説明

ゴム風船発射装置

【課題】構成的に極めて簡素でコンパクトであり、ゴム風船の吹き口部材を係止した状態で風船本体を楽に膨らませることができ、この膨らんだ状態で安定に保持できるゴム風船発射装置を提供する。
【解決手段】ゴム風船本体6の吹き口部材7の端部を嵌入させる受け筒1と、受け筒1を一端側に嵌着させる吹込み筒2と、逆止弁3と、受け筒1に嵌入させた吹き口部材7を抱持するクランプとを有する。クランプは、前端に係止爪3bを有する一対の抱持レバー3より構成され、両抱持レバー3の係止爪3bを吹き口部材7の外周フランジ7bに径方向両側から係嵌させ、吹込み筒2の他端側から空気を吹き込んでゴム風船本体6を膨らませたのち、両抱持レバー3を後端側の押圧によって前端側が相互に開くように変形させることにより、両係止爪3bが外周フランジ7aから離脱するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部からの空気噴射によって空中を飛行するゴム風船、例えばプロ野球の球場観戦における応援グッズとして汎用されている細長い風船等のゴム風船を膨らませて空中へ発射させるためのゴム風船発射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロ野球の球場観戦において一斉にゴム風船を上空へ飛ばして応援することが流行している。このゴム風船は、図1(A)で示すように、先端側がやや膨らんだ棒状の風船本体(10)の口部(10a)に、合成樹脂成形物からなる吹き口部材(11)が嵌着されており、膨らましてから手放すと、内部からの空気噴射を推進力として飛翔すると共に、吹き口部材(11)が笛になって通過する空気によってピーという音を発する。しかして、吹き口部材(11)は、図1(B)で示すように、笛機能のために両端の開口部11aが径小に形成された短筒状で、外周に二重のフランジ(11b)(11b)を有しており、風船本体(10)の口部(10a)を一方のフランジ(11b)に被せて係止するようになっている。
【0003】
このようなゴム風船では、吹き口部材(11)を口にくわえて空気(息)を吹き込んで膨らませ、飛ばすまでは吹き口部材(11)の開口部(11a)を指で塞いで保持するのが一般的であるが、風船の収縮力による空気の戻りに抗して膨らませるのに大きな吹き込み力が必要であるため、肺活量の小さい子供や女性には膨らますことが難しい上、膨らましてから保持している間に何かの拍子で空気が抜けてしまったり、飛ばす時機になる前に油断して手から離れて飛び去ってしまうといった問題があった。
【0004】
そこで、ゴム風船発射装置として、ピストル型の形状を備え、その銃口部にゴム風船の吹き口部材を係着し、内蔵する手動ポンプで風船を膨らませ、膨らんだゴム風船をそのまま保持できると共に、引き金部を引くことで吹き口部材の係着を解除して発射するようにしたものが提案されている(特許文献1〜3)。
【特許文献1】実公平1−17343号公報
【特許文献2】実開平7−1994号公報
【特許文献3】実用新案登録第3144118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の提案によるゴム風船発射装置は、ピストル型のケーシングの内部や後端部に手動ポンプ用のシリンダやベローズ筒を設けるため、全体のサイズが大きくなり、1試合の野球観戦で多くても数回程度しか使わないものの割には嵩張って不便である上、引き金部に連動する吹き口部材の係脱機構等で部品点数が多く、構造的にも複雑になることから、製造コストが高く付くと共に、故障を生じ易いという難点があった。
【0006】
この発明は、上述の情況に鑑み、ゴム風船発射装置として、構成的に極めて簡素で且つコンパクトで嵩張らず携帯容易であり、ゴム風船の吹き口部材を容易に確実に係止し、この係止状態で風船本体を楽に膨らませることができ、しかも膨らんだ状態で安定に保持できる上、非常に簡単な操作で発射させることが可能であり、また安価に製作できて故障も生じにくいものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供する。
【0008】
