説明

ゴム変性共重合樹脂から成形されたシート、包装用成形体

【課題】特定のゴム粒子径を持つ透明なゴム変性共重合樹脂を用いて成形することにより、透明性,強度,剛性に優れたシート並びに包装用成形体を提供する。
【解決手段】ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、及び必要に応じてこれら単量体と共重合可能なその他の単量体を共重合して得られるゴム変性共重合樹脂であって、樹脂中に分散するゴム粒子の体積平均粒子径(dv)が0.4〜1.2μmであり、体積粒子径が1.5μm以上の粒子数が全体の15%未満、且つ、ゴム状重合体がゴム変性共重合樹脂中1〜10質量%含むことを特徴とするゴム変性共重合樹脂から成形されたシート並びにその成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート成形後の成形体の透明性が良好で、実用強度に優れたゴム変性共重合樹脂から成形されたシート並びに包装用成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体を共重合して得られる透明なゴム変性共重合樹脂については、透明性と耐衝撃性のバランス、更にはスチレン系樹脂の持つ優れた加工性から、射出成形分野や押出成形分野と多岐にわたる使用がなされている(例えば、特許文献1)。特に押出用途分野では、その優れた透明性と加工性から食品包装材や電子包装材として広く使われ、シート化した当該樹脂を熱成形することで成形体が得られ、透明感、強度に優れた容器としての利用がなされている。これらの包装用成形体は透明感/強度/剛性のバランスに優れることを特徴としている。しかしながら、これらの成形体は生産性の観点からシート加工後に熱成形して得られることが多いことから、シート加工段階で表面を鏡面化しても、その後の熱成形で樹脂中に存在するゴム状重合体の影響により表面が曇化して写像性が低下するという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開平11−60653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、熱成形しても表面の写像性の低下が少なく、透明性、剛性、実用強度に優れたシートと、それを成形加工して得られた包装用成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる課題に艦み、シート並びに成形体としての実用強度,透明性(写像性)に優れたバランスの良い、透明なシート並びに成形体を得る方法について鋭意検討した結果、特定のゴム粒子径を持つ透明なゴム変性共重合樹脂を用いることにより、透明性,強度,剛性に優れたシート並びに包装用成形体が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は1)ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、及び必要に応じてこれら単量体と共重合可能なその他の単量体を共重合して得られるゴム変性共重合樹脂を成形したシートであり、ゴム変性共重合樹脂中に分散するゴム粒子の体積平均粒子径(dv)が0.4〜1.2μm、体積粒子径が1.5μm以上の粒子数が全体の15%未満、且つ、ゴム状重合体がゴム変性共重合樹脂中1〜10質量%含むことを特徴とするシートに関する。
【0007】
2)また、ゴム状重合体が、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンブロックゴム、部分水添ポリブタジエン、部分水添スチレン−ブタジエンゴム、部分水添スチレン−ブタジエンブロックゴムから選ばれる1)のシート、3)ゴム状重合体が、スチレン含量32〜45質量部のスチレン−ブタジエンゴムあるいはスチレン−ブタジエンブロックゴムである1)1または2)のシート、4)ゴム状重合体中に、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−O−クレゾールを、ゴム状重合体100質量%に対し、0.02〜0.3質量%添加する1)〜3)のいずれかのシート。5)スチレン系単量体1〜99質量部、(メタ)アクリル酸エステル系単量体99〜1質量部、及び必要に応じて用いるこれら単量体と共重合可能なその他の単量体0〜10質量部(但し、単量体の合計を100質量部とする)を、ゴム状重合体の存在下に重合して得られる1)〜4)のいずれかのシート、6)分子量調整剤をスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び必要に応じて用いるこれら単量体と共重合可能なその他の単量体の合計100質量部に対し、0.005〜5質量部添加する1)〜5)のいずれかのシート、7)1)〜6)のいずれかのシートを熱成形してなる成形体、8)7)のシートを真空成形してなる成形体、9)食品包装用に用いることを特徴とした7)または8)の包装用成形体、10)電子包装材に用いる7)または8)の包装用成形体に関する。
【発明の効果】
【0008】
透明なゴム変性共重合樹脂から成形された本発明のシートは透明性、剛性、強度に優れ、またそのシートを熱成型してなる成形体は、透明性、強度および写像性のバランスに優れたものとなり、包装用成形体の用途に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。
ゴム変性共重合樹脂は、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを共重合されるが、必要に応じてスチレン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体と共重合可能な、その他の単量体を使用しても良い。
