説明

ゴムを連続的に製造する方法

【課題】本発明は、ゴムラテックスからゴムを製造する方法において、操業性の向上、ならびに、製造プロセスおよび製造機器の削減を可能とし、生産性の向上、ならびに、設備費および製造コストの低減を図ることを目的とし、良好なゴムを提供する。
【解決手段】凝固ゾーンが少なくとも形成されたバレルの内部にスクリューが配置されている押出機を用いて、ゴムラテックスからゴムを連続的に製造する方法であって、前記凝固ゾーン内の同一のバレルブロックに設けられたフィードぐちから、ゴムラテックス、凝固剤、およびスチームを連続的に供給することにより、前記凝固ゾーン内で、前記ゴムラテックスを前記スチームにより加温することを含む、ゴムを連続的に製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムラテックスからゴムを連続的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化重合で得られた重合体ラテックスから重合体を製造する方法としては、一般的に、重合体ラテックスに、酸あるいは無機塩の水溶液などの凝固剤を加え、撹拌しながらラテックスを凝固させ、次いで、この凝固操作で得られた重合体スラリーを、遠心脱水機やスクイザーなどの脱水装置に導入して脱水した後、バンド乾燥機、気流乾燥機、押出乾燥機などの乾燥装置に導入して乾燥する方法がある。なお、乾燥装置の下流側には、通常ペレタイザーあるいはベーラーマシーンが接続してあり、乾燥後の重合体は、最終的にはペレット状、ベール状またはシート状に加工されて製品化されることが多い。
【0003】
具体的には、特許文献1では、凝固タンク内の重合体ラテックスに凝固剤を加え、さらに、その混合液中に、蒸気供給用配管を浸漬させ、蒸気を直接吹き込みながら混合液を攪拌することにより、ラテックスを凝固させ、次いで、この凝固操作で得られた重合体スラリーを、遠心脱水機で脱水処理した後、バッチ式乾燥機で乾燥させる方法が開示されている。しかしながら、前記の方法で重合体のラテックスから重合体を製造する場合、大型のタンクを有する凝固装置が必要であり、さらに、前記の脱水・乾燥装置を利用したのでは、工程が多くなる他、凝固タンクおよび付帯設備にかかるコストが高くなり、しかも設置スペースが増大するなど問題が多い。
【0004】
このような問題を解決するために、重合体ラテックスと凝固剤とを直接、スクリュー押出機の内部に供給し、押出機の内部で凝固・脱水・乾燥を行う方法が従来より試みられている。しかしながら、この方法では、重合体ラテックスの種類によってはあらかじめ、重合体ラテックスを加温しておく必要があり、ラテックスを熱交換器を用いて加温する方法では、押出機の内部に供給するための配管中に凝集物が発生し、充分な量のラテックスが供給できないといった問題があった。また、押出機のバレルを加温することによりバレル内部のラテックスを温める方法では、ラテックスが充分に加温されず、凝固が不充分となるために、ラテックスが脱水スリットから水と共に流出してしまい、重合体の生産性が著しく低下してしまうという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献2では、押出機に熱可塑性プラスチックのラテックスを供給した直後に、過熱水蒸気をバルク内に導入する方法が開示されている。しかし、この方法は、エネルギーコストがかかる他、ゴムラテックスに適用すると、押出機の内部で析出した凝固剤が、最終生産物であるゴムに混ざることでゴムの見た目が悪くなったり、製造されるゴムの品質が著しく劣化したりするという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−292527号公報
【特許文献2】特表2004−507393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ゴムラテックスからゴムを製造する方法において、操業性の向上、ならびに、製造プロセスおよび製造機器の削減を可能とし、生産性の向上、ならびに、設備費および製造コストの低減を図ることを目的とし、良好なゴムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、特定の押出機を用いて、ゴムラテックスからゴムを連続的に製造する際、押出機の凝固ゾーン内の同一のバレルブロックに設けられたフィードぐちから、ラテックス、凝固剤、およびスチームを連続的に供給して、前記凝固ゾーン内で、前記ラテックスを前記スチームにより加温することを含むことにより、上記目的を達成することを見出した。
【0009】
かくして、本発明によれば、凝固ゾーンが少なくとも形成されたバレルの内部にスクリューが配置されている押出機を用いて、ゴムラテックスからゴムを連続的に製造する方法であって、前記凝固ゾーン内の同一のバレルブロックに設けられたフィードぐちから、ゴムラテックス、凝固剤、およびスチームを連続的に供給することにより、前記凝固ゾーン内で、前記ゴムラテックスを前記スチームにより加温することを含む、ゴムを連続的に製造する方法が提供される。
【0010】
本発明においては、前記スチームが、0.1〜2.0MPaの圧力下で連続的に供給されることが好ましい。
【0011】
本発明においては、前記凝固ゾーン内部のスラリー温度が、40〜100℃であることが好ましい。
【0012】
本発明においては、前記バレルの内部に形成された凝固ゾーンの下流側には、排水ゾーン、洗浄・脱水ゾーンおよび乾燥ゾーンが順次設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ゴムラテックスからゴムを連続的に製造する方法において、押出機の凝固ゾーン内のバレルブロックに設けられたフィードぐち、およびそこまでのゴムラテックス供給配管が閉塞することがないため、操業中、安定した量のゴムラテックスをバレル内に常時供給することができる。また、ゴムラテックスが高効率に加温されるため、凝固反応が充分に進行し、ゴムラテックスが脱水スリットから水と共に流出することがなく、ゴムの生産性が向上する。さらに、1つの押出機内で、凝固・水洗・脱水・乾燥してゴムを製造することができるため、設備費および製造コストの低減が可能である。そして、緩和な温度条件で、ゴムラテックスからゴムを製造するため、良好なゴムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る、ゴムラテックスからゴムを連続的に製造するために用いる押出機を示す概略図である。
