説明

コーン直径を最大にするためのスピーカ包囲構造

【課題】コーン直径を最大にするためのスピーカ包囲構造を提供すること。
【解決手段】コンパクトスピーカーにおいて、対応するバスケット(10)サイズに対して従来使用されたものよりも大きい直径のダイアフラム(14)の配置を可能にするために、包囲サスペンション(12)の外部バスケット取り付け部が、軸方向スカート(16a)として形成された特殊な構成で作製される。本発明のスピーカーバスケット(10)は、対応する軸方向周縁フランジを用いて作製され、そのフランジの内壁は、軸方向周縁サスペンションフランジの外壁への接着取り付けのためにランディング(landing)(20)として働くように作製される。この特別な構成は全可動域の必要とされた弾性および能力を保持しつつ、より大きいコーンの配置によってピストン領域の実質的に効率的な振動の拡大を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、オーディオのラウドスピーカ/トランスデューサの分野に関し、および、より具体的には、一般向けのコンパクト型に分類されるフルレンジスピーカの中域周波数および低周波数応答の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
コンパクトスピーカは、例えば、スピーカの直径といった外のり寸法によって分類されるが、他方、このようなスピーカの主な性能の制限、すなわち中域周波数および低周波数性能は、主として、ダイヤフラム領域および変移能力、すなわちピストンとしての役割を果たすダイヤフラムの有効な可動部分によって動かされる空気の体積によって決定される。
【0003】
小型スピーカは、自動車、トラック、ボート、航空機等といった乗り物において大量に用いられる。このようなスピーカは、通常、乗り物の製造業者によって用いられる、通常、世界の様々な地域で作り出された標準規格により寸法設定された、種々の主カットアウトおよび包囲取付穴を含む特定の実装パターンと機械的に適合するように設計される。取り替え用スピーカは、通常、乗り物に元から提供された実装パターンおよび空間と適合することが必要とされる。
【0004】
バスケットの直径が4インチ〜7インチのサイズの範囲の円形スピーカは、米国および世界中で、乗り物用に極めて多く用いられている。6インチ〜7インチの範囲のスピーカのほとんどは、6.18インチ(157mm)の仕様を定めるJIS日本工業規格か、または6.69インチ(170mm)の直径の仕様を定める欧州において用いられるDINドイツ工業規格で製作される。
【0005】
サイズ効率に関する判定基準の有用なメリットファクタ(factor of merit)は、コーン領域と突き出したバスケット領域全体とを比較することによって取得される。この比率ファクタは、典型的なバスケットの直径および関連するコーンの直径と共に以下に表で示される。
【0006】
【表1】

表1は、従来のスピーカ構造が通常、0.51のコーン/バスケット領域の比率を提供することを示す。JISタイプの(b)バージョンは、DINのコーンサイズおよび対応する中域周波数および低周波数性能に部分的にアップグレードする一方でより小さいJISバスケットサイズを保持する取り組みを表す。
【0007】
すべての実用的スピーカは、コーン領域(所与のコーン変移に対して)に逆比例して低域のカットオフ周波数における音響効果の固有のドロップアウトにさらされるので、これは任意のサイズのフルレンジスピーカに対して明確であり、コーンの直径を大きくすることは非常に有益である。なぜなら、コーンの直径が大きくされ得る各パーセントは、コーン領域におけるパーセント増分を2倍より大きくさせ得るからである。スピーカバスケットの外のり寸法を大きくすることなくコーン領域の拡大を達成することは、それが円形、楕円形、または他の形状に関わらず、例えば、乗り物の音響システムおよび小型のパーソナルラジオ/ステレオプレーヤ、マルチメディアコンピュータシステム等に大量に用いられるような、バスケットサイズが厳しく制約されるコンパクトスピーカの中域周波数および低周波数性能にとって特に有益である。
【0008】
(公知の関連技術の議論)
図1は、公知の技術による典型的なラウドスピーカの整形された板状金属のバスケット10のエッジ部位の断面である。典型的な包囲サスペンション12は、外側にむかって延びる周辺部分として、バスケットの周辺領域10において平坦側帯ランディング10Aと接着で取付けるための半径方向平坦フランジ12Aを有し、かつ内側にむかって延びる周辺部分として、コーン14に接着で取付けるためのコーン内部フランジ12Bを有し、これは部分的に示される。環状包囲サスベンジョンメンバー12の中央の弓状可撓性部分12Cは、コーン14を半径方向に制約するが、ボイスコイルによって駆動された場合、コーンが軸方向に振動することを可能にする。
【0009】
