説明

ゴム組成物及びスタッドレスタイヤ

【課題】耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できるゴム組成物、及びそれを用いたスタッドレスタイヤを提供する。
【解決手段】共役ジエンに基づく構成単位と下式(I)で表される構成単位とを有する共役ジエン系重合体であって、カルボニル基及び/又はエーテル基を有するケイ素化合物によって重合体の少なくとも一端が変性されてなるジエン系共重合体と、イソプレン系ゴムとを含むことを特徴とするゴム組成物を用いる。


[式中、X、X及びXは、それぞれ独立に、三級アミノ基、水酸基、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基を表し、X、X及びXの少なくとも1つが、カルボニル基、エーテル構造を有する基又は水酸基である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、及びそれを用いたスタッドレスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
氷雪路走行に使用される空気入りタイヤは、従来のスパイクタイヤに代わりスタッドレスタイヤが多く使用されるようになり、氷上性能の向上が一段と要求されてきている。氷上性能を向上させるために、ガラス転移温度(Tg)を下げ、低温(ここで、低温とは、氷雪上走行時の温度であり、−20〜0℃程度である)での弾性率を低く設定する手法がよく用いられている。
【0003】
しかしながら、一般に低温での弾性率を下げると高温での弾性率も低下する傾向があるため、従来のスタッドレスタイヤは、ドライ路面を走行する際には、操縦安定性に劣るという問題があった。また、スタッドレスタイヤには、耐摩耗性や疲労特性等の他の性能も要求されている。
【0004】
上記の高温での弾性率も低下するという問題に対し、シリカ配合において、ゴムに特定の極性基を付加することによりシリカと親和性を持たせ、シリカの分散性を高めることで、高温での弾性率の低下を抑える試みがなされている。例えば、特許文献1では、ゴムをアミノ基とアルコキシ基とを含有する有機ケイ素化合物で変性することによりシリカとの親和性を高める試みがなされているが、耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上する点について未だ改善の余地を残すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−344955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できるゴム組成物、及びそれを用いたスタッドレスタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、共役ジエンに基づく構成単位と下式(I)で表される構成単位とを有する共役ジエン系重合体であって、下式(II)で表される基及び/又は下式(III)で表される基を有するケイ素化合物によって重合体の少なくとも一端が変性されてなるジエン系共重合体と、イソプレン系ゴムとを含むことを特徴とするゴム組成物に関する。
【化1】

[式中、X、X及びXは、それぞれ独立に、下式(Ia)で表される基、水酸基、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基を表し、X、X及びXの少なくとも1つが、下式(Ia)で表される基又は水酸基である。]
【化2】

[式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜6のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜6の置換ヒドロカルビル基、シリル基又は置換シリル基を表し、R及びRは結合して窒素原子と共に環構造を形成していてもよい。]
【化3】

【0008】
式(Ia)のR及びRが炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基であることが好ましい。
【0009】
式(I)のX、X及びXのうちの2つが式(Ia)で表される基又は水酸基であることが好ましい。
【0010】
ケイ素化合物が下式(IV)で表される基を有することが好ましい。
【化4】

[式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜4のヒドロカルビル基又は炭素原子数が1〜4のヒドロカルビルオキシ基を表し、R、R及びRの少なくとも1つがヒドロカルビルオキシ基である。]
【0011】
ケイ素化合物が下式(IIa)で表わされる基を有することが好ましい。
【化5】

[式中、mは1〜10の整数を表し、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜4のヒドロカルビル基又は炭素原子数が1〜4のヒドロカルビルオキシ基を表し、R、R及びRの少なくとも1つがヒドロカルビルオキシ基である。]
【0012】
上記ジエン系共重合体のビニル結合量が、上記共役ジエンに基づく構成単位の含有量を100モル%として、5〜25モル%であることが好ましい。
【0013】
上記ジエン系共重合体中の共役ジエンに基づく構成単位の含有量が95質量%以上であることが好ましい。
【0014】
ゴム成分100質量部に対してシリカを10〜150質量部含むことが好ましい。
【0015】
ゴム成分100質量部に対してカーボンブラックを5〜150質量部含むことが好ましい。
【0016】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したスタッドレスタイヤに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、特定のジエン系共重合体と、イソプレン系ゴムとを含むゴム組成物であるので、耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上でき、耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性に優れたスタッドレスタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のゴム組成物は、共役ジエンに基づく構成単位と下式(I)で表される構成単位とを有する共役ジエン系重合体であって、下式(II)で表される基及び/又は下式(III)で表される基を有するケイ素化合物によって重合体の少なくとも一端が変性されてなるジエン系共重合体と、イソプレン系ゴムとを含む。
【化6】

[式中、X、X及びXは、それぞれ独立に、下式(Ia)で表される基、水酸基、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基を表し、X、X及びXの少なくとも1つが、下式(Ia)で表される基又は水酸基である。]
【化7】

[式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜6のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜6の置換ヒドロカルビル基、シリル基又は置換シリル基を表し、R及びRは結合して窒素原子と共に環構造を形成していてもよい。]
【化8】