【0010】
スチレン系単量体は、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等をあげることができるが、好ましくはスチレンである。これらスチレン系単量体は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0011】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体とは、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−メチルヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート等があげられるが、好ましくはメチルメタクリレートあるいはn−ブチルアクリレートである。これらの(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、それぞれ単独で用いてもよいが、2種類以上を併用してもよい。
【0012】
スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体と共重合可能なその他の単量体としては、例えばアクリロニトリル、n−ブチルアクリレート、メタクリル酸、無水マレイン酸等があげられる。
【0013】
上記単量体の割合は、好ましくは、スチレン系単量体:(メタ)アクリル酸エステル系単量体:その他単量体=1〜99質量部:99〜1質量部:0〜10質量部、さらに好ましくは5〜95質量部:95〜5質量部:0〜5質量部である。但しスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及びその他単量体の合計を100質量部とする。
【0014】
ゴム状重合体は、例えばポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンブロックゴム、部分水添ポリブタジエン、部分水添スチレン−ブタジエンゴム、部分水添スチレン−ブタジエンブロックゴム等があげられ、それらを一種あるいは2種以上用いることができる。好ましくはスチレン含量が32〜45質量部のスチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンブロックゴムを使用することができる。
【0015】
ゴム状重合体の割合は、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、その他単量体およびゴム状重合体の合計100質量部に対し、好ましくは1〜10質量部、さらに好ましくは2〜7質量部、特に好ましくは3.5〜7質量部である。ゴム状重合体が該範囲未満の場合は、成形体の剛性は高いものの耐衝撃性に劣りやすくなり、当該範囲を超えると成形体の剛性が低下する傾向があり包装用成形体として好ましくないことがある。
【0016】
本発明では必要に応じてゴム状重合体に各種添加剤を含有させることが可能である。一例としては熱安定性を向上させる目的で、ゴム状重合体中に2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−O−クレゾールを含有させることが望ましい。その含有量は、ゴム状重合体100質量%に対し、0.02〜0.3質量%、好ましくは0.06〜0.15質量%、さらに好ましくは0.08〜0.12質量%である。該範囲外の場合は、重合時に反応を阻害させたり、トルエンによる膨潤指数に影響し、実用強度を低下させる場合がある。
【0017】
ゴム状重合体は、例えばスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及びその他単量体に溶解した後、重合に使用することができる。
【0018】
共重合方法は例えば、溶液重合、塊状重合、懸濁重合等公知の方法が採用でき、かつ回分式重合法、連続式重合法のいずれの方式であっても差し支えないが、溶液又は塊状で重合した後、脱揮予熱器・脱揮槽で高温下にさらされる塊状重合又は溶液重合の連続式重合法には特に高い効果が得られ好ましい。
【0019】
重合開始剤として、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等の公知のアゾ化合物や、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、エチル−3,3−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブチレート等の公知の有機過酸化物を用いることができるが、1時間半減期温度が90〜130℃である有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物の添加量は、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及びその他単量体の合計100質量部に対し、0.05〜0.5質量部、さらに好ましくは0.08〜0.1質量部であることが好ましい。0.05質量部以下であると本発明の効果が低く、0.5質量部以上使用すると、重合速度が速くなりすぎて制御が困難となる場合がある。これらの有機過酸化物は、それぞれ単独で用いてもよいが、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
重合時、4−メチル−2,4−ジフェニルペンテン−1、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等の公知の分子量調整剤を少なくとも一種以上添加することが好ましい。
