説明

コーン型遠心分離機

【課題】遠心分離機の異常振動を防止できるコーン型遠心分離機を提供する。
【解決手段】円錘形状のバスケット11と、バスケット11の内側に配置され外周面に掻き取り羽根13を有し且つバスケット11と同じ向きに拡径する円錘形状のスクリュー12と、バスケット11の中心軸に略一致しバスケット11の底部に対向して開口するスラリー供給管17と、スラリー供給管17によって供給されたスラリーSをスクリュー12の外周面とバスケット11の内周面との間の空間に導くためにスクリュー12に延設された円錘台形状のディストリビューター15と、スクリュー11の内側に配置されディストリビューター15の細径部から延設したスクリュー12と同じ向きに拡径する円錘台形状のコーン部16と、前記コーン16部に洗浄液Wを供給するための洗浄液供給管18とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーン型遠心分離機およびそれの異常振動防止方法に関する。堆積性を有する固体を含むスラリーを固液分離するためのコーン型遠心分離機およびそれの異常振動防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶液を濃縮していくと、溶質が析出し、スラリー化する。このスラリーを固液分離し、溶質(析出固体)を取り出すことが工業的にしばしば行われている。例えば、塩化ナトリウム水溶液を濃縮し、塩化ナトリウムを析出させてスラリー化し、該スラリーから析出された塩化ナトリウムを取り出すことが行われている。
このようなスラリーから析出物を取り出す手段として遠心分離機が一般に用いられる。
【0003】
遠心分離機としては、例えば、液透過性の有底の円錐形状のバスケットと、バスケットの内周面を覆って配設したスクリーンと、バスケットの内側に配設した外周面にスクリュー羽根を有する円錐形状のスクリューと、バスケットの中心軸に略一致するように配設しバスケットの底部に対向して開口するスラリー供給管と、スラリー供給管から供給されたスラリーをバスケットの内周面(すなわち、スクリーン)とスクリューの外周面との間に形成された空間に導くためにスクリューに延設したディストリビューターと、スクリューの内周面に洗浄液を供給する洗浄液供給管とから構成されているものが知られている(特許文献1)。この遠心分離機において、洗浄液は、スクリュー内周面に設けられた孔から、バスケットの内周面とスクリューの外周面との間に形成された空間に連続的に流出し、スクリュー羽根で掻き取られた脱水固体に降りかかり、脱水固体表面をリンスする。この洗浄液としては一般に水が用いられる。
【0004】
ところで、水溶液の濃縮で得られたスラリー中の固体は水溶性物質であるので、該スラリーの固液分離では水の連続供給によるリンスは行われない。そのため、該スラリー用の遠心分離機には、リンスのための洗浄液供給ラインが設けられていない。
ところが、水溶液の濃縮で得られたスラリーの遠心分離を長時間行っていると、遠心分離機が異常振動を起こすことがしばしばあった。異常振動はベアリングなどの駆動系にダメージを与えることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−128157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、水溶液の濃縮で得られたスラリーの遠心分離において、析出固体の一部が、スクリューの回転によって、スクリューの内側に吸い込まれ、スクリュー内周面に析出固体が付着し堆積し、その堆積物の量が偏ったときに異常振動を生じることをつきとめた。そこで、本発明者は、定期的に遠心分離機を停止し、堆積した析出固体を取り除いていた。しかし、堆積物の除去を行っている間は遠心分離をすることができない。また、異常振動は、遠心分離機のベアリングなどの駆動系に大きなダメージを与えるので、遠心分離機を定期的にオーバーホールする必要があった。
