説明

ゴルフクラブヘッドに応用するチタン−アルミニウム合金

【課題】塑性が高く、展延性が高いチタン−アルミニウム合金を提供し、ゴルフクラブヘッドの弾性変形の能力を調整する。
【解決手段】本発明は、重量%でチタン88%から92%、アルミニウム7.5%から10%を含み、延伸率を8%〜16%とするゴルフクラブヘッドに応用するチタン−アルミニウム合金を提供する。該チタン−アルミニウム合金は、ニオブ、バナジウム、モリブデン、クロム、鉄、ケイ素、酸素、窒素などの微量元素を選択的に添加することができ、引張強度を650〜950Mpaとする高延伸率材料を構成する。この高延伸率材料をゴルフクラブヘッドの本体に運用し、剛性が比較的優れた6Al−4V−Tiチタン合金またはβ合金のフェースと組み合わせて形成したゴルフクラブヘッドは、打感がよく、制振性および制球性がよく、かつネック角を調整しカスタム化することが可能なゴルフクラブヘッド製品を達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに応用する高延伸材料に関し、特にチタン、アルミニウムを重量%の比率で配合し、ニオブ、バナジウム、モリブデン、クロム、鉄、ケイ素、酸素および/または窒素などの微量元素を添加することにより高延伸性を有するゴルフクラブヘッド合金材料に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、開発されているゴルフクラブヘッドに応用する合金の技術は、主にチタン合金材料であり、特許文献1で開示された公知の6Al−4V−Tiチタン合金(すなわち、重量%がアルミニウムおよびバナジウムであり、残部をチタン金属とする)のように、その成分は5.5〜6.75重量%のAl、3.5〜4.5重量%のバナジウム、最大値を0.3重量%とする鉄、および最大値を0.2重量%とする酸素を含み、その密度は約4.43〜0.3g/cmである。6Al−4V−Tiチタン合金で製造されたゴルフクラブヘッドは、初期のステンレス鋼材料製のクラブヘッドに比べ、弾性変形力が大きく上回り、同じ強度を有し、密度が更に低いといった特性を有しているため、ゴルフクラブヘッドの重量を増やさない前提の下で、ゴルフクラブヘッドの体積を増やし、その最適打球点の面積を相対的に増加させることができ、打球成功率を高めることができる。また、ステンレス鋼を上回る弾性変形力によって、打球時に比較的大きな弾性変形の能力を提供することができ、比較的大きな弾性変形の程度−伸び率を生成することができ、ボールがフェースにぶつかるときにもたらされる球体の圧縮変形を相対的に減少させ、打球応力が減衰によって吸収される程度を低減し、打球応力のエネルギー損失を防止し、打球距離をさらに向上させることができる。
【特許文献1】米国特許第2006/0045789号
【0003】
しかし、目下、ゴルフクラブヘッドの体積の大型化および多様化したカスタム化の要求の下、低密度、高展延性の製品を開発しつつ、本来の機械強度を保ち、設計の許容度を高める必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記需要に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、塑性が高く、展延性が高いチタン−アルミニウム合金を提供し、ゴルフクラブヘッドの弾性変形の能力を調整することである。本発明の解決しようとするもう1つの課題は、展延性が高いチタン−アルミニウム合金を提供し、微量の改質元素の特性を利用して、チタン−アルミニウム合金を改質し微調整できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明で開示する技術手段は、重量%でチタン88〜92%、アルミニウム7.5〜10%を含み、延伸率を8%〜16%とするチタン−アルミニウム合金を提供することである。
【0006】
前記のチタン−アルミニウム合金は、密度範囲を4.40g/cm3以下とし、引張強度を680〜950Mpaとするチタン合金であり、鋳造、鍛造または機械加工により成形する。
【0007】
本発明で開示するもう1つの技術手段は、重量%でチタン88%〜92%、アルミニウム7.5%〜10%、ニオブ≦2%、バナジウム≦2%、モリブデン≦2%、クロム≦2%、鉄≦1%、ケイ素≦1%、酸素≦0.3%および窒素≦0.05%を含み、その組成の延伸率を8%〜16%とし、密度範囲を4.40g/cm3以上とするチタン−アルミニウム合金を提供することである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のチタン−アルミニウム合金におけるチタンおよびアルミニウムの含有量は、公知の6Al−4V−Tiよりも高く、アルミニウム含有量を高めることは、合金の常温および高温強度を高め、比重を下げ、弾性係数を増加することに対し、顕著な効果がある。ニオブ、バナジウム、モリブデン、クロム、鉄は、β安定化元素であり、6Al−4V−Tiに比べ、バナジウムの添加量を大幅に減少させることにより、チタン−アルミニウム合金の製造コストを下げることができる。また、本発明は、良好な熱加工成形性を有し、工場で量産しやすく、かつその密度も同類の合金より低いため、ゴルフクラブヘッドの大型化に有利であり、その設計の許容度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、図面と合わせ、本発明の比較的優れた実施例について説明する。
【実施例】
【0010】
図1、図2および図3のように、本発明の第1実施例のチタン−アルミニウム合金の合金元素は、重量%でチタン88%〜92%およびアルミニウム7.5%〜10%を含み、その組成の延伸率は8%〜16%であり、密度範囲は約4.40g/cm3以下である。
【0011】
本発明はまた、ニオブ、バナジウム、モリブデン、クロム、鉄、ケイ素、酸素および窒素などの元素からなる群より選択される微量の改質元素を添加することにより、その特性を調整することができる。例えば、微量のニオブを添加することにより、その延伸特性は下げずに、合金の強度を高めることができる。バナジウムの添加量を相対的に下げることにより、本来の合金の機械的性質には影響を及ぼさずに、鋳造時の流動性および補助脱気効果を高めることができる。微量のモリブデンを添加することにより、均一に分布した炭化物を合金に析出させ、耐熱性を高め、合金の溶接熱亀裂現象を減少させることができ、合金の硬化能力および高温強度を増加させることもできる。適量のクロムを添加することにより、合金の防錆耐食性を高め、ゴルフクラブヘッドの使用寿命を増加させることができる。微量の鉄を添加することにより、良好な塑性をもたせ、加工処理をしやすくすることができる。微量のケイ素を添加することにより、溶融金属の流動性を改善することができる。本発明において選択する添加改質元素のうち、その含有量の比率は、ニオブ≦2%、バナジウム≦2%、モリブデン≦2%、クロム≦2%、鉄≦1%、ケイ素≦1%、酸素≦0.3%および窒素≦0.05%とし、延伸率は8%〜16%であり、かつその密度は約4.40g/cm3以上である。
【0012】
本発明の比較的優れた第1実施例から第4実施例並びに公知の6Al−4V−Tiチタン合金の特性の比較は、次の表1のとおりである。
【0013】
【表1】

