説明

ゴム組成物及びその製造方法、並びにタイヤ

【課題】タイヤの耐摩耗性等の耐久性を低下させることなく耐破壊性にも優れ、かつ良好な作業性をも達成することが可能なゴム組成物及びその製造方法、並びにそれを用いたタイヤを提供する。
【解決手段】ポリブタジエン及び該ポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムを含有するゴム成分と、充填剤とを含み、前記ポリブタジエンのムーニー粘度(ML1+4/100℃)をML(I)、前記ポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4/100℃)をML(II)としたとき、ML(I)≧ML(II)の関係にあるゴム組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びその製造方法並びに該ゴム組成物を用いたタイヤに関し、詳細には、自動車用タイヤの所定部位に適用して、タイヤの低燃費性を向上させ、かつタイヤに十分な耐摩耗性及び破壊特性を付与することが可能である上、良好なグリップ性能も付与し得るゴム組成物及びその製造方法、並びにそれを用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの社会的な要請に伴い、自動車においても、タイヤ用ゴムの発熱を減じること、および燃料消費を低減することが強く求められている。そのため、タイヤのトレッド等に使用するゴム組成物として、tanδが低く(以下、「低ロス性」と称する場合がある)、低発熱性に優れたゴム組成物が求められている。また、トレッド用のゴム組成物においては、低ロス性に加え、安全性及び経済性の観点から、耐摩耗性や破壊特性及びグリップ性能に優れることが求められる。
【0003】
この問題に対し、従来、ゴム組成物に使用されるポリブタジエンに末端変性基を導入させることで、変性基とフィラーとが反応しフィラーとの親和性が改良され、バウンドラバー量が増加し、その結果、耐摩耗性が向上することがわかっている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このようなゴム組成物では、十分な耐摩耗性は得られるものの、高コストな変性ポリマーを用いなければならず、作業性も悪化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/112450号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、タイヤの耐摩耗性等の耐久性を低下させることなく耐破壊性にも優れ、かつ良好な作業性をも達成することが可能なゴム組成物及びその製造方法、並びにそれを用いたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ポリブタジエン及び該ポリブタジエンと非相溶なゴムのブレンド系において、ポリブタジエンの比粘度を同程度もしくは高くすることで、混練中でのポリブタジエン相にかかるトルクを上げる(ポリブタジエンの練り効率を向上させる)ことができ、ポリブタジエンのバウンドラバーを増加させたゴム組成物をタイヤ部材に用いることで、耐摩耗性等の耐久性を低下させることなく耐破壊性にも優れ、かつ良好な作業性をも達成することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
〔1〕 ポリブタジエン及び該ポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムを含有するゴム成分と、充填剤とを含み、
前記ポリブタジエンのムーニー粘度(ML1+4/100℃)をML(I)、前記ポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4/100℃)をML(II)としたとき、ML(I)≧ML(II)の関係にあるゴム組成物、
〔2〕 前記ポリブタジエンが、カップリング処理によって高分子量化したものである〔1〕に記載のゴム組成物、
〔3〕 前記ポリブタジエンゴムと非相溶であるジエン系ゴムが、天然ゴムまたはポリイソプレンゴムである〔1〕または〔2〕に記載のゴム組成物、
〔4〕 前記ゴム成分におけるポリブタジエンの含有質量Aと、該ポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムの含有質量Bとの含有質量比(A/B)が、40/60〜60/40の範囲である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のゴム組成物、
〔5〕 前記充填剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して30質量部以上70質量部以下である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のゴム組成物、
〔6〕 前記充填剤が、カーボンブラック及び無機充填剤の少なくともいずれかである〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のゴム組成物、
〔7〕 前記ポリブタジエンにおける1,2−ビニル結合含有量が、20%以下である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のゴム組成物、
〔8〕 〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のゴム組成物を用いたタイヤ、
〔9〕 〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法であって、