〔1〕ゴム風船本体の口部に嵌着された外周フランジ付き吹き口部材の端部を嵌入させる受け筒と、該受け筒を一端側に嵌着させる吹込み筒と、該吹込み筒の他端側から吹き込む空気の戻りを阻止する逆止弁と、前記受け筒に嵌入させた前記吹き口部材を抱持するクランプとを有し、
前記クランプは、前端に係止爪を有する一対の抱持レバーより構成され、両抱持レバーの係止爪を前記吹き口部材の外周フランジに径方向両側から係嵌させて当該吹き口部材を抱持し、この吹き口部材の抱持状態で吹込み筒の他端側から空気を吹き込んでゴム風船本体を膨らませたのち、両抱持レバーを後端側の押圧によって前端側が相互に開くように変形させることにより、両係止爪が前記外周フランジから離脱して、ゴム風船本体が空気噴射によって吹き口部材と共に飛び出すように構成されてなるゴム風船発射装置。
【0009】
〔2〕前記逆止弁が前記受け筒に一体形成されている前項1に記載のゴム風船発射装置。
【0010】
〔3〕前記逆止弁が前記受け筒と吹込み筒との間に介装されている前項1に記載のゴム風船発射装置。
【0011】
〔4〕前記クランプの一対の抱持レバーが前記吹込み筒に一体形成されている前項1〜3のいずれか1項に記載のゴム風船発射装置。
【0012】
〔5〕前記クランプの一対の抱持レバーが前記受け筒に一体形成されている前項1〜3のいずれか1項に記載のゴム風船発射装置。
【0013】
〔6〕前記クランプの一対の抱持レバーは、各々長手方向中間部から突出する支脚部によって前記吹込み筒又は受け筒に一体化され、無負荷状態で相互に前端側が後端側よりも接近する側面視ハの字形に配置されてゴム風船の吹き口部材に対する係止姿勢になり、後端側の押圧によって相互に略平行に近づくように変形するものとなされている前項1〜5のいずれか1項に記載のゴム風船発射装置。
【0014】
〔7〕前記逆止弁が軟質ないし半硬質材料のシート材より形成され、該シート材の中央部が周辺側と部分的に繋がった弁体を構成し、その周辺部が前記受け筒の筒部端面と吹込み筒の対向面との間にシール材として介在している前項1〜6のいずれか1項に記載のゴム風船発射装置。
【0015】
〔8〕前記受け筒の外周面と前記吹込み筒の受け筒嵌入部の内周面のうちの一方に設けられた係止凸部が他方に設けられた係止凹部に係合されることにより、前記吹込み筒の受け筒嵌入部に対して前記受け筒が抜け止めされている前項1〜7のいずれか1項に記載のゴム風船発射装置。
【発明の効果】
【0016】
〔1〕の発明に係るゴム風船発射装置によれば、クランプを構成する一対の抱持レバーの係止爪を前記吹き口部材の外周フランジに径方向両側から係嵌させて当該吹き口部材を抱持し、この抱持状態で吹込み筒の他端側から空気を吹き込むと、逆止弁によってゴム風船本体内に入った空気の戻りが阻止されるから、ゴム風船本体を楽に膨らませることができる。そして、膨らんだゴム風船本体は、クランプの両抱持レバーに抱持されたまま安定に保持できるから、飛ばす時機になる前に離れて飛び去ってしまう心配がなく、また逆止弁によって空気通路が遮断されるから、保持している間に不用意に空気が抜ける懸念もない。発射させる際には、両抱持レバーの後端側を押圧するだけで両係止爪が吹き口部材の外周フランジから離脱し、吹き口部材を伴ったゴム風船本体が空気噴射によって発射装置から離脱して飛び出すことになる。
【0017】
しかして、このゴム風船発射装置は、受け筒と、吹込み筒と、逆止弁と、クランプとを備えてなるものであり、しかも吹込み筒の一端側に受け筒が嵌合され、その嵌合部に逆止弁を組み込めると共に、クランプも弾性変形で係脱動作するので格別な連動機構が不要であり、その抱持レバーを受け筒や吹込み筒に一体形成でき、もって装置全体を極めてコンパクトに構成でき、嵩張らず携帯便利である上、少ない部品点数で安価に製作でき、また格別な可動部がないために故障する懸念もない。
【0018】
〔2〕の発明によれば、前記逆止弁が前記受け筒に一体形成され、発射装置全体を一方にクランプの抱持レバーを有する受け筒と吹込み筒の2部材で構成できるから、より構造的に簡素であり組立も非常に容易である。
【0019】
〔3〕の発明によれば、発射装置全体を一方にクランプの抱持レバーを有する受け筒と吹込み筒、及び逆止弁の3部材で構成できると共に、逆止弁は受け筒と吹込み筒との間に介装配置すれば良いから、装置の組立も容易である。
