説明

ゴルフクラブヘッドのウェイト部品

【課題】精密鋳造工程が有する長所を、タングステン鉄ニッケルウェイト合金の製造に応用可能にしたゴルフクラブヘッドのウェイトを提供すること。
【解決手段】成分重量比が鉄12〜15%、クロム11〜13%、タングステン25〜30%を含み、その他の成分はニッケルであり、適量の炭素0.01%以下、ケイ素0.1〜0.6%、マンガン0.01%以下、リン0.01%以下、硫黄0.01%以下、銅0.01%以下などの元素を加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドのウェイト部品に関し、かつ特に比較的優れた伸び強度および比重を有するゴルフクラブヘッドのウェイト合金に関する。
【背景技術】
【0002】
通常のゴルフクラブヘッドは、おおまかにソール、フェース、クラウンおよびネックから構成され、そのうちネックのシャフトを挿設する位置でスイング時にねじれが生じやすい。
スイング時に生成されるねじり力を防止すると同時に、スイングをよりスムーズにし、良好なスイートスポットを生成するため、ヘッドに低い重心と適切なウェイトの位置をもたせる必要がある。
現在、市販されているヘッドで採用されている重心の位置は、多くがヘッド下方の後半部に近い領域にある。
そのウェイト配置方法は、多くが粉末冶金の方式でブロック状、シート状または柱状のウェイトを製造するものであり、その成分は、多くがW(タングステン)−Ni(ニッケル)−Fe(鉄)合金またはW(タングステン)−Ni(ニッケル)−Cu(銅)合金を採用している。
ウェイトは、嵌め込み、締め付け、ろう接、溶接、鋲接または貼り合せなどの方法を採用してヘッドのソールの相応する位置に固定されている。
【0003】
上記のヘッドのウェイト配置方法は、いずれも複数の高比重のウェイトを必要な位置に固定し、ウェイトを様々な位置に分布させることにより、ヘッドの重心を調整する目的を達成する。
しかし、同時にヘッド重量の制限と重心位置の要求を満たす必要があるため、通常、コンピュータを利用して計算しウェイト配置を実施する必要があり、何度も修正しなければヘッドの高比重低重心の要求を達成することができない。
通常、ゴルフクラブヘッドで常用されるウェイトでよく使用される材質は、アルミ青銅合金およびタングステン鉄ニッケル合金であり、そのうちタングステン鉄ニッケル合金(成分比はおおよそタングステン金属19.3g/cm3、鉄金属7.8g/cm3、ニッケル金属8.9g/cm3)は重量が重く、体積が小さく、硬度が高いといった長所を有しているため、業界で広範に使用されている。通常、タングステン鉄ニッケル合金のウェイト部品は、粉末冶金(powder metallurgy)工程を運用して処理したものであり、所定の割合で金属粉末を混合し、サンプルに押し固めた後、高温(および真空)の環境下で焼結し、加工および熱処理を実施してウェイトを製造する。
しかし、上記の従来の技術には、金型製造コストが高い、完成品の伸びが比較的低い、製造工程の時間が比較的長い、細かい商標、図案、文字およびモデル番号等を直接成型することができないなどの多くの欠点が存在している。
その原因は、タングステン鉄ニッケルウェイト合金に硬度が極めて高いタングステン金属が含まれているため細かい商標ロゴを成型することが難しいことであり、現行の方法のように焼結後に彫刻加工を実施した場合、生産効率に影響を及ぼす。
【0004】
