説明

ゴルフクラブヘッド

【課題】反発性能と生産性とをバランス良く高める。
【解決手段】ボールを打撃するフェース2を前面に有するフェース部3を含みかつ内部に中空部iが設けられたゴルフクラブヘッド1である。前記フェース部3は、前記フェース2の中央領域に設けられた中央厚肉部9と、該中央厚肉部9の周りに設けられかつ中央厚肉部9よりも厚さの小さい周辺薄肉部10とを含む。前記周辺薄肉部10の前記中空部i側を向く周辺裏面部10Hは、該周辺裏面部10Hに沿って直線状にのびる第1の溝G1が複数本配された第1領域13と、前記第1の溝G1とは異なる向きで直線状にのびる第2の溝G2が複数本配された第2領域14とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反発性能と生産性とをバランス良く高めたゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゴルフクラブヘッドのフェースの反発性能を高めるために、フェース部の裏面に複数の溝部を設けて、フェース部の剛性を小さくしてフェース部を撓み易くすることが知られている。
【0003】
このような溝部として、例えば、図9(a)に示されるように、フェース部bの裏面baに、フェース縁beに沿って設けられた環状溝c1が提案されている。このようなゴルフクラブヘッドaは、打撃によりフェース部全体を撓ませるため、反発性能が高められる。しかしながら、このような環状溝c1は、曲率半径の異なる複数の円弧で形成されているため、加工に手間がかかり生産性が悪いという問題があった。
また、図9(b)に示されるように、フェース部bの裏面baに、トウ・ヒール方向にのびる直線溝c2が設けられたゴルフクラブヘッドaが提案されている。このような直線溝c2は、加工し易く、生産性を高め得るが、打撃によるフェース部bの撓みがトウ・ヒール方向には伝わり難く、反発性能を高め難いという問題があった。関連する技術として、下記特許文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−253709号公報
【特許文献2】特開2003−275343号公報
【特許文献3】特開2004−187785号公報
【特許文献4】特開2002−165905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、周辺薄肉部の中空部側を向くフェース裏面に、向きが異なりかつ直線状にのびる溝を複数本設けることを基本として、反発性能と生産性とをバランス良く高めたゴルフクラブヘッドを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち、請求項1記載の発明は、ボールを打撃するフェースを前面に有するフェース部を含みかつ内部に中空部が設けられたゴルフクラブヘッドであって、前記フェース部は、前記フェースの中央領域に設けられた中央厚肉部と、該中央厚肉部の周りに設けられかつ中央厚肉部よりも厚さの小さい周辺薄肉部とを含み、前記周辺薄肉部の前記中空部側を向く周辺裏面部は、直線状にのびる第1の溝が複数本配された第1領域と、前記第1の溝とは異なる向きで直線状にのびる第2の溝が複数本配された第2領域とを含むことを特徴とする。
【0007】
また請求項2記載の発明は、前記第1の溝は、第2の溝と直交する向きにのびる請求項1記載のゴルフクラブヘッドである。
【0008】
また請求項3記載の発明は、前記第1の溝及び第2の溝は、溝深さが0.02〜0.80mm、かつ溝幅が0.1〜3.0mmである請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッドである。
【0009】
また請求項4記載の発明は、前記第1の溝及び第2の溝は、長手方向と直角な断面が円弧状をなし、かつその曲率半径が1.0〜5.0mmである請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0010】
また請求項5記載の発明は、前記第1の溝及び第2の溝の隔設ピッチは、各々、溝幅の1.0〜1.5倍である請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0011】