分子量調整剤の添加量はスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及びその他単量体の合計100質量部に対し、好ましくは0.005〜5質量部、さらに好ましくは0.01〜1質量部である。該範囲外の場合は目的を達しない場合がある。
【0021】
酸化防止剤として、例えばオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート、1,3,5−トリス(3,5−ジーテrt−ブチルー4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジンー2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジーテrt−ブチルー4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジンー2−イルアミノ)フェノール等の公知の酸化防止剤を用いることができるが、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
【0022】
酸化防止剤の添加量はスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及びその他単量体の合計100質量部に対し、好ましくは0.05〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部である。重合時ヒンダードフェノール系酸化防止剤を添加しない場合や、ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤を用いた場合、さらにヒンダードフェノール系酸化防止剤を1質量部を越えて添加した場合は、樹脂の黄色味が増す傾向となり好ましくない。
【0023】
重合後、未反応の単量体や溶剤等の除去を目的に2基以上の脱揮槽または/および押出機等公知の設備を用い、脱揮を実施することが望ましい。このとき、1基目の脱揮槽では、好ましくは、樹脂温度が150〜200℃、圧力が100kPa以下、さらに好ましくは、樹脂温度が160〜190℃、圧力が90kPa以下で脱揮することが望ましい。2基目以降の脱揮槽では、好ましくは、樹脂温度が220〜260℃、圧力が7kPa以下、さらに好ましくは、樹脂温度が240〜250℃、圧力が2kPa以下で脱揮する。該範囲外の場合は樹脂中の残存揮発分残量が多く、透明性と耐衝撃性のバランスが劣る場合がある。
【0024】
ゴム変性共重合樹脂中にはゴム粒子が分散してなる。ゴム粒子の体積平均粒子径(dv)は、0.4〜1.2μm、好ましくは0.4〜1.1μm、さらに好ましくは0.5〜1.0μmであり、且つ、体積粒子径が1.5μm以上の粒子数が全体の15%未満である。該範囲外の場合は透明性を重視する成形体において透明性と耐衝撃性のバランスが劣る場合がある。特に、1.5μm以上の大粒子はシート成形により得られる成形体で表面の外観を悪化(写像性を低下)させる場合があり、体積粒子径が1.5μm以上の粒子数が全体の15%未満であることが望ましく、好ましくは0.1〜14%、特に好ましくは、3〜13%である。15%以上であると成形体の強度は得られるも成形体として写像性に著しく劣る場合があり成形体として望ましくない。
【0025】
本発明の体積平均粒子径(dv)は、樹脂あるいは重合液をジメチルホルムアミドに溶解し、超音波溶解槽で30分ほど分散させ、これをジメチルホルムアミドで満たしておいたベックマン・コールター(株)社製レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置(LS−230)中に滴下し、偏光散乱強度差計測(PIDS理論)で測定した粒子径(体積球相当径=(6v/π)1/3)を求め、次式数1により得られる平均粒子径として求めた。また、1.5um以上の粒子数は測定によつて得られた粒子径分布を累積頻度に換算し算出した。
【0026】
【数1】

ゴム粒子はゴム変性共重合樹脂を重合する際、重合の進行に伴い形成される。体積平均粒子径(dv)の制御は例えば、重合時の撹拌数、重合開始剤や分子量調整剤の添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等で実施できる。
【0027】
ゴム変性共重合樹脂の重量平均分子量は好ましくは40000〜500000、さらに好ましくは60000〜200000である。重量平均分子量(Mw)が該範囲外の場合は成形性や透明性と衝撃強度のバランスが悪いものとなる場合がある。重量平均分子量(Mw)は重合時に使用する開始剤や連鎖移動剤、重合温度条件等で調整することができる。
なお、ゴム変性共重合樹脂の重量平均分子量(Mw)はGPCにて測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)であり、下記記載の測定条件で測定した。
装置名:GPC−8020(東ソー社製)
カラム:KF404−HQ(Shodex社製) 4本
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラヒドロフラン
濃度:0.3質量%
検量線:標準ポリスチレン(PS)(PL社製)を用いて作製し、重量平均分子量はPS換算値で表した。
【0028】
“熱成形により得られる成形体”とは、Tダイ法、キャスト法、カレンダー法等の各種方法で作成されたシートを熱盤成形,真空成形,真空圧空成形,プラグアシスト真空成形等のシートを再加熱して成形する各種熱成形方法によって得られる成形体を指す。このような成形体の製造方法は透明樹脂、不透明樹脂に限らず薄肉の包装容器製造方法として広く用いられている方法である。
【0029】
