説明

ゴルフクラブヘッド

【課題】体積が大きい場合でも、ヘッドが小振りに感取されるゴルフクラブヘッドを提供する。
【解決手段】クラウン部4は、主部4aが黒色、黒青色、黒赤色又は黒緑色の黒色系となっている。この主部の明度Lは0〜10特に5〜8である。フリンジ部4bは赤色系であり、フリンジ部4bの最外周における明度L値は20〜50、a値は38〜60特に40〜50、b値は10〜30特に12〜18である。主部4aの明度Lと最外周の明度Lとの差L−Lは10〜50特に12〜30である。クラウン主部4aとフリンジ部4bとの境界はグラデーション調となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウッド型ゴルフクラブヘッドに係り、特にドライバーに好適なゴルフクラブヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドライバーやフェアウェーウッドなどのウッド型ゴルフクラブヘッドとして、中空の殻体構造の金属製のものが広く用いられている。一般に、中空のウッド型のゴルフクラブヘッドは、ボールをヒットするためのフェース部と、ゴルフクラブヘッドの上面部を構成するクラウン部と、ゴルフクラブヘッドの底面部を構成するソール部と、ゴルフクラブヘッドのトウ側、リヤ側及びヒール側の側面部を構成するサイド部と、ホゼル部とを有している。このホゼル部にシャフトが挿入され、接着剤等によって固定される。
【0003】
この中空ゴルフクラブヘッドを構成する金属としては、アルミニウム合金、ステンレスやチタン合金が用いられているが、近年は特にチタン合金が広く用いられている(例えば、特開2003−88601号公報)。
【0004】
一般に、中空ゴルフクラブヘッドの体積を大きくすることにより、スイートスポットを拡大することが可能となる。体積を大きくすると、それに伴ってゴルフクラブヘッドの重量が増加しがちとなる。そこで、この重量増加を防ぐために、ゴルフクラブヘッドの殻体部分の一部を繊維強化合成樹脂にて構成することもある(例えば特開2009−148615)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−88601号公報
【特許文献2】特開2009−148615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ドライバーは体積が400ccを超える大型のものが主流となってきている。このように大型化した場合、一般プレーヤーは、スイング時の空気抵抗が大きいように感取し、無意識のうちにスイングに力みが生じ、そのためにミスショットが生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、体積が大きい場合でも、ヘッドが小振りに感取されるゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様のゴルフクラブヘッドは、中空の殻体構造のゴルフクラブヘッドであって、体積が400cc以上のゴルフクラブヘッドにおいて、クラウン部の周縁のフリンジ部を除いたクラウン主部が黒色系であり、該フリンジ部は該クラウン主部よりも明度が高く、該クラウン主部と該フリンジ部との境界部にあっては、クラウン主部側ほど明度が小さくなっていることを特徴とするものである。
【0009】
第2態様のゴルフクラブヘッドでは、クラウン主部の明度Lが0〜10であり、最外周のフリンジ部の明度Lが20〜50であり、両者の差L−Lが10〜50であり、クラウンの後縁側においては、主部とフリンジ部の明度の平均値(L+L)/2となる中間明度地点とクラウン最外周との距離が1.5〜7mmである。
【0010】
第3態様のゴルフクラブヘッドでは、前記フリンジ部は赤色系であり、該フリンジ部の最外周におけるaが38〜60、bが10〜30である。
【0011】
第4態様のゴルフクラブヘッドでは、少なくともヒール部及びバック部の上部がフリンジ部と同色となっている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゴルフクラブヘッドは、フリンジ部に囲まれたクラウン主部を黒色系とし、フリンジ部をクラウン主部よりも明度が高いものとしている。また、この黒色系のクラウン主部と、それよりも明度の高いフリンジ部との境界部においては、クラウン主部側ほど明度が小さくなるグラデーション調としている。かかる色調とされたゴルフクラブヘッドは、実際の大きさよりも小型に視覚される。このようにゴルフクラブヘッドが実際の大きさよりも小型に視覚されることにより、一般的なプレーヤーがスイング時の空気抵抗が大きいものと思って力んでスイングすることが防止されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの平面図である。
