説明

ゴム練り生地の冷却方法とその装置

【課題】ゴム練り生地を効果的に冷却するとともに、乾燥が容易なゴム練り生地の冷却方法とその装置を提供する。
【解決手段】帯状に練り出されたゴム練り生地1をゴム練り生地懸架手段12の隣り合う可動ローラ12a,12a間に掛け渡しながら搬送し、この搬送されるゴム練り生地1に、冷却室11の天井11aに設置された噴霧機13から霧状の冷却水を噴霧するとともに、上記冷却室11の床11bに設けられた排気通路11m内に排気ファン14を設置して、上記冷却室11内の噴霧した水分を含む空気を排気することにより、上記ゴム練り生地1の表面に付着した水分が気化し易いようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形された帯状のゴム練り生地を搬送しながら冷却する方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤのトレッドゴムなどに使用される帯状のゴム部材は、混練り機やオープンロールなどで練られた練りゴムを、ロールなどで板状のゴム練り生地に加工した後、所定の幅及び長さに切断して得られる。上記練りゴムを板状にする加工は、通常、練りゴムの作製直後に行われる。このとき、上記ゴム練り生地は温度が高いため、このゴム練り生地を常温付近まで冷却する際には、素早く冷却しないとゴム焼けを起こすことがある。
上記ゴム練り生地を常温付近まで冷却する方法としては、冷却室に設けられたフェスツーンに上記ゴム練り生地を掛け渡しながら通過させ、扇風機で上記ゴム練り生地に送風して冷却する方法が行われている。しかしながら、上記のような扇風機のみによる空冷では、ゴム練り生地を十分に冷却することができないため、ゴム焼けが起こったり、ゴム練り生地が搬送部材に密着してしまうなどの問題点があった。
そこで、図2(a),(b)に示すように、ゴム練り生地1を冷却水2が収納された冷却タンク3の水面下に設置された複数のローラ4から成る搬送機構5により搬送して、上記ゴム練り生地1をその下面側から冷却するとともに、上記搬送されるゴム練り生地1の上方に設けられたシャワーノズル6から、上記ゴム練り生地1の上面に冷却水を噴霧することにより、上記ゴム練り生地1を効率良く冷却する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−1694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記ゴム練り生地1をその上方と下方とから同時に冷却する方法は、冷却効率は高いものの、冷却後に、上記ゴム練り生地1の表面と裏面とに多量の冷却水が付着するため、乾燥に時間がかかってしまうといった問題点があった。
【0004】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、ゴム練り生地を効果的に冷却するとともに、乾燥が容易なゴム練り生地の冷却方法とその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の請求項1に記載の発明は、帯状に練り出されたゴム練り生地を搬送しながら冷却室内で冷却するゴム練り生地の方法であって、上記ゴム練り生地に冷却水を噴射するとともに、上記冷却室内の噴霧した水分を含む空気を上記冷却室外に排気するようにしたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のゴム練り生地の冷却方法において、上記冷却水を上記ゴム練り生地に噴霧するようにしたことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のゴム練り生地の冷却方法において、上記ゴム練り生地を、上記ゴム練り生地の搬送方向に沿って所定間隔で配置された複数の可動ローラに掛け渡しながら搬送するようにしたことを特徴とするものである。
また、請求項4に記載の発明は、冷却室を備え、帯状に練り出されたゴム練り生地を搬送しながら上記冷却室内で冷却するゴム練り生地の冷却装置であって、上記ゴム練り生地を搬送する搬送手段と、上記搬送されるゴム練り生地に冷却水を噴射する冷却水噴射手段と、上記冷却室内の水分を含む空気を上記冷却室外に排気する排気手段とを備えたことを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のゴム練り生地の冷却装置であって、上記冷却水噴射手段は、上記冷却水を霧状にして噴出させる噴霧手段であることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、請求項4または請求項5