説明

ゴルフクラブ

【課題】 本発明はゴルフクラブに関し、ヘッド本体のホーゼル高さをフェース高さより低くすることでヘッドの低重心化を図るに当たり、適切なウエイト配分によって安定したスイングが可能なゴルフクラブを提供することを目的とする。
【解決手段】 請求項1に係るゴルフクラブは、ヘッド本体のホーゼル部の高さをフェース部の高さより低く設定すると共に、該ホーゼル部に止着するシャフトに、ヘッド本体の比重より重い重量部材をその先端部から前記フェース部の高さより高い位置に亘って配したことを特徴とする。
そして、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のゴルフクラブに於て、前記ホーゼル部の高さより高い位置に対応するヘッド本体の重量相当分の50%以上を、前記重量部材を配した部分のシャフト重量で補うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフクラブに関し、詳しくはヘッドの低重心化を図り、併せてヘッドの重量バランスの調整により良好なスイングを可能としたゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドの低重心化を図って高い打ち出し角の打球を可能とするため、ヘッド本体のソール部の肉厚を増加したりソール部にウエイト部材を装着する等、従来、様々な構造が提案されているが、特許文献1には、ヘッド本体のホーゼル部の高さをフェース部の高さより低く設定することで、ヘッドの低重心化を図ったアイアンのゴルフクラブが開示されている。
【0003】
この従来例は、従来利用されていなかったヘッド本体のネック部内に先細の円錐台型のテーパ孔を穿設し、このテーパ孔の内壁面をシャフトとの接着面に利用することで、この接着面に見合う分だけホーゼル部の上方部分を削除し、ヘッド本体のホーゼル高さをフェース高さより低く設定したものである。
【特許文献1】特開2000−51407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、前記ゴルフクラブは、ヘッド本体のトゥ,ヒール方向の重量バランスの調整について何ら考慮がなされていないため、ヘッド本体のホーゼル高さをフェース高さより低くすることで、ヘッド本体のヒール側の質量が低下して水平方向の慣性モーメントが小さくなってしまう欠点があった。
而して、斯様にヘッド本体の水平方向の慣性モーメントが小さくなると、打点ブレに弱く飛距離がでず、また、シャフト先端域が撓り易いことも相俟って、打点ブレをした際に不快な振動が手に伝わってくる不具合があった。
【0005】
本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、ヘッド本体のホーゼル高さをフェース高さより低くすることでヘッドの低重心化を図るに当たり、適切なウエイト配分によって安定したスイングが可能なゴルフクラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯かる目的を達成するため、請求項1に係るゴルフクラブは、ヘッド本体のホーゼル部の高さをフェース部の高さより低く設定すると共に、該ホーゼル部に止着するシャフトに、ヘッド本体の比重より重い重量部材をその先端部から前記フェース部の高さより高い位置に亘って配したことを特徴とする。
そして、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のゴルフクラブに於て、前記ホーゼル部の高さより高い位置に対応するヘッド本体の重量相当分の50%以上を、前記重量部材を配した部分のシャフト重量で補うことを特徴とし、請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のゴルフクラブに於て、前記ヘッド本体のゴルフボール半径に相当する位置のトゥ,ヒール方向の全長に対し、シャフト取付前は、トゥ,ヒール方向の前記全長の中間位置よりトゥ側にスイートスポットがあり、重量部材を配した部分のシャフトをホーゼル部に止着することで、前記スイートスポットが前記全長の中間位置よりヒール側に位置することを特徴とする。
【0007】
更に、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のゴルフクラブに於て、前記重量部材の配分比率を、該重量部材を配した部分の全長の1/2より先端側に多くしたことを特徴とし、請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のゴルフクラブに於て、前記重量部材を配した部分は、樹脂含有率が体積比で40%以上、或いは合成樹脂材料またはゴム材料を用いた低弾性部材を一体的に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