【図2】実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【図3】実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜図3を参照して実施の形態に係るゴルフクラブヘッド1について説明する。図1(a)は実施の形態に係るゴルフクラブヘッド1の平面図、図2はその斜視図、図3はそのトウ側の側面図である。図1(b)はゴルフクラブヘッド1を視覚したときに感取されるイメージ図である。
【0015】
このゴルフクラブヘッド1は、フェース部2、ソール部3、クラウン部4及びホゼル部5を有した中空殻体構造のウッド型ゴルフクラブヘッド(この実施の形態ではドライバー)である。ゴルフクラブヘッド1の側面部は、トウ部6、バック部7及びヒール部8にて構成されている。ゴルフクラブヘッド1の容積は400cc以上であり、好ましくは400〜460ccである。ゴルフクラブヘッド1は、チタン又はチタン合金などの金属製であってもよく、一部が繊維強化合成樹脂等の異素材で構成されてもよい。
【0016】
フェース部2はボールをヒットする面であり、図示はしないが溝(スコアライン)が設けられている。ソール部3はゴルフクラブヘッドの底面部を構成し、クラウン部4はゴルフクラブヘッドの上面部を構成している。ホゼル部5にシャフトが差し込まれ、接着剤により該シャフトが固着される。
【0017】
クラウン部4は、上方に向って凸に湾曲した曲面よりなる。クラウン部4を平面視すると、トウ部6からバック部7まで、そしてバック部7からヒール部8にかけて外方に向って凸に湾曲しており、クラウン部4の外周形状はフェース側を除いて略C字形の曲線となっている。フェース部2側は、ほぼ直線状となっているか、又はトウ・ヒール方向のセンター部が若干前方に膨らみ出した弓弧形状となっている。
【0018】
図1(a)の通り、クラウン部4は、トウ部6、バック部7及びヒール部8に沿うフリンジ部4bを除くクラウン主部4aが黒色、黒青色、黒赤色又は黒緑色の黒色系となっている。この主部の明度Lは0〜10特に5〜8程度が好ましい。
【0019】
フリンジ部4bはクラウン主部4aよりも明度が高くなっている。最外周のフリンジ部の明度Lは20〜50が好ましく、クラウン主部4aの明度Lと最外周の明度Lとの差L−Lは10〜50特に12〜30程度が好適である。フリンジ部4bは好ましくは赤色系であり、フリンジ部4bの最外周におけるa値は38〜60特に40〜50程度、b値は10〜30特に12〜18程度が好適である。
【0020】
クラウン主部4aとフリンジ部4bとの境界部にあっては、最外周から離れてクラウン主部4a側になるほど明度が小さくなるグラデーション調となっている。
【0021】
本発明の一例では、フリンジ部4bは、ゴルフクラブヘッド1のバック部7側で幅が最大となり、該バック部7側において、フリンジ部4bの最外周における明度Lと、主部4aにおける明度Lとの中間明度(L+L)/2になる中間明度地点と、クラウン部最外周との距離は1.5〜7.0mm特に2.0〜5.0mm程度が好適である。
【0022】
トウ部6及びヒール部8においては、フェース側ほどフリンジ部の幅は徐々に小さくなることが好ましく、トウ部7及びヒール部8の最もフェース部2側においてはフリンジ部4bの幅は1.0mm以下特に0(ゼロ)となっていることが好ましい。
【0023】
この実施の形態では、トウ部6、バック部7及びヒール部8の上縁は、フリンジ部4bの最外周と同色となっており、意匠上のまとまり感を醸成している。ただし、トウ部6、バック部7及びヒール部8の色調は特に限定されるものではない。
【0024】
このように構成されたゴルフクラブヘッド1を有したゴルフクラブによってボールをヒットすべくアドレスした場合、クラウン部4のフリンジ部4bがクラウン主部4aとは別異のものであり、フリンジ部4bはクラウン部4を構成しておらず、クラウン部4は図1(b)のようにクラウン主部4aによってのみ構成されているかのように視覚され、ゴルフクラブヘッド1は実際の容積よりも小さく感取される。そのため、一般プレーヤーが大型ヘッドを用いるときの空気抵抗に負けまいとする力みが防止され、スイングがスムーズなものとなる。特に、クラウン主部4aとフリンジ部4bとの境界をグラデーション調としているため、フリンジ部4bの存在が違和感なくクラウン主部4aと別体のものであると視認されるようになる。
