説明

ゴルフカート

【課題】蓄電池の劣化が十分に抑制されたゴルフカートを提供する。
【解決手段】バッテリが満充電容量まで充電された後、カウンタ値が予め定められた規定値nに達したか否かが判定される。カウンタ値が規定値nに達していない場合、ゴルフカートが走行コースを走行する際に、コース情報の学習が行われる。カウンタ値が規定値nに達すると、走行コースに対応するコース情報が記憶され、記憶されたコース情報に基づいて、走行コース上でバッテリが過充電となる可能性があるか否かが判定される。走行コース上でバッテリが過充電となる可能性がある場合、バッテリの放電制御が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフカートに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ場においては、プレイヤーの移動およびゴルフクラブ等の搬送のために、蓄電池の電力で駆動されるゴルフカートが使用されている。蓄電池への充電は、回生ブレーキによって発生される回生電力または商用電源からの電力が蓄電池に供給されることによって行われる。蓄電池に十分に電力が供給されると、蓄電池が満充電になる。満充電の蓄電池にさらに回生電力が供給されると、蓄電池が過充電になる。しかしながら、蓄電池が繰り返し過充電になると、蓄電池の劣化が促進される。
【0003】
そこで、特許文献1に記載される充電方式においては、ゴルフカートの運転時における蓄電池の総放電量および平均放電電流に基づいて、蓄電池が過充電とならないように、蓄電池の充電量が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−80901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の充電方式では、満充電まで蓄電池が充電されることなく、残容量が満充電より少ない状態で蓄電池の充電および放電が繰り返される可能性がある。このような場合にも、蓄電池の劣化が促進される。したがって、特許文献1の充電方式を用いても、蓄電池の劣化を十分に抑制することができない。
【0006】
本発明の目的は、蓄電池の劣化が十分に抑制されたゴルフカートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係るゴルフカートは、蓄電池と、蓄電池の電力により作動するモータと、モータの動力により走行する本体部と、本体部の制動時にモータにより発生される回生電力を蓄電池に供給する回生電力供給部と、予め設定された走行経路における蓄電池の充電量および放電量をコース情報として記憶する記憶部と、蓄電池が満充電容量まで充電された後、記憶部に記憶されたコース情報に基づいて、蓄電池の残容量が予め設定された上限値よりも大きくならないように蓄電池を放電させる放電制御部とを備えるものである。
【0008】
そのゴルフカートにおいては、蓄電池の電力によりモータが作動し、モータの動力により本体部が走行する。本体部の制動時には、モータにより発生される回生電力が回生電力供給部により蓄電池に供給され、蓄電池が充電される。
【0009】
本体部が予め設定された走行経路を走行する際には、蓄電池が満充電容量まで充電された後、記憶部に記憶されたコース情報に基づいて、蓄電池の残容量が予め設定された上限値よりも大きくならないように蓄電池が放電される。それにより、蓄電池を満充電容量まで充電しつつ、回生電力によって蓄電池が過充電となることを防止することができる。したがって、蓄電池の劣化が十分に抑制され、蓄電池の長寿命化が可能となる。
【0010】
(2)ゴルフカートは、本体部の走行時に蓄電池の充電量および放電量を検出する検出部をさらに備え、記憶部は、本体部が予め設定された走行経路を走行する際に検出部により検出される蓄電池の充電量および放電量をコース情報として記憶してもよい。
【0011】
この場合、本体部が走行経路を走行しつつ、その走行経路におけるコース情報が記憶部に記憶される。それにより、他の装置を用いることなく容易にコース情報を取得することができる。
【0012】
(3)外部装置から予め設定された走行経路におけるコース情報が送信され、ゴルフカートは、外部装置からのコース情報を受信する受信部をさらに備え、記憶部は、受信部により受信されたコース情報を記憶してもよい。
【0013】
この場合、本体部が走行経路を走行することなく、受信部により受信されたコース情報が記憶部に記憶される。それにより、本体部が初めて走行経路を走行する際でも、記憶部に記憶されたコース情報に基づいて蓄電池を放電させることができる。したがって、蓄電池を満充電容量まで充電しつつ回生電力による蓄電池の過充電を防止することができる。
