説明

ゴミ処理方法、ゴミ処理システム、および加熱処理装置

【課題】 従来以上に短期間で、ゴミを完全に消失させることができるゴミ処理方法と、そのゴミ処理方法を実施するのに好適なゴミ処理システム、およびそのゴミ処理システムにおいて利用される加熱処理装置を提供すること。
【解決手段】 加熱処理装置15では、スクリュウコンベア33でゴミを撹拌、搬送しながら、温度180〜300℃の過熱蒸気によってゴミを加熱し、ゴミに含まれる高分子材料を炭化させることなく低分子量化する。そして、加熱処理装置15において加熱処理が施されたゴミを分解処理装置17に投入し、撹拌ブレード51を回転駆動することにより、ゴミと、有機物を分解可能な微生物が棲息する多孔質セラミック粒子53とを混合、好気性雰囲気下で撹拌することにより、ゴミを気化分解・消失させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴミ処理方法、ゴミ処理システム、および加熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、代表的なゴミ処理方法としては、焼却処理が行われてきたが、近年、ダイオキシン類の発生を伴うことが問題視され、より安全なゴミ処理方法が求められている。
焼却以外のゴミ処理方法としては、従来、過熱蒸気でゴミを炭化させるゴミ処理装置が提案されている(例えば、下記特許文献1,2参照)。これらのゴミ処理装置によれば、ゴミを炭化することでゴミの減量を図ることができ、また、燃焼を伴わない処理を行うことでダイオキシン類の発生を抑制することができるとされている。
【0003】
また、微生物を利用したゴミ処理装置も既に提案されている(例えば、下記特許文献3参照)。この種のゴミ処理装置は、例えば、家庭から排出される生ゴミ類と、有機物を分解可能な微生物が棲息する多孔質体粒子とを混合・撹拌することにより、微生物の作用によってゴミを分解するものである。特に、下記特許文献3に記載のゴミ処理装置の場合は、特定の微生物を利用することで、プラスチック、発泡スチロール、ダンボールなどの高分子材料も分解することができるとされている。
【特許文献1】特開2001−300499号公報
【特許文献2】特開2002−115823号公報
【特許文献3】特開2001−299331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載のゴミ処理方法は、ゴミを炭化物化することでゴミの減量を図ることはできるものの、最終的に相当な量の炭化物が残るため、そのような炭化物を有効に利用できる環境か、低コストで炭化物を廃棄処分できるような環境がないと、導入が難しいという問題があった。
【0005】
また、上記特許文献3に記載のゴミ処理方法は、時間をかければゴミを分解して大部分を消失させることができるが、プラスチック、発泡スチロール、ダンボールなどの高分子材料を完全に消失させるにはかなりの時間を要するため、ゴミの回収量と回収サイクルとを考慮した限られた時間内にゴミを完全に分解してしまうことは、必ずしも容易なことではなかった。その上、生ゴミ類には、相当量の水分が含まれているため、生ゴミ類をそのまま撹拌・粉砕するとヘドロ状の粉砕物が生じ、その中に微生物が閉じ込められ、酸素欠乏状態となり、微生物が好気的環境下で活動できなくなり、酸欠死して行くことになり、このこともゴミの分解効率が低下する大きな要因となっていた。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、従来以上に短期間で、ゴミを完全に気化消失させることができるゴミ処理方法と、そのゴミ処理方法を実施するのに好適なゴミ処理システム、およびそのゴミ処理システムにおいて利用される加熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明において採用した特徴的構成について説明する。
本発明のゴミ処理方法は、
ゴミを過熱蒸気によって加熱する加熱処理工程と、
前記加熱処理工程において加熱処理が施されたゴミと、有機物を分解可能な微生物が棲息する多孔質セラミック粒子とを混合し、好気性雰囲気下で撹拌することにより、前記ゴミを分解する分解処理工程と