また請求項6記載の発明は、シャフト軸中心線を任意の垂直面内に配しかつ規定のライ角で傾けるとともに前記フェースをロフト角に保持して水平面に接地させた基準状態の正面視において、前記第1の溝は、水平面に対して80〜100度で傾くとともに、前記第2の溝は、水平面に対して10以下度でのび、しかも、前記周辺薄肉部は、トウ側に形成されるトウ側エリア、ヒール側に形成されるヒール側エリア、クラウン側に形成されるクラウン側エリア及びソール側に形成されるソール側エリアとに区分したときに、前記第1領域は、前記トウ側エリアと前記ヒール側エリアとに設けられ、かつ、前記第2領域は、前記クラウン側エリアと前記ソール側エリアとに設けられる請求項5に記載のゴルフクラブヘッドである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゴルフクラブヘッドは、ボールを打撃するフェースを前面に有するフェース部を含みかつ内部に中空部が設けられた中空構造であり、前記フェースの中央領域に設けられた中央厚肉部と、該中央厚肉部の周りに設けられかつ中央厚肉部よりも厚さの小さい周辺薄肉部とを含む。このようなゴルフクラブヘッドは、ボールを打撃する中央領域の耐久性を向上させるとともに、周辺薄肉部によるフェースの撓み効果を発揮して反発性能を高め得る。
【0013】
また、前記周辺薄肉部の前記中空部側を向く周辺裏面部は、該周辺裏面部に沿って直線状にのびる第1の溝が複数本配された第1領域と、前記第1の溝とは異なる向きで直線状にのびる第2の溝が複数本配された第2領域とからなる。このような直線状にのびる溝は、円弧状に湾曲する環状溝に比して加工が容易である。また、周辺裏面部に沿って異なる向きに配される溝は、一方向のみにのびる直線溝に比してフェース部を大きく撓ますのに役立つ。従って、本発明のゴルフクラブヘッドは、反発性能と生産性とを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態のゴルフクラブヘッドの基準状態の正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図1の分解斜視図である。
【図5】図1のフェース裏面図である。
【図6】図1のX−X断面図である。
【図7】第1の溝の長手方向と直角の断面図である。
【図8】ゴルフクラブヘッドの他の実施例の分解斜視図である。
【図9】(a)、(b)は、従来のゴルフクラブヘッドの裏面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1乃至3には、本実施形態のゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」又は「クラブヘッド」ということがある。)1の基準状態が示される。クラブヘッド1の基準状態とは、シャフト軸中心線CLを任意の垂直面VP内に配しかつ規定のライ角αで傾けるとともにフェース2AのスイートスポットSSをロフト角β(0度よりも大)に保持(フェース角は零にセットされる)して水平面HPに接地させた状態とする。特に言及されていない場合、クラブヘッド1は、この基準状態にあるものとする。なお、ヘッド重心Gからフェース2Aに下ろした法線Nとフェース2Aとの交点がスイートスポットSSになる。
【0016】
前記ヘッド1は、ボールを打撃する打撃面をなすフェース2Aを有するフェース部3と、このフェース2Aの上縁2aに連なりヘッド上面をなすクラウン部4と、前記フェース2Aの下縁2bに連なりヘッド底面をなすソール部5と、前記クラウン部4とソール部5との間を継ぎ前記フェース2Aのトウ側縁2cからバックフェース2Bを通り前記フェース2Aのヒール側縁2dにのびるサイド部6と、前記クラウン部4のヒール側に設けられかつシャフト(図示しない)の先端が挿入される円筒状のシャフト差込孔7aを有するホーゼル部7とが設けられる。
【0017】
また、ヘッド1は、内部に中空部iが設けられた中空構造を具え、好ましくはウッド型として構成される。なお、ウッド型のゴルフクラブヘッドとは、少なくともドライバー(#1)、ブラッシー(#2)、スプーン(#3)、バフィ(#4)及びクリーク(#5)を含み、かつこれらとは番手ないし名称が異なるが、ほぼ類似した形状を持つヘッドをも含む概念である。
【0018】