【図2】図2は、駆動ユニット2を左側に見た場合の、バレル31を真上から見た概略図である。
【図3】図3は、押出機の内部に配置されるスクリューを示す概略図である。
【図4】図4は、図4のスクリューの、凝固ゾーンに対応する領域を示す一部破断概略図である。
【図5】図5は、図1のIV−IV線と図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図6】図6は、図1のV−V線と図3のV−V線に沿う断面図である。
【図7】図7は、本発明の第2実施形態に係る、ゴムラテックスの配管に設置された、インナーノズル型スチーム投入ぐち512を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、ゴムを連続的に製造する方法は、凝固ゾーンが少なくとも形成されたバレルの内部にスクリューが配置されている押出機を用いて、ゴムラテックスからゴムを連続的に製造する方法であり、前記凝固ゾーン内の同一のバレルブロックに設けられたフィードぐちから、ゴムラテックス、凝固剤、およびスチームを連続的に供給することにより、前記凝固ゾーン内で、前記ゴムラテックスを前記スチームにより加温することを特徴とする。
【0016】
本発明に用いられるゴムラテックスは、特に限定されず、目的とする用途に応じて適宜選択すればよい。具体的には、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(ニトリルゴム)、スチレン−ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合ゴムなどの共役ジエン系ゴムが含まれるゴムラテックス;アクリルゴムラテックス;などが挙げられる。これらのゴムラテックスは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、アミノ基およびエポキシ基などを有していてもよく、例えば、カルボキシル基含有ニトリルゴムラテックスが挙げられる。また、これらのゴムラテックスは、さらに水素化されていてもよく、例えば、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムラテックスが挙げられる。これらのゴムラテックスは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、特に、ゴムラテックスを高効率に凝固させるために、凝固時にゴムラテックスを加温させる、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムラテックス、アクリルゴムラテックスを用いるのが好ましく、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムラテックスを用いるのがより好ましい。
【0017】
上記ゴムラテックスを得るための重合方法としては、乳化重合法が好ましいが、溶液重合法、懸濁重合法、気相重合法などの重合方法を用いて重合される重合体の場合は、それぞれ、有機溶媒溶液、スラリー又は固体状で得られる重合体を、転相法や粉砕〜再溶解などにより、ラテックスにして用いることができる。
【0018】
乳化重合により上記ゴムラテックスを得る方法は、公知の乳化重合法によればよく、乳化重合に用いる乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤、重合停止剤などは、通常使用される公知のものを用いることができる。
【0019】
乳化重合の温度は、使用する重合開始剤の種類によって適宜選択することができるが、通常0〜100℃、好ましくは0〜60℃である。重合様式は、連続重合、回分重合などのいずれの様式でも構わない。
【0020】
重合反応停止の際の重合転化率は、特に共役ジエン系ゴムの場合には、重合体のゲル化(分子内架橋化)を防止する観点から、85重量%以下とすることが好ましく、50〜80重量%の範囲とすることがより好ましい。重合反応停止は、通常、上記所定の重合転化率に達した時点で、重合系に重合停止剤を添加することによって行われる。また、重合反応停止後、得られたゴムラテックスから必要に応じて未反応モノマーを除去することが好ましい。
【0021】
重合反応停止後からゴムラテックスを凝固するまでの間に、ゴムラテックスに老化防止剤を添加することが好ましい。ゴムクラムの脱水および乾燥を、後述する内部にスクリューを設置したバレルを有する押出機を用いて行う場合、剪断による劣化を防止するために有効である。老化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、オクタデシル−3−(3’,3’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、スチレン化フェノール、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノンなどのフェノール系老化防止剤;2,4−ビス(オクチルチオメチル)−6−メチルフェノールなどのイオウ系老化防止剤;N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンなどのアミン系老化防止剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;ヒドロキノン系老化防止剤;リン系老化防止剤;などが挙げられる。
