説明

ゴム組成物の製造方法

【課題】軽量化と補強性のバランスを向上することができるゴム組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】フィブリル化された水懸濁状の繊維をゴムポリマー及びゴム用添加剤とともに、脱水機構部を有する押出機に投入し、混練することでフィブリル化された繊維をゴム組成物中に分散させつつ、前記脱水機構部でゴム組成物中に含まれる水分を脱水し排出するゴム組成物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィブリル化された繊維を含むゴム組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばタイヤ等に用いられるゴム組成物においては、補強のためにカーボンブラックやシリカなどの粒子状フィラーが配合されている。カーボンブラックやシリカは比重が2程度と高く、従って、タイヤの軽量化のためには、より比重の小さい補強剤でゴム組成物を補強することが求められる。
【0003】
一方、ゴム組成物を繊維で補強する技術が知られており、補強性を高めるためにフィブリル化された繊維を配合することも知られている。かかるフィブリル化繊維は、一般に比重がカーボンブラックやシリカに比べて小さいことから、軽量化が期待できる。しかしながら、フィブリル化繊維は、そのささくれ立った形態により絡まり合って凝集しやすく、ゴム組成物中に均一に分散させることが難しい。また、このように凝集しやすく、特にセルロースの場合、ヒドロキシル基(OH)を有することからも一層凝集しやすいことから、取り扱い性のため水懸濁体として市販されている。そのため、ゴム組成物の製造時には、水懸濁状の繊維から水を除去しつつ、ゴム組成物中に分散させる必要があり、均一に分散させることは容易ではない。よって、フィブリル化繊維による補強性を十分に発揮できていないのが実情である。
【0004】
下記特許文献1には、水懸濁状のフィブリル化繊維をラテックスゴムと一緒に水中で攪拌混合(いわゆるウェット混合)し、得られたマスターバッチを使用して、従来のバンバリーミキサーや押し出し機などで他の薬品とともに混合(いわゆるドライ混合)して、最終のゴム組成物を得ることが開示されている。しかしながら、この方法ではウェット混合を行うための設備が必要であり、生産性も悪く、更にはゴムポリマーがラテックスゴムに限られるという問題もある。
【0005】
なお、下記特許文献2には、カーボンブラックの分散性を向上するために、カーボンブラックを予め水に湿潤させたカーボンブラック/水混合物とした上で、ゴムポリマーと混合することが開示されている。また、このようにしてゴム組成物に含まれた水が蒸発や絞り出し等によって最終的には除去される点も開示されている。しかしながら、この文献は、カーボンブラックの分散を達成するための混合エネルギー消費を少なくするためにカーボンブラックにわざわざ水を添加することを開示したものであり、フィブリル化された水懸濁状の繊維を押出機を用いて脱水しながら混練することを開示したものではなく、また、これによる有利な効果も示唆されていない。
【0006】
下記特許文献3には、湿潤ゴムを脱水押出機に通すことにより脱水することは開示されているが、湿潤ゴムクラムを被覆してベールにする際の前準備として脱水押出機を用いることを開示したものにすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−206864号公報
【特許文献2】特開平08−073607号公報
【特許文献3】特開平03−210335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、補強性と軽量化のバランスを向上することができるゴム組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、フィブリル化された水懸濁状の繊維をゴムポリマー及びゴム用添加剤とともに脱水機構を有する押出機に投入することにより、水分を除去しながらゴム組成物中にフィブリル化された繊維を均一に分散させて補強性を向上できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係るゴム組成物の製造方法は、フィブリル化された水懸濁状の繊維をゴムポリマー及びゴム用添加剤とともに、脱水機構部を有する押出機に投入し、混練することでフィブリル化された繊維をゴム組成物中に分散させつつ、前記脱水機構部でゴム組成物中に含まれる水分を脱水し排出するというものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生産性を悪化させずに、フィブリル化された水懸濁状の繊維をゴム組成物中に分散させ、かつ水分を除去して、補強性の向上したゴム組成物を得ることができ、補強性と軽量化のバランスを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る押出機の断面概略図である。