【0019】
共役ジエンに基づく構成単位の共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどをあげることができ、これらは1種でもよく、2種以上でもよい。入手容易性の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。また、耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できるという理由から、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のブタジエン単位を有するモノマーがより好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。ブタジエン単位を有するモノマーを使用することにより、共役ジエンに基づく構成単位をブタジエン単位とすることができる。
【0020】
式(I)で表される構成単位の式(I)のX、X及びXは、それぞれ独立に、式(Ia)で表される基、水酸基、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基を表し、X、X及びXの少なくとも1つは、式(Ia)で表される基又は水酸基である。
【0021】
式(Ia)のR及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜6のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜6の置換ヒドロカルビル基、シリル基又は置換シリル基を表し、R及びRは結合して窒素原子と共に環構造を形成していてもよい。
【0022】
本明細書では、ヒドロカルビル基は炭化水素残基を表す。ここで、炭化水素残基とは、炭化水素から水素を除いた一価の基を表す。置換ヒドロカルビル基は、炭化水素残基の1つ以上の水素原子が置換基で置換されている基を表す。ヒドロカルビルオキシ基は、ヒドロキシル基の水素原子がヒドロカルビル基で置換されている基を表し、置換ヒドロカルビルオキシ基は、ヒドロカルビルオキシ基の1つ以上の水素原子が置換基で置換されている基を表す。また、置換シリル基は、シリル基の1つ以上の水素原子が置換基で置換されている基を表す。
【0023】
及びRの炭素原子数が1〜6のヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基などをあげることができる。
【0024】
及びRの炭素原子数が1〜6の置換ヒドロカルビル基としては、窒素原子を有する基、酸素原子を有する基及びケイ素原子を有する基からなる基群から選ばれる少なくとも1種の基を置換基として有する置換ヒドロカルビル基をあげることができる。窒素原子を有する基を置換基として有する基としては、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基などのジアルキルアミノアルキル基をあげることができ、酸素原子を有する基を置換基として有する基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基などのアルコキシアルキル基をあげることができ、ケイ素原子を有する基を置換基として有する基としては、トリメチルシリルメチル基などのトリアルキルシリルアルキル基などをあげることができる。
【0025】
及びRの置換シリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などのトリアルキルシリル基などをあげることができる。
【0026】
及びRが結合した基としては、窒素原子、酸素原子及びケイ素原子からなる原子群から選ばれる少なくとも1種の原子を有していてもよい炭素原子数が1〜12の2価の基があげられる。例えば、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などのアルキレン基;オキシジエチレン基、オキシジプロピレン基などのオキシジアルキレン基;−CHCH−NH−CH−で表される基、−CHCH−N=CH−で表される基などの含窒素基などをあげることができる。
【0027】
及びRが結合した基としては、含窒素基が好ましく、−CHCH−NH−CH−で表される基、−CHCH−N=CH−で表される基がより好ましい。
【0028】
及びRのヒドロカルビル基としては、アルキル基が好ましく、炭素原子数が1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が更に好ましく、メチル基、エチル基、n−ブチル基が特に好ましい。
【0029】
及びRの置換ヒドロカルビル基としては、アルコキシアルキル基が好ましく、炭素原子数が1〜4のアルコキシアルキル基がより好ましい。R及びRの置換シリル基としては、トリアルキルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基がより好ましい。
【0030】
及びRとしては、好ましくは、アルキル基、アルコキシアルキル基、置換シリル基又はR及びRが結合した含窒素基であり、より好ましくは、アルキル基であり、更に好ましくは、炭素原子数が1〜4のアルキル基であり、より更に好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基である。
【0031】
式(Ia)で表される基としては、非環状アミノ基、環状アミノ基をあげることができる。該非環状アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n−プロピル)アミノ基、ジ(イソプロピル)アミノ基、ジ(n−ブチル)アミノ基、ジ(sec−ブチル)アミノ基、ジ(tert−ブチル)アミノ基、ジ(ネオペンチル)アミノ基、エチルメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基;ジ(メトキシメチル)アミノ基、ジ(メトキシエチル)アミノ基、ジ(エトキシメチル)アミノ基、ジ(エトキシエチル)アミノ基などのジ(アルコキシアルキル)アミノ基;ジ(トリメチルシリル)アミノ基、ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノ基などのジ(トリアルキルシリル)アミノ基などをあげることができる。
【0032】
該環状アミノ基としては、1−ピロリジニル基、1−ピペリジノ基、1−ヘキサメチレンイミノ基、1−ヘプタメチレンイミノ基、1−オクタメチレンイミノ基、1−デカメチレンイミノ基、1−ドデカメチレンイミノ基などの1−ポリメチレンイミノ基をあげることができる。また、環状アミノ基としては、1−イミダゾリル基、4,5−ジヒドロ−1−イミダゾリル基、1−イミダゾリジニル基、1−ピペラジニル基、モルホリノ基などもあげることができる。
【0033】
式(Ia)で表される基としては、経済性および入手容易性の観点、及び耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できるという理由から、好ましくは、非環状アミノ基であり、より好ましくは、ジアルキルアミノ基であり、更に好ましくは、炭素原子数が1〜4のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基であり、より更に好ましくは、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n−プロピル)アミノ基、ジ(n−ブチル)アミノ基である。
【0034】
式(I)のX〜Xのヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基をあげることができる。また、置換ヒドロカルビル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基などのアルコキシアルキル基をあげることができる。
【0035】
〜Xのヒドロカルビル基としては、アルキル基が好ましく、炭素原子数が1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。また、X〜Xの置換ヒドロカルビル基としては、アルコキシアルキル基が好ましく、炭素原子数が1〜4のアルコキシアルキル基がより好ましい。
【0036】
〜Xのヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基としては、好ましくは、アルキル基又はアルコキシアルキル基であり、より好ましくは、炭素原子数が1〜4のアルキル基又は炭素原子数が1〜4のアルコキシアルキル基であり、更に好ましくは、炭素原子数が1〜4のアルキル基であり、より更に好ましくは、メチル基又はエチル基である。
【0037】
式(I)のX、X及びXの少なくとも1つは、式(Ia)で表される基又は水酸基である。好ましくは、X、X及びXのうちの2つ以上が、式(Ia)で表される基又は水酸基であり、より好ましくは、X、X及びXのうちの2つが、式(Ia)で表される基又は水酸基である。
【0038】
氷上性能、耐摩耗性、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく高める観点から、式(I)で表される構成単位としては、X、X及びXのうちの2つが非環状アミノ基又は水酸基である構成単位が好ましい。X、X及びXのうちの2つが非環状アミノ基である構成単位としては、ビス(ジアルキルアミノ)アルキルビニルシラン単位が好ましく、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン単位、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単位、ビス(ジ(n−プロピル)アミノ)メチルビニルシラン単位、ビス(ジ(n−ブチル)アミノ)メチルビニルシラン単位がより好ましい。X、X及びXの2つが水酸基である構成単位としては、ジヒドロキシアルキルビニルシラン単位が好ましく、ジヒドロキシメチルビニルシラン単位がより好ましい。
【0039】
上記ジエン系共重合体中の式(I)で表される構成単位の含有量は、氷上性能、耐摩耗性、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できるという理由から、重合体単位質量あたり、好ましくは、0.001mmol/g重合体以上0.1mmol/g重合体以下である。より好ましくは、0.002mmol/g重合体以上0.07mmol/g重合体以下である。更に好ましくは、0.003mmol/g重合体以上0.05mmol/g重合体以下である。
【0040】
上記ジエン系共重合体は、下式(II)で表される基及び/又は下式(III)で表される基を有するケイ素化合物によって重合体の少なくとも一端が変性されてなる重合体である。
【化9】

【0041】
式(II)で表される基を有する基としては、アミド基、カルボン酸エステル基、メタクリロイル基、アクリロイル基などがあげられる。また、式(III)で表される基を有する基としては、オキシジメチレン基、オキシジエチレン基などのオキシジアルキレン基;エポキシ基、テトラヒドロフラニル基などのアルキレンオキシド基などがあげられる。
なお、本明細書において、アルキレンオキシド基は、環状エーテル化合物の環から水素原子を除いた一価の基を表す。
【0042】
ケイ素化合物としては、下式(IV)で表される基を有することが好ましい。
【化10】

[式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜4のヒドロカルビル基又は炭素原子数が1〜4のヒドロカルビルオキシ基を表し、R、R及びRの少なくとも1つがヒドロカルビルオキシ基である。]
【0043】
式(IV)において、R、R及びRのヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基などをあげることができる。また、R、R及びRのヒドロカルビルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシ基をあげることができる。
【0044】
、R及びRのヒドロカルビル基としては、好ましくは、アルキル基であり、より好ましくは、炭素原子数が1〜3のアルキル基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基である。また、R、R及びRのヒドロカルビルオキシ基としては、好ましくは、アルコキシ基であり、より好ましくは、炭素原子数が1〜3のアルコキシ基であり、更に好ましくは、メトキシ基、エトキシ基である。
【0045】
、R及びRとしては、耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できるという理由から、好ましくは、R、R及びRの少なくとも2つがヒドロカルビルオキシ基であり、より好ましくは、R、R及びRの3つがヒドロカルビルオキシ基である。
【0046】
式(II)で表わされる基及び式(IV)で表わされる基を有するケイ素化合物としては、下式(IIa)で表わされる基を有するケイ素化合物があげられる。
【化11】

[式中、mは1〜10の整数を表し、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜4のヒドロカルビル基又は炭素原子数が1〜4のヒドロカルビルオキシ基を表し、R、R及びRの少なくとも1つがヒドロカルビルオキシ基である。]
【0047】
mは、1〜10の整数を表す。耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できるという理由から、好ましくは2以上であり、製造時の経済性を高める観点から、好ましくは4以下である。特に好ましくは3である。
【0048】
、R及びRについて、例示される基および好ましい基は、式(IV)のR、R及びRについて上記した例示される基および好ましい基と同じである。
【0049】
式(IIa)で表わされる基を有するケイ素化合物としては、下式(IIb)又は下式(IIc)で表わされる化合物をあげることができる。
【化12】

[式中、nは1〜10の整数を表し、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜4のヒドロカルビル基又は炭素原子数が1〜4のヒドロカルビルオキシ基を表し、R11、R12及びR13の少なくとも1つがヒドロカルビルオキシ基であり、R14及びR15は、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜10のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜10の置換ヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜10のヒドロカルビルオキシ基又は炭素原子数が1〜10の置換ヒドロカルビルオキシ基を表し、R14及びR15は結合していてもよい。]
【化13】