【0022】
これらの老化防止剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの老化防止剤の添加量は、ゴムラテックス(固形分)100重量部に対し、通常0.05〜10重量部、好ましくは0.08〜6重量部、より好ましくは0.1〜4重量部である。
【0023】
本発明に用いられる凝固剤は、特に限定されず、例えば硫酸、塩酸などの無機酸類;酢酸などの有機酸類;塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化バリウムなどの無機塩類;およびこれらの混合物などが挙げられるが、ゴムラテックスに使用されている乳化剤の種類などにより適宜決定すればよい。
【0024】
ゴムラテックスを凝固させる際における、凝固系内における凝固剤水溶液中の凝固剤の濃度は、0.1〜20重量%の範囲が好ましく、0.2〜10重量%の範囲がより好ましい。凝固剤の濃度を、上記範囲とすることにより、ゴムラテックスの凝固を充分に進行させることができるため、未凝固分を低減することができ、ゴムの生産性が向上する。なお、ゴムラテックスは、ゴムラテックスの固形分(ゴムそのものや乳化剤など)と水とを含有してなるものであり、また、凝固液は、凝固剤と水とを含有してなるものであるため、通常は、ゴムラテックス中の水と、凝固液中の凝固剤と水と、の合計に対する凝固剤の濃度を上記範囲とすれば良い。
【0025】
なお、凝固剤は、水などに溶解して、凝固液として供給することもできる。この場合における凝固液中の凝固剤の濃度は、特に限定されないが、凝固液全体に対し、1〜35重量%程度とする。
【0026】
本発明に用いられるスチームは、特に限定されないが、製造されるゴムの物性への影響の観点から、水蒸気が好ましい。
【0027】
供給される水蒸気の圧力(ゲージ圧)は、水蒸気のフィードぐちにおいて、0.1〜2.0MPaであることが好ましく、0.1〜1.5MPaであることがより好ましく、0.3〜1.5MPaであることが特に好ましい。水蒸気の圧力が前記範囲内にあると、水蒸気と混合されたゴムラテックスが充分に加温され、後述する凝固ゾーン内での凝固反応が充分に進行するとともに、良好なゴムを得ることができる。また、未凝固分を低減することができることから、ゴムの生産性が向上する。
【0028】
上記水蒸気の温度は、上記水蒸気の圧力から計算で求めることができ(計算式は後述の実施例で記載)、水蒸気のフィードぐちにおいて、120〜215℃であることが好ましく、120〜205℃であることがより好ましく、140〜205℃であることが特に好ましい。水蒸気の温度が前記範囲内にあると、水蒸気と混合されたゴムラテックスが充分に加温され、後述する凝固ゾーン内での凝固反応が充分に進行するとともに、良好なゴムを得ることができる。また、未凝固分を低減することができることから、ゴムの生産性が向上する。さらに、凝固中において、凝固剤が析出するのを防止することができる。
【0029】
本発明に用いられる、凝固ゾーンが少なくとも形成されたバレルの内部にスクリューが配置されている押出機は、特に限定はされないが、例えば、図1〜図7に示されるものである。
【0030】
第1実施形態
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る、ゴムラテックスからゴムを連続的に製造するために用いる押出機1とは、駆動ユニット2、および分割された14個のバレルブロック31〜44で構成される単一のバレル3を有する。バレル3の内部には、凝固ゾーン100、排水ゾーン102、洗浄・脱水ゾーン104、および乾燥ゾーン106が、バレル3の上流側(駆動ユニット2側)から下流側(ゴム吐出口側)にかけて順次形成されている。
【0031】
本発明においては、前記バレルの内部に形成された凝固ゾーンの下流側に、排水ゾーン、洗浄・脱水ゾーン、および乾燥ゾーンが順次設けられていることから、設備費および製造コストの低減が可能である。
【0032】
凝固ゾーン100は、ゴムラテックス、凝固剤、および水蒸気を接触させて、ゴムラテックスを凝固させ、クラムスラリーを形成する領域である。排水ゾーン102は、ゴムラテックスの凝固後に生じる液体(セラム水)をクラムスラリーから分離し排出して、含水状態のクラムを形成する領域である。洗浄・脱水ゾーン104は、含水状態のクラムを洗浄し、洗浄後のクラムから洗浄水を脱水して排出する領域である。乾燥ゾーン106は、脱水後のクラムを乾燥させる領域である。
【0033】
洗浄・脱水ゾーン104の前に排水ゾーン102を設けることにより、凝固ゾーン100で得られた高濃度の凝固剤(残留凝固剤)を含むクラムスラリーから、前記凝固剤の大部分を効率的に除去できる。その結果、その後の洗浄・脱水ゾーン104で残留する低濃度の凝固剤を確実に除去でき、ひいては、乾燥ゾーン106を経て最終的に製造されるゴムに含まれる凝固剤残留量を確実に少なくすることができるため、凝固剤のフィード量などにより、所望の凝固剤残留量に調整することもできる。
【0034】
本実施形態では、バレルブロック31〜34の内部が凝固ゾーン100に対応し、バレルブロック35の内部が排水ゾーン102に対応し、バレルブロック36〜38の内部が洗浄・脱水ゾーン104に対応し、バレルブロック39〜44の内部が乾燥ゾーン106に対応する。なお、各バレルブロックの設置数は、取り扱うゴムラテックスの組成などに応じて最適な数をもって実施することができ、本実施形態の態様に限定されるものではない。また、各バレルブロックの長さも、取り扱うゴムラテックスの組成などに応じて適宜設計すればよい。
【0035】
なお、本実施形態では、前記バレルブロック44の下流側には、バレル3内で凝固・脱水・乾燥処理されたゴムを、所定形状に押し出し製品化するためのダイ4が接続され、例えばシート状に押し出すことができる。
【0036】
