説明

ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ

【課題】タイヤトレッドに使用した場合に、破壊特性や耐摩耗性等のタイヤの諸性能や工場作業性を損なうことなく、高いグリップ性能を得ることができるゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分に対して、下記一般式(I)、
MX (I)
(Mはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、鉄、銅、スズ、チタン、バナジウムまたはマンガンの金属カチオン、Xは該金属カチオンに対するカウンターアニオン)で表される化合物と、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9共重合系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂および変性されたこれら樹脂から選択される樹脂とを含有するゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関し、詳しくは、特にはタイヤトレッドに使用した場合に、優れたグリップ性能を発揮するゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の性能向上、道路の舗装化および高速道路網の発達に伴い、高運動性能を備えた空気入りタイヤの要求が強まっている。この特性が高いほど、高速においても、より正確かつ安全に走行することが可能となる。とりわけ、加速性能やブレーキ性能に代表されるグリップ性能は重要な要求特性である。
【0003】
従来より、高グリップ性能を得るために、タイヤトレッド用ゴム組成物にガラス転移温度の高いゴムである高スチレン含有率のスチレン・ブタジエン共重合体ゴムを使用する方法が知られている。しかし、この方法では、走行によるゴム温度の上昇とともにtanδ値が低下するため、タイヤ温度が上昇するとグリップ性能が低下してしまうという不都合があった。
【0004】
この不都合を解消するために、特許文献1には1,3‐ブタジエン、スチレンまたはイソプレン等のモノマーと、ジフェニル‐2‐メタクリロイロキシエチルホスフェートまたはジフェニル‐2‐アクリロイロキシエチルホスフェート等のジフェニルホスフェート基を含むメタクリレート化合物またはアクリレート化合物とを共重合して得られる共重合体ゴムを使用する技術が報告されている。
【0005】
また、その他、プロセスオイルおよびカーボンブラックを高充填した配合系を使用することにより、ゴム組成物のtanδ値を大きくする方法、ある種の樹脂を添加することによりゴム−路面間の凝着を高めてグリップ性能を向上させる方法等も知られている。
【特許文献1】特開昭59−187011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、天然ゴムに適用できないばかりではなく、製造条件によってはポリマー、例えばスチレン・ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴムの本来有すべき性質を損なうという不都合があり、プロセスオイルおよびカーボンブラックを高充填した配合系を使用する方法では、グリップ性能は向上するものの、破壊特性や耐摩耗性の著しい低下が起きるため、高充填には限界があり、要求レベルの高グリップ性能を得難いという不都合があった。
【0007】
また、ある種の樹脂を添加することによりグリップ性能を向上する方法においては、一般的にグリップ性能が高い樹脂ほど、製造工程中に存在する金属ミキサーおよび金属ロールとの密着性が高くなり、工場作業性を阻害する傾向があるため、樹脂を改良することによってグリップ向上を図る方法も難しいのが実状である。
【0008】
そこで本発明の目的は、タイヤトレッドに使用した場合に、破壊特性や耐摩耗性等のタイヤの諸性能や工場作業性を損なうことなく、高いグリップ性能を得ることができるゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、ゴム組成物として、特定の化合物と特定の樹脂とを組み合わせて配合したものを用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明のゴム組成物は、天然ゴム、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴムおよびエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)からなる群から選択される少なくとも1種のゴム成分に対して、下記一般式(I)、
MX (I)
(式中、Mはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、鉄、銅、スズ、チタン、バナジウムまたはマンガンの金属カチオン、Xは該金属カチオンに対するカウンターアニオンである)で表わされる少なくとも1種の化合物と、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9共重合系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)系樹脂および変性されたこれら樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、を含有することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の空気入りタイヤは上記本発明のゴム組成物をトレッドに使用したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゴム組成物をトレッドに使用したタイヤは、破壊特性や耐摩耗性等のタイヤの諸性能や工場作業性を損なうことなく、従来のものと比較してグリップ性能を大幅に改良することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を好適実施形態に基づき詳細に説明する。本発明のゴム組成物は、上記樹脂および上記一般式(I)で表わされる化合物と、ゴム成分とを組み合わせて配合してなるものであるが、ゴム成分としては、天然ゴムおよび合成ゴムをそれぞれ単独または併用して使用してもよく、合成ゴムとしては、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、およびEPDMゴムが挙げられる。
【0014】
上記一般式(I)で表わされる化合物は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。式中、Mはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、鉄、銅、スズ、チタン、バナジウムまたはマンガンの金属カチオンであり、好ましくは、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、鉄、銅またはチタンである。また、式中、XはMに対するカウンターアニオンであり、特に制限されるものではないが、酸素原子、硫黄原子、水酸基、ハロゲン基、炭酸、硫酸またはステアリン酸を好適に挙げることができる。