に記載のゴム練り生地の冷却装置であって、上記搬送手段は、上記ゴム練り生地の搬送方向に沿って所定間隔で昇降可能に配置されて、上記ゴム練り生地を掛け渡す複数の可動ローラを備えていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項4または請求項5に記載のゴム練り生地の冷却装置であって、上記搬送手段として、上記ゴム練り生地の搬送方向に沿って所定間隔で配置された複数の上固定ローラと隣り合う上固定ローラ間の下方に昇降可能に配置された複数の可動ローラとを備え、上記ローラ間に上記ゴム練り生地を掛け渡して搬送するフェスツーン手段を用いたことを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項4〜請求項7のいずれかに記載のゴム練り生地の冷却装置において、上記ゴム練り生地に送風する送風手段を更に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、帯状に練り出されたゴム練り生地を搬送しながら冷却する冷却室内に搬送手段を設けて、上記搬送されるゴム練り生地に冷却水を噴射するとともに、上記冷却室内の水分を含む空気を上記冷却室外に排気し、ゴム練り生地の表面に付着した水分が気化し易くすることにより、気化潜熱を効率的に利用して冷却するようにしたので、ゴム練り生地を効果的に冷却することができる。
また、水分がゴム練り生地の表面から気化し易いので、冷却後のゴム練り生地の表面に付着した水分が少なく、その結果、乾燥が容易となる。また、冷却効率が高いので、噴射する水の量を少なくすることができる。
また、上記冷却水を上記ゴム練り生地に噴霧するようにすれば、上記冷却水を上記ゴム練り生地に均一に付着させることができるので、上記ゴム練り生地に均一に冷却できる。
このとき、上記ゴム練り生地を、上記ゴム練り生地の搬送方向に沿って所定間隔で配置された複数の可動ローラに掛け渡しながら搬送するようにすれば、平板の状態で搬送しながら冷却する場合に比べて、冷却室内で冷却されるゴム練り生地の表面積を大きくすることができるので、冷却室を小型化できるとともに、装置全体についても小型化できる。また、冷却室が小型になることにより排気が一層容易になるので、ゴム練り生地に付着した冷却水の乾燥を速めることができる。その結果、水分の気化も促進されるので、ゴム練り生地の冷却効率を更に向上させることができる。
また、上記搬送手段として、ゴム練り生地の搬送方向に沿って所定間隔で配置された複数の上固定ローラと隣り合う上固定ローラ間の下方に昇降可能に配置された複数の可動ローラとを備え、上記ローラ間に上記ゴム練り生地を掛け渡して搬送するフェスツーン手段を用いるようにしても、同様の効果を得ることができる。
また、上記噴霧機の噴射方向とは反対側に送風手段を設けて、上記ゴム練り生地に送風すれば、送風による冷却効果に加えて、ゴム練り生地の表面に付着した水分の気化を更に促進することができるので、ゴム練り生地を更に効果的に冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の最良の形態について、図面に基づき説明する。
図1は本発明の最良の形態に係るゴム練り生地の冷却装置10の概要を示す図である。同図において、11は冷却室、12はゴム練り生地懸架手段、13は噴霧機、14は排気ファン、15は冷却ファンで、図の上側が冷却室11の天井側、下側が床側、矢印の方向が帯状に練り出されたゴム練り生地1の搬送方向である。
ゴム練り生地懸架手段12は、上記冷却室11の床11bに設置された図示しない支持枠の上部に配置された、パッチオフバーと呼ばれる複数の可動ローラ12aを備えたもので、上記支持枠の上部に、上記ゴム練り生地1の搬送方向に沿って所定の間隔で配置されている。上記ゴム練り生地1は、隣り合う可動ローラ12a,12a間に掛け渡されながら、同図の矢印方向に搬送されて、図外の巻き取り装置に巻取られる。
噴霧機13は、冷却水を霧状にして噴射する噴射ノズル13aを備えた噴霧手段で、上記冷却室11の天井11aに設置されて、上記可動ローラ12a,12a間に掛け渡されながら搬送されていくゴム練り生地1の表面に上記霧状の冷却水を吹き付けて、上記ゴム練り生地1を冷却するもので、上記噴霧機13は、隣り合う可動ローラ12a,12a間の中央部上方に複数個設置される。
排気ファン14は、上記冷却室11の床11bに設けられ排気通路11m内に設置されて、上記冷却室11内の噴霧した水分を含む空気を上記冷却室11外に排気するもので、上記排気ファン14と上記排気通路11mとにより排気手段を構成する。