【0020】
〔4〕の発明によれば、前記クランプの一対の抱持レバーが前記吹込み筒に一体形成されており、該クランプによってゴム風船の吹き口部材を抱持することにより、該吹き口部材と吹込み筒との間で受け筒を挟み付け固定する形になるので、ゴム風船の吹き口部材をより安定状態に抱持できる。
【0021】
〔5〕の発明によれば、前記クランプの一対の抱持レバーが前記受け筒に一体形成されており、該抱持レバーの吹込み筒の吹込み口からの距離が大きくなるので、吹込み操作し易くなる。
【0022】
〔6〕の発明によれば、前記クランプの一対の抱持レバーは、無負荷状態でハの字形に配置されゴム風船の吹き口部材に対する係止姿勢になるから、ゴム風船の吹き口部材の抱持操作が容易であると共に、後端側の押圧により相互に略平行に近づくように変形(弾性変形等)して開放姿勢になるから、風船発射の際の吹き口部材の係止解除操作も簡単である。
【0023】
〔7〕の発明によれば、前記逆止弁が軟質ないし半硬質材料のシート材より形成され、該シート材の中央部が周辺側と部分的に繋がった弁体を構成するから、空気吹込み時の弁作動性がよく閉弁時の封止性も良好になると共に、その周辺部が受け筒の筒部端面と吹込み筒の対向面との間にシール材として機能するから、受け筒と吹込み筒の嵌合部での空気漏れが確実に防止される。
【0024】
〔8〕の発明によれば、受け筒の外周面と吹込み筒の受け筒嵌入部の内周面のうちの一方に設けられた係止凸部が他方に設けられた係止凹部に係合されるので、受け筒が吹込み筒に対して確実に抜け止めされ、吹き口部材の抱持状態において風船本体内の空気圧によって受け筒が吹込み筒から離脱することを十分に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、この発明に係るゴム風船発射装置の実施形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。図2は第一実施形態のゴム風船発射装置、図3は同発射装置に対するゴム風船の装着操作、図4は同発射装置の受け筒と吹込み筒の分離状態、図5は同受け筒、図6は同吹込み筒、図7は第二実施形態のゴム風船発射装置の受け筒、図8は同吹込み筒、図9は同発射装置へのゴム風船の装着状態、図10は第三実施形態のゴム風船発射装置の分解状態、をそれぞれ示す。
【0026】
第一実施形態のゴム風船発射装置(D1)は、図2〜図4に示すように、共に合成樹脂成形物からなる受け筒(1)と吹込み筒(2)の2部材より構成されている。そして、吹込み筒(2)の頂部の径方向両側位置には、側面視ハの字形に配置されてクランプを形成する一対の抱持レバー(3)が一体形成されている。
【0027】
受け筒(1)は、図4及び図5(A)(B)に示すように、短円筒形をなし、その筒部(10)の下端面には、軟質ないし半硬質合成樹脂からなるシート材(4)が周辺部(4a)で接合されている。そして、該受け筒(1)の軸方向長さ1/3程度の上部(1a)に対し、それよりも下部(1b)は外径が大きく肉厚になっている。そして、この下部(1b)の外周には、一径方向の両側位置に係合キーとしての軸方向に沿うリブ(11)(11)が形成されると共に、その径方向に対して直交する径方向の両側位置に四角い係止凸部(12)(12)が形成されている。なお、各係止凸部(12)の上縁は受け筒(1)の軸方向に対して垂直な段部(12a)になっている。
【0028】
この受け筒(1)の下端に一体化したシート材(4)は、円形の中央部分(4b)が円環状の周辺部(4a)と一部(4c)のみで繋がっており、該中央部分(4b)が逆止弁(5)の弁体を構成している。また、受け筒(1)の上部(1a)は、既述のゴム風船における吹き口部材(7)の端部を内側に適嵌して、且つ該吹き口部材(7)の外周フランジ(7b)を周端縁で係止し得るように寸法設定されている。
【0029】
