説明

コーム要素

本発明は、綿繊維をコーミングする繊維機械内にある、回転軸のまわりを回転するコームローラのコームセグメント用のコーム要素に関し、このコーム要素は、表面線(9)に沿って湾曲した横面(10)を有する足部(8)と、回転軸(3)に対して半径方向(11)に横面(10)から離れる方向に延び、表面線(9)に沿って並んで配置された複数の歯(7、12;7a、12a;7b、12b)と、それぞれが2つの隣接する歯(7、12;7a、12a;7b、12b)間に配置され、コーミングされる繊維が繊維通過方向(24)に半径方向の侵入深さ(E)で通過するのをそれぞれが可能にする複数の中間歯空間(18;18b)とを含み、各歯(7、12;7a、12a;7b、12b)は4つの歯縁部(20、21、22、23;20a、21a、22a、23a)を含み、中間歯空間(18;18b)において、中間歯空間(18;18b)の境界となる第1の歯(7;7a;7b)の歯縁部(23;23a)であって、表面線(9)に沿って前方にあり、かつ繊維通過方向(24)において後方にある歯縁部(23;23a)と、表面線(9)に沿って後方にあり、かつ繊維通過方向(24)において前方にある、中間歯空間(18;18b)の境界となる第2の歯(12;12a;12b)の歯縁部(20;20a)との間に架空の接続線が引かれ、表面線(9)と接続線(24)は、少なくとも15°のコーミング角(α)を形成し、コーミング角(α)は、少なくともセグメント内で、半径方向(11)に大きくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綿繊維をコーミングする繊維機械内にある、回転軸のまわりを回転できるコーミングローラのコームセグメント用のコーム要素に関する。
【背景技術】
【0002】
コーミング機械で使用するコームは公然実施として公知であり、コーミングされる綿繊維と係合する少なくとも1つのコーム要素がベース本体上に配置される。この場合に、円形コームの有効コーミング領域は、例えば、円形コームの表面線(surface line)の周縁部のうちの78°、90°、111°、または180°であってもよく、あるいは周縁部全体であってもよい。周縁部全体に沿って有効コーミング領域を有する円形コームは、360°円形コームと呼ばれる。針、針ストリップ、鋸歯状ワイヤ部分、櫛状突起、または鋸歯状打抜き部品がコーム要素として使用され、前もって組み立てられたコーム要素自体は、バータック(bar tack、Riegel)またはコームセグメントとも呼ばれる。
【0003】
コームセグメントは、例えば、コーミングローラの回転軸の方向に互いに隣り合って配置され、例えば、鋸歯状打抜き部品、あるいは歯付ディスクの形態の歯を備えた複数のコーム要素を有する。コームセグメントのコーミング効果は、歯の構造と、回転軸の方向および回転軸のまわりの回転方向におけるコームセグメント上の歯の配置とによって、影響を受ける。さらに、梳きとられた繊維の、コームセグメントの歯付ディスクからの除去についても、歯の構造と、コームセグメント上の歯の配置とに依存する。
【0004】
特許文献1は、いずれの場合も異なる歯数を有する複数のコーム要素を備えたコームセグメントを示す。コームセグメントの隣接するコーム要素の歯間の中間領域を非長方形の態様で形成するために、非長方形の断面幾何形状を有する歯は、特許文献2から公知である。
【0005】
繊維に作用するコーミング効果は、コーミングされる繊維への歯の係合によって保証され、コーミングされる繊維は、コーム要素の2つの隣接する歯間の中間歯空間を通り抜ける。基本的に、中間歯空間の大きさが小さくなるとともにコーミング効果が高くなるが、中間歯空間への到達可能性もそれとともに低くなるので、清浄、特に、梳きとられた粒子および/または繊維構成物の除去がより困難になる。この点において、一方で、所望の高いコーミング効果と、他方で、中間歯空間の良好な到達可能性とは、バータックにとっての相反する設計要件である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE 39 04 178 A1
【特許文献2】DE 199 56 911 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、中間歯空間の清浄も問題なく可能であるような方法で、高いコーミング効果を有する、綿をコーミングするコーミングローラのコームセグメント用のコーム要素を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は、請求項1に開示した特徴を有するコーム要素によって達成される。
【0009】
