいは、求める風味に応じて任意に変えても良いが、吸着体処理物100質量部に対し、0.1〜50質量部が好ましく、0.2〜25質量部がより好ましく、0.5〜15質量部が更に好ましい。また、留分についてはそのまま混合してもよいが、適宜濃縮して用いることもできる。
【0034】
吸着体処理物は、(C)グアヤコール類の含有量が十分低減されているため、コーヒー抽出液の後味のキレを改善することができる。他方、留分には、香気成分として(A)ピラジン類及び(B)フラン類が豊富に含まれている。そして、吸着体処理物と留分とを混合することで、香ばしさに富む(A)ピラジン類及び甘い香りに富む(B)フラン類の存在比率が高められ、コーヒー抽出液のコクと香りが増強される結果、コク、香りが豊かで、かつ後味のキレの良いコーヒー抽出液とすることができる。
【0035】
(容器詰コーヒー飲料、インスタントコーヒー)
本発明の容器詰コーヒー飲料及びインスタントコーヒーは、本発明のコーヒー抽出液を原料として調製されるものである。このため、本発明の容器詰コーヒー飲料及びインスタントコーヒーは、コクと香りに富み、かつ後味のキレが良く、嗜好性の高いものである。
【0036】
本発明の容器詰コーヒー飲料は、本発明のコーヒー抽出液をそのまま容器に充填するか、あるいは必要により濃縮又は希釈して容器に充填することで得ることができる。容器詰コーヒー飲料における可溶性固形分量は、風味及び生理効果の観点から、1〜5%が好ましく、1.2〜4.5%がより好ましく、1.5〜4.0%が更に好ましく、1.6〜3.5%が殊更に好ましい。また、容器詰コーヒー飲料におけるカフェインの量は、190g当たり50〜200mgであることが好ましい。また、本発明の容器詰コーヒー飲料は、前述のコーヒー抽出液と同様の質量比{(C)/[(A)+(B)]}及び質量比[(B)/(A)]を具備することができる。
【0037】
本発明の容器詰コーヒー飲料は、容器詰ブラックコーヒー飲料でも、容器詰ミルクコーヒー飲料でもよい。焙煎コーヒー豆の使用量は、原料コーヒー抽出液100gあたりコーヒー豆を生豆換算で1g以上、更に2.5g以上、更に5g以上であることが好ましい。
【0038】
本発明の容器詰コーヒー飲料には、必要により、乳成分、甘味料、苦味抑制剤、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、酸味料、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤を1種又は2種以上配合してもよい。なお、これら添加剤の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜選択可能である。
【0039】
本発明の容器詰コーヒー飲料中のクロロゲン酸類の含有量は、0.01〜1質量%、更に0.05〜0.5質量%、更に0.1〜0.3質量%であることが風味の観点より好ましい。
【0040】
本発明の容器詰コーヒー飲料のpH(20℃)は、安定性及び風味の観点から、5〜7、更に5.4〜6.5、更に5.6〜6.3であることが好ましい。
【0041】
本発明の容器詰コーヒー飲料は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の包装容器に充填して提供することができる。
また、容器詰飲料は、例えば、金属缶のような容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた殺菌条件で製造できる。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用できる。
【0042】
また、本発明のインスタントコーヒーは、本発明のコーヒー抽出液を乾燥して得ることが可能であるが、吸着体処理物を乾燥し粉体固形物を得、その後粉体と留分を混合させる方法が好ましい。乾燥方法としては、噴霧乾燥、凍結乾燥等が挙げられる。また、粉体と留分を混合させる方法としては、粉体を造粒させる際に留分を混合させても良いし、製品容器などに粉体を充填した後に留分を投入混合させても良い。ここで、本明細書において「インスタントコーヒー」とは、水分量3質量%以下であって、飲用時に水、熱水、ミルク等の液体で還元される多孔質粒状濃縮コーヒー組成物をいう。インスタントコーヒーの形態としては、例えば、スプーンで計量して調製するもの、透過性浸出パッケージ又はカップ1杯分毎に小分けしたスティックタイプが挙げられる。
【0043】
本発明のインスタントコーヒーは、固形分中にクロロゲン酸類を5〜30質量%、更に9〜28質量%、更に10〜25質量%含有することが好ましい。ここでいう「固形分」とは、試料を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して揮発物質を除いた残分をいう。