吹込み筒(2)は、図4及び図6に示すように、径大で短い前筒部(2a)と、径小で長い後筒部(2b)とが一体化しており、その境界壁(2c)つまり前筒部(2a)の底壁の中央には通気孔(21)が開口し、後筒部(2b)後端が吹込み口(20)を構成している。そして、前筒部(2a)には、その一径方向の両側位置に軸方向に沿うキー溝(22)(22)が形成されると共に、その径方向に対して直交する径方向の両側位置に矩形の窓部(23)(23)が形成されている。なお、前筒部(2a)はその内側に受け筒(1)を適嵌させる内径に設定されている。また通気孔(21)の径は、逆止弁(5)の弁体を構成する前記シート材(4)の中央部分(4b)よりも小径に設定されている。
【0030】
各抱持レバー(3)は、図4及び図6に示すように、帯板状のレバー本体(3a)の前端に側面視V字形の係止爪(3b)を有し、該レバー本体(3a)の中央部から内向きに突出した支脚部(3c)により、吹込み筒(2)の前筒部(2a)の頂部外周側に一体化している。そのレバー本体(3a)の後部側外面には、複数条の幅方向に沿う滑り止めリブ(31)が設けられている。そして、両抱持レバー(3)(3)は、無負荷状態においては係止姿勢としてレバー本体(3a)(3a)が相互に前端側が図6の実線で示すように後端側よりも接近する側面視ハの字形に配置しているが、レバー本体(3a)(3a)の後端側を押圧することにより、開放姿勢として同図の仮想線で示すように両レバー本体(3a)(3a)が相互に略平行に近づくように弾性変形する。なお、無負荷状態(係止姿勢)での各抱持レバー(3)の係止爪(3b)の先端(径方向の内方側の先端縁)は、吹込み筒(2)の前筒部(3b)の内周面よりも内側に入り込んでいる(図6参照)。
【0031】
ゴム風船発射装置(D1)を組み立てるには、吹込み筒(2)の前筒部(2a)に対し、受け筒(1)の外周の各リブ(11)が前筒部(2a)の内周の各キー溝(22)に嵌入つまりキー係合するように、該受け筒(1)を周方向に位置決めして強制的に挿嵌させる。これにより、受け筒(1)の外周面の各係止凸部(12)が前筒部(2a)の内周面の各窓部(23)に内嵌し、その段部(12a)が窓部(23)の上縁と係嵌するから、該受け筒(1)は上部(1a)を突出させた状態で吹込み筒(2)に抜出不能且つ相対回転不能に保持される。この状態で受け筒(1)の底部にある逆止弁(5)が吹込み筒(2)の通気孔(21)を前方から塞ぐ形で閉弁している。また、この逆止弁(5)を構成するシート材(4)の周辺部(4a)は、受け筒(1)の筒部(10)の内端面と、吹込み筒(2)の前筒部(2a)の内底面との間にシール材として介在している。
【0032】
このゴム風船発射装置(D1)を使用する際には、その両抱持レバー(3)(3)を後端側の押圧によって開放姿勢とした状態で、図3に示すように、ゴム風船本体(6)の口部(6a)に嵌着した吹き口部材(7)の端部を受け筒(1)に嵌入し、その周端縁を該吹き口部材(7)の外側の外周フランジ(7b)に当接させ、両抱持レバー(3)(3)の後端側の押圧を解除することにより、両抱持レバー(3)(3)が係止姿勢のハの字形配置に復帰し、その係止爪(3b)(3b)が径方向両側から吹き口部材(7)の外周フランジ(7b)に係嵌し、もって該吹き口部材(7)が離脱不能に抱持される。
【0033】
従って、この抱持状態で吹込み筒(2)の後端側の吹込み口(20)から空気(息)を吹き込むと、逆止弁(5)が通気孔(21)から離れて開弁し、空気が風船本体(6)内に流入する一方、吹込み停止時には該逆止弁(5)の閉弁によってゴム風船本体(6)内からの空気の戻りが阻止され、加えて該逆止弁(5)がシート材(4)より構成されて動作性がよく、また該シート材(4)のシール機能によって受け筒(1)と吹込み筒(2)との嵌合部分からの空気漏れも確実に防止されるから、ゴム風船本体(6)を楽に膨らませることができる。
【0034】
こうして膨らませたゴム風船本体(6)は、無負荷状態のクランプの両抱持レバー(3)(3)によって安定に保持されるから、飛ばす時機になる前に離れて飛び去ってしまう心配がなく、また風船本体(6)側の空気圧で逆止弁(5)が通気孔(21)に密着し、もって空気通路が完全に遮断されるから、保持している間に不用意に空気が抜ける懸念もない。そして、ゴム風船を発射させる際には、両抱持レバー(3)(3)の後端側を押圧するだけで、両係止爪(3b)(3b)が吹き口部材(7)の外周フランジ(7b)から離脱するから、ゴム風船本体(6)は空気噴射によって吹き口部材(7)と共に空中へ飛び出すことになる。
