説明

ゴルフクラブヘッド

【課題】フェース部材及びソール部材とヘッド本体との接合強度を高め耐久性に優れる。
【解決手段】ボールを打撃するフェース2Aを前面に有するフェース部3と、該フェース2Aの下縁2bに連なるソール部5とを含む中空構造のゴルフクラブヘッド1である。フェース開口部Of及びソール開口部Osが独立して設けられたヘッド本体1A、前記フェース開口部Ofにロウ付けにより固着されるフェース部材1B、並びに、前記ソール開口部Osにロウ付け又は溶接により固着されるソール部材1Cを含む。ヘッド本体1Aは、前記ソール開口部Osの内周面からフェース2A側を形成しかつ0.5mm以上かつ2.5mm未満の厚さtAである開口縁部9と、該開口縁部9と前記フェース部3との間を形成しかつ2.5〜10.0mmの厚さtBである厚肉接続部10とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェース部材及びソール部材とヘッド本体との接合強度を高め耐久性に優れたゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ソール部やフェース部等に異なる材料の部材を固着して重心位置や慣性モーメント等を改善したゴルフクラブヘッドが知られている。このようなゴルフクラブヘッドは、使用される材料に応じてロウ付け又は溶接といった固着方法が採用されている。
【0003】
例えば、図7に示されるように、フェース開口部oaとソール開口部obとがそれぞれ設けられたヘッド本体b、フェース開口部oaに固着されるフェース部材c及びソール開口部obに固着されるソール部材dからなるゴルフクラブヘッドaでは、先ずヘッド本体bのフェース開口部oaにフェース部材cをロウ付けし、次にソール部材dを溶接して固着することが考えられる。
【0004】
しかしながら、ソール部材dの厚さtが大きいと、溶接に時間が掛かり、その熱がフェース部材cを固着したロウ材eに伝導し、フェース部材cの接合部の強度を低下させるという問題があった。他方、ソール部材dの厚さtが小さいと、ソール部材dの耐久性や接合強度が低下するという問題があった。関連する技術として、下記特許文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−52100号公報
【特許文献2】特開2004−41707号公報
【特許文献3】米国特許第7717807号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、フェース部で開口するフェース開口部とソール部側で開口するソール開口部とがそれぞれ独立して設けられたヘッド本体、フェース開口部を閉じるフェース部材、及び、ソール開口部を閉じるソール部材を含むとともに、前記ヘッド本体は、前記ソール開口部の内周面からフェース側を形成する開口縁部と、該開口縁部と前記フェース部との間を形成しかつ前記開口縁部よりも厚さが大きい厚肉接続部とを含むことを基本として、フェース部材及びソール部材とヘッド本体との接合強度を高めたゴルフクラブヘッドを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明は、ボールを打撃するフェースを前面に有するフェース部と、該フェースの下縁に連なりヘッド底面をなすソール部とを含む中空構造のゴルフクラブヘッドであって、前記フェース部で開口するフェース開口部及び前記ソール部側で開口するソール開口部がそれぞれ独立して設けられたヘッド本体、前記フェース開口部にロウ付けにより固着されることにより該フェース開口部を閉じるフェース部材、並びに、前記ソール開口部にロウ付け又は溶接により固着されることにより前記ソール開口部を閉じるソール部材を含み、前記ヘッド本体は、前記ソール開口部の内周面からフェース側を形成する開口縁部と、該開口縁部と前記フェース部との間を形成しかつ前記開口縁部よりも厚さが大きい厚肉接続部とを含み、前記ソール部材は、前記開口縁部に接合されかつフェース側を形成するフェース側周縁部と、該フェース側周縁部からバックフェース側の一部を形成しかつ前記フェース側周縁部よりも厚さが大きい厚肉部とを含み、前記フェース側周縁部と開口縁部との厚さは、0.5mm以上かつ2.5mm未満であるとともに、前記厚肉部と厚肉接続部との厚さは、2.5〜10.0mmであることを特徴とする。
