説明

ゴム押出機及びそのゴム滞留検出方法

【課題】スクリュー式のゴム押出機内にゴムが滞留していることを確実に検出する。
【解決手段】ホッパー14に設けられたゴム供給センサ(受光素子24)の出力からホッパー14内をゴム31が通過したことが検知されると、タイマー4のスタート、及びスクリュー12の回転数をカウントする回転数カウンタ5のカウントを開始する。タイマー4が所定時間カウントしたときに、回転数カウンタ5のカウント値が規定回転数に達していなければ、シリンダ11内にゴムが滞留していると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム押出機及びその内部にゴムが滞留していることを検出する方法に関し、詳細には、ゴムの滞留を確実に検出できるゴム押出機及びそのゴム滞留検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ構成部材等の混練ゴムシートを製造する装置として、バンバリーミキサー等により混練されたゴムをスクリュー式のゴム押出機のホッパーに投入し、投入されたゴムをスクリューの回転により前方へ移送し、ゴム押出機前端の押出ヘッドから押出し、押出されたゴムを、一対のカレンダロールを有するローラダイ装置により所定の厚み及び幅に成型するようにしたローラヘッド押出機がある(特許文献1参照)。
【0003】
このようなローラヘッド押出機において、ゴム押出機のトラブルなどによりスクリューが停止してしまい、ゴム押出機内(ホッパー及びシリンダ内)にゴムが滞留することがある。この場合、バンバリーミキサー等により混練されたゴムは熱入れされた状態であり、かつゴム自体の分解反応により自己発熱する可能性のあることから、滞留状態が長時間継続すると、滞留しているゴムの温度が上昇し、ゴム押出機内で発火するおそれがある。
【0004】
そこで、文献に記載されたものではないが、従来は、押出ヘッドから押出されたゴムの圧力(バンク圧力)の低下に基づいてゴムが滞留していることを検出し、警報を出力する等の対処を行っている。
【特許文献1】特開平9−85801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、押出ヘッドから押出されるゴムの圧力は、押出機の減速時や停止時にも低下するため、ゴムの滞留を確実に検出できないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、スクリュー式のゴム押出機内にゴムが滞留していることを確実に検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ホッパーを通してシリンダ内に供給されたゴムを、シリンダ内に配置されたスクリューを所定数回転させることで押出すようにしたゴム押出機であって、前記ホッパーにゴムが供給されたことを検出するゴム供給検出手段と、前記スクリューの回転数を検出する回転数検出手段と、前記ゴム供給検出手段がゴムを検出してから、前記所定数を前記スクリューの回転速度で除算した時間が経過したとき、前記スクリューの回転数が前記所定数に到達していない場合に、前記シリンダ内のゴムが滞留していると判断する手段とを備えたことを特徴とするゴム押出機である。
請求項2の発明は、ホッパーを通してシリンダ内に供給されたゴムを、シリンダ内に配置されたスクリューを所定数回転させることで押出すようにしたゴム押出機の前記シリンダ内のゴムの滞留を検出する方法であって、前記ホッパーにゴムが供給されたことを検出する工程と、前記ホッパーにゴムが供給されたことを検出したときに、前記スクリューの回転数の計測を開始する工程と、前記計測を開始してから、前記所定数を前記スクリューの回転速度で除算した時間が経過したとき、前記スクリューの回転数が前記所定数に到達していない場合に、前記シリンダ内のゴムが滞留していると判断する工程とからなることを特徴とするゴム押出機のゴム滞留検出方法である。
【0008】
(作用)
本発明によれば、ホッパーを通してシリンダ内に供給されたゴムを、シリンダ内に配置されたスクリューを所定数回転させることで押出すようにしたゴム押出機において、ホッパーを通してシリンダ内にゴムが供給されてから、前記所定数を前記スクリューの回転速度で除算した時間経過したとき、前記スクリューの回転数が前記所定数に到達していない場合に、前記シリンダ内にゴムが滞留していると判断する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シリンダ内にゴムが滞留していると、スクリューの回転速度が低下若しくは回転が停止していることに着目し、ホッパーを通してシリンダ内にゴムが供給されてから、所定時間経過したときのスクリューの回転数が規定値未満であることに基づいて、ゴムが滞留していることを確実に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係るローラヘッド押出機の構成を示す図である。このローラヘッド押出機は、ゴム押出機1と、ゴム押出機1の前方に配置されてローラダイ装置2と、制御装置3とを備えている。
【0011】