[式中、p、q及びrは、それぞれ独立に、1〜10の整数を表し、R21〜R29は、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜4のヒドロカルビル基又は炭素原子数が1〜4のヒドロカルビルオキシ基を表し、R21、R22及びR23の少なくとも1つがヒドロカルビルオキシ基であり、R24、R25及びR26の少なくとも1つがヒドロカルビルオキシ基であり、R27、R28及びR29の少なくとも1つがヒドロカルビルオキシ基である。]
【0050】
式(IIb)のnは、1〜10の整数を表す。耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できるという理由から、好ましくは2以上であり、製造時の経済性を高める観点から、好ましくは4以下である。特に好ましくは3である。
【0051】
式(IIb)において、R11、R12及びR13のヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基などをあげることができる。また、R11、R12及びR13のヒドロカルビルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシ基をあげることができる。
【0052】
11、R12及びR13のヒドロカルビル基としては、好ましくは、アルキル基であり、より好ましくは、炭素原子数が1〜3のアルキル基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基である。また、R11、R12及びR13のヒドロカルビルオキシ基としては、好ましくは、アルコキシ基であり、より好ましくは、炭素原子数が1〜3のアルコキシ基であり、更に好ましくは、メトキシ基、エトキシ基である。
【0053】
11、R12及びR13としては、耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できるという理由から、好ましくは、R11、R12及びR13の少なくとも2つがヒドロカルビルオキシ基であり、より好ましくは、R11、R12及びR13の3つがヒドロカルビルオキシ基である。
【0054】
14及びR15のヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基をあげることができる。
【0055】
14及びR15の置換ヒドロカルビル基としては、窒素原子を有する基、酸素原子を有する基及びケイ素原子を有する基からなる基群から選ばれる少なくとも1種の基を置換基として有する置換ヒドロカルビル基をあげることができる。窒素原子を有する基を置換基として有する基としては、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基などのジアルキルアミノアルキル基をあげることができ、酸素原子を有する基を置換基として有する基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基などのアルコキシアルキル基をあげることができ、ケイ素原子を有する基を置換基として有する基としては、トリメチルシリルメチル基、トリエチルシリルメチル基などのトリアルキルシリルアルキル基などをあげることができる。
【0056】
14及びR15のヒドロカルビルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシ基をあげることができる。また、R14及びR15の置換ヒドロカルビルオキシ基としては、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基、エトキシエトキシ基などのアルコキシアルコキシ基をあげることができる。
【0057】
14及びR15が結合した基としては、窒素原子、酸素原子及びケイ素原子からなる原子群から選ばれる少なくとも1種の原子を有していてもよい炭素原子数が2〜12の2価の基があげられる。例えば、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などのアルキレン基;オキシジエチレン基、オキシジプロピレン基などのオキシジアルキレン基;−CHCH−NH−CH−で表される基、−CHCH−N=CH−で表される基などの含窒素基などをあげることができる。
【0058】
14としては、好ましくは、アルキル基であり、より好ましくは、炭素数が1〜4のアルキル基であり、更に好ましくは、メチル基およびエチル基である。
【0059】
15としては、好ましくは、アルキル基であり、より好ましくは、炭素数が1〜4のアルキル基であり、更に好ましくは、メチル基およびエチル基である。
【0060】
式(IIc)のp、q及びrは、それぞれ独立に、1〜10の整数を表す。耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できるという理由から、好ましくは2以上であり、製造時の経済性を高める観点から、好ましくは4以下である。特に好ましくは3である。
【0061】
式(IIc)において、R21〜R29のヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基などをあげることができる。また、R21〜R29のヒドロカルビルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシ基をあげることができる。
【0062】
21〜R29のヒドロカルビル基としては、好ましくは、アルキル基であり、より好ましくは、炭素原子数が1〜3のアルキル基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基である。また、R21〜R29のヒドロカルビルオキシ基としては、好ましくは、アルコキシ基であり、より好ましくは、炭素原子数が1〜3のアルコキシ基であり、更に好ましくは、メトキシ基、エトキシ基である。
【0063】
21、R22及びR23としては、耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できるという理由から、好ましくは、R21、R22及びR23の少なくとも2つがヒドロカルビルオキシ基であり、より好ましくは、R21、R22及びR23の3つがヒドロカルビルオキシ基である。R24、R25及びR26としては、耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できるという理由から、好ましくは、R24、R25及びR26の少なくとも2つがヒドロカルビルオキシ基であり、より好ましくは、R24、R25及びR26の3つがヒドロカルビルオキシ基である。また、R27、R28及びR29としては、耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できるという理由から、好ましくは、R27、R28及びR29の少なくとも2つがヒドロカルビルオキシ基であり、より好ましくは、R27、R28及びR29の3つがヒドロカルビルオキシ基である。
【0064】
式(IIb)で表わされる化合物としては、
N−メチル−N−(トリメトキシシリルメチル)−アセトアミド、
N−メチル−N−(トリエトキシシリルメチル)−アセトアミド、
N−メチル−N−(2−トリメトキシシリルエチル)−アセトアミド、
N−メチル−N−(2−トリエトキシシリルエチル)−アセトアミド、
N−メチル−N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−アセトアミド、
N−メチル−N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−アセトアミド
などのN−アルキル−N−トリアルコキシシリルアルキル−アセトアミド;
N−メチル−N−(トリメトキシシリルメチル)−プロピオンアミド、
N−メチル−N−(トリエトキシシリルメチル)−プロピオンアミド、
N−メチル−N−(2−トリメトキシシリルエチル)−プロピオンアミド、
N−メチル−N−(2−トリエトキシシリルエチル)−プロピオンアミド、
N−メチル−N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−プロピオンアミド、
N−メチル−N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−プロピオンアミド
などのN−アルキル−N−トリアルコキシシリルアルキル−プロピオンアミド等、
N−アルキル−N−トリアルコキシシリルアルキル置換カルボン酸アミドをあげることができる。
【0065】
式(IIb)で表わされる化合物として、好ましくは、
N−アルキル−N−トリアルコキシシリルアルキル置換カルボン酸アミドであり、
より好ましくは、
N−アルキル−N−トリアルコキシシリルアルキル−プロピオンアミドであり、
更に好ましくは、
N−メチル−N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−プロピオンアミド、
N−メチル−N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−プロピオンアミドである。
【0066】
式(IIc)で表わされる化合物としては、
1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルメチル)イソシアヌレート、
1,3,5−トリス(3−トリエトキシシリルメチル)イソシアヌレート、
1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレート、
1,3,5−トリス(3−トリエトキシシリルエチル)イソシアヌレート、
1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、
1,3,5−トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート
などの1,3,5−トリス(トリアルコキシアルキル)イソシアヌレートをあげることができる。
【0067】
式(IIc)で表わされる化合物として、好ましくは、
1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、
1,3,5−トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレートである。
【0068】
式(III)で表わされる基及び式(IV)で表わされる基を有するケイ素化合物としては、下式(IIIa)で表わされるケイ素化合物があげられる。
【化14】