【0015】
上記一般式(I)で表わされる化合物の具体例としては、塩化リチウム、安息香酸リチウム、蟻酸リチウム、クエン酸リチウム、酢酸リチウム、臭化リチウム、シュウ酸リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウム、水素化リチウム、ステアリン酸リチウム、炭酸リチウム、ドデシル硫酸リチウム、乳酸リチウム、ピルビン酸リチウム、フッ化リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、4ホウ酸リチウム、硫酸リチウム、リン酸リチウム、ヨウ化リチウム、亜塩素酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、アジ化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩素酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、蟻酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、琥珀酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、臭化ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硫酸カリウム、安息香酸カリウム、塩化カリウム、塩素酸カリウム、オレイン酸カリウム、蟻酸カリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸カリウム、ケイ酸カリウム、琥珀酸カリウム、酢酸カリウム、臭化カリウム、シュウ酸カリウム、臭素酸カリウム、硝酸カリウム、水酸化カリウム、水素化カリウム、ステアリン酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、乳酸カリウム、フッ化カリウム、ホウ酸カリウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、ヨウ化カリウム、塩化ルビジウム、硝酸ルビジウム、水酸化ルビジウム、炭酸ルビジウム、ヨウ化ルビジウム、アジ化セシウム、塩化セシウム、硝酸セシウム、水酸化セシウム、炭酸セシウム、フッ化セシウム、ヨウ化セシウム、硝酸セシウム、酸化ベリリウム、塩化ベリリウム、硫酸ベリリウム、硝酸ベリリウム、硫化ベリリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸水素マグネシウム、硫酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、安息香酸マグネシウム、クロム酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、硝酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、硫化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、安息香酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、クエン酸カルシウム、蟻酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、ホスフィン酸カルシウム、乳酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、過酸化カルシウム、プロピオン酸カルシウム、珪酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、チオシアン酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、硫化カルシウム、酢酸ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、蟻酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、酸化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、シュウ酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、硫化ストロンチウム、酢酸バリウム、アルミン酸バリウム、ホウ酸バリウム、フッ化バリウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、炭酸バリウム、塩素酸バリウム、クロム酸バリウム、リン酸バリウム、リン酸水素バリウム、水酸化バリウム、乳酸バリウム、モリブデン酸バリウム、硝酸バリウム、シュウ酸バリウム、過塩素酸バリウム、過酸化バリウム、ステアリン酸バリウム、硫酸バリウム、亜硫酸バリウム、チオシアン酸バリウム、チオ硫酸バリウム、チタン酸バリウム、硫化バリウム、酸化ラジウム、水酸化ラジウム、フッ化ラジウム、塩化ラジウム、臭化ラジウム、ヨウ化ラジウム、炭酸ラジウム、硫酸ラジウム、硫化ラジウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、酸化鉄、水酸化鉄、フッ化鉄、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、乳酸鉄、硝酸鉄、硫酸鉄、硫化鉄、酢酸鉄、酸化銅、水酸化銅、硫酸銅、酢酸銅、塩化銅、フッ化銅、臭化銅、ヨウ化銅、炭酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅、シュウ酸銅、リン酸銅、硝酸銅、ステアリン酸銅、酸化スズ、水酸化スズ、フッ化スズ、塩化スズ、臭化スズ、ヨウ化スズ、シュウ酸スズ、酸化チタン、塩化チタン、硫酸チタン、酸化バナジウム、硫酸バナジウム、酸化マンガン、硫酸マンガン、臭化マンガン、酢酸マンガン、安息香酸マンガン、炭酸マンガン、塩化マンガン、シュウ酸マンガン、硝酸マンガン等が挙げられる。
【0016】
