説明

サイドウォール用ゴム組成物およびその製造方法、ならびに空気入りタイヤ

【課題】石油外資源からなる材料の含有比率をより高くすることにより、省資源および環境保護への配慮が十分なされているとともに、優れた耐久性および耐亀裂成長性を有するサイドウォール用ゴム組成物、および、当該ゴム組成物からなるサイドウォールゴムを備える空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】30〜70質量%の天然ゴムおよび70〜30質量%のエポキシ化天然ゴムからなる第1のゴム成分100質量部に対して、シリカを20〜60質量部と、液状ゴムからなる第2のゴム成分を3〜60質量部含有するサイドウォール用ゴム組成物およびその製造方法、ならびに当該ゴム組成物からなるサイドウォールゴムを備える空気入りタイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに用いられるゴム組成物およびその製造方法に関し、より詳しくは、空気入りタイヤのサイドウォール用ゴム組成物およびその製造方法に関する。また、本発明は、当該ゴム組成物からなるサイドウォールゴムを備える空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤのサイドウォール用ゴム組成物には、天然ゴム(NR)に加えて、亀裂成長性を改善する目的で、ポリブタジエンゴムをブレンドし、さらに、耐侯性および補強性を満足させるために、カーボンブラックが配合されてきた。しかし、ポリブタジエンゴム等の高不飽和ゴムは、その二重結合部分がオゾンと反応して解重合する性質を有するため、放置または走行により、ゴム表面にクラックが発生するという問題を有している。クラック発生を抑制するために、老化防止剤などの耐クラック性改良剤を増量する手法が知られているが、ブルームを引き起こし、タイヤ表面が赤褐色に変色するため、タイヤの美観を損ねる。
【0003】
ポリブタジエンの代わりに、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)やブロモ化スチレンイソブチレン共重合体(BIMS)を用いることにより、タイヤの耐久性や耐クラック性を向上させることが可能であるが、これらのゴムは耐久性に優れる反面、耐亀裂成長性に問題がある。また、上記ポリブタジエンゴム等の合成ゴムおよびカーボンブラックはいずれも石油資源由来の材料である。
【0004】
近年、環境問題が重視されるようになり、二酸化炭素の排出量の規制が強化されている。また、石油現存量は有限であることから、石油資源由来の原材料の使用には限界がある。このような環境重視指向は、タイヤの分野においても例外ではなく、現在使用されている石油資源由来の原材料の一部または全てを石油外資源由来の原材料で代替したサイドウォール用ゴム組成物の開発が求められている。
【0005】
たとえば特許文献1には、カーボンブラックの代替原料として石油外資源であるシリカ等を用いたエコタイヤが開示されている。しかし、サイドウォール用ゴム組成物における耐久性および耐亀裂成長性については考慮されていない。また、特許文献2には、カルボキシル基を有する液状ポリイソプレンおよび/またはカルボキシル基を有する液状ポリブタジエンを含有するタイヤトレッドゴム組成物が開示されている。しかし、当該ゴム組成物は、サイドウォール用ではなく、耐久性および耐亀裂成長性についても考慮されていない。
【特許文献1】特開2003−63206号公報
【特許文献2】特開平7−118445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、石油外資源からなる材料の含有比率をより高くすることにより、省資源および環境保護への配慮が十分なされているとともに、優れた耐久性および耐亀裂成長性を有するサイドウォール用ゴム組成物、および、当該ゴム組成物からなるサイドウォールゴムを備える空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、30〜70質量%の天然ゴムおよび70〜30質量%のエポキシ化天然ゴムからなる第1のゴム成分100質量部に対して、シリカを20〜60質量部と、液状ゴムからなる第2のゴム成分を3〜60質量部含有するサイドウォール用ゴム組成物である。ここで、上記液状ゴムは、イソプレン単独重合体またはイソプレン共重合体からなるか、あるいはイソプレン単独重合体またはイソプレン共重合体の水素添加物からなることが好ましい。また、上記液状ゴムは、液状天然ゴムであってもよい。
【0008】
また、本発明は、上記いずれかに記載のサイドウォール用ゴム組成物の製造方法であって、少なくとも天然ゴムおよびシリカを混練する第1混合工程と、第1混合工程により得られた混練物と、エポキシ化天然ゴムとを混合する第2混合工程と、を含むサイドウォール用ゴム組成物の製造方法を提供する。
【0009】