【実施例】
【0044】
1.ピラジン類、フラン類及びグアヤコール類の分析
試料2gをバイアルにサンプリングし、SPMEファイバーによりヘッドスペースの香気成分を吸着し、GC/MS測定に供した。そして、ピラジン類、フラン類及びグアヤコール類の面積値から、質量比{(C)/[(A)+(B)]}及び質量比[(B)/(A)]を求めた。
【0045】
HS−GC/MS条件(質量分析計付きヘッドスペースガスクロマトグラフ法)
測定機器;HP6890(Agilent社製)
カラム;BC−WAX(50m×0.25mmI.D.×0.25μmdf、ジーエルサイエンス(株))
温度プログラム;60℃(5min.)→230℃、5℃/minで昇温
ヘッド圧;14.8psi
注入口温度;210℃
検出器温度;200℃
split比;30:1
キャリアガス;ヘリウム
スキャンモード;イオン化電圧70eV
【0046】
(A)ピラジン類:
2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、エチルピラジン、2−エチル−5−メチルピラジン、2−エチル−6−メチルピラジン、2−エチル−3−メチルピラジン、2−エチル−3,5−ジメチルピラジン及び3,5−ジメチル−2−メチルピラジンの9種の合計量を求めた。
(B)フラン類:
2−メチルフラン及び2-アセチルフランの合計量を求めた。
(C)グアヤコール類:
グアヤコール、4−エチルグアヤコール及び4−ビニルグアヤコールの3種の合計量を求めた。
【0047】
2.クロロゲン酸類の分析
クロロゲン酸類の分析法は次の通りである。分析機器はHPLCを使用した。
装置の構成ユニットの型番は次の通り。
UV−VIS検出器:L−2420((株)日立ハイテクノロジーズ)、
カラムオーブン:L−2300((株)日立ハイテクノロジーズ)、
ポンプ:L−2130((株)日立ハイテクノロジーズ)、
オートサンプラー:L−2200((株)日立ハイテクノロジーズ)、
カラム:Cadenza CD−C18 内径4.6mm×長さ150mm、粒子径3μm(インタクト(株))。
【0048】
分析条件は次の通りである。
サンプル注入量:10μL、
流量:1.0mL/min、
UV−VIS検出器設定波長:325nm、
カラムオーブン設定温度:35℃、
溶離液A:0.05M 酢酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、10mM 酢酸ナトリウム、5(V/V)%アセトニトリル溶液、
溶離液B:アセトニトリル。
【0049】
濃度勾配条件
時間 溶離液A 溶離液B
0.0分 100% 0%
10.0分 100% 0%
15.0分 95% 5%
20.0分 95% 5%
22.0分 92% 8%
50.0分 92% 8%
52.0分 10% 90%
60.0分 10% 90%
60.1分 100% 0%
70.0分 100% 0%
【0050】
HPLCでは、試料1gを精秤後、溶離液Aにて10mLにメスアップし、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A,孔径0.45μm,ジーエルサイエンス(株))にて濾過後、分析に供した。
クロロゲン酸類の保持時間(単位:分)9種のクロロゲン酸類
モノカフェオイルキナ酸:5.3、8.8、11.6の計3点
フェルラキナ酸:13.0、19.9、21.0の計3点
ジカフェオイルキナ酸:36.6、37.4、44.2の計3点。
ここで求めた9種のクロロゲン酸類の面積値から5−カフェオイルキナ酸を標準物質とし、質量%を求めた。
【0051】
3.ヒドロキシヒドロキノンの分析
ヒドロキシヒドロキノンの分析法は次の通りである。
分析機器はHPLC−電気化学検出器(クーロメトリック型)であるクーロアレイシステム(モデル5600A、開発・製造:米国ESA社、輸入・販売:エム・シー・メディカル(株))を使用した。
装置の構成ユニットの名称・型番は次の通りである。
アナリティカルセル:モデル5010、クーロアレイオーガナイザー、
クーロアレイエレクトロニクスモジュール・ソフトウエア:モデル5600A、
溶媒送液モジュール:モデル582、グラジエントミキサー、
オートサンプラー:モデル542、パルスダンパー、
デガッサー:Degasys Ultimate DU3003、
カラムオーブン:505。
カラム:CAPCELL PAK C18 AQ 内径4.6mm×長さ250mm、粒子径5μm((株)資生堂)。
【0052】
分析条件は次の通りである。
サンプル注入量:10μL、
流量:1.0mL/min、
電気化学検出器の印加電圧:0mV、
