説明

ゴム組成物

【課題】タイヤのサイプ底のクラック発生を制御すると共に、氷上性能及びタイヤ耐久性の良好なゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤの提供。
【解決手段】ジエン系ゴム100重量部、熱膨張性マイクロカプセル1〜20重量部及び平均粒径D50が3〜15μmでアスペクト比が10〜25のウォラストナイト6〜20重量部を含んでなるゴム組成物及び更にジエン系ゴム100重量部に対してシランカップリング剤0.1〜5重量部を含んでなる組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム組成物に関し、更に詳しくは氷上性能及び耐久性に優れた、例えばスタッドレスタイヤのトレッド部に用いるのに適したゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スタッドレスタイヤの氷上性能を向上させる手段として、従来は、ガラス繊維、クルミ、無機針状物、多孔質粒子などの異物を配合してこれらの引っ掻き効果を狙う方法(特許文献1〜3参照)と、中空カプセル、発泡剤などを配合し、これらによってゴムに中空部位を作ることで吸水効果を狙う方法(特許文献4参照)とが主流である。しかしながら、前者の場合には、配合した異物の脱落、異物による耐摩耗性の悪化などの問題があり、後者の場合には、ゴムに中空部位が存在するがゆえに、耐摩耗性の悪化を生じ、またスタッドレスタイヤに特有のサイプが多いブロックパターンに起因してタイヤサイプ底のクラック発生、引裂き発生などの問題がある。
【0003】
【特許文献1】特開平10−147106号公報
【特許文献2】特開平9−218689号公報
【特許文献3】特開2002−30183号公報
【特許文献4】特開1996−188012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、タイヤのサイプ底のクラック発生を制御すると共に、氷上性能及びタイヤ耐久性の良好なゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従えば、ジエン系ゴム100重量部、熱膨張性マイクロカプセル1〜20重量部及び平均粒径D50が3〜15μmでアスペクト比が10〜25のウォラストナイト6〜20重量部を含んでなるゴム組成物並びにそれを用いた空気入りタイヤが提供される。
【0006】
本発明に従えば、ジエン系ゴム100重量部に対し、更にシランカップリング剤0.1〜5重量部を含むゴム組成物並びにそれを用いた空気入りタイヤが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ジエン系ゴム、熱膨張性マイクロカプセル及び特定のウォラストナイトを併用することによって、タイヤ表面のサイプ底のクラック抑制が図れ、十分な氷上性能とタイヤ耐久性の両立を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において使用するジエン系ゴムは、タイヤ用として使用することができる任意のジエン系ゴム、例えば天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)などをあげることができ、これらは単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
【0009】
本発明において使用する熱膨張性マイクロカプセルは、ジエン系ゴム100重量部に対し、1〜20重量部、好ましくは、3〜10重量部配合される。この配合量が少な過ぎると本発明の所望の効果が得られず、逆に多過ぎるとゴム組成物の耐摩耗性の低下が著しくなるので好ましくない。
【0010】
本発明で使用する熱膨張性マイクロカプセルは、熱により気化して気体を発生する液体を熱可塑性樹脂に内包した熱膨張性熱可塑性樹脂粒子であり、この粒子をその膨張開始温度以上の温度、通常140〜190℃の温度で加熱して膨張させることによって、その熱可塑性樹脂からなる外殻中に気体を封入した気体封入熱可塑性樹脂粒子となる。この熱膨張性マイクロカプセルの粒子径は、特に限定はされないが、膨張前で5〜300μmが好ましく、さらに好ましくは10〜200μmである。
【0011】
このような熱膨張性マイクロカプセルとしては、例えば、現在、松本油脂製薬(株)より商品名「マツモトマイクロスフェアーF−85」又は「マツモトマイクロスフェアーF−100」等として入手可能である。
【0012】
前記気体封入熱可塑性樹脂粒子の外殻成分を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば(メタ)アクリロニトリルの重合体、また(メタ)アクリロニトリル含有量の高い共重合体が好適に用いられる。その共重合体の場合の他のモノマー(コモノマー)としては、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、スチレン系モノマー、(メタ)アクリレート系モノマー、酢酸ビニル、ブタジエン、ビニルピリジン、クロロプレン等のモノマーが用いられる。なお、上記の熱可塑性樹脂は、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアヌレート等の架橋剤で架橋可能にされていてもよい。架橋形態については、未架橋が好ましいが、熱可塑性樹脂としての性質を損わない程度に部分的に架橋していてもかまわない。
【0013】
前記の熱により気化して気体を発生する液体としては、例えばn−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ブタン、イソブタン、ヘキサン、石油エーテルのような炭化水素類、塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロルエチレンのような塩素化炭化水素のような液体が挙げられる。
【0014】
本発明に従えば、前記ゴム組成物に平均粒径D50(即ち粒径加積曲線から求めた、通過重量百分率が50%に対する粒径)が3〜15μm、好ましくは5〜15μmで、アスペクト比(即ち長軸と短軸の比)が10〜25、好ましくは10〜20のウォラストナイトを、ジエン系ゴム100重量部に対し、6〜20重量部、好ましくは6〜10重量部配合する。ウォラストナイトの平均粒径D50が小さ過ぎると、耐久性向上など補強性の効果が得られないので好ましくなく、逆に大き過ぎると分散性が悪化し、結果として耐久性を悪化させるので好ましくない。ウォラストナイトのアスペクト比が小さ過ぎると耐久性向上など補強性の効果が得られないので好ましくなく、逆に大き過ぎると分散性が悪化し、結果として耐久性を悪化させるので好ましくない。ウォラストナイトの配合量が少な過ぎると耐久性向上など補強性の効果が得られないので好ましくなく、逆に多過ぎると分散性が悪化し、結果として、耐久性を悪化させるので好ましくない。
【0015】
本発明において使用するウォラストナイト(Wollastonite)(珪灰石)は化学式CaSiO3で示される珪酸塩鉱物で、天然鉱物として産出されるウォラストナイトは、石灰石と花崗岩の接触部で変成作用を受けて発達した鉱物で、色はガラス光沢のある白色、帯灰色、帯褐色を呈し、結晶形態は針状、塊状をなしている。主成分はSiO2とCaOをほぼ等量含有し、微量成分としてAl23,Fe23等を含有しており、天然に産出される低温型(β型)と合成の高温型(α型)がある。なお、ウォラストナイトは例えば巴工業株式会社より各種グレードが市販されており、本発明においてはこれらの市販品のうち、前記特定の範囲の平均粒径D50及びアスペクト比のものを使用することができる。
【0016】
本発明に従えば、更に、好ましくは、ジエン系ゴム100重量部に対し0.1〜5重量部、更に好ましくは0.1〜3重量部のシランカップリング剤を配合する。これによってウォラストナイトの分散性が向上するので好ましい。本発明のゴム組成物に任意的に配合することができるシランカップリング剤としては、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−テトラスルフィドなどが挙げられる。
【0017】
本発明に係るゴム組成物には、前記した必須成分に加えて、カーボンブラックやシリカなどのその他の補強剤(フィラー)、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0019】
標準例、実施例1〜2及び比較例1〜4
サンプルの調製
表Iに示す配合において、加硫促進剤、硫黄及び熱膨張性マイクロカプセルを除く成分を、2リットルの密閉型ミキサーで4分間混練し、165±5℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤、硫黄及び熱膨張性マイクロカプセルをオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。
【0020】
次に得られたゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で170℃で12分間加硫して加硫ゴムシートを調製し、以下に示す試験法で加硫ゴムの物性を測定した。結果は表Iに示す。
【0021】
評価試験方法
1)氷上制動試験:インサイドドラム型氷上試験機を用いて、測定温度−1.5℃、荷重0.54MPa、ドラム回転速度25Km/hの氷上摩擦係数を測定した。
なお、結果は標準例の値を100として指数表示した。この値が大きいほど氷上制動性能が良いことを示す。
【0022】
2)クラック成長:JIS K6260に準じてデマチマ屈曲試験機にて亀裂成長を測定した。ストローク57mm、回転数300±10rpm、屈曲回数10万回で亀裂成長の逆数を標準例の値を100として指数表示した。この値が大きいほど、耐クラック成長の性能が良いことを示す。
【0023】
【表1】

