説明

コーマ

【課題】高トルクが要求されるデタッチングローラを高速で駆動することができ、従来技術より高速化を図ることができるコーマを提供する。
【解決手段】ニッパフレームの揺動運動と同期して正逆回転駆動される前後2本のデタッチングローラ16,17を備えたコーマであって、各デタッチングローラ16,17のシャフト25,26は、それぞれその両側に設けられるとともに同期して駆動される正逆回転駆動可能なサーボモータ29,30により、両側から駆動される。シャフト25,26は、サーボモータ29,30のモータ軸29a,30aと、シャフト25,26との間に設けられたギヤ列を介して駆動されるとともに、ギヤ列にはアイドルギヤ33,34が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーマに係り、詳しくはデタッチングローラの駆動部の構成に特徴を有するコーマに関する。
【背景技術】
【0002】
コーマは、供給されたラップをニッパ装置が後退した位置で把持し、該ラップの先端をコーミングシリンダにより梳ってラップから短繊維等を除去し、フリースとする。このフリースをニッパ装置の前進によってデタッチングローラへ向けて移動させる。このフリースの前進に対応してデタッチングローラを逆転させ、先に引き取ったフリース(先行フリース)を後退させ、該フリースの後端部と新たに梳られたフリース(後続フリース)の先端部とを重ね合わせる。その後、デタッチングローラが正転してニッパ装置からフリースを引き取るとともに、先行フリースに後続フリースを接合しつつ、この後続フリースの後端をトップコームにより梳る。
【0003】
デタッチングローラは、一般にメインモータにより駆動されるコーミングシリンダの駆動シャフトの回転が歯車装置を介して伝達されることにより駆動される。この歯車装置は非常に複雑で、しかも比較的大きな質量が往復回動される必要がある。そこで、従来、デタッチングローラを専用のモータで駆動するコーマが提案されている(特許文献1参照。)。特許文献1には、図4に示すように、デタッチングローラ51,52のシャフト53,54の一端に歯車53a,54aが一体回転可能に固定され、正逆回転可能な電動モータ55によりベルト伝動装置56を介して駆動される歯車57が歯車53a,54aと噛合する構成が提案されている。この装置では電動モータ55の正逆回転に対応してデタッチングローラ51,52が正転あるいは逆転駆動される。
【0004】
また、特許文献1には、各シャフト53,54をそれぞれ別の電動モータ55で駆動する構成も提案されている。具体的には、図4に示す構成において、シャフト54の歯車54aを無くし、電動モータ55はベルト伝動装置56及び歯車57,53aを介してシャフト53のみを駆動する。一方、シャフト54の他端側には正逆回転可能な第2の電動モータを設け、シャフト54は第2の電動モータにより、一端側に設けられたものと同様な構成のベルト伝動装置及び歯車を介して駆動される。
【0005】
また、1本のデタッチングローラをその両側に設けたモータで駆動する構成も提案されている(特許文献2参照。)。特許文献2では、図5に示すように、一方のデタッチングローラ61を両側からサーボモータ62,63で駆動し、他方のデタッチングローラ64はタイミングベルト65を介して駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−216225号公報
【特許文献2】中国特許公開CN−A−100999837
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、コーマは8個のコーミングヘッドを配設した作業部を備えており、デタッチングローラのシャフトは作業部全長に亘って延びる長さを有する。そして、特許文献1の構成では、デタッチングローラのシャフトをその片側から駆動する構成のため、シャフトに捩れが発生し易い。そして、近年、生産性向上を図るためコーマの高速化が要望されており、コーマが高速化されると捩れがより問題になる。
【0008】
一方、特許文献2のように一方のデタッチングローラを両側からモータで駆動し、他方のデタッチングローラはタイミングベルトを介して駆動する構成では、高速(例えば、コーミングシリンダの回転速度300rpm以上に対応する回転速度)で回転させようとするとタイミングベルトの耐久性が足りないという問題がある。
【0009】