凝固ゾーン100の一部を構成するバレルブロック31には、ゴムラテックスを供給するためのフィードぐち310、凝固剤を供給するためのフィードぐち311、および水蒸気を供給するためのフィードぐち312が、それぞれ形成されている。排水ゾーン102を構成するバレルブロック35には、セラム水を排出する排出スリット350が形成されている。洗浄・脱水ゾーン104の一部を構成するバレルブロック36には、洗浄水を供給するための洗浄水フィード口360が形成されている。バレルブロック37には、洗浄排水を外部へ排出するための排水スリット370が形成されている。乾燥ゾーン106の一部を構成するバレルブロック40,42,43には、脱気のためのベントぐち400,420,430が、それぞれ形成されている。
【0037】
本実施形態として、バレルブロック31に形成されているフィードぐち310,311,312は、それぞれ、図2に示されるような配置をしている。つまり、駆動ユニット2を左側に見た場合に、バレルブロック31を真上から見ると、バレル3の手前側の上流側(駆動ユニット2側)から下流側(ゴム吐出口側)にかけて、フィードぐち312,311が順次形成されている。また、フィードぐち310は、バレル3の奥側にあたる、フィードぐち312の奥側に形成されている。なお、フィードぐち310,311,312の配置は、同一のバレルブロックにそれぞれが形成されていれば良く、本実施形態の態様に限定されるものではないが、凝固剤を供給するためのフィードぐちが、ゴムラテックスを供給するためのフィードぐち、および水蒸気を供給するためのフィードぐちよりも下流側に設けられていることが好ましい。本発明では、同一のバレルブロックに設けられたフィードぐちから、ゴムラテックス、凝固剤、および水蒸気を供給することにより、水蒸気と混合されたゴムラテックスが充分に加温され、後述する凝固ゾーン内での凝固反応が充分に進行するとともに、良好なゴムを得ることができる。また、未凝固分を低減することができることから、ゴムの生産性が向上する。
【0038】
本実施形態において、ゴムラテックスは、フィードぐち310につながる配管から、凝固剤はフィードぐち311につながる配管から、および水蒸気は、フィードぐち312につながる配管から、それぞれ異なるフィードぐちから供給され、ゴムラテックス、凝固剤、および水蒸気は連続的に凝固ゾーン内に供給されることが好ましい。連続的にゴムラテックス、凝固剤、および水蒸気が供給されるため、安定した供給量のゴムの製造を行うことができる。ゴムラテックス、凝固剤、および水蒸気それぞれの供給量は、取り扱うゴムラテックスの組成や生産量などに応じて最適な量をもって実施することができ、適宜調整することができる。
【0039】
ゴムラテックス、凝固剤、及び水蒸気の凝固ゾーン内への供給レートは、押出機の大きさなどによって変わり、特に限定されないが、本実施形態では、例えば、ゴムラッテクスは50〜1200kg/hr、凝固剤は0.1〜180kg/hr、水蒸気は10〜110kg/hrが好ましい。
【0040】
バレル3の内部には、図3に示すようなスクリュー5が配置されている。スクリュー5の基端には、これを駆動するために、駆動ユニット2(図1参照)に格納されたモータなどの駆動手段が接続されており、これによりスクリュー5は回転駆動自在に保持される。スクリュー5の形状は、特に限定されないが、好ましくは、多種のスクリュー構成を持つスクリューブロックとニーディングディスクとを適宜組合せて構成することができる。
【0041】
本実施形態では、スクリュー5は、バレル3の内部に形成された、前記各ゾーン100,102,104、および106に対応する領域に、それぞれ異なる態様のスクリュー構成を有する。
【0042】
本実施形態では、図3に示すように、スクリュー5の長さをL(mm)とし、スクリュー5の外径をDa(mm)とした場合に、L/Daは、30〜100であることが好ましく、40〜80であることがより好ましい。なお、スクリュー5の外径Daは、スクリューを構成するスクリューブロック50の山部50A(図4参照)の、軸方向から見た場合における直径で定義される。また、スクリュー5のうち、凝固ゾーン100を構成する領域の軸方向の長さをL1(mm)とした場合、L1/Daは4〜40であることが好ましく、10〜30であることがより好ましく、10〜20であることが特に好ましい。
【0043】
本実施形態では、図4に示すように、スクリュー5のうち、凝固ゾーン100に対応する領域を、凝固用スクリューブロック50と、凝固用ニーディングディスク52とからなる構成とする。ここで、スクリュー5のうち、凝固ゾーン100に対応する領域である、長さL1(mm)は、凝固用スクリューブロック50および凝固用ニーディングディスク52の軸方向の長さの合計となる。
【0044】
また、本実施形態では、図5に示すように、このようなスクリュー5を2本用いて、軸芯を平行にして互いに噛み合った状態とした二軸押出機としている。なお、図5に示す断面図は、押出機1の凝固用スクリューブロック50部分の断面図であって、谷部50Bを横切る断面図である。すなわち、図5に示すように、2本のスクリュー5,5は、一方のスクリュー5の凝固用スクリューブロック50の山部50Aを、他方のスクリュー5の凝固用スクリューブロック50の谷部50Bに噛み合わせるとともに、一方のスクリュー5の凝固用スクリューブロック50の谷部50Bを、他方のスクリュー5の凝固用スクリューブロック50の山部50Aに噛み合わせる状態とした二軸噛合型である。二軸噛合型とすることにより、凝固ゾーン100におけるゴムラテックスと凝固剤との混合性を向上させることができる。また、2本のスクリュー5の回転方向は、同方向でも異方向でもよいが、セルフクリーニングの性能面からは同方向に回転する形式のものが好ましい。セルフクリーニング性が付与されることから、従来の凝固タンクにより重合体の凝固を行う凝固タンク方式と比較して、長期連続運転を実現することができる。
【0045】