[式中、sは1〜10の整数を表し、R31、R32及びR33は、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜4のヒドロカルビル基又は炭素原子数が1〜4のヒドロカルビルオキシ基を表し、R31、R32及びR33の少なくとも1つがヒドロカルビルオキシ基であり、R34は、炭素原子数が1〜10のヒドロカルビル基又は炭素原子数が1〜10の置換ヒドロカルビル基を表す。]
【0069】
式(IIIa)のsは、1〜10の整数を表す。耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できるという理由から、好ましくは2以上であり、製造時の経済性を高める観点から、好ましくは4以下である。特に好ましくは3である。
【0070】
式(IIIa)において、R31、R32及びR33のヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基などをあげることができる。また、R31、R32及びR33のヒドロカルビルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシ基をあげることができる。
【0071】
31、R32及びR33のヒドロカルビル基としては、好ましくは、アルキル基であり、より好ましくは、炭素原子数が1〜3のアルキル基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基である。また、R31、R32及びR33のヒドロカルビルオキシ基としては、好ましくは、アルコキシ基であり、より好ましくは、炭素原子数が1〜3のアルコキシ基であり、更に好ましくは、メトキシ基、エトキシ基である。
【0072】
31、R32及びR33としては、耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できるという理由から、好ましくは、R31、R32及びR33の少なくとも2つがヒドロカルビルオキシ基であり、より好ましくは、R31、R32及びR33の3つがヒドロカルビルオキシ基である。
【0073】
34のヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基などをあげることができる。
【0074】
34の置換ヒドロカルビル基としては、窒素原子を有する基、酸素原子を有する基及びケイ素原子を有する基からなる基群から選ばれる少なくとも1種の基を置換基として有する置換ヒドロカルビル基をあげることができる。窒素原子を有する基を置換基として有する基としては、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基などのジアルキルアミノアルキル基をあげることができ、酸素原子を有する基を置換基として有する基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基などのアルコキシアルキル基;グリシジル基、テトラヒドロフルフリル基などのアルキレンオキシドアルキル基をあげることができ、ケイ素原子を有する基を置換基として有する基としては、トリメチルシリルメチル基などのトリアルキルシリルアルキル基などをあげることができる。
なお、本明細書において、アルキレンオキシドアルキル基は、アルキル基の1つ以上の水素原子がアルキレンオキシド基で置換されている基を表す。
【0075】
34としては、好ましくは、アルキレンオキシドアルキル基であり、より好ましくは、グリシジル基、テトラヒドロフルフリル基である。
【0076】
式(IIIa)で表わされる化合物としては、
34がアルキル基である化合物として、
3−(メトキシ)プロピルトリメトキシシラン、
3−(エトキシ)プロピルトリメトキシシラン、
3−(n−プロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、
3−(イソプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、
3−(n−ブトキシ)プロピルトリメトキシシラン、
3−(sec−ブトキシ)プロピルトリメトキシシラン、
3−(t−ブトキシ)プロピルトリメトキシシラン
などの3−(アルコキシ)プロピルトリアルコキシシランをあげることができる。
【0077】
34がアルキレンオキシドアルキル基である化合物として、
2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、
3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
などのグリシドキシアルキルトリアルコキシシラン;
2−テトラヒドロフルフリロキシエチルトリメトキシシラン、
3−テトラヒドロフルフリロキシプロピルトリメトキシシラン、
2−テトラヒドロフルフリロキシエチルトリエトキシシラン、
3−テトラヒドロフルフリロキシプロピルトリエトキシシラン
などのテトラヒドロフルフリロキシアルキルトリアルコキシシランをあげることができる。
【0078】
34がアルコキシアルキル基である化合物として、
3−(メトキシメトキシ)プロピルトリメトキシシラン、
3−(メトキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、
3−(エトキシメトキシ)プロピルトリメトキシシラン、
3−(エトキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、
3−(メトキシメトキシ)プロピルトリエトキシシラン、
3−(メトキシエトキシ)プロピルトリエトキシシラン、
3−(エトキシメトキシ)プロピルトリエトキシシラン、
3−(エトキシエトキシ)プロピルトリエトキシシラン
などの3−(アルコキシアルコキシ)プロピルトリアルコキシシランをあげることができる。
【0079】
式(IIIa)で表わされる化合物として、好ましくは、R34がアルキレンオキシドアルキル基である化合物であり、
より好ましくは、
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
3−テトラヒドロフルフリロキシプロピルトリメトキシシラン、
3−テトラヒドロフルフリロキシプロピルトリエトキシシランである。
【0080】
式(II)で表わされる基、式(III)で表わされる基及び式(IV)で表わされる基を有するケイ素化合物としては、3−アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン、3−メタクリロキシアルキルトリアルコキシシランをあげることができる。
【0081】
3−アクリロキシアルキルトリアルコキシシランとしては、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの3−アクリロキシプロピルトリアルコキシシランをあげることができる。
3−メタクリロキシアルキルトリアルコキシシランとしては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランをあげることができる。
【0082】
また、式(II)で表わされる基、式(III)で表わされる基及び式(IV)で表わされる基を有するケイ素化合物としては、トリアルコキシシリルアルキル無水コハク酸、トリアルコキシシリルアルキル無水マレイン酸をあげることができる。
【0083】
トリアルコキシシリルアルキル無水コハク酸としては、3−トリメトキシシリルプロピル無水コハク酸、3−トリエトキシシリルプロピル無水コハク酸などの3−トリアルコキシシリルプロピル無水コハク酸をあげることができる。
トリアルコキシシリルアルキル無水マレイン酸としては、3−トリメトキシシリルプロピル無水マレイン酸、3−トリエトキシシリルプロピル無水マレイン酸などの3−トリアルコキシシリルプロピル無水マレイン酸をあげることができる。
【0084】
上記ジエン系共重合体中の共役ジエンに基づく構成単位(共役ジエン単位)の含有量は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上である。95質量%未満であると、耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できないおそれがある。
【0085】
上記ジエン系共重合体のビニル結合量は、共役ジエン単位の含有量を100モル%として、好ましくは25モル%以下であり、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは15モル%以下である。ビニル結合量が少ないことにより、耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できる。また、該ビニル結合量の下限は特に限定されないが、好ましくは5モル%以上であり、より好ましくは10モル%以上である。該ビニル結合量は、H−NMR測定により1,2−結合(4.94−5.03ppm)のシグナル積分値より求められる。
【0086】
上記ジエン系共重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できるという理由から、好ましくは1〜5であり、より好ましくは1〜2である。分子量分布は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法により、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定し、MwをMnで除すことにより求められる。
【0087】
上記ジエン系共重合体のMwは、1.0×10〜2.0×10であることが好ましく、下限は1.0×10が、上限は1.0×10がより好ましい。
Mwが1.0×10未満ではヒステリシスロスが大きく、低燃費性が悪化するだけでなく、耐摩耗性も低下する傾向がある。一方、Mwが2.0×10を超えると、加工性が著しく低下する傾向がある。重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法により、測定できる。
【0088】
上記ジエン系共重合体の好適な製造方法としては、下記工程A及びBを有する製造方法をあげることができる。
【0089】
(工程A):炭化水素溶媒中で、アルカリ金属触媒により、共役ジエンと下式(V)で表されるビニル化合物とを含む単量体を重合させ、共役ジエンに基づく単量体単位と下式(V)で表されるビニル化合物に基づく単量体単位とを有する重合体鎖の少なくとも一端に、該触媒由来のアルカリ金属を有する重合体を得る工程。
【化15】

[式中、X、X及びXは、それぞれ独立に、下式(Va)で表される基、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基を表し、X、X及びXの少なくとも1つが、下式(Va)で表される基である。]
【化16】

[式中、R及びR10は、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜6のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜6の置換ヒドロカルビル基、シリル基又は置換シリル基を表し、R及びR10は結合して窒素原子と共に環構造を形成していてもよい。]
【0090】
(工程B):工程Aで得られた重合体と下式(II)で表される基及び/又は下式(III)で表される基を有するケイ素化合物とを反応させる工程。
【化17】