本発明は前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は高トルクが要求されるデタッチングローラを高速で駆動することができ、従来技術より高速化を図ることができるコーマを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ニッパフレームの揺動運動と同期して正逆回転駆動される前後2本のデタッチングローラを備えたコーマであって、前記各デタッチングローラのシャフトは、それぞれその両側に設けられるとともに同期して駆動される正逆回転駆動可能なモータにより、両側から駆動される。
【0011】
デタッチングローラの駆動には高トルクが要求される。モータイナーシャはJ=MD(Mはロータ質量、Dはロータ外径≒モータ外径)で決まるから、高速化のために低イナーシャのモータとするには、モータ外径をできるだけ小さくすることが好ましい。一方、モータトルクはモータ外径×モータ長さで決まるから、モータ外径が同じであれば、モータ長さが長い方がよりモータトルクが大きくなる。しかし、実際には、ロータクリアランスを一定に保つ等の製造上の理由によりモータ長さには限界がある。従来技術では、2本のデタッチングローラのシャフトを2台のモータで駆動している。しかし、この発明では、2本のシャフトのそれぞれのシャフトが、その両側に設けられたモータにより同期して駆動される。即ち、デタッチングローラの2本のシャフトを4台のモータで駆動するため、従来技術に比べて2倍のトルクでデタッチングローラを駆動することができる。したがって、高トルクが要求されるデタッチングローラを高速で駆動することができ、従来技術より高速化を図ることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記シャフトは、前記モータのモータ軸と前記シャフトとの間に設けられたギヤ列を介して駆動されるとともに、前記ギヤ列にはアイドルギヤが設けられている。
【0013】
デタッチングローラのシャフトの中心軸間の距離は40mm程度と短い。一方、シャフトの駆動には高トルクで高速回転可能なモータが要求されるため、モータの外径はシャフトの中心軸間の距離より大きくなる。そのため、モータ軸の回転をギヤによりシャフトに伝達する場合、モータ軸に固定されたギヤと、シャフト固定されたギヤとが直接噛合する構成では、モータ軸の回転速度とシャフトとの回転速度との比を1:1にすることはできない。しかし、この発明では、シャフトは、モータ軸とシャフトとの間に設けられたギヤ列を介して駆動されるとともに、ギヤ列にはアイドルギヤが設けられている。したがって、モータ軸に固定されるギヤとシャフトに固定されるギヤとを同じ歯数にすれば、モータ軸の回転速度とシャフトの回転速度との比を1:1にすることができる。また、ギヤ列の各ギヤの歯数を変更することにより、モータの大きさ(外径)や回転速度の設定の自由度が高くなる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記両シャフトは、互いにギヤ連結されている。この発明では、モータの同期の精度が多少悪くても、シャフト同士がギヤ連結されているため、両シャフトは同期して回転される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高トルクが要求されるデタッチングローラを高速で駆動することができ、従来技術より高速化を図ることができるコーマを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】コーミングヘッドの概略側面図。
【図2】(a)はデタッチングローラ駆動部の概略平面図、(b)はデタッチングローラ及びモータの位置関係を示す概略図。
【図3】別の実施形態の図2(b)に対応する概略図。
【図4】従来技術のデタッチングローラ駆動部の概略平面図。
【図5】別の従来技術のデタッチングローラ駆動部の概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
一般に、コーマは、8個のコーミングヘッドを配設した作業部を備えている。図1に示すように、コーミングヘッド11は、一対のラップローラ12と、フィードローラ13を備えたニッパ装置14と、コーミングシリンダ15と、前後2対のデタッチングローラ16,17とを備えている。ニッパ装置14は、コーミングシリンダ15の上方で前後進揺動可能に配設されたニッパフレーム18を有し、ニッパフレーム18は、その底部にボトムニッパ19が設けられている。ニッパフレーム18には支軸18aを介してニッパアーム20が回動可能に設けられ、ニッパアーム20の先端にトップニツパ20aが固定されている。トップニツパ20aはニッパフレーム18の前後進揺動運動に同期して所定のタイミングで開閉して、ボトムニッパ19と協同してラップLを挟持するようになっている。ニッパフレーム18にはトップコーム21がボトムニッパ19の前方において、ニッパフレーム18と同期して所定の運動を行うように取り付けられている。