なお、スクリューの数は、取り扱うゴムラテックスの組成などに応じて最適な数をもって実施することができ、本実施形態の態様に限定されるものではなく、それ以上の多軸式(3本以上)であってもよく、あるいは単軸式(1本)であってもよい。
【0046】
本実施形態では、図5に示すように、凝固用スクリューブロック50の外径をDa(mm)、凝固用スクリューブロック50の谷部50Bの短径をDi(mm)とした場合、L1/Daが4〜40の範囲であることが好ましく、10〜30であることがより好ましく、10〜20であることが特に好ましい。また、Da/Diが1.2〜2.5の範囲であることが好ましく、1.4〜2.0であることがより好ましく、1.5〜1.8の範囲であることが特に好ましい。
【0047】
本実施形態では、凝固ゾーン100におけるL1、凝固用スクリューブロック50のDaおよびDiの関係を、前述の範囲とすることにより、かつ、後述する凝固用ニーディングディスク52の占有割合を後述する特定の範囲とすることにより、押出機1による、ゴムラテックスからゴムをより好適に製造すること可能となる。L1/DaまたはDa/Diが小さ過ぎると、回収率や生産レート(単位時間あたりに得られる乾燥されたゴムの量)が低下したり、詰まりが発生してゴムを製造できない場合がある。また、L1/DaまたはDa/Diが大き過ぎると、設備が大がかりなものになったり、過剰な混練により、乾燥されたゴムの物性が悪化したりする。
【0048】
また、谷部50Bの短径Diは、図5に示すように、谷部50Bのうち、谷部50Bの深さが、最も深くなっている部分である深さDi’(mm)である部分における、軸方向から見た場合における径である。すなわち、谷部50Bの短径Diは、外径Da、および谷部50Bのうち深さが最も深い部分である深さDi’から、Di=Da−Di’×2により求めることができる。
【0049】
また、図4に示すように、スクリュー5のうち、凝固ゾーン100に対応する領域は、凝固用スクリューブロック50の他、凝固用ニーディングディスク52を有する構成となっている。凝固ゾーン100に対応する領域に、凝固用ニーディングディスク52を導入することにより、ゴムラテックスの凝固を促進させることができる。
【0050】
凝固用ニーディングディスク52は、その断面形状が擬似楕円形、小判形または切頂三角形などの形状と、一定の厚みとを有し、その断面形状の対称軸を所定角度ずつずらしながら、複数枚積み重ね、かつ、スクリュー軸がその断面形状の回転中心軸と対応するように固定されて使用するものである。本実施形態では、図4および図6に示すように、凝固用ニーディングディスク52を擬似楕円形の断面形状を有するものとし、これらを45度ずつずらし、5枚重ねた態様としている。なお、図6に示す断面図は、押出機1の凝固用ニーディングディスク52部分における断面図である。
【0051】
ここで、擬似楕円形とは楕円の長径の両端部を、小判形とは平行条の両端を、また、切頂三角形とは正三角形の各頂点を含む部分を、それぞれの図形の回転中心を中心とする円弧でカットした形状を指す。いずれの形状の場合も、バレル3の内壁面3aに各該ディスクの端部が所定0.1〜5mm程度のクリアランス(間隙)を保持するように設けられる。小判形または切頂三角形の場合は、各辺を凹形として鼓形または三角糸巻形としても良い。
【0052】
スクリュー5において、凝固ゾーン100に対応する領域の軸方向の長さL1に対する凝固用ニーディングディスク52の占める割合(占有割合)は、5〜30%の範囲であることが好ましく、6〜30%の範囲であることがより好ましく、8〜20%の範囲であることが特に好ましい。本実施形態においては、凝固ゾーン100におけるL1、凝固用スクリューブロック50のDaおよびDiの関係を、前述した所定の範囲とすることに加え、凝固用ニーディングディスク52の割合をこのような範囲とすることにより、押出機1による、ゴムラテックスからゴムをより好適に製造することが可能となる。凝固用ニーディングディスク52の占める割合が多すぎると、送り量が不足し、バレル3内部で詰まりが発生し、少なすぎると凝固が不充分となり、いずれにしても、ゴムの製造ができなくなる場合がある。
【0053】
また、凝固用ニーディングディスク52は、ゴムラテックスの凝固を促進させるという観点より、1〜8枚連続させて配置することが好ましい。さらに、図4に示すように、凝固用ニーディングディスク52は、1〜8枚連続させて配置するとともに、これら連続して配置した凝固用ニーディングディスク52のグループ(図4においては、6つのグループ)を、複数箇所に分けて配置するような構成としてもよいし、あるいは、一カ所に固まって配置された構成としてもよい。なお、凝固用ニーディングディスクは、取り扱うゴムラテックスの組成などに応じて、最適な連続枚数およびグループ数をもって実施することができ、本実施形態の態様に限定されるものではない。
【0054】
また、本実施形態では、スクリュー5の凝固ゾーン100に対応する領域における、谷50Bおよび52Bの合計数をnとした場合に、L1/(Da×n)で求められるピッチ指数Hが、0.5以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましい。スクリュー5の凝固ゾーン100に対応する領域における、谷の数は、スクリュー5を上から見てカウントしていけばよい。また、ニーディングディスク52の谷52Bの数をカウントする際には、位相をずらした板同士の間もカウントすることとする。
【0055】
排水ゾーン102、洗浄・脱水ゾーン104、および乾燥ゾーン106におけるスクリュー構成としては、特に限定されないが、例えば、次のような構成とすることが好ましい。
【0056】
排水ゾーン102においては、スクリュー5における、排水ゾーン102に対応する領域の軸方向の長さをL2(mm)とした場合、L2/Daが、2〜12であることが好ましく、3〜6であることがより好ましい。
【0057】