また、送風手段である冷却ファン15は、上記噴霧機13の上方で上記冷却室11の天井11aに設けられた吸気通路11n内に設置されて、上記ゴム練り生地1の表面に送風して、上記ゴム練り生地1を冷却する。
【0008】
次に、本発明によるゴム練り生地の冷却方法について説明する。
本例では、ゴム練り生地懸架手段12の隣り合う可動ローラ12a,12a間に掛け渡されながら搬送されていくゴム練り生地1の表面に、冷却室11の天井11aに設置された噴霧機13の噴射ノズル13aから霧状の冷却水を噴霧して、練られた直後の帯状に加工された高温のゴム練り生地1を冷却する。上記噴霧機13は、上述したように、隣り合う可動ローラ12a,12aの中間の上方に設置されているので、上記ゴム練り生地1の表面に上記冷却水を満遍なく噴霧することができる。また、本例では、上記冷却水を、噴霧機13を用いて霧状に噴出させるようにしているので、上記冷却水を上記ゴム練り生地に均一に付着させることができ、上記冷却水を上記ゴム練り生地に均一に付着させることができる。
上記ゴム練り生地1は表面に付着した冷却水との熱交換によっても冷却されるが、上記冷却水が気化(蒸発)するときに相手であるゴム練り生地1から奪う気化潜熱によっても冷却される。上記付着した冷却水は、その周りの湿度が低いほど気化し易い。本例では、上記冷却室11の床11bに設けられ排気通路11m内に排気ファン14を設置して、上記冷却室11内の噴霧した水分を含む空気を排気することにより、上記冷却室11内の湿度を下げるようにしている。これにより、上記ゴム練り生地1の表面近傍の湿度が低下するので、上記ゴム練り生地1の表面に付着した冷却水の気化を助長することができ、上記ゴム練り生地1を効果的に冷却することができる。
本例では、更に、上記冷却室11の天井11aに設けられた吸気通路11n内に冷却ファン15を設置して、上記ゴム練り生地1の表面に送風するようにしている。上記ゴム練り生地1は上記冷却ファン15からの送風によって冷却されるだけでなく、上記ゴム練り生地1に送風することにより、上記ゴム練り生地1表面近傍の空気の湿度が下がるので、上記排気の場合と同様に、上記ゴム練り生地1の表面に付着した冷却水の気化が助長され、上記ゴム練り生地1が効果的に冷却される。
したがって、単に冷却水を噴霧した場合に比較して、上記ゴム練り生地1を効率良く冷却することができる。
また、気化潜熱を有効に利用して冷却しているので、上記噴霧機13から噴霧する冷却水の量を少なくしても、上記ゴム練り生地1を十分に冷却することができる。
また、水分がゴム練り生地1の表面から気化し易いので、冷却後のゴム練り生地1の表面に付着した水分を少なくできるので、冷却後の乾燥を容易に行うことができる。
また、本例では、ゴム練り生地1をゴム練り生地懸架手段12の隣り合う可動ローラ12a,12a間に掛け渡して搬送しながら冷却しているので、平板の状態で搬送しながら冷却する場合に比べて、冷却室11内で冷却されるゴム練り生地1の表面積を大きくすることができる。したがって、冷却室11を小型化できるとともに、装置全体についても小型化できる。また、冷却室11を小型化すれば排気が一層容易になるので、ゴム練り生地1に付着した冷却水の乾燥を速めることができる。したがって、水分の気化も促進されるので、ゴム練り生地1の冷却効率を更に向上させることができる。
【0009】
このように本最良の形態では、帯状に練り出されたゴム練り生地1をゴム練り生地懸架手段12の隣り合う可動ローラ12a,12a間に掛け渡しながら搬送し、この搬送されるゴム練り生地1に、冷却室11の天井11aに設置された噴霧機13から霧状の冷却水を噴霧するとともに、上記冷却室11の床11bに設けられた排気通路11m内に排気ファン14を設置して、上記冷却室11内の噴霧した水分を含む空気を排気することにより、上記ゴム練り生地1の表面に付着した水分が気化し易いようにしたので、上記ゴム練り生地1を効果的に冷却することができる。また、冷却に気化潜熱を利用しているので、ゴム練り生地1の表面に付着した水分が少なく、乾燥が容易である。
更に、上記冷却室11の天井11aに冷却ファン15を設置して、上記ゴム練り生地1の表面に送風して上記ゴム練り生地1表面近傍の空気の湿度を下げるようにしているので、上記気化潜熱による冷却を更に促進させることができ、冷却効果を更に向上させることができる。
【0010】
なお、上記最良の形態では、冷却水を、噴霧機13を用いて霧状に噴出させるようにしたが、上記冷却水をシャワーのように液体の状態で噴出させてもよい。冷却水を液体の状態で噴出させる場合には、上記噴霧機13を必要としないので、装置が安価になるという利点はあるが、本例のように、霧状にして噴射させる方が、ゴム練り生地に均一に冷却できるので、好ましい。