【0035】
しかも、このゴム風船発射装置(D1)の場合、装置全体が極めてコンパクトな筒状具形態で嵩張らず携帯便利である上、逆止弁(5)を一体形成した受け筒(1)と、クランプを有する吹込み筒(2)との2部材のみで構成され、クランプも抱持レバー(3)(3)の弾性変形で係脱動作するので格別な連動機構が不要であるから、構造的に極めて簡素で組立容易であると共に、少ない部品数で安価に製作でき、また格別な可動部がないために故障する懸念もない。更に、クランプの一対の抱持レバー(3)(3)が吹込み筒(2)に一体形成されているから、該クランプによってゴム風船の吹き口部材(7)を抱持した際、該吹き口部材(7)と吹込み筒(2)との間で受け筒(1)を挟み付け固定する形になり、もって風船本体(6)内の空気圧によって受け筒(1)が吹込み筒(2)から飛び出すのを確実に防止できる。
【0036】
第二実施形態のゴム風船発射装置(D2)は、クランプが受け筒(1)に一体形成されているが、それ以外の構成は前記第一実施形態のゴム風船発射装置(D1)と同様である。
【0037】
即ち、この発射装置(D2)における受け筒(1)は、図7(A)(B)で示すように、その肉厚が大きい下部(1b)の上端外周の径方向両側に、クランプの一対の抱持レバー(3)(3)が側面視ハの字形の配置で一体形成されている。そして、各抱持レバー(3)は前記第一実施形態と同様構造であり、帯板状のレバー本体(3a)の前端に側面視V字形の係止爪(3b)を有し、該レバー本体(3a)の中央部から内向きに突出した支脚部(3c)によって受け筒(1)に一体化している。そして、無負荷状態(係止姿勢)での各抱持レバー(3)の係止爪(3b)は、受け筒(1)の頂部外周面よりもやや内側に入り込んでいる。また、受け筒(1)の外周面の下部には、共に径方向両側一対のリブ(11)と係止凸部(12)が設けられている。
【0038】
一方、吹込み筒(2)は、図8(A)(B)で示すように、クランプの抱持レバー(3)(3)がないことを除いて前記第一実施形態と同様であり、前筒部(2a)には内周面の径方向両側一対のキー溝(22)と、径方向両側一対の窓部(23)を備え、境界壁(2c)の中央に通気孔(21)が開口している。
【0039】
この第二実施形態のゴム風船発射装置(D2)においても、吹込み筒(2)の前筒部(2a)に対し、受け筒(1)の各リブ(11)が前筒部(2a)の各キー溝(22)に嵌入するように、該受け筒(1)を周方向に位置決めして強制的に挿嵌させることにより、受け筒(1)の各係止凸部(12)が前筒部(2a)の各窓部(23)に内嵌し、該受け筒(1)が吹込み筒(2)に抜出不能且つ相対回転不能に保持される。また、受け筒(1)の底部の逆止弁(5)が吹込み筒(2)の通気孔(21)を前方から塞ぎ、該逆止弁(5)を構成するシート材(4)の周辺部(4a)が、受け筒(1)の筒部(10)の内端面と、吹込み筒(2)の前筒部(2a)の内底面との間にシール材として介在することになる。
【0040】
このゴム風船発射装置(D2)を使用する際には、前記第一実施形態と同様に、両抱持レバー(3)(3)を開放姿勢とした状態で、図9に示すように、ゴム風船の吹き口部材(7)の端部を受け筒(1)に嵌入し、両抱持レバー(3)(3)の後端側の押圧を解除して係止姿勢のハの字形配置に復帰させることにより、係止爪(3b)(3b)が径方向両側から吹き口部材(7)の外周フランジ(7b)に係嵌し、もって該吹き口部材(7)が離脱不能に抱持される。従って、この抱持状態で吹込み筒(2)の吹込み口(20)から空気(息)を吹き込むと、逆止弁(5)が通気孔(21)から離れて開弁し、空気が風船本体(6)内に流入し、吹込み停止時には該逆止弁(5)の閉弁によってゴム風船本体(6)内からの空気の戻りが阻止されるから、ゴム風船本体(6)を楽に膨らませることができる。そして、膨らんだゴム風船本体(6)は、そのままクランプの両抱持レバー(3)(3)によって安定に保持され、その間に空気が抜ける懸念もなく、発射させる際には両抱持レバー(3)(3)を押圧して開放姿勢にすることにより空気噴射によって吹き口部材(7)と共に空中へ飛び出す。
