説明

ゴルフクラブヘッド

【課題】クラウン面の弾性変形を通じて、ロフト角よりも大きい打出角を確保するとともに、ボールに付与されるバックスピン量を少なくして飛距離を延ばすことが期待できるゴルフクラブヘッド提供すること。
【解決手段】ソール面11を形成するソール面形成部材17と、クラウン面12を形成するクラウン面形成部材18は、ヘッドのトウ側P1からバック側を通ってヒール側の中間P4に至るサイド面14の領域内の接合位置30A、30B、30Cが、ヘッド高さの1/4〜1/2の範囲内に属するように設けられ、ボールをフェース面13で打撃したときに、クラウン面12の中央部を膨らむように撓ませてロフト角を一時的に増大させ、打出角を大きくするとともに、ギヤ効果でバックスピン量を低減して飛距離を延長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフクラブヘッドに係り、更に詳しくは、ボールを打撃したときの当該ボールのバックスピン量を減少させ(適性化し)、打出角を上げて飛距離を延ばすことのできるゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールをより遠くに飛ばすためには、ヘッドスピードを速くすることはもとより、フェース面がスクウェアで、スイートエリアでボールを捉えることが必要であるが、ボールのバックスピン量や、打出角も飛距離を延ばすための要素となる。
例えば、バックスピン量が極端に多いと、ボールが吹き上がるような(急上昇するような)弾道となり、最高点に達した後に急降下して距離のロスが大きくなる。これは、打出角についても同様であり、当該打出角が極端に大きいと、短時間で最高点に達してその後に急降下して距離のロスが大きくなる。このように、ボールの飛距離を延長するためには、バックスピン量や打出角を適性化することも重要となる。
【0003】
特許文献1には、クラウン面を低剛性の材料で形成することで打撃時にクラウン面を変形させてフェース面を後方に回動可能とし、ギヤ効果によりバックスピン量を減らしてボールの飛距離を延長しようとしたゴルフクラブヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−89071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のゴルフクラブヘッドは、一般にクラウン面と称される領域の内側に、低剛性で撓み易くしたクラウン面部分を形成したものであり、当該部分が相対的に変形し易いだけで、ヘッドのサイド面側を巻き込むような状態の変形を得難く、十分に変形させるためには改善の余地が残されていた。また、樹脂材料を用いていることから、低剛性とすることと相まって強度的な問題もある。
【0006】
本発明の目的は、ボールを打撃したときに、フェース面のロフト角を一時的に大きくするようにクラウン面を広い領域で弾性変形させ、当該クラウン面の弾性変形を通じて、ロフト角よりも大きい打出角を確保するとともに、ボールに付与されるバックスピン量を少なくし、打出角とバックスピン量との相乗効果によって飛距離を延ばすことが期待できるゴルフクラブヘッド提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、特許請求の範囲記載の構成を採用したものであり、具体的には、ソール面を形成するソール面形成部材と、クラウン面を形成するクラウン面形成部材と、ソール面形成部材及びクラウン面形成部材の前方に位置してフェース面を形成するフェース面形成部材と、クラウン面のヒール側にホーゼル部が位置する状態で各形成部材が相互に接合されたゴルフクラブヘッドにおいて、
前記ソール面形成部材と前記クラウン面形成部材の接合位置は、ヘッドのトウ側からバック側を通ってヒール側の中間に至るサイド面の領域内で、ヘッド高さの1/4〜1/2の範囲内に設けられ、
前記クラウン面形成部材は75%以上が0.2mm〜0.6mmの板厚とされている。
【0008】
また、前記クラウン面形成部材の面積は、前記ソール面形成部材の面積の85%〜115%とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記サイド面の領域において、ヘッド高さの1/4〜1/2の範囲内にソール面形成部材とクラウン面形成部材との接合位置が設定されているので、つまり、クラウン面を広く確保できるので、打撃したときの衝撃によってクラウン面が撓み易くなる。