【0091】
(工程A)で用いられるアルカリ金属触媒としては、アルカリ金属、有機アルカリ金属化合物、アルカリ金属と極性化合物との錯体、アルカリ金属を有するオリゴマーなどをあげることができる。該アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどをあげることができる。該有機アルカリ金属化合物としては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチルフェニルリチウム、4−フェニルブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、4−シクロペンチルリチウム、ジメチルアミノプロピルリチウム、ジエチルアミノプロピルリチウム、t−ブチルジメチルシリロキシプロピルリチウム、N−モルホリノプロピルリチウム、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、1,4−ジリチオ−2−ブテン、ナトリウムナフタレニド、ナトリウムビフェニリド、カリウムナフタレニドなどをあげることができる。また、アルカリ金属と極性化合物との錯体としては、カリウム−テトラヒドロフラン錯体、カリウム−ジエトキシエタン錯体などをあげることができ、アルカリ金属を有するオリゴマーとしては、α−メチルスチレンテトラマーのナトリウム塩をあげることができる。これらの中でも、有機リチウム化合物又は有機ナトリウム化合物が好ましく、炭素原子数が2〜20の有機リチウム化合物又は有機ナトリウム化合物がより好ましい。
【0092】
(工程A)で用いられる炭化水素溶媒は、有機アルカリ金属化合物触媒を失活させない溶媒であり、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素などをあげることができる。該脂肪族炭化水素としては、プロパン、n−ブタン、iso−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、プロペン、1−ブテン、iso−ブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセンなどをあげることができる。また、芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンをあげることができ、脂環族炭化水素としては、シクロペンタン、シクロヘキサンなどがあげられる。これらは単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いられる。これらの中では、炭素原子数が2〜12の炭化水素が好ましい。
【0093】
(工程A)では、共役ジエンと式(V)で表されるビニル化合物とを含む単量体を重合させ、上述のアルカリ金属触媒由来のアルカリ金属を重合体鎖末端に有する共役ジエン系重合体を製造する。該共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンをあげることができ、これらは単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いられる。中でも、入手容易性の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。また、耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できるという理由から、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のブタジエン単位を有するモノマーがより好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。ブタジエン単位を有するモノマーを使用することにより、共役ジエンに基づく構成単位をブタジエン単位とすることができる。
【0094】
式(V)のX、X及びXは、それぞれ独立に、式(Va)で表される基、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基を表し、X、X及びXの少なくとも1つは、式(Va)で表される基である。
【0095】
式(Va)のR及びR10は、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜6のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜6の置換ヒドロカルビル基、シリル基又は置換シリル基を表し、R及びR10は結合して窒素原子と共に環構造を形成していてもよい。
【0096】
及びR10の炭素原子数が1〜6のヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基などをあげることができる。
【0097】
及びR10の炭素原子数が1〜6の置換ヒドロカルビル基としては、窒素原子を有する基、酸素原子を有する基及びケイ素原子を有する基からなる基群から選ばれる少なくとも1種の基を置換基として有する置換ヒドロカルビル基をあげることができる。窒素原子を有する基を置換基として有する基としては、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基などのジアルキルアミノアルキル基をあげることができ、酸素原子を有する基を置換基として有する基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基などのアルコキシアルキル基をあげることができ、ケイ素原子を有する基を置換基として有する基としては、トリメチルシリルメチル基などのトリアルキルシリルアルキル基などをあげることができる。
【0098】
及びR10の置換シリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などのトリアルキルシリル基などをあげることができる。
【0099】
及びR10が結合した基としては、窒素原子、酸素原子及びケイ素原子からなる原子群から選ばれる少なくとも1種の原子を有していてもよい炭素原子数が1〜12の2価の基があげられる。例えば、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などのアルキレン基;オキシジエチレン基、オキシジプロピレン基などのオキシジアルキレン基;−CHCH−NH−CH−で表される基、−CHCH−N=CH−で表される基などの含窒素基などをあげることができる。
【0100】
及びR10が結合した基としては、含窒素基が好ましく、−CHCH−NH−CH−で表される基、−CHCH−N=CH−で表される基がより好ましい。
【0101】
及びR10のヒドロカルビル基としては、アルキル基が好ましく、炭素原子数が1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が更に好ましく、メチル基、エチル基、n−ブチル基が特に好ましい。R及びR10の置換ヒドロカルビル基としては、アルコキシアルキル基が好ましく、炭素原子数が1〜4のアルコキシアルキル基がより好ましい。R及びR10の置換シリル基としては、トリアルキルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基がより好ましい。
【0102】
及びR10としては、好ましくは、アルキル基、アルコキシアルキル基、置換シリル基又はR及びR10が結合した含窒素基であり、より好ましくは、アルキル基であり、更に好ましくは、炭素原子数が1〜4のアルキル基であり、より更に好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基である。
【0103】
式(Va)で表される基としては、非環状アミノ基、環状アミノ基をあげることができる。
該非環状アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n−プロピル)アミノ基、ジ(イソプロピル)アミノ基、ジ(n−ブチル)アミノ基、ジ(sec−ブチル)アミノ基、ジ(tert−ブチル)アミノ基、ジ(ネオペンチル)アミノ基、エチルメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基;ジ(メトキシメチル)アミノ基、ジ(メトキシエチル)アミノ基、ジ(エトキシメチル)アミノ基、ジ(エトキシエチル)アミノ基などのジ(アルコキシアルキル)アミノ基;ジ(トリメチルシリル)アミノ基、ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノ基などのジ(トリアルキルシリル)アミノ基などをあげることができる。
【0104】
該環状アミノ基としては、1−ピロリジニル基、1−ピペリジノ基、1−ヘキサメチレンイミノ基、1−ヘプタメチレンイミノ基、1−オクタメチレンイミノ基、1−デカメチレンイミノ基、1−ドデカメチレンイミノ基などの1−ポリメチレンイミノ基をあげることができる。また、環状アミノ基としては、1−イミダゾリル基、4,5−ジヒドロ−1−イミダゾリル基、1−イミダゾリジニル基、1−ピペラジニル基、モルホリノ基などもあげることができる。
【0105】
式(Va)で表される基としては、経済性および入手容易性の観点、及び耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できるという理由から、好ましくは、非環状アミノ基であり、より好ましくは、ジアルキルアミノ基であり、更に好ましくは、炭素原子数が1〜4のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基であり、より更に好ましくは、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n−プロピル)アミノ基、ジ(n−ブチル)アミノ基である。
【0106】
式(V)のX〜Xのヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基をあげることができる。また、置換ヒドロカルビル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基などのアルコキシアルキル基をあげることができる。
【0107】
〜Xのヒドロカルビル基としては、アルキル基が好ましく、炭素原子数が1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。また、X〜Xの置換ヒドロカルビル基としては、アルコキシアルキル基が好ましく、炭素原子数が1〜4のアルコキシアルキル基がより好ましい。
【0108】
〜Xのヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基としては、好ましくは、アルキル基又はアルコキシアルキル基であり、より好ましくは、炭素原子数が1〜4のアルキル基又は炭素原子数が1〜4のアルコキシアルキル基であり、更に好ましくは、炭素原子数が1〜4のアルキル基であり、より更に好ましくは、メチル基又はエチル基である。
【0109】
式(V)のX、X及びXの少なくとも1つは、式(Va)で表される基である。好ましくは、X、X及びXのうちの2つ以上が、式(Va)で表される基であり、より好ましくは、X、X及びXのうちの2つが、式(Va)で表される基である。
【0110】
(工程A)で用いられる式(V)で表されるビニル化合物としては、X〜Xの一つが式(Va)で表される非環状アミノ基であり、二つがヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基である化合物として、(ジアルキルアミノ)ジアルキルビニルシラン、{ジ(トリアルキルシリル)アミノ}ジアルキルビニルシラン、(ジアルキルアミノ)ジアルコキシアルキルビニルシランなどをあげることができる。
(ジアルキルアミノ)ジアルキルビニルシランとしては、(ジメチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(エチルメチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(エチル−n−プロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(エチルイソプロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジ(n−プロピル)アミノ)ジメチルビニルシラン、(ジイソプロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(n−ブチル−n−プロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジ(n−ブチル)アミノ)ジメチルビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジエチルビニルシラン、(エチルメチルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジエチルビニルシラン、(エチル−n−プロピルアミノ)ジエチルビニルシラン、(エチルイソプロピルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジ(n−プロピル)アミノ)ジエチルビニルシラン、(ジイソプロピルアミノ)ジエチルビニルシラン、(n−ブチル−n−プロピルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジ(n−ブチル)アミノ)ジエチルビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジプロピルビニルシラン、(エチルメチルアミノ)ジプロピルビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジプロピルビニルシラン、(エチル−n−プロピルアミノ)ジプロピルビニルシラン、(エチルイソプロピルアミノ)ジプロピルビニルシラン、(ジ(n−プロピル)アミノ)ジプロピルビニルシラン、(ジイソプロピルアミノ)ジプロピルビニルシラン、(n−ブチル−n−プロピルアミノ)ジプロピルビニルシラン、(ジ(n−ブチル)アミノ)ジプロピルビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジブチルビニルシラン、(エチルメチルアミノ)ジブチルビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジブチルビニルシラン、(エチル−n−プロピルアミノ)ジブチルビニルシラン、(エチルイソプロピルアミノ)ジブチルビニルシラン、(ジ(n−プロピル)アミノ)ジブチルビニルシラン、(ジイソプロピルアミノ)ジブチルビニルシラン、(n−ブチル−n−プロピルアミノ)ジブチルビニルシラン、(ジ(n−ブチル)アミノ)ジブチルビニルシランなどをあげることができる。
{ジ(トリアルキルシリル)アミノ}ジアルキルビニルシランとしては、{ジ(トリメチルシリル)アミノ}ジメチルビニルシラン、{ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノ}ジメチルビニルシラン、{ジ(トリメチルシリル)アミノ}ジエチルビニルシラン、{ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノ}ジエチルビニルシランなどをあげることができる。
(ジアルキルアミノ)ジアルコキシアルキルビニルシランとしては、(ジメチルアミノ)ジメトキシメチルビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジメトキシエチルビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジエトキシメチルビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジエトキシエチルビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジメトキシメチルビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジメトキシエチルビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジエトキシメチルビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジエトキシエチルビニルシランなどをあげることができる。
【0111】
〜Xのうちの二つが式(Va)で表される非環状アミノ基であり、一つがヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基である化合物として、ビス(ジアルキルアミノ)アルキルビニルシラン、ビス{ジ(トリアルキルシリル)アミノ}アルキルビニルシラン、ビス(ジアルキルアミノ)アルコキシアルキルビニルシランなどをあげることができる。