上記第2混合工程において、上記第1混合工程により得られた混練物と、エポキシ化天然ゴムおよび液状ゴムからなる混練物とが混合されることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明は、上記ゴム組成物からなるサイドウォールゴムを備える空気入りタイヤを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、石油外資源からなる材料の含有比率をより高くすることにより、省資源および環境保護への配慮が十分なされているとともに、優れた耐久性および耐亀裂成長性を有するサイドウォール用ゴム組成物、および、当該ゴム組成物からなるサイドウォールゴムを備える空気入りタイヤが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物は、30〜70質量%の天然ゴムおよび70〜30質量%のエポキシ化天然ゴムからなる第1のゴム成分100質量部に対して、シリカを20〜60質量部と、液状ゴムからなる第2のゴム成分を3〜60質量部含有することを特徴とする。以下、各成分について詳細に説明する。
【0013】
<第1のゴム成分>
第1のゴム成分は、30〜70質量%の天然ゴム(NR)および70〜30質量%のエポキシ化天然ゴム(ENR)から構成される。
【0014】
天然ゴム(NR)としては、ゴム工業において従来用いられているものを使用することができ、たとえば、KR7、TSR20などのグレードの天然ゴムを挙げることができる。
【0015】
第1のゴム成分中におけるNRの含有率は、30〜70質量%である。NRの含有率が30質量%未満である場合には、目標性能に達しない傾向にある。また、NRの含有率が70質量%を超える場合には、低燃費特性が悪化する傾向にある。NRの含有率は、好ましくは40〜60質量%である。
【0016】
エポキシ化天然ゴム(ENR)は、天然ゴム(NR)の不飽和二重結合がエポキシ化されたものであり、極性基であるエポキシ基により分子凝集力が増大する。そのため、天然ゴムよりもガラス転移温度(Tg)が高く、かつ機械的強度や耐磨耗性、耐空気透過性に優れる。特に、ゴム組成物中にシリカを配合した場合においては、シリカ表面のシラノール基とエポキシ化天然ゴムのエポキシ基との反応に起因して、カーボンブラックをゴム組成物中に配合する場合と同程度の機械的強度や耐磨耗性を得ることができる。
【0017】
エポキシ化天然ゴム(ENR)としては、市販のものを用いてもよいし、天然ゴム(NR)をエポキシ化したものを用いてもよい。NRをエポキシ化する方法としては、特に限定されるものではなく、たとえばクロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などを挙げることができる。過酸法としては、たとえば天然ゴムに過酢酸や過蟻酸などの有機過酸を反応させる方法を挙げることができる。
【0018】
エポキシ化天然ゴム(ENR)のエポキシ化率は、特に制限されないが、10モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、エポキシ化天然ゴム(ENR)のエポキシ化率は、80モル%以下が好ましい。ENRのエポキシ化率が80モル%を超える場合、分子鎖の切断が起こり、かかる高エポキシ化率のENRは調製が困難であり、ゴムの低分子化を避けることができない。なお、エポキシ化天然ゴム(ENR)のエポキシ化率とは、(エポキシ化された二重結合の数)/(エポキシ化前の二重結合の数)を意味する。具体的には、エポキシ化率25モル%のENR(ENR25)やエポキシ化率50モル%のENR(ENR50)などを好適に用いることができる。
【0019】
本発明において、ENRは1種のみを用いてもよく、エポキシ化率の異なる2種以上のENRを用いてもよい。
【0020】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物は、第2のゴム成分として液状ゴムを含有する。液状ゴムの添加により、優れた耐亀裂成長性を付与することができるとともに、耐熱性、耐オゾン性、耐クラック性等の耐久性を向上させることができる。液状ゴムとしては、特に制限されるものではないが、たとえば、イソプレンの単独重合体(たとえば、クラレ社製LIR−30、LIR−50)、ポリブタジエン(たとえば、クラレ社製LIR−300)、イソプレンの共重合体(たとえば、クラレ社製LIR−310、LIR−390)、イソプレンの単独重合体または共重合体の水素添加物(たとえば、クラレ社製LIR−200、LIR−290)、カルボキシル基等の官能基を有するイソプレンの単独重合体または共重合体(たとえば、クラレ社製LIR−403、LIR−410)、およびラテックスタイプのイソプレン重合体(たとえば、クラレ社製LIR−700)などを挙げることができる。液状ゴムの数平均分子量は、特に制限されるものではないが、20,000〜80,000程度であることが好ましい。
【0021】
また、液状ゴムは、液状天然ゴムであってもよい。液状天然ゴムは、天然ゴム(NR)を、従来公知の方法を用いて解重合することにより得ることができる。具体的には、天然ゴム(NR)を、オートクレーブ等を用い、高圧、高温条件下で解重合させることにより、液状天然ゴムを得ることができる。
【0022】
イソプレンの単独重合体または共重合体の水素添加物を用いると、ゴム成分全体としての二重結合数が減少するため、耐オゾン性をさらに向上させることができる。
【0023】
第2のゴム成分の添加量は、第1のゴム成分100質量部に対して、3〜60質量部である。第2のゴム成分の添加量が3質量部未満である場合には、耐久性および耐亀裂成長性の改善が不十分である。また、第2のゴム成分の添加量が60質量部を超える場合には、物性が低下する傾向にある。第2のゴム成分の添加量は、好ましくは第1のゴム成分100質量部に対して、10〜30質量部である。