現在、精密鋳造(precision casting)工程によりタングステン鉄ニッケルウェイト部品を製造することによって粉末冶金工程の精密な図案を直接成型できないという欠点を克服している業者もあるが、精密鋳造工程は、高融点のタングステンにより溶融プロセスにおいてタングステン沈殿が生成される問題を克服できないことが多いため、コストが比較的低く、完成品の伸びが比較的高く、製造工程時間が比較的短く、精密な図案を直接成型できるという精密鋳造工程が有する長所を、従来のタングステン鉄ニッケルウェイト合金の製造に応用できずにいる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑み、本発明で解決しようとする課題は、改質したタングステン鉄ニッケルウェイト合金を提供し、精密鋳造一体成型に直接応用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明で開示する技術手段は、鉄12〜15%、クロム11〜13%、タングステン25〜30%を含み、その他の成分はニッケルである成分重量比のゴルフクラブヘッドのウェイト部品を提供することである。
【0007】
上記発明において、ウェイト部品の機械的性質を改善するため、さらに炭素0.01%以下、ケイ素0.1〜0.6%、マンガン0.01%以下、リン0.01%以下、硫黄0.01%以下、銅0.01%以下を含むことができる。
【0008】
上記発明において、ウェイト部品はすべての成分を充分溶解し、均一に攪拌した後で流し込んで鋳塊にしてから、精密鋳造法により鋳塊を溶解し、精密鋳造鋳型内に注入し、冷却した後で精密鋳造鋳型から取り出す。
【0009】
上記発明において、ウェイト部品の比重は9〜12g/cm3であり、かつその材料の延伸率は49〜69%である。
【0010】
上記発明において、ウェイト部品の形状はゴルフクラブヘッドのソールの形状に一体成型する。
【0011】
上記発明において、ウェイト部品は少なくとも1つの突出部を有し、かつ該突出部の厚さは該ウェイト部品のその他の領域の厚さを上回るか、またはウェイト部品は少なくとも1つの凹部を有し、かつ該凹部の厚さは該ウェイト部品のその他の領域の厚さを下回る。
【0012】
上記発明において、ウェイト部品の突出部は内表面に位置する。
【0013】
上記発明において、ウェイト部品の凹部は内表面に位置する。
【0014】
上記発明において、ウェイト部品とゴルフヘッドとの間の固定方法は、締め付け、溶接、TIGアーク溶接、高エネルギービーム溶接、ろう接または貼り合せである。
【0015】
本発明によると、本発明のウェイト部品をコンピュータで設計した後、精密鋳造一体成型により所定の部品の形状にすることができ、材料は質感が均一な一体化構造であるため、一体性を高め、機械性能をよくすることができる。かつ、本発明はタングステン金属を利用して良好な硬度を提供し、ニッケル金属で優良な延伸性を生成するため、精密鋳造の複雑な形状の一体成型に有利であり、ウェイト部品成型時に、同時に必要な位置に商標または図案を形成することができる(コンピュータを利用してウェイト部品の重心位置はすでに分析されている)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面と合わせ、本発明の比較的優れた実施例を次のとおり詳細に説明する。
【0017】
本発明のゴルフクラブヘッドのウェイト部品は、該ゴルフクラブヘッドに固定されており、その成分重量比が鉄12〜15%、クロム11〜13%、タングステン25〜30%を含み、その他の成分はニッケルであり、そのウェイト部品は、炭素0.01%以下、ケイ素0.1〜0.6%、マンガン0.01%以下、リン0.01%以下、硫黄0.01%以下、銅0.01%以下を含み、さらに少なくとも1つの機械的性質改善成分を含むことができる(図1の金相組織図2枚を参照)。
【0018】
形成されたウェイト部品の比重は9〜12g/cm3で、かつその材料の延伸率は49〜69%の間である。
【0019】
次のウェイト部品の実施例1において、その重量比は炭素0.0086%、ケイ素0.18%、マンガン0.009%、リン0.005%、硫黄0.002%、鉄12.83%、クロム11.05%、銅0.009、タングステン25.5%であり、その他の成分はニッケルであり、実施例1の3つのサンプルを取り出し、それぞれサンプル番号1、サンプル番号2およびサンプル番号3とした。その材料特性の分析試験データは次の表1のとおりである。
【0020】
【表1】