コーン14の部分およびその包囲サスペンション12は、正常な「停止(at rest)」状態について実線で示される。包囲12’およびコーン14’の変位部分が、最下方へコーンが変移した最大駆動状態について点線で示される。包囲サスペンション12の弓状部分12Cの変位は、弓状部分12Cの中間領域に向かって延びるコーン直径よりもいくらか大きい有効ピストン直径を提供する。
【0010】
図1Aは、成形板状金属構造に対する代替案として、プラスチックから成形されるか、またはアルミニウム等の金属から鋳造されて、示されるようなランディングを形成するように構成されるバスケット10Aの断面であり、包囲サスペンション12の外部フランジ12Aの接着での取付けについての図1におけるような成形板状金属バスケットの断面に対応する。
【0011】
Mitobeによる米国特許出願第5,111,510号、およびTsuchiyaらによる第5,115,474号は、典型的な従来のスピーカ包囲サスペンション構造を表す断面図を示す。これらの標準のコーン実装構成は、図1および図1Aに示されるように、ならびに公知の技術の大多数のスピーカに広く実用化されるような、包囲サスペンション上の外方伸張半径方向平坦固定フランジを特徴とする。
【0012】
発明者Hazewood,EspirituおよびJorgensenによる「TWIST−LOCK MOUNTABLE VERSATILE LOUDSPEAKER MOUNT」に関する米国特許出願第5,867,583号は、コーン/バスケット直径比率を大きくした特殊な包囲サスペンション構成を含み、これは、0.58すなわち、従来型のスピーカ(典型的には0.51;上記の表1を参照)よりも13%より大きいコーン/バスケット領域比率が達成されたDINコーンがJISバスケットにおいて利用されることを可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(本発明の目的)
従来より大きいコーンサイズの使用を可能にし、従って、増やされたコーン/バスケットの直径を提供し、この結果、中間周波数性能および低周波数性能を強化する円形のコーンタイプ拡声器の包囲サスペンションの従来にない実装を提供することが本発明の第1の目的である。
【0014】
新規な構成および実装システムを提供することがさらなる目的である。このシステムにおいて、包囲サスペンションは、外側固定領域の空間をより少なく占めることにより、より大きなコーン直径を可能にするか、さらに、同等の従来のスピーカで発揮できる、少なくとも等しいコーン可動能力を提供する態様で、構成される。
【0015】
形成された板状金属型の標準的なスピーカバスケット、およびプラスチックから成形されるか、またはアルミニウム等の金属から鋳造されるバスケットを利用する実施形態を提供することがさらなる目的である。
【0016】
本発明の特別の包囲サスペンション取り付け構成にて、接着取り付け性能の高品質レベルおよび信頼性を、例えば、接着取り付けの界面領域を最大化することにより、提供することがさらなる目的である。
【0017】
(本発明の要旨)
上述された目的は、対応するバスケットサイズに関して、従来、用いられるより大きな直径のダイアフラムを利用することにより、および、特別の構成で包囲サスペンションの外側周辺部を作製することであって、この特別の構成は、必要とされる弾性および全可動能力を保持する一方で、より大きな直径コーンを配備することおよび/または包囲サスペンションの柔軟な弧状部分の幅を増やすことによって効率の高いピストン領域を実質的に伸びる、この結果、効率の高い振動領域を増やす外側周辺部を作製することによる、本発明の主題のスピーカによって達成された。
【0018】
柔軟な弧状部分から外へと半径方向に伸びる包囲サスペンション外側取り付け部材の従来の平坦型の代わりに、本発明の新規な出発点において、包囲サスペンションの外側取り付け部材は、軸方向スカート、すなわち円形スピーカバスケットの場合には、後方に伸びる、一般に管状の形態で形成され、前方に伸びる、界面領域の接着固定で、上記バスケットの周辺部に提供された対応する軸性フランジ内に密接に適合するように寸法が決められている。
【0019】
軸方向スカートは、接着固定領域を最大にするために特別に形成される。
【0020】
様々な実施形態およびバージョンについて、上記バスケットは、金属から押された、従来のJISスピーカと類似した、タイプであり得るか、または、上記バスケットは、金属から鋳造されるか、または適切なプラスチック材料から成形されるタイプであり得る。
【0021】
本発明の、上述の目的およびさらなる目的、特徴および利点は、添付図面と共に行われた以下の説明から、より十分に理解される。
【0022】
図1〜9はスピーカのリム領域の断面図を示す。
【0023】
図2〜9は、本発明に従って構造化されたスピーカコーンサスペンションシステムの実施形態およびバージョンを示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、従来技術の議論の下で、以上で議論された典型的な従来のスピーカを示す。
