説明

ゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブ

【課題】ダルマ落しのイメージを払拭して打ち易さを感じさせ、方向性も出し易くする。
【解決手段】ソールの後縁を後方に膨出した円弧状の曲線に形成し、ロフト角を25〜45度、ソール幅を30〜80mm、重量を300〜450gとしたゴルフクラブヘッドにおいて、フェース面の上縁を中央部が高い円弧状の曲線に形成し、フェース面の最大高さを30〜40mmに形成し、フェース面の最大高さ部分を含む曲率半径を100〜300mmとし、トップブレードの平面形状をフェース面の最大高さ部分が後方に膨出した円弧状の曲線とした前縁と直線とした後縁とから形成するとともに、前縁の円弧状の頂点からヒールとトウに向けて前縁と後縁との間の厚みが徐々に厚くなるように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、グリーン周辺からピンに向かってボールを寄せるための、パターのようにストロークしてボールをヒットするアプローチ用ゴルフクラブ(チッパーないしジガーとも呼ばれる)とそのヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のチッパーないしジガーと呼ばれるゴルフクラブとしては、パターと同じようにストロークしてダブリを生じ難くし、低重心化を図り、打球面の広い範囲でのショットを一定の範囲内で方向性と距離を安定させ、アプローチを易しくするために、ソール面の幅を30〜80mm、ロフト角を10°〜40°、トップブレードの厚み(A)を10mm≦A≦ソール幅−5mm、重量を350〜450gとしたマレットタイプのパター型形状に形成したものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−37834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のゴルフクラブヘッドの打球面は、正面視、打球面の上縁、すなわちトップブレードの前縁がヒールからトウにわたって水平線となっていて、打球面自体が薄く(上下の幅が狭い)(特許文献1の図2参照)、トップブレードの厚みもヒールからトウにわたって均一であり、したがってトップブレードの後縁は前縁と平行になっている。
【0005】
特許文献1に記載の従来例では、次のような効果が期待されている。すなわち、ソール面の幅が広いことにより、アドレス時に安定性や安心感があり、ダブリ難いことは勿論のこと、全体形状が中空構造のウッド型ではなく、マレットタイプのパター型形状であるため、重心深度は浅く、低重心化を図れる。また、スイングは他のクラブのようなショットのイメージではなく、パターと同じようなストロークとなるので、芯でボールをとらえ易く、芯を外してもヒールとトウに重心を配分することで方向性も安定させ、ロフト角に応じた一定の空中での飛びと着地後のランとを期待することができる。また、シャフトがトップブレードに装着され、パターと同じようなストロークがし易く、打球の微妙な距離感を合わせ易くなる。なおまた、ヘッド重量を350〜450gとすることにより、ゆっくりしたストロークで距離感も出し易くなり、軽い中空構造のウッド型にありがちな手先だけのスイングによるミスショットを防げる。
【0006】
上述のような効果が期待できる従来例ではあるが、打球面が薄く(上下の幅がトウからヒールにわたってほぼ同一であって、かつ狭い)、そのために、ボールがラフにある場合など、ヘッドがボールの下をくぐり抜けていわゆるダルマ落しになり易く、あるいはそのようなイメージを想起させ易く、打ち難さを感じるものであった。ここで、ダルマ落しとは、深いラフ、芝の上に浮いた状態のボールを打つときに、ボールの下をクラブがくぐってしまい、ボールが飛ばないことを意味し、おもちゃの「ダルマ落し」のようになることをいう。また、トップブレードの厚さがトウからヒールにわたってほぼ同一であり、アイアンゴルフクラブのヘッドと同じような形状であるために、パターと同じようなアドレスでストロークする場合に方向性を出し難いという欠点もあった。
【0007】
そこで、本発明は、アドレス時にダルマ落しのイメージを払拭し、打ち易さを感じることができ、しかもトップブレードの形状から方向性も出し易いゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明は、ゴルフクラブヘッドは、ソールの後縁を後方に膨出した円弧状の曲線に形成し、ロフト角を25〜45度、ソール幅を30〜80mm、重量を300〜450gとしたゴルフクラブヘッドにおいて、フェース面の上縁を中央部が高い円弧状の曲線に形成し、フェース面の最大高さを30〜40mmに形成し、フェース面の最大高さ部分を含む曲率半径を100〜300mmとし、トップブレードの平面形状をフェース面の最大高さ部分が後方に膨出した円弧状の曲線とした前縁と直線とした後縁とから形成するとともに、前縁の円弧状の頂点からヒールとトウに向けて前縁と後縁との間の厚みが徐々に厚くなるように形成したものである。