【0014】
(4)放電制御部は、本体部が停止した状態で蓄電池を放電させてもよい。この場合、本体部を走行させているときだけではなく任意の時点で蓄電池を放電させることができる。
【0015】
(5)放電制御部は、蓄電池から商用電源に電力を供給することにより蓄電池を放電させてもよい。この場合、商用電源に電力を戻すことにより商用電源からの電力の使用量を全体として低減することができる。それにより、電力コストを低減することできる。
【0016】
(6)モータは、界磁巻線および電機子巻線を含む電磁石界磁形整流子モータであり、放電制御部は、モータの界磁巻線または電機子巻線の一方に蓄電池からの電力を供給することなく界磁巻線または電機子巻線の他方に蓄電池からの電力を供給することにより蓄電池を放電させてもよい。
【0017】
モータの界磁巻線または電機子巻線の一方に電力が供給されず、他方に電力が供給された場合、モータは作動しない。それにより、他の放電器等を設けることなく、任意の時点で蓄電池を放電させることができる。したがって、放電器等の放電機能を有する他の部品を設けることによる構成の複雑化およびコストの増加が抑制される。
【0018】
(7)蓄電池は鉛蓄電池であってもよい。この場合、鉛蓄電池は本来的に過充電によって劣化しにくいので、鉛蓄電池を本発明の蓄電池として用いることにより、蓄電池の劣化をより十分に抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、蓄電池を満充電容量まで充電しつつ、回生電力によって蓄電池が過充電となることを防止することができる。したがって、蓄電池の劣化が十分に抑制され、蓄電池の長寿命化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態に係るゴルフカートの外観側面図である。
【図2】ゴルフカートの内部構成を示すブロック図である。
【図3】制御部の詳細を示すブロック図である。
【図4】駆動モータの詳細な構成を示す模式図である。
【図5】走行コースにおけるバッテリの充電量、放電量および残容量の一例を模式的に示す図である。
【図6】CPUによる過充電防止処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態に係るゴルフカートについて図面を参照しながら説明する。以下の説明において、満充電とは、過充電とならない上限までバッテリが充電された状態をいう。また、満充電容量とは、満充電のバッテリの残容量をいう。さらに、充電量とは、バッテリに供給される電荷量をいい、放電量とは、バッテリから放出される電荷量をいう。
【0022】
(1)ゴルフカートの構成
図1は、本実施の形態に係るゴルフカートの外観側面図である。図1に示すように、ゴルフカート1は、車体10、一対の前輪11および一対の後輪12を有する。車体10は、下部車体10a、支持枠10bおよび屋根部10cを有する。下部車体10aの四隅から上方に延びるように支持枠10bが設けられ、支持枠10bの上端部に屋根部10cが取り付けられる。一対の前輪11および一対の後輪12は、車体10を支持するように下部車体10aのそれぞれ前端部および後端部に可動可能に取り付けられる。
【0023】
下部車体10a上の略中央部には前部シート13が設けられ、下部車体10a上の後部には後部シート14が設けられる。前部シート13の前方にはハンドル15が設けられる。前部シート13に着座する搭乗者がハンドル15を操作することにより、前輪11の向きが調整され、ゴルフカート1の操舵が行われる。下部車体10aの後端部には、ゴルフバッグ等を載置するためのキャリア16が設けられる。
【0024】
本実施の形態に係るゴルフカート1は、搭乗者の任意の選択により、自動走行モードおよび手動走行モードのいずれかで動作を行う。自動走行モードでは、基本的に図示しないリモコンの操作のみが行われる。手動走行モードでは、搭乗者によりハンドル15ならびに後述のアクセルペダルおよびブレーキペダルが操作される。
【0025】
図2は、ゴルフカート1の内部構成を示すブロック図である。図2に示すように、ゴルフカート1は、主として制御部50、バッテリ51、駆動モータ21、トランスミッション22、電磁ブレーキ23、アクセルペダル24、ブレーキペダル25、ブレーキ駆動部26および受信部57を備える。
【0026】