ポリブタジエン及び該ポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムを含有するゴム成分と、充填剤とを混練する工程を有し、
前記ポリブタジエンとして、前記ポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴム以上のムーニー粘度(ML1+4/100℃)を有するものを用いるゴム組成物の製造方法、及び
〔10〕 前記ポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4/100℃)が45以上75以下である〔9〕に記載のゴム組成物の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タイヤの耐摩耗性等の耐久性を低下させることなく耐破壊性にも優れ、かつ良好な作業性をも達成することが可能なゴム組成物及びその製造方法、並びにそれを用いたタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施形態により説明する。
<ゴム組成物及びその製造方法>
本実施形態のゴム組成物は、ポリブタジエン及び該ポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムを含有するゴム成分と、充填剤とを含み、前記ポリブタジエンのムーニー粘度(ML1+4/100℃)をML(I)、前記ポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4/100℃)をML(II)としたとき、ML(I)≧ML(II)の関係にあることを特徴とする。
【0010】
本発明者らは、ポリブタジエンと天然ゴム等の該ポリブタジエンと非相溶なゴムとの混練において、ブレンドされる各々の粘度特性と物性との関係を調べた結果、非相溶なゴムのブレンド系では、混練前により高いムーニー粘度を有すると、バウンドラバー(ゴムとカーボンブラックとを混練した際に形成されるカーボンゲル)が形成されやすくなり、またポリブタジエンのバウンドラバー量が多いほど、耐摩耗性が改良されることを見出した。
【0011】
したがって、何らかの方法により、ポリブタジエンのムーニー粘度を、用いるポリブタジエンと非相溶な重合体のムーニー粘度に対して高くすることにより、混練後にポリブタジエンのバウンドラバー量を増加させることができるため、耐久性と良好な作業性との両立を図ることが可能となった。すなわち、ポリブタジエン部分の練り効率を上げることにより、ポリブタジエン部分のバウンドラバーの量が増加し、耐摩耗性が大幅に向上する。
【0012】
一方、ポリブタジエンと非相溶なジエン系ゴム等は、ポリブタジエンに対してムーニー粘度を低下させることで作業性を改良でき、ポリブタジエン部分の補強性を改良することで全体の特性に大きな影響を与えることがない。このような理由から、本実施形態では、前記耐摩耗性と耐破壊性との両立が達成される。
【0013】
なお、前記ポリブタジエンのムーニー粘度を比較的高くすることにより、混練時に混合された重合体成分のうち、ポリブタジエンのほうが粘度が高く、トルクがかかりやすく、ポリブタジエンのバウンドラバーが増加することとなるためと考えられる。
【0014】
(ゴム成分)
−ポリブタジエン−
本実施形態に用いられるポリブタジエンは、1,2−ビニル結合量が20%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。1,2−ビニル結合量が20%以下であると、ガラス転移温度が低く、反発弾性、耐摩耗性、低温特性に優れ、タイヤの低発熱性(低ヒステリシスロス特性)が向上するためである。
【0015】
本実施形態におけるポリブタジエンを得るための製造方法については、特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、特に溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであっても良い。
前記ポリブタジエンをアニオン重合で製造する場合、重合開始剤としては、有機アルカリ金属化合物を用いるのが好ましく、リチウム化合物を用いるのが更に好ましい。該リチウム化合物としては、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物等が挙げられる。重合開始剤としてヒドロカルビルリチウムを用いる場合、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、他方の末端が重合活性部位である変性ポリマーが得られる。一方、重合開始剤としてリチウムアミド化合物を用いる場合、重合開始末端に窒素含有官能基を有し、他方の末端が重合活性部位である変性ポリマーが得られ、該重合体は、変性剤で変性することなく、本発明における変性共役ジエン系ポリマーとして用いることができる。なお、重合開始剤としてのリチウム化合物の使用量は、単量体100g当り0.2〜20mmolの範囲が好ましい。
【0016】
上記ヒドロカルビルリチウムとしては、エチルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、tert−ブチルリチウム等が挙げられる。
また、前記の所定量以下の1,2−ビニル結合量を有するポリブタジエンを得るためには、有機溶媒中で希土類元素化合物、特にランタン系列希土類元素を含む重合触媒によって重合させる反応が好ましい。
【0017】
上記アニオン重合は、ランダマイザーの存在下で実施してもよい。該ランダマイザーは、ポリブタジエンのミクロ構造を制御することができ、例えば、単量体としてブタジエンを用いた重合体のポリブタジエン単位の1,2−ビニル結合含量を制御することができる。
上記アニオン重合は、溶液重合、気相重合、バルク重合のいずれで実施してもよい。また、重合形式は特に限定されず、回分式でも連続式でもよい。