【0008】
また請求項2記載の発明は、前記開口縁部の長手方向に対する幅は、5.0〜10.0mmである請求項1記載のゴルフクラブヘッド
【0009】
また請求項3記載の発明は、前記厚肉接続部の厚さは、開口縁部の厚さの1.2〜8.0倍である請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッドである。
【0010】
また請求項4記載の発明は、前記フェース側周縁部は、ヘッド表面に投影された面積が、ソール部材をヘッド表面に投影した面積の10〜30%である請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0011】
また請求項5記載の発明は、前記ヘッド本体の比重D1、前記フェース部材の比重D2、及び前記ソール部材の比重D3は、以下の関係にある請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。D3>D1>D2
【発明の効果】
【0012】
本発明のゴルフクラブヘッドは、ボールを打球するフェースを前面に有するフェース部と、該フェースの下縁に連なりヘッド底面をなすソール部とを含む中空構造であり、前記フェース部で開口するフェース開口部及び前記ソール部側で開口するソール開口部がそれぞれ独立して設けられたヘッド本体、並びに、前記フェース開口部にロウ付けにより固着されることにより該フェース開口部を閉じるフェース部材を含む。
【0013】
このようなゴルフクラブヘッドは、ヘッド本体にフェース部材をロウ付けする際、ロウ材をフェースの前面側からだけでなく、ソール開口部を利用してフェースの背面側にも配して両側から強固に固着できる。従って、本発明のゴルフクラブヘッドは、フェース部材とヘッド本体との接合強度を高めることができる。
【0014】
また、ソール開口部を閉じるソール部材は、ロウ付け又は溶接により固着され、前記開口縁部に接合されかつフェース側を形成するフェース側周縁部と、該フェース側周縁部からバックフェース側の一部を形成しかつ前記フェース側周縁部よりも厚さが大きい厚肉部とを含む。また、前記ヘッド本体は、前記ソール開口部の内周面からフェース側を形成する開口縁部と、該開口縁部と前記フェース部との間を形成しかつ前記開口縁部よりも厚さが大きい厚肉接続部とを含む。そして、前記フェース側周縁部と開口縁部との厚さは、0.5mm以上かつ2.5mm未満であるとともに、前記厚肉部と厚肉接続部との厚さは、2.5〜10.0mmである。
【0015】
このような厚さが小さいフェース周縁部及び開口縁部は、溶接時間を短くするため、溶接時の熱伝導によるフェース部材のロウ材の熱影響を抑制できる。従って、フェース部材とヘッド本体との接合強度の低下を防止し得る。また、厚さが大きい厚肉接続部は、ヘッドの強度を確保する他、熱容量が大きくなるため、さらにフェース部材の溶接時の熱伝導によるフェース部材のロウ材への熱影響を小さくできる。従って、本発明のゴルフクラブヘッドは、フェース部材やソール部材とヘッド本体との接合強度を高め、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態のゴルフクラブヘッドの基準状態の平面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の底面図である。
【図4】図1のA−A断面図である。
【図5】図1の分解斜視図である。
【図6】他の実施形態のゴルフクラブヘッドの分解斜視図である。