【0024】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物は、上記したゴム成分のほかに、たとえば、その他の変性天然ゴム(たとえば、脱蛋白天然ゴム)、ジエン系合成ゴムなどのその他のゴム成分を含んでもよい。ジエン系合成ゴムとしては、たとえば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレン共重合体ゴム、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、イソブチレンとp−メチルスチレンとの共重合体のハロゲン化物などを挙げることができる。なかでも、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)を好適に用いることができる。
【0025】
ただし、省資源および環境保護を考慮し、石油外資源の含有率を高めるという観点からは、ジエン系合成ゴムを含まないことがより好ましい。
【0026】
<シリカ>
本発明のサイドウォール用ゴム組成物はシリカを含有する。シリカは、補強用充填剤として機能するものであり、シリカを配合することにより、得られるサイドウォールゴムの物性を向上させることができる。
【0027】
シリカとしては、湿式法により調製されたものであってもよく、乾式法により調製されたものであってもよい。
【0028】
シリカのBET比表面積は、80m2/g以上が好ましく、150m2/g以上がより好ましい。シリカのBET比表面積が80m2/g未満では、物性向上は望めない傾向にある。具体的には、デグッサ製のウルトラジルVN2(BET比表面積:125m2/g)やウルトラジルVN3(BET比表面積:210m2/g)などを好適に用いることができる。
【0029】
シリカの含有量は、第1のゴム成分100質量部に対して、20質量部以上である。シリカの含有量が20質量部未満では、補強効果が期待できない。また、シリカの含有量は、第1のゴム成分100質量部に対して、60質量部以下である。シリカの含有量が60質量部を超えると、分散性が低下する傾向にある。シリカの含有量は、第1のゴム成分100質量部に対して、90質量部以下がより好ましい。
【0030】
<シランカップリング剤>
本発明のサイドウォール用ゴム組成物には、シリカとともに、シランカップリング剤を配合することが好ましい。シランカップリング剤としては、従来公知のシランカップリング剤を用いることができ、たとえば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系;γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系;3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系;3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系;などを挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上記のなかでも、加工性が良好であるという理由から、デグッサ社製Si69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)、Si266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)などが好ましく用いられる。
【0032】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。含有量0.5質量部未満では、ゴムの補強効果が十分に向上しない傾向にある。また、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。20質量部を超える場合、ゴムの粘性が著しく低下し、ゴムの加工性に悪影響を及ぼす傾向にある。
【0033】
<カーボンブラック>
本発明のサイドウォール用ゴム組成物は、カーボンブラックを含んでもよい。カーボンブラックのBET比表面積は、30m2/g以上が好ましく、50m2/g以上がより好ましい。カーボンブラックのBET比表面積が30m2/g未満では、物性が十分でない傾向にある。
【0034】
カーボンブラックのDBP(ジブチルフタレート)吸油量は、30〜100ml/100gであることが好ましく、50〜80ml/100gであることがより好ましい。
【0035】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、その含有量は、第1のゴム成分100質量部に対して100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましい。カーボンブラックの添加により、ゴム強度およびゴム硬度の改善を図ることが可能である。ただし、省資源および環境保護の観点からは、カーボンブラックを含有しないことが好ましい。
【0036】
<その他の配合剤>
本発明のサイドウォール用ゴム組成物には、上記した成分以外にも、他の添加剤、たとえば加硫剤、加硫促進剤、ステアリン酸、オイル、ワックス、老化防止剤、亜鉛華などを含有してもよい。
【0037】