特に限定されるものではないが、ヘッドの体積が小さくなると、ヘッド1の重心を通る垂直軸周りの慣性モーメントが小さくなり易い他、ヘッド1の重心が浅くなり易く、打球の方向安定性が悪化するおそれがある。このため、ヘッド1の体積Vは、好ましくは100cm以上、より好ましくは130cm以上の体積を有するものが望ましい。他方、クラブヘッド1の体積が大きすぎても、ヘッド重量の増加、スイングバランスの悪化及びゴルフ規則違反等の問題があるため、好ましくは470cm以下、より好ましくは460cm以下が望ましい。
【0019】
本実施形態のヘッド1は、図4に示されるように、前記フェース部3を構成するフェース部材1Aと、前側にフェース部材1Aが固着されるヘッド本体1Bとから形成された2ピース構造である。ただし、ヘッド1の構造は、2ピース構造に限定されるものではなく、例えば3ないし4ピース構造等であっても良いのは言うまでもない。フェース部材1A及びヘッド本体1Bは、金属材料によって形成され、例えばチタン合金やステンレスなどの1種ないし2種以上を用いることができる。なお、ヘッド本体1Bの一部に前記金属材料より比重の小さい例えば、繊維強化樹脂材料が用いられても良い。
【0020】
前記フェース部材1Aは、例えばフェース部3の全域と、フェース2Aの各縁2a乃至2dからヘッド後方に小長さでのびる延長部8とを含む略カップ状で形成される。前記延長部8は、クラウン側の延長部8a、ソール側の延長部8b、トウ側の延長部8c及びヒール側の延長部8dを含む。本実施形態のフェース部材1Aは、例えば、圧延材をプレスして塑性変形させることにより、各部が一体に形成される。このようなフェース部材1Aは、該フェース部材1Aとヘッド本体1Bとの溶接を、例えばクラウン部4、ソール部5及び/又はサイド部6の表面のように滑らかな面で行うことができるので、溶接時の作業性を向上させる。なお、図3において、符号Kは、フェース部材1Aとヘッド本体1Bとの溶接後に中空部i側に残存する溶接ビードを示している。
【0021】
他方、本実施形態のヘッド本体1Bは、ヘッド1から前記フェース部材1Aを除いた部分、即ちクラウン部4、ソール部5及びサイド部6それぞれの後側の主要部を形成するクラウン後部4b、ソール後部5b及びサイド後部6bを一体に有するとともに、ホーゼル部7を含んで構成される。該ヘッド本体1Bは、例えば鋳造によって一体成形される。
【0022】
図1、5に示されるように、本実施形態のフェース部3は、前記フェース2Aの中央領域に設けられた中央厚肉部9と、該中央厚肉部9の周りに設けられかつ中央厚肉部9よりも厚さの小さい周辺薄肉部10とを含んで構成される。
【0023】
フェース部3の中央領域は、打球時に大きな衝撃力が作用する。従って、該中央領域に厚さが大きい前記中央厚肉部9を設けることにより、フェース部3の耐久性が向上する。ここで、フェース部3の中央領域とは、フェース部3の中空部i側を向くフェース背面周縁部3eの輪郭形状の図心Zを含んだ一定の面積を持つ領域であり、フェース背面周縁部3eには達しないものとする。前記フェース背面周縁部3eは、図6に示されるように、フェース部3の中空部i側を向く面であるフェース裏面3Hと、クラウン部4、ソール部5及びサイド部6の各内側面(本図では、クラウン部の内側面4i、ソール側の内側面5iが示される。)との間の境界線とする。ただし、フェース裏面3Hと前記各部4乃至6の内側面とが応力集中を防止するための面取り状の円弧を介して接続される場合、フェース背面周縁部3eは、ヘッド断面における当該円弧Rの長さの中間点として便宜的に定められる。
【0024】
本実施形態において、中央厚肉部9は、前記図心Zを含みかつ実質的に一定の厚さtcで形成された主部9aと、該主部9aの周りを囲むように設けられかつ周辺薄肉部10に向かって厚さが漸減する斜面からなる厚さ移行部9bとを含んで形成される。
【0025】
前記主部9aは、フェース部3の中で最大の前記厚さtcを有し、フェース部3の耐久性の向上とフェース部3の撓みをフェース背面周縁部3eの全体に伝えやすくすることとを両立するため、フェース背面周縁部3eに沿って、トウ・ヒール方向に長いほぼ横長の楕円状又は長円状に形成されている。
【0026】