制御部50は、バッテリ51の充放電制御を行うとともに、バッテリ51の電力を用いて後述の各部の動作を制御する。制御部50の詳細については後述する。バッテリ51としては、例えば鉛蓄電池、リチウムイオン蓄電池、ニッケル・水素蓄電池またはニッケル・カドミウム蓄電池を用いることができる。特に、鉛蓄電池は上記の他の蓄電池に比べて過充電による劣化が促進されにくい。そのため、鉛蓄電池を用いることが好ましい。
【0027】
駆動モータ21、トランスミッション22および電磁ブレーキ23は、ゴルフカート1の後部に設けられる。後輪12の車軸12aにトランスミッション22が接続され、駆動モータ21および電磁ブレーキ23がトランスミッション22に取り付けられる。駆動モータ21の回転力は、トランスミッション22を介して後輪12の車軸12aに伝達される。それにより、後輪12が駆動される。
【0028】
また、ゴルフカート1の制動時に、駆動モータ21により電力が発生される。具体的には、駆動モータ21が発電機として機能し、後輪12の回転力が電力に変換される。駆動モータ21により発生される電力(以下、回生電力と呼ぶ)がバッテリ51に供給されることにより、バッテリ51が充電される。ゴルフカート1の停止動作時には、電磁ブレーキ23が作動して駆動モータ21の回転を制止する。駆動モータ21の詳細については後述する。
【0029】
アクセルペダル24およびブレーキペダル25は、ゴルフカート1の前部に設けられ、前部シート13(図1)に着座する搭乗者により操作される。アクセルペダル24にはアクセルセンサ24aが接続される。アクセルペダル24の踏み込み量がアクセルセンサ24aにより検出され、その検出値が制御部50に与えられる。制御部50は、アクセルセンサ24aの検出値に基づいて駆動モータ21を制御する。
【0030】
ブレーキペダル25はブレーキ駆動部26に接続される。一対の前輪11および一対の後輪12の各々には、ディスクブレーキ等のブレーキ機構BMが取り付けられる。ブレーキ駆動部26はこれらのブレーキ機構BMに接続される。搭乗者によってブレーキペダル25が踏み込まれると、ブレーキ駆動部26が各ブレーキ機構BMを駆動して前輪11および後輪12を制動する。また、ブレーキ駆動部26は制御部50により制御される。
【0031】
制御部50には、誘導線センサS1、定点センサS2および車速センサS3がそれぞれ電気的に接続される。ゴルフ場には、ゴルフカート1が予め定められた経路を1方向(予め決められた方向)に走行するようにゴルフカート1を誘導するための電磁誘導線(図示せず)が埋設されている。その電磁誘導線が誘導線センサS1によって磁気的に検出され、誘導線センサS1から制御部50に検出信号が与えられる。自動走行モードでは、制御部50が誘導線センサS1からの検出信号に基づいて図示しない操舵機構を制御する。それにより、ゴルフカート1が予め定められた経路から逸脱することなく走行する。
【0032】
また、ゴルフカート1の走行経路における所定位置には、各種の定点が設けられる。各定点は、走行、停止または減速等を指示する指示信号を発信する。各ゴルフカートが定点上を通過する際に、定点からの指示信号が定点センサS2によって検出されると、定点センサS2から制御部50に検出信号が与えられる。制御部50は、定点センサS2からの検出信号に応じて、ゴルフカート1の走行を制御する。車速センサS3はトランスミッション22に設けられる。車速センサS3によりゴルフカート1の走行速度が検出され、その検出値が制御部50に与えられる。
【0033】
また、ゴルフ場のマスタ室MRには、マスタコンピュータ60が設けられる。例えば各ゴルフカート1の出庫前に、マスタコンピュータ60からマスタ室MRのアンテナ60aを介して種々の情報が送信される。受信部57は、マスタコンピュータ60からの情報を受信し、制御部50に与える。
【0034】
図3は、制御部50の詳細を示すブロック図である。図3に示すように、制御部50は、CPU(中央演算処理装置)501、電力変換部502、充放電制御部503、電圧検出部504、電流検出部505、駆動制御部507、タイマ508および記憶部509を含む。
【0035】
CPU501は、充放電制御部503、電圧検出部504、電流検出部505、駆動制御部507、タイマ508および記憶部509を制御する。電力変換部502は、AC/DC(交流/直流)変換器およびDC/AC(直流/交流)変換器を含む。電力変換部502は、商用電源から供給される交流電力を直流電力に変換する。充放電制御部503は、電力変換部502により与えられる直流電力をバッテリ51に供給する。これにより、バッテリ51が充電される。
【0036】
