説明

ゴム体

【課題】圧縮強度が長手方向に沿って均一化されていると共にコード破断性が向上したゴム体補強用コードを具備したゴム体を提供すること。
【解決手段】スチールで形成された円環状の筒体部10を有するゴム体補強用コード3と、ゴム材料で形成され、ゴム体補強用コードが埋設されたゴム本体と、を備え、筒体部の径方向の内側には筒体部の全長に亘って筒体部よりも軟質な軟材部13が配設されているゴム体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム体補強用コードが埋設されたゴム体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゴム体補強用コードとして、有機繊維によるフィラメントからなるコアの回りに、複数のスチールフィラメントを撚り合わせた複合コードが知られている(特許文献1参照)。
この複合コードでは、複数のスチールフィラメントをコアの周面に沿って周方向に近接した状態で配設していると共に、複数のスチールフィラメントのうち周方向の両端部に位置するフィラメントの間に大間隙を確保して、コアの周面の一部を大きく露出させている。このようにすることで、複合コードに圧縮曲げ入力があった際、複数のスチールフィラメント及びコアを共に座屈させることなく、これらスチールフィラメント及びコアで圧縮曲げ入力を効率良く吸収し、これにより耐コード破断性の向上化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−41881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の複合コードでは、上記大間隙を確保しながら複数のスチールフィラメントをコアの回りに撚り合わせているので、圧縮強度がコードの長手方向に沿ってばらつき易かった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、圧縮強度が長手方向に沿って均一化されていると共にコード破断性が向上したゴム体補強用コードを具備したゴム体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
(1)本発明に係るゴム体は、スチールで形成された円環状の筒体部を有するゴム体補強用コードと、ゴム材料で形成され、前記ゴム体補強用コードが埋設されたゴム本体と、を備え、前記筒体部の径方向の内側には、該筒体部の全長に亘って筒体部よりも軟質な軟材部が配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るゴム体によれば、ゴム本体に埋設されているゴム体補強用コードが、該コードの全長に亘ってスチールからなる筒体部を有しているので、長手方向に沿って圧縮強度にばらつきが生じ難く、該圧縮強度を均一化させることができる。しかも、この筒体部の内側に該筒体部よりも軟質な軟材部が配設されているので、ゴム本体に圧縮力が加わった際、該圧縮力を軟材部で吸収することができる。
上記のことから、ゴム体補強用コードのコード破断性を向上することができ、衝撃吸収性に優れ、局所的な圧縮力が加わったとしても切断され難い高品質なゴム体とすることができる。
【0008】
(2)また、上記本発明に係るゴム体において、前記筒体部が、撚り合わされることで同心円状に配設された複数のストランドを有し、前記ストランドが、撚り合わされた複数のスチールフィラメントから形成されていても良い。
【0009】
この場合には、複数のスチールフィラメントを撚り合わせてなる複数のストランドを、さらに撚り合わせて同心円状に配設することで筒体部が形成されているので、筒体部自体の剛性強化を図ることができ、ゴム体補強用コードの圧縮強度やコード強力(引張強度)を高めることができる。そのため、例えばゴム体をコンベヤベルトとし、ゴム体補強用コードをコンベヤベルトの補強用コード等に適用することが可能となる。このように、ゴム体の用途の選択性を広げることができ商品価値を高め易い。
【0010】
(3)また、上記本発明に係るゴム体において、前記軟材部が、複数の有機フィラメントが撚り合わされた有機繊維コードを備えていても良い。
【0011】
この場合には、軟材部が、複数の有機フィラメントを撚り合わせた有機繊維コードを備えているので、軟材部自身の圧縮強度をある程度確保でき、座屈されることなくゴム本体に加わった圧縮力を効果的に吸収し易い。従って、衝撃吸収性をより向上させることができると共に、さらに切断され難いゴム体とすることができる。