を備えたことを特徴とする。
【0008】
このゴミ処理方法において、加熱処理工程は、ゴミを過熱蒸気によって加熱する工程である。過熱蒸気は、水蒸気をさらに加熱して得られる高温の気体であり、実質的に酸素を含有していないので、ゴミを燃焼させることなく加熱することができる。そのため、このような加熱処理工程を採用することにより、ダイオキシン類が発生するのを防止することができ、また、加熱に伴う発火を防止することもできる。
【0009】
また、過熱蒸気によるゴミ処理は、既に例示した特許文献1,2にも開示されていたが、本発明の場合、上記特許文献1,2に記載の技術とは異なり、ゴミが炭化物とならない程度に加熱を行う。ゴミが炭化物とならないようにするには、炭化物となる場合よりも加熱時間を短くするか、炭化物となる場合よりも加熱温度を低温にすればよいが、ゴミの内部まで均一に加熱処理を施すためには、加熱温度を制御する方が望ましい。
【0010】
具体的には、加熱処理工程は、温度180〜300℃の過熱蒸気によってゴミを加熱する工程であると好ましく、この温度範囲内で、ゴミの処理量やゴミに含まれる物質を考慮しつつ適宜調節を行うとよい。この温度が300℃を超えると、ゴミが炭化物になりやすい傾向が現れるので、過度の炭化を防ぐためにはより厳密に加熱時間を制御する必要が生じ、また、ゴミの内部が十分に加熱される前にゴミの表面が炭化してしまう可能性も高くなるので、ゴミを十分に細かく粉砕する等の対処も必要となる。また、温度が180℃を下回る場合は、相応に加熱時間を長くしないと加熱処理による効果を十分に高くすることができないので、単位時間当たりの処理能力の低下を招く。
【0011】
また、ゴミ全体を内部まで均一に加熱処理するためには、加熱処理工程は、ゴミを撹拌しながら、過熱蒸気によって加熱する工程であると好ましい。
このような加熱処理工程により、ゴミの中に存在するプラスチック、発泡スチロール、ダンボールなどの高分子材料は、熱によっていくらか分解されて低分子量化する。また、ゴミの中に含まれる水分は蒸発し、含水率も低下する。さらに、ゴミに含まれる一部の物質が分解ないし蒸発するのに伴い、加熱処理されたゴミは、複合熱の作用によって無数の微細な細孔が生じ、高度にポーラス化する。このようにゴミが高度にポーラス化する現象は、過熱蒸気による加熱方式を採用したことによって実現された重要な特長であり、例えば、従来の乾燥型加熱方式のゴミ処理装置では、ゴミを十分にポーラス化することは難しい。より詳しくは、過熱蒸気の熱は、(1)放射熱(ガス熱放射)、(2)対流熱(対流伝熱)、(3)壁面熱放射の3種類が複合した複合熱であり、この複合熱が従来の乾燥型加熱に無い数々の特長をもたらすが、その優れた特長の一つがゴミのポーラス化なのである。ゴミが高度にポーラス化すると、ゴミの内部には無数の空洞(細孔)が形成されてゴミが多孔質体となる。この無数の空洞は、後段の分解処理工程において、微生物にとっての良好な棲息環境(活動の場)となる。
【0012】
以上のような加熱処理工程において加熱処理が施されたゴミは、次に分解処理工程において、有機物を分解可能な微生物が棲息する多孔質セラミック粒子と混合され、好気性雰囲気下で撹拌される。この種の微生物を利用したゴミ処理装置において、微生物の生息環境を提供するための多孔質体としては、従来、多孔質セラミックの他にも、木質系多孔質体などが利用されている。しかし、ゴミの中に存在するプラスチック、発泡スチロール、ダンボールなどの高分子材料をより短時間で分解するには、これらの高分子材料を物理的に粉砕してより細かな粉砕物としておくことが好ましく、そのためには、木質系多孔質体よりも硬質な多孔質セラミック粒子が好適である。
【0013】
加熱処理が施されたゴミの中に存在する高分子材料は、上述の通り、熱によっていくらか分解されて低分子量化しているため、加熱処理が施されていない高分子材料に比べ、微生物にとってより分解しやすい低分子量の有機物になっている。しかも、炭化物化した高分子材料とも異なり、微生物が分解して吸収利用するような有機物が完全には失われていないので、微生物による分解をきわめて受けやすい状態になっている。さらに、加熱処理されたゴミは、上述の通り、高度にポーラス化しており、微生物が活動しやすい無数の微細な空洞が生じているので、ゴミの表面はもちろんのこと、ゴミの内部にまで十分な微生物の棲息環境が形成され、ゴミの内部にまで入り込んだ微生物が効率よくゴミを分解する。加えて、ゴミの中に含まれる水分は加熱処理工程で蒸発し、含水率も低下しているので、ゴミを粉砕・撹拌してもがヘドロ状になりにくく、微生物への酸素供給量が多く、微生物が活動しやすい好気的雰囲気を確保することが容易になる。