回転軸のまわりを回転できるコーミングローラのコームセグメント用の本発明によるコーム要素は、表面線に沿って湾曲する横面を有する足部と、回転軸に対して半径方向に横面から離れる方向に延び、表面線に沿って並んで配置された複数の歯と、いずれの場合も、2つの隣接する歯間に配置され、いずれの場合も、コーミングされる繊維が繊維通過方向に半径方向の侵入深さで通過するのを可能にする複数の中間歯空間とを含む。この場合に、各歯は4つの歯縁部を有し、中間歯空間において、中間歯空間を限定する第1の歯の、表面線に沿って後方にある歯縁部であって、かつ繊維通過方向において前方にある歯縁部と、中間歯空間を限定する第2の歯の、表面線に沿って前方にある歯縁部であって、かつ繊維通過方向において後方にある歯縁部との間で架空の接続線が画定され、表面線と接続線とは、少なくとも15°のコーミング角αをなす。コーミング角αの本発明による定義を用いることで、コーミングされる綿繊維に作用する高いコーミング効果の結果として最適なコーミングが行われ、他方で、個々の繊維に対するやさしい取り扱いが保証されるので、破断され、それにより短くなる繊維はあまりない。本発明によるコーム要素は、コーミングローラ上に組み立てられ、450コームサイクル/分を超え、500コームサイクル/分も超える回転コーム速度で動くコームセグメントに使用することもできる。そのように高い回転コーム速度の場合、繊維が中間歯空間に適切に侵入しないので、コーミングされる繊維が実際上、外側円筒を画定する歯の外側端部、いわゆるコーミング半径を通り過ぎる危険性がある。本発明によるコーム要素の構造により、繊維の中間歯空間への侵入が容易になり、そのため、説明した非常に高い回転コーム速度であっても、繊維の通り過ぎが回避される。コーミング角は、半径方向に、少なくとも部分的に大きくなる。結果として、コーミングされる繊維のタイプに応じて、必要なコーミング効果および清浄可能性が高められる。
【0010】
請求項2または3によるコーム要素の構造では、コーミングされる繊維のタイプに応じて、必要なコーミング効果および清浄可能性を個別に適合させることができる。
【0011】
請求項4によるコーム要素では、コーミングされる繊維が、繊維に作用する歯の反力のために中間歯空間に保持され、それにより、繊維が偶発的に、例えば、上方に移動したために、中間歯空間から出ることを防止するので、高いコーミング効果を有する、特に、有益で、安定し、かつ連続するコーミングプロセスが可能になる。
【0012】
請求項5〜7によるコーム要素の構造を用いて、コーム要素の表面線に沿ってコーミング角αの有利な作用を生じさせることができる。結果として、コーミング効果およびコーム要素内の中間歯空間の清浄可能性を変化させて、それにより、例えば、侵入深さが同じままの状態で表面線に沿ってコーミング効果を高めることができる。このために、表面線に沿ったコーミング角αが、増加するか、あるいは漸進的に増加するように確立される。コーミング角αを表面線に沿って周期的に変化させることで、周期的に変わるコーミング効果が得られる。これは、一方で、本発明による円形コームを使用することにより、きわめて顕著な異なる張力が、コーミングされた繊維に作用することを特徴とする。結果として、歯縁部に作用する繊維の摩擦によって強度の異なる力が発生し、繊維の清浄性、したがって、最終的にはコーミング効果が全体として高まる。他方で、様々な張力により繊維が分離されるので、繊維の玉が全体的に低減される。
【0013】
請求項8によるコーミング角αを有するコーム要素は、少なくとも18°のコーミング角αを必要とする、繊維長が33mmを超える長繊維綿のコーミングに特に適しており、また、少なくとも20°のコーミング角αが有利である、綿繊維と合成繊維との混合物の処理に特に適している。
【0014】
請求項9によるコーム要素は、コーミング角αを確立する、特に、コーム要素の表面線に沿ってコーミング角αを変化させる際に設計の多様性を高める。
【0015】
請求項10〜12によるコーム要素の構造は、得られるコーミング効果に対して特に有利であると分かった。中間歯空間において最大コーミング角の領域でコーミングされる繊維は、歯面の反力の結果として、コーミング角が半径方向と反対の方向に小さくなる位置でそこから歯底に、したがって、半径方向と反対の方向に引き込まれる。したがって、この態様で設計されたコーム要素を用いたコーミングプロセスは特に堅調である。それによって、繊維が、特に、450コームサイクル/分を超え、500コームサイクル/分も超える高い回転コーム速度において、歯の外側先端部を通り過ぎることが回避され、結果的に、コーミング効果が向上する。
【0016】
請求項13によるコーム要素の構造は、コーミングされる繊維に歯が穏やかに係合するのを可能にする。中間歯空間を通過中のコーミングされる繊維の緊張が、歯の歯縁部に丸みを付けることで軽減され、したがって、繊維が裂ける危険が軽減される。コーミング角αは、それに応じて、丸みを付けた歯縁部上の繊維の接触点によって画定される。
【0017】