【図7】従来のゴルフクラブヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1乃至4には、本実施形態のゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」又は「クラブヘッド」ということがある。)1の基準状態が示される。ここで、クラブヘッド1の基準状態とは、シャフト軸中心線CLを任意の垂直面VP内に配しかつ規定のライ角αで傾けるとともにフェース2AのスイートスポットSSをロフト角βに保持(フェース角は零にセットされる)して水平面HPに接地させた状態とする。特に言及されていない場合、クラブヘッド1は、この基準状態にあるものとする。なお、ロフト角は0度よりも大きい角度として与えられる。また、本明細書において、ヘッド前後方向THとは、図1に示されるように、基準状態における平面視において、ヘッド重心Gからフェース2Aに下ろした法線Nと平行な方向とする。なお、この法線Nとフェース2Aの交点が前記スイートスポットSSになる。
【0018】
前記ヘッド1は、ボールを打撃する打撃面をなすフェース2Aを有するフェース部3と、このフェース2Aの上縁2aに連なりヘッド上面をなすクラウン部4と、前記フェース2Aの下縁2bに連なりヘッド底面をなすソール部5と、前記クラウン部4とソール部5との間を継ぎ前記フェース2Aのトウ側縁2cからバックフェース2Bを通り前記フェース2Aのヒール側縁2dにのびるサイド部6と、前記クラウン部4のヒール側に設けられかつシャフト(図示しない)の先端が挿入される円筒状のシャフト差込孔7aを有するホーゼル部7とが設けられる。
【0019】
前記ヘッド1は、内部に中空部iが設けられた中空構造を具え、好ましくはウッド型として構成される。なお、ウッド型のゴルフクラブヘッドとは、少なくともドライバー(#1)、ブラッシー(#2)、スプーン(#3)、バフィ(#4)及びクリーク(#5)等を含み、かつこれらとは番手ないし名称が異なるが、ほぼ類似した形状を持つヘッドをも含む概念である。
【0020】
特に限定されるものではないが、ヘッド1の体積Vは、好ましくは120cm以上、より好ましくは130cm以上の体積を有するものが望ましい。このような体積は、ヘッド1の振り易さを確保するのに役立つ。他方、クラブヘッド1の体積が大きすぎても、ヘッド重量の増加、スイングバランスの悪化及びゴルフ規則違反等の問題があるため、好ましくは460cm以下が望ましい。
【0021】
また、ヘッド1の質量は、小さすぎるとヘッドの運動エネルギーが小さくなり、飛距離の向上が期待できない傾向がある。逆に、質量が大きすぎると、振り切るのが困難となり、打球の方向安定性や飛距離が悪化する傾向がある。このような観点より、ヘッド1の質量は、好ましくは170g以上、より好ましくは180g以上が望ましく、また好ましくは240g以下、より好ましくは230g以下が望ましい。
【0022】
また、図5に示されるように、ヘッド1は、フェース部3で開口するフェース開口部Ofとソール部5側で開口するソール開口部Osとが設けられたヘッド本体1A、フェース開口部Ofに固着されるフェース部材1B、及びソール開口部Osに固着されるソール部材1Cを含んで構成される。
【0023】
本実施形態において、前記3つの部材1Aないし1Cは、好ましくはいずれも異なる金属材料により形成される。これは、各開口部Of、Osの位置に、その部分に求められる性能に適した物性を有する金属材料を用い得る点で特に好ましい。
【0024】
また、ヘッド1は、ヘッド本体の比重D1、フェース部材の比重D2、及びソール部材の比重D3とすると、D3>D1>D2の関係がある。これにより、ヘッド1を低重心化させるとともに、重心深度を大きくして、打球の方向安定性能や飛距離を向上し得る。なお、このような比重となる具体的な材料は後述する。
【0025】
図4に示されるように、前記フェース部材1Bは、本実施形態ではプレート状であって、その中央部に形成されかつ厚さの大きい中央厚肉部1Baと、該中央厚肉部1Baの周囲に形成されかつ前記中央厚肉部1Baよりも厚さの小さい周縁薄肉部1Bbとからなる。また、フェース部材1Bは、前記フェース開口部Ofにロウ付けにて固着される。このようなフェース部材1Bは、少なくとも前記スイートスポットSSを含むことが望ましく、さらに好ましくはフェース2Aの面積の60%以上を占めるものが望ましい。本実施形態では、このフェース部材1Bとフェース縁部8とでフェース部3が形成される。