また、有機繊維コードによって筒体部の形状が安定化し易いので、ゴム体補強用コードの品質をより向上させた状態でゴム本体に埋設させることができ、上述した作用効果をより顕著に奏効させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、圧縮強度が長手方向に沿って均一化され、コード破断性が向上したゴム体補強用コードを具備しているので、衝撃吸収性に優れ、切断され難い高品質なゴム体とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るコンベヤベルトの一部断面を含む斜視図である。
【図2】図1に示すコンベヤベルトを構成する補強用コードの断面図である。
【図3】図2に示す補強用コードの変形例を示す図である。
【図4】図2に示す補強用コードの別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、ゴム体の一例としてコンベヤベルトを例に挙げて説明する。
【0015】
図1に示すように、コンベヤベルト1は、ゴム材料で形成された無端帯状のベルト本体(ゴム本体)2と、該ベルト本体2にベルト幅方向に複数埋設されると共にベルト周方向に延びる補強用コード(ゴム体補強用コード)3と、を備えている。
このコンベヤベルト1は、例えば図示しない駆動プーリ及び従動プーリに巻回され、ベルト周方向に沿った送り移動に伴い被搬送物を搬送するベルトである。
【0016】
ベルト本体2は、例えば硫黄加硫可能なゴム材料で形成されている。このゴム材料としては、例えば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)等を、単独で或いは混合して使用することができる。なおベルト本体2は、複数のゴム層が積層された構成であっても良い。
【0017】
補強用コード3は、ベルト本体2にベルト幅方向に等しい間隔を開けて埋設されると共に、ベルト周方向に沿ってベルト本体2の全周に亘って延びている。なお、ベルト幅方向に隣り合う補強用コード3間の間隔は、適宜調節することが可能である。
【0018】
図2に示すように、補強用コード3は、スチールで形成された円環状の筒体部10を備えている。この筒体部10は、6つのスチールストランド(ストランド)11が撚り合わされることで同心円状に配設されたスチールコードとされている。
これら6つのスチールストランド11は、それぞれ7つのスチールからなるフィラメント(スチールフィラメント)12、12Bが撚り合わされて構成されている。より具体的には、1つの芯フィラメント12Aの外側を6つの側フィラメント12Bが囲むように撚り合わされている。
【0019】
このように、本実施形態の筒体部10は、いわゆる6×7構造の円環状のスチールコードとされている。なお、上述したスチールストランド11及びフィラメント12A、12Bの撚り方は、単一方向に単純に撚り合わせても構わないし、互いに交差するように撚り合わせる複合撚りでも構わないし、その他の撚り方でも構わない。
【0020】
ところで、筒体部10の径方向の内側、即ち6つのスチールストランド11で囲まれた部分には、該筒体部10の全長に亘って軟材部13が配設されている。この軟材部13は、スチールからなる筒体部10よりも軟質とされており、例えば上記ベルト本体2の形成時に内部に浸透したゴム材料からなるものである。
【0021】
以上のように構成されたコンベヤベルト1によれば、ベルト本体2に埋設されている補強用コード3が、該コードの全長に亘ってスチールからなる筒体部10を有しているので、その長手方向に沿って圧縮強度にばらつきが生じ難く、該圧縮強度を均一化させることができる。しかも、筒体部10の内側に該筒体部10よりも軟質な軟材部13が配設されているので、ベルト本体2に圧縮力が加わった際、この圧縮力を軟材部13で吸収することができる。
【0022】
従って、補強用コード3のコード破断性を向上することができ、耐衝撃性に優れたコンベヤベルト1とすることができる。特に、被搬送物の搬送時、例えば駆動プーリや従動プーリにコンベヤベルト1が噛み込まれてしまい、該コンベヤベルト1に局所的に圧縮力が加わったとしても該圧縮力を上記軟材部13で吸収できるので切断され難い。従って、高品質なコンベヤベルト1とすることができ、被搬送物をより安定的且つ確実に搬送することができる。
【0023】
また、本実施形態では、複数のスチールフィラメント12A、12Bを撚り合わせてなる6つのスチールストランド11を、さらに撚り合わせて同心円状に配設することで筒体部10が形成されているので、筒体部10自在の剛性強化を図ることができ、補強用コード3の圧縮強度やコード極力(引張強度)を高めることができる。
そのため、補強用コード3をコンベヤベルト1に最適な補強用のコードとして利用することができ、コンベヤベルト1を効果的に補強して、ベルト強力(引張強度)等を確実なものとすることができる。
【0024】
なお、上記実施形態において、筒体部10を構成する全てのフィラメント12A、12Bに亜鉛メッキやブラスメッキ等のメッキ処理を施しても構わない。