実施形態が、図面を用いて下記に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】複数のコームセグメントを有する円形コームの、コーミングローラの回転軸に対して垂直方向の側面図を示している。
【図2】第1の実施形態のコームセグメントの本発明によるコーム要素の拡大図の形の図1と同様の側面図を示している。
【図3】図2のIII−III断面線による断面図を示している。
【図4】図2のIV−IV断面線による断面図を示している。
【図5】図2のV−V断面線による断面図を示している。
【図6】図2のVI−VI断面線による断面図を示している。
【図7】図2のVII−VII断面線による断面図を示している。
【図8】図2のVIII−VIII断面線による断面図を示している。
【図9】図2のIX−IX断面線による断面図を示している。
【図10】丸みの付いた歯縁部を有する第2の実施形態のコーム要素のさらなる実施形態の、図3〜9と同様の断面図を示している。
【図11】第3の実施形態による中間歯空間を示すコーム要素の、図2と同様の概略拡大側面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示す円形コーム1は、回転軸3を備えた中空円筒状のコーミングローラ2を有する。総計10個のコームセグメント5が、コーミングローラ2上で回転方向4に設けられている。バータックとも呼ばれ、軸方向の延びが回転軸3に対して平行であるコームセグメント5は、円形コーム1のコーミング領域を画定する。各コームセグメント5は、同様に打ち抜かれた複数のコーム要素6を含み、複数のコーム要素6は、実質的に回転軸3の方向に並んで一列に置かれている。各コーム要素6は複数の歯7を有し、したがって、歯付ディスクとも呼ばれる。コーム要素6は、示した実施形態では前もって組み立てられて、いわゆるバータックを形成し、クランプによってコーミングローラ2に留められる。あるいは、バータックは、ねじ留めによってコーミングローラ2に連結することもできる。コーム要素6を前もって組み立てるのではなくて、グループ分けした配置でコーミングローラ2上にコーム要素6を直接置き、コーミングローラ2に接着することも可能である。
【0020】
図2に示す、コームセグメント5のコーム要素6は、表面線9に沿って湾曲した横面10を有する足部8を含み、表面線9に沿って並んで配置された歯7、12は、回転軸3に対して半径方向11に横面10から延びている。各歯7、12は、コーミングされる繊維に係合するための歯7、12の歯先13と、歯7、12を用いたコーム要素6のコーミング効果が繊維に作用する歯コーミング領域14と、歯7、12がコーム要素6の足部8に取り付けられた歯根15とを含む。足部8から半径方向11に向かって、歯根15、歯コーミング領域14、および歯先13が外側に配置され、一体化した形で互いに連結されている。回転軸3からコーミング半径rの半径方向距離に配置されたクレスト線30は、コーム要素6の歯先13によって確立され、表面線9に対して平行である。クレスト線30は、横面がコーミングローラを覆う架空の外側円筒を画定する。
【0021】
表面線9に沿って、または表面線9の方向に、すなわち、回転方向4に沿って、歯7、12は、前歯面、いわゆるツースフロント(tooth front)と、後ろ歯面16、いわゆるツースリヤ(tooth rear)とを有し、前歯面および後ろ歯面はともに、歯7、12が、表面線9に沿った前歯面17の凹形輪郭と、後ろ歯面16に沿った凸形輪郭とを有するような形で半径方向11に湾曲した輪郭を有する。歯高H1を有する中間歯空間18は、2つの隣接する歯7、12間で前歯12の後ろ歯面16と後ろ歯7の前歯面17とによって確立される。2つの隣接する中間歯空間18、19の歯高H1、H2は、コーム要素6に応じて周期的に変わる。歯高H1、H2を周期的に変化させないことも可能であり、特に、2つの隣接する中間歯空間、および、特に、コーム要素のすべての中間歯空間も同一の歯高を有してもよい。さらに、3つ以上の異なる歯高を設けてもよい。
【0022】
コーミングされる繊維の、対応する中間歯空間内へのそれぞれの侵入深さEに応じた、引き続き下記に定義されるコーミング角αの半径方向11に沿った変動が、図2に示すIII−III断面線〜IX−IX断面線に対応する図3〜9を用いて説明される。侵入深さEは、クレスト線30から半径方向11と反対の方向に測定される。III−III断面線に対応する侵入深さEIIIが、図2に例として示されている。これから明らかになるのは、最大侵入深さEmaxが、少なくとも理論的には、最大歯高H1の値をとることができることである。実際には、中間空間18、19への繊維の最大侵入深さEmaxは、最大歯高H1の約80%〜約85%であることが分かった。
【0023】
図3〜9の断面図は、いずれの場合も、中間歯空間18が歯対の間に配置された同じ歯対7、12に関する。単に見やすいようにするために、いずれも場合も、半径方向11に異なる位置で確立されるIII−III断面線〜IX−IX断面線が、図2では異なる歯上に示されている。