洗浄・脱水ゾーン104においては、スクリュー5における、洗浄・脱水ゾーン104に対応する領域の軸方向の長さをL3(mm)とした場合、L3/Daが、5〜30でありことが好ましく、10〜20であることがより好ましい。また、L3に対する洗浄・脱水用ニーディングディスクの占める割合は、5〜30%の範囲であることが好ましく、10〜20%の範囲であることがより好ましい。さらに、洗浄・脱水ゾーン104においては、スクリュー5に、逆送りスクリューが形成されていてもよい。L3に対する逆送りスクリューの占める割合は、1〜20%の範囲であることが好ましく、3〜15%の範囲であることがより好ましい。洗浄・脱水ゾーン104をこのような構成とすることにより、脱水ゾーンから出てくるゴムの含水率が下がるため、乾燥ゾーンの負荷を低減できる。
【0058】
乾燥ゾーン106においては、スクリュー5における、乾燥ゾーン106に対応する領域の軸方向の長さをL4(mm)とした場合、L4/Daが、10〜50であることが好ましく、20〜40であることがより好ましい。また、L4に対する乾燥用ニーディングディスクの占める割合は、1〜50%の範囲であることが好ましく、2〜20%の範囲であることがより好ましい。さらに、乾燥ゾーン106においては、スクリュー5に、逆送りスクリューが形成されていてもよい。L4に対する逆送りスクリューの占める割合は、0〜20%の範囲であることが好ましく、0〜10%の範囲であることがより好ましい。乾燥ゾーン106をこのような構成とすることにより、発熱による物性の低下やポリマー分子鎖の切断を防止することができる。
【0059】
凝固ゾーン100に供給されたゴムラテックス、凝固剤、および水蒸気は、スクリュー5の回転により接触させられ、前記ゴムラテックスは前記水蒸気により充分に加温されることにより、凝固反応が充分に進行し、直径5〜30mm程度のクラムとなって水中に懸濁し、クラム濃度が5〜30重量%程度のクラムスラリーとなる。凝固ゾーン100のバレルは、加温しておくことが好ましく、50〜100℃にすることがより好ましく、70〜95℃にすることが特に好ましい。凝固ゾーンの温度をこのような範囲にすることにより、ゴムラテックスの凝固反応を促進させることができる。
【0060】
凝固ゾーン100で得られたクラムスラリーは、スクリュー5の回転により排水ゾーン102に送られる。排水ゾーン102では、バレルブロック35に設けられたスリット350から、クラムスラリーに含まれる高濃度の凝固剤をセラム水として排出させ、凝固剤濃度が10重量%以下に低減され、40〜70重量%程度の水分を含有する含水状態のクラムが得られる。
【0061】
スリット350から排出されたスラリーの温度は、40〜100℃であることが好ましく、50〜100℃であることがより好ましく、50〜95℃であることが特に好ましい。スラリー温度がこのような範囲になっていることにより、凝固ゾーン内において、ゴムラテックスは水蒸気により充分に加温されており、凝固反応が充分に進行するとともに、良好なゴムを得ることができる。また、未凝固分を低減することができることから、ゴムの生産性が向上する。
【0062】
排水ゾーン102で得られた含水状態のクラムは、スクリュー5の回転により洗浄・脱水ゾーン104に送られる。洗浄・脱水ゾーン104では、バレルブロック36に設けられた洗浄水フィードぐち360から、内部に洗浄水が導入され、クラムが洗浄され、次いで、脱水される。洗浄済みの排水はバレルブロック37に設けられたスリット370から排出される。洗浄・脱水ゾーン104のうち、洗浄水フィードぐち360より前の領域においては、内部温度を40〜100℃とすることが好ましく、50〜100℃とすることがより好ましい。また、洗浄水フィードぐち360より後の領域においては、内部温度を50〜100℃とすることが好ましく、80〜100℃とすることがより好ましい。そして、凝固剤濃度が0.4重量%以下にさらに低減され、5〜10重量%程度の水分を含有するクラムが得られる。なお、上記洗浄水フィードぐち360から内部に導入される洗浄水量は、フィードぐち310から供給されるゴムラテックスの固形分100重量部に対し、10〜1,000重量部の範囲が好ましく、50〜200重量部の範囲がより好ましい。
【0063】
洗浄・脱水ゾーン104で得られたクラムは、スクリュー5の回転により乾燥ゾーン106に送られる。乾燥ゾーン106に送られたクラムは、スクリュー5の回転により、発熱して昇温しながら下流側へ運ばれる。そして、このクラムがバレルブロック40,42,43に設けられたベントぐち400,420,430に達すると、圧力が解放されるために、クラム中に含まれる水分が分離気化される。この分離気化された水分(蒸気)はベント配管(図示省略)を通じて外部へ排出される。乾燥ゾーン106内部の温度は、90〜200℃とすることが好ましく、100〜180℃にすることがより好ましい。また、内部圧力(ダイ部での圧力)は1000〜5000KPa(G:ゲージ圧)程度である。なお、乾燥ゾーン106は、減圧にしても良い。
【0064】
乾燥ゾーン106を通過した水分が分離されたクラムは、スクリュー5により出口側へ送り出され、実質的に水分をほとんど含まない状態(水分含有量が0.5重量%以下)でダイ4に導入され、ここで、例えばシート状で排出された後、シートカッター(図示省略)に導入されて切断され、適当な長さとされて製品化される。
【0065】
製造されたゴムは、ムーニー粘度[ML1+4、100℃]が15〜200であることが好ましく、20〜150であることがより好ましく、20〜100であることが特に好ましい。
【0066】
第2実施形態
また、本発明の第2実施形態として、水蒸気を供給するためのフィードぐち312の代わりに、図7に示されるようなフィードぐち310につながるゴムラテックスの配管に設置されたインナーノズル型投入ぐち512から、水蒸気を供給することもできる。この場合、フィードぐち310から、ゴムラテックスおよび水蒸気が、凝固ゾーン内に供給される。つまり、本発明においては、ゴムラテックスと水蒸気が同一のバレルブロックにフィードされれば、必ずしも別々のフィードぐちから凝固ゾーン内に供給されなくてもよい。なお、第2実施形態におけるその他の条件は、第1実施形態と同じである。