また、充放電制御部503は、バッテリ51の残容量の一部を電力変換部502を介して商用電源に戻す。この場合、電力変換部502は、充放電制御部503からの直流電力を交流電力に変換する。充放電制御部503の詳細については後述する。
【0037】
電圧検出部504は、バッテリ51の電圧を検出する。電流検出部505は、バッテリ51に流れる電流を検出する。電圧検出部504により検出された電圧および電流検出部505により検出された電流はそれぞれCPU501に与えられる。
【0038】
駆動制御部507は、バッテリ51から駆動モータ21に電力を供給することにより駆動モータ21を作動させる。また、駆動制御部507は、駆動モータ21により発生される回生電力をバッテリ51に供給する。それにより、バッテリ51が充電される。さらに、駆動制御部507は、駆動モータ21を作動させることなく、バッテリ51を放電させることができる。駆動制御部507の詳細については後述する。
【0039】
CPU501は、タイマ508を用いて、バッテリ51の充電時間、バッテリ51の放電時間、およびゴルフカート1の走行時間等を計測する。記憶部509は、後述の過充電防止処理を行うための過充電防止処理プログラム、および後述のコース情報を記憶する。
【0040】
(2)駆動モータの詳細
次に、駆動モータ21の詳細な構成について説明する。図4は、駆動モータ21の詳細な構成を示す模式図である。図4に示すように、駆動モータ21は、電機子巻線211および界磁巻線212を含む。すなわち、駆動モータ21は電磁石界磁形整流子モータである。電機子巻線211がロータに相当し、界磁巻線212がステータに相当する。
【0041】
電機子巻線211の端子部211a,211bが駆動制御部507にそれぞれ接続される。また、界磁巻線212の一端部および他端部が駆動制御部507にそれぞれ接続される。駆動制御部507は、バッテリ51の正極および負極に接続される。
【0042】
駆動制御部507によりバッテリ51から駆動モータ21の電機子巻線211および界磁巻線212に電流が供給される(実線矢印参照)。それにより、電機子巻線211および界磁巻線212の周囲に磁界が発生し、電機子巻線211が回転力(トルク)を得る。その回転力が後輪12(図2)に伝達されることにより、後輪12が駆動される。
【0043】
一方、電機子巻線211の回転力が電力に変換されることにより、後輪12が制動される(回生ブレーキ)。変換された電力が回生電力として駆動制御部507によりバッテリ51に供給される(点線矢印参照)。
【0044】
ここで、駆動制御部507によりバッテリ51から電機子巻線211または界磁巻線212のいずれか一方にのみ電流が供給された場合、電機子巻線211に回転力が発生しない。その場合、供給された電流が熱として消費される。すなわち、バッテリ51から電機子巻線211または界磁巻線212のいずれか一方にのみ電流を供給することにより、回転力を発生させることなく、バッテリ51を放電させることができる。
【0045】
本実施の形態では、電機子巻線211に供給可能な電流は界磁巻線212に供給可能な電流よりも大きい。電機子巻線211には例えば300Aを供給することが可能であり、界磁巻線212には例えば20Aを供給することが可能である。そのため、電機子巻線211にのみ電流が供給されることにより、界磁巻線212にのみ電流が供給される場合に比べてより効率よくバッテリ51を放電させることができる。
【0046】
(3)走行時におけるバッテリの充電および放電
本実施の形態に係るゴルフカート1は、予め定められた走行経路(以下、走行コースと呼ぶ)を走行すると、その走行コースに対応するコース情報を記憶部509に記憶する。コース情報は、ゴルフカート1の走行区間とバッテリ51の充電量および放電量との関係を含む。
【0047】
ここで、コース情報について具体的に説明する。図5は、走行コースにおけるバッテリ51の充電量、放電量および残容量の一例を模式的に示す図である。なお、図5において、バッテリ51の充電量は正の値で示され、バッテリ51の放電量は負の値で示される。また、地点P1からの充電量の積算値(以下、積算充電量と呼ぶ)および放電量の積算値(以下、積算放電量と呼ぶ)がかっこ内に示される。また、バッテリ51の残容量として、バッテリ51の残容量が満充電容量を超えることができると仮定した場合の値が上段に示され、実際のバッテリ51の残容量が下段のかっこ内に示される。
【0048】
