説明

ゴムホース用離型剤

【課題】成形ホース用マンドレルに使用可能な離型剤として、アクリルゴムホースに吸収されにくく、挿入/脱型性、残液性、水洗浄性に優れた離型剤の提供。さらに、酸化防止剤を添加することで、高温での加硫に際しても、使用可能である挿入/脱型性、残液性、水洗浄性に優れた離型剤を提供する。さらに、高温長時間の加硫においても、酸化防止剤の併用により、離型性を損なうことなく、所望の効果が得られる離型剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)(式中、R及びRはそれぞれ炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R及びRはそれぞれ酸素原子、窒素原子を含有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表し、m及びnはそれぞれ0〜100の数を表し、pは5〜300の数を表し、qは0〜8の数を表し、A、A及びAはそれぞれ炭素数2〜4のアルキレン基を表す。)で表されるウレタン化合物を主成分とするアクリルゴムホース用離型剤により達成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴムホースの加硫時における、金型の離型剤に関する。さらに詳しくは成形ホース用マンドレルに使用可能な挿入脱型性、残液量、洗浄性に優れたアクリルゴム用離型剤に関する。また、高温長時間の加硫作業においても、離型性を保持できるアクリルゴム用離型剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルゴムは耐熱性、耐油性に優れるため、自動車などの燃料系、潤滑油系、エンジンルーム内のホースなどの吸・排気系のホースやチューブなどの自動車部品として使用されている。とりわけ自動車用ホースなどの各種ゴムホースは、マンドレルを用いて、ホースを成型し、これを加硫した後、マンドレルをホースから抜き取るために、水圧を用いて、ブローすることにより抜き取り製造される。通常、その際はマンドレルの抜けをよくするために、マンドレルの表面には、離型剤が塗布される。
【0003】
ホース用に使用される離型剤は、加硫時における加工性、洗浄性、脱型性が問題となる。NBR(ニトリロゴム)製、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)製のホースに対しては、洗浄性が良いことで知られているノンシリコーン系離型剤(界面活性剤系離型剤)が用いられている。ノンシリコーン系離型剤の例としては、ジアミンのアルキレンオキサイド付加物からなる加硫ゴム用離型剤(特許文献1)やオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを成分とする離型剤(特許文献2)が知られている。後者の内、特にノニオン系離型剤は、EPDM製、NBR製ホースに対して、ソルベントクラックの発生を防ぎ、マンドレルの汚染をも防ぐことが可能な上に、挿入脱型性及び洗浄性に優れ、シリコーン系に比べ価格が安価なため、汎用性にも優れたホース製造用マンドレル離型剤として汎用されている。また、シリコーン系の離型剤の例として、IY/BHNBRコンパウンド製ホースに対して、反応性シリコーン類と非反応性シリコーン類を配合して得られる離型剤を用いることも知られている(特許文献3)。
【0004】
ところで、アクリルゴムホースに、特許文献1、2に開示のノンシリコーン系離型剤を用いる場合には、加硫中にアクリルゴムに吸収されて、マンドレルの表面に離型剤が残らない、言い換えると離型剤の残液量が不足する現象が起こるため、加工性に劣り、使用は困難であった。また、アクリルゴムホースに対して、特許文献3に開示のシリコーン系離型剤を用いた場合には、シリコーン系離型剤は、挿入脱型性には優れているが、洗浄性が悪いため、洗浄不足のホースではシリコーンが残存して滑りが出てしまい、実装時に、接続器具から抜落ちる危険性がある。そこで、アクリルゴムホースに使用可能なノンシリコーン系離型剤の出現が待望されているのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特開平7−292236号公報
【特許文献2】特開2004−306409号公報
【特許文献3】特開平9−99439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
成形ホース用マンドレルに使用可能な離型剤として、アクリルゴムホースに吸収されにくく、適度な粘度で塗布しやすく、挿入/脱型性、残液性及び水洗浄性に優れた離型剤の提供することである。さらに、離型剤の劣化や変質が生じやすい高温長時間の加硫条件でも使用可能な、挿入/脱型性、残液性及び水洗浄性に優れた離型剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、アクリルゴムホースの加硫工程において洗浄性が良く、挿入性、脱型性に優れた金型離型剤を鋭意検討した結果、下記一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R及びRはそれぞれ炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R及びRはそれぞれ酸素原子、窒素原子を含有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表し、m及びnはそれぞれ0〜100の数を表し、pは5〜300の数を表し、qは0〜8の数を表し、A、A及びAはそれぞれ炭素数2〜4のアルキレン基を表す。)で表されるウレタン化合物を主成分とすることにより、加硫工程中にアクリルゴムへ吸収されにくく、適度な粘度を有するので塗布しやすく、挿入脱型性、残液性、水洗浄性にも優れた離型剤を得られることを見出し、本発明を完成したものである。