【図2】第2実施形態に係る押出機の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0014】
本発明に係る製造方法では、フィブリル化された水懸濁状の繊維、すなわちフィブリル化繊維の水懸濁体を用いる。フィブリル化させた繊維としては、高圧ホモジナイザーなどの機械的せん断力により微細に粉砕してフィブリル化(ミクロフィブリル化)された各種の短繊維を用いることができる。
【0015】
繊維の種類としては、特に限定されず、例えば、セルロース、ポリアミド(例えば、ナイロンと称される直鎖脂肪族ポリアミドや、アラミドと称される芳香族ポリアミドなど)、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上併用してもよい。これらの繊維は、カーボンブラックやシリカの比重が約2であるのに対し、比重がそれよりも低く、従って、ゴム組成物の軽量化を図ることができる。
【0016】
前記水懸濁体は、フィブリル化された繊維が水中に懸濁ないし分散されたものであり、水中で機械的せん断力により微細に粉砕しフィブリル化した水懸濁状の繊維を用いることができる。このような水懸濁体としては、例えば、微小繊維状セルロースとして、セリッシュPC−110A,PC−110B,PC−110S,PC−110T,FD−100F,FD−100G,KY−100G,KY−100S、微小繊維状アラミドとして、ティアラKY−400S,KY−400Dなどが市販されており(いずれもダイセル化学工業(株)製)、これらを用いることが好適である。これらの市販品の形態は湿綿状態であり、このような湿綿状態の水懸濁体を用いることができる。
【0017】
フィブリル化された繊維の直径(即ち、繊維径)は、特に限定されないが、平均繊維径が5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.01〜1μmである。また、フィブリル化された繊維の長さ(即ち、繊維長)も、特に限定されないが、平均繊維長が10〜1500μmであることが好ましい。ここで、平均繊維径は、走査型電子顕微鏡観察(SEM)により測定される。詳細には、顕微鏡観察により得られた画像データよりフィブリル化繊維を20個無作為抽出し、短径を測定してその相加平均を平均繊維径とする。平均繊維長は、カジャーニ(KAJAANI)社の繊維長測定機(FS−200)を用い、JIS P8121により測定される。
【0018】
前記水懸濁体中に含まれるフィブリル化された繊維の比率は、特に限定されない。例えば、繊維比率が5〜95重量%、水の比率が95〜5重量%である水懸濁体を用いることができるが、上記の比率を外れるものであってもよく、また、本発明の効果を損なわない限りにおいて安定剤等の第3成分もしくは不純物を少量含有するものであってもよい。
【0019】
本発明に係る製造方法では、このようなフィブリル化された水懸濁状の繊維を、ゴムポリマー及びゴム用添加剤とともに、脱水機構部を有する押出機に投入し、混練する。
【0020】
ゴム成分として用いられるゴムポリマーとしては、特に限定されず、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴムなどが挙げられ、またこれらの変性ポリマーを用いてもよい。これらはそれぞれ単独で用いても2種以上併用してもよい。上記の中でも、ジエン系ゴムが好ましく用いられる。
【0021】
前記変性ポリマーとしては、例えばフィブリル化セルロースのようにヒドロキシル基を有するフィブリル化繊維を用いる場合に、該ヒドロキシル基と結合し得る官能基を有するものが好適である。このような変性ポリマーを用いることにより、ゴムポリマーとフィブリル化セルロースとを結合させて、フィブリル化セルロースの分散性を更に向上することができ、補強性を一層向上することができる。
【0022】
上記結合としては、共有結合などの狭義の化学結合だけでなく、水素結合などの広義の化学結合も含まれる。このような官能基としては、例えば、アミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基およびカルボキシル基などが挙げられる。アミノ基としては、1級アミノ基だけでなく、2級アミノ基でもよい。アルキルシリル基としては、モノアルキルシリル基、ジアルキルシリル基、トリアルキルシリル基のいずれでもよい。アルコキシシリル基は、シリル基の3つの水素のうち少なくとも1つがアルコキシル基で置換されたものをいい、これには、トリアルコキシシリル基、アルキルジアルコキシシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基が含まれる。