特に、亜鉛メッキ処理を施すことで、フィラメント12A、12Bに水分等が到達してしまった場合であっても、亜鉛メッキ層をフィラメント12A、12Bよりも優先的に腐食させることができるので、フィラメント12A、12Bの腐食を遅らせることができる。従って、フィラメント12A、12Bの強度を確保することができ、補強用コード3によるコンベヤベルト1の補強をより確実なものにすることができる。
【0025】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0026】
例えば、上記実施形態では、本発明に係るゴム体をコンベヤベルト1に適用したが、この場合に限られるものではなく、例えばゴムクローラやタイヤ等に適用しても良い。いずれにしても、ゴム体補強用コード3が埋設される各種ゴム製品であれば構わない。
【0027】
また、上記実施形態では、筒体部10をいわゆる6×7構造のスチールコードとしたが、この場合に限定されるものではなく、例えば図3に示すように、いわゆる6×19構造のスチールコードとしても構わない。
【0028】
この場合の補強用コード(ゴム体補強用コード)4の筒体部20は、19のスチールからなるフィラメント(スチールフィラメント)22A、22B、22Cが撚り合わされて形成された6つのスチールストランド(ストランド)21で構成されている。
具体的には、各スチールストランド21は、1つの芯フィラメント22Aの外側を6つの中間フィラメント22Bが囲み、さらにこれら6つの中間フィラメント22Bの外側を12の側フィラメント22Cが囲むように撚り合わされている。
この場合であっても、コンベヤベルト1に好適な補強用コード4として利用することができる。
【0029】
また、上記実施形態では、筒体部10(20)の内側に浸透したベルト本体2のゴム材料を軟材部13として利用したが、該軟材部13はこの場合に限定されるものではなく、スチールの筒体部10(20)よりも軟質な材料で形成されるのであれば特に制限されるものではない。
【0030】
例えば、図4に示すように、軟材部30が、複数の有機材料からなるフィラメント(有機フィラメント)32A、32B、32Cが撚り合わされた有機繊維コード31をさらに備えていても構わない。図示の例では、芯フィラメント32Aの外側を中間フィラメント32Bが囲み、さらにこれら中間フィラメント32Bの外側を側フィラメント32Cが囲むように撚り合わされた有機繊維コード31とされている。
なお、上記フィラメント32A、32B、32Cとしては、例えばナイロン、ポリエステルやアラミド等が挙げられる。
【0031】
このように補強用コード(ゴム体補強用コード)5を構成した場合には、軟材部30が有機繊維コード31を備えているので、該軟材部30自身の圧縮強度をある程度確保することができ、座屈されることなくベルト本体2に加わった圧縮力を効果的に吸収し易い。従って、衝撃吸収性をより向上させることができると共に、さらに切断され難いコンベヤベルト1とすることができる。また、有機繊維コード31によって筒体部10の形状が安定化し易いので、該筒体部10を構成する6つのスチールストランド11を安定且つ正確に撚り合わせることができ、補強用コード5の品質をより向上させた状態でベルト本体2内に埋設させることができる。
【符号の説明】
【0032】
1…コンベヤベルト(ゴム体)
2…ベルト本体(ゴム本体)
3、4、5…補強用コード(ゴム体補強用コード)
10、20…筒体部
11…スチールストランド(ストランド)
12A、12B、22A、22B、22C…フィラメント(スチールフィラメント)
13、30…軟材部
31…有機繊維コード
32A、32B、32C…フィラメント(有機フィラメント)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチールで形成された円環状の筒体部を有するゴム体補強用コードと、
ゴム材料で形成され、前記ゴム体補強用コードが埋設されたゴム本体と、を備え、
前記筒体部の径方向の内側には、該筒体部の全長に亘って筒体部よりも軟質な軟材部が配設されていることを特徴とするゴム体。
【請求項2】
請求項1に記載のゴム体において、
前記筒体部は、
撚り合わされることで同心円状に配設された複数のストランドを有し、
前記ストランドは、撚り合わされた複数のスチールフィラメントから形成されていることを特徴とするゴム体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴム体において、
前記軟材部は、複数の有機フィラメントが撚り合わされた有機繊維コードを備えていることを特徴とするゴム体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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