【0026】
また、フェース部材1Bを形成する金属材料としては、比強度の大きいTi−15V−6Cr−4Al、Ti−6Al−4Vなどのチタン合金が望ましい。
【0027】
なお、フェース部3の耐久性とヘッドの軽量化とをバランスさせるために、中央厚肉部1Baの厚さt1は、好ましくは1.5mm以上が望ましく、また、好ましくは4.0mm以下が望ましい。なお、本明細書において、厚さとはフェース2やソール部5の表面に設けられた溝や刻印等の凹みを埋めた状態で測定されるものとする。
【0028】
また、上記作用をより効果的に発揮させる観点より、前記フェース部材1Bをヘッド表面に投影した面積は、好ましくは16cm2以上、より好ましくは17cm2以上が望ましく、また好ましくは50cm2以下、より好ましくは48cm2以下が望ましい。
【0029】
前記ヘッド本体1Aは、フェース部3で開口するフェース開口部Ofと、ソール部5側で開口するソール開口部Osと、フェース開口部Ofの周りに設けられたフェース縁部8と、クラウン部4と、ホーゼル部7とを含む。
【0030】
各開口部Of及びOsは、互いに繋がることなく独立して設けられる。そして、これら各開口部Of及びOsは、ヘッド本体1Aに固着されるフェース部材1B及びソール部材1Cによってそれぞれ閉じられることによりクラブヘッド1が作られる。
【0031】
また、本実施形態において、図2、4及び5に良く示されるように、フェース開口部Ofは、フェース部3の中に収められている。これにより、フェース縁部8は、フェース開口部Ofの周りに環状に連続して形成される。なお、前記フェース開口部Ofの形状は特に限定されないが、本実施形態のように、フェース部3の輪郭にほぼ沿った滑らかな輪郭形状を有するものが望ましい。
【0032】
また、前記フェース縁部8は、実質的にフェース2Aの外周部を形成する主部8aと、該主部8aからステップ状に凹むとともに前記フェース部材1Bの内面1Biの周縁部を支える受け部8bとを含む。本実施形態では、受け部8bは、フェース開口部Ofの周りに環状で連続して設けられる。
【0033】
また、図3乃至5に良く示されるように、本実施形態のソール開口部Osは、フェース2Aの下縁2bから後方に距離を隔てるとともに、ソール部5とサイド部6とに跨って設けられている。なお、ソール開口部Osはこのような態様に限定されるものではなく、ソール部5の中に収められる形状でも良い。
【0034】
また、ヘッド本体1Aは、前記ソール開口部Osの内周面からフェース2A側を形成する開口縁部9と、該開口縁部9と前記フェース部3との間を形成しかつ前記開口縁部9よりも厚さが大きい厚肉接続部10とを含む。
【0035】
また、開口縁部9の厚さtAは、0.5mm以上かつ2.5mm未満に形成される必要がある。即ち、前記厚さtAが、0.5mm未満になるとヘッド1の耐久性が悪化する。逆に、前記厚さtAが2.5mm以上になると、溶接時間が長くなり、その熱がフェース部材1Bのロウ材に伝わって、接合強度を低下させる。このため、開口縁部9の厚さtAは、好ましくは0.7mm以上、より好ましくは0.9mm以上が望ましく、また好ましくは2.3mm以下、より好ましくは2.1mm以下が望ましい。
【0036】
また、厚肉接続部10の厚さtBは、2.5〜10.0mmに形成される必要がある。即ち、前記厚さtBが、2.5mm未満になると、ヘッド1の強度が低下する他、厚肉接続部10の熱容量が小さくなり、溶接時の熱がフェース部材1Bのロウ材に伝わり易くなる。逆に、前記厚さtBが10.0mmを超えると、ヘッド本体1Aが加工し難くなり、生産性が悪化する他、ヘッド1の質量が大きくなり、スイングし難くなる。このため、厚肉接続部10の厚さtBは、好ましくは2.7mm以上、より好ましくは2.9mm以上が望ましく、また好ましくは8.0mm以下、より好ましくは7.7mm以下が望ましい。
【0037】