本発明の目的は、堆積性を有する固体を含むスラリーを固液分離するためのコーン型遠心分離機を提供すること、及び遠心分離機の駆動系のダメージを低減し、オーバーホールの間隔を延長することができ、析出固体除去のための定期的な運転の停止無しで遠心分離機の異常振動を防止する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、円錘形状のバスケットと、バスケットの内側に配置され外周面に掻き取り羽根を有し且つバスケットと同じ向きに拡径する円錘形状のスクリューと、バスケットの中心軸に略一致しバスケットの底部に対向して開口するスラリー供給管と、スラリー供給管によって供給されたスラリーをスクリューの外周面とバスケットの内周面との間の空間に導くためにスクリューに延設されたスクリューと逆向きに拡径する円錘台形状のディストリビューターと、スクリューの内側に配置されディストリビューターの細径部から延設したスクリューと同じ向きに拡径する円錘台形状のコーン部と、を有するコーン型遠心分離機において、スクリューとバスケットとを回転速度差を持って回転させ、スラリー供給管によって供給されたスラリーをスクリューの外周面とバスケットの内周面との間の空間に導き、スクリューの掻き取り羽根でスラリーを移送させながら固液分離し、さらにコーン部に洗浄液を供給することによって、遠心分離機の異常振動を効果的に防止できることを見出した。本発明はこの知見に基づきさらに検討した結果、完成に至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は、円錘形状のバスケットと、バスケットの内側に配置され外周面に掻き取り羽根を有し且つバスケットと同じ向きに拡径する円錘形状のスクリューと、バスケットの中心軸に略一致しバスケットの底部に対向して開口するスラリー供給管と、スラリー供給管によって供給されたスラリーをスクリューの外周面とバスケットの内周面との間の空間に導くためにスクリューに延設されたスクリューと逆向きに拡径する円錘台形状のディストリビューターと、スクリューの内側に配置されディストリビューターの細径部から延設したスクリューと同じ向きに拡径する円錘台形状のコーン部と、前記コーン部に洗浄液を供給するための洗浄液供給管とを有し、前記のスクリューとバスケットとが回転速度差を持って回転し、スラリー供給管によって供給されたスラリーをスクリューの外周面とバスケットの内周面との間の空間に導き、スクリューの掻き取り羽根でスラリーを移送させながら固液分離することができる、コーン型遠心分離機である。
【0009】
また、本発明は、円錘形状のバスケットと、バスケットの内側に配置され外周面に掻き取り羽根を有し且つバスケットと同じ向きに拡径する円錘形状のスクリューと、バスケットの中心軸に略一致しバスケットの底部に対向して開口するスラリー供給管と、スラリー供給管によって供給されたスラリーをスクリューの外周面とバスケットの内周面との間の空間に導くためにスクリューに延設されたスクリューと逆向きに拡径する円錘台形状のディストリビューターと、スクリューの内側に配置されディストリビューターの細径部から延設したスクリューと同じ向きに拡径する円錘台形状のコーン部と、を有するコーン型遠心分離機において、スクリューとバスケットとを回転速度差を持って回転させ、スラリー供給管によって供給されたスラリーをスクリューの外周面とバスケットの内周面との間の空間に導き、スクリューの掻き取り羽根でスラリーを移送させながら固液分離し、さらにコーン部に洗浄液を供給することを含む、遠心分離機の異常振動防止方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によって、洗浄液をコーン部に連続的にまたは間欠的に供給すると、コーン部に付着する析出固体を効率的に除去し、堆積を防止できる。コーン部に供給した洗浄液は、スクリュー羽根で掻き取られた脱水固体に降りかかることがほとんどない。本発明のコーン型遠心分離機では、スクリュー内周面に析出固体が堆積しないので、従来該堆積物によって生じていた異常振動が全く生じなくなる。その結果、定期的な遠心分離機の停止無しで、遠心分離機の異常振動を防止することができる。さらに本発明の方法によれば、遠心分離機の駆動系のダメージを低減し、オーバーホールの間隔を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るコーン型遠心分離機の一例を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、本発明に係るコーン型遠心分離機の一例を示す。図示のコーン型遠心分離機は、円錘形状のバスケット11と、バスケットの内側に配置され外周面に掻き取り羽根を有し且つバスケットと同じ向きに拡径する円錘形状のスクリュー12と、バスケットの中心軸に略一致しバスケットの底部に対向して開口するスラリー供給管17と、スラリー供給管によって供給されたスラリーをスクリューの外周面とバスケットの内周面との間の空間に導くためにスクリューに延設されたスクリューと逆向きに拡径する円錘台形状のディストリビューター15と、スクリューの内側に配置されディストリビューターの細径部から延設したスクリューと同じ向きに拡径する円錘台形状のコーン部16と、前記コーン部に洗浄液を供給するための洗浄液供給管18とを有している。なお、ここで円錘形状または円錘台形状というのは、図1に示すような、概ね円錘形または概ね円錘台形をした外側面と、概ね円錘形または概ね円錘台形で刳り抜いたような内側面とを有するものを指す。