【0018】
上記アニオン重合の重合温度は、0〜150℃の範囲が好ましく、20〜130℃の範囲が更に好ましい。また、該重合は、発生圧力下で実施できるが、通常は、使用する単量体を実質的に液相に保つのに十分な圧力下で行なうのが好ましい。ここで、重合反応を発生圧力より高い圧力下で実施する場合、反応系を不活性ガスで加圧するのが好ましい。また、重合に使用する単量体、重合開始剤、溶媒等の原材料は、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物等の反応阻害物質を予め除去したものを用いるのが好ましい。
【0019】
一方、配位重合で前記ポリブタジエンを製造する場合、重合開始剤としては、希土類金属化合物を用いるのが好ましく、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分を組み合わせて用いるのが更に好ましい。該配位重合により、重合活性部位を有するポリブタジエンが得られる。
【0020】
上記配位重合に用いる(A)成分は、希土類金属化合物、及び希土類金属化合物とルイス塩基との錯化合物等から選択される。ここで、希土類金属化合物としては、希土類元素のカルボン酸塩、アルコキサイド、β−ジケトン錯体、リン酸塩及び亜リン酸塩等が挙げられ、ルイス塩基としては、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N、N−ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物、1価又は2価のアルコール等が挙げられる。上記希土類金属化合物の希土類元素としては、ネオジムが挙げられる。また、(A)成分として、具体的には、ネオジムトリ−2−エチルヘキサノエート、それとアセチルアセトンとの錯化合物、ネオジムトリネオデカノエート、それとアセチルアセトンとの錯化合物、ネオジムネオデカノエート、ネオジムトリn−ブトキシド等が挙げられる。これら(A)成分は一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
上記配位重合に用いる(B)成分は、有機アルミニウム化合物から選択される。該有機アルミニウム化合物として、具体的には、式:R3Alで表されるトリヒドロカルビルアルミニウム化合物、式:R2AlH又はRAlH2で表されるヒドロカルビルアルミニウム水素化物(式中、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜30の炭化水素基である)、炭素数1〜30の炭化水素基をもつヒドロカルビルアルミノキサン化合物等が挙げられる。該有機アルミニウム化合物として、具体的には、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムヒドリド、アルキルアルミニウムジヒドリド、アルキルアルミノキサン(例えば、メチルアルミノキサン)等が挙げられる。これらの化合物は一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。なお、(B)成分としては、アルミノキサンと他の有機アルミニウム化合物とを併用するのが好ましい。
【0022】
上記配位重合に用いる(C)成分は、加水分解可能なハロゲンを有する化合物又はこれらとルイス塩基の錯化合物、三級アルキルハライド、ベンジルハライド又はアリルハライドを有する有機ハロゲン化物、非配位性アニオン及び対カチオンからなるイオン性化合物等から選択される。かかる(C)成分として、具体的には、アルキルアルミニウム二塩化物、ジアルキルアルミニウム塩化物、四塩化ケイ素、四塩化スズ、塩化亜鉛とアルコール等のルイス塩基との錯体、塩化マグネシウムとアルコール等のルイス塩基との錯体、塩化ベンジル、塩化t−ブチル、臭化ベンジル、臭化t−ブチル、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。これら(C)成分は一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
上記重合開始剤は、上記の(A)、(B)、(C)成分以外に、必要に応じて、重合用単量体と同じ共役ジエン化合物及び/又は非共役ジエン化合物を用いて予備的に調製してもよい。また、(A)成分又は(C)成分の一部又は全部を不活性な固体上に担持して用いてもよい。上記各成分の使用量は、適宜設定することができるが、通常、(A)成分は単量体100g当たり0.001〜0.5mmolである。また、モル比で(B)成分/(A)成分は5〜1000、(C)成分/(A)成分は0.5〜10が好ましい。
【0024】
上記配位重合における重合温度は、−80〜150℃の範囲が好ましく、−20〜120℃の範囲が更に好ましい。また、配位重合に用いる溶媒としては、上述のアニオン重合で例示した反応に不活性な炭化水素溶媒を用いることができ、反応溶液中の単量体の濃度もアニオン重合の場合と同様である。更に、配位重合における反応圧力もアニオン重合の場合と同様であり、反応に使用する原材料も、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物等の反応阻害物質を実質的に除去したものが望ましい。
【0025】
また、本実施形態におけるポリブタジエンとしては、上述の合成時に、カップリング処理により高分子量化されたものであることが、コールドフロー抑制の点で好適である。
上記カップリング処理としては、多官能試薬を用いた末端変性などの方法により行うことが好ましい。なお、ここで言うカップリング処理は、ポリマー同士を反応させるものであり、前述の末端変性のように混練中にフィラーと反応するものではなく、ポリマー分岐による高分子量化を意図するものである。