主部9aの厚さtcは、フェース部3の耐久性の確保とヘッド質量の適正化とをバランスさせるために、好ましくは1.8mm以上、より好ましくは2.2mm以上が望ましく、また、好ましくは4.5mm以下、より好ましくは4.0mm以下が望ましい。また、同様の観点より、中央厚肉部9の中空部i側を向く中央裏面部9Hの面積S1は、フェース裏面3Hの全面積Sの好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上が望ましく、また、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下が望ましい。なお、フェース裏面3Hや中央裏面部9Hの面積は、便宜上、該当する領域ないし部分を図2に示した垂直面VP(又はこれと平行な垂直面)に投影した二次元形状から求められる面積とする。また、前記フェース裏面3Hの全面積Sは、ヘッド1の体積に応じて種々設定されるが、好ましくは15cm2以上、より好ましくは17cm2以上が望ましく、また好ましくは50cm2以下、より好ましくは48cm2以下が望ましい。
【0027】
前記周辺薄肉部10は、主部9aの厚さtcよりも小さい厚さtb(図6に示される)で形成される。このような周辺薄肉部10は、打撃によるフェースの撓みを大きくかつ均一にして、反発性能を向上するのに役立つ。
【0028】
このような周辺薄肉部10の厚さtb(図6に示す)は、好ましくは1.4mm以上、より好ましくは1.6mm以上が望ましく、また、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.8mm以下が望ましい。前記厚さtbが小さくなると、フェース部3の耐久性が悪化するおそれがあり、逆に厚さtbが大きくなると、反発性能が悪化するおそれがある。なお、主部9aの厚さtc及び周辺薄肉部10の厚さtbは、後述する溝G1、G2やフェース2Aにフェースライン等のインパクトエリアマーキングが設けられている場合は、これらを埋めた状態で測定される。
【0029】
また、図1、5に示されるように、周辺薄肉部10の中空部i側を向く周辺裏面部10Hには、直線状にのびる第1の溝G1が複数本配された第1領域13と、前記第1の溝G1とは異なる向きで直線状にのびる第2の溝G2が複数本配された第2領域14とから形成される。このように直線状にのびる第1の溝G1及び第2の溝G2は、円弧状に湾曲する環状溝に比して加工が容易である。また、これらの溝G1、G2が、周辺裏面部10Hに沿って異なる向きに配されるため、直線溝が一方向のみに配される場合に比して、フェース部3が大きく撓むのに役立つ。従って、本発明のゴルフクラブヘッド1は、反発性能と生産性とを高めることができる。
【0030】
また、第1の溝G1は、第2の溝G2と直交する向きにのびるのが望ましい。これにより、上述の撓みをフェース背面周縁部3eに向かってさらにバランス良く伝えることができ、反発性能をより一層高めることができる。
【0031】
本実施形態において、第1の溝G1は、水平面に対して80〜100度で傾く。また、前記第2の溝G2は、水平面に対して10度以下でのびるのが望ましい。これにより、打撃によるフェース部3の撓みが、打撃位置からフェース背面周縁部3eに向かってバランス良く伝わるため、反発性能がさらに向上する。なお、第1の溝G1の水平面に対する角度θ1(図1に示す)が水平面に対し小さくなると、トウ・ヒール方向の剛性を小さくすることができず、前記撓みがトウ・ヒール方向へ伝わり難くなるおそれがある。このため前記角度θ1は、より好ましくは85〜95度が望ましい。また、第2の溝G2の水平面に対する角度θ2(図1に示す)が水平面に対し大きくなると、クラウン・ソール方向の剛性を小さくすることができず、前記撓みがクラウン・ソール方向へ伝わり難くなるおそれがある。このため前記角度θ2は、より好ましくは5度以下が望ましい。
【0032】
また、周辺裏面部10Hを、トウ側に形成されるトウ側エリアTe、ヒール側に形成されるヒール側エリアHe、クラウン側に形成されるクラウン側エリアCe及びソール側に形成されるソール側エリアSeに区分したときに、第1領域13は、トウ側エリアTeとヒール側エリアHeとに設けられ、かつ、第2領域14は、クラウン側エリアCeとソール側エリアSeとに設けられるのが望ましい。このように4つのエリアに第1領域13及び第2領域14が設けられることにより、打撃によるフェース部3の撓みを、より分散させることができるため、反発性能が一層向上する。