ゴム押出機1は、シリンダ11と、シリンダ11の内部に回転自在に支持されたスクリュー12と、シリンダ11の先端に取り付けられた押出しヘッド13と、シリンダ11の後端付近の上部に設けられたホッパー14と、スクリュー12を回転させるモータ等の回転駆動装置15とを備えている。ここで、ホッパー14から投入されたゴム31を押出しヘッド13から押出すのに必要なスクリュー12の回転数(規定回転数)は、ホッパー14が設けられているシリンダ11の部位から押出しヘッド13迄の距離とスクリュー12の螺旋のピッチとの関係で定まる。ローラダイ装置2は、互いの外周面が対向するように配置された一対のカレンダロールを備えており、図示しない回転駆動装置により、図示の矢印方向に回転可能に構成されると共に、ロール間のギャップの調整が可能に構成されている。
【0012】
また、ゴム押出機1のシリンダ11の基端側には、回転駆動装置15によりスクリュー12の回転と同期して回転されるドグ21が設けられ、ドグ21の回転軌跡と対向する位置には近接センサ22が配置されている。これにより、スクリュー12が1回転する毎にドグ21も1回転し、近接センサ22がドグ21の1回転毎の近接を検出し、制御装置3に通知するように構成されている。
【0013】
ホッパー14の内面には、互いに対向する発光素子23と受光素子24とからなるゴム供給センサを備えており、図示しないバンバリーミキサーからゴム31がホッパー14内に供給されると、発光素子23から受光素子24への光線がゴム31により遮られることで、ホッパー14にゴム31が供給されたこと(ホッパー14をゴム31が通過したこと)を検知できる。また、ホッパー14内に供給されたゴム31の量がホッパー内に堆積され、その上端の位置がゴム供給センサの位置(レベル)よりも高くなったときは、発光素子23から受光素子24への光線が継続して遮られるため、ホッパー14内に存在するゴム31の上端がゴム供給センサの位置を越えていることを検知できる。これらの検知信号は制御装置3に入力される。
【0014】
押出しヘッド13の内部には、スクリュー12の回転により前方へ移送されるゴムの圧力を検知するための圧力センサ(ロードセル等)25が配置されており、その出力信号は制御装置3に入力される。なお、圧力センサ25は、特許文献1に開示されたもののように、カレンダロール対にかかる圧力を検出するように構成してもよい。
【0015】
ローラダイ装置2の前方には、このローラダイ装置2により成型されたゴムシート33を挟むように、互いに対向する発光素子26と受光素子27とからなるゴムシートセンサが配置されている。そして、ローラダイ装置2により成型されたゴムシート33が所定の搬送路を通過していると、発光素子26から受光素子27への光線がゴムシート33により遮られることで、ゴムシート33が存在することを検知できる。受光素子27の出力信号は制御部3に入力される。
【0016】
制御装置3は、コンピュータにより構成されており、タイマー4及び回転数カウンタ5を内蔵している。また、回転駆動装置15を所定の回転速度で回転させることにより、スクリュー12を回転させる。さらに、ローラダイ装置2のカレンダロール対を回転させる回転駆動装置を所定の回転速度で回転させる。これらの回転速度は複数の異なる速度の中から任意の一つを選択することができる。また、選択した回転速度でスクリュー12を回転させているときに、圧力センサ25で検知された圧力が、スクリュー12の回転速度に対応する規定値となるように、回転駆動装置15に対し、フィードバック制御を行うことで、押出ヘッド32から押出されるゴムの圧力を一定にして、ゴムバンク32の圧力を調整し、ローラダイ装置2により成型されるゴムシート33の厚み及び幅が均一になるようにしている。
【0017】
以上のように構成されたローラヘッド押出機の動作を説明する。ホッパー14内に供給されたゴム31は、シリンダ11内の後部に到達し、回転駆動装置15の駆動により回転しているスクリュー12により前方に搬送され、押出しヘッド32の前端から押出される。押出されたゴムは、押出しヘッド32の前方に配置されたローラダイ装置2のカレンダロール対の後方側(押出しヘッド32と対向する側)にて加圧状態のバンク32を形成する。前述したように、このバンク32の圧力を適切に調整することにより、カレンダロール対により成型されるゴムシート33の厚み及び幅が均一になる。
【0018】
本実施形態に係るゴム押出機では、図2に示す手順によりシリンダ11内に供給されたゴム31の滞留を検出している。この図に示す処理は、制御装置5により一定時間毎に繰り返し実行される。
【0019】
制御装置5は、ホッパー14に設けられたゴム供給センサ(受光素子24)からホッパー14内をゴム31が通過したことを通知されると(ステップS1でYES )、タイマー4のカウントを開始させる(ステップS2)。また、同時に、近接センサ22の出力を回転数カウンタ5に供給する動作を開始させる。つまり、タイマー4のカウントの開始と同時に、スクリュー12を回転させる回転駆動手段15の回転数のカウントを開始させる。
【0020】