【0024】
図3に示すように、各歯7、12は、4つの歯縁部20〜23を備える略長方形の断面を有し、それぞれの前歯面17は、表面線9に沿って前方にある2つの歯縁部22、23によって限定され、それぞれの後ろ歯面16は、表面線9に沿って後方にある2つの歯縁部20、21によって限定される。中間歯空間18は、コーミングされる繊維が、回転軸3に対して平行に向けられた繊維通過方向24に通過するのを可能にする。
【0025】
さらに、架空の接続線25が図3に引かれており、この接続線25は、中間歯空間18において、中間歯空間18を限定する第1の(後方の)歯7の、表面線9に沿って前方にある歯縁部であって、かつ繊維通過方向24において後方にある歯縁部23と、中間歯空間18を限定する第2の(前方の)歯12の、表面線9に沿って後方にある歯縁部であって、かつ繊維通過方向24において前方にある歯縁部20とによって画定される。接続線25と表面線9とは、約8.2°のコーミング角αをなす。この用途に対して、少なくとも15°のコーミング角αが特に有利であると分かっているので、図3に示す断面が特定される歯先13の領域でのコーム要素6のコーミング効果は、綿をコーミングするのに不十分である。
【0026】
図4に示す断面は、図3の図と比較して、より大きい侵入深さEで歯7、12を示しており、断面は、同様に、図4の図の歯7、12の歯先13を貫通している。接続線25と表面9とによって囲まれた12.8°の角度αは、図3の図による角度αよりも大きい。コーミング角αの拡大は、図3に対して幅が増大したこと、すなわち、示した断面で歯7、12が繊維通過方向24に広がったことに基づく。それでもなお、コーミング角αは15°未満であり、したがって、綿繊維で特に有利なコーミング効果を得るのに十分な大きさではない。
【0027】
これは、2つの歯7、9間の歯先13の近くに存在を認められる繊維が最適にコーミングされないことを意味する。この場合に、繊維は、半径方向11と反対の方向で繊維に作用する歯面16、17の反力のために、中間歯空間18の内方に案内される、または引き込まれる。
【0028】
図5は、歯7、12を貫通し、しかも歯7、12の歯コーミング領域14を貫通する断面を示している。歯7、12のハッチングをかけた断面は、図4に示すものと比較して断面が拡大されており、歯7、12の断面は図4の図と比較して幅が拡大されている。さらに、表面線9と接続線25とによって囲まれた約19.9°のコーミング角αは、歯先13を貫通する断面での図3および図4によるコーミング角α、αよりも大きい。コーミング角αを有するコーム要素の場合、綿繊維をコーミングするのに非常に良好なコーミング効果が得られる。18°の最小コーミング角が満たされると、33mmを超える繊維長を有する長繊維綿をコーミングすることも可能である。
【0029】
図5と同様に、歯7、12の歯コーミング領域14を貫通する断面が、それぞれ図6および図7にも示されており、歯7、12の断面は図6において最大である。対応するコーミング角α≒25.5°、α≒26.2°は、図6および図7でさらに増加している、すなわち、図7によるコーミング角αが最大である。
【0030】
さらに言えることは、侵入深さEを深くしながら断面を確立することにより、歯7、12の2つの歯面16、17の幅は、図7で繊維通過方向24に測定した歯面16、17の幅がコーム要素6の幅Bに一致するまで連続して増加することである。
【0031】
図8および図9に示す、歯7、12の歯根15を貫通する2つの断面は、最大コーミング角αと比較して、小さくなったコーミング角α≒25.4°、α≒23.0°を示しており、この場合に、α>αである。これは、実質上、歯根15の領域にある、表面線9に沿った中間歯空間18の大きさが、歯7、12の歯コーミング領域14の中間歯空間18よりも大きいためである。
【0032】
表1〜3の本発明によるコーム要素の様々な実施形態に対して、コーミング角αの正確な数値が、絶対値の形と、さらにそれぞれの最大侵入深さEmaxを基準としたものとの両方で表した侵入深さEに応じて示されている。関連する、あるいは相対的な侵入深さErelは、最大侵入深さEmaxと比較した侵入深さEを示しており、Erel=E/Emaxである。
【0033】
図2〜9に示す第1の実施形態は例1として記載されている。例2および例3は、コーム要素6の様々な中間歯空間(ZZR)18、19に対する、侵入深さEに沿ったコーミング角の推移の別の構成をさらに示している。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
コーミング角αは、少なくとも部分的に増加でき、一定のままであり得、または半径方向11と反対の方向に、すなわち、侵入深さEに沿って減少することもできることが表から明らかになった。さらに、本発明によるコーム要素の例は、コーミング角αが、半径方向に、まず少なくとも部分的に増加することができ、次いで、少なくとも部分的に再度減少することができることを示している。