【0033】
なお、トウ側エリアTeは、最もトウ側に配された第1の溝G1を有する領域であって、スイートスポットSSよりもトウ側に形成される。また、ヒール側エリアHe、最もヒール側に配された第1の溝G1を有する領域であって、スイートスポットSSよりもヒール側に形成される。また、クラウン側エリアCeは、トウ側エリアTeとヒール側エリアHeとの間かつスイートスポットSSよりもクラウン側の領域に形成される。また、ソール側エリアSeは、トウ側エリアとTeヒール側エリアHeとの間かつスイートスポットSSよりもソール側の領域に形成される。
【0034】
また、図7は、周辺薄肉部10の第1の溝G1の長手方向と直角な断面を示す。この第1の溝G1(以下、第2の溝G2についても同一とする。)は、溝深さD1が0.02〜0.80mm、かつ溝幅W1が、0.1〜3.0mmに形成されるのが望ましい。前記溝深さD1が大きくなると、フェースの耐久性が悪化するおそれがある。逆に溝深さD1が小さくなると、反発性能を高めることができないおそれがある。このため、溝深さD1は、より好ましくは0.05mm以上、またより好ましくは0.50mm以下が望ましい。また、前記溝幅W1は、過度に大きく、又は過度に小さくなると、加工性が悪化するおそれがある。このため、溝幅W1は、より好ましくは0.3mm以上、またより好ましくは2.0mm以下が望ましい。
【0035】
また、第1の溝G1は、長手方向と直角な断面が、フェース2Aに向かって凸をなす円弧状に形成されるのが望ましい。このような溝は、フェース部3の耐久性や加工性を向上しうる。
【0036】
また、第1の溝G1は、前記断面の曲率半径R1が1.0〜5.0mmで形成されるのが望ましい。これにより、溝底に生じる応力集中を防止して、フェース部3の耐久性を向上しうる。なお、曲率半径R1が過度に大きくなると、溝深さD1が小さくなり易く、反発性能が低下するおそれがある。逆に曲率半径R1が小さくなると、加工に手間が掛かり、生産性が悪化するおそれがある。このため、前記曲率半径R1は、より好ましくは1.5mm以上、またより好ましくは4.0mm以下が望ましい。
【0037】
また、第1の溝G1及び第2の溝G2の隔設ピッチP1は、該第1の溝G1及び第2の溝G2の溝幅W1の好ましくは1.0倍以上、より好ましくは1.1倍以上が望ましく、また、好ましくは1.5倍以下、より好ましくは1.4倍以下が望ましい。隔設ピッチP1が過度に大きくなると、反発性能を向上させ難いおそれがあり、逆に、隔設ピッチP1が過度に小さくなると、加工に手間がかかり生産性が悪化するおそれがある。
【0038】
なお、第1の溝G1は、種々の方法、例えばNC等による機械加工、刻印型などを用いたプレス成形又は鋳造等によって製造できる。ただし、鋳造の場合には、十分な精度が得られにくい場合があるので、好ましくは、溝加工用のミルボールを用いたNC機械加工によって製造されるのが望ましい。
【0039】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定させることなく、必要に応じて種々の態様に変更しうる。例えば、フェース部材1Aは、図8に示されるように、フェース2Aの各縁2a乃至2dの内側かつプレート状で形成され、ヘッド本体1Bのフェース開口部Ofに溶接にて固着されるものでもよい。このようなフェース部材1Aは、第1の溝G1及び第2の溝G2が加工し易くなるため、生産性を向上させるのに役立つ。
【実施例】
【0040】
本発明の効果を確認するために、図1〜5に基づいたウッド型ゴルフクラブヘッド(スプーン(#3))が試作され、フェースの反発性能、生産性及び耐久性についてテストされた。表1に示すパラメータ以外はすべて同一であり、主な共通仕様は次の通りである
ヘッド体積:165cm3
ヘッド重量:208g
ロフト角:15度
ライ角:58度
フェース部材:Ti合金
中央厚肉部の厚さ:2.3mm(均一)
テスト方法は、次の通りである。
【0041】
<反発性能>
2003年2月24日にUSGAから発行された「Notice To Manufacturers 」に添付された「Technical Description of the Pendulum Test」に定義されているUSGAのペンデュラムテストに基づき、各テストヘッドの "Characteristic Time (CT)" (CT値とも呼ばれる)が測定された。このCT値は、インパクト時の効率を示す数値(単位:μs)であって、大きいほど反発性能に優れていることを示す。
