説明

ゴムホース製造用マンドレル

【課題】加硫したゴムホースから円滑に引き抜けるようにしたゴムホース製造用マンドレルを提供する。
【解決手段】ゴムホース製造用マンドレル1の外周面2aの平均粗さを4μm以上30μm以下にするとともに、外周面2aの凹凸の平均間隔を30μm以上100μmに設定することにより、加硫工程でマンドレル1の外周面2aとゴムホース4の内面ゴム層5とが強固に密着することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムホース製造用マンドレル関し、さらに詳しくは、加硫したゴムホースから円滑に引き抜けるようにしたゴムホース製造用マンドレルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴムホースを製造する際には、マンドレルを芯材としてその外周面に順次、ホース構成部材を積層してホース成形体を成形する。次いで、ホース成形体の外周面に外被部材を積層した状態にしてホース成形体を加硫している。加硫工程の後、外被部材の除去作業とマンドレルからのゴムホースの引き抜き作業が行なわれる。その際には、加硫したゴムホースの内部に水圧を付与してマンドレルをゴムホースから引き抜くようにしている。ここで、ゴムホースの最内周層を形成する部材の種類、即ち、マンドレルの外周面に接して積層されるゴム組成物や樹脂の種類によっては、加硫工程でマンドレルと強く密着して、加硫したゴムホースからマンドレルを円滑に引き抜くことができないという問題があった。このような問題が生じると、生産性が低下し、また、加硫したゴムホースから強引にマンドレルを引き抜くとゴムホースの品質に悪影響が生じることもある。
【0003】
そこで、加硫したゴムホースからマンドレルを引き抜き易くするために、マンドレルの表面粗さを特定の範囲に設定することが種々提案されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。しかしながら、マンドレルの表面粗さを特定の範囲に設定しただけでは、マンドレルを円滑に引き抜けない場合があった。そこで、本願発明者は、マンドレルの引き抜き性に影響を与える他の要因を見出し、この知見に基づいて仕様を決定することにより、従来に比して、加硫したゴムホースから円滑に引き抜けるマンドレルを得ることが可能になった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−153333号公報
【特許文献2】特開平7−266448号公報
【特許文献3】特開平8−85164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、加硫したゴムホースから円滑に引き抜けるようにしたゴムホース製造用マンドレルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のゴムホース製造用マンドレルは、ゴムホースの最内周層を形成する部材が外周面に押し出され、その外周側に順次、ホース構成部材が積層されるゴムホース製造用マンドレルにおいて、外周面の平均粗さが4μm以上30μm以下であり、外周面の凹凸の平均間隔が30μm以上100μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マンドレルの外周面の平均粗さを、マンドレルの円滑な引き抜きに有利な4μm以上30μm以下にしたことに加えて、外周面の凹凸の平均間隔を30μm以上100μm以下にすることで、加硫したゴムホースとの防着性が向上するので、加硫したゴムホースからマンドレルを円滑に引き抜くことが可能になる。
【0008】
ここで、少なくともマンドレルの外周面が、ポリメチルペンテンまたは11ナイロンのいずれかで形成されている仕様にすることもできる。ポリメチルペンテンや11ナイロンは、ゴムホースの製造に要求される耐久性等を備えつつ、加硫したゴムホースとの防着性にも優れているので、この仕様にした場合、より一層、円滑に加硫したゴムホースからマンドレルを引き抜くことが可能になる。
【0009】
マンドレルの全体がポリメチルペンテンまたは11ナイロンの単一材質で形成されている仕様にすることもできる。この仕様の場合、マンドレルの製造工程が簡素化される。
【0010】
マンドレルの外周層がポリメチルペンテンまたは11ナイロンのいずれかで形成されているとともに、この外周層の内周側の芯部が外周層とは異なる材質で形成されている仕様にすることもできる。この仕様の場合、加硫したゴムホースとの優れた防着性を確保しつつ、芯部の材質を変えることにより、マンドレルの特性(引張強度、曲げ強度、曲げ易さ、重さ等)を所望のとおりにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のマンドレルと成形されたゴムホースを例示する一部切開斜視図である。
【図2】本発明のマンドレルを例示する断面図であり、図2(a)は単一材質で形成されたマンドレル、図2(b)は外周層と芯部とで材質を異ならせた2層構造のマンドレルである。
【図3】本発明で規定するマンドレルの外周面の平均粗さRaを示す説明図である。
【図4】本発明で規定するマンドレルの外周面の凹凸の平均間隔Smを示す説明図である。