ビス(ジアルキルアミノ)アルキルビニルシランとしては、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチル−n−プロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルイソプロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ(n−プロピル)アミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジイソプロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(n−ブチル−n−プロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ(n−ブチル)アミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(エチルメチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(エチル−n−プロピルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(エチルイソプロピルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジ(n−プロピル)アミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジイソプロピルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(n−ブチル−n−プロピルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジ(n−ブチル)アミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)プロピルビニルシラン、ビス(エチルメチルアミノ)プロピルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)プロピルビニルシラン、ビス(エチル−n−プロピルアミノ)プロピルビニルシラン、ビス(エチルイソプロピルアミノ)プロピルビニルシラン、ビス(ジ(n−プロピル)アミノ)プロピルビニルシラン、ビス(ジイソプロピルアミノ)プロピルビニルシラン、ビス(n−ブチル−n−プロピルアミノ)プロピルビニルシラン、ビス(ジ(n−ブチル)アミノ)プロピルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ブチルビニルシラン、ビス(エチルメチルアミノ)ブチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ブチルビニルシラン、ビス(エチル−n−プロピルアミノ)ブチルビニルシラン、ビス(エチルイソプロピルアミノ)ブチルビニルシラン、ビス(ジ(n−プロピル)アミノ)ブチルビニルシラン、ビス(ジイソプロピルアミノ)ブチルビニルシラン、ビス(n−ブチル−n−プロピルアミノ)ブチルビニルシラン、ビス(ジ(n−ブチル)アミノ)ブチルビニルシランなどをあげることができる。
ビス{ジ(トリアルキルシリル)アミノ}アルキルビニルシランとしては、ビス{ジ(トリメチルシリル)アミノ}メチルビニルシラン、ビス{ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノ}メチルビニルシラン、ビス{ジ(トリメチルシリル)アミノ}エチルビニルシラン、ビス{ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノ}エチルビニルシランなどをあげることができる。
ビス(ジアルキルアミノ)アルコキシアルキルビニルシランとしては、ビス(ジメチルアミノ)メトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メトキシエチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エトキシエチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メトキシメチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メトキシエチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エトキシメチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エトキシエチルビニルシランなどをあげることができる。
【0112】
〜Xのうちの三つが式(Va)で表される非環状アミノ基である化合物として、トリ(ジアルキルアミノ)ビニルシランなどをあげることができる。
例えば、トリ(ジメチルアミノ)ビニルシラン、トリ(エチルメチルアミノ)ビニルシラン、トリ(ジエチルアミノ)ビニルシラン、トリ(エチルプロピルアミノ)ビニルシラン、トリ(ジプロピルアミノ)ビニルシラン、トリ(ブチルプロピルアミノ)ビニルシランなどをあげることができる。
【0113】
〜Xのうちの二つが式(Va)で表される環状アミノ基であり、一つがヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基である化合物として、ビス(モルホリノ)メチルビニルシラン、ビス(ピペリジノ)メチルビニルシラン、ビス(4,5−ジヒドロイミダゾリル)メチルビニルシラン、ビス(ヘキサメチレンイミノ)メチルビニルシランなどをあげることができる。
【0114】
、X及びXのうちの二つが式(Va)で表される基である式(V)で表されるビニル化合物として、好ましくは、X、X及びXのうちの二つが非環状アミノ基であるビニル化合物であり、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性、耐摩耗性をバランスよく向上できるという理由から、より好ましくは、ビス(ジアルキルアミノ)アルキルビニルシランであり、更に好ましくは、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ(n−プロピル)アミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ(n−ブチル)アミノ)メチルビニルシランである。中でも、化合物の入手性の観点、及び耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をよりバランスよく向上できるという理由から、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ(n−ブチル)アミノ)メチルビニルシランが好ましい。
【0115】
(工程A)では、共役ジエンと式(V)で表されるビニル化合物とに、他の単量体とを組み合わせて重合を行ってもよい。
【0116】
(工程A)の重合は、共役ジエン単位のビニル結合量を調整する剤、共役ジエン系重合体鎖中での共役ジエン単位と共役ジエン以外の単量体に基づく構成単位の分布を調整する剤(以下、総称して「調整剤」と記す。)などの存在下で行ってもよい。このような剤としては、エーテル化合物、第三級アミン、ホスフィン化合物などをあげることができる。該エーテル化合物としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサンなど環状のエーテル;ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどの脂肪族モノエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどの脂肪族ジエーテル;ジフェニルエーテル、アニソールなどの芳香族エーテルなどがあげられる。該第三級アミンとして、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、キノリンなどをあげることができる。また、該ホスフィン化合物として、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどをあげることができる。これらは単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
(工程A)での重合温度は、通常25〜100℃であり、好ましくは35〜90℃である。さらに好ましくは40〜80℃である。重合時間は、通常10分〜5時間である。
【0118】
(工程B)において、工程Aで調製された重合体に接触させる式(II)で表される基及び/又は式(III)で表される基を有するケイ素化合物の量は、該ケイ素化合物中のケイ素原子、特に、式(IV)で表される基を有するケイ素原子のモル換算として、アルカリ金属触媒由来のアルカリ金属1モルあたり、通常、0.1〜3モルであり、好ましくは、0.5〜2モルであり、より好ましくは、0.6〜1.5モルである。
【0119】
(工程B)において、工程Aで調製された重合体と式(II)で表される基及び/又は式(III)で表される基を有するケイ素化合物とを接触させる温度は、通常25〜100℃であり、好ましくは35〜90℃である。さらに好ましくは40〜80℃である。接触させる時間は、通常、60秒〜5時間であり、好ましくは5分〜1時間であり、より好ましくは15分〜1時間である。
【0120】
本発明の製造方法においては、必要に応じて、アルカリ金属触媒による単量体の重合開始から重合停止において、共役ジエン系重合体の炭化水素溶液にカップリング剤を添加してもよい。カップリング剤としては、下式(VI)で表される化合物をあげることができる。
41ML4−a (VI)
(式中、R41はアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基または芳香族残基を表し、Mはケイ素原子またはスズ原子を表し、Lはハロゲン原子またはヒドロカルビルオキシ基を表し、aは0〜2の整数を表す。)
ここで、芳香族残基は、芳香族炭化水素から芳香環に結合している水素を除いた一価の基を表す。
【0121】
式(VI)で表されるカップリング剤としては、四塩化珪素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、四塩化スズ、メチルトリクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、トリメチルクロロスズ、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、テトラエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエトキシジエチルシランなどをあげることができる。
【0122】
カップリング剤の添加量は、アルカリ金属触媒由来のアルカリ金属1モル当たり、共役ジエン系重合体の加工性の観点から、好ましくは0.03モル以上であり、より好ましくは0.05モル以上である。また、氷上性能と操縦安定性の観点から、好ましくは0.4モル以下であり、より好ましくは0.3モル以下である。
【0123】
ジエン系共重合体は、公知の回収方法、例えば、(1)ジエン系共重合体の炭化水素溶液に凝固剤を添加する方法、(2)ジエン系共重合体の炭化水素溶液にスチームを添加する方法によって、ジエン系共重合体の炭化水素溶液から回収することができる。回収したジエン系共重合体は、バンドドライヤーや押出型ドライヤーなどの公知の乾燥機で乾燥してもよい。
【0124】
また、ジエン系共重合体の製造方法においては、加水分解などにより、重合体の式(Ia)で表される基を水酸基に置換させる処理を行ってもよい。該処理は、重合体単独の状態で行ってもよく、後述のような組成物の状態で行ってもよい。加水分解する方法としては、例えば、スチームストリッピングによる方法等の公知の方法が挙げられる。上記処理により、式(I)のX〜Xを水酸基とすることができる。
【0125】
上記ジエン系共重合体は、ゴム成分としてゴム組成物に用いることができる。なお、上記ジエン系共重合体は、他のゴム成分や添加剤などと併用してもよい。
【0126】
上記ジエン系共重合体の含有量は、全ゴム成分(上記ジエン系共重合体成分、他のゴム成分の全量)100質量%中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、30質量%以上が特に好ましい。5質量%未満であると、氷上性能とドライ路面での操縦安定性能の改善効果が得られにくくなる傾向がある。上記ジエン系共重合体の含有量は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましく、60質量%以下であることが特に好ましい。90質量%を超えると、破壊強度が悪化する傾向がある。
【0127】
本発明では、上記ジエン系共重合体と共にイソプレン系ゴムが使用される。上記ジエン系共重合体と、イソプレン系ゴムを併用することにより、耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性をバランスよく向上できる。
【0128】
イソプレン系ゴムとしては、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、改質天然ゴム等が挙げられる。NRには、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)も含まれ、改質天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等が挙げられる。また、NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。イソプレン系ゴムのなかでも、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性能、及び耐摩耗性をバランスよく示すことから、NRが好ましい。
【0129】
イソプレン系ゴムの含有量は、全ゴム成分100質量%中、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、40質量%以上が特に好ましい。10質量%未満であると、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性能、及び耐摩耗性をバランスよく得られないおそれがある。イソプレン系ゴムの含有量は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましく、60質量%以下が特に好ましく、50質量%以下であることが最も好ましい。90質量%を超えると、氷上性能とドライ路面での操縦安定性能の改善効果が充分に得られないおそれがある。
【0130】
上記ジエン系共重合体、イソプレン系ゴム以外に使用できるゴム成分としては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、エチレン−オクテン共重合体などが挙げられる。なかでも、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性能、及び耐摩耗性をバランスよく示すことから、BR、SBRが好ましい。BRを配合することにより、耐摩耗性を向上することができる。これらのゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0131】
添加剤としては、公知のものを用いることができ、硫黄などの加硫剤;チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤などの加硫促進剤;ステアリン酸、酸化亜鉛などの加硫活性化剤;有機過酸化物;シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどの充填剤;シランカップリング剤;伸展油;加工助剤;老化防止剤;滑剤を例示することができる。
【0132】
充填剤の配合量は、ゴム成分100質量部あたり、通常10〜150質量部である。また、該配合量は、耐摩耗性および強度の観点から、好ましくは20質量部以上であり、より好ましくは30質量部以上である。また、補強性を高める観点から、好ましくは120質量部以下であり、より好ましくは100質量部以下である。
【0133】
上記シリカとしては、乾式シリカ(無水ケイ酸)、湿式シリカ(含水ケイ酸)、コロイダルシリカ、沈降シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどをあげることができ、シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは80m/g以上、更に好ましくは120m/g以上、特に好ましくは150m/g以上である。また、該NSAは、好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。チッ素吸着比表面積が50m/g未満のシリカでは補強効果が小さく耐摩耗性が低下する傾向があり、300m/gを超えるシリカでは分散性が悪く、ヒステリシスロスが増大し燃費性能が低下する傾向がある。
なお、シリカのチッ素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0134】