【0026】
前記ポリブタジエンとしては、後述のポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムより高いムーニー粘度(ML1+4/100℃)を有するものを用いる必要がある。具体的には、該ポリブタジエンのムーニー粘度は50以上90以下であることが好ましく、50以上75以下であることがより好ましい。
【0027】
本実施形態において、「相溶」「非相溶」は以下のように定義される。すなわち、動的弾性率の温度分散測定において、試料に含まれる各ポリマーのtanδピークが分かれて別々に得られる場合前記各ポリマーは非相溶であり、tanδピークが単一ピークとして得られる場合前記各ポリマーは相溶である。
なお、上記動的弾性率の測定は、動的粘弾性測定装置(Ares、TAインスツルメント社製)にて、−110〜80℃の温度範囲で行った。
【0028】
また、前記高いムーニー粘度とするためには、ポリブタジエンゴムの重量平均分子量(Mw)は25万以上40万以下とすることが好ましく、25万以上35万以下とすることがより好ましい。
なお、上記重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC、東ソー(株)製、HLC−8020)により検出器として屈折計を用いて測定し、単分散ポリスチレンを標準としたポリスチレン換算で示した。なお、カラムはGMHXL(東ソー(株)製)で、溶離液はテトラヒドロフランである。
【0029】
−ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム−
本実施形態におけるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムは、前述のように、上記ポリブタジエンと非相溶なゴムである。
上記ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)及び合成ジエン系ゴムの内の少なくとも一種が挙げられ、ゴム成分としては、粘度低減や化学的処理などの事前操作を施してもよい。ここで、合成ジエン系ゴムとしては、乳化重合又は溶液重合で合成されたものが好ましい。
【0030】
前記合成ジエン系ゴムとして、具体的には、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル−ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。好ましくは、天然ゴム、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ハロゲン(Br)化ブチルゴム等であり、特に天然ゴムが、低発熱性、耐摩耗性、耐亀裂成長性、耐引裂き性などの点でさらに好ましい。
【0031】
一方、前記オレフィン系ゴムとしては、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマーとの共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー等を挙げることができる。これらの中では、EPDMが好ましい。
これらのジエン系ゴム、オレフィン系ゴムは、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0032】
本実施形態では、前記ポリブタジエン及び該ポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムを含有するゴムをゴム成分として用いるが、該ゴム成分におけるポリブタジエンの含有質量Aと、該ポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムの含有質量Bとの含有質量比(A/B)は、40/60〜60/40の範囲であることが好ましい。含有質量比(A/B)が上記範囲にあることにより、耐摩耗性等の耐久性を低下させることなく耐破壊性にも優れたゴム組成物とすることができる。
上記含有質量比(A/B)は45/55〜55/45の範囲とすることがより好ましい。
【0033】
前記のように、これらのジエン系ゴムやオレフィン系ゴムと前記ポリブタジエンとを混練する場合、該ポリブタジエンとしては、当該ジエン系ゴムやオレフィン系ゴムより高いムーニー粘度(ML1+4/100℃)を有するものを用いる必要がある。この場合、上記ジエン系ゴムやオレフィン系ゴムのムーニー粘度は、逆に低く設定することが好ましい。具体的には、該ジエン系ゴムやオレフィン系ゴムのムーニー粘度は45以上75以下とすることが好ましく、50以上65以下とすることがより好ましい。
【0034】
ジエン系ゴムやオレフィン系ゴムのムーニー粘度を、上記範囲に低く設定するためには、混練前において、予めこれらを構成する分子の分子鎖を切断し、低粘度化を図ることが好ましい。
上記ゴム中の分子における分子鎖を切断する方法としては、例えば、しゃっ解剤を配合して素練りを行う、酸化させ官能基を導入して切断する等の方法が挙げられる。
【0035】
一例として、天然ゴムにしゃっ解剤を配合して素練りを行う方法に関して説明する。しゃっ解剤としては、芳香族メルカプタン系化合物、ジスルフィド系化合物及びそれらの亜鉛塩、有機過酸化物、ニトロ化合物、ニトロソ化合物等を好ましく挙げることができ、その配合量は、天然ゴム100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部以下程度とするのが好ましい。この配合量が少な過ぎると所望の効果が得られなくなるおそれがあり、多過ぎると機械的物性が低下してしまう。
素練り機械としては、例えば、ロール機、密閉型混練機、ゴードンプラスチケーター等が挙げられ、これらの素練り機械に対して、前記ムーニー粘度が好適となるように回転数、素練り温度、素練り時間など最適な範囲が選択される。
