説明

ゴム製貯水タンクを用いる免震装置および発電システム

【課題】
雨水の利用方法は少なく、ほとんどが捨てられている。また、雨水の貯水量を増やすには、設置スペースと多くの費用を要している。そこで、ハイブリッド発
電と組合せて、雨水利用価値を最大限に高めるシステムを提供する。
【解決手段】
建物上部に制震装置となる上部ゴム製貯水タンク22を設け、建物下部に免震装置となる下部ゴム製貯水タンク23を設ける。屋根24に降り注いだ雨水は樋
25,集水パイプ26を介して該上部ゴム製貯水タンク22に貯水する。雨水の位置エネルギーにより流下管30を介して水車発電装置31が回転し発電され
る。前記上部ゴム製貯水タンク22の貯水量が少なくなると、揚水ポンプ28により揚水管29を介して前記上部ゴム製貯水タンク22に雨水は戻される。前記
揚水ポンプ28は太陽光,風力発電装置33の電気で駆動される。雨水が循環できることで、常時発電を行えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根軒先の雨樋からの雨水を建物内空き空間を利用貯水し、雨水利用の発電を行うと共に、地震時の免震、制震装置となるゴム製貯水タンクに関す
る。
【背景技術】
【0002】
雨水を貯水するためには、建物の周りにタンクを設置する。また、地下にタンクを埋設するなど、多大なスペースと費用を必要とした。
【0003】
雨水の利用方法としては、水洗トイレ、洗車、散水などに限られており、雨水の利用価値が低く、一般家庭には、ほとんど雨水利用タンクの設置がなされてい
ない。
【0004】
建物に従来の免震装置を取付けるには、大がかりな工事となり、多大な費用を要するため、ほとんど免震対策がなされていない。
【0005】
従来のゴムを利用した免震装置は、荷重が長時間作用した場合に時間の経過とともに材料が伸びて、き裂が発生し破壊に至るクリープ現象による建物沈下の問
題がある。
【0006】
上下方向の地震動による建物の破壊が数多く見られる。しかしながら、従来の免震装置は、もっぱら水平方向の地震動に対して振動を低減することを主体とす
るものである。
【0007】
従来、雨水を利用した発電装置としては、特開平8−237997号,特開2003−56441号などが提案されている。前記2つの発明はいずれも雨水を
落下させることによって水車を回転させて発電するものであるが、以下のような問題点があり、実用化には適さないものであった。
【0008】
特開平8−237997号の発明は、発電に利用された雨水はそのまま排出される。したがって、発電量は降雨量に左右され、常時一定の発電量を得る事はで
きない。
【0009】
特開2003−56441号の発明は、上部に貯水タンクがなく、揚水ポンプにより雨水を落差発電に利用しているが、揚水ポンプに電気を消費し、多くの発
電量を得る事はできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の金属、樹脂、コンクリート製の貯水タンクでは、多大な設置スペースが必要であり、費用も多大にかかるため、貯水量が限られおり、雨降水時にタンク
容量以上の雨水は捨てられている。貯水量が少ないので、水洗トイレ、洗車など利用方法が少ない。
【0011】
既存建築物に免震装置を取付けるのは、非常に大がかりな改修工事になってしまう。
【0012】
太陽光,風力発電は常時利用できるものではない。
【0013】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、雨水貯水タンクを免震装置として活用すると共に、空き空間を利用することで
貯水量を増やし、さらに、ハイブリッド発電と組合せて、雨水利用価値を最大限に高めるシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
軽量のゴム製タンクを使うことにより、小さな入口からも入り、既存建物にも簡単に設置でき、建物の屋上、壁内、床下等の空き空間に設置することにより、
貯水量を増やし、建物上部と建物下部に貯水タンクを設置したことを特徴とする。
【0015】
ゴム製タンクに水を貯めることにより建物を弾性支持して地盤から加わる振動を遮断する免震効果と、建物に加わった振動エネルギーを水の振動エネルギーに