【0014】
そのため、上記特許文献3に記載の技術に比べ、同程度の分解能力を持つ微生物を利用した場合であれば、分解処理工程における高分子材料の分解効率は格段に高くなる。また、高分子材料をより容易に分解できるので、必ずしも上記特許文献3に記載の如き特定の微生物を用いなくてもよくなり、より分解能力が低い微生物を用いるだけでも、十分に高分子材料の分解ができるようになる。
【0015】
以上の結果、本発明のゴミ処理方法によれば、きわめて短時間で効率よくゴミを気化分解、消失させることができるようになる。
より具体的な例を交えて言えば、上記特許文献3に記載の技術よりもゴミの分解効率を高くすることができ、特に、ゴミの中に存在するプラスチック、発泡スチロール、ダンボールなどの高分子材料を分解する能力を高くすることができる。したがって、家庭から排出される生ゴミ類のように、包装容器などが混在しやすいゴミを処理するには、きわめて効果的なゴミ処理方法となる。また、ゴミを過熱蒸気で処理する技術としては、上記特許文献1,2に記載の技術も公知ではあったが、このような公知技術によって処理された炭化物を上記特許文献3に記載の技術で分解しようとしても、そのような炭化物は微生物による分解を受けにくいのに対し、本発明のゴミ処理方法であれば、加熱処理後のゴミが微生物による分解をきわめて受けやすいので、ゴミの分解効率をきわめて高くすることができるのである。
【0016】
なお、以上説明したようなゴミ処理方法を実施するには、ゴミを過熱蒸気によって加熱する加熱処理装置と、前記加熱処理装置において加熱処理が施されたゴミと、有機物を分解可能な微生物が棲息する多孔質セラミック粒子とを混合し、好気性雰囲気下で撹拌することにより、前記ゴミを分解する分解処理装置とを備えたゴミ処理システムを利用するとよい。
【0017】
この場合、加熱処理装置は、温度180〜300℃の過熱蒸気によってゴミを加熱する装置であると好ましい。
このようなゴミ処理システムを利用すれば、上述のゴミ処理方法を実施できるので、既に述べた通りの作用、効果により、きわめて短時間で効率よくゴミを気化分解、消失させることができるようになる。
【0018】
また、上記ゴミ処理方法を実施するには、上述の加熱処理装置と分解処理装置とが連続的に稼働する一体のシステムとして構成されていなくてもよく、例えば、上述の加熱処理装置によってゴミに対して前処理を施し、その前処理が施されたものを人手によって上述の分解処理装置へと運び入れ、分解処理装置によってゴミに対して後処理を施すことで、ゴミを気化分解、消失させることができる。
【0019】
この場合、分解処理装置としては、上記特許文献3に記載されているような公知のゴミ処理装置を流用することができるので、温度180〜300℃の過熱蒸気によってゴミを加熱する加熱処理装置さえあれば、本発明のゴミ処理方法を実施することができる。
【0020】
なお、このような加熱処理装置において、過熱蒸気を発生させるための具体的な機構については特に限定されないが、一例を挙げれば、例えば、入口および出口を有する容器と、前記容器内に配置された金属発泡体と、前記容器の外周に巻回された誘電コイルとを備え、前記誘電コイルに高周波電流を流して前記金属発泡体を誘導加熱し、その状態で蒸気供給源から前記容器の入口に蒸気を供給することにより、前記金属発泡体の内部を流れる蒸気をさらに加熱して過熱蒸気とし、前記容器の出口から放出される過熱蒸気によりゴミを加熱する、といった機構を考えることができる。
【0021】
このような過熱蒸気発生機構を備えた加熱処理装置であれば、比較的コンパクトな機構ながら、本発明で必要となる過熱蒸気を発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