【0023】
上記ゴム用添加剤としては、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、樹脂、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム工業において一般に使用される各種薬品を用いることができる。これらのゴム用添加剤は、ゴム組成物の配合に従い、その全てをフィブリル化された水懸濁状の繊維とともに上記押出機に投入してもよいが、一部の添加剤を後混合工程において添加してもよい。例えば、第1混合段階で、加硫剤や加硫促進剤などの加硫系添加剤を除く薬品を、水懸濁状のフィブリル化繊維及びゴムポリマーとともに上記押出機に投入し混練しておいて、その後の第2混合段階で、第1混合段階で得られた混練物に加硫系添加剤を添加し混合することによりゴム組成物を製造してもよい。この場合、第2混合工程は、一般に用いられるバンバリーミキサーやロール、ニーダー等の混合機を用いて行うことができる。
【0024】
フィブリル化セルロースのようにヒドロキシル基を有するフィブリル化繊維を用いる場合には、また、補強性を高めるために下記一般式(1)で表されるシランカップリング剤を添加してもよい。かかるシランカップリング剤を用いることで、フィブリル化繊維とゴムポリマーとをシランカップリング剤を介して結合させることができるので、フィブリル化繊維の分散性を一層向上して、補強性を更に向上することができる。
【0025】
(R(RSi−A …(1)
式中、Rは繊維表面のヒドロキシル基と反応し得る炭素数1〜3のアルコキシ基、Rは炭素数1〜40のアルキル基、アルケニル基又はアルキルポリエーテル基、Aはジエン系ゴムと反応し得る硫黄原子を含む官能基であり、m=1〜3、m+n=3である。
【0026】
式(1)中、Rは、より好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。また、Rは、炭素数1〜4のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。Rについて、上記アルキルポリエーテル基とは、−O−(R−O)−R(ここで、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、Rは炭素数1〜16のアルキル基、k=1〜20であることが好ましい。)で表される。
【0027】
また、式(1)中の官能基Aとしては、下記一般式(2)〜(4)が好ましいものとして挙げられる。
【0028】
−R−S−R−Si(R(R …(2)
−R−SH …(3)
−R−S−CO−R …(4)
式中、R,Rは、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキレン基であり、より好ましくは、炭素数2〜4のアルキレン基である。Rは、炭素数1〜16のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基である。Rは、炭素数1〜5のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基である。Rは、炭素数1〜18のアルキル基であり、より好ましくは炭素数5〜9のアルキル基である。xは2〜8であり、より好ましくは2〜4である。なお、xは通常分布を有しており、即ち、硫黄連鎖結合の数が異なるものの混合物として一般に市販されており、xはその平均値を表す。なお、R、R、m、nは、上記式(1)と同じである。
【0029】
官能基Aが上記式(2)で表されるスルフィドシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどが好ましいものとして挙げられる。
【0030】
官能基Aが上記式(3)で表されるメルカプトシランカップリング剤としては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシラン、及びエボニック社製のVP Si363(R:OC、R:O(CO)−C1327、R:−(CH−、m=平均1、n=平均2、k=平均5)などが好ましいものとして挙げられる。
【0031】
官能基Aが上記式(4)で表される保護化メルカプトシランカップリング剤としては、例えば、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、3−プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどが好ましいものとして挙げられる。
【0032】