また、このようなヘッドにシャフトを装着し、ライ角を68〜72度、クラブ長さを32〜35.5インチとしたゴルフクラブである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ソールの後縁を後方に膨出した円弧状の曲線に形成し、ロフト角を25〜45度、ソール幅を30〜80mm、重量を300〜450gとしたゴルフクラブヘッドにおいて、フェース面の上縁を中央部が高い円弧状の曲線に形成し、フェース面の最大高さを30〜40mmに形成し、フェース面の最大高さ部分を含む曲率半径を100〜300mmとし、トップブレードの平面形状をフェース面の最大高さ部分が後方に膨出した円弧状の曲線とした前縁と直線とした後縁とから形成するとともに、前縁の円弧状の頂点からヒールとトウに向けて前縁と後縁との間の厚みが徐々に厚くなるようにしたので、アドレス時にダルマ落しのイメージを払拭し、打ち易さを感じ、方向性も出し易くなる。また、請求項1に記載のヘッドにシャフトを装着し、ライ角を68〜72度、クラブ長さを32〜35.5インチとしたゴルフクラブでは、ライ角とクラブ長さの所定範囲の設定により、パターと同じようなストロークがし易く、芯でボールをとらえ易くなる。
【0010】
また、従来例と同様にソールの幅が広いことにより、アドレス時に安定性や安心感があり、フェース面形状と相俟って打ち損じのイメージが生じにくいものとなる。さらに、トップブレードの前縁の形状が後方に膨出した円弧状に形成されているので、ボールを包み込むようなイメージでボールをヒットでき、芯を外さずに方向性を出し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ヘッドを上から見た平面図
【図2】フェース面を正面とした正面図
【図3】左側面図
【図4】底面図
【図5】背面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明のゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブについて、図面を参照にして説明する。
【0013】
図1のヘッドを上方から見た平面図において、ボールをヒットするフェース面1、トップブレード2、ソール3、ホーゼル4とでヘッドを構成し、ソール3の後縁3Aを後方に膨出した円弧状の曲線に形成し、ソール3の表面にボール打ち出し方向に沿った印3Bを付してある。前記フェース面1のロフト角は、25〜45度の範囲内とするが、好ましくは30〜40度の範囲内とする。ロフト角を25度未満とすると、打ったボールが上がらず、パターと同じようになってしまい、45度を超えるとパターのようにストロークして打つには、ボールの上がり具合やキャリーが一定せず、距離感が合わせにくくなる。また、ヘッドの重量は300〜450g、好ましくは320〜400gとする。このような重量範囲は、パターのようなストロークがし易く、かつ距離をスイングの大きさで調整し易いことから設定された。
【0014】
前記トップブレード2は、その厚み、すなわち平面図で左右の幅が一定ではなく、中間部2Aからヒール5とトウ6に向けて除々に厚くなるように形成され、トップブレード2の前縁2Bが後方に膨出する円弧状の曲線をなし、後縁2Cは目標方向に対して直交する直線に形成してある。なお、ヒール5とトウ6は、図2に示す。前記中間部2Aは、ソール3の接地面から左右(トウ6側端部とヒール5側端部)の隙間が等しくなるようにゴルフクラブのヘッドをセットしたときの接地点を基準に定める。後述のスコアライン9は、この接地点を基準に左右均等に配置するのが一般的であり、本実施例では、フェース面1に設けた最も長い複数のスコアライン9が水平になるようにヘッドをセットし、そのスコアライン9の長さの中間地点に対応するトップブレード2上の位置を中間点2Aとした。そして、フェース面1の最大高さ部分は、この中間部2Aより5〜15mm、トウ6寄りになるようにしてある。実施例では、この最大高さ部分を中間部2Aからトウ6側に10mm寄せた。このようにトウ6寄りにしたのは、ヒール5側にシャフトが接続され、プレーヤーのアドレス時の目線に配慮して、違和感の無いようにしたためである。一方、フェース面1の最大高さの位置を、トウ側に30mm以上も離せば、アイアン形状に近くなり、ダルマ落しになりやすくなるとともに、方向性が出しにくく、パターのようにして打つには、打ちにくくなってしまう。
【0015】