以下に説明するゴミ処理システムは、図1に示すように、貯留槽11と、水切搬送装置13と、加熱処理装置15と、分解処理装置17とを備えている。また、貯留槽11と水切搬送装置13との間には第1のバケットコンベア21が設置され、水切搬送装置13と加熱処理装置15との間には第2のバケットコンベア22が設置され、加熱処理装置15と分解処理装置17との間には第3のバケットコンベア23が設置されている。
【0023】
貯留槽11は、処理対象となるゴミが入口側から投入される大型の容器である。処理対処となるゴミとしては、例えば、野菜類の皮や屑、魚類や肉類の骨や殻などを含む生ゴミ類、食品トレー類、ラップ類、梱包容器類において採用されている各種高分子材料(例えば、プラスチック、発泡スチロール、ダンボールなど)、その他、紙おむつ等の生活ゴミや廃油類などを挙げることができる。処理対象とならないゴミとしては、例えば、金属類、陶器類、ゴム類、ガラス類などを挙げることができ、これらについては、あらかじめ分別して貯留槽11には投入しないようにすることが望ましい。ただし、金属類、陶器類、ゴム類、ガラス類等がいくらか混在していたとしても、最終的に残渣として残るだけなので、これら処理対象とならないゴミが僅かに混在していたとしても、本ゴミ処理システムの稼働が妨げられる原因にはならない。
【0024】
処理対象となるゴミが十分に細かいものばかりである場合、そのようなゴミについてはそのまま貯留槽11に投入しても構わないが、ある程度大きなゴミや、プラスチック、発泡スチロール、ダンボールなどの分解に時間がかかるゴミを投入する場合は、ある程度まで細かく破砕しておく方が処理効率は良くなる。したがって、大型のゴミが多い場合や、処理効率をより向上させて大量のゴミを処理したい場合には、貯留槽11の入口側に破砕機(図示略)を設けて、破砕機で細かく破砕されたゴミが貯留槽11に溜められるように構成してもよい。
【0025】
以上のような貯留槽11の内部に溜められたゴミは、バケットコンベア21によって貯留槽11の出口側から水切搬送装置13の入口側へと搬送される。
水切搬送装置13は、スクリュウコンベア31を内蔵しており、水切搬送装置13の入口側から投入されるゴミを、スクリュウコンベア31によって出口側へと搬送するように構成されている。スクリュウコンベア31によって搬送されるゴミからは、ゴミに含まれる過剰な水分がふるい落とされる。ただし、後から詳述する加熱処理装置15においてもゴミに含まれる水分は除去されるので、この水切搬送装置13では、機械的な力でふるい落とすことができる水分だけが除去される。
【0026】
なお、水切搬送装置13において分離された水は、そのまま河川等へ放流すると汚染原因となるので、周知の浄水設備等で浄化してから河川等へ放流することが望ましい。
以上のような水切搬送装置13において、スクリュウコンベア31によって出口側へと搬送されたゴミは、バケットコンベア22によって水切搬送装置13の出口側から加熱処理装置15の入口側へと搬送される。
【0027】
加熱処理装置15は、スクリュウコンベア33を内蔵しており、加熱処理装置15の入口側から投入されるゴミを、スクリュウコンベア33によって出口側へと搬送する用に構成されている。また、加熱処理装置15は、飽和蒸気を供給する蒸気供給装置35と、蒸気供給装置35から供給される飽和蒸気を加熱して過熱蒸気にする過熱蒸気発生装置37とを備え、スクリュウコンベア33によって搬送されるゴミは、搬送中に過熱蒸気発生装置37から供給される過熱蒸気にさらされるようになっている。
【0028】
過熱蒸気発生装置37は、図2に示すように、入口および出口を有する筒状の容器41と、この容器41内に配置された金属発泡体43と、容器41の外周に巻回された誘電コイル45とを備えている。誘電コイル45はインバーター47に接続され、インバーター47から誘電コイル45に高周波電流を流すことにより、金属発泡体43が誘導加熱されるようになっている。そして、金属発泡体43が加熱された状態で、蒸気供給源である蒸気供給装置35から容器41の入口側に飽和蒸気を供給すると、誘導加熱によって高温化した金属発泡体43の内部を流れる蒸気がさらに加熱されて過熱蒸気となり、この過熱蒸気が容器41の出口側から放出されることになる。
【0029】