ゴム組成物中における上記フィブリル化された繊維の配合量は、特に限定されるものではなく、ゴム組成物の用途に応じて要求される補強性を発揮するように適宜設定すればよい。詳細には、フィブリル化された繊維の配合量は、ゴムポリマー100重量部に対して1〜200重量部であることが好ましく、より好ましくは5〜100重量部である。
【0033】
上記シランカップリング剤の配合量は、フィブリル化された繊維に対し5〜15重量%であり(即ち、フィブリル化繊維100重量部当たりシランカップリング剤5〜15重量部)、より好ましくは5〜10重量%である。シランカップリング剤の配合量が5重量%未満では、シランカップリング剤による補強性の向上効果は不十分であり、逆に、15重量%を超えて添加しても、補強性の更なる向上はみられない。
【0034】
なお、本発明に係るゴム組成物には、その他の補強剤として、カーボンブラックやシリカなどの粒子状フィラーを配合してもよく、配合しなくてもよい。但し、カーボンブラックやシリカなどの粒子状フィラーは、比重が大きいため、これらを併用すると軽量化効果が損なわれる。また、これらの粒子状フィラーは、加硫ゴムの比較的小さな歪み変形でも粒子同士の凝集がほどけてエネルギーロスが発生し、そのため損失正接tanδが大きくなって低発熱性が悪化するのに対し、フィブリル化された繊維は、フィブリル化による絡み合いがほどけにくいためか、粒子状フィラーを用いた場合に比べてtanδが小さく発熱しにくい。このように粒子状フィラーを添加すると、軽量化や低発熱性が悪化する傾向となるので、極力添加しないことが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲内で添加しても構わない。
【0035】
本発明で使用する脱水機構部を有する押出機としては、ゴム組成物を混練しつつ、該ゴム組成物中に含まれる水分を脱水し排出することができるものであれば、特に限定されず使用可能である。
【0036】
図1は、かかる脱水機構部を有する押出機の一例として、第1実施形態に係る押出機(1)を示したものである。この押出機(1)は、筒状のシリンダ(11)と、シリンダ内を回転するスクリュ(12)と、ゴム組成物の材料をシリンダ内に投入するための投入口部(13)とを備え、投入口部(13)から投入された材料をスクリュ(12)の回転によりシリンダ(11)内を移動させながら混練するスクリュ押出機である。
【0037】
スクリュ(12)を取り囲むシリンダ(11)の周壁部には、その下面側に多数の排水孔(14)が設けられおり、これにより脱水機構部が構成されている。排水孔(14)は、水分などの液体は排出されるものの、混練されているゴム組成物は排出されない程度の孔径(例えば、直径=0.3〜0.7mm)に設定されている。
【0038】
スクリュ(12)は、投入口部(13)から出口部(15)に向かって徐々に径大に形成され、これによりシリンダ(11)の周壁部とスクリュ(12)との間隙が投入口部(13)から出口部(15)に向かって次第に狭く形成されている。そのため、スクリュ(12)の回転により、投入口部(13)から投入された材料は出口部(15)に向かって徐々に圧縮されることで混練されるように構成されている。
【0039】
よって、この押出機(1)であると、投入口部(13)に、フィブリル化された水懸濁状の繊維をゴムポリマー及びゴム用添加剤とともに投入すると、スクリュ(12)の回転により、出口部(15)に向かって混練されていき、フィブリル化された繊維がゴム組成物中に分散される。また、ゴム組成物は、スクリュ(12)とシリンダ(11)との間で徐々に加圧されるので、該水懸濁状の繊維によって系内に持ち込まれた水分が絞り出されて、シリンダ(11)の排水孔(14)から外部に脱水、排出される。排水は、図示するように、投入口部(13)に近い側では少なく、出口部(15)に近づくにつれて上記加圧により多くなる。このようにして、ゴム組成物を混練しつつ、ゴム組成物中に含まれる水分を脱水し排出することができる。このような脱水機構を有する押出機自体は、公知であり、例えば、(株)スエヒロEPM製のVシリーズ、V−Jシリーズなどを用いることができる。
【0040】
図2は、脱水機構部を有する押出機の他の例として、第2実施形態に係る押出機(2)を示したものである。この押出機(2)は、ゴム組成物を混練する押出機本体(21)と、該押出機本体の出口部に設けられた脱水機構部としての脱水金型(22)と、ゴム組成物の材料を押出機本体(21)に投入するための投入口部(23)とを備える。
【0041】
押出機本体(21)の構成としては、上記のスクリュ押し出しを行うスクリュ押出機でもよく、非スクリュ押出機でもよく、特に限定されない。脱水金型(22)は、押出機本体(21)から押し出されたゴム組成物が通る管状の流路を持つ金型であり、該流路を構成する周壁部には多数の排水孔(24)が設けられている。