ゴルフカート1が水平部を走行する際、またはゴルフカート1が上り坂を走行する際には、後輪12の駆動(駆動モータ21の作動)のために電力が必要であり、バッテリ51の充電量よりも放電量が大きくなる。一方、ゴルフカート1が下り坂を走行する際には、後輪12の回転力を電力に変換することができるので、放電量よりも充電量が大きくなる。
【0049】
図5の例において、バッテリ51の満充電容量が60Ahであるとし、バッテリ51の残容量が満充電容量を超えることができると仮定した場合、バッテリ51は次のように充電および放電される。まず、地点P1から地点P2までの区間は水平部である。そのため、この区間をゴルフカート1が走行する際に、バッテリ51が2Ah放電される。また、地点P2から地点P4までの区間は下り坂である。そのため、この区間をゴルフカート1が走行する際に、バッテリ51が3Ah充電される。また、地点P4から地点P6までの区間は上り坂である。そのため、この区間をゴルフカート1が走行する際に、バッテリ51が5Ah放電される。地点P6から地点P13においても同様に、水平部および上り坂での走行時にはバッテリ51が放電され、下り坂での走行時にはバッテリ51が充電される。
【0050】
このようなバッテリ51の充電量および放電量が、ゴルフカート1の走行区間と対応付けられ、コース情報として記憶部509に記憶される。なお、ゴルフカート1の走行区間とは、走行コースのある地点から別の地点までゴルフカート1が走行した区間をいう。
【0051】
しかしながら、実際にはバッテリ51の残容量が満充電容量を超えることはなく、満充電のバッテリ51にさらに電力が供給されると、バッテリ51が過充電になる。図5の例では、バッテリ51の満充電容量が60Ahであり、バッテリ51が満充電容量まで充電された状態でゴルフカート1が地点P1から走行を開始する。
【0052】
ゴルフカート1が走行を継続すると、地点P3でバッテリ51の残容量が満充電容量に達し、地点P3から地点P4までの区間において、バッテリ51が過充電となる。同様に、地点P8でバッテリ51の残容量が満充電容量に達し、地点P8から地点P9までの区間においてバッテリ51が過充電となる。このようにバッテリ51が度々過充電になると、バッテリ51の劣化が促進される。
【0053】
そこで、本実施の形態に係るゴルフカート1においては、記憶部509に記憶されたコース情報に基づいて、以下の第1の例または第2の例のように、バッテリ51が過充電とならないように制御部50によりバッテリ51の放電制御が行われる。
【0054】
具体的には、商用電源から電力変換部502を介して供給される電力によりバッテリ51が満充電容量まで充電された後、まず、記憶部509に記憶されたコース情報に基づいて、走行コース上でバッテリ51が過充電となる可能性があるか否かが制御部50により判定される。
【0055】
第1の例では、走行コース上でバッテリ51が過充電となる可能性がある場合、バッテリ51が満充電容量まで充電された後であってゴルフカート1が走行を開始する前に、充放電制御部503によりバッテリ51の残容量の一部が電力変換部502を介して商用電源に戻される。これにより、走行コース上でバッテリ51が過充電となることが防止される。また、商用電源に電力を戻すことにより、商用電源からの電力の使用量を全体として低減することができる。したがって、電力コストを低減することができる。
【0056】
図5の例では、バッテリ51の残容量が満充電容量を超えることができると仮定した場合、バッテリ51の残容量の最大値は、地点P9における62Ahである。すなわち、バッテリ51の残容量の最大値が満充電容量の60Ahよりも2Ah大きい。そこで、ゴルフカート1が走行を開始する前に、バッテリ51から商用電源に例えば2Ah戻される。それにより、地点P4でのバッテリ51の残容量は59Ahとなり、地点P9でのバッテリ51の残容量は60Ahとなる。それにより、走行コース上でバッテリ51が過充電となることが防止される。
【0057】
第2の例では、走行コース上でバッテリ51が過充電となる可能性がある場合、バッテリ51が過充電となる前の任意の時点で、駆動制御部507によりバッテリ51の残容量の一部が駆動モータ21の電機子巻線211または界磁巻線212のいずれか一方にのみ供給される。
【0058】
この場合、上記のように、駆動モータ21によって後輪12が駆動されない。したがって、ゴルフカート1が停止したときにバッテリ51を放電させることができる。それにより、走行コース上でバッテリ51が過充電となることが防止される。また、駆動モータ21を用いてバッテリ51を放電させるので、他の抵抗器等を設ける必要がない。そのため、放電機能を有する他の部品を設けることによる構造の複雑化およびコストの増加を抑制することができる。