【0036】
(充填剤)
本実施形態のゴム組成物は充填剤を含む。該充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等を挙げることができる。これら充填剤の種類としては特に制限なく、従来ゴムの充填剤として慣用されているものの中から任意のものを選択して用いることができるが、カーボンブラック及び無機充填剤の少なくともいずれかを含むことが、耐摩耗性等の耐久性をより高める上で好ましく、無機充填剤としてはシリカを用いることがより好ましい。また、シリカ等の無機充填剤を用いる場合には、シランカップリング剤を併用しても良い。
【0037】
また本実施形態においては、前記充填剤が、カーボンブラック及びシリカに加えて、一般式(I)
nM・xSiOy・zH2O ・・・(I)
[式中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる金属、並びに、これらの金属の酸化物または水酸化物、それらの水和物及び前記金属の炭酸塩の中から選ばれる少なくとも一種であり、n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である。]
で表される無機充填剤の中から選ばれる少なくとも一種を用いることが好適である。
カーボンブラック及びシリカに加えて、上記一般式(I)で表される無機充填剤を用いることにより、補強効果を効率的に高めることができ、タイヤとしたときの耐摩耗性及び低発熱性(低燃費性)の両立を図ることができる。
【0038】
ここで、前記カーボンブラックとしては、通常ゴム工業に用いられるものが使用でき、例えば、SAF、HAF、ISAF、FEF、GPFなど種々のグレードのカーボンブラックを単独に又は混合して使用することができる。
また前記シリカは、特に限定されないが、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカが好ましい。これらは単独に又は混合して使用することができる。
【0039】
前記一般式(I)で表わされる無機充填剤としては、具体的には、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al23)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al23・H2O)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO32]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5 、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO32]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩などが使用できる。
また、一般式(I)で表される無機充填剤としては、Mがアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、それらの水和物、及びアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一種のものが好ましい。
【0040】
前記充填剤の含有量としては、ゴム成分100質量部に対して、充填剤を30質量部以上70質量部以下で使用するのが好ましい。添加量を上記範囲とすることにより、タイヤに用いたときの補強性及び低発熱性(低燃費性)の両立を図ることができ、さらに作業性等も改善することができる。
上記含有量は、より好ましくは30質量部以上65質量部以下である。
【0041】
本実施形態のゴム組成物には、ゴム成分、カーボンブラック等の充填剤の他、プロセスオイル等の油分、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、酸化亜鉛、オゾン劣化防止剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、カップリング剤、発泡剤、発泡助剤及びステアリン酸等のゴム業界で通常使用されるゴム用配合材料を、本実施形態の目的を害しない範囲内で適宜選択し配合することができる。これら配合剤は、市販品を好適に使用できる。
【0042】
前記プロセスオイル等の油分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択して使用可能である。前記油分としては、アロマティックオイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、エステル系オイル、溶液状共役ジエンゴム、及び溶液状水素添加共役ジエンゴム等が挙げられる。油分がゴム組成物に含まれていると該ゴム組成物の流動性をコントロールできるため、加硫前のゴム組成物の粘度を低下させて流動性を高めることにより、極めて良好にゴム組成物の押出を行うことができる点で有利である。
【0043】
また、前記加硫剤として、従来の硫黄に加えて、有機チオスルフェート化合物(例えば1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・2水和物)、ビスマレイミド化合物(例えばフェニレンビスマレイミド)の少なくとも1種を併用することができる。
【0044】