【0042】
<生産性>
各供試ヘッドのフェース部材の溝の製造時間が測定された。結果は比較例1の製造時間の逆数を100とする指数であり、数値が大きいほど製造時間が短くて良好である。
【0043】
<耐久性>
各供試ヘッドにFRP製の同一のシャフト(SRIスポーツ社製のMiyazaki Kusala、フレックスS)を装着して43インチのウッド型ゴルフクラブを試作し、各供試クラブをスイングロボットに取り付け、ヘッドスピード49m/sでゴルフボール(SRIスポーツ社製の「Z−STAR」)をクラブ毎にフェース面のスイートスポットSSで打撃し、100球毎にヘッドの破損の有無を確認し、破損時の打球数で評価した。なお最大打球数を20000球とした。
テストの結果などを表1に示す。
【0044】
【表1】



【0045】
テストの結果、実施例のヘッドは、比較例のヘッドに比して反発性能と生産性とがバランス良く向上していることが確認できた。また、ドライバー(#1)バフィ(#4)及びクリーク(#5)についても試験を行ったが、表1の結果と同様の傾向が示された。
【符号の説明】
【0046】
1 ゴルフクラブヘッド
2 フェース
3 フェース部
9 中央厚肉部
10 周辺薄肉部
10H 周辺裏面部
13 第1領域
14 第2領域
G1 第1の溝
G2 第2の溝
i 中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールを打撃するフェースを前面に有するフェース部を含みかつ内部に中空部が設けられたゴルフクラブヘッドであって、
前記フェース部は、前記フェースの中央領域に設けられた中央厚肉部と、該中央厚肉部の周りに設けられかつ中央厚肉部よりも厚さの小さい周辺薄肉部とを含み、
前記周辺薄肉部の前記中空部側を向く周辺裏面部は、直線状にのびる第1の溝が複数本配された第1領域と、前記第1の溝とは異なる向きで直線状にのびる第2の溝が複数本配された第2領域とを含むことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記第1の溝は、第2の溝と直交する向きにのびる請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記第1の溝及び第2の溝は、溝深さが0.02〜0.80mm、かつ溝幅が0.1〜3.0mmである請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記第1の溝及び第2の溝は、長手方向と直角な断面が円弧状をなし、かつその曲率半径が1.0〜5.0mmである請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記第1の溝及び第2の溝の隔設ピッチは、各々、溝幅の1.0〜1.5倍である請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
シャフト軸中心線を任意の垂直面内に配しかつ規定のライ角で傾けるとともに前記フェースをロフト角に保持して水平面に接地させた基準状態の正面視において、前記第1の溝は、水平面に対して80〜100度で傾くとともに、前記第2の溝は、水平面に対して10以下度でのび、しかも、
前記周辺薄肉部は、トウ側に形成されるトウ側エリア、ヒール側に形成されるヒール側エリア、クラウン側に形成されるクラウン側エリア及びソール側に形成されるソール側エリアとに区分したときに、
前記第1領域は、前記トウ側エリアと前記ヒール側エリアとに設けられ、かつ、
前記第2領域は、前記クラウン側エリアと前記ソール側エリアとに設けられる請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−27587(P2013−27587A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166448(P2011−166448)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】