説明

ゴム組成物およびホース

【課題】スコーチタイムに優れて加硫後の特性も良好であるゴム組成物を提供する。
【解決手段】クロロスルホン化ポリエチレンおよび/またはアルキル化クロロスルホン化ポリエチレンを含むゴム成分100質量部と、所定のビスシトラコンイミド化合物1〜15質量部と、架橋開始剤0.5〜10質量部と、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クロロスルホン化ポリエチレン(以下、「CSM」ともいう)またはアルキル化クロロスルホン化ポリエチレン(以下、「ACSM」ともいう)を鉛加硫したゴム組成物は、例えば、パワーステアリングホース(油圧方式のパワーステアリングの配管に使用されるホース)に用いられている。
【0003】
また、近年においては、環境意識が高まる中での脱鉛化の要請によって、CSMをビスマレイミド化合物で加硫することが行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−126877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、CSMまたはACSMの加硫剤としてビスマレイミド化合物を用いた場合、引張強さ、切断時伸び、硬さ等の加硫後の特性については鉛加硫したゴム組成物と同等であるものの、スコーチタイムが短くなってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、スコーチタイムに優れ、かつ、加硫後の特性も良好であるゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、CSMおよび/またはACSMに対して所定のビスシトラコンイミド化合物と架橋開始剤とを特定量配合することにより、スコーチタイムに優れ、かつ、加硫後の特性も良好なゴム組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(4)を提供する。
【0008】
(1)クロロスルホン化ポリエチレンおよび/またはアルキル化クロロスルホン化ポリエチレンを含むゴム成分100質量部と、下記一般式(I)で表されるビスシトラコンイミド化合物1〜15質量部と、架橋開始剤0.5〜10質量部と、を含有するゴム組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、Aは、アルキレン基、アルカリーレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基およびアルケニレン基からなる群から選ばれる2価基であり、Rは、水素原子または炭素原子1〜18個を有するアルキル基であり、複数のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0011】
(2)上記ゴム成分が、上記クロロスルホン化ポリエチレンおよび/または上記アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンを50質量%を超えて含有する、上記(1)に記載のゴム組成物。
【0012】
(3)上記ビスシトラコンイミド化合物が、下記式(II)で表されるビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンである、上記(1)または(2)に記載のゴム組成物。
【0013】
【化2】