また、上述の作用をさらに効果的に発揮させる観点より、厚肉接続部10の厚さtBは、好ましくは開口縁部9の厚さtAの1.2倍以上、より好ましくは1.7倍以上が望ましく、また好ましくは8.0倍以下、より好ましくは6.0倍以下が望ましい。
【0038】
また、本実施形態の開口縁部9は、等幅でトウ・ヒール方向にのびる帯状に形成されている。そして、開口縁部9の長手方向に対する幅Waは、5.0〜10.0mmに形成されるのが望ましい。前記幅Waが大きくなると、ヘッド1の強度が低下する他、溶接時の熱がフェース2Aに伝わり、ロウ材に影響を及ぼすおそれがある。逆に前記幅Waが小さくなると、厚肉接続部10が大きくなるため、ヘッド質量が大きくなり、振り切るのが困難となる。このため、前記幅Waは、より好ましくは6.0mm以上が望ましく、またより好ましくは9.0mm以下が望ましい。
【0039】
また、上述の作用をより発揮させるために、開口縁部9は、ソール部材1Cの前記ヘッド前後方向THと垂直なヘッド左右方向IHの最大幅Lsの70〜90%となる前後方向長さL2で形成されるのが望ましい。なお、開口縁部9は、厚さが等しい等厚部9Aと等厚部9Aと厚肉接続部10との間に形成されかつ厚さが漸増する漸増部9Bとからなるのが望ましい。このような漸増部9Bは、厚さの小さい等厚部9Aの打撃による衝撃を小さくして強度を大きく確保するのに役立つ。また、このような開口縁部9の厚さtAは、前記幅Waに亘る平均厚さとする。
【0040】
また、ヘッド本体1Aを形成する金属材料としては、フェース部材1Bよりも比重の大きな材料が望ましく、好ましくはステンレス鋼、マレージング鋼又はチタン合金等が望ましい。このようなヘッド本体1Aは、鍛造や鋳造、さらには圧延材等の2以上の曲げ加工品等を接合して作ることができるが、生産性を向上させる観点より、各部が予め一体に形成された一つの鋳造品で形成されるのが望ましい。
【0041】
また、ソール部材1Cとヘッド本体1Aとの溶接による熱をフェース部材1Bに伝えさせない他、ヘッドを低重心化やヘッド質量の過度の増加を抑制させる観点より、ヘッド1のリーディングエッジ(基準状態で最もフェース2A側の位置)Leからソール開口部Osまでのヘッド前後方向THの最短距離(即ち、リーディングエッジLeとフェース側周縁部12の前端とのフェース前後方向の距離)L1は、好ましくは該リーディングエッジLeとヘッド最後部とのヘッド前後方向THの最大長さであるヘッド長さLaの15%以上、より好ましくは18%以上が望ましく、また好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下が望ましい。
【0042】
前記ソール部材1Cは、本実施形態ではカップを斜めに切り落とした半カップ状をなし、ソール開口部Osにロウ付け又は溶接により固着される。本実施形態では、突き合わせ溶接にてソール部材1Cとソール開口部Osとが固着される。溶接は、種々の方法が採用できるが、溶接部の周囲への熱影響が非常に少ないレーザー溶接が好適である。
【0043】
また、ソール部材1Cを形成する金属材料としては、ヘッド1を低重心化させる観点より、ヘッド本体1Aよりも比重が大きい材料が望ましく、とりわけ、W−Ni合金等のタングステン合金が好ましい。
【0044】
図5に示されるように、ソール部材1Cは、前記開口縁部9に接合されかつフェース2A側を形成するフェース側周縁部12と、該フェース側周縁部12からバックフェース2B側の一部を形成しかつ前記フェース側周縁部12よりも厚さが大きい厚肉部13とを含んで構成される。
【0045】
フェース側周縁部12の厚さtCは、0.5mm以上かつ2.5mm未満に形成される必要がある。即ち、前記厚さtCが、0.5mm未満になるとヘッド1の耐久性が悪化する。逆に、前記厚さtCが2.5mm以上になると、溶接時間が長くなり、その熱がフェース部材1Bのロウ材に伝わって、接合強度を低下させる。このため、フェース側周縁部12の厚さtCは、好ましくは0.7mm以上、より好ましくは0.9mm以上が望ましく、また好ましくは2.3mm以下、より好ましくは2.1mm以下が望ましい。