【0042】
この押出機(2)であると、投入口部(23)に、フィブリル化された水懸濁状の繊維をゴムポリマー及びゴム用添加剤とともに投入すると、押出機本体(21)でゴム組成物が混練され、フィブリル化された繊維がゴム組成物中に分散されるとともに、脱水金型(22)において、加圧されたゴム組成物から水分が絞り出されて排水孔(24)から外部に脱水、排出される。
【0043】
図2に示すように、脱水金型(22)の周りを取り囲むように減圧装置のハウジング(25)を設けて、ハウジング(25)の内部を減圧することにより、脱水金型(22)の排水孔(24)からの水分の排出を促進するようにしてもよい。
【0044】
このように、第2実施形態に係る押出機(2)についても、ゴム組成物を混練してフィブリル化された繊維をゴム組成物中に分散させつつ、ゴム組成物中に含まれる水分を脱水し排出することができる。
【0045】
以上のように、脱水機構を有する押出機を用いることで、フィブリル化された水懸濁状の繊維を投入するものでありながら、その水分を除去して水分の少ないゴム組成物が得られ、かつフィブリル化繊維を他のゴム用添加剤とともにゴム組成物中に均一に分散させることができる。
【0046】
なお、脱水機構のない押出機や、通常のバンバリーミキサー(これには脱水機構はない)等を用いた場合でも、ゴム組成物の混練時のせん断によって水分が絞られたり、熱により水分は蒸発するが、本発明のような十分な脱水はなされず、フィブリル化繊維の均一な分散による優れた補強性の向上効果は得られない。
【0047】
以上のようにして得られたゴム組成物は、常法に従い加硫成形することにより、ビードフィラーやサイドウォールゴムなどの空気入りタイヤの各ゴム部材として、あるいはまた防振ゴムやベルトなどの各種ゴム製品に用いることができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
脱水機構部を有する押出機として、(株)スエヒロEPM製「V−05型」を用いた。この押出機を用い、ゴムポリマーである天然ゴムと、水懸濁状のフィブリル化アラミドと、ステアリン酸と、酸化亜鉛を、下記表1に示す配合割合にて順次投入し、混練した。スクリュの回転数は20rpm、溶融温度は120℃とした。次いで、得られた混合物に、ローラーを用いて、表1に示す配合にて加硫促進剤と硫黄を添加し混練して、最終のゴム組成物を得た。
【0050】
(比較例1)
1.7Lのバンバリーミキサーを用い、表1に示す配合に従い、ゴムポリマーである天然ゴムに、水懸濁状のフィブリル化アラミドと、ステアリン酸と、酸化亜鉛を添加し、混練して混合物を得た後(排出温度:150℃)、後工程において、上記混合物に加硫促進剤と硫黄を添加し混練して、最終のゴム組成物を得た(排出温度:110℃)。
【0051】
(比較例2)
水懸濁状のフィブリル化アラミドに代えて、カーボンブラックを用いた他は比較例1と同様にしてゴム組成物を得た。
【0052】
【表1】

【0053】
表1中の各成分は以下の通り、
・天然ゴム:RSS3号
・水懸濁状のフィブリル化アラミド:ダイセル化学工業(株)製「ティアラKY−400S」(平均繊維径=0.2μm、平均繊維長=500μm、微小繊維状アラミド=20重量%、水=80重量%)
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シーストV」
・ステアリン酸:花王(株)製「工業用ステアリン酸」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「1号亜鉛華」
・加硫促進剤:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「5%油処理粉末硫黄」。
【0054】
(試験例1)
得られた各ゴム組成物について、160℃×20分で加硫して所定形状の試験片を作製し、得られた試験片を用いて、硬度と比重を測定し評価した。各評価方法は以下の通りである。
【0055】
・硬度:JIS K6253に準じて、23℃で測定した硬度を、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど硬度が高く、補強性に優れることを示す。
【0056】
・比重:JIS K6268に準じて、測定した比重を、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が小さいほど比重が小さく、従って軽量化を図れることを示す。
【0057】
結果は、表1に示す通りであり、水懸濁状のフィブリル化アラミドをバンバリーミキサーを用いて混練した比較例1や、補強剤としてカーボンブラックを用いた比較例2に対し、脱水機構を有する押出機を用いて水懸濁状のフィブリル化アラミドを混練した実施例1であると、硬度が著しく高く補強性に優れており、軽量化と補強性のバランスが向上していた。