カラムオーブン設定温度:40℃、
溶離液C:0.1(W/V)%リン酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、5(V/V)%メタノール溶液、
溶離液D:0.1(W/V)%リン酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、50(V/V)%メタノール溶液。
【0053】
溶離液C及びDの調製には、高速液体クロマトグラフィー用蒸留水(関東化学(株))、高速液体クロマトグラフィー用メタノール(関東化学(株))、リン酸(特級、和光純薬工業(株))、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(60%水溶液、東京化成工業(株))を用いた。
【0054】
濃度勾配条件
時間 溶離液C 溶離液D
0.0分 100% 0%
10.0分 100% 0%
10.1分 0% 100%
20.0分 0% 100%
20.1分 100% 0%
50.0分 100% 0%
【0055】
分析試料の調製は、試料5gを精秤後、0.5(W/V)%リン酸、0.5mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、5(V/V)%メタノール溶液にて10mLにメスアップし、この溶液について遠心分離を行い上清を得た。この上清について、ボンドエルートSCX(固相充填量:500mg、リザーバ容量:3mL、ジーエルサイエンス(株))に通液し、初通過液約0.5mLを除いて通過液を得た。この通過液について、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A,孔径0.45μm,ジーエルサイエンス(株))にて濾過し、速やかに分析に供した。
【0056】
HPLC−電気化学検出器の上記の条件における分析において、ヒドロキシヒドロキノンの保持時間は、6.38分であった。得られたピークの面積値から、ヒドロキシヒドロキノン(和光純薬工業(株))を標準物質とし、質量%を求めた。
【0057】
4.Brixの測定
20℃における糖用屈折計示度(Brix)で表される。Atago RX-5000(Atago社製)にて測定を行った。
【0058】
5.官能評価
容器詰コーヒー飲料の味と香りについて、専門パネラー12人による飲用試験を行った。飲用試験では、参考例1の容器詰飲料を標準とする相対評価とし、下記の基準にしたがって評価した。そして、各容器詰コーヒー飲料についての各パネラーの評点を合計した。
【0059】
基準:
(i)コクの強さ
5点 コクが強い
4点 コクがやや強い
3点 標準のコク
2点 コクがやや弱い
1点 コクが弱い
(ii)キレ(後味)
5点 キレが良い
4点 キレがやや良い
3点 標準のキレ
2点 後味がやや残る
1点 後味が強く残る
(iii)香り
5点 香りが強い
4点 香りがやや強い
3点 標準の香り
2点 香りがやや弱い
1点 香りが弱い
(iv)苦味
5点 苦味が強い
4点 苦味がやや強い
3点 標準の苦味
2点 苦味がやや弱い
1点 苦味が弱い
【0060】
実施例1
(第1の工程:水蒸気蒸留による留分の回収)
ベトナム産ロブスタ種の焙煎コーヒー豆(焙煎度L34)と、ブラジル産アラビカ種の焙煎コーヒー豆(焙煎度L16.5)を質量比58/42で合計400g、カラムに仕込んだ。カラム下部から100℃の水蒸気を流量18g/minにて供給し、水蒸気蒸留を行った。カラム上部から出てきた蒸気200gを、凝縮温度95℃にて凝縮させ、焙煎コーヒー豆の質量に対して0.1倍量(40g)の留分を得た。また、得られた留分量は、水蒸気供給量に対し20質量%であった。
【0061】
(第2の工程:原料コーヒー抽出液の調製)
水蒸気蒸留を終えた焙煎コーヒー豆を93℃の熱水にて抽出し、1200gの原料コーヒー抽出液を得た。得られた原料コーヒー抽出液の各成分の分析値は以下の通りであった。
Brix(%):7.84
クロロゲン酸類(CGA)(mg/100g):828.4
ヒドロキシシヒドロキノン(HHQ)(mg/kg):43.8
【0062】
(第3の工程:原料コーヒー抽出液の活性炭処理)
第2の工程で得られた原料コーヒー抽出液1200gに多孔質吸着体として活性炭(白鷺 WH2C 42/80LSS、日本エンバイロケミカルズ(株))を加え、25℃にて処理を行った。活性炭の使用量は、原料コーヒー抽出液の固形分量(94.1g)に対して0.5質量倍(47g)とした。第3の工程後、活性炭をろ過し、水で活性炭を洗浄して、活性炭処理液1782g(固形分量4.04%)を得た。
【0063】
(第4の工程:活性炭処理液と留分の混合)