従って、クラウン面の撓み(変形)により、フェース面の上部がバック側にシフトし、ロフト角が一時的に大きくなって打出角を大きくし、ギヤ効果によりバックスピン量が減少して飛距離を延ばすことができる。
また、クラウン面形成部材は75%以上を0.2mm〜0.6mmの板厚とすることで、撓み易さが確保できる。75%未満では、期待する撓み量を確保できなくなるためである。また、0.2mm未満では割れ等、強度的に問題があり、0.6mmを越えると、撓み量が小さくなる。なお、クラウン面形成部材は、ソール面形成部材との接合を行うために、外周部の板厚が相対的に厚くなっているもの、例えば、板厚0.75mmを有することが好ましい。
更に、クラウン面形成部材の面積を上記85%〜115%としたことで、サイド面を巻き込むような状態でクラウンが撓むようになる。85%以下では、クラウン面の変形に追従した周辺の変形が少なくなり、また、115%を越えると、撓み過ぎて却って打出角が大きくなりすぎて飛距離をロスする要因となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係るゴルフクラブヘッドの概略平面図。
【図2】前記ゴルフクラブヘッドの正面図。
【図3】前記ゴルフクラブヘッドを見る方向を変えて同一平面で示したもので、(A)は正面図、(B)は右側面図、(C)は左側面図、(D)は背面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1に示されるゴルフクラブヘッド10は、いわゆるドライバーと称されるウッドタイプの中空ゴルフクラブであり、ソール面11、クラウン面12、フェース面13及びサイド面14を含み、ヒール側上部にはホーゼル部15が設けられている。
【0013】
前記ゴルフクラブヘッド10はチタンにより形成されており、ホーゼル部15を除くヘッド部分は、ソール面形成部材17、クラウン面形成部材18及びフェース面形成部材19の3つの部材を、例えば溶接等の手段で相互に接合することによって形成されている。ソール面形成部材17は、本発明では0.8mm〜0.9mmの板厚を備えており、前記ソール面11と、当該ソール面11に連なってトウ側からバックを通ってヒール側に至る外周領域を形成するサイド面14とを含み、当該サイド面14とクラウン面形成部材18とが接合されるようになっている。
すなわち、前記サイド面14の上端部とクラウン面形成部材18の外周部とを突き合わせた部位を接合位置30A〜30D(図3参照)として接合し、また、ソール面形成部材17とクラウン面形成部材18の前端側にフェース面形成部材19の外周部を突き合わせて当該フェース面形成部材19が接合される。
【0014】
前記ソール面形成部材17とクラウン面形成部材18の接合位置30A〜30Dは外観上稜線を呈するように表出する。接合位置30A〜30Dのうち30A〜30Cは、ゴルフクラブヘッド10のトウ側P1からバック(フェース面の反対)側を通ってヒール側の中間部P4に至る長さにおけるサイド面14の領域内で、ヘッド高さの1/4〜1/2の範囲内に設定されている。これを更に詳述すると、トウ側領域P1〜P2における接合位置30Aは、図3(A)に示されるように、ヘッド高さHの1/4〜1/2の範囲において、左右両端の高さが同程度の高さ位置にあって、中央部がそれよりも幾分低い位置となる緩やかな曲線状に延びた位置に設定されている。また、バック側領域P2〜P3における接合位置30Bは、トウ側が最も低くヒール側に向かうに従って次第に高くなるように略直線状の傾斜した線となるように設定されている。更に、ヒール側領域P3〜P5においてバック寄りの略半分領域(P3〜P4)30Cは、前記高さHの1/4〜1/2の範囲内に設定され、ホーゼル寄りの略半分領域(P4〜P5)30Dは、1/2を越える高さ内で傾斜した状態に設定されている。
【0015】
次に、本発明に係るゴルフクラブヘッドの実施例を比較例とともに説明する。
【0016】
[実施例1]
[クラブ仕様]
番手 1番ウッド(ドライバー)
クラウン面形成部材の面積 13150mm
ソール面形成部材の面積 14277mm
クラウン面形成部材の面積/ソール面形成部材の面積 92%
クラウン面板厚 0.6mm(クラウン面の78%を占め、残り22%の板厚は0.75mm)
クラウン面形成部材とソール面形成部材との接合位置(図3中の接合位置30A〜30Cが1/4〜1/2の範囲内)
ソール面形成部材板厚 0.75mm
ヘッドロフト角 11度
ヘッド重量 179.5g
ヘッド体積 460cc
シャフト 2010inpresX
Classicドライバー用(Rフレックス)
グリップ 2010inpresX