また、前記加硫促進剤としては、テトラキス−2−エチルへキシルチウラムジスルフィド、テトラキス−2−イソプロピルチウラムジスルフィド、テトラキス−ドデシルチウラムジスルフィド、及びテトラキス−ベンジルチウラムジスルフィド等のチウラム化合物;ジ−2−エチルへキシルジチオカルバメート亜鉛、ドデシルジチオカルバメート亜鉛、及びベンジルジチオカルバメート亜鉛等のジチオカルバミン酸塩類化合物;並びにジベンゾチアジルジスルフィド、4,4'−ジメチルジベンゾチアジルジスルフィド、N−シクロへキシル−2−ベンソチアジル−スルフェンアミド、N-t-ブチル−2−ベンゾチアジル−スルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジル−スルフェンイミド、N−オキシジエチレン−ベンゾチアジル−スルフェンアミド、及びN,N'−ジシクロへキシル−2−ベンゾチアジル−スルフェンアミド等のベンゾチアゾリル加硫促進剤;などが挙げられる。
【0045】
更に、前記老化防止剤としては、例えば3C(N−イソプロピル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、6C[N−(1,3−ジメチルブチル)−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン]、AW(6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)、ジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物等を挙げることができる。
【0046】
本実施形態のゴム組成物は、ゴム成分として前記のポリブタジエンと、該ポリブタジエンと非相溶であり、該ポリブタジエンよりムーニー粘度が低いジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムとを選択し、これらとゴム充填剤、さらに必要に応じて適宜選択した前記その他の配合剤等を、混練り、熱入れ、押出、及び加硫等することにより製造することができる。
【0047】
前記混練りの条件としては、特に制限はなく、混練り装置への各成分の投入量、ローターの回転速度、ラム圧、混練り温度、混練り時間、混練り装置の種類等の諸条件によって適宜選択できる。前記混練り装置としては、一般にゴム組成物の混練りに用いる単軸混練押出機及び多軸混練押出機(連続式混練装置)や、バンバリーミキサー、インターミックス、及びニーダー等の噛合い式または非噛合い式回転ローターを有する混練機やロール(バッチ式混練装置)などが挙げられる。これらを複数組み合わせて用いてもよい。
【0048】
本実施形態のゴム組成物は、前記混練り機を用いた混練り後、成形加工後、加硫を行い、例えば、タイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ用途を始め、防振ゴム、防舷材,ベルト、ホースその他の工業品などの用途に用いることができるが、特に、低発熱性、耐摩耗性、破壊強度のバランスに優れた、低燃費用タイヤ、大型タイヤ、高性能タイヤのサイドウォール用ゴムやトレッド用ゴムとして好適に使用される。
【0049】
<タイヤ>
本実施形態のタイヤは、前記のゴム組成物を用いたものである。すなわち、本実施形態の空気入りタイヤは、前記ゴム組成物をタイヤ構成部材のいずれかに含有させてなる。該タイヤ構成部材としては、例えば、トレッド、アンダートレッド、サイドウォール、カーカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラーゴム、チェーファー、ビードコーティングゴム、クッションゴム等が挙げられる。
【0050】
本実施形態のゴム組成物を用いて空気入りタイヤを製造する場合は、例えば、押し出し機やカレンダー等によりビードフィラー部材、または、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムを作製し、これらを成型ドラム上で他の部材と張り合わせること等でグリーンタイヤを作製し、このグリーンタイヤをタイヤモールドに収め、内側から圧を加えながら加硫する方法などにより行うことができる。また、本実施形態のタイヤの内部には、空気の他に窒素や不活性ガスを充填することができる。
【0051】
前記空気入りタイヤの一例としては、一対のビード部、該ビード部にトロイド状をなして連なるカーカス、該カーカスのクラウン部をたが締めするベルト及びトレッドを有してなる空気入りタイヤなどが好適に挙げられる。なお、本実施形態の空気入りタイヤは、ラジアル構造を有していてもよいし、バイアス構造を有していてもよい。
このようにして得られた本実施形態の空気入りタイヤは、補強性、耐摩耗性、耐破壊性などに優れ、かつ軽量化が図られている。
【0052】
以上、実施形態により本発明を説明したが、本発明は、上記の形態に限定されず、その発明の目的から逸脱しない範囲内において、任意の変更、改変を行うことができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。なお以下において、特に断りのない限り、「部」は質量部を、「%」は質量%を各々意味する。
なお、諸特性は下記の方法にしたがって測定した。
<混練前のゴムの物性>
(1)重量平均分子量(Mw)の測定
GPC(東ソー(株)製、HLC−8020)により検出器として屈折計を用いて測定し、単分散ポリスチレンを標準としたポリスチレン換算で示した。なお、カラムはGMHXL(東ソー(株)製)で、溶離液はテトラヒドロフランである。
(2)ムーニー粘度ML1+4(100℃)の測定
JIS K6300−1:2001に従って、ローターレスムーニー装置により測定した。
【0054】
(3)ポリブタジエンの構造の分析法
フーリエ変換赤外分光光度計(商品名「FT/IR−4100」、日本分光(株)製)を使用し、特開2005−015590号公報に記載されたフーリエ変換赤外分光法によって、ポリブタジエンにおける1,2−ビニル結合量(%)を測定した。
【0055】
<ゴム組成物特性及びタイヤ性能>
(1)耐破壊性
