説明

ゴム材料成形体の製造方法

【課題】輸送効率が良好で、使用時にハンドリングし易く、設備装置への負荷が小さいゴム材料成形体の製造方法を提供すること。
【解決手段】ゴム材料をシート状に成形する工程と、ゴム材料シートを裁断する工程と、裁断されたゴム材料シートを積層する工程と、積層されたゴム材料シートをラッピングしてゴム材料成形体を形成する工程とを含むゴム材料成形体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム製品製造業に用いられるゴム材料成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム製品製造分野においては、種々のゴム材料が主要な原材料として用いられている。これらのゴム材料として、天然ゴム又は合成ゴムの原料ゴム以外に原料ゴムと充填材等とを混合したマスターバッチ等のゴム組成物が用いられている。
図1は、従来の製造方法により得られたベールゴムの一例を示す概略図である。通常、天然ゴム又は合成ゴムの原料ゴムは、図1に示すようにベール成型機でプレスすることにより35kg程度のベールゴム1として包装され、梱包、出荷されている。
例えば、非特許文献1は、天然ゴムについて、「温かいうちにプレスにかけて,約70×40×15cmくらいの大きさのブロック(合成ゴムのベールとほぼ同じ大きさ)にし,」と記載している。
【0003】
図2は、従来の製造方法により得られた折り畳みシートゴムの一例を示す概略図である。特に、マスターバッチ等は、シート状の長尺ゴムシート21に成形され、折り畳まれて、図2に示すような折り畳みシート2に加工され、例えば、3カ所に紐状体22(紐状体22a、22b及び22c)により固定した後、梱包、出荷されている。
【0004】
上記のベールゴム1では、輸送中に変形し、使用時にベール破壊等の問題を生じる。さらに、使用時(混練機への投入時)に負荷が大きく、エネルギーを消費するばかりでなく、設備装置を破損することもある。特に、マスターバッチの場合には上記の負荷を減らすため見掛け比重を下げているので輸送効率が低下する。
また、折り畳みシートゴム2では、輸送効率が低下すると共に、使用時の設備によっては、シート幅が適合しない等の問題を生じる。
そこで、輸送効率が良好で、使用時にハンドリングし易く、設備装置への負荷が小さいゴム材料成形体の製造方法が要望されていた。
【0005】
【非特許文献1】ゴム技術の基礎、第51〜77頁、編集・発行 社団法人 日本ゴム協会、 昭和58年4月1日初版発行、平成7年5月10日第6刷発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下で、輸送効率が良好で、使用時にハンドリングし易く、設備装置への負荷が小さいゴム材料成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ゴム材料シートを裁断し積層することにより上記課題を達成し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1]ゴム材料をシート状に成形する工程と、ゴム材料シートを裁断する工程と、裁断されたゴム材料シートを積層する工程と、積層されたゴム材料シートをラッピングしてゴム材料成形体を形成する工程とを含むゴム材料成形体の製造方法、
[2]前記積層されたゴム材料シートをラッピングする工程が、前記積層されたゴム材料シートを樹脂フィルム長尺体で複数個所固定するものである上記[1]に記載のゴム材料成形体の製造方法、
[3]前記樹脂フィルム長尺体が、ポリエチレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体又はポリブタジエンからなるものである上記[2]に記載のゴム材料成形体の製造方法、
[4]前記樹脂フィルム長尺体が、幅10〜100mm、且つ厚さ10〜100μmである上記[2]又は[3]に記載のゴム材料成形体の製造方法、
[5]前記ゴム材料シートを裁断する工程の前又は後に、ゴム材料シート間に離型材料を付与する工程を含む上記[1]〜[4]のいずれかに記載のゴム材料成形体の製造方法、及び