【0046】
また、厚肉部13の厚さtDは、2.5〜10.0mmに形成される必要がある。即ち、前記厚さtDが、2.5mm未満になると、ヘッド1の強度が低下するとともに、低重心化や重心深度を大きくすることができない。逆に、前記厚さtDが10.0mmを超えると、肉厚が過度に大きくなり、鋳造変形が大きくなり生産性が悪化する。このため、厚肉部13の厚さtDは、好ましくは2.7mm以上、より好ましくは2.9mm以上が望ましく、また好ましくは8.0mm以下、より好ましくは7.7mm以下が望ましい。
【0047】
このようなフェース側周縁部12は、ヘッド表面に投影された面積Sfが、ソール部材1Cをヘッド表面に投影した面積S2の10〜30%であるのが望ましい。このようなフェース側周縁部12は、溶接時間の短縮とフェースの強度をバランス良く確保するのに役立つ。
【0048】
また、上述の作用を発揮させるために、フェース側周縁部12の長さ方向に対する幅Wbは、好ましくは前記ヘッド長さLaの6.0%以上、より好ましくは7.0%以上が望ましく、また好ましくは15.0%以下、より好ましくは12.0%以下が望ましい。
【0049】
また、特に限定されるものではないが、ヘッドの低重心化とヘッド質量の過度の増大化とをバランス良く確保する観点より、ソ―ル部材1Cの前記面積S2は、好ましくは40cm2 以上、より好ましくは43cm2 以上が望ましく、また、好ましくは60cm2 以下、より好ましくは55cm2 以下が望ましい。
【0050】
また、図3に示されるように、本実施形態のフェース側周縁部12は、ソール部材1Cのフェース2A側の外周縁に沿って、等幅でのびる帯状をなす。なお、フェース側周縁部12の形状は、このような態様に限定されるものではなく、種々の形状を採用し得る。
【0051】
以上のように構成されたヘッド1の製造方法について述べる。本実施形態では、先ず、ヘッド本体1Aと、フェース部材1Bと、ソール部材1Cとを準備する工程が行われる。本実施形態の各部材1A乃至1Cは、例えば、各々鋳造、鍛造及びプレス成形など種々の方法で製造される。
【0052】
次に、ヘッド本体1Aのフェース開口部Ofに、フェース部材1Bをロウ付けによって固着するフェース部材固着工程が行われる。また、フェース部材固着工程は、フェース部材1Bとヘッド本体1Aとの接合部のヘッドの内側及び外側に、例えばペースト状のロウ材が配された後、加熱される。これにより、ロウ材がフェース部材1Bとフェース開口部Ofとの隙間に確実に流れ込んで固化し、強固にフェース部材1Bとヘッド本体1Aとが固着される。なお、前記ヘッド1の内側にロウ材を配する際には、前記ソール開口部Osを利用して行われる。
【0053】
次に、フェース部材固着工程の後、ヘッド本体1Aのソール開口部Osにソール部材1Cを溶接するソール部材固着工程が行われる。この工程では、非常に密度の高いエネルギーを供給可能な、例えば炭酸ガスを用いたレーザー溶接等が用いられる。これにより、短時間での溶接が可能となるため、フェース部材1Bとヘッド本体1Aとの間のロウ材の熱変形を抑制でき、フェース2Aの耐久性が向上する。このようにして、本実施形態のヘッド1が製造される。
【0054】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定させることなく、必要に応じて種々の態様に変更しうる。例えば、図6に示されるように、ヘッド1は、ヘッド本体1Aと、フェース部材1Bと、ソール部材1Cと、ヘッド本体1Aのクラウン部4に設けられたクラウン開口部Ocを閉じるクラウン部材1Dとからなるものでも良い。このようなヘッド1は、ソール開口部Os及びクラウン開口部Ocを利用して、フェース部材1Bをロウ付けできるため、さらに効率良くヘッド1を製造することができる。
【実施例】
【0055】
本発明の効果を確認するために、図1〜5に基づいたウッド型ゴルフクラブヘッド(クリーク)が試作され、フェースの耐久性についてテストされた。表1に示すパラメータ以外はすべて同一であり、主な共通仕様は次の通りである
ヘッド体積:155cm3