【0024】
表I脚注
*1:TSR−20
*2:日本ゼオン(株)製ポリブタジエンゴムBR1220
*3:昭和キャボット(株)製ショウブラックN234
*4:巴工業(株)製NYAD400(平均粒径D50:7μm、アスペクト比:5)
*5:巴工業(株)製NYGLOS8(平均粒径D50:8μm、アスペクト比:17)
*6:デグッサ社製Si69
*7:日本油脂(株)製ビーズステアリン酸
*8:正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種
*9:住友化学(株)製アンチゲン6C
*10:昭和シェル石油(株)製デンレックス3号
*11:松本油脂製薬(株)製マイクロスフェアF−100D
*12:鶴見化学工業(株)製油処理イオウ
*13:大内新興化学工業(株)製ノクセラーNS−P
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上の通り、本発明に従ったゴム組成物は氷上制動性能に優れかつ耐クラック性にも優れており、各種空気入りタイヤ用として、特にスタッドレスタイヤのキャップトレッド用として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100重量部、熱膨張性マイクロカプセル1〜20重量部及び平均粒径D50が3〜15μmでアスペクト比が10〜25のウォラストナイト6〜20重量部を含んでなるゴム組成物。
【請求項2】
ジエン系ゴム100重量部に対しシランカップリング剤0.1〜5重量部を更に含む請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴム組成物をトレッド部に用いた空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2006−131744(P2006−131744A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321998(P2004−321998)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】