【図5】引き抜き性の試験方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のゴムホース製造用マンドレルを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
ゴムホース4を製造する際には、図1に例示するように円柱状の本発明のマンドレル1を芯材として、その外周面2aに、ゴムホース4の最内周層となる内面ゴム層5を形成する未加硫ゴムが押し出され、順次、補強層6を形成する補強部材、外面ゴム層7を形成する未加硫ゴムが積層されてホース成形体4が成形される。ホース成形体4の最外周面には、外型として機能する外被部材が積層される。尚、本願明細書では、ホース成形体4とホース成形体を加硫して得られるゴムホース4に同じ符号4を付している。
【0014】
ホース成形体4は、この構造に限定されるものではなく、種々の構造を採用できる。最内周層を形成する部材として、樹脂をマンドレル1の外周面2aに押し出すこともできる。或いは、この樹脂で形成された最内周層に、未加硫ゴムを押し出して積層し、その後、補強層6などを積層することもできる。
【0015】
内面ゴム層5を形成する未加硫ゴムとしては、例えば、硫黄系配合剤を含んだNBR系ゴム、SBRゴム、ENRゴム等が使用される。外面ゴム層7を形成する未加硫ゴム部材としては、例えば、硫黄系配合剤を含んだCRゴム、EPDMゴム、SBRゴム等が使用される。これら未加硫ゴムのゴム種は、ゴムホース4に対する要求性能に応じて適宜決定される。
【0016】
最内周層を樹脂にする場合は、6ナイロンやポリオレフィン系樹脂、フッ素樹脂等が使用される。或いは、これら樹脂に、既述した内面ゴム層5を形成する未加硫ゴムを積層する。
【0017】
補強層6は、繊維やワイヤ等を、所定角度でスパイラル状に巻き付けて、または、所定の編組角度で編組して(ブレード状にして)巻き付けて構成される。補強層6の数は1層に限らず、ゴムホース4に対する要求性能に応じて適宜決定される。
【0018】
外被部材を被覆されたホース成形体4は、加硫装置の内部に配置され、所定の加圧下で所定の温度に加熱されて加硫される。加硫方法によっては加圧せずに常圧で加熱して加硫を行なう。加硫工程の後に、加硫されたホース成形体4(即ち、ゴムホース4)からは外被部材が除去され、ゴムホース4の内部、即ち、マンドレル1が存在している部分に水圧をかける等によってマンドレル1が引き抜かれて、ゴムホース4の製造が完了する。引き抜かれたマンドレル1の外周面には、新たなホース構成部材が積層されて上記製造工程で繰返し使用される。
【0019】
マンドレル1の材質は、樹脂または金属であり、長尺(例えば、100m〜200m)のゴムホース4を製造する場合は、主に樹脂製のマンドレル1を使用し、短尺(例えば、20m〜30m)のゴムホース4を製造する場合は、主に金属製のマンドレルを使用する。マンドレル1に使用する樹脂としては、ポリメチルペンテン、11ナイロン、6ナイロン等を例示できる。マンドレル1に使用する金属としては、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム等を例示できる。マンドレル1の外径は、6mm〜15mm程度である。
【0020】
マンドレル1の外周面2aの平均粗さRaは、4μm以上30μm以下になっている。この平均粗さRaとは図3に例示するように、粗さ曲線Cからその平均線Avの方向に基準長さLだけ抜き取り、この抜き取った部分の平均線Avから粗さ曲線C(=f(x))までの偏差の絶対値を合計して、その合計を基準長さLで除した値であり、下記(1)式で算出される。

【0021】
また、マンドレル1の外周面2aの微小な凹凸の平均間隔Smは、30μm以上100μm以下になっている。この凹凸の平均間隔Smとは、図4に例示するように、粗さ曲線Cからその平均線Avの方向に基準長さLだけ抜き取り、1つの山およびその山に隣り合う谷に対応する平均線Avの長さSmiの合計を求めて、その合計を基準長さLで除した値であり、下記(2)式で算出される。

【0022】
マンドレル1の外周面2aの平均粗さRaが、4μm以上30μm以下になっているので、マンドレル1に接するゴム(内面ゴム層5)と、マンドレル1とのミクロ的な接触面積が適度に小さくなる。加えて、マンドレル1の外周面2aの微小な凹凸の平均間隔Smは、30μm以上100μm以下になっているので、マンドレル1に接するゴム(内面ゴム層5)とマンドレル1との適度な接触が、マンドレル1の外周面2aの全て範囲でまんべんなく得られる。
【0023】
それ故、加硫工程において内面ゴム層5を形成するゴム部材が、マンドレル1の外周面2aに強固に密着することを防止することができる。これによって、円滑に加硫したゴムホース4からマンドレル1を円滑に引き抜くことが可能になる。
【0024】
外周面2aの平均粗さRaが4μm未満では、平滑すぎてマンドレル1に接するゴムとマンドレル1との接触面積を適度に小さくすることが難しく、平均粗さRaが30μm超では内面ゴム層5の粗さが過大になってゴムホース4に対するホース金具の加締め性に悪影響が生じる。また、外周面2aの微小な凹凸の平均間隔Smが30μm未満では、凹凸の数が多くなるのでマンドレル1に接するゴムとの面積が大きくなり、結果的に両者の間の摩擦抵抗が大きくなるという悪影響が生じる。一方、平均間隔Smが100μm超では、外周面2aが平滑すぎてマンドレル1に接するゴムとマンドレル1との接触面積を適度に小さくすることが難しくなる。