【0014】
(4)内管と、上記内管の外周側に配置される補強層と、上記補強層の外周側に配置される外管とを備えるホースであって、上記内管および/または上記外管が、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のゴム組成物で構成されているホース。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スコーチタイムに優れ、かつ、加硫後の特性も良好なゴム組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ホースの各層を切り欠いて示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明について詳細に説明する。本発明のゴム組成物は、クロロスルホン化ポリエチレンおよび/またはアルキル化クロロスルホン化ポリエチレンを含むゴム成分100質量部と、上記一般式(I)で表されるビスシトラコンイミド化合物1〜15質量部と、架橋開始剤0.5〜10質量部と、を含有するゴム組成物である。
【0018】
<ゴム成分>
本発明のゴム組成物に含有されるゴム成分は、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)および/またはアルキル化クロロスルホン化ポリエチレン(ACSM)を含む。
なお、上記ゴム成分がCSMまたはACSM以外のゴム成分を含有する場合、そのゴム成分としては、架橋が可能なゴム成分であれば特に限定されず、例えば、ジエン系ゴム等が挙げられる。
【0019】
上記ゴム成分中のCSMまたはACSMの含有量(CSMとACSMとを併用している場合には、それら合計の含有量)は、50質量%を超えていることが好ましく、80質量%を超えていることがより好ましい。
【0020】
(CSM)
上記ゴム成分に含有されるCSMとしては、架橋点としてクロロスルホニル基を有するものであれば、特に限定されず、従来公知の直鎖状または分岐状のクロロスルホン化ポリエチレンを用いることができ、例えば、ポリエチレンを塩素と亜硫酸ガスとを用いて塩素化およびクロロスルホン化したもの等が挙げられる。
【0021】
上記CSMの100℃におけるムーニー粘度は、20〜100であるのが好ましく、30〜80であるのがより好ましい。上記CSMのムーニー粘度が20以上であればゴム組成物の加硫後の特性(引張強さ、切断時伸び)が優れ、上記CSMのムーニー粘度が100以下であればゴム組成物の加工性(混合、押出し)が優れる。
【0022】
上記CSMの塩素含有量は、20〜50質量%であるのが好ましく、23〜45質量%であるのがより好ましい。上記CSMの塩素含有量が20質量%以上であればゴム組成物の耐油性が優れ、上記CSMの塩素含有量が50質量%以下であればゴム組成物の圧縮永久歪が小さくなる。
【0023】
上記CSMの硫黄含有量は、0.1〜4質量%であるのが好ましく、0.2〜1.8質量%であるのがより好ましく、0.5〜1.5質量%であるのがさらに好ましい。上記CSMの硫黄含有量が0.1質量%以上であればゴム組成物を加硫した場合の加硫密度が優れ、上記CSMの硫黄含有量が4質量%以下であればゴム組成物の加硫後のゴム弾性が優れる。
【0024】
上記CSMとして市販のCSMを用いることもでき、例えば、TOSO−CSM(登録商標)530(東ソー社製、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)56、塩素含有量35質量%、硫黄含有量1.0質量%)、ハイパロン(登録商標。以下同様)40(DuPont社製、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)55、塩素含有量35質量%、硫黄含有量1.0質量%)等が市販品として入手できる。
【0025】
(ACSM)
上記ゴム成分に含有されるACSMとしては、架橋点としてクロロスルホニル基を有するものであれば特に限定されず、例えば、エチレン以外のオレフィンの単独重合体またはエチレン以外のオレフィンとエチレンとの共重合体であるポリオレフィンを、塩素と亜硫酸ガスとを用いて、塩素化およびクロロスルホン化したもの等が挙げられる。
なお、エチレン以外のオレフィンの種類および含有量は、上記ACSMの塩素含有量および硫黄含有量が以下に示す範囲であれば、特に限定されない。
【0026】
上記ACSMの100℃におけるムーニー粘度は、20〜100であるのが好ましく、30〜80であるのがより好ましい。上記ACSMのムーニー粘度が20以上であればゴム組成物の加硫後の特性(引張強さ、切断時伸び)が優れ、上記ACSMのムーニー粘度が100以下であればゴム組成物の加工性(混合、押出し)が優れる。
【0027】
上記ACSMの塩素含有量は、10〜35質量%であるのが好ましく、20〜35質量%であるのがより好ましく、25〜33質量%であるのがさらに好ましい。上記ACSMの塩素含有量が10質量%以上であればゴム組成物の耐油性が優れ、上記ACSMの塩素含有量が35質量%以下であればゴム組成物の圧縮永久歪が小さくなる。
【0028】
上記ACSMの硫黄含有量は、0.1〜4質量%であるのが好ましく、0.2〜1.8質量%であるのがより好ましく、0.5〜1.5質量%であるのがさらに好ましい。上記ACSMの硫黄含有量が0.1質量%以上であればゴム組成物を加硫した場合の加硫密度が優れ、上記ACSMの硫黄含有量が4質量%以下であればゴム組成物の加硫後のゴム弾性が優れる。
【0029】
上記ACSMとして市販のACSMを用いることもでき、例えば、エクトス(登録商標)8510(東ソー社製品、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)40、塩素含有量30 質量%、硫黄含有量0.9質量%)、アクシアム(登録商標。以下同様)HPR−6367(DuPont社製品、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)43、塩素含有量27質量%、硫黄含有量1.0質量%)等が市販品として入手できる。
【0030】
<ビスシトラコンイミド化合物>
本発明のゴム組成物に含有されるビスシトラコンイミド化合物は、下記一般式(I)で表される。
【0031】
【化3】