【0041】
このゴム風船発射装置(D2)においても、装置全体が極めてコンパクトな筒状具形態で嵩張らず携帯便利であり、且つ逆止弁(5)及びクランプを有する受け筒(1)と吹込み筒(2)との2部材のみで構成されるから、構造的に極めて簡素で組立容易であると共に、少ない部品数で安価に製作でき、また格別な可動部がないために故障する懸念もない。
【0042】
上記の第一及び第二実施形態のゴム風船発射装置(D1)(D2)では逆止弁(5)が受け筒(1)の底部に一体化(一体成形)されたものを例示したが、この逆止弁(5)は独立部材としてもよい。
【0043】
図10で示す第三実施形態のゴム風船発射装置(D3)は、受け筒(1)及び吹込み筒(2)と、独立部材の逆止弁(5)との3部材からなる。吹込み筒(2)は前記第一実施形態のものと同一構成であり、受け筒(1)も底部に一体形成された逆止弁(5)を有しないこと以外は第一実施形態のものと同様構成である。しかして、前記逆止弁(5)は、軟質ないし半硬質合成樹脂からなるシート材(4)にて構成され、弁体をなす円形の中央部分(4b)が円環状の周辺部(4a)と一部(4c)のみで繋がっている。
【0044】
この第三実施形態のゴム風船発射装置(D3)を組み立てるには、まず吹込み筒(2)の前筒部(2a)内に逆止弁(5)を装填した上で、該前筒部(2a)に受け筒(1)を前記同様に周方向に位置決めして強制的に挿嵌させることにより、受け筒(1)の各係止凸部(12)が前筒部(2a)の各窓部(23)に内嵌し、該受け筒(1)が吹込み筒(2)に抜出不能且つ相対回転不能に保持される。先に装填された逆止弁(5)は、吹込み筒(2)の通気孔(21)を前方から塞ぐと共に、そのシート材(4)の周辺部(4a)が受け筒(1)の内端面と吹込み筒(2)の前筒部(2a)の内底面との間にシール材として介在することになる。
【0045】
この第三実施形態のゴム風船発射装置(D3)の使用方法は、前記第一及び第二実施形態のゴム風船発射装置(D1)(D2)と全く同様であるため、その説明は省略する。
【0046】
また、この第三実施形態ではクランプの両抱持レバー(3)(3)が吹込み筒(2)に一体形成されたものを例示したが、前記第二実施形態のように両抱持レバー(3)(3)が受け筒(1)に一体形成された構成においても、逆止弁(5)を独立部材としても良い。
【0047】
このように逆止弁(5)を独立部材としたゴム風船発射装置でも、装置全体を極めてコンパクトな筒状具として構成でき、構造的に極めて簡素で組立容易であると共に、3部材のみで安価に製作でき、また格別な可動部がないために故障する懸念もない。しかして、逆止弁(5)が独立部材であるため、第一及び第二実施形態のように受け筒(1)に逆止弁(5)を一体化するための接合操作や一体成形が不要となり、それだけ部品製作が容易になるという利点もある。
【0048】
なお、前記実施形態では受け筒(1)の係止凸部(12)と嵌合する吹込み筒(2)側の係止凹部を窓部(23)としたが、該係止凹部を外面側に開放しない内周面における単なる凹部として形成しても良い。また、本発明のゴム風船発射装置においては、例えば、受け筒(1)、吹込み筒(2)、クランプの抱持レバー(3)、逆止弁(5)のそれぞれの形状、受け筒(1)と吹込み筒(2)との嵌合構造等、細部構成については実施形態以外に種々設計変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のゴム風船発射装置を適用するゴム風船を示し、(A)図はゴム風船全体の側面図、(B)図はゴム風船の口部に嵌着する吹き口部材の斜視図である。
【図2】本発明に係る第一実施形態のゴム風船発射装置の正面図である。
【図3】同ゴム風船発射装置に対するゴム風船の装着状態を示す一部破断正面図である。
【図4】同ゴム風船発射装置の受け筒と吹込み筒を分離した状態で示す斜視図である。
【図5】同ゴム風船発射装置の受け筒を示し、(A)図は平面図、(B)図は(A)図のX−X線の断面矢視図である。
【図6】同ゴム風船発射装置の吹込み筒の縦断正面図である。
【図7】本発明に係る第二実施形態のゴム風船発射装置に用いる受け筒を示し、(A)図は正面図、(B)図は平面図である。