各請求項に係る発明によれば、重量バランスの調整によって水平方向の慣性モーメントの低下を防止したので、打ち易く安定したスイングが可能で、打点ブレが生じても十分な飛距離が確保できる。
また、シャフトの有効長がヘッド側に長くなるため、高い打ち出し角の打球が可能になると共に、スイング中にシャフトの撓りと重量感を感じ易く、スイングのタイミングが取り易くなった。
【0009】
そして、請求項5に係る発明によれば、打点ブレ時に不快な振動が手に伝わり難くなると共に、シャフトとホーゼル部の接合部へのせん断負荷が軽減されて、シャフトからヘッドが抜ける虞が低下する利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は請求項1乃至請求項5の一実施形態に係るアイアンのゴルフクラブを示し、繊維強化樹脂または金属で形成されたシャフト1の先端にヘッド3が取り付き、シャフト1の後端側にグリップ5が取り付いてアイアンのゴルフクラブ7が形成されている。
図2はヘッド3の正面図を示し、図中、9はホーゼル部11やソール部13,フェース部15等がチタン合金やステンレス合金等で一体に鋳造されたヘッド本体で、図4に示すように打球時の慣性モーメントを大きくするため、ヘッド本体9のバック部17側には、ヘッド本体9の周辺部を残してキャビティ19が設けられており、斯かる構成によりヘッド本体9の重量が周辺部に分散されて、打球の方向性が安定するようになっている。
【0011】
而して、前記キャビティ19は、ヘッド本体9の周辺部を残して、そのフェース部15からバック部17に亘って透孔21を設け、該透孔21のフェース側開口部に設けた受け部23に、チタン合金やステンレス合金等を鍛造した薄肉な平板状のフェース部材25を係合させて形成されており、フェース部材25は、ヘッド本体9のフェース部15と面一となって、該フェース部15と共にヘッド3のフェース部(打球面)27を構成している。
【0012】
そして、図2に示すようにフェース部材25の表面に、複数の直線状のスコアライン29がヘッド3のトップ,ソール方向に揃えて設けられている。
尚、フェース部材25の取付けは、その周縁部と受け部23の周壁との接合部をレーザー溶接やろう付け、或いはカシメ等の方法を用いて行われる。
また、図2及び図4に示すようにヘッド3の低重心化を図るため、ヘッド本体9のトゥ,ヒール方向に亘ってソール部13に設けられた凹部31には、トゥ,ヒール側に厚肉部33a,33bが形成されたウエイト部材33が該ソール部13と面一に係合しており、ウエイト部材33は、タングステンやタングステン合金,鉛,銅等、ヘッド本体9より比重の大きい材料で形成され、前記厚肉部33aの重量HW1と厚肉部33bの重量HW2は、HW1≧HW2の関係に設定されている。
【0013】
そして、本実施形態は、前記ウエイト部材33によるヘッド3の低重心化に加え、更に、以下の如き構成によってヘッド3の低重心化を図り、併せてヘッド3の良好な重量バランスの調整を図ったことを特徴とする。
即ち、図2に示すようにホーゼル部11に形成されたシャフト止着孔35にシャフト1が止着されているが、図3に示すように本実施形態も、ヘッド本体9のホーゼル部11の高さh1をフェース部15の高さh2より低くして、ヘッド3の低重心化が図られている。
【0014】
しかし、ヘッド3の低重心化を図るため、単にホーゼル高さをフェース高さより低くしただけでは、特許文献1の従来例と同様、ヘッド本体のヒール側の質量が低下して水平方向の慣性モーメントが小さくなってしまう。
そこで、図3及び図5に示すように本実施形態は、先細テーパ状に形成された中空管状体からなるシャフト1内に、タングステン,鉛,銅等、ヘッド本体9の比重より大きい材料を粉状や粒子状にした高比重材料(重量部材)を含有する重量層37を、前記フェース部15の高さh2より高い位置(図3中、h1+h4)からシャフト1の先端に亘って順次肉厚に設けて、ホーゼル部11の高さh1より高い位置h3に対応するヘッド本体9の重量相当分の50%〜130%(好ましくは、70%〜120%、更に好ましくは、80〜120%または100〜120%)を、前記重量層37を設けた部分のシャフト重量で補うようにしたもので、前記重量層37を設けた部分の長さmは、シャフト先端から70〜250mm(好ましくは、150〜200mm)とされている。
【0015】
尚、図5では重量層37をシャフト1の先端まで配置しているが、必ずしも先端までなくてもよい。
そして、既述したように重量層37は、シャフト1の先端側に向け順次肉厚に形成されて、高比重材料の配分比率を、該高比重材料を配した部分の全長mの1/2より先端側に多くすると共に、重量層37を設けた部分は、樹脂含有率が体積比で40%〜80%(好ましくは50%〜70%)に設定されている。そして、ここで重量層37を設けた部分とは、図5に示すように前記重量層37とこれを囲む長さmのシャフト1の本体層39を含み、これらを併せた樹脂含有率が体積比で40%〜80%に設定されている。