【0010】
また、アクリルゴムの加硫温度が高いため、高温条件下での加硫中に本発明化合物が劣化して脱型性が低下することが生じる可能性もあるが、上記化合物100質量部に対して0.5質量部〜3質量部の酸化防止剤を配合することで、それらの現象を抑制することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
上記一般式(1)で表される本発明に係るウレタン化合物は、加硫工程中にアクリルゴムに実質的に吸収されることもなく、塗布に適した粘度の塗布液の調製が可能なことから塗布作業においても支障がなく、挿入脱型性、残液性、水洗浄性に優れていることから、アクリルゴム用の離型剤として好適である。さらに、現在使用されている市販の離型剤は、耐熱性を備えていない。しかし、アクリルゴムホースは、用途によっては高温条件下で長時間加硫を行うことがある。高温条件下では、加硫中に本発明に係る化合物は劣化して、脱型性が低下する可能性がある。そのような場合でも、所定量の酸化防止剤を配合することにより、実用上十分な離型性を保持することができるという性質を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る上記一般式(1)で表されるウレタン化合物を主成分とするゴムホース用離型剤において、R、R、A及びAで表される基は、RO−(AO)−OH及びRO−(AO)−OHで表されるモノオール由来の基である。これらの化合物は、ROHあるいはROHで表されるアルコールに、アルキレンオキシドをそれぞれmモル、nモル付加したものである。
【0013】
及びRはそれぞれ炭素数1〜8の炭化水素基を表す。こうした炭化水素基としては具体的には、アルキル基としてメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、セカンダリーペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、セカンダリーへキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、セカンダリーヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、セカンダリーオクチル基等、アルケニル基として、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等、アリール基として、フェニル基、トルイル基、キシリル基等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性が高いことから二重結合のないアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜2のアルキル基が更に好ましい。炭素数が8を超えると洗浄性が悪くなる。
【0014】
及びAはそれぞれ炭素数2〜4のアルキレン基を表す。こうしたアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等が挙げられ、A及びAはそれぞれm個のオキシアルキレン基、n個のオキシアルキレン基に対応している。これらは同一のオキシアルキレン基が重合したものでも、複数のオキシアルキレン基がブロック状あるいはランダム状に重合したものでもよい。m及びnの値はアルキレンオキシドの重合度であり、0〜100の数を表すが、重合度があまりに大きくなると副生物が増えて純度が下がり、離型性や洗浄性に劣る場合があるため、m及びnの値は0〜50の数が好ましく、0〜30の数がより好ましく、0〜10の数が更に好ましい。
【0015】
一般式(1)において、Aで表される基は、H−(OA−OHで表されるジオール由来の基である。こうした基としては、上記のA及びAで挙げた基と同一のものを挙げることができる。これらは同一のオキシアルキレン基が重合したものでも、複数のオキシアルキレン基がブロック状あるいはランダム状に重合したものでもよい。pの値はアルキレンオキシドの重合度であり、5〜300の数を表すが、10〜200の数が好ましく、50〜150の数がより好ましい。重合度が300を超えてあまりに大きくなると副生物が増えて純度が下がり、離型性や洗浄性に劣る場合があり、重合度が5未満の場合などあまりに小さくとも離型性や洗浄性に劣る場合がある。
【0016】
また、m個のオキシアルキレン基、p個のオキシアルキレン基、n個のオキシアルキレン基の総和の30〜95質量%がオキシエチレン基(以下、EOと略)であることが好ましく、50〜95質量%がより好ましく、60〜90質量%が更に好ましい。EO基が30質量%未満であると洗浄性に劣る場合があり、95質量%を超えると粘度が上昇して取り扱いが困難になる場合がある。更に、2種類以上のオキシアルキレン基を共重合させる場合、EO基と共重合させるオキシアルキレン基としてはオキシプロピレン基(以下、POと略)が好ましい。また、一般式(1)の化合物の場合、塗布性が良好なことから、分子式中にEO基を含むランダム共重合構造を含有させることが好ましい。
【0017】
一般式(1)において、R及びRで表される基は、R−(NCO)及び、R−(NCO)で表されるジイソシアネート由来の基である。こうしたジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、フェニルメタン誘導体のジイソシアネート等が挙げられる。以下に具体的な例を挙げる。