活性炭処理液1782gと第1の工程で得られた留分12.3gを混合してコーヒー抽出液を得た。このコーヒー抽出液の製造条件及び分析結果を表1に示す。
【0064】
(容器詰コーヒー飲料の調製)
上記コーヒー抽出液をイオン交換水で希釈してBrix1.80に調整し、缶容器に充填後、134℃、90秒の加熱殺菌を行い、容器詰コーヒー飲料を得た。この容器詰コーヒー飲料の分析結果及び官能評価の結果を表2に示す。
【0065】
実施例2
留分の凝縮温度を75℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作にてコーヒー抽出液を製造した。得られた留分量は、水蒸気供給量に対し50質量%であった。コーヒー抽出液の製造条件及び分析結果を表1に示す。次いで、このコーヒー抽出液を用い、実施例1と同様の操作により容器詰コーヒー飲料を得た。容器詰コーヒー飲料の分析結果及び官能評価の結果を表2に示す。
【0066】
実施例3
留分の凝縮温度を20℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作にてコーヒー抽出液を製造した。得られた留分量は、水蒸気供給量に対し100質量%であった。コーヒー抽出液の製造条件及び分析結果を表1に示す。次いで、このコーヒー抽出液を用い、実施例1と同様の操作により容器詰コーヒー飲料を得た。容器詰コーヒー飲料の分析結果及び官能評価の結果を表2に示す。
【0067】
実施例4
焙煎コーヒー豆に対する留分量を0.5倍に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作にてコーヒー抽出液を製造した。コーヒー抽出液の製造条件及び分析結果を表1に示す。次いで、このコーヒー抽出液を用い、実施例1と同様の操作により容器詰コーヒー飲料を得た。容器詰コーヒー飲料の分析結果及び官能評価の結果を表2に示す。
【0068】
実施例5
焙煎コーヒー豆に対する留分量を1.0倍に、水蒸気供給量に対する留分量を30質量%に、それぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様の操作にてコーヒー抽出液を製造した。コーヒー抽出液の製造条件及び分析結果を表1に示す。次いで、このコーヒー抽出液を用い、実施例1と同様の操作により容器詰コーヒー飲料を得た。容器詰コーヒー飲料の分析結果及び官能評価の結果を表2に示す。
【0069】
実施例6
焙煎コーヒー豆に対する留分量を2.0倍に、水蒸気供給量に対する留分量を35質量%に、それぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様の操作にてコーヒー抽出液を製造した。コーヒー抽出液の製造条件及び分析結果を表1に示す。次いで、このコーヒー抽出液を用い、実施例1と同様の操作により容器詰コーヒー飲料を得た。容器詰コーヒー飲料の分析結果及び官能評価の結果を表2に示す。
【0070】
実施例7
水蒸気蒸留における水蒸気の流量を23g/minに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作にてコーヒー抽出液を製造した。コーヒー抽出液の製造条件及び分析結果を表1に示す。次いで、このコーヒー抽出液を用い、実施例1と同様の操作により容器詰コーヒー飲料を得た。容器詰コーヒー飲料の分析結果及び官能評価の結果を表2に示す。
【0071】
実施例8
活性炭処理における活性炭の使用量を原料コーヒー抽出液の固形分量に対して0.25質量倍に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作にてコーヒー抽出液を製造した。コーヒー抽出液の製造条件及び分析結果を表1に示す。次いで、このコーヒー抽出液を用い、実施例1と同様の操作により容器詰コーヒー飲料を得た。容器詰コーヒー飲料の分析結果及び官能評価の結果を表2に示す。
【0072】
比較例1
ベトナム産ロブスタ種の焙煎コーヒー豆(焙煎度L34)と、ブラジル産アラビカ種の焙煎コーヒー豆(焙煎度L16.5)を質量比58/42で合計400gを93℃の熱水にて抽出し、1200gの原料コーヒー抽出液を得た。次いで、原料コーヒー抽出液をそのまま実施例1と同様の操作にて活性炭処理を行い、コーヒー抽出液を製造した。コーヒー抽出液の製造条件及び分析結果を表1に示す。次いで、このコーヒー抽出液を用い、実施例1と同様の操作により容器詰コーヒー飲料を得た。容器詰コーヒー飲料の分析結果及び官能評価の結果を表2に示す。
【0073】
参考例1