加硫ゴムシートについて、JIS K 6251:2004に準拠し、室温(25℃)にて切断時張力(TSb)を測定し、比較例1の数値を100として指数表示し、耐破壊性を求めた。指数の値が大きいほど良好である。
(2)耐摩耗性
加硫ゴムシートについて、ランボーン型摩耗試験機を用い、スリップ率が25%の摩耗量を測定し、比較例1の数値の逆数を100とし、指数表示した。測定温度は室温とした。指数が大きいほど、良好である
(3)バウンドラバー量の測定
混練後の未加硫ゴム0.4gを2mm角に切り出し、トルエン50mLとともにサンプル管に入れ、48時間室温にて静置させた。その後、グラスフィルターにて抽出し、トルエン溶液部分とゴム部分とをそれぞれ乾燥させた。そして前記フィルター上のゴム部分の重さを算出し、バウンドラバー量とした。さらに乾燥させたトルエン溶液部分をクロロホルムに溶かし、プロトンNMRにてポリブタジエンの割合を算出し、この値を用いて実際の配合部数から逆算することにより、ポリブタジエンのバウンドラバー量を求めた。比較例1のバウンドラバー量を100として指数表示した。
(4)作業性の評価
マスターバッチ後の練りゴムを、50℃のロールに通した後の、ゴム肌、取切れ等により、作業性を評価した。
【0056】
<ポリブタジエン、天然ゴム>
(ポリブタジエン(BR−1〜BR−5)の製造)
・BR−1〜3
乾燥・窒素置換されたゴム詮付き100mLのガラスびんに、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(15.2質量%)7.11g、ネオジムネオデカエートのシクロヘキサン溶液(0.56モル/L)0.59mL、メチルアミノキサンMAO(東ソーアクゾ社製、PMAO)のトルエン溶液(アルミニウム濃度として3.23モル/L)10.32mL、及び水素化ジイソブチルアルミ(関東化学社製)のヘキサン溶液(0.90モル/L)7.77mLを各々この順番に投入し、室温で2分間熟成した後、塩素化ジエチルアルミ(関東化学社製)のヘキサン溶液(0.95モル/L)1.45mLを加え、室温で時折攪拌しながら15分間熟成した。こうして得られた触媒溶液中のネオジムの濃度は0.011モル/Lであった。
【0057】
約1L容積のゴム栓付きガラスびんを乾燥・窒素置換し、該ガラスびんに乾燥精製したブタジエンのシクロへキサン溶液・乾燥シクロヘキサンを各々投入し、12質量%濃度のシクロヘキサン溶液が400g投入された状態とした。次いで、前記調製した触媒溶液を投入し、50℃の水浴中で1時間重合を行った。なお、投入量は各々1.17mL(BR−1)、1.35mL(BR−2)、1.56mL(BR−3)とした。
その後、50℃にて老化防止剤2,2'−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)のイソプロパノール5%溶液2mLを加えて反応を停止させ、さらに微量のNS−5を含むイソプロパノール中で再沈殿させた後、ドラムにて乾燥させることで、ほぼ100%の収率でBR−1〜3を得た。
【0058】
・BR−4
BR−1〜3と同様に調製した触媒溶液及びモノマー溶液を用い、該触媒溶液1.85mLをゴム詮付きガラスびんに投入し、50℃の水浴中で1時間重合を行った。続いてジオクチルスズビスオクチマレート溶液(0.2モル/L)をネオジム対比1.1当量添加し、50℃にて30分間反応させた。その後、50℃にて老化防止剤NS−5のイソプロパノール5質量%溶液2mLを加えて重合反応の停止を行い、さらに微量のNS−5含むイソプロパノール中で再沈殿させた後、ドラムドライヤーにて乾燥し、ほぼ100%の収率でBR−4を得た。
【0059】
・BR−5
乾燥し、窒素置換された内容積約900ミリリットルの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン28.3g、1,3−ブタジエンモノマー50g、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.0057mmol及びヘキサメチルアミン0.513mmolをそれぞれシクロヘキサン溶液として注入し、これに0.57mmolのn−ブチルリチウム(BuLi)を加えた後、撹拌装置を備えた50℃温水浴中で4.5時間重合を行なった。重合転化率は、ほぼ100%であった。この重合系に、四塩化錫0.100mmolをシクロヘキサン溶液として加え、50℃において30分間攪拌した。その後さらに、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)のイソプロパノール5質量%溶液0.5mLを加えて反応停止をおこない、さらに、常法に従い乾燥することによりBR−5を得た。
【0060】
・BR−6
乾燥し、窒素置換された内容積900mlの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン28.3g、1,3−ブタジエンモノマー50g、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.0057mmolをそれぞれシクロヘキサン溶液として注入し、これに0.57mmolのn−ブチルリチウム(BuLi)を加えた後、攪拌装置を備えた50℃温水浴中で4.5時間重合を行った。重合転化率はほぼ100%であった。この重合系に四塩化錫0.100mmolをシクロヘキサン溶液として加え、50℃において30分間攪拌した。その後さらに、2,6−ジ−t−ブチルパラクレゾール(BHT)のイソプロパノール5%溶液0.5mLを加えて反応停止を行い、さらに常法に従い乾燥することによりBR−6を得た。
【0061】
(天然ゴム(NR)の調製)