Classicドライバー用
クラブ長さ 46.25インチ
クラブ総重量 275g
バランス C3
【0017】
上記ゴルフクラブをロボットアームに取り付け、一定のヘッドスピード(36.5m/s)にセットして実験を5回行って結果を求めた。その結果を表1に示す。なお、表中のヘッドスピードは、ロボットアームの設定を36.5m/sにした状態における打撃時の実測値を示したものである。
【0018】
[比較例1]
[クラブ仕様]
クラウン面形成部材の面積 12079mm
ソール面形成部材の面積 15310mm
クラウン面形成部材の面積/ソール面形成部材の面積 79%
クラウン面板厚 0.75mm
クラウン面形成部材とソール面形成部材との接合位置 実施例1に対応する位置で示せば、30A〜30Bの途中までが1/2以上、30Bの途中を過ぎた位置から30Cが1/4〜1/2(ヘッドのトウ側からバック側を通ってヒール側の中間に至るサイド面の領域内で、ヘッドのトウ側においてヘッド高さの1/2以上)
ソール面形成部材板厚 0.9mm
その他は、実施例1と同様である。
【0019】
上記比較例1のゴルフクラブをロボットアームに取り付け、実施例1と同様の実験を5回行って結果を求めた。その結果を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
表1に示されるように、本発明によれば、打出角が平均で0.5度上がり、バックスピン量が平均で約150rpm減少することとなり、その結果、キャリーで1ヤード、トータルで1.6ヤード飛距離アップを図ることができた。
なお、上記表中、「キャリー」とは、ボール打撃地点からボールが最初に着地した点までの距離であり、その後ボールが転がって静止するまでの距離が「ラン」となり、「キャリー」及び「ラン」が「トータル」となる。
【0022】
次に上記クラブ仕様及び打撃条件を同一として、クラウン形成部材の板厚を変化させた場合における飛距離を求めた。これを5回ずつ実験し、平均を求めた。その結果を表2に示す。
【0023】
【表2】

【0024】
表2から明らかなように、クラウン形成部材の板厚を薄くすることにより、トータル飛距離を延ばすことができる。これは、クラウン形成部材の板厚を薄くすることが、クラウン面を適度に弾性変形させ、ギヤ効果による適性な打出角が付与された結果の一つと推測される。
【0025】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施例に対し、当業者が様々な変更を加えることができるものである。
【0026】
例えば、前記実施形態では、いわゆるドライバーを対象とした場合を示したが、いわゆるフェアウェイウッド或いはユーティリティと称されるタイプのゴルフクラブヘッドにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
10…ゴルフクラブヘッド、11…ソール面、12…クラウン面、13…フェース面、14…サイド面、15…ホーゼル部、17…ソール面形成部材、18…クラウン面形成部材、19…フェース面形成部材、30A、30B、30C、30D…接合位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソール面を形成するソール面形成部材と、クラウン面を形成するクラウン面形成部材と、ソール面形成部材及びクラウン面形成部材の前方に位置してフェース面を形成するフェース面形成部材と、クラウン面のヒール側にホーゼル部が位置する状態で各形成部材が相互に接合されたゴルフクラブヘッドにおいて、
前記ソール面形成部材と前記クラウン面形成部材の接合位置は、ヘッドのトウ側からバック側を通ってヒール側の中間に至るサイド面の領域内で、ヘッド高さの1/4〜1/2の範囲内に設けられ、
前記クラウン面形成部材は75%以上が0.2mm〜0.6mmの板厚であることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記クラウン面形成部材の面積は、前記ソール面形成部材の面積の85%〜115%であることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−103000(P2013−103000A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249536(P2011−249536)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】