【0059】
なお、第2の例においては、ゴルフカート1の走行開始前に、駆動モータ21の電機子巻線211または界磁巻線212のいずれか一方に電力が供給されてバッテリ51が放電されてもよく、または、ゴルフカート1の走行開始後にゴルフカート1が一時的に停止した状態で、駆動モータ21の電機子巻線211または界磁巻線212のいずれか一方に電力が供給されてバッテリ51が放電されてもよい。
【0060】
図5の例では、例えば地点P1から地点P3までの区間において、ゴルフカート1が停止した状態でバッテリ51から駆動モータ21の電機子巻線211または界磁巻線212のいずれか一方に例えば2Ah供給される。それにより、走行コース上でバッテリ51が過充電となることが防止される。
【0061】
ところで、ゴルフカート1が走行を開始した後、バッテリ51の積算放電量の絶対値が積算充電量の絶対値よりも十分に大きくなると、バッテリ51が過充電となる可能性がない。そのため、積算放電量の絶対値が積算充電量の絶対値よりも十分に大きい状態でのバッテリ51の充電量および放電量は、コース情報として記憶部509に記憶されなくてもよい。
【0062】
図5の例では、積算放電量の絶対値が積算充電量の絶対値よりも3Ah以上大きい状態での充電量および放電量がコース情報として記憶されない。すなわち、地点P5から地点P7までの区間に対応するバッテリ51の充電量および放電量がコース情報として記憶部509に記憶されない。
【0063】
なお、バッテリ51が満充電である場合に、バッテリ51の過充電を防止するため、下り坂において、回生ブレーキを用いる(駆動モータ21で回生電力を発生させる)代わりに、ブレーキ機構BMまたは電磁ブレーキ23等のメカニカルブレーキを用いることが考えられる。しかしながら、回生ブレーキによる制動時とメカニカルブレーキによる制動時とでは、搭乗者に与えられる感覚が異なる。そのため、バッテリ51の残容量に応じて回生ブレーキとメカニカルブレーキとが切り替えられると、搭乗者が違和感を覚えることがある。
【0064】
それに対して、本実施の形態では、バッテリ51の残容量に応じて回生ブレーキとメカニカルブレーキとが切り替えられることがないので、搭乗者に違和感を与えることなく、バッテリ51の過充電を防止することができる。
【0065】
(4)過充電防止処理
制御部50のCPU501による過充電防止処理について説明する。図6は、CPU501による過充電防止処理を示すフローチャートである。なお、図6の過充電防止処理は、CPU501が記憶部509に記憶される過充電防止処理プログラムを実行することにより行われる。
【0066】
図6に示すように、まず、CPU501は、制御部50が商用電源に接続された状態で、充放電制御部503によりバッテリ51を満充電容量まで充電する(ステップS1)。次に、CPU501は、カウンタ値が予め定められた規定値n(例えば、n=5)に達したか否かを判定する(ステップS2)。後述のように、カウンタ値は記憶部509に記憶されている。カウンタ値は、初期状態では0である。ゴルフカート1が走行コースを1回走行する毎にカウンタ値に1が加算される。
【0067】
カウンタ値が規定値nに達していない場合、CPU501は、ゴルフカート1が走行コースを走行する際に、コース情報の学習を行う(ステップ3)。そして、走行が終了した後にカウンタ値に1を加算し(ステップS4)、処理を終了する。
【0068】
ここで、ステップS3におけるコース情報の学習方法について説明する。本実施の形態では、ゴルフカート1が走行コースを走行しつつその走行時のバッテリ51の充電量および放電量が記憶部509に記憶される。
【0069】
具体的には、CPU501は、電流検出部505により検出される電流およびタイマ508を用いて計測される充電時間および放電時間に基づいて、バッテリ51の充電量および放電量を算出する。この場合、電流と充電時間との積が充電量に相当し、電流と放電時間との積が放電量に相当する。
【0070】
また、CPU501は、車速センサS3により検出されるゴルフカート1の走行速度およびタイマ508を用いて計測される走行時間に基づいて、ゴルフカート1の走行距離を算出する。この場合、走行速度と走行時間との積が走行距離に相当する。算出された充電量および放電量と走行距離とが互いに対応付けられ、記憶部509に記憶される。
【0071】
なお、図5の例のように、走行コースによってはコース情報の学習時に走行コース上でバッテリ51が過充電となることがある。そのため、上記のように、バッテリ51として過充電による劣化が促進されにくい鉛蓄電池を用いることが好ましい。