【0025】
マンドレル1の外周面2aの平均粗さRaおよび凹凸の平均間隔Smを上記範囲にするには、外周面2aが樹脂の場合は、例えば樹脂の押出条件(押出温度および押出速度等)をコントロールしたり、特許文献2、3に記載されているように、樹脂に充填する充填剤の種類や配合量を調整することにより行ない、外周面2aが金属の場合は例えば、ショットブラスト処理等により行なう。外周面2aが樹脂の場合にも、ショットブラスト処理等を行なうこともできる。
【0026】
ポリメチルペンテンや11ナイロンは、ゴムホース4の製造に要求される耐久性等を備えつつ、加硫したゴムホース4との防着性にも優れている。そのため、マンドレル1の少なくとも外周面2aを、ポリメチルペンテンまたは11ナイロンのいずれかにより形成すると、より一層、円滑に加硫したゴムホース4からマンドレル1を引き抜くことが可能になる。
【0027】
例えば、図2(a)に例示するように、マンドレル1の全体をポリメチルペンテンまたは11ナイロンの単一材質で形成することもできる。この仕様にした場合は、マンドレル1の製造工程が簡素化される。
【0028】
或いは、図2(b)に例示するように、マンドレル1の外周層2がポリメチルペンテンまたは11ナイロンのいずれかで形成されているとともに、この外周層2の内周側の芯部3が外周層2とは異なる材質で形成された仕様にすることもできる。例えば、外周層2をポリメチルペンテンまたは11ナイロンのいずれかで形成して、芯部3を外周層2とは異なる樹脂或いは金属にすることもできる。この仕様の場合、加硫したゴムホース4との優れた防着性を確保しつつ、芯部3の材質を変えることにより、マンドレル1の特性(引張強度、曲げ強度、曲げ易さ、重さ等)を所望のとおりに設定し易くなる。
【実施例】
【0029】
マンドレルの試験サンプルとして、表1のように仕様を変えた同一サイズ(外径10mm、長さ400mm)の9種類(実施例1〜4、比較例1〜5)を用意した。それぞれの試験サンプルの外周面に表2に示す配合の未加硫ゴム(厚さ0.5mm)を250mm程度の長さ巻き付けた後、この未加硫ゴムをマンドレルの試験サンプルとともに所定の共通条件下で加硫した。その後、加硫されたゴムから試験サンプルから引抜く際の引抜き性を下記の評価方法によって評価し、その結果を表1に示す。表1中に記載されているTPXとは、ポリメチルペンテンである。
【0030】
[引き抜き性]
図5に示すように、試験サンプル8よりもわずかに大径の貫通孔10aを有する治具10を用いて、試験サンプル8の一端部を貫通孔10aに挿通させて、この一端部を引張ることにより、加硫されたゴム9から試験サンプル8を引き抜いた。この時に生じる最大引抜き力を測定した。引き抜き速度は50mm/minに設定した。
【0031】
比較例1の最大引抜き力を基準の100としてそれぞれの試験サンプル8の引抜き性を指数評価した。指数が小さい程、マンドレルを引抜き易いことを示す。この指数が100未満の場合を、引き抜き性に優れていると判断して○で表示して、指数が100以上の場合を引き抜き性が劣っていると判断して×で表示した。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
表1の結果から、比較例1〜5に比して実施例1〜4は、引き抜き性に優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0035】
1 マンドレル
2 外周層
2a 外周面
3 芯部
4 ゴムホース(ホース成形体)
5 内面ゴム層
6 補強層
7 外面ゴム層
8 試験サンプル(マンドレル)
9 ゴム部材
10 治具
10a 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムホースの最内周層を形成する部材が外周面に押し出され、その外周側に順次、ホース構成部材が積層されるゴムホース製造用マンドレルにおいて、外周面の平均粗さが4μm以上30μm以下であり、外周面の凹凸の平均間隔が30μm以上100μm以下であることを特徴とするゴムホース製造用マンドレル。
【請求項2】
少なくとも外周面が、ポリメチルペンテンまたは11ナイロンのいずれかで形成されている請求項1に記載のゴムホース製造用マンドレル。
【請求項3】
全体がポリメチルペンテンまたは11ナイロンの単一材質で形成されている請求項2に記載のゴムホース製造用マンドレル。
【請求項4】
外周層がポリメチルペンテンまたは11ナイロンのいずれかで形成されているとともに、この外周層の内周側の芯部が外周層とは異なる材質で形成されている請求項2に記載のゴムホース製造用マンドレル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−76320(P2012−76320A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222457(P2010−222457)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】