図2は、フェース面1を正面視した図であり、下縁をリーディングエッジ7とし、上縁8を中央部が高い円弧状の曲線に形成し、上縁8の頂部に対応する位置に前記中間部2Aを設けてあり、上縁8は、トップブレード2の前縁2Bを形成するものである。このフェース面1の上縁8の頂部、すなわちフェース面1の最大高さ部分であり、この最大高さ部分を含む曲率半径を100〜300mmとした。曲率半径が小さすぎると、トウ6側、ヒール5側に行くに従って厚くなるため、方向が出しにくくなる。一方、曲率半径が大きすぎると、トップブレード2が直線的になり、フェース面1の最大高さが低くなって、ダルマ落しになりやすく、フェース面1の最大高さが高くなると、ヘッド本体が大きくなり、扱いにくいイメージになってしまい、また、ヘッドの重量が重くなりすぎる可能性もある。この実施例では、曲率半径160mmの円弧とした。前縁2Bの円弧は、トウ6側端からヒール5側端まで、ほぼ同一の曲率半径で形成されている。なお、このフェース面1にはスコアライン9を刻んである。フェース面1の最大高さは、30〜40mm、好ましくは32mm以上とするが、本実施例では32mmとし、この位置をトウ6側へ5mmずらしてある。そして、フェース面1の最大高さ部分におけるトップブレード2の厚さは10mmとした。この厚さは、6〜30mm、好ましくは8mm以上とする。この厚さは、5〜20mm、好ましくは8〜20mmが良い。
【0016】
図3及び図4は、図2の左側面図と底面図であり、ソール幅をリーディングエッジ7から後方にまっすぐ後退してソール3の後縁3Aに至るまでの長さとしたとき、最大のソール幅を30〜80mmとした。また、ソール3は、図3に示すように緩やかな曲面形状を成し、後縁3A側が上昇し、スイング時にダフリにくく、滑り易い形成に形成してある。さらに、図4に示すように、ソール3のトウ6側の半分の方がヒール5側の半分よりも重量を重くするようにし、ホーゼル4の重量により重心がヒール5寄りになるので、トウ6方向に重心を移動させ、フェース面1の幾何学的な中心位置に近づけるようにしてある。ソール3の重量配分のみならず、他のヘッド構成部分でトウ6側に重量を付加させることもできる。
【0017】
図5は、背面図を示し、フェース面1の裏側にキャビティ10を形成してある。このキャビティ10は、トップブレード2とソール3との間に存在する。このキャビティ10の形成の仕方により重量配分の設計が容易に行え、重心位置の適正化も図れる。
【0018】
上述した実施形態のヘッドでは、シャフト(図示せず)を装着するためのホーゼル4をフェース面1のヒール5側に形成したが、トップエッジ2のヒール5寄りの位置にシャフトを装着してもいい。シャフトを装着し、シャフトに図示しないグリップを取付けることで、ゴルフクラブが完成されるが、このゴルフクラブのライ角を68〜72度、クラブ長さを32〜35.5インチとする。このようなライ角、クラブ長にしたのは、パターと同じようにストロークし易くするため、パターの標準的なライ角、クラブ長の範囲とした。
【符号の説明】
【0019】
1 フェース面
2 トップブレード
2A 中間部
2B 前縁
2C 後縁
3 ソール
3A ソールの後縁
4 ホーゼル
5 ヒール
6 トウ
8 フェース面の上縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソールの後縁を後方に膨出した円弧状の曲線に形成し、ロフト角を25〜45度、ソール幅を30〜80mm、重量を300〜450gとしたゴルフクラブヘッドにおいて、
フェース面の上縁を中央部が高い円弧状の曲線に形成し、
フェース面の最大高さを30〜40mmに形成し、
フェース面の最大高さ部分を含む曲率半径を100〜300mmとし、
トップブレードの平面形状をフェース面の最大高さ部分が後方に膨出した円弧状の曲線とした前縁と直線とした後縁とから形成するとともに、前縁の円弧状の頂点からヒールとトウに向けて前縁と後縁との間の厚みが徐々に厚くなるように形成したことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドにシャフトを装着し、ライ角を68〜72度、クラブ長さを32〜35.5インチとしたことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項3】
前記フェース面のヒール側にシャフト装着用ホーゼルを形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド又はゴルフクラブ。
【請求項4】
前記トップブレードの下方とソールとの間であって、フェース面の裏側にキャビティを形成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド又はゴルフクラブ。
【請求項5】
前記トップブレードの後方に延びるソール表面にボール打ち出し方向に沿った印を付したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド又はゴルフクラブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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