【0016】
図6は前記シャフト1の製造方法を示し、従来と同様、シャフト1の本体層39は、カーボン繊維やガラス繊維等の強化繊維にエポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグシート41,43,45を巻回して形成されている。
そして、前記重量層37は、タングステンや鉛等の前記高比重材料を合成樹脂に混合した熱硬化性樹脂をガラス繊維等の強化繊維で形成した織布に含浸するか、またはフィルム状にして該織布に貼り合わせた重量層用プリプレグシート47によって形成されており、先ず、図6の芯金49に、重量層用プリプレグシート47を2枚の補強プリプレグシート51,53で包んで巻回する。
【0017】
図示するように補強プリプレグシート51,53は、重量層用プリプレグシート47に比しシャフト1の軸方向に長尺で、芯金49への巻回時に、補強プリプレグシート51,53が重量層用プリプレグシート47からの高比重材料や熱硬化性樹脂の流出を防止する。
更に、よりその効果を高めるため、これらの補強プリプレグシート51,53は、夫々、巻回数を2回以上とするのが好ましく、また、これらの樹脂含有比率は32wt%以下とし、繊維方向を軸長方向とするのが好ましい。
そして、その外周に、強化繊維55を芯金49の軸心に対して45度に交差するように貼り合わせた繊維強化プリプレグシート41を巻回し、更に、強化繊維55を軸長方向に配した繊維強化プリプレグシート43と、強化繊維55を軸長方向に配したプリプレグ57にガラス繊維59を織布状にしたプリプレグ61を貼り合わせた繊維強化プリプレグシート45を巻回して形成されている。
【0018】
このような貼り合わせた繊維強化プリプレグシート45を用いることで、振動減衰性をより高めることが可能となる。勿論、貼り合わせた繊維強化プリプレグシート45に代え、強化繊維を軸長方向に配したプリプレグシートを用いてもよい。
そして、図3に示すようにヘッド3は、ゴルフボールの半径(21.3mm)に相当する高さHのトゥ,ヒール方向の全長Lに対し、シャフト取付前は、トゥ,ヒール方向の前記全長Lの中間位置よりトゥ側にスイートスポットS1があり、前記重量層37を設けた全長mの部分のシャフトをホーゼル部11に止着することで(重量層37を設けた全長mの部分のシャフトをホーゼル部11に止着して測定する)、スイートスポットS2が前記全長Lの中間位置よりヒール側に移動するようになっている。
【0019】
尚、図3中、Pは前記全長Lに対する中心線を示す。また、周知のようにスイートスポットとは、図4に示すようにヘッド3の重心Gからフェース部27に垂線を引いて交わる点をいう。
そして、図3に示すように、重量層37を設けた全長mの部分のシャフトは、シャフト止着孔35内に挿着された部分m1の重量をm1w、その他の部位m2の重量をm2wとすると、m2w≧m1w、HW1>m1w、HW2>m2wの如く細かなウエイト調整が図られている。
【0020】
また、既述したようにウエイト部材33の厚肉部33aの重量HW1と厚肉部33bの重量HW2は、HW1≧HW2の関係に設定されているが、ウエイト部材33を上記中心線Pで左右に区分したとき、重量は、
厚肉部33a側>15gr+厚肉部33b側
または
厚肉部33a側>15〜30gr+厚肉部33b側
とする。
【0021】
つまり、シャフト1の重量層37の重量を利用することにより、厚肉部33b側の重量を少なくできる。
更に、図示しないが厚肉部33bの端部をシャフト軸心延長部よりヒール側に、更にはヒール側まで延長すると共に、シャフト1の先端を前記高さHより低い位置まで伸ばすことが、重量配分上好ましい。
【0022】
更にまた、図示しないがウエイト部材33は、ヘッド本体9のバック部17の下部にトゥ,ヒール方向へ連続して装着してもよいし、該バック部17と図示するソール部13の両部位に装着してもよい。
このように本実施形態は、
[1]ヘッド本体9のホーゼル部11の高さh1をフェース部15の高さh2より低くして、ヘッド3の低重心化を図るに当たり、
[2]シャフト1内に、高比重材料を含有する重量層37をフェース部15より高い位置からシャフト1の先端に亘って順次肉厚に設けて、ホーゼル部11の高さh1より高い位置h3に対応するヘッド本体9の重量相当分の50%〜130%を、前記重量層37を設けた部分のシャフト重量で補うと共に、
[3]重量層37をシャフト1の先端側に向け順次肉厚に形成して、高比重材料の配分比率を、該高比重材料を配した部分の全長mの1/2より先端側に多くし、