【0018】
コーミングシリンダ15の後方、かつニッパフレーム18の下方には、ニッパシャフト22が往復回動可能に配設されている。ニッパシャフト22にはニッパフレーム駆動アーム23の第1端部が一体回動可能に固定され、その第2端部にニッパフレーム18の後端部が支軸23aを介して回動可能に支持されている。ニッパフレーム18は、ニッパシャフト22の往復回動(揺動運動)によって、ボトムニッパ19の先端部がデタッチングローラ16,17に対して接近・離間するように前後に揺動する構成になっている。
【0019】
次に、デタッチングローラ16,17の駆動部の構成を図2(a),(b)に従って説明する。図2(a)に示すように、機台の長手方向(図2(a)の左右方向)の両側に設けられたギヤボックス24間には、デタッチングローラ16,17のシャフト25,26が平行に配設されている。シャフト25,26は、その両端部がギヤボックス24内に突出する状態で軸受(図示せず)を介して回転可能に支持されている。シャフト25,26の両端部にはギヤ27,28がシャフト25,26と一体回転可能に固定されている。両ギヤ27,28は、歯数及び径が同じに形成されている。
【0020】
また、ギヤボックス24の外側には各シャフト25,26に対応してそれぞれ2個のサーボモータ29,30が設けられ、ギヤボックス24内に突出したそのモータ軸29a,30aには、駆動ギヤ31,32がそれぞれ一体回転可能に固定されている。駆動ギヤ31,32はギヤ27,28と歯数及び径が同じに形成されている。ギヤボックス24内にはギヤ27及び駆動ギヤ31に噛合するアイドルギヤ33と、ギヤ28及び駆動ギヤ32に噛合するアイドルギヤ34とが設けられている。両アイドルギヤ33,34は同じ歯数及び径に形成されている。即ち、シャフト25,26は、サーボモータ29,30のモータ軸29a,30aと、シャフト25,26との間に設けられたギヤ列を介して駆動されるとともに、ギヤ列にはアイドルギヤ33,34が設けられている。そして、各シャフト25,26はモータ軸29a,30aと同じ回転速度(1:1の回転数比)で回転される。各サーボモータ29,30は、図示しない制御装置の指令に基づいて正転方向及び逆転方向に同期駆動されるようになっている。
【0021】
次に前記のように構成された装置の作用を説明する。
図示しないメインモータにより駆動されて揺動運動(往復回動)を行うニッパシャフト22の揺動に基づいてボトムニッパ19が前後に揺動されるとともに、トップニツパ20aが上下に揺動されてボトムニッパ19の先端部との間でラップLの把持解放を行う。デタッチングローラ16,17は、サーボモータ29,30の駆動によりギヤ列を介して駆動されるシャフト25,26と一体に回動し、ボトムニッパ19の前進、後退に同期して揺動される。デタッチングローラ16,17は、ボトムニッパ19の前進時に逆転され、
ボトムニッパ19の後退時に正転される。
【0022】
デタッチングローラ16,17の2本のシャフト25,26のそれぞれが、その両側に設けられたサーボモータ29,30により同期して駆動される。即ち、デタッチングローラ16,17の2本のシャフト25,26を4台のモータで駆動するため、同じ性能のモータであれば、従来技術に比べて2倍のトルクでデタッチングローラ16,17を駆動することができる。デタッチングローラ16,17のシャフト25,26は高速(例えば、300rpm以上)で揺動運動(往復回動)を行うため、一定速度で一定方向に回転される場合に比べて捩れが大きくなる。しかし、シャフト25,26は、それぞれサーボモータ29,30により両側駆動されるため、片側駆動に対して捩れが1/4になる。また、両側駆動の場合は、シャフト25,26の長さが同じ場合において共振周波数が片側駆動の場合より高くなり、高速化を図った際にその回転速度が共振周波数から外れる。
【0023】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)ニッパフレーム18の揺動運動と同期して正逆回転駆動される前後2本のデタッチングローラ16,17のシャフト25,26は、それぞれその両側に設けられるとともに同期して駆動される正逆回転駆動可能なサーボモータ29,30により、両側から駆動される。したがって、高トルクが要求されるデタッチングローラ16,17を高速で駆動することができ、個々のサーボモータ29,30を大型化しなくても従来技術より高速化を図ることができる。
【0024】
