説明

ゴルフヘッド

【課題】ゴルフヘッドにおいて、ヘッド本体にのみメッキを施し、ヘッド本体に付加した重量体の部分にはメッキを施したくないという場合に、前記重量体の表面にコーティング法やマスキングテープなどによる遮蔽用皮膜を形成することなくヘッド本体にのみメッキ皮膜を形成したヘッドを提供する。
【解決手段】ヘッド本体8のソール部4にはヒール側からソール部4のトウ・ヒール間の中央までの間に凹部が設けられ、該凹部11にはヘッド本体8よりも比重の大きい材料より成る重量調整部材9が絶縁性接着材12を介して、その表面がソール部4と面一に露出されるように挿入固着されていて、また、重量調整部材9の表面を除くヘッド本体8の表面全体に装飾用メッキ層10が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス鋼や軟鉄などのヘッド本体に、それ以外の異種金属を接合したゴルフヘッドのメッキ処理に際して、ヘッド本体以外へのメッキ金属の析出を防止した構造のゴルフヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴルフヘッドにおいては、鉄、ステンレス鋼、チタン合金などでヘッド本体を形成し、前記ヘッド本体に、該ヘッド本体よりも比重の大きい材料から成る重量体を付加して、慣性モーメントの増大やスィートスポットの拡大を図り、あるいはバランス調整等を図ったものがみられる。これらの重量体の構成材料としては真鍮、ステンレス鋼、タングステン合金などが用いられている。
【0003】
このようなゴルフヘッドにおいて、ヘッド本体にのみメッキを施したい、すなわち、ヘッド本体に付加した重量体の部分にはメッキを施したくないという場合がある。
前記ヘッド本体に重量体を付加する場合においては、重量体を圧入などの機械的加工方法によりヘッド本体に付加してゴルフヘッドとすると、両金属間は接触しているため、この後のメッキ加工工程で両金属間は通電し、ゴルフヘッド全体にメッキ皮膜が形成されてしまう。また、従来の接着剤による接着であっても両金属間に接触点が生じ、メッキ加工工程では両金属間は通電し、ゴルフヘッド全体にメッキ皮膜が形成される。
このような場合には、ゴルフヘッド全体に形成されたメッキ皮膜のうち、メッキを施したくない部分のメッキ皮膜を除去しなければならない。
【0004】
前記のような除去工程を経ない方法としては、メッキを施したくない部分に遮蔽用の皮膜を形成し、メッキ処理を施し、その後に遮蔽用皮膜を剥離するという工程を経るのが通常である。このような遮蔽用皮膜の形成方法としては、スピンコート、ロールコート、スプレーコートなどのコーティング法やマスキングテープなどのマスキング冶具による皮膜を形成する方法が公知である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記遮蔽用皮膜を形成する工程を経てメッキを施す場合には、その遮蔽用皮膜がコーティング法による皮膜である場合には、メッキ後の前記皮膜の除去作業に手間がかかる。
遮蔽用皮膜がシールなどである場合は、その形状にあわせシールを貼る必要がある。その表面形状が極めて小さい面積であるとか、複雑な形状である場合には前記シールを精度よく形成することが難しく、場合によっては前記重量体部表面にまでメッキがなされてしまうなどの不良が発生するという問題がある。このような場合には、電気化学的に剥離作業を行うか、サンドブラスト等の物理的除去作業をしなければならない。
前記遮蔽用皮膜が塗料やテープを使用した場合には、塗料や、テープの粘着材がメッキ浴液中に溶け出し、ヘッド本体のメッキを施したい加工面へ付着してメッキ不良の発生も起こる恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、金属製ヘッド本体にそれ以外の異種金属を接合したゴルフヘッドであって、前記ヘッド本体と前記異種金属とを絶縁接着材層を介して接合固着することで前記異種金属への通電を防止して、ヘッド本体の表面にメッキ皮膜を形成したことを特徴とするゴルフヘッドである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ヘッド本体にそれ以外の異種金属の重量体を接合固着した構成のゴルフヘッドにおいて、ヘッド本体にのみメッキ皮膜を形成し、異種金属よりなる重量体の表面上にはメッキ皮膜を施したくないとき、前記重量体の表面にコーティング法やマスキングテープなどによる遮蔽用皮膜を形成することなくヘッド本体にのみメッキ皮膜を形成できる。
また、メッキ処理中に、遮蔽用皮膜の成分がメッキ浴液中に溶出することもないので、メッキ浴を汚したり、遮蔽用皮膜の成分がヘッド本体のメッキ加工面へ付着してメッキ不良品となることを防止することが可能であり、ゴルフヘッドの製造上の精度が向上し、工程も省略できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明をアイアンタイプのゴルフヘッドを例に説明する。
図1〜2に示すように、アイアンタイプのゴルフヘッド1は、ボールを打撃するフェース部2、このフェース部2の後側に配置されたバック部3、このフェース部2とバック部3をこのヘッドの下部で繋ぐように形成されたソール部4、そして、一側のトウ5、他側のヒール6、およびこのヒール側にネックを介して設けられ、図示はしないシャフトを受け入れるホーゼル部7とを有している。
【0009】
このゴルフヘッド1のソール部4にはヒール側からソール部4のトウ・ヒール間の中央までの間にヘッド本体8よりも比重の大きい材料より成る重量調整部材9が配設されている。このソール部4に配設された重量調整部材9は、フェース部2のトウ5側でボールを打撃したときにヘッドが略垂直線の回りにねじれようとすることに対して抵抗力を付与する。
【0010】