[4]シャフト取付前は、トゥ,ヒール方向の前記全長Lの中間位置よりトゥ側にスイートスポットS1があり、前記重量層37を設けた全長mの部分のシャフトをホーゼル部11に止着することで、スイートスポットS2が前記全長Lの中間位置よりヒール側に移動する等、
細かな重量バランスの調整を図ったので、特許文献1の従来例に比し、ヘッド3のヒール方向の質量が低下することがなく、実質的な水平方向の慣性モーメントが小さくなってしまうことがない。
【0023】
また、斯様にホーゼル部11の高さh1をフェース部15の高さh2より低くしてヘッド3の低重心化を図った結果、シャフト1の有効長がヘッド3側に長くなる。
更にまた、重量層37を設けた部分は、樹脂含有率が体積比で40%〜80%に設定されているため、振動減衰性が高くなる。
尚、樹脂含有率に代え、重量層37に合成樹脂材料またはゴム材料を用いた低弾性部材を一体的に形成して振動減衰性を高めてもよい。
【0024】
従って、本実施形態によれば、重量バランスの調整によって水平方向の慣性モーメントの低下を防止したので、打ち易く安定したスイングが可能で、打点ブレが生じても十分な飛距離が確保できる。
また、シャフト1の有効長がヘッド3側に長くなるため、高い打ち出し角の打球が可能になると共に、スイング中にシャフト1の撓りと重量感を感じ易く、スイングのタイミングが取り易くなった。
【0025】
そして、重量層37を設けた部分の樹脂含有率を体積比で40%〜80%に設定して振動減衰性が高まった結果、打点ブレ時に不快な振動が手に伝わり難くなると共に、シャフト1とホーゼル部11の接合部へのせん断負荷が軽減されて、シャフト1からヘッド3が抜ける虞が低下する利点を有する。
尚、上記実施形態は、アイアンのゴルフクラブに本発明を適用したが、本発明はウッドのゴルフクラブにも適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】請求項1乃至請求項5の一実施形態に係るアイアンのゴルフクラブの全体正面図である。
【図2】ヘッドの一部切欠き正面図である。
【図3】ヘッドの一部切欠き正面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】シャフトの断面図である。
【図6】シャフトの製造方法の説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 シャフト
3 ヘッド
7 ゴルフクラブ
9 ヘッド本体
11 ホーゼル部
13 ソール部
15,27 フェース部
17 バック部
19 キャビティ
21 透孔
23 受け部
25 フェース部材
33 ウエイト部材
35 シャフト止着孔
37 重量層
39 本体層
41,43,45 繊維強化プリプレグシート
47 重量層用プリプレグシート
49 芯金
51,53 補強プリプレグシート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド本体のホーゼル部の高さをフェース部の高さより低く設定すると共に、該ホーゼル部に止着するシャフトに、ヘッド本体の比重より重い重量部材をその先端部から前記フェース部の高さより高い位置に亘って配したことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項2】
前記ホーゼル部の高さより高い位置に対応するヘッド本体の重量相当分の50%以上を、前記重量部材を配した部分のシャフト重量で補うことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項3】
前記ヘッド本体のゴルフボール半径に相当する位置のトゥ,ヒール方向の全長に対し、シャフト取付前は、トゥ,ヒール方向の前記全長の中間位置よりトゥ側にスイートスポットがあり、重量部材を配した部分のシャフトをホーゼル部に止着することで、前記スイートスポットが前記全長の中間位置よりヒール側に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゴルフクラブ。
【請求項4】
前記重量部材の配分比率を、該重量部材を配した部分の全長の1/2より先端側に多くしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のゴルフクラブ。
【請求項5】
前記重量部材を配した部分は、樹脂含有率が体積比で40%以上、或いは合成樹脂材料またはゴム材料を用いた低弾性部材を一体的に形成してなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のゴルフクラブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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