【0013】
バスケット11は、従来のコーン型遠心分離機に備わるものと同じである。例えば、バスケット11は、多数のリング状部を桟部で接続してスリットを形成するようにした有底円錐形状のバスケットである。バスケット11の内周面には、内周面を覆うスクリーン14を有していることが好ましい。バスケット11は基部11bに電動機が繋がりそれによって軸Cの周りで回転するようになっている。スクリュー12は基部12bに電動機が繋がりそれによって軸Cの周りで回転するようになっている。
スクリューとバスケットとは同一の軸Cを中心にして回転速度差を持って回転させられている。この回転差によって、スクリューの外周面に在る掻き取り羽根13が、バスケット内周面に対して相対的に移動することになる。この掻き取り羽根の移動が、固液分離された固形物をバスケットの拡径(開放端)側に移送し、最後はバスケット11の開放端側に設けた脱水物質の排出室に移される。
【0014】
スクリューには、スクリューと逆向きに拡径する円錘台形状のディストリビューター15が、延設されている。ディストリビューターの細径側にスラリー供給管の開口部が繋がっている。スラリー供給管から供給されたスラリーは、回転するディストリビューターによって、スクリューの外周面とバスケットの内周面(スクリーン)との間の空間に導かれる。そして、このスクリーンによって固液分離が促進される。
【0015】
コーン部16は、スクリューの内側に配置されディストリビューターの細径部から延設したスクリューと同じ向きに拡径する円錘台形状のものである。
コーン部16に対向して開口するように洗浄液供給管18が設けられている。洗浄液供給管から供給された洗浄液、好ましくは水は、回転しているコーン部16に、連続的にまたは間欠的に、好ましくは間欠的に供給される。洗浄液供給管の開口は、単なる管の開口部であってもよいし、スプレーノズルになっていてもよい。塩化ナトリウムスラリーのような、水溶液を濃縮して固形物を析出させてなるようなスラリーの遠心分離を長時間行っていると、析出固体がスクリューの回転によってスクリュー内側に吸い込まれ、コーン部の表面に析出固体が付着し、堆積していく。堆積によってスクリューの重量バランスが崩れ異常振動を起こすことがある。析出固体が堆積したコーン部に洗浄液を供給し降り掛けることによって、析出固体を溶解除去できる。これによって、スクリューの重量バランスが保たれ、異常振動が抑制される。
【0016】
コーン部に供給された洗浄液は、コーン部からスクリューに吸い込まれ、排水される。そのため、洗浄液は、スクリュー羽根で掻き取られた脱水固体に降りかかることがないので、固形物が水溶性物質であっても、固液分離能に影響を及ぼさない。
【0017】
洗浄液の供給量は、スラリーの種類、処理量に応じて、適宜選択できる。洗浄液は間欠的に供給するのが好ましい。供給1回の洗浄液量は、好ましくは200ml〜5l、より好ましくは0.5〜1.5lである。洗浄液の供給間隔は、好ましくは1分間〜20分間、より好ましくは5分間〜10分間である。洗浄液を多量に連続供給するとコーン部が常に濡れた状態になり、脱水固形物の付着および堆積を誘発しやすい。一方、洗浄液の供給間隔を長くすると堆積物の量が多くなるので1回あたりの洗浄液量が多くなる。
また、供給間隔や供給量は、タイマー等によって供給のオンオフを制御できる。また、遠心分離機の振動状況に応じてタイマーによる制御とは関係無く供給間隔や供給量を変更することができる。例えば、p−p値100μmを超える振動を振動センサが感知した時には、タイマーによる洗浄液の供給指示の前に、洗浄液の供給を指示するようにし、供給間隔を狭めることができる制御回路を組み込んでもよい。
【実施例】
【0018】
比較例