【図1A】図1Aは、従来技術の議論の下で、以上で議論された典型的な従来のスピーカを示す。
【図2】図2は、外側スカート型で特に形成された包囲サスペンションを有する基本的な実施形態を示す。上記外側表面は、バスケットリムのフランジの内側表面と接し、接着して取り付けられている。
【図3】図3は、特に成形されるか、または鋳造されたバスケット内に形成された環状通路に適合されたスカートを備えた図2と類似した包囲取り付け部を示す。
【図4】図4は、追加された環状のリテーナリングを備えた図2と類似した包囲取り付け部を示す。
【図5】図5は、環状の実装通路を提供するために形作られた保持リングを備えた、図4の全体的な構成の異なるバージョンを示す。
【図6】図6は、実装領域内にフレア状の断面形状を提供するために特に形作られた包囲物を備えた好適な実施形態を示す。
【図7】図7は、実装領域に戻された二重されたフランジを備えた別の実施形態を示す。
【図8】図8は、強化された接着固定のために増加された界面領域を備えた、図10に示された実施形態のバージョンを示す。
【図9】図9は、環状のスペーサを配備する実施形態を示す。環状のスペーサは、スピーカがパネルの後部側上に実装されることを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(詳細な説明)
図1〜9は、それぞれ、スピーカのバスケットリムの断面図を示す。
【0026】
図1および1Aは、従来技術の議論のもとで上記のような、整形された板状金属を用いる典型的な従来のスピーカまたは成型/鋳造バスケットそれぞれの包囲サスペンション実装および取付構成を示す。
【0027】
図2〜9は、本発明にしたがって構成された新しいコーンサスペンション包囲実装の異なる実施形態およびバージョンを示す。
【0028】
図2は、本発明の基本的な実施形態を示す。特別に構成された包囲サスペンション16が、軸スカート16Aとして形成された外側取付部材で作製される。この軸スカート16Aは、前方に延びており、図1および1Aの従来技術の外方伸長半径方向平坦フランジ12Aを介して取り付けるという、従来のやり方からの基本的な逸脱となる。
【0029】
スカート16Aは、バスケットリムの内部表面と界面を形成し、その下側エッジは、ランディング領域上に静止している。スカート16Aは、示されるように界面表面に付着して取り付けられている。この基本的な実施形態は、示されるようにプレスされた板状金属バスケット10とともに、または、プラスチック成型されるかまたはアルミニウム等の金属から鋳造されたバスケットとともに利用され得る。
【0030】
図1および1Aの従来のコーン14と比較して、コーン14Aのサイズが増加されていること、すなわち、円形スピーカの直径が増加されていること(これは、本発明によって可能にされる)は、図2において明らかである。
【0031】
図3は、図2のような特別に形成された包囲サスペンション16を利用する実施形態を示す。しかしながら、スカート16Aは、環状チャンネルに適合される。この環状チャンネルの外部壁は、バスケットリム18の内部壁によって形成され、このバスケットリム18の内部壁は、バスケット18の厚み領域18Aによって形成される。バスケット18は、プラスチックから成型されるるか、または、アルミニウム等の金属から鋳造される。この構成は、バスケット18の周辺フランジの内部壁表面と包囲サスペンション16のスカート16Aの外部壁表面と間の界面における付着エリアが増加されることに起因して、より優れた取付信頼性を提供する。
【0032】
図4は、図2の基本的な実施形態のバージョンを示し、包囲サスペンション16は、図2および3と同一であるが、それは、示されたように形成された環状リテーナーリング20によって内側上に保持され、バスケット10のランディングに付着して固定される。サスペンション部材16の取付スカート16Aは、バスケット10のリムおよびリング20を有する界面に付着して所定位置に固定される。
【0033】
図5は、図4の一般的な実施形態のバージョンを示し、リターナリング22が、サスペンション部材16の取付スカート16Aを受け入れる環状チャンネルにより構成される。リング22内のチャンネルの外部壁の厚さは、バスケットサイズ、コーンサイズおよび/またはサスペンション部材16の柔軟性アーチ型部分の径間の寸法設定する際に考慮に入れられるべきである。
【0034】
図6は、本発明の好適な実施形態を示し、包囲サスペンション24が、実装ランディング領域において、示されるように断面フレア(flared)形状を提供するように特別に形成されている。これは、軸方向および半径方向の両方の界面領域が付着して固定されることを可能にし、その結果、高い信頼性が、図1、1Aのような従来の固定に比較して、固定領域の増加によって取得される。
【0035】