【図8】同第二実施形態のゴム風船発射装置に用いる吹込み筒を示し、(A)図は平面図、(B)図は縦断面図である。
【図9】同第二実施形態のゴム風船発射装置に対するゴム風船の装着状態を示す一部破断正面図である。
【図10】本発明に係る第三実施形態のゴム風船発射装置を部材分離状態で示す斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・・・受け筒
10・・・・筒部
11・・・・リブ(キー)
12・・・・係止凸部
2・・・・・吹込み筒
22・・・・キー溝
23・・・・窓部(係止凹部)
3・・・・・抱持レバー
3a・・・・レバー本体
3b・・・・係止爪
3c・・・・支脚部
4・・・・・シート材
4a・・・・周辺部
4b・・・・中央部
5・・・・・逆止弁
6・・・・・ゴム風船本体
6a・・・・口部
7・・・・・吹き口部材
7b・・・・外周フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム風船本体の口部に嵌着された外周フランジ付き吹き口部材の端部を嵌入させる受け筒と、該受け筒を一端側に嵌着させる吹込み筒と、該吹込み筒の他端側から吹き込む空気の戻りを阻止する逆止弁と、前記受け筒に嵌入させた前記吹き口部材を抱持するクランプとを有し、
前記クランプは、前端に係止爪を有する一対の抱持レバーより構成され、両抱持レバーの係止爪を前記吹き口部材の外周フランジに径方向両側から係嵌させて当該吹き口部材を抱持し、この吹き口部材の抱持状態で吹込み筒の他端側から空気を吹き込んでゴム風船本体を膨らませたのち、両抱持レバーを後端側の押圧によって前端側が相互に開くように変形させることにより、両係止爪が前記外周フランジから離脱して、ゴム風船本体が空気噴射によって吹き口部材と共に飛び出すように構成されてなるゴム風船発射装置。
【請求項2】
前記逆止弁が前記受け筒に一体形成されている請求項1に記載のゴム風船発射装置。
【請求項3】
前記逆止弁が前記受け筒と吹込み筒との間に介装されている請求項1に記載のゴム風船発射装置。
【請求項4】
前記クランプの一対の抱持レバーが前記吹込み筒に一体形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム風船発射装置。
【請求項5】
前記クランプの一対の抱持レバーが前記受け筒に一体形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム風船発射装置。
【請求項6】
前記クランプの一対の抱持レバーは、各々長手方向中間部から突出する支脚部によって前記吹込み筒又は受け筒に一体化され、無負荷状態で相互に前端側が後端側よりも接近する側面視ハの字形に配置されてゴム風船の吹き口部材に対する係止姿勢になり、後端側の押圧によって相互に略平行に近づくように変形するものとなされている請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム風船発射装置。
【請求項7】
前記逆止弁が軟質ないし半硬質材料のシート材より形成され、該シート材の中央部が周辺側と部分的に繋がった弁体を構成し、その周辺部が前記受け筒の筒部端面と吹込み筒の対向面との間にシール材として介在している請求項1〜6のいずれか1項に記載のゴム風船発射装置。
【請求項8】
前記受け筒の外周面と前記吹込み筒の受け筒嵌入部の内周面のうちの一方に設けられた係止凸部が他方に設けられた係止凹部に係合されることにより、前記吹込み筒の受け筒嵌入部に対して前記受け筒が抜け止めされている請求項1〜7のいずれか1項に記載のゴム風船発射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−154910(P2010−154910A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334042(P2008−334042)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(397000067)株式会社タイガーゴム (4)
【Fターム(参考)】