【0025】
なお、フリンジ部4bは赤色系が最も好ましいが、緑色系、青色系、黄色系であってもよく、グレーであってもよい。塗装方法は特に限定されるものではなく、クラウン部に黒色を塗って、サイド部及びバック部をスプレーガンで赤色に塗る方法、下地を赤く塗ってその上に黒色塗装して、レーザーで削る方法など各種方法を採用しうる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例について説明する。
【0027】
[比較例1]
容積460ccのチタン合金製のドライバーにおいて、スプレーガンを用いて、スプレー塗装を行うことにより、フェース面以外をすべて明度L=7.3の黒色塗装とした。
【0028】
[実施例1]
比較例1と同じ塗料によりクラウン主部のみ黒色に塗った。クラウン部のフリンジ部は、黒色を塗らずにサイド部及びバック部の明るくするところに、赤色塗装を行い、図1(a)のようにクラウン部4のフリンジ部4bを赤色系の塗装とし、最外周部において明度L=23.7、a=44.2、b=12.9とした。
【0029】
クラウン主部4aの明度は比較例1と同一である(L=L)。
【0030】
クラウン後縁部においては、(L+L)/2となるバック部付近の赤色フリンジ部の最大幅部分での中間明度地点とクラウン最外周との距離は約3.5mmであり、トウ側後部、ヒール側後部にかけて同様に赤色系のフリンジ部幅とした。
【0031】
トウ側後部からトウ前部及びヒール側後部からヒール前部にかけては、赤色系フリンジ部4b幅を徐々に小さくし、トウ前部及びヒール前部における赤色系フリンジ部4b幅はゼロとした。
【0032】
[比較例2]
実施例1において、フリンジ部4bの全体をフリンジ部4bの最外周と同色とし、フリンジ部4bとクラウン主部4aとを実施例1の中間明度地点に沿ってくっきりと2色に分けた。
【0033】
[評価]
上記実施例1と比較例1,2のゴルフクラブヘッドにシャフトを装着し、45インチドライバーを構成した。
【0034】
アマチュアゴルファー14人がこのドライバーを用いてアドレスしたときに、比較例1,2よりも実施例1の方が小さく見えると回答したゴルファーは11人であった。
【符号の説明】
【0035】
1 ゴルフクラブヘッド
2 フェース部
3 ソール部
4 クラウン部
4a クラウン主部
4b フリンジ部
5 ホゼル部
6 トウ部
7 バック部
8 ヒール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の殻体構造のゴルフクラブヘッドであって、体積が400cc以上のゴルフクラブヘッドにおいて、
クラウン部の周縁のフリンジ部を除いたクラウン主部が黒色系であり、
該フリンジ部は該クラウン主部よりも明度が高く、
該クラウン主部と該フリンジ部との境界部にあっては、クラウン主部側ほど明度が小さくなっていることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
請求項1において、クラウン主部の明度Lが0〜10であり、最外周のフリンジ部の明度Lが20〜50であり、
両者の差L−Lが10〜50であり、
クラウンの後縁側においては、主部とフリンジ部の明度の平均値(L+L)/2となる中間明度地点とクラウン最外周との距離が1.5〜7mmであることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
請求項2において、前記フリンジ部は赤色系であり、該フリンジ部の最外周におけるaが38〜60、bが10〜30であることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、少なくともヒール部及びバック部の上部が前記フリンジ部と同色となっていることを特徴とするゴルフクラブヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−231986(P2012−231986A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102937(P2011−102937)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【Fターム(参考)】