[6]前記ゴム材料成形体の幅Wが100〜700mm、長さLが0.1W〜5W、且つ高さHが0.2W〜1Wである上記[1]〜[5]のいずれかに記載のゴム材料成形体の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、シート化及び積層により、見掛け比重を高くできるため、積載量が高くなり輸送効率が良好となる。また、保管時の変形量が小さく、形状が整うため、使用時にハンドリングし易くなる。さらに、混練機等に投入する際には、投入後直ちにシートに分離するため、混練機等への負荷が小さくなり、低エネルギー消費となると共に設備装置を破損しにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のゴム材料成形体の製造方法は、ゴム材料をシート状に成形する工程と、ゴム材料シートを所定の幅及び所定の長さに裁断する工程と、裁断されたゴム材料シートを積層する工程と、積層されたゴム材料シートをラッピングしてゴム材料成形体を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の製造方法において、ゴム材料とは、天然ゴム又は合成ゴムの原料ゴム、及び原料ゴムと充填材等とを混合したマスターバッチ、加硫性ゴム組成物等のゴム組成物を包含する。そして、本発明の製造方法は、マスターバッチ、加硫性ゴム組成物等の成形体の製造においてに特に効果的に用いられる。
【0012】
図3は、本発明の製造方法により得られたゴム材料成形体3の一例を示す概略図である。図3に示すように、ゴム材料成形体3は、裁断ゴムシート31を所定枚数積層した後、樹脂フィルム長尺体32によりラッピングされてなる。ラッピングは、例えば樹脂フィルム長尺体32により複数個所固定されることによりなされる。図3においては、樹脂フィルム長尺体a(32a)、樹脂フィルム長尺体b(32b)及び樹脂フィルム長尺体c(32c)により3個所固定されている。
【0013】
以下、本発明の製造方法を工程順に説明する。
[シート成形工程]
本発明の製造方法における第1の工程において、上記のゴム材料は、オープンロール、押出機等によりシート状に成形される。シートの厚さは、2〜100mmが好ましく、5〜30mmが特に好ましい。
[裁断工程]
シート成形工程で得られたシートは、好ましくは幅Wが100〜700mm、長さLが0.1W〜5Wとなるように裁断され、裁断ゴムシート31が得られる。
【0014】
[離型材料付与工程]
前記ゴム材料シートを裁断する工程の前又は後に、ゴム材料シート間に離型材料を付与する工程を含むことが好ましい。裁断する工程の前にシート成形工程で得られたシート間に離型材料を付与すること又は積層工程前に裁断ゴムシート31間に離型材料を付与することにより、積層作業がし易くなり、且つ使用時に裁断ゴムシート31が直ちに分離できるようになるからである。離型材料としては、炭酸カルシウム等の離型剤や薄ゲージの樹脂フィルム等が挙げられる。また、裁断時に離型材料を塗布又は貼着しても良いし、裁断前又は裁断後に離型剤等を含有するダスティング液に浸漬しても良い。
離型材料として薄ゲージの樹脂フィルム等を用いる場合は、積層工程と離型材料付与工程とを同時に行っても良い。
[積層工程]
裁断ゴムシート31は、好ましくは高さHが0.2W〜1Wとなるように積層される。
【0015】
[ラッピング工程]
所定の形状に積層された裁断ゴムシート31は、ラッピングされてゴム材料成形体3を形成する。ラッピング方法としては、積層された裁断ゴムシート31の全面を覆う完全包装でも良いが、包装材の量が多くなって費用がかかったり、混練機等の加工機に投入するとゴム物性の低下を招く恐れがある。これらの懸念点を解消するためには、裁断ゴムシート31を樹脂フィルム長尺体32で好ましくは複数個所、より好ましくは2〜10個所、さらに好ましくは2〜5個所固定することが望ましい。
ここで、樹脂フィルム長尺体32としては、ゴム材料成形体と共に、混練機等の加工機に投入できるものが好ましく、この観点からポリエチレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体又はポリブタジエンからなる樹脂フィルム長尺体が特に好ましい。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン等のいずれでも良く、ニ軸延伸フィルムが好ましく用いられる。
樹脂フィルム長尺体の形状は、ラッピング方法に応じて適宜選択すれば良いが、幅10〜100mm、且つ厚さ10〜100μmであることが好ましい。
【0016】
本発明の製造方法におけるゴム材料成形体3の形状は、上記の幅W、長さL及び高さHの範囲内で適宜変更して良い。一般のベールゴムに合わせて、幅350mm、長さ700mm及び高さ100〜300mmとすることが好ましい。また、ゴム材料成形体3の質量は、35±10kg程度が好ましい。
【実施例】
【0017】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
スチレン−ブタジエン共重合体ゴム100質量部に対して、カーボンブラック50質量配合したマスターバッチを幅350mm、厚さ10mmのシート状に成形した後、炭酸カルシウムを含有するダスティング液に浸漬し離型材料を付与した。
次に、マスターバッチのシートを長さ700mmに裁断し、裁断ゴムシートを20枚積層した後、高密度ポリエチレンからなる幅20mm、厚さ40μmのニ軸延伸フィルム長尺体で図3に示すように3個所ラッピングしてゴム材料成形体を得た。得られたゴム材料成形体の見掛け比重、寸法、質量及び30体梱包後の質量を表1に示す(Goodpack社MB5コンテナに最大量積んだ量が30体であった)。このゴム材料成形体を必要量混練機(大型バンバリー・ミキサー)に投入したところ負荷ピークは定格比80%であった。