(2)シャフト25,26は、サーボモータ29,30のモータ軸29a,30aと、シャフト25,26との間に設けられたギヤ列を介して駆動されるとともに、ギヤ列にはアイドルギヤ33,34が設けられている。そして、モータ軸29a,30aに固定された駆動ギヤ31,32と、シャフト25,26に固定されたギヤ27,28とは、同じ歯数のギヤが使用されている。したがって、デタッチングローラ16,17のシャフト25,26の中心軸間の距離が40mm程度と短く、サーボモータ29,30の外径がシャフト25,26の中心軸間の距離より大きくても、モータ軸29a,30aの回転速度とシャフト25,26の回転速度との比を1:1にすることができる。また、ギヤ列の各ギヤの歯数を変更することにより、モータの大きさ(外径)や回転速度の設定の自由度が高くなる。
【0025】
(3)モータ軸29a,30aの回転速度とシャフト25,26の回転速度との比が1:1に設定されているため、紡出条件の変更によりデタッチングローラ16,17の回転速度を変更する際、モータ軸29a,30aの回転速度の設定が容易になる。
【0026】
(4)両サーボモータ29,30は、モータ軸29a,30aがシャフト25,26より上方で、かつモータ軸29a,30aの軸心と、シャフト25,25の軸心とを含む仮想平面が水平方向に対して斜めに延びるように配置されている。したがって、前記仮想平面が水平に延びるように配置する場合に比べて、サーボモータ29,30の配設スペースの確保が簡単になる。
【0027】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ デタッチングローラ16,17のシャフト25,26同士をギヤ連結してもよい。例えば、図3に示すように、両ギヤ27,28と噛合する連結ギヤ35を設ける。この場合、サーボモータ29,30の同期の精度が多少悪くても、シャフト25,26同士がギヤ連結されているため、両シャフト25,26は同期して回転される。連結ギヤ35は、シャフト25,26の両端部に設けるのが好ましいが、片側だけに設けてもよい。
【0028】
○ シャフト25,26同士をギヤ連結する場合、駆動ギヤ31,32と噛合するギヤ27,28を利用せずに、シャフト25,26と一体回転するギヤを別に設けるとともにそのギヤと噛合する連結ギヤを設けてもよい。しかし、ギヤ27,28を利用する方が簡単である。
【0029】
○ ギヤ27,28を利用せずに、シャフト25,26同士をギヤ連結する場合、ギヤ連結のためのギヤは、シャフト25,26の端部ではなく、シャフト25,26の中間部に設けてもよい。しかし、シャフト25,26の端部に設ける方が配設位置の確保やメンテナンス作業が容易になる。
【0030】
○ モータ軸29a,30aとシャフト25,26とは回転速度比が1:1に限らず、モータ軸29a,30aの回転速度がシャフト25,26の回転速度より速くても、モータ軸29a,30aの回転速度がシャフト25,26の回転速度より遅くてもよい。
【0031】
○ モータ軸29a,30aの回転をシャフト25,26に伝達するギヤ列は、必ずしもアイドルギヤ33,34を備えずに、モータ軸29a,30aに固定されたギヤが、シャフト25,26に固定されたギヤと直接噛合する構成でもよい。
【0032】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項2に記載の発明において、前記ギヤ列を構成するギヤは、その歯数が前記モータ軸と前記シャフトの回転速度比が1:1になるように設定されている。
【0033】
(2)請求項3に記載の発明において、前記連結ギヤは、前記シャフトの端部に固定されたギヤと噛合するように設けられている。
【符号の説明】
【0034】
16,17…デタッチングローラ、18…ニッパフレーム、25,26…シャフト、29,30…モータとしてのサーボモータ、29a,30a…モータ軸、33,34…アイドルギヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッパフレームの揺動運動と同期して正逆回転駆動される前後2本のデタッチングローラを備えたコーマであって、前記各デタッチングローラのシャフトは、それぞれその両側に設けられるとともに同期して駆動される正逆回転駆動可能なモータにより、両側から駆動されることを特徴とするコーマ。
【請求項2】
前記シャフトは、前記モータのモータ軸と前記シャフトとの間に設けられたギヤ列を介して駆動されるとともに、前記ギヤ列にはアイドルギヤが設けられている請求項1に記載のコーマ。
【請求項3】
前記両シャフトは、互いにギヤ連結されている請求項1又は請求項2に記載のコーマ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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