【0038】
表面線9に沿って侵入深さEが同じままの場合に、コーミング角αを同じままであるように設計することも可能である。さらに、侵入深さEが同じままの状態で、コーミング角が表面線9に沿って増加するように設計されることも、表1〜3の例から明らかである。表面線9に沿ったコーミング角αの増加は、漸進的に行うこともできる。
【0039】
少なくとも15°のコーミング角αが、少なくとも20%の相対侵入深さErelから達成される場合に、特に有利であると分かった。相対侵入深さErelが25%〜45%の範囲内で、コーミング角αが最大値に達する。コーミング角αが、30%の相対侵入深さErelから再度減少するように、中間歯空間を構成することにより、コーミングプロセス時にそれぞれの中間歯空間内で比較的高いところに繊維を保持することができる。侵入が深すぎると、梳きとられた粒子または繊維構成物が中間歯空間18の底部に溜まって汚染が拡大し、これらの汚染物は、困難さを伴ってそこから再度除去する(例えば、ブラシで掃き出す)しかない。
【0040】
図10は、コーム要素6の第2の実施形態の図3〜9と同様の図を示している。図1〜9を参照して上記に説明したものと同じ構成要素は、同じ参照数字を有し、再度詳細に説明することはしない。同様であるが、構造上異なって設計された要素には、後ろに[a」の付いた、説明した図に従った同じ参照数字が付与される。
【0041】
図10によるコーム要素6aは、図2〜9によるコーム要素と同じであり、歯7a、12aは、半径方向11に垂直な方向に略長方形の断面を有する。図2〜9の歯7、12とは対照的に、歯縁部は、いずれの場合も、領域20a〜23aに丸みを付けられている。これにより、コーム要素の第1の実施形態による歯縁部そのものは存在しないので、接続線25aが変わる。接続線25aは、中間歯空間18内のコーミングされる繊維の2つの接触点26、27間で画定される。
【0042】
歯縁部の丸み付けは研磨によって行われるので、歯縁部は鋭利な縁ではなくて半径を有する。この場合に、歯7a、12aの丸みの付いた領域20a〜23aの個々の半径は異なってもよい。特に、半径は、同一の歯で異なってもよい。縁部が鋭利な歯7、12を有するコーム要素6と比較して、丸みの付いた歯20a〜23aのある歯7a、12aを有するコーム要素6aのコーミング角αは、特定の侵入深さにおける対応するコーミング角α〜αと比較して小さくなる。言い換えると、コーミング角αは、歯7a、12aの丸み付けによって小さくなる。
【0043】
図11は、図2と同様であり、拡大して示したコーム要素6bの一部を示している。図1〜10を参照して上記に説明したものと同じ構成要素は、同じ参照数字を有し、再度詳細に説明することはしない。同様であるが、構造上異なって設計された要素は、後ろに[b」の付いた、説明した図に従った同じ参照数字を有する。
【0044】
コーム要素6bの示した部分では、2つの隣接する歯7b、12bが中間歯空間18bとともに示され、中間歯空間18bは、歯根15の領域において表面線9に沿って大きさが拡張されている。結果として、保持領域28が中間歯空間18bの下側端部に形成され、コーミングされる繊維は、コーミングプロセス時に保持領域28に保持される。このために、保持領域28は、上部で半径方向11に開いた略円形の断面形状を有しており、半径方向11に沿った中間歯空間18bは、歯先13から歯コーミング部14にかけて、表面線9に沿った幅が小さくなっている。侵入深さが大きくなるとともに、特に、保持領域28に達したときに、中間歯空間18bの幅は再度大きくなるので、表面線9の方向に中間歯空間18bの幅が最小になる領域が、歯コーミング領域14、特に、歯先13と歯根15との間に存在する。コーム要素6bの場合、コーミングプロセス時に、繊維に作用する反力のために、コーミングされる繊維を中間歯空間18b内に保持することができるので、特に、安定し、障害の発生しにくい態様でコーミングプロセスを行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
綿繊維をコーミングする繊維機械内にある、回転軸のまわりを回転可能なコーミングローラのコームセグメント用のコーム要素であって、
a)表面線(9)に沿って湾曲した横面(10)を有する足部(8)と、
b)前記回転軸(3)に対して前記横面(10)から離れるように半径方向(11)に延び、前記表面線(9)に沿って相前後して配置された複数の歯(7、12;7a、12a;7b、12b)と、
c)2つの隣接する歯(7、12;7a、12a;7b、12b)間にそれぞれ配置され、コーミングされる繊維が半径方向の侵入深さ(E)で繊維通過方向(24)に通過するのをそれぞれ可能にする複数の中間歯空間(18、18b)と、