【0021】
次のウェイト部品の実施例2において、その重量比は炭素0.0088%、ケイ素0.16%、マンガン0.01%、リン0.005%、硫黄0.0021%、鉄13.14%、クロム11.36%、銅0.01、タングステン25.80%であり、その他の成分をニッケルであり、実施例1の3つサンプルを取り出し、それぞれサンプル番号4、サンプル番号5およびサンプル番号6とした。その材料特性の分析試験データは次の表2のとおりである。
【0022】
【表2】

【0023】
次のウェイト部品の実施例3において、その重量比は炭素0.0092%、ケイ素0.27%、マンガン0.01%、リン0.006%、硫黄0.0044%、鉄14.33%、クロム12.65%、銅0.01、タングステン28.77%であり、その他の成分はニッケルであり、実施例3の3つのサンプルを取り出し、それぞれサンプル番号7、サンプル番号8およびサンプル番号9とした。
その材料特性の分析試験データは次の表3のとおりである。
【0024】
【表3】

【0025】
上記ウェイト部品の製造方法は、上記のすべての成分を充分溶解し、均一に攪拌した後で流し込んで鋳塊にしてから、精密鋳造法により該鋳塊を溶解し、精密鋳造鋳型内に注入し、冷却した後で該精密鋳造鋳型から取り出す。
【0026】
上記のウェイトには、少なくとも1つの突出部および/または少なくとも1つの凹部を設け、その大きさ、数量、位置などの要素を利用してゴルフクラブヘッドのウェイトを調整し、必要な重心位置を得ることができる。
【0027】
当然、上記本発明のウェイト部品をゴルフクラブヘッドに固定する方法は、締め付け、溶接、TIGアーク溶接、高エネルギービーム溶接、ろう接または貼り合せである。
【0028】
上記の内容は、本発明の課題を解決するために採用した技術手段の比較的優れた実施方法または実施例を表すためにのみ記載したものであり、本発明の特許実施の範囲を限定するものではない。本発明の特許請求の範囲の内容と一致する、または本発明の特許の範囲に基づき実施する同等の変更と修飾は、いずれも本発明の特許の範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のウェイト部品の実施例2のサンプルの金相組織図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブヘッドに固定し、成分重量比が鉄12〜15%、クロム11〜13%、タングステン25〜30%を含み、その他の成分はニッケルであるゴルフクラブヘッドのウェイト部品。
【請求項2】
少なくとも1種の機械的性質改善成分をさらに含み、前記機械的性質改善成分は、炭素0.01%以下、ケイ素0.1〜0.6%、マンガン0.01%以下、リン0.01%以下、硫黄0.01%以下、および銅0.01%以下である請求項1記載のゴルフクラブヘッドのウェイト部品。
【請求項3】
前記ウェイト部品の比重は9〜12g/cm3であり、かつその材料の延伸率は49〜69%である請求項1記載のゴルフクラブヘッドのウェイト部品。
【請求項4】
前記ウェイト部品の形状を前記ゴルフクラブヘッドのソールの形状に一体成型する請求項1記載のゴルフクラブヘッドのウェイト部品。
【請求項5】
前記ウェイト部品は少なくとも1つの突出部を有し、かつ前記突出部の厚さは前記ウェイト部品のその他の領域の厚さを上回る請求項1記載のゴルフクラブヘッドのウェイト部品。
【請求項6】
前記ウェイト部品は少なくとも1つの凹部を有し、かつ前記凹部の厚さは前記ウェイト部品のその他の領域の厚さを下回る請求項1記載のゴルフクラブヘッドのウェイト部品。
【請求項7】
前記ウェイト部品の前記突出部は内表面に位置する請求項4記載のゴルフクラブヘッドのウェイト部品。
【請求項8】
前記ウェイト部品の前記凹部は内表面に位置する請求項5記載のゴルフクラブヘッドのウェイト部品。
【請求項9】
前記ウェイト部品と前記ゴルフヘッドとの間の固定方法は、締め付け、溶接、TIGアーク溶接、高エネルギービーム溶接、ろう接または貼り合せである請求項1記載のゴルフクラブヘッドのウェイト部品。

【図1】
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