説明

ゴム配合物

【課題】長靴や作業衣等のゴム製品に用いるゴム配合物において、軽量化のために添加される多孔性ポリエステル樹脂粉末の欠点を補うために配合したアタクチック・ポリプロピレンによって生じる硬度低下やゴム弾性低下を補い、従来品より軽量で、しかも、引張り強度が優れたゴム配合物を提供する。
【解決手段】配合割合を全体の50%以上とした原料ゴムに、配合剤として、アタクチック・ポリプロピレン10〜30部、多孔性ポリエステル樹脂粉末1〜20部およびセルロース・パウダー5〜10部の範囲で添加した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長靴や作業衣等のゴム製品に用いるゴム配合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な分野で利用されているゴム製品、特にその中でも水産、農業、林業等の作業用として使用する長靴、合羽、前掛、手袋などはゴム配合物の優れた性能からなくてはならない物となっているが、その性能はゴム自体から得られるのではなく、ゴム配合物中の加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、補強剤などの配合剤が関係している。そして、様々な配合剤の、原料ゴムに対する添加によりゴム配合物としての物理強度や化学的安定性は向上しているが、軽量化技術についてはほとんど関心が払われず長靴等の選択に際しても、重いゴム(配合物)製品とするか、軽くとも強度の落ちる樹脂製品とするかのいずれかを選択せざるを得ないため、比較的強度が有り、しかも、軽いゴム製品が望まれるようになった。本出願人は、この比較的強度があり、軽量なゴム製品を提供すべく、先に、原料ゴムに対しアタクチック・ポリプロピレンと多孔性ポリエステル樹脂粉末を添加したゴム配合物を提案した(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−168952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多孔性ポリエステル樹脂粉末は、ゴムの軽量化には寄与するが、該軽量化のために添加量を多くすると製品の表面肌が悪くなり(従って、外観体裁の低下)、物性も低下し、これを補うためにアタクチック・ポリプロピレンを添加混合したのであるが、アタクチック・ポリプロピレンはその添加量が多すぎると製品が軟らかくなりすぎてゴム弾性も低下するという欠点が認められた。
【0005】
本発明は、斯様な欠点に着目し、多孔性ポリエステル樹脂粉末の欠点を補うために配合したアタクチック・ポリプロピレンによって生じる硬度低下やゴム弾性低下を補い、従来品として比較して軽量なゴム配合物を提供することを目的として創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
配合割合を全体の50%以上とした原料ゴムに、配合剤として、アタクチック・ポリプロピレン10〜30部、多孔性ポリエステル樹脂粉末1〜20部およびセルロース・パウダー繊維5〜10部の範囲で添加した構成としたものである。
【0007】
本発明に係るゴム配合物は、物理的強度についてはJIS−S5005(ゴム製一般用長靴)に規定される数値を得られるものであり、配合されるアタクチック・ポリプロピレンは原料ゴム100に対して10〜30部、多孔性ポリエステル樹脂粉末は1〜20部、また、セルロース・パウダーは5〜10部の添加範囲であり、このときのゴム配合物における原料ゴムの割合は50〜80%とする。
【0008】
ここで、アタクチック・ポリプロピレンとはアイソタクチック・ポリプロピレン樹脂製造時に併産され、従来よりプラスチックの添加剤として使用されている比重0.86のものである。これについて添加量を10〜30部としたのは、10部以下ではゴム配合物の軽量化に対する効果が小さく、30部以上の添加では物理強度を著しく低下させ、ゴム弾性が低下するためであり、望ましくは10〜30部の配合量である。
【0009】
多孔性ポリエステル樹脂粉末とは特許第2997385号に見られるような工程を経て製造されるものであり、配合量を1〜20部としたのは、1部以下ではゴム配合物の軽量化に寄与せず、20部以上では表面肌が荒れるからであり、1〜20部の配合が望ましい。
【0010】
また、セルロース・パウダーを5〜10部としたのは多すぎると高硬度となってゴム弾性が低下し、少なすぎるとアタクチック・ポリプロピレンの配合によって生じる物性の低下と保形性の低下を防ぐことができないからである。
【0011】
この軽量ゴム配合物において軽量化のもうひとつの要因となるのはゴム配合物中における原料ゴムの占める割合である。前述のような軽量化のための低比重の配合剤を使用しても、他に比重の大きな配合剤を使用しては効果が相殺されてしまうため、ある程度以上の原料ゴムの使用量は確保せねばならず、その量は50%以上である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軽量で、しかも、引張り強度の優れたゴム配合物を提供できる。
【実施例】
【0013】
表1の配合において常法に従って、長靴を作り、その比重とは物理強度の測定を行った。この場合胴部に使用されるゴム配合物と底部に使用されるゴム配合物は同一配合とした。なぜならば本発明の条件であるアタクチック・ポリプロピレンと多孔性ポリエステル樹脂粉末およびセルロース・パウダーを使用し、原料ゴムを全体の50%以上とすれば他の添加剤の調整で胴部用とも底部用とも自在に配合が組み立てられるからである。
【0014】
【表1】

【0015】
胴ゴム用としてはオープンロールで混練したゴムコンパウンドをカレンダーロールにて圧延した1.5mm厚のシートを用い、底用としては同様にして得たゴムコンパウンドを熱プレスで成形するといった一般的な方法で成型を行い軽量長靴を得た。比較例1としては原料ゴム量が50%である一般的に使用されるゴム長靴配合とし、また、比較例2は軽量化のためにアタクチック・ポリプロピレンと多孔性ポリエステル樹脂粉末を配合したものとし、いずれも実施例と同様の方法で成形を行い製品を得た。
【0016】
表1から判明するとおり、従来品である比較例1と較べ、軽量化を期待でき、この軽量化に関しては比較例2のほうが優れるが、該比較例2と比較したとき引張り強度が優れ、比較例1よりもこの引張り強度の点が劣る比較例2よりも実用的な製品を得られる(軽量化について多少劣るとしても)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合割合を全体の50%以上とした原料ゴムに、配合剤として、アタクチック・ポリプロピレン10〜30部、多孔性ポリエステル樹脂粉末1〜20部およびセルロース・パウダー5〜10部の範囲で添加したことを特徴とする、ゴム配合物。

【公開番号】特開2008−37986(P2008−37986A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213055(P2006−213055)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000167853)弘進ゴム株式会社 (12)
【Fターム(参考)】