【0032】
式中、Aは、アルキレン基、アルカリーレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基およびアルケニレン基からなる群から選ばれる2価基であり、Rは、水素原子または炭素原子1〜18個を有するアルキル基であり、複数のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、ヘキシレン基、n−オクチレン基、n−ドデシレン基、ステアリレン基等が挙げられる。
アルカリーレン基とは、ベンゼン等の芳香族環に2個のアルキレン基が結合してなる基であり、その具体例としては、o−キシリレン基、m−キシリレン基、p−キシリレン基等が挙げられる。
シクロアルキレン基の具体例としては、シクロヘキシレン基等が挙げられる。
アリーレン基とは、2価の単環式または多環式芳香族炭化水素基を意味し、その具体例としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基、ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイル基等が挙げられる。
アラルキレン基とは、−Ar−Alk−または−Alk−Ar−(ここでArはアリーレン基をいい、Alkはアルキレン基をいう。)をいい、その具体例としては、ベンジレン基(−C−CH−または−CH−C−)等が挙げられる。
アルケニレン基の具体例としては、ビニレン基、プロペニレン基等が挙げられる。
【0034】
式中のAとしては、上記した基からなる群から選ばれる2価基であれば、特に限定されないが、ゴム組成物の加硫後の特性の有用性という観点から、アルカリーレン基、またはアリーレン基が好ましく、アルカリーレン基がより好ましい。
【0035】
また、式中のRとしては、水素原子または炭素原子1〜18個を有するアルキル基であれば特に限定されず、このようなアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
式中のRとしては、上記CSMまたは上記ACSMとの架橋反応活性という観点から、水素原子または炭素原子1〜3個を有するアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0036】
上記ビスシトラコンイミド化合物としては、具体的には、例えば、下記式(II)で表されるビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンを好ましく用いることができる。
【0037】
【化4】

【0038】
上記ビスシトラコンイミド化合物の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して1〜15質量部であり、3〜7質量部であるのが好ましい。上記ビスシトラコンイミドの含有量がこの範囲であると、得られる本発明のゴム組成物のスコーチタイムは、ビスマレイミド化合物を含有するゴム組成物よりも、スコーチタイムに優れる。
【0039】
ビスシトラコンイミド化合物を加硫剤として用いた場合に、C=Cを有するビスマレイミド化合物を加硫剤として用いた場合と比べてスコーチタイムに優れるのは、ビスシトラコンイミド化合物が有するC=Cに−CH−Rで表される基が結合することによって、上記CSMまたは上記ACSMの架橋点であるクロロスルホニル基との反応性がビスマレイミド化合物よりも弱まるからである、と考えられる。
【0040】
<架橋開始剤>
本発明のゴム組成物に含有される架橋開始剤は、ゴム組成物のスコーチタイムに優れるという理由から、上記ゴム成分100質量部に対して0.5〜10質量部であり、1〜6質量部であるのが好ましい。
【0041】
上記架橋開始剤としては、例えば、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ジブチルジチオカルバミン酸等を好ましく用いることができる。
【0042】
さらに、本発明のゴム組成物は、必要に応じて、本発明の目的を逸脱しない範囲で、受酸剤、顔料(染料)、加工助剤、酸化防止剤、可塑剤等の各種添加剤を含有することができる。
【0043】
受酸剤は、CSM等から発生する塩酸を捕捉するものであり、このような受酸剤としては、例えば、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))などが挙げられる。
【0044】
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラック等の有機顔料;等が挙げられる。
【0045】
加工助剤としては、具体的には、例えば、リノール酸、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸の塩;上記高級脂肪酸のエステル類;等が挙げられる。
【0046】
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(NBC)2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(TMDQ)等が挙げられる。
【0047】
可塑剤としては、具体的には、例えば、トリイソノニルトリメリテートなどのアルキルトリメリテート系可塑剤等が挙げられる。
【0048】
本発明のゴム組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上述した各成分を配合した未加硫ゴム組成物を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等)を用いて、混練等により調製できる。
【0049】
本発明のゴム組成物は、加硫剤として上記ビスシトラコンイミド化合物を用いることを除けば、その他の条件は特に限定されず、従来公知の加硫条件で加硫することができる。
【0050】
次に、本発明のホースについて説明する。本発明のホースは、内管と、上記内管の外周側に配置される補強層と、上記補強層の外周側に配置される外管とを備えるホースであって、上記内管および/または上記外管が、本発明のゴム組成物で構成されているホースである。
【0051】
以下、本発明のホースの好適な実施態様の一例を図1を用いて説明する。図1は、ホースの各層を切り欠いて示す斜視図である。
図1に示すように、ホース1は、内管2と、内管2の外周側に隣接して配置される補強層3と、補強層3の外周側に隣接して配置される外管4とを有する。
【0052】
ホース1は、少なくとも内管2が本発明のゴム組成物で構成されていることが好ましく、ホース1の耐久性に優れるという観点から、内管2および外管4がともに本発明のゴム組成物で構成されていることが好ましい。
【0053】
補強層3は、ブレード状に形成されたものであっても、スパイラル状に形成されたものであってもよい。補強層3を形成する材料は特に限定されないが、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などの繊維材料、硬鋼線(例えば、ブラスメッキワイヤー、亜鉛メッキワイヤー等)などの金属材料等が好適に例示され、なかでも繊維材料が好ましく、ポリアミド繊維がより好ましい。
【0054】
本発明のホースは、上述した3層構造を有するものに限られることはなく、例えば、上記補強層を2層設け、これら2層の補強層の間に層間ゴム層を設けた5層構造を有するものであってもよい。上記層間ゴム層は、ホースの耐久性に優れるという観点から、本発明のゴム組成物で構成されていることが好ましい。
【0055】
本発明のホースの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、マンドレル上に、内管、補強層、および外管をこの順に積層させた後に、これらの層を140〜190℃、30〜180分の条件で、プレス加硫、蒸気加硫、オーブン加硫(熱気加硫)、または温水加硫することにより加硫接着させて製造する方法等が好適に例示される。
【0056】
本発明のホースは、加硫後の特性が良好な本発明のゴム組成物を用いているため、繰り返し加圧耐久性に優れる。
【0057】
本発明のホースは、その用途、適用条件等が特に限定されることはないが、例えば、油圧方式のパワーステアリングの配管に使用されるパワーステアリングホースに好適に用いられる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例に従ってより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1−1〜1−6、比較例1−1〜1−10)
下記第1表に示す成分を下記第1表に示す割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記第1表に示す成分のうち加硫剤1または加硫剤2を除く成分をバンバリーミキサー(3.4リットル)で4分間混練し、140℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。次に、得られたマスターバッチに加硫剤1または加硫剤2をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。
得られた各ゴム組成物について、以下に示す方法により、最低ムーニー粘度(Vm)、スコーチタイム(t5)、引張強さ、切断時伸び、および、硬さを測定した。結果を下記第1表に示す。
【0060】
<最低ムーニー粘度(Vm)、スコーチタイム(t5)>
最低ムーニー粘度(Vm)は、得られた各ゴム組成物について、JIS K6300−1:2001に記載の「ムーニー粘度試験」に準拠して、ムーニー粘度計(L形ローター)を使用し、予熱時間1分、試験温度125℃の条件で、ローターを回転させた、ムーニー粘度−時間曲線でのムーニー粘度の最低値である。
スコーチタイム(t5)は、最低ムーニー粘度(Vm)より5M上昇する時間を表し、Mはムーニー単位を表す。
【0061】
<引張強さ、切断時伸び>
未加硫のゴム組成物を157℃のプレス成型機を用い、面圧3.0MPaの圧力下で60分間加硫して、2mm厚の加硫シートを作製した。このシートからJIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251:2004に準拠して行い、引張強さ[MPa]、切断時伸び[%]を室温にて測定した。
【0062】
<硬さ>
JIS K6253:2006に準拠して、未加硫のゴム組成物を157℃のプレス成型機を用い、面圧3.0MPaの圧力下で60分間加硫して、6mm厚の試験片を作製し、JIS K6253:2006に準拠して、デュロメータ(タイプA)を用いて硬さ(ショアA硬さ)を測定した。
【0063】
【表1】