を備えて構成されるコーミング要素にして、
d)各歯(7、12;7a、12a;7b、12b)が4つの歯縁部(20、21、22、23;20a、21a、22a、23a)を有し、
e)前記中間歯空間(18;18b)における架空の接続線(25;25a)が、前記中間歯空間(18;18b)を限定する第1の歯(7;7a;7b)の、前記表面線(9)に沿って前方にあり、かつ前記繊維通過方向(24)にて後方にある歯縁部(23;23a)と、前記中間歯空間(18;18b)を限定する第2の歯(12;12a;12b)の、前記表面線(9)に沿って後方にあり、かつ前記繊維通過方向(24)にて前方にある歯縁部(20、20a)との間で確立され、
f)前記表面線(9)と前記接続線(24)が、少なくとも15°のコーミング角(α)をなし、
g)前記コーミング角(α)が、少なくとも部分的に、前記半径方向(11)に大きくなる、コーム要素。
【請求項2】
少なくとも部分的に、前記半径方向(11)に一定であるコーミング角(α)を特徴とする、請求項1に記載のコーム要素。
【請求項3】
少なくとも部分的に、前記半径方向(11)に小さくなるコーミング角(α)を特徴とする、請求項1または2に記載のコーム要素。
【請求項4】
まず少なくとも部分的に、前記半径方向(11)と反対方向である外側から内側に大きくなり、次いで、少なくとも部分的に再度小さくなるコーミング角(α)を特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーム要素。
【請求項5】
前記侵入深さ(E)が同じままである場合に、前記表面線(9)に沿って周期的に変化するコーミング角(α)を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコーム要素。
【請求項6】
前記侵入深さ(E)が同じままである場合に、前記表面線(9)に沿って大きくなるコーミング角(α)を特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコーム要素。
【請求項7】
前記侵入深さ(E)が同じままである場合に、前記表面線(9)に沿って漸進的に大きくなるコーミング角(α)を特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のコーム要素。
【請求項8】
少なくとも18°、特に、少なくとも20°のコーミング角(α)を特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のコーム要素。
【請求項9】
異なる歯高(H1、H2)を有する中間歯空間(18、19)を特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のコーム要素。
【請求項10】
少なくとも15°の前記コーミング角(α)が、最大侵入深さ(Emax)に対して少なくとも20%の相対侵入深さ(Erel)で得られることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のコーム要素。
【請求項11】
少なくとも15°の前記コーミング角(α)が、最大侵入深さ(Emax)に対して25%〜45%の相対侵入深さ(Erel)の領域で最高値をとることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のコーム要素。
【請求項12】
少なくとも15°の前記コーミング角(α)が、最大侵入深さ(Emax)に対して30%の相対侵入深さ(Erel)から小さくなることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のコーム要素。
【請求項13】
前記コーミングされる繊維が、歯(7a、12a)の少なくとも1つの丸みの付いた歯縁部(20a、21a、22a、23a)の接触点(26、27)に載り、前記接続線(25a)が、前記接触点(26、27)によって前記丸みの付いた歯縁部(20a、21a、22a、23a)上に画定されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載のコーム要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−532997(P2012−532997A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518874(P2012−518874)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058919
【国際公開番号】WO2011/003742
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(304034417)シュテットラー ウント ウール カーゲー (6)
【Fターム(参考)】