次いで、タイマー4が所定時間カウントしたときに、回転数カウンタ5のカウント値が規定回転数に達しているか否か判定する(ステップS3)。ここで、規定回転数とはホッパー14からシリンダ11内に投入されたゴム31を押出ヘッド32から押出すのに必要なスクリュー12の回転数であり、所定時間とは、その規定回転数をスクリュー12の回転速度で除算した値である。ここで、シリンダ11内にゴムが滞留していないときは、前記所定時間経過したときの回転数が規定回転数に達するのに対し、シリンダ11内にゴムが滞留していると、スクリュー12の回転速度が低下若しくは回転が停止しているため、前記所定時間経過したときの回転数が規定回転数に達していない。従って、前記所定時間経過したときの回転数が規定回転数に達しているか否かに基づいて、シリンダ11内にゴムが滞留しているか否かの判別ができる。
【0021】
そして、ステップ4にて、規定回転数に達していないと判定した場合は、さらに一定時間経過後の最終判断時に、カウンタ5のカウント値が規定回転数に達しているか否か判定する(ステップS4)。ここで、最終判断時は予め実験により求めたゴム滞留による発火の可能性のある時間以前の所定の時点である。そして、ステップ4にて、規定回転数に達していないと判定した場合は、シリンダ11内にゴムが滞留していると判断し(ステップS5)、回転駆動手段15に供給する電力を増強することで駆動力を高め、スクリュー12を強制的に規定回転数回転させ(ステップS6)、警報を発生させて(ステップS7)処理を終了する。また、機械的故障で回転できない場合も警報を発生させる。
【0022】
ステップS3又はS4にて、規定回転数に達していると判定した場合は、警報を解除し(ステップS8)、処理を終了する。
【0023】
このように、本発明の実施形態によれば、ホッパー14にゴム31が供給されてから所定時間(規定回転数をスクリュー12の回転速度で除算した値)経過したときに、ホッパー14にゴム31が供給されてからスクリュー12が規定回転数回転したか否かを判定し、その判定結果に基づいて、シリンダ11内にゴムが滞留しているか否かを判断するので、ゴム押出機1の減速や停止をゴムの滞留と誤ることなく、ゴムの滞留を確実に検出できる。
【0024】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上述したホッパー14にゴム31が供給されてからスクリュー12が規定回転数回転したか否かの判定結果と、圧力センサ25、ゴムシートセンサ26,27の何れかの感知出力とを併用し、ゴムの滞留をより確実に検出するように構成してもよい。また、ホッパー供給センサ23,24、圧力センサ25、ゴムシートセンサ26,27の何れかがゴム或いはゴムシートの存在を検出している状態で、ゴム押出機3のスクリュー12の回転が停止している場合に、シリンダ11内にゴムが滞留していると判断するように構成することもできる。これは、ゴムが塊からシート状になって排出される連続体であることから、何れかのセンサが感知信号を出力していることが、押出機内にゴムが存在していることの条件になることに着目したものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係るローラヘッド押出機の構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るゴム押出機がゴムの滞留を検出する手順のフローチャートである。
【符号の説明】
【0026】
1・・・ゴム押出機、3・・・制御装置、3・・・タイマー、5・・・カウンタ、11・・・シリンダ、12・・・スクリュー、21・・・ドグ、22・・・近接センサ、23・・・発光素子、24・・・受光素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパーを通してシリンダ内に供給されたゴムを、シリンダ内に配置されたスクリューを所定数回転させることで押出すようにしたゴム押出機であって、
前記ホッパーにゴムが供給されたことを検出するゴム供給検出手段と、前記スクリューの回転数を検出する回転数検出手段と、前記ゴム供給検出手段がゴムを検出してから、前記所定数を前記スクリューの回転速度で除算した時間が経過したとき、前記スクリューの回転数が前記所定数に到達していない場合に、前記シリンダ内のゴムが滞留していると判断する手段とを備えたことを特徴とするゴム押出機。
【請求項2】
ホッパーを通してシリンダ内に供給されたゴムを、シリンダ内に配置されたスクリューを所定数回転させることで押出すようにしたゴム押出機の前記シリンダ内のゴムの滞留を検出する方法であって、
前記ホッパーにゴムが供給されたことを検出する工程と、前記ホッパーにゴムが供給されたことを検出したときに、前記スクリューの回転数の計測を開始する工程と、前記計測を開始してから、前記所定数を前記スクリューの回転速度で除算した時間が経過したとき、前記スクリューの回転数が前記所定数に到達していない場合に、前記シリンダ内のゴムが滞留していると判断する工程とからなることを特徴とするゴム押出機のゴム滞留検出方法。

【図1】
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【図2】
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