【0064】
上記第1表中の各成分は、以下のものを使用した。
・CSM:クロロスルホン化ポリエチレン(商品名:ハイパロン40、DuPont社製、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)55、塩素含有量35質量%、硫黄含有量1.0質量%)
・ACSM:アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン(商品名:アクシアムHPR−6367、DuPont社製、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)43、塩素含有量27質量%、硫黄含有量1.0質量%)
・受酸剤1:酸化マグネシウム(商品名:キョーワマグ150、協和化学社製)
・受酸剤2:水酸化カルシウム(商品名:消石灰、入交産業社製)
・カーボンブラック:FEFカーボンブラック(商品名:HTC #100、新日化カーボン社製)
・加工助剤:親水性高級脂肪酸エステル(商品名:Struktol WB−212、SCHILL & Seilacher GMBH & CO.社製)
・酸化防止剤:NBC(商品名:ノクラックNBC、大内新興化学社製)
・架橋開始剤:6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン(商品名:ノクラックAW、大内新興化学社製)
・可塑剤:イソノニルトリメリテート(商品名:C−9N、ADEKA社製)
・加硫剤1:N,N′−m−フェニレンビスマレイミド(商品名:HVA−2、DuPont社製)
・加硫剤2:1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン(商品名:Perkalink 900、フレキシス社製)
【0065】
上記第1表に示す結果から、実施例1−1〜1−6は、加硫剤としてビスマレイミド化合物を用いた比較例1−1または1−6よりも優れたスコーチタイムを示すとともに、比較例1−1および1−6と同等かそれ以上の良好な加硫後の特性を示すことが分かった。
【0066】
(実施例2−1〜2−6、比較例2−1〜2−10)
次に、実施例または比較例に係るゴム組成物を用いて、ホースを作製した。
まず、クロスヘッド押出機によって樹脂製マンドレル上に未加硫のゴム組成物を押出し、その上に編組機によってポリアミド繊維を編組して第1補強層を形成し、次いで、未加硫のゴム組成物で構成される層間ゴム層を形成した後、さらに、編組機によってポリアミド繊維を編組して第2補強層を形成し、その上に、クロスヘッド押出機によって未加硫ゴム組成物を押出して外管を形成し、未加硫のホースを得た。
次に、得られた未加硫のホースを、ポリメチルペンテン樹脂(商品名:TPX、三井化学社製)で被覆し、スチーム加硫缶によって157℃、60分の条件で加硫した後、被覆していたポリメチルペンテン樹脂を剥離し、マンドレルを抜き取り、加硫後のホースを得た。なお、得られた加硫後のホースは、いずれも、内径9.8mm、外径18mmであった。
すなわち、実施例および比較例に係るホースは、内管と、層間ゴム層を挟む2層の補強層と、外管と有する5層構造である。各例に係るホースの内管、層間ゴム層、および外管に用いたゴム組成物を、下記第2表に示す。
【0067】
<ホース押出成型性>
実施例および比較例に係るホースについて、ホース押出外観により、ホース押出成型性を評価した。なお、スムースなホース外観であった場合には「○」と評価し、スムースではないが欠陥がなかった場合には「△」と評価し、ホース表面に焼け粒が発生した場合には「×」と評価した。結果を下記第2表に示す。
なお、実用上の観点から、ホース押出成型性は、「○」であることが要求される。
【0068】
<繰り返し加圧耐久性>
JIS K6330−8:1998に準拠して、実施例および比較例に係るホースについて衝撃圧力試験を行い、繰り返し加圧耐久性を評価した。
すなわち、一般作動油(EXXON 1982 ATF)を使用し、150℃において、35cpmの加圧サイクルで、0MPaと10.3MPaとの間で40万回を上限として加圧サイクルを負荷した。なお、40万回の加圧サイクルに耐えてホースに異状(例えば、継手金具部での漏れ、継手金具離脱、ホース破裂等)が生じなかったものを「O」とし、それ以外のものを「×」と評価した。また、ホースに異状が生じたものは、その時点の加圧サイクル数を表記した。結果を下記第2表に示す。
なお、実用上の観点から、繰り返し加圧耐久性は、「○」であることが要求される。
【0069】
【表2】