成形体の透明性は成形体を容器として用いた際の内容物の見え方(クッキリ感)を指したものであり、写像性として判断が可能である。尚、写像性の評価は、シート成形により得られた成形体を切り出し、光を透過させた際の透過光を用い、以下の式により写像性値(C%)として求められ、目視のクッキリ感と対応が得られる。
C=(M−m)/(M+m)×100
M:光学櫛明部の透過光最大値
m:光学櫛暗部の透過光最小値
【0030】
本発明の共重合樹脂には、必要に応じて耐候剤、滑剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、鉱油、難燃剤等の添加剤を添加することができ、製造時任意の段階で配合することができる。
【実施例】
【0031】
次に実施例をもって本発明をさら説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
(ゴム状重合体A)
ゴム状重合体Aは、US3、094、512をはじめとするリビングアニオン重合によるスチレン−ブタジエン系ランダム共重合体ゴムの製造方法の条件が大略利用される。具体的な実施方法は、内容積1000Lのジャケット・コイル・攪拌機付きステンレス製重合槽を、水分含量10ppm以下に脱水したシクロヘキサンで洗浄し窒素置換後、窒素ガス雰囲気下において、水分含量10ppm以下に脱水しテトラヒドロフラン152ppmを含むシクロヘキサン540kgを重合槽に仕込み、内温80℃に昇温後、n−ブチルリチウム10wt%のシクロヘキサン溶液を0.8kg添加した。次に、内温80℃一定の条件下で、水分含量10ppm以下に脱水したスチレンは6.25kg/hrの速度で、モレキュラーシーブを通過させて脱水したブタジエンは35kg/hrの速度で同時に4時間かけて添加し重合した。その後、水分含量10ppm以下に脱水したスチレンを80℃で65kg添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で10分間重合し、仕込んだスチレンを全て重合させた。その後、重合溶液を次の反応槽へ移送し、水を重合体100質量部に対して0.08質量部加えて重合を停止した後、次の反応槽に移行する間に炭酸ガスを加え中和した。
次に、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−O−クレゾール(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製IRGNOX1520L)とオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製IRGNOX1076)を仕込んだモノマー重量の合計100質量部に対し、それぞれ0.08質量部と0.24質量部添加してからスチームストリッピングにより溶媒を除去し、100℃の熱ロールにて乾燥してスチレン−ブタジエン系のゴム状重合体Aを得た。
【0032】
(ゴム変性共重合樹脂 T−1)
容積約5Lの完全混合型攪拌槽である第一反応器と容積約20Lの第二反応器と容積約40Lの塔式プラグフロー型反応器、予熱器を付した脱揮槽を2基直列に接続して構成した。参考例1で得たゴム状重合体A7質量部を、スチレン44質量部、メチルメタアクリレート(以下MMA)31質量部、n−ブチルアクリレート(以下n−BA)6質量部、エチルベンゼン12質量部で構成される混合溶液に溶解し、さらに1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン(日本油脂社製パーヘキサC、1時間半減期温度111.1℃)0.02質量部、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製のIRGANOX1076)を0.2質量部を混合し原料溶液とした。この原料溶液を7kg/hrの速度で温度110℃に制御した第一反応器に導入した。第一反応器より反応液を連続的に抜き出し、この反応液にn−ドデシルメルカプタン(花王社製チオカルコール20)を3.0g/hrの速度で加えた後、温度130℃に制御した第二反応器に導入した。なお、第二反応器の撹拌数は100rpmで実施した。次いで第二反応器より反応液を連続的に抜き出し、この反応液にn−ドデシルメルカプタンを3.0g/hrの速度で加えた後、流れの方向に向かって温度130℃から150℃の勾配がつくように調整した塔式プラグフロー型反応器に導入した。この反応液を予熱器で加温しながら、温度175℃で圧力70kPaに制御した1基目の脱揮槽に導入し、さらに、温度240℃で圧力0.7kPaに制御した脱揮槽に導入し、未反応単量体等の揮発分を除去した。この樹脂液をギアポンプで抜き出し、ストランド状に押出し、水冷後切断することによりペレット形状の樹脂T−1を得た。表1に物性評価結果を示した。
【0033】
(ゴム変性共重合樹脂 T−2 〜 T−5)
第2反応器の攪拌数を変更した以外は、T−1と同様に行いゴム粒子径の異なるゴム変性共重合樹脂T−2〜T−5を得た。即ちT−1より大きなゴム粒子径を得るときには、T−1製造時の攪拌数より低回転で行い(T−3,T−5)、小さなゴム粒子径を得るときには、T−1製造時の攪拌数より高回転で行った(T−4)。表1に物性評価結果を示した。
【0034】
(ゴム変性共重合樹脂 T−6)
配合量を、ゴム状重合体A11質量部、スチレン41.8質量部、MMA29.5質量部、n−BA5.7質量部と変更した以外はT−1と同様に行い、ゴム粒子径がT−1と同等となるように第2反応器の攪拌数を変更しゴム変性共重合樹脂T−6を得た。表1に物性評価結果を示した。
【0035】
【表1】

【0036】
実施例1〜5 比較例1〜6