【0067】
以上、本発明に関する2つの実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【実施例】
【0068】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0069】
各種の圧力と温度は、以下の方法で測定した。
[水蒸気の圧力]
水蒸気の圧力は、水蒸気フィードぐちにおける圧力を、圧力計の目盛りを目視にて測定した。
[水蒸気の温度]
水蒸気の温度は、上記水蒸気の圧力(ゲージ圧)から計算で求めた。
式:logP[kPa(絶対圧)]=7.2117−1740.27/{(T[℃])+234.3291}
[スラリー温度]
スラリー温度は、スリット350から排出されたスラリーの温度を、温度計にて測定した。
【0070】
[製造例1]
公知の乳化重合法により、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムラテックス(アクリロニトリル単量体単位:34重量%、ブタジエン単量体単位:59重量%、マレイン酸モノn−ブチル単量体単位:7重量%、ヨウ素価:10、および固形分濃度13重量%)を得た。
【0071】
そして、前記カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムラテックスに、老化防止剤として2,5−ジ−t−アミルハイドロキノンを、前記ゴムラテックス(固形分)に対し、0.6重量部添加した後、前記ゴムラテックス、凝固液として塩化ナトリウム水溶液(凝固剤濃度:25重量%)、および水蒸気を使用して、図1〜図6に示す押出機1により、カルボキシル基含有ニトリルゴムを製造した。
【0072】
本実施例および本比較例では、押出機1として、バレル3内に2本のスクリュー(全長L=3,005mm、外径Da=48mm、L/Da=63)5,5を平行に設け、これらのスクリュー5,5を同方向に回転駆動させるとともに、一方のスクリューの山部を他方のスクリューの谷部に噛み合わせ、一方のスクリューの谷部を他方のスクリューの山部に噛み合わせる状態とした、同方向に回転する二軸噛合型のスクリュー押出機1を用いた。
【0073】
スクリュー5は、単一のバレル3の内部に形成された凝固ゾーン100に対応する領域において、凝固用スクリューブロック50、および凝固用ニーディングディスク52を有しており、本実施例では、図4に示すように、5枚のニーディングディスク52を6組と、凝固用スクリューブロック(フルフライト)50とを組み合わせて構成した。またL1は844mm、凝固用スクリューブロック50の外径Daは48mm、凝固スクリューブロック50の谷間の径Diは31mmであり、L1/Daを17.6、Da/Diを1.55とした。凝固ゾーン100に対応する領域における、谷部50B,52Bの数nは72であり、ピッチ指数H(L1/(Da×n))は0.24であった。
【0074】
さらに、スクリュー5のうち、排水ゾーン102に対応する領域の軸方向の長さL2を200mm、L2/Daを4とし、洗浄・脱水ゾーン104に対応する領域の軸方向の長さL3を630mm、L3/Daを13、乾燥ゾーン106に対応する領域の軸方向の長さL4を1331mm、L4/Daを28とした。
【0075】
[実施例1]
そして、このような構成の押出機1のフィードぐち310から、前記カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムラテックス(固形分濃度13.8%)を319kg/hrのレートで連続的に供給を開始した。同時に、押出機1のフィードぐち311から、塩化ナトリウム水溶液(凝固剤濃度:25重量%)を147kg/hrのレートで、押出機1のフィードぐち312から、水蒸気を0.35MPaの圧力で33kg/hrのレートで、それぞれ連続的に供給を開始した。すなわち、フィードぐち311を通過した際のセラム水の全量に対する凝固剤の濃度〔塩化ナトリウム量/(前記全供給物からなるセラム水量)〕を8.2重量%とした。同時に、洗浄水フィードぐち360から洗浄水を58kg/hrのレートで連続的に供給し、スクリュー回転数200rpmで押出機を運転して連続的にカルボキシル基含有水素化ニトリルゴムの凝固を行った。なお、本実施例では、凝固ゾーン100のバレル温度を90℃、洗浄・脱水ゾーン104のうち、洗浄水フィードぐち360より前の領域の内部温度を90℃、洗浄水フィードぐち360より後の領域のバレル温度を120℃、乾燥ゾーン106のバレル温度を110℃、にそれぞれ設定した。なお、フィードぐち310、311、および312は、全て同一のバレルブロックに設けてある。
【0076】
その結果、バレルの下流側に接続されたダイ4から、シート状の乾燥したカルボキシル基含有水素化ニトリルゴムが、43kg/hrのレートで製造された。これにより、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムの凝固、乾燥、及びシート化が、押出機1内で連続的に行われたことが確認された。その結果を表1に示す。ゴムの製造結果については、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムラテックスを押出機内に供給し初めてから、供給をやめるまでの間ずっと、安定的にゴムを製造できた場合に○、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムラテックスを押出機内に供給し初めてから、供給をやめるまでの間に、徐々にゴムの製造レートが下がってきた場合は△、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムラテックスを押出機内に供給し初めてから、供給をやめるまでの間に、ゴムが製造できなかった場合は×として、評価した。なお、凝固、乾燥後得られたカルボキシル基含有水素化ニトリルゴムのJIS K6300−1に従って測定したムーニー粘度:ML1+4(100℃)は、46.4であった。