天然ゴムはRSS3号を使用し、この天然ゴム(NR−1)100質量部に対し、しゃっ解剤として o,o’−ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(ノクタイザーSS、大内新興化学(株)製)を0.06質量部配合し、バンバリーミキサーにて温度110℃で素練り条件をスタートし、各々素練り時間を60秒、120秒、240秒としたものを調製しこれらをNR−2〜NR−4とした。得られた素練りゴムの分子量及びムーニー粘度(加工性)を前記方法により測定した。
これらのゴムの特性をまとめて第1表に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
<実施例1〜6及び比較例1〜2>
下記第2表に示す配合処方とした混合物を、バンバリーミキサーを使用して混練りし、未加硫のゴム組成物を得、厚さ2mmにシーティングした後、145℃で30分間加硫した。得られた加硫ゴムに対して、前記の方法でのゴム物性を評価した。
また、上記実施例、比較例について、第2表に示した処方からカーボンブラックを除いた配合で同様に混練り、加硫を行った。得られたシートを用いて、前述の方法により耐摩耗性、耐破壊性の評価を行った。なお作業性については、前記混練りの段階で評価した。結果を表2にまとめて示す。
【0064】
【表2】

【0065】
[注]
1) カーボンブラック:ISAF、旭カ−ボン(株)製、商品名「旭#80」
2) 老化防止剤6C:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、精工化学(株)製、商品名「オゾノン 6C」
3) 老化防止剤224:2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクラック224」
4) 加硫促進剤CZ: N−シクロヘキシル−2−ベンゾジアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラー CZ」
5) 加硫促進剤DM:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラー DM」
【0066】
第2表に示す結果から明らかなように、実施例のポリブタジエンのムーニー粘度が天然ゴムのムーニー粘度より高い組み合わせで混練したゴム組成物では、耐摩耗性及び耐破壊性の両立を図ることができるだけでなく、作業性についても良好な結果となった。
一方、天然ゴムのムーニー粘度がポリブタジエンのムーニー粘度より高い組み合わせで混練した比較例のゴム組成物を用いたタイヤでは、耐摩耗性及び耐破壊性をともに実施例より劣る結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブタジエン及び該ポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムを含有するゴム成分と、充填剤とを含み、
前記ポリブタジエンのムーニー粘度(ML1+4/100℃)をML(I)、前記ポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4/100℃)をML(II)としたとき、ML(I)≧ML(II)の関係にあるゴム組成物。
【請求項2】
前記ポリブタジエンが、カップリング処理によって高分子量化したものである請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ポリブタジエンゴムと非相溶であるジエン系ゴムが、天然ゴムまたはポリイソプレンゴムである請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム成分におけるポリブタジエンの含有質量Aと、該ポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムの含有質量Bとの含有質量比(A/B)が、40/60〜60/40の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記充填剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して30質量部以上70質量部以下である請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記充填剤が、カーボンブラック及び無機充填剤の少なくともいずれかである請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記ポリブタジエンにおける1,2−ビニル結合含有量が、20%以下である請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法であって、
ポリブタジエン及び該ポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムを含有するゴム成分と、充填剤とを混練する工程を有し、
前記ポリブタジエンとして、前記ポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴム以上のムーニー粘度(ML1+4/100℃)を有するものを用いるゴム組成物の製造方法。
【請求項10】
前記ポリブタジエンと非相溶であるジエン系ゴムまたはオレフィン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4/100℃)が、45以上75以下である請求項9に記載のゴム組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−77215(P2012−77215A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224353(P2010−224353)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】