変換して建物の振動を減衰させる制震効果を備えてなることを特徴とする。
【0016】
建物の上部と下部に雨水の貯水タンクを設置し、太陽光,風力発電と組合せて、下部貯水タンクの雨水を電動揚水ポンプで上部貯水タンクへ汲み上げ、該上部
貯水タンクの雨水位置エネルギーを利用する落差発電装置、該発電装置を制御する制御装置を備え、雨水が循環できる構成とし、太陽光,風力発電が出来ない時
でも雨水発電の出来ることを特徴とする。
【0017】
なお、タンクの材質はゴム製に限定するものでなく、ビニール等の伸縮性、気密性ある材質を使用することができる。
【発明の効果】
【0018】
床下に設置した水圧を掛けたゴム製貯水タンクが、建物荷重を受けることにより建物脚部にかかる荷重が減少する。水圧を掛けたゴム製貯水タンクは、横縦方
向に柔らかいので、建物の固有周期を地震の周期からずらす作用を有し、地震により建物が受ける加速度が小さくなる。本発明によれば地震による建物の損壊の
防止が可能である。
【0019】
屋上、壁内に設置した一対よりなるゴム製貯水タンクは、タンクの下部に設けられた連結管により接続され、一対のタンクはU字型に構成される。タンク内に
貯められた水を振動体として利用し、建物外力に相反する力を作用させ、建物振動を低減する。本発明によれば地震、風による揺れによる不快感をなくすことが
できる。
【0020】
空き空間に設置できるので貯水量を増やせ、かつ建物上部と下部に貯水することにより、雨水の位置エネルギーを利用する落差発電と太陽光,風力発電の組合
せにより、雨水利用の付加価値を高めることができる。
【0021】
住宅の空き空間に貯水することにより、断熱,遮音効果があり、居住環境の快適性が向上し、火災時の消火用水、災害時の非常用水などへの活用も可能であ
る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施形態1)図1および図2は、建物と基礎土台との間に介在された本発明に係る免震装置となるゴム製貯水タンクの実施形態を示すものである。図1は、
本発明のゴム製貯水タンクの概略構成を示すものである。円柱状または角柱状をなしたゴム製タンク2の上部に上部固定板3が、下部に下部固定板4が気密に接
着され、該上下固定板3,4には該ゴムタンク2に連通する配管口5が穿設されており、前記ゴム製タンク2の内部には、該配管口5より水12が充填され、水
圧を掛けることにより相対的に上下、左右動自在に支承される。
【0023】
図2は、本発明のゴム製貯水タンク1の概略取付図を示すものである。前記上部固定板3は固定ボルト6を介して建物床7に固定されており、前記下部固定板
4は基礎土台9に埋め込まれたアンカーボルト8を介して該基礎土台9に固定されている。建物荷重は脚部10に支えられているが、当該ゴム製貯水タンク1で
も建物荷重を支えることにより前記脚部10にかかる荷重は軽減される。以上の構成からなる免震装置となる前記ゴム製貯水タンク1において、地震時に地震動
が加わった際に、ゴムの伸縮性により横縦方向に柔らかいので、建物の固有周期を地震の周期からずらす作用を有し、地震により建物が受ける加速度が小さくな
り、地震の振動エネルギーを直接建物に伝えることを軽減して建物を守ることができる。
【0024】
なお、前記脚部10は上下方向には硬く、水平方向には柔らかい性能を持った免震構造脚のほうがより効果的である。
【0025】
図3は、建物と基礎土台との間に介在された本発明に係る免震装置となる他のゴム製貯水タンクの概略構成図であり、同一符号は図1と同一物を示す。前記ゴ

製貯水タンク1を複数個重ねた構造になっており、中間板13の中心に孔14が有り、該中間板13の間にはシール部材15が有り、前記中間板13は連結ボル
ト16にて気密に固着され、上下タンクが連通し、一体のゴム製貯水タンクとなっている。複数個タンクを重ねることにより、設置条件に適した高さに変えるこ
とが可能である。
【0026】
(実施形態2)図4は、屋上または壁内に設置された本発明に係る制震装置となるゴム製貯水タンクの実施形態を示すものであり、同一符号は図1と同一物を
示す。上部固定板3は支持部材17により高さが維持されると共に、ゴム製タンク2に連通する通気孔18が設けられている。該ゴム製タンク2の下部には接続