【0077】
[実施例2]
水蒸気を1.3MPaの圧力で、押出機1のフィードぐち312に供給した他は、実施例1と同様の操作を行った。その結果を表1に示す。
【0078】
[比較例1]
フィードぐち310および311が設けてあるバレルブロックより1つ後ろ(下流)のバレルブロックに設けてあるフィードぐち320から、水蒸気を0.9MPaの圧力で供給した他は、実施例1と同様の操作を同じ押出機1を用いて行った。その結果を表1に示す。
【0079】
[比較例2]
水蒸気を供給せず、その代わりに、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムラテックスを60℃に設定した熱交換機で加温した後供給した他は、実施例1と同様の操作を行った。その結果を表1に示す。
【0080】
[比較例3]
水蒸気を供給しなかった他は、実施例1と同様の操作を行った。その結果を表1に示す。
【0081】
[比較例4]
水蒸気を供給せず、押出機1の凝固ゾーン100のバレル温度を30℃(室温に相当)に設定した他は、実施例1と同様の操作を行った。その結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
表1に示すように、凝固ゾーン内の同一のバレルブロックに設けられたフィードぐちから、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムラテックス、凝固剤である塩化ナトリウム水溶液、および水蒸気を連続的に供給した場合(実施例1および実施例2)には、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムラテックスの配管内が閉塞することなく、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムラテックスを安定的に凝固でき、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムを高い生産レートで製造することができた。
【0084】
一方、水蒸気を、ラテックスおよび凝固剤のフィードぐちのあるバレルブロックよりも後ろ(下流)のバレルブロックに設けてあるフィードぐちから供給した場合(比較例1)は、ラテックスが充分に加温されず、凝固ゾーン内でのラテックスの凝固が不充分であるために、ラテックスが脱水スリットから水と共に流出してしまい、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムを製造できなかった。また、水蒸気を供給せずに、ラテックスを熱交換機で加温した後に供給した場合(比較例2)は、押出機の内部に供給するための配管において、凝集物が発生して、配管が閉塞し、充分な量のラテックスを供給できずに、ゴムを安定的に生産することができなかった。さらに、水蒸気を供給せずに、押出機のバレルを加温することのみによりバレル内部のラテックスを温めた場合(比較例3)、および水蒸気を供給せずに、押出機のバレルも加温しなかった場合(比較例4)は、ラテックスが充分に加温されず、凝固が不充分であるために、ラテックスが脱水スリットから水と共に流出してしまい、カルボキシル基含有水素化ニトリルゴムを製造できなかった。
【符号の説明】
【0085】
1・・・・・・・・・・・押出機
2・・・・・・・・・・・駆動ユニット
3・・・・・・・・・・・バレル
31〜44・・・・・・・バレルブロック
310・・・・・・・・・ラテックスフィードぐち
311・・・・・・・・・凝固剤フィードぐち
312・・・・・・・・・水蒸気フィードぐち
320・・・・・・・・・水蒸気フィードぐち
350、370・・・・・スリット
360・・・・・・・・・洗浄水フィードぐち
4・・・・・・・・・・・ダイ
400,420,430・ベントぐち
5・・・・・・・・・・・スクリュー
50・・・・・・・・・・凝固用スクリューブロック
50A・・・・・・・・・凝固用スクリューブロックの山部
50B・・・・・・・・・凝固用スクリューブロックの谷部
52・・・・・・・・・・ニーディングディスク
510・・・・・・・・・ラテックスの配管
512・・・・・・・・・インナーノズル型スチーム投入ぐち

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝固ゾーンが少なくとも形成されたバレルの内部にスクリューが配置されている押出機を用いて、ゴムラテックスからゴムを連続的に製造する方法であって、
前記凝固ゾーン内の同一のバレルブロックに設けられたフィードぐちから、ゴムラテックス、凝固剤、およびスチームを連続的に供給することにより、
前記凝固ゾーン内で、前記ゴムラテックスを前記スチームにより加温することを含む、ゴムを連続的に製造する方法。
【請求項2】
前記スチームが、0.1〜2.0MPaの圧力下で連続的に供給される請求項1に記載のゴムを連続的に製造する方法。
【請求項3】
前記凝固ゾーン内部のスラリー温度が、40〜100℃である請求項1または2に記載のゴムを連続的に製造する方法。
【請求項4】
前記バレルの内部に形成された凝固ゾーンの下流側には、排水ゾーン、洗浄・脱水ゾーン、および乾燥ゾーンが順次設けられている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のゴムを連続的に製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−12142(P2011−12142A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156425(P2009−156425)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】