ロフト角:18度
ライ角:59度
ヘッド本体:ステンレス鋼(比重7.8)
フェース部材:Ti合金(比重4.45)
ソール部材:W−Ni合金(比重8.25)
フェース部材の厚さ:2.5mm(平均)
テスト方法は、次の通りである。
【0056】
<耐久性>
各供試ヘッドにFRP製の同一のシャフト(SRIスポーツ株式会社製のMP600、フレックスR)を装着し42インチのウッド型ゴルフクラブが試作された。そして、各クラブをミヤマエ社製のスイングロボットに取り付け、フェースの中心かつヘッドスピード47m/sでゴルフボールを繰り返し打撃した。そして、フェース部材とヘッド本体との接合部近傍に損傷なく、3000発以上打撃できたクラブヘッドを合格とした。
【0057】
<ヘッド質量>
各供試ヘッドの質量が測定された。数値が過度に大きくなると、ゴルファーの振り易さが低下するため好ましくない。
テストの結果などを表1に示す。
【0058】
【表1】


【0059】
テストの結果、実施例のヘッドは、比較例のヘッドに比してヘッド質量を過度に増加させることなく耐久性が向上していることが確認できた。
【符号の説明】
【0060】
1 ゴルフクラブヘッド
1A ヘッド本体
1B フェース部材
1C ソール部材
2A フェース
2B バックフェース
3 フェース部
5 ソール部
Of フェース開口部
Os ソール開口部
9 開口縁部
10 厚肉接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールを打撃するフェースを前面に有するフェース部と、該フェースの下縁に連なりヘッド底面をなすソール部とを含む中空構造のゴルフクラブヘッドであって、
前記フェース部で開口するフェース開口部及び前記ソール部側で開口するソール開口部がそれぞれ独立して設けられたヘッド本体、
前記フェース開口部にロウ付けにより固着されることにより該フェース開口部を閉じるフェース部材、並びに、
前記ソール開口部にロウ付け又は溶接により固着されることにより前記ソール開口部を閉じるソール部材を含み、
前記ヘッド本体は、前記ソール開口部の内周面からフェース側を形成する開口縁部と、該開口縁部と前記フェース部との間を形成しかつ前記開口縁部よりも厚さが大きい厚肉接続部とを含み、
前記ソール部材は、前記開口縁部に接合されかつフェース側を形成するフェース側周縁部と、該フェース側周縁部からバックフェース側の一部を形成しかつ前記フェース側周縁部よりも厚さが大きい厚肉部とを含み、
前記フェース側周縁部と開口縁部との厚さは、0.5mm以上かつ2.5mm未満であるとともに、前記厚肉部と厚肉接続部との厚さは、2.5〜10.0mmであることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記開口縁部の長手方向に対する幅は、5.0〜10.0mmである請求項1記載のゴルフクラブヘッド
【請求項3】
前記厚肉接続部の厚さは、開口縁部の厚さの1.2〜8.0倍である請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記フェース側周縁部は、ヘッド表面に投影された面積が、ソール部材をヘッド表面に投影した面積の10〜30%である請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記ヘッド本体の比重D1、前記フェース部材の比重D2、及び前記ソール部材の比重D3は、以下の関係にある請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
D3>D1>D2

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−245169(P2012−245169A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119507(P2011−119507)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】