口19があり、一対の前記ゴム製タンクの該接続口19が向き合って連結管20にて接続されている。前記一対のゴム製タンク2はU字型に構成され、配管口5
より内部に水12が貯水されている。前記ゴム製タンク2の上方には、空気室21が存在している。該空気室21は前記通気孔18から大気に連通している。こ
れにより、前記ゴム製タンク2内の前記水12を振動体として利用し、建物外力に相反する力を作用させ、建物振動を低減する振動抑制装置となる。なお、前記
連結管20は大径の管が、より効果的であり、複数本を設けても良い。更に、前記空気室21の圧力はポンプにて空気圧を調整しても良い。本発明に係る貯水タ
ンクは必ずしもゴム製を用いることを要さず、一般的材質のタンクを用いても良い。
【実施例】
【0027】
図5は、本発明に係る雨水利用の貯水発電システムの概要図を示す。図の22は上部ゴム製貯水タンク、23は下部ゴム製貯水タンクである。
【0028】
屋根24上に降り注いだ雨は樋25に流入する。該樋25には、集水パイプ26が接続され、該集水パイプ26を介して上部ゴム製貯水タンク22に導かれ
る。下部ゴム製貯水タンク23には配管27を介して揚水ポンプ28に接続され、中間に雨水流路を開閉する自動バルブ34を介在させてある。該揚水ポンプ
28には揚水管29が接続してあり、前記上部ゴム製貯水タンク22に接続してある。前記上部ゴム製貯水タンク22には流下管30が接続してあり、中間に自
動バルブ34を介在させてある。前記流下管30の下端には水車発電装置31が設置してある。該水車発電装置31の排水側には配管32が接続してあり、該配
管32の先端は前記下部ゴム製貯水タンク23に接続してあり、中間に自動バルブ34を介在させてある。
【0029】
このように構成された図示の貯水発電システムにおいて、屋根24に降り注いだ雨水は、上部ゴム製貯水タンク22に貯水され、該上部ゴム製貯水タンク22
の雨水の位置エネルギーにより流下管30を介して水車発電装置28が回転し発電される。前記上部ゴム製貯水タンク22の水量が一定量より少なくなると、下
部ゴム製貯水タンク23より揚水ポンプ28により揚水管29を介し前記上部ゴム製貯水タンク22に水を汲み上げ戻される。前記揚水ポンプ28は太陽光,風
力発電装置33の電気で駆動される。自動バルブ34,前記揚水ポンプ28,前記水車発電装置31および前記太陽光,風力発電装置33を制御する制御装置
(図示せず)を備え、該制御装置による制御で、前記上部ゴム製貯水タンク22から前記水車発電装置31への流下および前記下部ゴム製貯水タンク23から前
記揚水ポンプ28での揚水が行われ、雨水が循環出来ることで、太陽光,風力発電が出来ない時でも発電が可能となる。なお、本発明に係る貯水タンクは必ずし
もゴム製を用いることを要さず、一般的材質のタンクを用いても良い。
【0030】
前記上部ゴム製貯水タンク22には再利用配水管35が接続され、中間に自動バルブ34を介在させてあり、該再利用配水管35より水洗トイレや非常用蛇口
などに接続されている。
【0031】
前記下部ゴム製貯水タンク23が満水になると、前記水車発電装置31の発電ができなくなり、前記水車発電機装置31が停止し、上よりの水圧が前記下部ゴ
ム製貯水タンク23に掛けられた状態で前記下部ゴム製貯水タンク23の前後の自動バルブ34を閉めることにより、前記下部ゴム製貯水タンク23は免震装置
となる。なお、前記下部ゴム製貯水タンク23に、水道水またはポンプを用いて、水圧を掛けることも可能である。
【0032】
図6は、本発明に係る基礎土台面における前記下部ゴム製貯水タンク23の概略配置図である。前記下部ゴム製貯水タンク23は、下部ゴム製貯水タンク
23aと下部ゴム製貯水タンク23bとに分散配置されており、交互に利用することにより免震効果も損なわず、水が循環出来るので、水の腐りが防止され、タ
ンクへのゴミの沈澱も少なくなる。なお、前記上部ゴム製貯水タンク22も分散配置し、交互に利用することにより同様に制震効果も損なわれない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
安価で空き空間利用の貯水タンクであり、既存建物にも簡便に設置可能な免震装置も兼ねており、雨水利用タンクの普及に貢献ができる。またハイブリッド発