また、上記例では、ゴム練り生地1の搬送手段として、ゴム練り生地懸架手段12を用い、ゴム練り生地1をローラ間に掛け渡して搬送する手段としては、所定間隔に配置された複数の上固定ローラと、隣り合う上固定ローラ間の下方に昇降可能に配置された複数の可動ローラとを備え、上記ゴム練り生地1を上記上固定ローラと上記可動ローラとの間に掛け渡しながら搬送するフェスツーン手段などの他の懸架型の搬送手段を用いてもよい。
あるいは、図2に示したような、複数のローラ4から成る搬送機構5を用いてもよい。但し、この場合には、従来例のような冷却タンク3は不要である。
また、上記例では、冷却室11の床11bを平坦にしたが、上記床11bに上記ゴム練り生地1からたれて床11bまで到達した水を排水するための排水孔を設けるとともに、この排水孔の中心がすり鉢の中心になるように、上記排水溝の周りに斜面部を設けるようにすれば、冷却室内の湿度を更に低下させることができるので、ゴム練り生地1を更に効率良く冷却させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0011】
このように、本発明によれば、ゴム練り生地を効果的に冷却できるとともに、乾燥を容易に行うことができるので、ゴム練り生地の生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の最良の形態に係るゴム練り生地の冷却装置を示す図である。
【図2】従来のゴム練り生地の冷却装置を示す図である。
【符号の説明】
【0013】
1 ゴム練り生地、10 ゴム練り生地の冷却装置、11 冷却室、11a 天井、
11b 床、11m 排気通路、11n 吸気通路、12 ゴム練り生地懸架手段、
12a 可動ローラ、13 噴霧機、13a 噴射ノズル、
14 排気ファン、15 冷却ファン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状に練り出されたゴム練り生地を搬送しながら冷却室内で冷却するゴム練り生地の冷却方法であって、上記ゴム練り生地に冷却水を噴射するとともに、上記冷却室内の水分を含む空気を上記冷却室外に排気するようにしたことを特徴とするゴム練り生地の冷却方法。
【請求項2】
上記冷却水を上記ゴム練り生地に噴霧するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のゴム練り生地の冷却方法。
【請求項3】
上記ゴム練り生地を、上記ゴム練り生地の搬送方向に沿って所定間隔で配置された複数の可動ローラに掛け渡しながら搬送するようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゴム練り生地の冷却方法。
【請求項4】
冷却室を備え、帯状に練り出されたゴム練り生地を搬送しながら上記冷却室内で冷却するゴム練り生地の冷却装置であって、上記ゴム練り生地を搬送する搬送手段と、上記搬送されるゴム練り生地に冷却水を噴射する冷却水噴射手段と、上記冷却室内の水分を含む空気を上記冷却室外に排気する排気手段とを備えたことを特徴とするゴム練り生地の冷却装置。
【請求項5】
上記冷却水噴射手段は、上記冷却水を霧状にして噴出させる噴霧手段であることを特徴とする請求項4に記載のゴム練り生地の冷却装置。
【請求項6】
上記搬送手段は、上記ゴム練り生地の搬送方向に沿って所定間隔で昇降可能に配置されて、上記ゴム練り生地を掛け渡す複数の可動ローラを備えていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のゴム練り生地の冷却装置。
【請求項7】
上記搬送手段は、上記ゴム練り生地の搬送方向に沿って所定間隔で配置された複数の上固定ローラと隣り合う上固定ローラ間の下方に昇降可能に配置された複数の可動ローラとを備え、上記ローラ間に上記ゴム練り生地を掛け渡して搬送するフェスツーン手段であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のゴム練り生地の冷却装置。
【請求項8】
上記ゴム練り生地に送風する送風手段を更に設けたことを特徴とする請求項4〜請求項7のいずれかに記載のゴム練り生地の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−184243(P2009−184243A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27163(P2008−27163)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】