【0072】
図6のステップS2において、カウンタ値が規定値nに達すると、CPU501は、ステップS3で記憶部509に記憶された情報に基づいて、走行コースに対応するコース情報を記憶部509に記憶する(ステップS5)。
【0073】
この場合、CPU501は、n回の走行における充電量および放電量の平均値を算出する。また、CPU501は、積算放電量の絶対値が積算充電量の絶対値よりも予め定められた値(図5の例では3Ah)以上大きくならない区間を決定する(図5の例では地点P1から地点P5までの区間、および地点P7から地点P13までの区間)。そして、CPU501は、決定された区間に対応する充電量および放電量の平均値ならびに走行距離をコース情報として記憶部509に記憶する。
【0074】
次に、CPU501は、記憶部509に記憶されるコース情報に基づいて、走行コース上でバッテリ51が過充電となる可能性があるか否かを判定する(ステップS6)。
【0075】
走行コース上でバッテリ51が過充電となる可能性がない場合、CPU501は、そのまま処理を終了する。一方、走行コース上でバッテリ51が過充電となる可能性がある場合、CPU501は、上記の放電制御を行い(ステップS7)、処理を終了する。
【0076】
すなわち、上記の第1の例では、ステップS7の放電制御として、CPU501は、ゴルフカート1が走行を開始する前に、制御部50が商用電源に接続された状態で、充放電制御部503によりバッテリ51の残容量の一部を電力変換部502を介して商用電源に戻す。
【0077】
上記の第2の例では、ステップS7の放電制御として、CPU501は、バッテリ51が過充電となる前の任意の時点において、ゴルフカート1が停止した状態で、駆動制御部507によりバッテリ51の残容量の一部をバッテリ51から駆動モータ2の電機子巻線211または界磁巻線212のいずれか一方にのみ供給する。
【0078】
これにより、走行コース上でバッテリ51が過充電となることが防止される。
【0079】
(5)本実施の形態の効果
このように、本実施の形態に係るゴルフカート1においては、バッテリ51が満充電容量まで充電された後、予め記憶部509に記憶されたコース情報に基づいて、走行コース上でバッテリ51が過充電とならないように、バッテリ51の放電制御が行われる。これにより、バッテリ51を満充電容量まで充電しつつ、走行コース上で回生電力によりバッテリ51が過充電となることを防止することができる。したがって、バッテリ51の劣化が十分に抑制され、バッテリ51の長寿命化が可能となる。
【0080】
また、本実施の形態に係るゴルフカート1においては、走行コースの走行時にコース情報が学習される。それにより、他の装置を用いることなく容易にコース情報を取得することができる。
【0081】
(6)他の実施の形態
(6−1)
上記実施の形態においては、ゴルフカート1が走行コースを走行しつつコース情報を学習することにより走行コースに対応するコース情報が取得されるが、これに限らず、他の方法でコース情報が取得されてもよい。
【0082】
例えば、マスタコンピュータ60(図2)に走行コースに対応するコース情報が予め記憶され、マスタコンピュータ60からゴルフカート1にコース情報が送信されてもよい。この場合、マスタコンピュータ60からのコース情報が受信部57により受信され、記憶部509に記憶される。CPU501は、図6のステップS2〜S4の処理を行うことなく、マスタコンピュータ60からのコース情報に基づいて、図6のステップS6,S7の処理を行う。この場合、ゴルフカート1がコース情報の学習を行う必要がないので、ゴルフカート1が初めて走行コースを走行する場合でも、マスタコンピュータ60から与えられたコース情報に基づいてバッテリ51の放電制御を行うことができる。
【0083】
なお、他のゴルフカート1がコース情報の学習を行うことによってコース情報を取得した場合に、そのコース情報が他のゴルフカート1からマスタコンピュータ60に与えられ、さらにマスタコンピュータ60から当ゴルフカート1に送信されることにより、当ゴルフカート1がコース情報を取得してもよい。
【0084】
(6−2)
上記実施の形態においては、駆動モータ21として電磁石界磁形整流子モータが用いられるが、駆動モータ21として他のモータが用いられてもよい。例えば、駆動モータ21として永久磁石界磁形整流子モータを用いてもよい。この場合、バッテリ51が満充電容量まで充電された後、上記の第1の例により、バッテリ51が過充電とならないようにバッテリ51が放電される。
【0085】