電の利用により、一般家庭でも安定した電力が得られる。また雨の少ない場所での利水、水道水の節約、緊急時の水の確保にも利用できる。各家庭に本発明の貯
水タンクを設置することにより巨大なダムを作る必要性も減少する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態1に係るゴム製貯水タンクの概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る概略取付図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る他のゴム製貯水タンクの概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態2に係るゴム製貯水タンクの概略構成図である。
【図5】本発明に係る雨水利用の貯水発電システムの概要図である。
【図6】本発明に係る基礎土台面における下部貯水タンクの概略配置図である。
【符号の説明】
【0035】
1 免震装置となるゴム製貯水タンクの総体

2 ゴム製タンク
3 上部固定板

4 下部固定板
5 配管口
6 固定ボルト
7 建物床
8 アンカーボルト
9 基礎土台
10 脚部
11 バルブ
12 水
13 中間板
14 孔
15 シール部材
16 連結ボルト
17 支持部材
18 通気孔
19 接続口
20 連結管
21 空気室
22 上部ゴム製貯水タンク
23 下部ゴム製貯水タンク
23a 下部ゴム製貯水タンク
23b 下部ゴム製貯水タンク
24 屋根
25 樋
26 集水パイプ
27 配管
28 揚水ポンプ
29 揚水管
30 流下管
31 水車発電装置
32 配管
33 太陽光,風力発電装置
34 自動バルブ
35 再利用配水管
36 排水管
37 オバーフロー管



【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物と基礎土台との間に介在されるゴム製貯水タンクで、該ゴム製貯水タンクの上部と下部に固定板が気密に接着され、上下の該固定板には前記ゴム製タンク
に連通する配管口が穿設されており、前記ゴム製タンクの内部には、該配管口より水が充填され、水圧を掛けることにより免震装置となるゴム製貯水タンク。
【請求項2】
建物の屋上、壁内、床下内に設置される一対からなるゴム製貯水タンクで、それぞれの該ゴム製貯水タンクの上部と下部に固定板が気密に接着され、上下の該
固定板には前記ゴム製タンクに連通する配管口が穿設されており、前記上部固定板は支持部材により高さを維持されると共に、前記ゴム製タンクに連通する通気
孔が設けられている。前記ゴム製タンクの下部には接続口があり、一対の前記ゴム製タンクの接続口が向き合って連結管にて接続され、U字型に構成されてい
る。前記配管口より内部に水を貯水することで、制震装置となるゴム製貯水タンク。
【請求項3】
建物の下部に設置された請求項1記載の下部貯水タンクと、建物の上部に設置された請求項2記載の上部製貯水タンクと、屋根より樋に流入した雨水を前記上
部貯水タンクに導く集水パイプと、前記上部貯水タンクの雨水の位置エネルギーにより水車が回転する水車発電装置と、前記下部貯水タンクより前記上部貯水タ
ンクに水を汲み上げる電動揚水ポンプと、該電動揚水ポンプ駆動用の電気を発電する太陽光,風力発電装置と、前記上下部ゴム製貯水タンクの雨水流路を開閉す
る自動バルブ、および該自動バルブ,前記電動揚水ポンプ,前記発電装置を制御する制御装置を備え、前記雨水貯水タンクと前記水車発電装置と前記電動揚水ポ
ンプとはパイプで連結され、前記上部貯水タンクから前記水車発電装置への流下および前記下部貯水タンクから前記電動揚水ポンプにより前記上部貯水タンクへ
の揚水を前記制御装置により制御し、雨水が循環できるようにした雨水利用の発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−299541(P2006−299541A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119140(P2005−119140)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(592179481)株式会社コスモテック (2)
【Fターム(参考)】