表2に示す配合比で材料をハンドブレンドし、0.3mm厚のシートを作成。その後、シートサンプルを使って真空成形(プラグなし)を行い、図1に示す形状の成形体を得た。尚、得られた成形品には、表1に示す項目について特性の評価を行った。また、ブレンドして用いる材料については別途射出成形にて2mmtの成形品を作成し透明性の確認を実施した。尚、透明樹脂のブレンドに使用した下記の樹脂はゴム変性共重合体(T−1〜T−6)と同じ屈折率(Nd:1.55)を持った以下のMMA−Stの共重合樹脂(MS樹脂)を合わせて使用した。
TX−800(デンカTXポリマー:電気化学工業株式会社製):MS樹脂
【0037】
【表2】

【0038】
本発明のゴム変性共重合樹脂から成形されたシート並びに成形体に係わる実施例は、何れも、透明性,強度および写像性のバランスに優れた包装用成形体が確認され、本発明の条件に合わない比較例では、いずれかの物性(特性)において劣るものであった。
【0039】
なお、評価は下記の方法によった。
(1)ゴム粒子の体積平均粒子径(dv)は前掲した方法で測定した。
(2)重量平均分子量(Mw)は前掲した方法で測定した。
(3)透明性
東芝機械(株)社製射出成形機(IS−50EPN)を用いて、金型温度60℃、シリンダー温度230℃で厚さ2mmのプレートを成形した。この成形品を用い、透明性の尺度としてJIS K7105に準拠し、全光線透過率および曇価を測定した(単位:%)。なお、測定機は、日本電色工業社製HAZEメーター(NDH−1001DP型)を用いた。全光線透過率が85%以上、曇価が4%以下を合格とした。
(4)MFR
JIS K6874に基づき評価を行った(200℃/5kg荷重)。
(5)引張弾性率
JIS K7113に従い引張試験を実施した(試験片形状;JIS−2号ダンベル、チャック間距離50mm、引っ張り速度:5mm/min)。
(6)シート押出
田辺プラスチック機械株式会社製 押出成形機(V−40/800型:フルフライトスクリュー)を用いて、ロール温度70℃、シリンダー温度230℃で厚さ0.3mmのシートを作成した。
(7)シートインパクト
シート押出で得られた0.3mm厚のシートサンプルを用いて評価した。
先端形状(R10)の衝撃圧子を使用した。 (単位:N/mm)。
(8)成形体作成
図1に示す容器を真空成形(プラグなし)にて作成した。
余熱温度:120℃
(9)写像性評価
上記(8)にて作成した成形品の天面部を切り出し、写像性測定器(スガ試験機製)にて天面中央部の写像性を評価した。光学櫛には2mmを採用。
また、成形品を新聞紙の上に載せ、下の文字の見え方を比較し文字が見づらいものを写像性×と目視判定した。
(10)折り曲げ試験
上記(8)にて作成した成形品を中央から手で180度に折り曲げ、割れの発生を観察した(n=3)。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】評価用成形体の形状である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、及び必要に応じてこれら単量体と共重合可能なその他の単量体を共重合して得られるゴム変性共重合樹脂を成形したシートであり、ゴム変性共重合樹脂中に分散するゴム粒子の体積平均粒子径(dv)が0.4〜1.2μm、体積粒子径が1.5μm以上の粒子数が全体の15%未満、且つ、ゴム状重合体がゴム変性共重合樹脂中1〜10質量%含むことを特徴とするシート。
【請求項2】
ゴム状重合体が、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンブロックゴム、部分水添ポリブタジエン、部分水添スチレン−ブタジエンゴム、部分水添スチレン−ブタジエンブロックゴムから選ばれることを特徴とする請求項1記載のシート。
【請求項3】
ゴム状重合体が、スチレン含量32〜45質量部のスチレン−ブタジエンゴムあるいはスチレン−ブタジエンブロックゴムであることを特徴とする請求項1または2記載のシート。
【請求項4】
ゴム状重合体中に、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−O−クレゾールを、ゴム状重合体100質量%に対し、0.02〜0.3質量%添加することを特徴とする請求項1〜3記載のいずれか一項記載のシート。
【請求項5】
スチレン系単量体1〜99質量部、(メタ)アクリル酸エステル系単量体99〜1質量部、及び必要に応じて用いるこれら単量体と共重合可能なその他の単量体0〜10質量部(但し、単量体の合計を100質量部とする)を、ゴム状重合体の存在下に重合して得られることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のシート。
【請求項6】
分子量調整剤をスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び必要に応じて用いるこれら単量体と共重合可能なその他の単量体の合計100質量部に対し、0.005〜5質量部添加することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のシート。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項記載のシートを熱成形してなる成形体。
【請求項8】
請求項7記載のシートを真空成形してなる成形体。
【請求項9】
食品包装用に用いることを特徴とした請求項7または8記載の包装用成形体。
【請求項10】
電子包装材に用いることを特徴とした請求項7または8記載の包装用成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2006−22257(P2006−22257A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203163(P2004−203163)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】