【0018】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジプロピルエーテルジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、3−メトキシヘキサンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルペンタンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、3−ブトキシヘキサンジイソシアネート、1,4−ブチレングリコールジプロピルエーテルジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0019】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジメチルベンゼンジイソシアネート、エチルベンゼンジイソシアネート、イソプロピルベンゼンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、2,7−ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0020】
脂環族ジイソシアネートとしては例えば、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等が挙げられる。ビフェニルジイソシアネートとしては例えば、ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4−ビフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0021】
フェニルメタン誘導体のジイソシアネートとしては例えば、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,5,2’,5’−テトラメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、シクロヘキシルビス(4−イソシアントフェニル)メタン、3,3’−ジメトキシジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジメトキシジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート、4,4’−ジエトキシジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート、2,2’−ジメチル−5,5’−ジメトキシジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−3,3’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート等のジイソシアネートが好ましい。
【0023】
また、これらのジイソシアネート化合物はイソシアヌレート結合を有するダイマーやトリマーで用いてもよい。更に、これらのジイソシアネート化合物とポリオールを反応させたウレタン結合を有するジイソシアネートも用いることができる。
【0024】
本発明にかかる上記一般式(1)で表されるウレタン化合物を主成分とする離型剤を製造する方法としては、公知の方法であればいずれの方法で製造してもよいが、製造方法が簡便であることから、例えば、RO−(AO)−OH及びRO−(AO)−OHで表されるモノオールと、R−(NCO)及び、R−(NCO)で表されるジイソシアネートと、H−(OA−OHで表されるジオールとを反応させることによって製造することが好ましい。
【0025】
より具体的には、例えば、RO−(AO)−OH及びRO−(AO)−OHで表されるモノオールそれぞれ1モルに対して、R−(NCO)及び、R−(NCO)で表されるジイソシアネートをそれぞれ0.75〜1.25モル、好ましくは0.9〜1.1モル、更にH−(OA−OHで表されるジオールを0.75〜1.25モル、好ましくは0.9〜1.1モル混合し、60〜100℃で1〜10時間加熱反応させればよい。
【0026】
なお、モノオール及びジイソシアネートは、それぞれ1種類のものを使用してもよく、その場合には、モノオール2モルに対してジイソシアネートを1.5〜2.5モル、好ましくは1.8〜2.2モル、ジオールを0.75〜1.25モル、好ましくは0.9〜1.1モルを混合し、60〜100℃で1〜10時間加熱反応させればよい。また、用いるジオールの重量平均分子量は、500〜10000が好ましい。1000〜6000がさらに好ましく、3000〜5000が最も好ましい。
【0027】
上記のように反応して得られる一般式(1)のウレタン化合物からなる本発明に係る離型剤は、一般式(1)におけるqの値が1の化合物であるが、使用する原料成分の配合比等によって、場合によってはqが0及び2〜8の化合物も副生することがある。この場合、qの値が0〜8の化合物が混合した状態で一般式(1)の化合物は得られる。混合している化合物の割合は特に限定されないが、qの値が1〜3の化合物の割合が50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
【0028】
また、一般式(1)のウレタン化合物を離型剤としてアクリルゴムホースの加硫に用いる際、アクリルゴムはジエン系ポリマーに比べ加硫速度が遅いため適正加硫物を得るためには1次加硫、2次加硫の2回の加硫が必要となる。2次加硫は高温長時間になることがあり離型剤も高温状態が長時間に及ぶことがある。その場合には離型剤が劣化し、低温時には粘度上昇を招き、マンドレルからの脱型性が低下することが生じることがある。このような高温での加硫に際しては、一般式(1)の本発明化合物に、所定量の酸化防止剤を配合して用いることが望ましい。添加する酸化防止剤の量は、一般式(1)で表される化合物100質量部に対して0.5質量部〜3質量部で充分である。
【0029】