【0014】
公知の6Al4V−Ti合金に比べ、本発明は、アルミニウム元素の含有量を相対的に高め、バナジウム元素の含有量を下げることにより、合金密度を下げ、その靭性を増加させ、低密度の特性を保ちながら、優れた展延性、塑性を得ることができる。
【0015】
本発明の実施例と公知のチタン合金の元素組成の比較表は、次の表2のとおりである。
【0016】
【表2】

【0017】
前記実施例の合金材料は、チタン−アルミニウム合金を主要合金とし、延伸率を8〜16%(8%以上)とし、引張強度を680〜950(680Mpa以上)とするチタン合金であり、鋳造、鍛造、機械加工により成形する。
【0018】
本発明は、展延性が比較的高く、ゴルフクラブヘッドの本体とするのに適しており、別途、剛性の比較的優れた材料をフェースとする。その材料組成は、6Al−4V−Tiチタン合金、βチタン合金などとし、鋳造、鍛造、機械加工により成形することができる。本発明の展延性が高い本体を強度が高いフェース材料と組み合わせ、本体内部における構造設計をウェイトバランス構造とリブ設計で補うことにより、打感がよく(制振性がよく)、制球性がよく、かつネック角を調整してカスタム化することが可能なゴルフクラブヘッド製品を達成することができる。本発明の8Al−Tiと公知の6Al−4V−Tiの加工性能の比較表は表3のとおりである。
【0019】
【表3】

【0020】
また、本発明は、8Al−Ti材料を実施例としてゴルフクラブヘッド本体を製造してから、SP700高強度チタン合金をフェースとして溶接し、発射装置専用ゴルフボール(ボールの仕様は90)を、55.8m/sの発射速度にて、3000発を発射して試験し、フェースとヘッド本体を目視検査し、探傷検査した結果、割れおよびひびがなかった。
【0021】
前記のとおり、本発明のチタン−アルミニウム合金は、産業上の利用可能性、新規性および進歩性を有し、発明特許要件に適合する。但し、以上の内容は、本発明の比較的優れた実施例でしかなく、本発明の実施範囲を限定するためのものではない。本発明の特許請求の範囲に従って行なわれた同等の変更および修飾は、いずれも本発明の特許範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のゴルフクラブヘッドに応用するチタン−アルミニウム合金の実施例の50倍拡大金相図である。
【図2】本発明のゴルフクラブヘッドに応用するチタン−アルミニウム合金の実施例の100倍拡大金相図である。
【図3】本発明のゴルフクラブヘッドに応用するチタン−アルミニウム合金の実施例の200倍拡大金相図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%でチタン88%〜92%、およびアルミニウム7.5%〜10%を含み、その組成の延伸率を8%〜16%とするゴルフクラブヘッドに応用するチタン−アルミニウム合金。
【請求項2】
前記チタン−アルミニウム合金は、ニオブ、バナジウム、モリブデン、クロム、鉄、ケイ素、酸素および窒素からなる群より選択される改質元素をさらに含む請求項1に記載のゴルフクラブヘッドに応用するチタン−アルミニウム合金。
【請求項3】
前記改質元素がニオブ2%以下を含む請求項2に記載のゴルフクラブヘッドに応用するチタン−アルミニウム合金。
【請求項4】
前記改質元素がバナジウム2%以下を含む請求項2に記載のゴルフクラブヘッドに応用するチタン−アルミニウム合金。
【請求項5】
前記改質元素がモリブデン2%以下を含む請求項2に記載のゴルフクラブヘッドに応用するチタン−アルミニウム合金。
【請求項6】
前記改質元素が鉄1%以下を含む請求項2に記載のゴルフクラブヘッドに応用するチタン−アルミニウム合金。
【請求項7】
前記改質元素がケイ素1%以下を含む請求項2に記載のゴルフクラブヘッドに応用するチタン−アルミニウム合金。
【請求項8】
前記改質元素が酸素0.3%以下を含む請求項2に記載のゴルフクラブヘッドに応用するチタン−アルミニウム合金。
【請求項9】
前記改質元素が窒素0.05%以下を含む請求項2に記載のゴルフクラブヘッドに応用するチタン−アルミニウム合金。
【請求項10】
重量%でチタン88%〜92%、アルミニウム7.5%〜10%、ニオブ≦2%、バナジウム≦2%、モリブデン≦2%、クロム≦2%、鉄≦1%、ケイ素≦1%、酸素≦0.3%および窒素≦0.05%を含み、その組成の延伸率を8%〜16%とするゴルフクラブヘッドに応用するチタン−アルミニウム合金。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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