説明

ゴム組成物

【課題】ゴム組成物の補強性を損なうことなく、加工性や転がり抵抗を改良する。
【解決手段】ジエン系ゴム100重量部、脂肪酸エステル化澱粉0.5〜20重量部及び補強性充填剤10〜100重量部を含んでなるゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関し、更に詳しくは補強剤の補強性能を低下させることなく、粘弾性挙動を改善すると共に、加工性及び転がり抵抗を改良させたゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、タイヤ用補強性フィラーに様々な機能性を求める要求が高く、従来配合されてきたカーボンブラックに代えて、シリカを配合したタイヤはカーボンブラックを配合したタイヤよりも低燃費性とウェット性能を向上させ両立させることができるので、近年シリカを配合することが重用されている。そして次世代タイヤにも当然シリカは第一線で使用されると予想されるが、更なる低燃費性能や環境対策という技術を盛込む必要がある。
【0003】
一方、ジエン系ゴムに対し短繊維、微粒子及び澱粉/可塑剤複合材を配合することが特許文献1に開示されているが、この文献には澱粉を脂肪酸でエステル化して配合することの記載は全く認められない。また特許文献2にはエラストマーに澱粉、澱粉/可塑剤複合材及び変性澱粉(ヒドロキシエチル化、酸化及び酸基性澱粉)を、カーボンブラック及び/又はシリカと共に、配合する技術が記載されている。しかしながら、本発明のように、澱粉を脂肪酸エステル化変性してゴムに配合することの記載は知られていない。
【0004】
【特許文献1】特開2004−59629号公報
【特許文献2】特開2001−89599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、補強性能を低減させることなく、粘弾性挙動を改善すると共に、加工性や転がり抵抗を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従えば、ジエン系ゴム100重量部、脂肪酸エステル化澱粉0.5〜20重量部及び補強性充填剤10〜100重量部を含んでなるゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明者らは、澱粉の脂肪酸エステル化物を、ジエン系ゴム100重量部に対し0.5〜20重量部配合することによりゴム組成物の加工性を向上させ、そして転がり抵抗を低減させることができることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明によれば、ジエン系ゴム100重量部に、脂肪酸エステル化澱粉0.5〜20重量部、好ましくは1〜15重量部及び補強性充填剤10〜100重量部、好ましくは15〜90重量部を配合してゴム組成物を形成する。
【0009】
本発明において使用することができるジエン系ゴムは例えば天然ゴム、ポリイソプレンゴム、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、各種ポリブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、ブチルゴムなどを含み、これらは単独又は任意の2種以上の混合物として使用することができる。なお、これらのジエン系ゴムは、エチレン−プロピレン共重合体ゴムなどとブレンドして使用することもできる。
【0010】
本発明で使用する脂肪酸エステル化澱粉は、澱粉と、脂肪酸又はその誘導体(例えば酸無水物、酸塩化物等)を用いて水系又はトルエン、クロロホルム、ピリジンなどの非水系溶媒中で常法にて合成することができる。脂肪酸エステル化澱粉は、原料としてはトウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、サゴ澱粉等の澱粉を単独で又は2種類もしくはそれ以上を混合して使用することができる。また、これらの原料澱粉は変性又は未変性に関わることなく効果には影響を及ぼすことがなく、ここで変性の種類として酸化、酸処理、エーテル化、酵素変性、燐酸エステル化、架橋変性など通常の方法を指し、2種又はそれ以上の変性を組み合わせることも可能である。
【0011】
本発明において澱粉のエステル化に使用する脂肪酸としては例えば炭素数1〜22のカルボン酸で、更に好ましくは炭素数4〜22のものが用いられる。これらの例としては酪酸(C)、カプロン酸(C)、カプリル酸(C)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチル酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、オレイン酸(C18)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、エイコサペンタエン酸(C20)、ドコサヘキサエン酸(C22)などを挙げることができる。
【0012】
本発明において脂肪酸エステル化澱粉の使用量が少な過ぎると所望の効果が発現しなくなるので好ましくなく、逆に多過ぎると混合性が悪化し、また諸物性(特に引張強度)が悪化するので好ましくない。
【0013】
本発明で用いる補強性充填剤は、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミ、クレー、カルシウムなどの一種又はそれ以上の補強性充填剤であり、これらは従来からゴム組成物に配合されているものを使用することができる。この充填剤の配合量が少な過ぎると所望の補強効果が得られず、逆に多過ぎると混合性の悪化や充填剤の分散不良が起こるので好ましくない。
【0014】
本発明に係るゴム組成物には、前記した必須成分に加えて、他の補強剤(フィラー)、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0016】
標準例1、実施例1〜4及び比較例1〜2
サンプルの調製
表Iに示す配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.8リットルの密閉型ミキサーで5分間混練し、155±5℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を用いて以下に示す試験法で未加硫物性を評価した。結果は表Iに示す。
【0017】
【表1】

【0018】
表I脚注
*1:天然ゴムTSR20
*2:ローディア社製Zeosil 1165MP
*3:(株)J−オイルミルズ製コーンスターチ
*4:(株)J−オイルミルズ製脂肪酸エステル化澱粉JES−005
【0019】
*5:(株)J−オイルミルズ製脂肪酸エステル化澱粉JES−009
*6:東海カーボン(株)製N234
*7:デグッサ社製SI69
*8:出光興産(株)製アロマックス3
*9:フレキシス(株)製6PPD
*10:日本油脂(株)製ビーズステアリン酸
*11:正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種
*12:鶴見化学工業(株)製油処理硫黄
*13:大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ−G
*14:大内新興化学工業(株)製ノクセラーD
【0020】
次に得られたゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で150℃で30分間加硫して加硫ゴムシートを調製し、以下に示す試験法で加硫ゴムの物性を測定した。結果は標準例1の値を100として表Iに指数表示した。
【0021】
ゴム物性評価試験法
ムーニー粘度:JIS K6300に基づき100℃にて測定。
スコーチタイム:JIS K6300に基づき125℃にて粘度が5ポイント上昇する時間を測定。
最適加硫時間:JIS K6300に、基づき160℃にて95%加硫度に達する時間を測定。
【0022】
M100及びM300:JIS K6251によって、それぞれ100%伸長時及び300%伸長時の応力を測定。
tanδ(60℃):(株)東洋精機製作所製の粘弾性スペクトロメータを用い、歪10±2%、周波数20Hz、雰囲気温度60℃の条件で測定。
耐摩耗性:岩本製作所(株)製のランボーン摩耗試験機を用いて荷重5kg、スリップ率25%、時間4分、室温の条件で測定した。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上の通り、本発明に従って、ジエン系ゴムに、脂肪酸エステル化澱粉を補強用充填剤と共に配合することにより、補強性能を低減させることなく、粘弾性挙動を改善することができると共に加工性や転がり抵抗を改良することができるので、空気入りタイヤのトレッド部やサイド部などとして使用するのに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100重量部、脂肪酸エステル化澱粉0.5〜20重量部及び補強性充填剤10〜100重量部を含んでなるゴム組成物。
【請求項2】
前記脂肪酸エステル化澱粉のアシル基置換度が0.001〜0.1である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記補強性充填剤がシリカ又はシリカ及びカーボンブラックである請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物をトレッドに用いた空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2007−177044(P2007−177044A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375764(P2005−375764)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(302042678)株式会社J−オイルミルズ (75)
【Fターム(参考)】