使用できる酸化防止剤としては、アミン系、フェノール系、硫黄系、りん系などの一般的な酸化防止剤の中から選択できる。具体的には、ジフェニルアミン系としては、p−(p−トルエン・スルホニルアミド)−ジフェニルアミン、4,4’−(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、ジフェニルアミンとアセトンとの高温反応生成物、ジフェニルアミンとアセトンとの低温反応生成物、ジフェニルアミンとアニリンとアセトンとの低温反応物、ジフェニルアミンとジイソブチレンとの反応生成物、オクチル化ジフェニルアミン、ジオクチル化ジフェニルアミン、p,p’−ジオクチル・ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミンなどが挙げられる。
【0030】
フェニレンジアミン系としては、具体的には、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、n−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、フェニルヘキシル−p−フェニレンジアミン、フェニルオクチル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン類などが挙げられる。
【0031】
モノフェノール系としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどが挙げられる。
【0032】
ビスフェノール系としては、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0033】
高分子型フェノール系としては、1,1,3−トリス(2−メチル−4−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、[3,3’−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェロールなどが挙げられる。
【0034】
硫黄系としては、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネートなどが挙げられる。
【0035】
リン系としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−4メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどが挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を合成例、混合例、実施例及び比較例にもとづいて、より詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
表1に示した本発明に係る化合物1〜化合物4は、それぞれ表1に示されるモノオール、ジオール、ジイソシアネートをモル比で2:1:2の割合で配合し合成することによって得られる。表1中、EOはEO基、POはPO基を、MWは重量平均分子量を、HMDIはジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを、HDIはヘキサメチレンジイソシアネートを示す。
【0038】
なお、重量平均分子量(MW)は、GPC(ゲルクロマトグラフィー)測定により算出した。測定に用いた機器及び測定条件は以下の通りである。GPCシステム:GL−7400シリーズ(ジーエルサイエンス(株))、検出器:RI検出器 RI704(ジーエルサイエンス(株))、を用い、カラム:KW−802.5、KW−803、KW−804(いずれも昭和電工(株))を直列に接続して用いた。展開溶媒:メタノール/水=9/1(体積比)、展開溶媒流速:0.3ml/min、サンプル濃度:0.5質量%、測定温度:40℃の測定条件において算出した。
【0039】
【表1】

【0040】
(合成例1)〔本発明化合物1〕
温度計、窒素導入管及び攪拌機付き、容量2000mlの4つ口フラスコに、ジオールとして重量平均分子量3000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンランダムポリマー(EO基含有量:70質量%、PO基含有量:30質量%)を600g(0.2モル)、モノオールとして、メタノールに対してエチレンオキシド(EO)3モル・プロピレンオキシド(PO)3モルを付加してブロック重合して得られた付加物を135g(0.4モル)仕込み、そこへジイソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を67g(0.4モル)加え、80〜90℃で3時間反応させた後、常温で淡黄色液状の化合物1を得た。
【0041】
(合成例2〜4)〔本発明化合物2〜4〕
化合物2〜4も、表1に示した原料を使用した以外は、合成例1と同様の方法により合成した。
【0042】
(組成例1)〔本発明組成物1〕
組成物1は、本発明化合物1、100質量部に酸化防止剤ノンフレックスDCD(4,4’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン:精工化学(株)製)を質量部1部配合することにより調製した。
【0043】
[実施例1〜4、比較例1〜2](160℃×60分の加硫)
160℃×60分の加硫条件において、実施例1〜4として、上記のように合成した本発明化合物1〜化合物4を離型剤として使用した。また、比較例1として市販されているノンシリコーン系離型剤としてニューエイドMD−801(ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー:精工化学(株)製)を使用し、比較例2として市販されているシリコーン系離型剤KM−860A(シリコーンオイルエマルジョン型:信越化学工業(株)製)を使用し、アクリルゴムホースの加硫を行い、離型性に関する性能を評価した。
【0044】
[実施例5、参考例1](180℃×5時間の加硫)
180℃×5時間の加硫において、上記の組成例1で得られた本発明に係る組成物1を離型剤として使用した。なお、参考例1としては、本発明化合物1を用い、同じ条件でアクリルゴムホースの加硫を行い性能を評価した。