図7は、代わりの実施形態を示し、包囲サスペンション26の外側実装スカート26Aが示されるようにそれ自体戻して二重にされ、平坦な側帯ランディングと同様にうまくバスケット10の周辺フランジの内部側に付着して固定される。
【0036】
図8は、図6のものに類似する実施形態を示すが、特別な包囲サスペンション28の実装スカート28Aが、示される形状を形成するために成型されている。この示された形状は、厚さに対するフレアが、バスケット10の平坦な側帯ランディング20の全体のエリアを実質的に含む増大されたさらなる付着固定エリアを可能にする。
【0037】
図9は、本発明の実施形態を示し、バスケット10の軸方向周辺フランジの内側に適合された実装アダプタ32をさらに含む。この実装アダプタ32は、スピーカがパネルの後部側上に実装されることを可能にする。
【0038】
包囲サスペンション部材30のスカートは、狭小固定フランジ30Aにより作製される。この狭小固定フランジ30Aは、スカートのエッジから外方に延び、バスケット10の側帯ランディングおよび環状スピーカ実装アダプタ32の下方部分に付着して固定される。この環状スピーカ実装アダプタ32は、プラスチックから成型されか、または、金属から鋳造され得る。アダプタ32は、スピーカと、アダプタ32の最上部水平表面と界面を形成するパネルとの間にスペーサを形成する。バスケット10のリムの内部表面に付着して固定されて、狭小固定フランジ30A上で下向きに作動するアダプタ32の垂直部分の下端は、付着固定を増大させるためのさらなる界面エリアを提供する。
【0039】
129mmの外径(outer diameter)を有する従来のバスケットを有する4インチ円形スピーカでは、本発明の大抵の実施形態の組み込みによって、従来のコーン直径(92mm)が102.6mmに増大されることが可能になる。直径における11.5%およびエリアにおける22.4%の増加は、低周波数応答の有意な向上を提供する。テーブル1を参照して、4インチカテゴリーでの本発明によって達成されるコーンエリア/バスケットエリアは、従来のスピーカに対する0.51に比較して、0.633であり、これは、このコーンエリア/バスケットエリアの改善ファクタとして、24%の増加である。
【0040】
実施形態のうちの任意では、包囲サスペンションのアーチ部分は、厚さ均一に作製されるか、または、増加されたコンプライアンスに対する厚さに特別に変化され得る。例えば、中央領域においてより薄くなる形状にされる、および/または、一方または両方のフランジがテーパー形状にされ得る。
【0041】
本発明は、包囲サスペンションスカートフランジが、示されるような内側ではなく、バスケットリムフランジの外側の周りに配置される、代替の構成において実施され得る。これにより、サスペンション取付スカートの内部軸方向の壁表面が界面を形成し、バスケットリムフランジの外側軸方向の壁表面に付着されて取り付けられる。
【0042】
典型的には、開示された異なる実施形態では、特別に構成された本発明の包囲サスペンションは、従来の第二コーンサスペンション部材(典型的には、よく知られた方法で配置された同軸スパイダーサスペンションであり、コーンの中央ボイスコイル領域に付着される)と協同して機能する。しかしながら、本発明は、特別の包囲サスペンションが唯一のコーンサスペンション要素として機能する実施形態においても実施され得る。
【0043】
本明細書では、円形スタイルのバスケットスピーカに適用されるように例示目的として示されたが、本発明の原理、すなわち、包囲サスペンションの外方に延びる実装フランジを短縮または除去することは、円形スタイルのスピーカに制限されない。それは、長円形または長方形を含む任意の実用的形状のバスケットを有するスピーカに実施され得る。
【0044】
本発明は、それらの意図および必須の特徴から逸脱することなく、他の特定の形態において具体化および実施され得る。本発明の実施形態は、したがって、全ての点において例示として考慮され、制限的に考慮されない。本発明の範囲は、上述の説明よりはむしろ、添付の請求の範囲によって示される。したがって、請求の範囲の均等物の意味および範囲に収まる全ての変形、置き換え、および変更は、それらに抱き込まれるように意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−39647(P2012−39647A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222243(P2011−222243)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【分割の表示】特願2008−16750(P2008−16750)の分割
【原出願日】平成14年1月18日(2002.1.18)
【出願人】(592051453)ハーマン インターナショナル インダストリーズ インコーポレイテッド (91)
【Fターム(参考)】