蒸気供給装置35から過熱蒸気発生装置37へ供給する飽和蒸気は、温度100℃未満の蒸気であればよく、過熱蒸気発生装置37は、蒸気供給装置35から供給される飽和蒸気を、最大650℃程度まで加熱することができる。過熱蒸気の温度は、インバーター47の出力をPID制御することによって1℃単位の微調整が可能になっており、本ゴミ処理システムでは、温度180〜300℃の過熱蒸気が利用される。
【0030】
こうして得られる過熱蒸気は、実質的に酸素を含有していないので、ゴミを燃焼させることなく加熱することができる。そのため、このような加熱により、ダイオキシン類が発生することはなく、また、加熱に伴う発火を防止することもできる。また特に、温度180〜300℃の過熱蒸気が利用されるので、ゴミの中に存在するプラスチック、発泡スチロール、ダンボールなどの高分子材料は、熱によっていくらか分解されて低分子量化するものの、ゴミが炭化物になってしまうことはない。また、ゴミの中に含まれる水分は蒸発し、含水率が低下する。さらに、ゴミに含まれる一部の物質が分解ないし蒸発するのに伴い、加熱処理されたゴミには無数の微細な細孔が生じ、ゴミが多孔質化する。
【0031】
以上のような加熱処理装置15において、スクリュウコンベア33によって出口側へと搬送されたゴミは、バケットコンベア23によって加熱処理装置15の出口側から分解処理装置17の入口側へと搬送される。
【0032】
分解処理装置17は、撹拌ブレード51を内蔵し、撹拌ブレード51を回転駆動することにより、分解処理装置17の入口側から投入されるゴミと、有機物を分解可能な微生物が棲息する多孔質セラミック粒子53とを混合し、好気性雰囲気下で撹拌する装置である。
【0033】
この分解処理装置17において、ゴミは、多孔質セラミック粒子53と接触を繰り返すことで、物理的に細かく粉砕される。また、先に説明した通り、加熱処理が施されたゴミの中に存在する高分子材料は、上述の通り、熱によっていくらか分解されて低分子量化しているため、加熱処理が施されていない高分子材料に比べ、微生物にとってより分解しやすい低分子量の有機物になっている。しかも、炭化物化した高分子材料とも異なり、微生物が分解して吸収利用するような有機物が完全には失われていないので、微生物が活発に活動できる場を提供することになり、微生物による分解をきわめて受けやすい状態になっている。さらに、加熱処理されたゴミには無数の微細な細孔が生じ、ゴミが多孔質化しているため、ゴミの内部に十分な微生物の棲息環境が形成され、ゴミの内部にまで入り込んだ微生物が効率よくゴミを分解する。加えて、ゴミの中に含まれる水分は加熱処理工程で蒸発し、含水率も低下しているので、ゴミを粉砕・撹拌してもがヘドロ状になりにくく、微生物が活動しやすい好気的雰囲気を確保することが容易になる。このように、分解処理装置17内には、微生物がきわめて効率よく有機物を分解する環境が整っているため、微生物が分解できない微量な残渣以外は、速やかに水またはガスに分解され、ゴミが消滅することになる。
【0034】
以上説明した通り、このゴミ処理システムによれば、過熱蒸気によって高分子材料を炭化させない範囲内で低分子量化してから、低分子量化した有機物を微生物に分解させているので、過熱蒸気によってゴミを炭化物化させるシステムとは異なり、処分の必要な炭化物が残ることはない。
【0035】
また、低分子量化した有機物を微生物がきわめて活発に分解するので、高分子材料をそのまま微生物に分解させたり高分子材料を炭化物化してから微生物に分解させたりシステムに比べ、ゴミの気化分解・消滅までにかかる時間が短くなり、ゴミ処理システムの処理効率が向上する。その結果、同等量のゴミであれば、従来のゴミ処理システムよりも短期間で処理を終えることができるようになり、また、同程度の時間をかければ、従来のゴミ処理システムよりも大量のゴミを処理することができるようになる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