【0045】
なお、本願使用例で用いたアクリルゴムホースとしては、nipolar12(日本ゼオン(株)製)100部、ステアリン酸2部、FEFカーボン旭#60(旭カーボン(株)製)、N,N’−ジフェニルグアニジン(サンセラーD−G、三新化学工業(株)製)2部、ヘキサメチレンジアミンカーバメート(CHEMINOX AC−6、ユニマテック(株)製)0.6部を配合してなる未加硫ゴムホースを用いた。
【0046】
挿入脱型性の評価:
(160℃×60分の加硫)
実施例1〜4及び比較例1及び2に係る離型剤を、成形ホース用マンドレル(ステンレス製)を蒸気で加熱した後に、マンドレル表面に充分に塗布すると共に、未加硫ホース先端からホース内にも充分な量を注ぎ込むことによって塗布し、マンドレルにアクリルゴムチューブを挿入した。次にこれを160℃、60分間、恒温槽で加硫した。その後加硫ゴムの表面温度90℃になるまで冷却しホースを引き抜き評価した。
(180℃×5時間の加硫)
実施例5および参考例1に係る離型剤を使用し、180℃、5時間、恒温槽で加硫した。その後加硫ゴムの表面温度50℃になるまで冷却しホースを引き抜き評価した。その他の操作は、上記の通常の加硫と同様に行った。評価基準は以下の通りである。
◎:力を込めなくても引き抜くこと、或いは差し込むことが出来る。
○:片手で多少の力を込めれば引き抜くこと、或いは差し込むことができる。
△:両手でかなりの力を込めないと引き抜くこと、或いは差し込むことが出来ない。
×:力を込めても引き抜くこと、或いは差し込むことが出来ない。
【0047】
残液量の評価:
加硫ホースを引き抜き後、ホース内面を確認し離型剤の残液状況を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:ホース内面全体に厚い膜で残液している。
○:ホース内面全体に薄膜で残液している。
△:ホース内面に部分的に残液していないところがある。
×:ホース内面に殆ど残液が無い。
【0048】
洗浄性の評価:
加硫後のホースを25℃と40℃の水を張った容器にそれぞれ投入して3分間攪拌洗浄を行い、取り出して、乾燥してホースを切り開いて内面の離型剤残渣の有無を評価した。評価基準は以下の通りである。
○:離型剤残渣なし。
×:離型剤残渣あり。
【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
(結果の検討)
通常加硫条件での結果を表2に、高温長時間加硫条件での結果を表3に示す。本発明化合物1〜化合物4を離型剤として用いた実施例1〜実施例4では、適度な粘度のため塗布しやすかった。アクリルゴムホースの加硫前のマンドレルへの挿入性にも優れ、加硫時にゴムに対して吸収されにくく、かつ加硫後にも離型剤がゴムに対してはじかれていないことが確認でき、ホース内面全体に厚膜或いは薄膜で残液しており、脱型性に優れていた。さらに接続器具に装着した際の、滑りの原因となる余分な残存液の除去も、25℃および40℃のどちらにおいても、水洗浄によって十分に達成できることから、本発明化合物は洗浄性にも優れていると判断された。
【0052】
また、化合物1に酸化防止剤を配合した組成物5を離型剤として用いた実施例5では、高温長時間の加硫条件下において加工された後、脱型時のゴム温度が低温であっても脱型性に優れていた。一方、比較例1に示すノンシリコーン系離型剤では、加硫後に離型剤残液がないため脱型が不可であった。比較例2に示すシリコーン系離型剤ではアクリルゴムに対する挿入脱型性には優れるが、洗浄性に劣った。
【産業上の利用可能性】
【0053】
燃料系、潤滑油系、エンジンルーム内のホースなどの吸・排気系のホースやチューブなどの自動車部品として使用されるアクリルゴムホースを、マンドレルを用いて製造する際、洗浄性、挿入性、脱型性、残液性に優れた離型剤である本発明に係る化合物を加硫工程において使用することにより、得られたアクリルゴムホースは、実装時においても、抜け落ちなどの恐れもなく、本来の特性である耐熱性、耐油性などを発現することができる。勿論、高温条件下でマンドレルを用いてアクリルゴムホースを製造する場合であっても、所定量の酸化防止剤を併用することで、所望とする効果が発揮される。従って、本発明は産業上の利用可能性に富んだ発明であるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるウレタン化合物を主成分とするゴムホース用離型剤。
【化1】

(式中、R及びRはそれぞれ炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R及びRはそれぞれ酸素原子、窒素原子を含有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表し、m及びnはそれぞれ0〜100の数を表し、pは5〜300の数を表し、qは0〜8の数を表し、A、A及びAはそれぞれ炭素数2〜4のアルキレン基を表す。)
【請求項2】
さらに酸化防止剤を含む請求項1に記載のゴムホース用離型剤。
【請求項3】
前記ゴムホースがアクリルゴムホースである請求項1又は2に記載のゴムホース用離型剤。
【請求項4】
前記酸化防止剤が、上記一般式(1)で表されるウレタン化合物100質量部当たり、0.5質量部〜3質量部含まれる請求項2に記載のゴムホース用離型剤。

【公開番号】特開2009−248385(P2009−248385A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96871(P2008−96871)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000195616)精工化学株式会社 (28)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】