シリカの配合量は、全ゴム成分100質量部に対して、10〜150質量部が好ましく、下限は20質量部、上限は100質量部がより好ましい。下限は30質量部が更に好ましく、40質量部が特に好ましい。上限は80質量部が更に好ましく、70質量部が特に好ましく、60質量部が最も好ましい。シリカの配合量が10質量部未満であると耐摩耗性、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性が十分でない傾向があり、一方、シリカの配合量が150質量部を超えると、加工性が悪化する傾向がある。また、氷上性能、ドライ路面での操縦安定性が悪化するおそれもある。シリカは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0135】
シリカと共にシランカップリング剤を配合することが好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどがあげられる。なかでも、補強性改善効果などの点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド及び3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドが好ましい。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0136】
本発明では、補強材としてカーボンブラックを含有することが好ましい。カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、80〜280m/gが好ましく、下限は100m/g、上限は250m/gであることがより好ましい。上限は200m/gであることが更に好ましく、150m/gであることが特に好ましい。カーボンブラックのNSAが80m/g未満では十分なウェットグリップ性能が得られず、また耐摩耗性が低下する傾向がある。一方、280m/gを超えると、分散性に劣り、耐摩耗性が低下する傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
【0137】
カーボンブラックの含有量は、全ゴム成分100質量部に対して5〜150質量部が好ましく、下限は10質量部、上限は100質量部がより好ましい。上限は60質量部が更に好ましく、20質量部が特に好ましい。カーボンブラックの含有量が5質量部未満では、耐摩耗性が低下する傾向がある。一方、150質量部を超えると、加工性が悪化する傾向がある。カーボンブラックは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0138】
上記加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジサルファイド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤をあげることができ、その使用量は、ゴム成分100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましく、さらに好ましくは0.2〜3質量部である。
【0139】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫(架橋)する方法等により製造できる。
【0140】
<スタッドレスタイヤ>
本発明のスタッドレスタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。すなわち、必要に応じて前記各種薬品を配合したゴム組成物を未加硫の段階でトレッドなどのタイヤの各部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを得る。このようにして得られた本発明のスタッドレスタイヤは、耐摩耗性と氷上性能とドライ路面での操縦安定性を両立させることができる。
【実施例】
【0141】
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
重合体の分析および物性評価は次の方法で行った。
【0142】
1.重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)
下記の条件(1)〜(8)でゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定した。そして、測定したMw、Mnから重合体の分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
(1)装置:東ソー社製HLC−8020
(2)分離カラム:東ソー社製GMH−XL(2本直列)
(3)測定温度:40℃
(4)キャリア:テトラヒドロフラン
(5)流量:0.6mL/分
(6)注入量:5μL
(7)検出器:示差屈折
(8)分子量標準:標準ポリスチレン
【0143】
2.ビニル結合量(単位:モル%)
日本電子(株)製JNM−ECAシリーズのNMR装置を用い、H−NMR測定による1,4−結合(5.30−5.50ppm)と1,2−結合(4.94−5.03ppm)のシグナル強度比より計算を行った。なお、サンプルは、合成した重合体を1g当り15mlのトルエンに溶解させ、それぞれ30mlのメタノール中にゆっくり注ぎ込んで精製した後、乾燥させたものを重クロロホルム溶液として使用した。
【0144】
3.動的粘弾性試験
各加硫ゴム組成物について、ティ・エス・インスツルメント(株)製の粘弾性測定試験機を用いて、温度0℃、周波数5Hz、振幅0.1%における弾性率(0.1%G*)、及び振幅40%における弾性率(40%G*)から(0.1%G*)を引いた値(ΔG*)を測定した。
氷上性能とドライ路面での操縦安定性のバランス指標として、S=(ΔG*)/(0.1%G*)で表される指標Sを用い(Sは0<S<1の値である)、比較例1を100として指数表示した。Sが小さいほど、氷上性能とドライ路面での操縦安定性のバランスが良いことを示す。
【0145】
4.LAT摩耗試験
LAT試験機(Laboratory Abration and Skid Tester)を用い、荷重50N、速度20km/h、スリップアングル5°の条件にて、各加硫ゴム組成物の容積損失量を測定した。表1の数値(LAT指数)は、比較例1の容積損失量を100としたときの相対値である。当該数値が大きいほど耐摩耗性に優れている。
【0146】
以下、製造例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
シクロヘキサン:関東化学(株)製の無水シクロヘキサン
ブタジエン:高千穂化学工業(株)製の1,3−ブタジエン
THF:関東化学(株)製のテトラヒドロフラン
シラン溶液(1):信越化学工業(株)製のビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン3mlと無水シクロヘキサン7.5mlの混合溶液
ブチルリチウム溶液:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
IPA:関東化学(株)製のイソプロパノール
シラン溶液(2):信越化学工業(株)製の1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(式(IIc)で表わされるケイ素化合物)0.7mlと無水シクロヘキサン6mlの混合溶液
シラン溶液(3):信越化学工業(株)製の3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(式(III)で表される基を有するケイ素化合物(式(IIIa)で表わされるケイ素化合物))3mlと無水シクロヘキサン6mlの混合溶液
シラン溶液(4):信越化学工業(株)製のN−(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)スクシンイミド(式(IIb)で表わされるケイ素化合物)3mlと無水シクロヘキサン6mlの混合溶液
BHT溶液:関東化学(株)製の2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを無水ヘキサン20mlに溶解させて調製した
メタノール:関東化学(株)製のメタノール
【0147】
製造例(1)(重合体(1)の合成)
反応釜(3Lの耐圧ステンレス容器)を窒素置換し、窒素雰囲気を保持しながらシクロヘキサンを1800ml、ブタジエンを150g、シラン溶液(1)を1ml(ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシランを1.5mmol)、THF1.5mlを投入し、撹拌を開始した。次に容器内温度を40℃に昇温し、ブチルリチウム溶液を1ml投入し、重合を開始させた。3時間撹拌後、シラン溶液(2)を3ml(1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを0.5mmol)添加し、15分撹拌した。重合体溶液にIPA0.5ml及びBHT溶液1mlを添加し、さらに重合体溶液を5分間撹拌した。さらに重合体溶液を取り出し、3Lメタノール中に添加し、重合物を凝固させ、一晩風乾し、24時間減圧乾燥を行い、重合体を得た。収率は96%であった。分析の結果、得られた重合体(1)のMwは29.5×10、Mw/Mnは1.4であった。また、重合体(1)のビニル結合量は、共役ジエン単位の含有量100モル%中11.5モル%であった。
なお、投入量から計算される、重合体中の式(I)で表される構成単位の含有量は、0.01mmol/g重合体であった。ジエン系共重合体中の共役ジエンに基づく構成単位の含有量は、98.4質量%であった。
【0148】
製造例(2)(重合体(2)の合成)
反応釜(3Lの耐圧ステンレス容器)を窒素置換し、窒素雰囲気を保持しながらシクロヘキサンを1800ml、ブタジエンを150g、THF1.5mlを投入し、撹拌を開始した。次に容器内温度を40℃に昇温し、ブチルリチウム溶液を1ml投入し、重合を開始させた。3時間撹拌後、シラン溶液(1)を1ml(ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシランを1.5mmol)添加し、15分撹拌した。重合体溶液にIPA0.5ml及びBHT溶液1mlを添加し、さらに重合体溶液を5分間撹拌した。さらに重合体溶液を取り出し、3Lメタノール中に添加し、重合物を凝固させ、一晩風乾し、24時間減圧乾燥を行い、重合体を得た。収率は96%であった。分析の結果、得られた重合体(2)のMwは26.1×10、Mw/Mnは1.3であった。また、重合体(2)のビニル結合量は、共役ジエン単位の含有量100モル%中11.5モル%であった。
なお、投入量から計算される、重合体中の式(I)で表される構成単位の含有量は、0.01mmol/g重合体であった。ジエン系共重合体中の共役ジエンに基づく構成単位の含有量は、98.4質量%であった。
【0149】
製造例(3)(重合体(3)の合成)
反応釜(3Lの耐圧ステンレス容器)を窒素置換し、窒素雰囲気を保持しながらシクロヘキサンを1800ml、ブタジエンを150g、シラン溶液(1)を1ml(ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシランを1.5mmol)、THF1.5mlを投入し、撹拌を開始した。次に容器内温度を40℃に昇温し、ブチルリチウム溶液を1ml投入し、重合を開始させた。30分撹拌後、シラン溶液(1)を1ml(ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシランを1.5mmol)添加し2.5時間撹拌した。さらにシラン溶液(2)を3ml(1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを0.5mmol)添加し、15分間撹拌した。重合体溶液にIPA0.5ml及びBHT溶液1mlを添加し、さらに重合体溶液を5分間撹拌した。さらに重合体溶液を取り出し、3Lメタノール中に添加し、重合物を凝固させ、一晩風乾し、24時間減圧乾燥を行い、重合体を得た。収率は95%であった。分析の結果、得られた重合体(3)のMwは32.1×10、Mw/Mnは1.6であった。また、重合体(3)のビニル結合量は、共役ジエン単位の含有量100モル%中12.1モル%であった。
なお、投入量から計算される、重合体中の式(I)で表される構成単位の含有量は、0.02mmol/g重合体であった。ジエン系共重合体中の共役ジエンに基づく構成単位の含有量は、97.9質量%であった。
【0150】
製造例(4)(重合体(4)の合成)
重合体溶液にIPA0.5ml及びBHT溶液1mlを添加し、さらに重合体溶液を5分間撹拌するまでは、製造例(1)と同様の方法により実施した。重合体溶液を5分間撹拌した後、スチームストリッピングによって重合体溶液から重合体を得た。収率は92%であった。得られた重合体の分析の結果、得られた重合体(4)のMwは34.5×10、Mw/Mnは1.6であった。また、重合体(4)のビニル結合量は、共役ジエン単位の含有量100モル%中11.4モル%であった。
なお、投入量から計算される、重合体中の式(I)で表される構成単位の含有量は、0.01mmol/g重合体であった。ジエン系共重合体中の共役ジエンに基づく構成単位の含有量は、98.4質量%であった。
【0151】
製造例(5)(重合体(5)の合成)
反応釜(3Lの耐圧ステンレス容器)を窒素置換し、窒素雰囲気を保持しながらシクロヘキサンを1800ml、ブタジエンを150g、シラン溶液(1)を1ml(ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシランを1.5mmol)、THF1.5mlを投入し、撹拌を開始した。次に容器内温度を40℃に昇温し、ブチルリチウム溶液を1ml投入し、重合を開始させた。3時間撹拌後、シラン溶液(3)を3ml(3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを4.5mmol)添加し、15分撹拌した。重合体溶液にIPA0.5ml及びBHT溶液1mlを添加し、さらに重合体溶液を5分間撹拌した。さらに重合体溶液を取り出し、3Lメタノール中に添加し、重合物を凝固させ、一晩風乾し、24時間減圧乾燥を行い、重合体を得た。収率はほぼ100%であった。分析の結果、得られた重合体(5)のMwは30.5×10、Mw/Mnは1.2であった。また、重合体(5)のビニル結合量は、共役ジエン単位の含有量100モル%中11.7モル%であった。
なお、投入量から計算される、重合体中の式(I)で表される構成単位の含有量は、0.01mmol/g重合体であった。ジエン系共重合体中の共役ジエンに基づく構成単位の含有量は、98.4質量%であった。
【0152】
製造例(6)(重合体(6)の合成)
反応釜(3Lの耐圧ステンレス容器)を窒素置換し、窒素雰囲気を保持しながらシクロヘキサンを1800ml、ブタジエンを150g、シラン溶液(1)を1ml(ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシランを1.5mmol)、THF1.5mlを投入し、撹拌を開始した。次に容器内温度を40℃に昇温し、ブチルリチウム溶液を1ml投入し、重合を開始させた。3時間撹拌後、シラン溶液(4)を3ml(N−(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)スクシンイミドを4.0mmol)添加し、15分撹拌した。重合体溶液にIPA0.5ml及びBHT溶液1mlを添加し、さらに重合体溶液を5分間撹拌した。さらに重合体溶液を取り出し、3Lメタノール中に添加し、重合物を凝固させ、一晩風乾し、24時間減圧乾燥を行い、重合体を得た。収率はほぼ98%であった。分析の結果、得られた重合体(6)のMwは31.2×10、Mw/Mnは1.3であった。また、重合体(6)のビニル結合量は、共役ジエン単位の含有量100モル%中11.8モル%であった。
なお、投入量から計算される、重合体中の式(I)で表される構成単位の含有量は、0.01mmol/g重合体であった。ジエン系共重合体中の共役ジエンに基づく構成単位の含有量は、98.4質量%であった。
【0153】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
重合体(1)〜(6):上記製造例(1)〜(6)で調製した重合体(1)〜(6)
NR:天然ゴム(TSR20)
BR:宇部興産(株)製のハイシスBR150B
CB:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(チッ素吸着比表面積(NSA):125m/g)
シリカ:デグッサ社製のウルトラシルVN3(チッ素吸着比表面積(NSA):175m/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
オイル:出光興産(株)製のミネラルオイルPW−380
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0154】
実施例1〜8及び比較例1,2
表1に示す配合内容(表中の各種薬品の数値は質量部を示す)に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間、0.5mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0155】
得られた加硫ゴム組成物を使用して、上記試験方法により評価を行った。それぞれの試験結果を表1に示す。
【0156】
【表1】