例えば、上記実施形態のゴミ処理システムは、加熱処理装置15と分解処理装置17との間に、バケットコンベア23を設置することで、加熱処理工程に引き続いて分解処理工程に移行するように構成してあったが、加熱処理装置15と分解処理装置17との間に第2の貯留槽を設けて、加熱処理されたゴミを第2の貯留槽に一旦溜めて、第2の貯留槽から適時ゴミを取り出して分解処理装置17に投入するようにしてもよい。このようにすると、加熱処理装置15と分解処理装置17をそれぞれ独立に稼働させることができるので、各装置の運用や保守が容易になる。
【0037】
また、上記実施形態のゴミ処理システムは、加熱処理装置15と分解処理装置17とが同じ場所に設置されているものであったが、本発明のゴミ処理方法を実施する上では、加熱処理装置15と分解処理装置17とを同じ場所に設置することは必須ではない。より具体的には、例えば、加熱処理装置15はゴミの発生場所、分解処理装置17はゴミの処分場に設置し、ゴミの発生場所において加熱処理装置15を稼働させて加熱処理のみを施し、ゴミ回収車で加熱処理が施されたゴミを回収して、ゴミの処分場において分解処理装置17を稼働させてゴミを消滅させる、といった運用方法をとってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態として説明したゴミ処理システムの構成図。
【図2】過熱蒸気発生装置の構成図。
【符号の説明】
【0039】
11・・・貯留槽、13・・・水切搬送装置、15・・・加熱処理装置、17・・・分解処理装置、21,22,23・・・バケットコンベア、31,33・・・スクリュウコンベア、35・・・蒸気供給装置、37・・・過熱蒸気発生装置、41・・・容器、43・・・金属発泡体、45・・・誘電コイル、47・・・インバーター、51・・・撹拌ブレード、53・・・多孔質セラミック粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴミを過熱蒸気によって加熱する加熱処理工程と、
前記加熱処理工程において加熱処理が施されたゴミと、有機物を分解可能な微生物が棲息する多孔質セラミック粒子とを混合し、好気性雰囲気下で撹拌することにより、前記ゴミを分解する分解処理工程と
を備えたことを特徴とするゴミ処理方法。
【請求項2】
前記加熱処理工程は、温度180〜300℃の過熱蒸気によってゴミを加熱する工程である
ことを特徴とする請求項1に記載のゴミ処理方法。
【請求項3】
前記加熱処理工程は、前記ゴミを撹拌しながら、過熱蒸気によって加熱する工程である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゴミ処理方法。
【請求項4】
ゴミを過熱蒸気によって加熱する加熱処理装置と、
前記加熱処理装置において加熱処理が施されたゴミと、有機物を分解可能な微生物が棲息する多孔質セラミック粒子とを混合し、好気性雰囲気下で撹拌することにより、前記ゴミを分解する分解処理装置と
を備えたことを特徴とするゴミ処理システム。
【請求項5】
前記加熱処理装置は、温度180〜300℃の過熱蒸気によってゴミを加熱する装置である
ことを特徴とする請求項4に記載のゴミ処理システム。
【請求項6】
温度180〜300℃の過熱蒸気によってゴミを加熱する
ことを特徴とする加熱処理装置。
【請求項7】
入口および出口を有する容器と、
前記容器内に配置された金属発泡体と、
前記容器の外周に巻回された誘電コイルとを備え、
前記誘電コイルに高周波電流を流して前記金属発泡体を誘導加熱し、その状態で蒸気供給源から前記容器の入口に蒸気を供給することにより、前記金属発泡体の内部を流れる蒸気をさらに加熱して過熱蒸気とし、前記容器の出口から放出される過熱蒸気によりゴミを加熱する
ことを特徴とする請求項6に記載の加熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−21139(P2006−21139A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202006(P2004−202006)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(504264241)エヌ・シー・テクノロジー株式会社 (1)
【出願人】(503251868)株式会社エコテックビジネス (2)
【出願人】(501228989)株式会社サンフェイス (3)
【Fターム(参考)】