ベトナム産ロブスタ種の焙煎コーヒー豆(焙煎度L34)と、ブラジル産アラビカ種の焙煎コーヒー豆(焙煎度L16.5)を質量比58/42で合計400gを93℃の熱水にて抽出し、1200gのコーヒー抽出液を得た。コーヒー抽出液の製造条件及び分析結果を表1に示す。次いで、得られたコーヒー抽出液をイオン交換水で希釈してBrix1.80に調整し、缶容器に充填後、134℃、90秒の加熱殺菌を行い、容器詰コーヒー飲料を得た。容器詰コーヒー飲料の分析結果及び官能評価の結果を表2に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
表1及び2から、本製造方法により得られたコーヒー抽出液から得られる容器詰コーヒー飲料は、ヒドロキシヒドロキノンが低減されているとともにコクと香りに富み、後味のキレの良さを両立していることが示される。
また、(A)ピラジン類、(B)フラン類及び(C)グアヤコール類のバランスを制御したコーヒー抽出液を用いることで、コクと香りに富み、かつ後味のキレの良い容器詰コーヒー飲料が得られることが確認された。
【0077】
実施例9
実施例1の方法で得られたコーヒー抽出液を65℃、14.6kPaにて固形分40質量%まで濃縮し、得られた濃縮液を−50℃のクールバスで予備凍結したした後、凍結乾燥機(CHRIST社製、ALPHA1−4LSC)により1Paで減圧乾燥し、インスタントコーヒーを得た。
得られたインスタントコーヒーを90℃の温水に溶解し、Brix1.8%のコーヒー溶液に調整し、該コーヒー溶液を分析試料及び官能評価試料とした。官能評価は、専門パネラー3名により参考例2を標準とする相対評価で行い、各パネラーの評点を合計した。分析結果及び官能評価結果を表3に示す。
【0078】
比較例2
比較例1の方法で得られたコーヒー抽出液を用いる以外は実施例9と同様の操作でインスタントコーヒーを得た。得られたインスタントコーヒーを90℃の温水に溶解し、Brix1.8%のコーヒー溶液に調整し、該コーヒー溶液を分析試料及び官能評価試料とした。分析結果及び官能評価結果を表3に示す。
【0079】
参考例2
参考例1の方法で得られたコーヒー抽出液を用いる以外は実施例9と同様の操作でインスタントコーヒーを得た。得られたインスタントコーヒーを90℃の温水に溶解し、Brix1.8%のコーヒー溶液に調整し、該コーヒー溶液を分析試料及び官能評価試料とした。分析結果及び官能評価結果を表3に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
表3から、本製造方法により得られたコーヒー抽出液から製造されたインスタントコーヒーは、容器詰コーヒー飲料と同様に、コクと香りに富み、かつ後味のキレが良いことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎コーヒー豆を水蒸気蒸留し留分を得る第1の工程、
水蒸気蒸留後の焙煎コーヒー豆を水系溶媒と接触させ原料コーヒー抽出液を得る第2の工程、
該原料コーヒー抽出液を多孔質吸着体に接触させ吸着体処理物を得る第3の工程、及び
該吸着体処理物と前記留分とを混合する第4の工程
を含むコーヒー抽出液の製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程において、留出した蒸気を70〜120℃の温度範囲で凝縮して留分を得る、請求項1記載のコーヒー抽出液の製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程において、焙煎コーヒー豆に対して0.05〜1.5質量倍の留分を得る、請求項1又は2記載のコーヒー抽出液の製造方法。
【請求項4】
前記第1の工程において、水蒸気供給量に対して10〜80質量%の留分を得る、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーヒー抽出液の製造方法。
【請求項5】
前記第3の工程において、原料コーヒー抽出液の固形分に対し0.1〜2質量倍の多孔質吸着体を接触させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーヒー抽出液の製造方法。
【請求項6】
前記第1の工程において、水蒸気蒸留を60〜150℃の水蒸気を用いて行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコーヒー抽出液の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により得られたコーヒー抽出液を含む容器詰コーヒー飲料。
【請求項8】
クロロゲン酸類を0.01〜1質量%含有する、請求項7記載の容器詰コーヒー飲料。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により得られたコーヒー抽出液を用いて製造されるインスタントコーヒー。