【0070】
上記第2表に示す結果から、実施例2−1〜2−6は、ホース押出成型性および繰り返し加圧耐久性ともに、優れることが分かった。
【符号の説明】
【0071】
1 ホース
2 内管
3 補強層
4 外管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロスルホン化ポリエチレンおよび/またはアルキル化クロロスルホン化ポリエチレンを含むゴム成分100質量部と、
下記一般式(I)で表されるビスシトラコンイミド化合物1〜15質量部と、
架橋開始剤0.5〜10質量部と、
を含有するゴム組成物。
【化1】


(式中、Aは、アルキレン基、アルカリーレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基およびアルケニレン基からなる群から選ばれる2価基であり、Rは、水素原子または炭素原子1〜18個を有するアルキル基であり、複数のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記ゴム成分が、前記クロロスルホン化ポリエチレンおよび/または前記アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンを50質量%を超えて含有する、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ビスシトラコンイミド化合物が、下記式(II)で表されるビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンである、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【化2】

【請求項4】
内管と、前記内管の外周側に配置される補強層と、前記補強層の外周側に配置される外管とを備えるホースであって、
前記内管および/または前記外管が、請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物で構成されているホース。

【図1】
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【公開番号】特開2011−236270(P2011−236270A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106378(P2010−106378)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】