【0157】
表1に示す様に、実施例では、指標Sが低い為、氷上性能とドライ路面での操縦安定性のバランスが良い事を示しており、かつLAT指数も高く、耐摩耗性にも優れている事を示している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエンに基づく構成単位と下式(I)で表される構成単位とを有する共役ジエン系重合体であって、下式(II)で表される基及び/又は下式(III)で表される基を有するケイ素化合物によって重合体の少なくとも一端が変性されてなるジエン系共重合体と、イソプレン系ゴムとを含むことを特徴とするゴム組成物。
【化1】

[式中、X、X及びXは、それぞれ独立に、下式(Ia)で表される基、水酸基、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基を表し、X、X及びXの少なくとも1つが、下式(Ia)で表される基又は水酸基である。]
【化2】

[式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜6のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜6の置換ヒドロカルビル基、シリル基又は置換シリル基を表し、R及びRは結合して窒素原子と共に環構造を形成していてもよい。]
【化3】

【請求項2】
式(Ia)のR及びRが炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
式(I)のX、X及びXのうちの2つが式(Ia)で表される基又は水酸基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
ケイ素化合物が下式(IV)で表される基を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【化4】

[式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜4のヒドロカルビル基又は炭素原子数が1〜4のヒドロカルビルオキシ基を表し、R、R及びRの少なくとも1つがヒドロカルビルオキシ基である。]
【請求項5】
ケイ素化合物が下式(IIa)で表わされる基を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【化5】

[式中、mは1〜10の整数を表し、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜4のヒドロカルビル基又は炭素原子数が1〜4のヒドロカルビルオキシ基を表し、R、R及びRの少なくとも1つがヒドロカルビルオキシ基である。]
【請求項6】
前記ジエン系共重合体のビニル結合量が、前記共役ジエンに基づく構成単位の含有量を100モル%として、5〜25モル%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記ジエン系共重合体中の共役ジエンに基づく構成単位の含有量が95質量%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項8】
ゴム成分100質量部に対してシリカを10〜150質量部含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項9】
ゴム成分100質量部に対してカーボンブラックを5〜150質量部含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したスタッドレスタイヤ。


【公開番号】特開2012−131891(P2012−131891A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284550(P2010−284550)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】