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0086】
上記実施の形態においては、バッテリ51が蓄電池の例であり、駆動モータ21がモータの例であり、車体10、前輪11および後輪12が本体部の例であり、駆動制御部507が回生電力供給部の例であり、記憶部509が記憶部の例であり、CPU501、充放電制御部503および駆動制御部507が放電制御部の例であり、電流検出部505およびタイマ508が検出部の例であり、マスタコンピュータ60が外部装置の例であり、受信部57が受信部の例である。
【0087】
請求項の各構成要素として、上記実施の形態に記載された構成要素の他、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の構成要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、ゴルフ場におけるプレイヤーの移動およびゴルフクラブの搬送等のために有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 ゴルフカート
10 車体
11 前輪
12 後輪
21 駆動モータ
22 トランスミッション
23 電磁ブレーキ
26 ブレーキ駆動部
50 制御部
51 バッテリ
57 受信部
60 マスタコンピュータ
501 CPU
502 電力変換部
503 充放電制御部
504 電圧検出部
505 電流検出部
507 駆動制御部
508 タイマ
509 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池と、
前記蓄電池の電力により作動するモータと、
前記モータの動力により走行する本体部と、
前記本体部の制動時に前記モータにより発生される回生電力を前記蓄電池に供給する回生電力供給部と、
予め設定された走行経路における前記蓄電池の充電量および放電量をコース情報として記憶する記憶部と、
前記蓄電池が満充電容量まで充電された後、前記記憶部に記憶された前記コース情報に基づいて、前記蓄電池の残容量が予め設定された上限値よりも大きくならないように前記蓄電池を放電させる放電制御部とを備えることを特徴とするゴルフカート。
【請求項2】
前記本体部の走行時に前記蓄電池の充電量および放電量を検出する検出部をさらに備え、
前記記憶部は、前記本体部が前記走行経路を走行する際に前記検出部により検出される前記蓄電池の充電量および放電量を前記コース情報として記憶することを特徴とする請求項1記載のゴルフカート。
【請求項3】
外部装置から前記走行経路におけるコース情報が送信され、
前記ゴルフカートは、前記外部装置からのコース情報を受信する受信部をさらに備え、
前記記憶部は、前記受信部により受信されたコース情報を記憶することを特徴とする請求項1または2記載のゴルフカート。
【請求項4】
前記放電制御部は、前記本体部が停止した状態で前記蓄電池を放電させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴルフカート。
【請求項5】
前記放電制御部は、前記蓄電池から商用電源に電力を供給することにより前記蓄電池を放電させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゴルフカート。
【請求項6】
前記モータは、界磁巻線および電機子巻線を含む電磁石界磁形整流子モータであり、
前記放電制御部は、前記モータの前記界磁巻線または前記電機子巻線の一方に前記蓄電池からの電力を供給することなく前記界磁巻線または前記電機子巻線の他方に前記蓄電池を供給することにより前記蓄電池を放電させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゴルフカート。
【請求項7】
前記蓄電池は鉛蓄電池であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のゴルフカート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−205833(P2011−205833A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72352(P2010−72352)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000201766)ヤマハモーターパワープロダクツ株式会社 (39)
【Fターム(参考)】