【0018】
比較例1
実施例1と同じマスターバッチを用いて、表1に示す寸法でベールゴムを製造した。得られたベールゴムの見掛け比重、質量及び30体梱包後の質量を表1に示す(実施例1と同様にGoodpack社MB5コンテナに最大量積んだ量が30ベールであった)。このベールゴムを実施例1と同じ必要量混練機(大型バンバリー・ミキサー)に投入したところ負荷ピークは定格比150%であった。
【0019】
比較例2
実施例1と同じマスターバッチを用いて、表1に示す寸法で折り畳みシートゴムを製造した。得られた折り畳みシートゴムの梱包後の質量(Goodpack社MB5コンテナに最大量積んだ量)を表1に示す。この折り畳みシートゴムを実施例1と同じ必要量混練機(大型バンバリー・ミキサー)に投入したところ負荷ピークは定格比80%であった。
【0020】
【表1】

【0021】
実施例1のゴム材料成形体は、見掛け比重が高く輸送効率が良好であった。また、保管時の変形量が小さく、形状が整うため、使用時にハンドリングし易かった。さらに、混練機に投入後直ちにシートに分離したので、混練機等への負荷が小さかった。
これに対し、比較例1のベールゴムは見掛け比重が低く、30ベール梱包後の質量が少なく輸送効率が低下した。ベール状であるため、混練機等への負荷が大きかった。
また、比較例2の折り畳みシートゴムは、折り畳み部分が嵩張り容積が大きくなるため梱包後の質量が少なくなり輸送効率が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の製造方法で得られたゴム材料成形体は、各種ゴム製品、例えば、乗用車用、軽自動車用、軽トラック用、トラック・バス用及びダンプトラック用等のタイヤ、ベルトコンベア、ホース、ラバーダム、免震ゴム等に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の製造方法により得られたベールゴムの一例を示す概略図である。
【図2】従来の製造方法により得られた折り畳みシートゴムの一例を示す概略図である。
【図3】本発明の製造方法により得られたゴム材料成形体の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ベールゴム
2 折り畳みシートゴム
3 ゴム材料成形体
21 長尺ゴムシート
22 紐状体
22a 紐状体a
22b 紐状体b
22c 紐状体c
31 裁断ゴムシート
32 樹脂フィルム長尺体
32a 樹脂フィルム長尺体a
32b 樹脂フィルム長尺体b
32c 樹脂フィルム長尺体c

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム材料をシート状に成形する工程と、ゴム材料シートを裁断する工程と、裁断されたゴム材料シートを積層する工程と、積層されたゴム材料シートをラッピングしてゴム材料成形体を形成する工程とを含むゴム材料成形体の製造方法。
【請求項2】
前記積層されたゴム材料シートをラッピングする工程が、前記積層されたゴム材料シートを樹脂フィルム長尺体で複数個所固定するものである請求項1に記載のゴム材料成形体の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂フィルム長尺体が、ポリエチレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体又はポリブタジエンからなるものである請求項2に記載のゴム材料成形体の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂フィルム長尺体が、幅10〜100mm、且つ厚さ10〜100μmである請求項2又は3に記載のゴム材料成形体の製造方法。
【請求項5】
前記ゴム材料シートを裁断する工程の前又は後に、ゴム材料シート間に離型材料を付与する工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載のゴム材料成形体の製造方法。
【請求項6】
前記ゴム材料成形体の幅Wが100〜700mm、長さLが0.1W〜5W、且つ高さHが0.2W〜1Wである請求項1〜5のいずれかに記載のゴム材料成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−172964(P2009−172964A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16630(P2008−16630)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】