30体積%の塩化ナトリウムスラリー3500L/hrを、コーン型遠心分離機(SHC−400D:タナベウィルテック社製)に供給して、固液分離処理を行った。p−p値400μmを超える振動を振動センサが感知した時には、遠心分離機を停止し、遠心分離機に付着した食塩の掻き落とし清掃を行った。1回の清掃には30分間程度を要した。清掃は日に平均4回程度の頻度で行った。
このような方法で操業した遠心分離機は、ベアリングなどの駆動系の磨り減りが大きく、1年毎のオーバーホールを要した。
【0019】
実施例
30体積%の塩化ナトリウムスラリー3500L/hrを、図1に示すコーン型遠心分離機に供給して、固液分離処理を行った。コーン部に洗浄液を7分毎に約1L供給した(供給時間は約20秒間)。運転中は、p−p値100μmを超える振動が振動センサで感知されることは無かった。
このような本発明の方法で操業した遠心分離機は、ベアリングなどの駆動系の磨り減りが少なく、2年毎のオーバーホールで、操業を行うことができた。
【符号の説明】
【0020】
S:スラリー
W:洗浄液
F:分離液
D:脱水物
10:コーン型遠心分離機
11:バスケット
12:スクリュー
13:掻き取り羽根
14:スクリーン
15:ディストリビューター
16:コーン部
17:スラリー供給管
18:洗浄液供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円錘形状のバスケットと、 バスケットの内側に配置され外周面に掻き取り羽根を有し且つバスケットと同じ向きに拡径する円錘形状のスクリューと、 バスケットの中心軸に略一致しバスケットの底部に対向して開口するスラリー供給管と、 スラリー供給管によって供給されたスラリーをスクリューの外周面とバスケットの内周面との間の空間に導くためにスクリューに延設されたスクリューと逆向きに拡径する円錘台形状のディストリビューターと、 スクリューの内側に配置されディストリビューターの細径部から延設したスクリューと同じ向きに拡径する円錘台形状のコーン部と、 前記コーン部に洗浄液を供給するための洗浄液供給管と を有し、
前記のスクリューとバスケットとが回転速度差を持って回転し、 スラリー供給管によって供給されたスラリーをスクリューの外周面とバスケットの内周面との間の空間に導き、スクリューの掻き取り羽根でスラリーを移送させながら固液分離することができる、コーン型遠心分離機。
【請求項2】
バスケットの内周面を覆うスクリーンを有し、スラリーをスクリューの外周面とスクリーンとの間の空間に導くことができる、請求項1に記載のコーン型遠心分離機。
【請求項3】
前記洗浄液供給管は洗浄液を間欠的に供給する、請求項1または2に記載のコーン型遠心分離機。
【請求項4】
塩化ナトリウムを含むスラリーの固液分離に使用される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーン型遠心分離機。
【請求項5】
円錘形状のバスケットと、 バスケットの内側に配置され外周面に掻き取り羽根を有し且つバスケットと同じ向きに拡径する円錘形状のスクリューと、 バスケットの中心軸に略一致しバスケットの底部に対向して開口するスラリー供給管と、 スラリー供給管によって供給されたスラリーをスクリューの外周面とバスケットの内周面との間の空間に導くためにスクリューに延設されたスクリューと逆向きに拡径する円錘台形状のディストリビューターと、 スクリューの内側に配置されディストリビューターの細径部から延設したスクリューと同じ向きに拡径する円錘台形状のコーン部と、 を有するコーン型遠心分離機において、
スクリューとバスケットとを回転速度差を持って回転させ、スラリー供給管によって供給されたスラリーをスクリューの外周面とバスケットの内周面との間の空間に導き、スクリューの掻き取り羽根でスラリーを移送させながら固液分離し、さらにコーン部に洗浄液を供給することを含む、遠心分離機の異常振動防止方法。
【請求項6】
洗浄液の供給を間欠的に行う、請求項5に記載の遠心分離機の異常振動防止方法
【請求項7】
バスケットの内周面を覆うスクリーンを有し、スラリーをスクリューの外周面とスクリーンとの間の空間に導く、請求項5または6に記載の遠心分離機の異常振動防止方法。
【請求項8】
スラリーは塩化ナトリウムを含むものである、請求項5〜7のいずれか1項に記載の遠心分離機の異常振動防止方法。

【図1】
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