本発明のゴム組成物に係る樹脂は、1種または2種以上を混合して用いてもよく、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9共重合系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)系樹脂であり、これらの樹脂は変性されていてもよい。変性の種類は特に制限されるものではなく、例えば、変性されたC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9共重合系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)系樹脂としては、水酸基、カルボニル基、カルボキシ基、エステル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、ハロゲン基、アミド基、ニトリル基、スルホン基、チオール基およびスルフィド基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を有する化合物により変性された樹脂が挙げられ、フェノール変性、マレイン酸変性およびカルボン酸変性のうち少なくとも1種により変性された樹脂を好適に使用することができる。また、変性されたフェノール樹脂としては、ロジン変性および/またはカシュー変性された樹脂を好適に使用することができる。配合する際に好ましい樹脂としては、フェノール樹脂、C5系石油樹脂、変性されたC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、変性されたC9系石油樹脂、C5/C9共重合系樹脂、変性されたC5/C9共重合系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)系樹脂および変性されたジシクロペンタジエン(DCPD)系樹脂を挙げることができる。
【0017】
フェノール樹脂は1種または2種以上を混合して用いてもよく、ノボラックタイプ、レゾールタイプの両方のフェノール樹脂を使用することができる。また、変性されたフェノール樹脂等も同様に効果がある。フェノール樹脂のモノマーとしては具体的にはフェノールの他、クレゾール等のアルキルフェノール、レゾールなどが挙げられる。これらのモノマーと共重合させるものとして具体的には、ホルムアルデヒド、アセチレン、エチレンなどが挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。フェノール樹脂としては、炭素数2〜9であるアルキル基を有するフェノールと、他の有機化合物とを重合させた樹脂であり、該樹脂の重合度が10以下であるものを好適に用いることができる。好ましくはp−t−ブチルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂およびp−t−ブチルフェノール・アセチレン樹脂等が挙げられ、より好ましくはp−t−ブチルフェノール・アセチレン樹脂である。
【0018】
C5系石油樹脂は、ナフサの熱分解によって得られるC5留分の樹脂である。C5留分としては、例えば、オレフィン系炭化水素、ジオレフィン系炭化水素などが挙げられる。オレフィン系炭化水素としては、例えば、ペンテン、2−メチルブテン、3−メチルブテン、2−メチルブテンなどが挙げられる。C5系石油樹脂としては、市販品を好適に使用することができ、例えば、ストラクトールTS30(ストラクトール社製)、TX−500(三井化学(株)製)などが挙げられる。
【0019】
C9系石油樹脂は、ナフサの熱分解によって得られるC9留分の樹脂である。C9留分としては、例えば、ジオレフィン系炭化水素等が挙げられる。前記ジオレフィン系炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、α−メチルスチレン、1,2−ペンタジエンなどが挙げられる。C9系石油樹脂としては、市販品を好適に使用することができ、例えば、ネオポリマー(日本石油(株)製)などが挙げられる。
【0020】
本発明のゴム組成物において、上記一般式(I)で表わされる化合物の配合量は、好ましくは、ゴム成分100質量部に対して、0.01〜20質量部、より好ましくは、0.1〜10質量部である。配合量が0.01質量部未満においては、必ずしも十分に本発明の目的とする所望の効果が得られるとは限らず、一方、20質量部を超えると、目的の性能は得られるものの加硫後の諸物性に悪影響を及ぼすおそれがある。また、本発明のゴム組成物において、前記樹脂の総配合量は、前記ゴム成分100質量部に対し、好ましくは、0.1〜200質量部である。
【0021】
また、本発明のゴム組成物においては、上記一般式(I)で表わされる化合物および前記樹脂の代わりに、上記一般式(I)で表わされる化合物と、前記樹脂との反応物を配合してもよい。反応物は下記の方法により得ることができる。先ず、樹脂をトルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、ベンゼンなどの有機溶媒に溶解させた後、上記一般式(I)で表わされる化合物を添加し、数分〜数日間、撹拌する。その後、濾過を行い、濾液から溶媒を除去することにより得ることができる。また、樹脂を軟化点以上の温度まで昇温したもの、もしくは溶融状態のものに、上記一般式(I)で表わされる化合物を混合させて反応させることにより得ることもできる。なお、昇温手法としては加圧式ニーダーで樹脂を練る方法が挙げられるが、特に制限されるものではない。
【0022】
また、本発明のゴム組成物において、補強性充填剤は特に制限されるものではなく、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムまたは酸化チタンなどのうち、一種または二種以上使用することができ、カーボンブラックを好適に用いることができる。
【0023】
なお、本発明においては、上述のゴム成分、補強性充填剤、樹脂の他に、ゴム工業界で通常使用されている配合剤、例えば、軟化剤、老化防止剤、カップリング剤、加硫促進剤、加硫促進助剤および加硫剤等を必要に応じて、通常使用される配合量の範囲内で配合することができる。
【0024】
本発明のゴム組成物は、ロールなどの開放式混練機、バンバリーミキサーなどの密閉式混練機等の混練機を用いて混練することによって得られ、成形加工後に加硫を行い、各種ゴム製品に適用可能である。特にタイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部等のタイヤ用途に用いることができ、中でもタイヤトレッド用ゴムとして好適に使用される。
【実施例】
【0025】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
実施例1〜15、比較例1〜5
下記表1および2に示す割合で配合処方し、グリップ性を試験した。なお、表中の数値は質量部である。ゴム組成物のグリップ性はドライスキッドテスターを用いて乾いた路面を再現して試験した。評価結果は、比較例1を100とし、指数として表1および2に併せて示した。この値が大きいほど、グリップ性能が良好である。また、タイヤのグリップ性は、上記のゴム組成物をトレッドとして用いたタイヤサイズ:315/40R18のタイヤを作製して評価した。乗用車に上記のタイヤを4本装着してドライアスファルト路面のテストコースを走行し、グリップ性能についてテストドライバーが下記評価基準にて7段階で評価した。評価結果を表1および2に併せて示した。
評価基準
7:非常に良い、6:良い、5:やや良い、4:普通、3:やや悪い、2:悪い、1:非常に悪い
【0026】
【表1】