このゴルフヘッド1の素地であるヘッド本体8は、ステンレス鋼、軟鉄のような、ゴルフヘッドに適切な金属で鋳造または鍛造により形成されるのが好ましい。
また、この重量調整部材を構成する材料としては、前記ヘッド本体よりも比重の大きい材料であればよく、その種類は、重量調整部材に設定された体積、調整したい重さなどにより選ばれる。
【0011】
この重量調整部材9は、図3に示すようにソール部4に形成された重量調整部材9を受け入れるために形成された凹部11に収容されている。この凹部11は、ソール部4の所定の範囲で所定の深さとなるよう穿設されている。そして、予め定められた容量を持つ重量調整部材9は、この凹部11に設置され、絶縁性の接着剤によりヘッドとは非接触となるよう固められている。
重量調整部材9は予め定められた同じ体積となるよう形成されているが、異なる密度を有する材料により異なる重さの重量調整部材の複数の中から選択されて固着されている。
【0012】
図4に示すように、重量調整部材9は凹部11に挿入され、その表面がソール部4と面一に露出されるように挿入され固定されている。このとき、重量調整部材9の側面には絶縁性接着材12がつけられる。絶縁性接着材12は、重量調整部材9と凹部11の壁面とを一定の距離をもって離間させて固定させ、かつ、両者を強固に固定するものである。
前記重量調整部材9と凹部11の内壁の間には、重量調整部材9の側面、底面が凹部11内壁面と接触しない適度な間隙が設定されている。この間隙は、後工程であるヘッドのメッキ工程でヘッドに電通させたときに、ヘッドと重量調整部材9間で電子の授受がないようにする必要がある。この間隙は、0.1mm〜0.2mm程度とするのが好ましい。そして、この間隙を絶縁性接着材12で満たすことでヘッド本体8と重量調整部材を非接触の状態で固着している。
【0013】
絶縁性接着材12としては、樹脂成分と充填材を基材とする接着材、前記樹脂接着剤と不織布やゴムシートを併用して用いることができる。
樹脂成分としては、金属などの接合に使用される例えば、エポキシ系、塩化ビニル系、ウレタン系の接着剤に使用される樹脂が用いられる。
【0014】
充填材としては、平均粒径が80〜180μmの無機物または有機物もしくはそれらの混合物を、接着材全量を100体積%としたとき5〜15体積%の範囲で添加するのが好ましい。充填材の粒径や添加量は、設定された間隙の大きさや樹脂成分の粘度に応じて選択する。充填材の粒径が80μm以下であるとヘッドの凹部内壁と重量調整部材の壁面とが接触しやすくなるので好ましくない。180μmを超えると凹部内壁と重量調整部材の間隙が大きすぎて接着材による接合強度を保持することが難しくなるため好ましくない。
また、充填材の配合比率が5体積%未満であると、凹部内壁と重量調整部材の壁面との間隙を接着面全体に均等に保持できないため好ましくない。また、15体積%以上であると接着面での接着強度が低下するため好ましくない。
充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ、ガラスビーズ、ガラスバルーンなどの中空体、発泡体などが用いられる。
そのほか、不織布に前記樹脂接着剤を含浸したり、ゴムシートに孔を明けるなどして樹脂接着剤を付着し易くして絶縁性接着材12として用いることも出来る。
【0015】
本実施例のゴルフヘッド1には、重量調整部材9のソール面に表出する面を除くヘッド本体8の表面全体に装飾用メッキ層10が形成されている。このメッキ層10を形成するには、前記のようにしてヘッド本体8に重量調整部材9を接着固定した後に、通常のメッキ浴に浸漬してメッキ処理を施す。このメッキ層10は、ヘッド本体8の表面に形成されたニッケルメッキから成る下地メッキ層と、この下地メッキ層の上に形成された上地メッキ層とからなっている。下地メッキ層の厚さは約20μm程度となっている。また上地メッキ層としては、クロームメッキ、ボロンメッキあるいは錫メッキなどを用いることができる。上地メッキ層の厚さは強度やコストなどから2〜5μm程度が好ましい。なお、メッキ層の構成及び材料は前記のものには限らない。また、メッキの方法としては、例えば電気メッキを採用できるが、これに限るものではない。
このメッキ処理後のゴルフヘッドは、重量調整部材9の表面を除くヘッド本体8の表面がメッキ層10にて被覆されていた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例であるアイアンヘッドの全体の正面図である。
【図2】本発明の実施例であるアイアンヘッドの底面図である。
【図3】本発明の実施例であるアイアンヘッドの断面図である。
【図4】本発明の実施例であるアイアンヘッドの断面拡大説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 ゴルフヘッド
2 フェース部
3 バック部
4 ソール部
5 トウ
6 ヒール
7 ホーゼル部
8 ヘッド本体
9 重量調整部材
10 メッキ層
11凹部
12接着材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製ヘッド本体にそれ以外の異種金属を接合したゴルフヘッドであって、前記ヘッド本体と前記異種金属とを絶縁接着材層を介して接合固着することで前記異種金属への通電を防止して、ヘッド本体の表面にメッキ皮膜を形成したことを特徴とするゴルフヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−231318(P2007−231318A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51683(P2006−51683)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(302019599)ミズノ テクニクス株式会社 (47)
【Fターム(参考)】