【0058】
(実施例2)
脱水機構部を有する押出機として、(株)スエヒロEPM製「V−05型」を用い、天然ゴムと、水懸濁状のフィブリル化セルロースと、ステアリン酸と、酸化亜鉛を、下記表2に示す配合割合にて順次投入し、混練した。スクリュの回転数は20rpm、溶融温度は120℃とした。次いで、得られた混合物に、ローラーを用いて、表2に示す配合にて加硫促進剤と硫黄を添加し混練して、最終のゴム組成物を得た。
【0059】
(比較例3)
1.7Lのバンバリーミキサーを用い、表2に示す配合に従い、天然ゴムに、水懸濁状のフィブリル化セルロースと、ステアリン酸と、酸化亜鉛を添加し、混練して混合物を得た後(排出温度:150℃)、後工程において、上記混合物に加硫促進剤と硫黄を添加し混練して、最終のゴム組成物を得た(排出温度:110℃)。
【0060】
(比較例4)
水懸濁状のフィブリル化セルロースに代えて、カーボンブラックを用いた他は比較例3と同様にしてゴム組成物を得た。
【0061】
【表2】

【0062】
表2中の各成分は、下記の水懸濁状のフィブリル化セルロースを除いて、上記表1と同じである。
【0063】
・水懸濁状のフィブリル化セルロース:ダイセル化学工業(株)製「セリッシュPC−110S」(平均繊維径=1μm、平均繊維長=600μm、微小繊維状セルロース=35重量%、水=65重量%)。
【0064】
(試験例2)
得られた各ゴム組成物について、試験例1と同様に、加硫した試験片について、硬度と比重を測定し評価した。但し、評価は比較例3の値を100とした指数で表示した。
【0065】
結果は、表2に示す通りであり、水懸濁状のフィブリル化セルロースをバンバリーミキサーを用いて混練した比較例3や、補強剤としてカーボンブラックを用いた比較例4に対し、脱水機構を有する押出機を用いて水懸濁状のフィブリル化セルロースを混練した実施例2であると、硬度が著しく高く補強性に優れていた。また、カーボンブラックを用いた比較例4に対し、比重が小さく、軽量化効果も認められた。よって、実施例2であると、軽量化と補強性のバランスが向上していた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、生産性を悪化させずに、軽量化と補強性のバランスを向上したゴム組成物を製造することができるので、各種タイヤのゴム部材を始めとして、防振ゴムやベルトなどの各種用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0067】
1…押出機、11…シリンダ、12…スクリュ、13…投入口部、14…排水孔、15…出口部、2…押出機、21…押出機本体、22…脱水金型、23…投入口部、24…排水孔、25…減圧装置のハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィブリル化された水懸濁状の繊維をゴムポリマー及びゴム用添加剤とともに、脱水機構部を有する押出機に投入し、混練することでフィブリル化された繊維をゴム組成物中に分散させつつ、前記脱水機構部でゴム組成物中に含まれる水分を脱水し排出することを特徴とするゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
前記押出機がスクリュ押出機であり、前記脱水機構部がスクリュを取り囲むシリンダの壁部に設けられた複数の排水孔により構成され、前記スクリュと前記シリンダとの間でゴム組成物を加圧することで前記排水孔から前記ゴム組成物中に含まれる水分を脱水することを特徴とする請求項1記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記押出機は、前記ゴム組成物を混練する押出機本体と、該押出機本体の出口部に設けられた前記脱水機構部としての脱水金型とを備えてなり、前記脱水金型の周壁部に設けられた複数の排水孔から前記ゴム組成物中に含まれる水分を脱水することを特徴とする請求項1記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
前記脱水金型の周りが減圧装置により取り囲まれ、前記減圧装置の内部を減圧しながら前記脱水金型の排水孔より前記ゴム組成物中に含まれる水分を脱水する請求項3記載のゴム組成物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−6554(P2011−6554A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150144(P2009−150144)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】