*1 旭化成(株)製 タフデン4350[結合スチレン含有率39%、ビニル結合量38%、ゴム成分100質量部に対し50部のアロマチックオイルで油展]
*2 SAF[N2SA:150m2/g]
*3 コレシン(BASF社製)
*4 ヒタノール1502(日立化成工業(株)製ノボラック型アルキルフェノール樹脂)
*5 日石ネオポリマーL90(新日本石油化学(株)製)
*6 日石ネオポリマーE130(新日本石油化学(株)製)
*7 関東化学(株)より購入の試薬
*8 N−1,3−ジメチル−ブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
*9 N−t−ブチル−2−ベンゾチアジル−スルフェンアミド
*10 テトラキス−2−エチルヘキシルチウラムジスルフィド
【0027】
【表2】

【0028】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴムおよびエチレン−プロピレン−ジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1種のゴム成分に対して、下記一般式(I)、
MX (I)
(式中、Mはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、鉄、銅、スズ、チタン、バナジウムまたはマンガンの金属カチオン、Xは該金属カチオンに対するカウンターアニオンである)で表わされる少なくとも1種の化合物と、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9共重合系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)系樹脂および変性されたこれら樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、を含有することを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記変性されたC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9共重合系樹脂およびジシクロペンタジエン(DCPD)系樹脂が、水酸基、カルボニル基、カルボキシ基、エステル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、ハロゲン基、アミド基、ニトリル基、スルホン基、チオール基およびスルフィド基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を有する化合物により変性された樹脂である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記変性されたC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9共重合系樹脂およびジシクロペンタジエン(DCPD)系樹脂が、フェノール変性、マレイン酸変性およびカルボン酸変性のうち少なくとも1種により変性された樹脂である請求項2記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記変性されたフェノール樹脂がロジン変性および/またはカシュー変性された樹脂である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記樹脂がフェノール樹脂である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記樹脂がC5系石油樹脂である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記樹脂がフェノール変性、マレイン酸変性およびカルボン酸変性のうち少なくとも1種により変性されたC5系石油樹脂である請求項3記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記樹脂がC9系石油樹脂である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記樹脂がフェノール変性、マレイン酸変性およびカルボン酸変性のうち少なくとも1種により変性されたC9系石油樹脂である請求項3記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記樹脂がジシクロペンタジエン(DCPD)系樹脂である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項11】
前記樹脂がフェノール変性、マレイン酸変性およびカルボン酸変性のうち少なくとも1種により変性されたジシクロペンタジエン(DCPD)系樹脂である請求項3記載のゴム組成物。
【請求項12】
前記樹脂がC5/C9共重合系樹脂である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項13】
前記樹脂がフェノール変性、マレイン酸変性およびカルボン酸変性のうち少なくとも1種により変性されたC5/C9共重合系樹脂である請求項3記載のゴム組成物。
【請求項14】
前記Xが酸素原子、硫黄原子、水酸基、ハロゲン基、炭酸、硫酸またはステアリン酸である請求項1〜13のうちいずれか一項記載のゴム組成物。
【請求項15】
前記Mがリチウムまたはナトリウムの金属カチオンである請求項1〜14のうちいずれか一項記載のゴム組成物。
【請求項16】
前記Mがマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムの金属カチオンである請求項1〜14のうちいずれか一項記載のゴム組成物。
【請求項17】
前記Mがアルミニウムである請求項1〜14のうちいずれか一項記載のゴム組成物。
【請求項18】
前記Mが鉄である請求項1〜14のうちいずれか一項記載のゴム組成物。
【請求項19】
前記Mがチタンである請求項1〜14のうちいずれか一項記載のゴム組成物。
【請求項20】
前記Mが銅である請求項1〜14のうちいずれか一項記載のゴム組成物。
【請求項21】
前記樹脂の総配合量が前記ゴム成分100質量部に対し、0.1〜200質量部である請求項1〜20のうちいずれか一項記載のゴム組成物。
【請求項22】
請求項1〜21のうちいずれか一項記載のゴム組成物において、前記一般式(I)で表わされる化合物および前記樹脂の代わりに、前記一般式(I)で表わされる化合物と、前記樹脂との反応物を配合したゴム組成物。
【請求項23】
請求項1〜22のうちいずれか一項記載のゴム組成物をトレッドに使用したことを特徴とする空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2007−217543(P2007−217543A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39033(P2006−39033)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】