加硫剤としては、有機過酸化物もしくは硫黄系加硫剤を使用することが可能であり、有機過酸化物としては、たとえば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3あるいは1,3−ビス(t−ブチルパーオキシプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシロキサン、n−ブチル−4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレレートなどを使用することができる。これらの中で、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼンおよびジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼンが好ましい。また、硫黄系加硫剤としては、たとえば、硫黄、モルホリンジスルフィドなどを使用することができる。これらの中では硫黄が好ましい。これらの加硫剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、もしくは、キサンテート系加硫促進剤のうち少なくとも一つを含有するものを使用することが可能である。スルフェンアミド系としては、たとえばCBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系化合物などを使用することができる。チアゾール系としては、たとえばMBT(2−メルカプトベンゾチアゾール)、MBTS(ジベンゾチアジルジスルフィド)、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、亜鉛塩、銅塩、シクロヘキシルアミン塩、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール系化合物などを使用することができる。チウラム系としては、たとえばTMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラム系化合物を使用することができる。チオウレア系としては、たとえばチアカルバミド、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジオルトトリルチオ尿素などのチオ尿素化合物などを使用することができる。グアニジン系としては、たとえばジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、トリフェニルグアニジン、オルトトリルビグアニド、ジフェニルグアニジンフタレートなどのグアニジン系化合物を使用することができる。ジチオカルバミン酸系としては、たとえばエチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジアミルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛とピペリジンの錯塩、ヘキサデシル(またはオクタデシル)イソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジアミルジチオカルバミン酸カドミウムなどのジチオカルバミン酸系化合物などを使用することができる。アルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系としては、たとえばアセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒド−アンモニア反応物などのアルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系化合物などを使用することができる。イミダゾリン系としては、たとえば2−メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系化合物などを使用することができる。キサンテート系としては、たとえばジブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサンテート系化合物などを使用することができる。これらの加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
老化防止剤としては、アミン系、フェノール系、イミダゾール系、カルバミン酸金属塩などを適宜選択して使用することができる。
【0040】
オイルとしては、たとえばプロセスオイル、植物油脂、およびそれらの混合物などを用いることができる。プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどを挙げることができる。また、植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、サフラワー油、桐油などを挙げることができる。
【0041】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物の調製方法としては、次の工程を含むものであることが好ましい。
(1)少なくとも天然ゴム(NR)およびシリカを混練する第1混合工程、および、
(2)第1混合工程により得られた混練物と、エポキシ化天然ゴム(ENR)とを混合する第2混合工程。
【0042】
上記第1混合工程においては、天然ゴム(NR)およびシリカとともに、上記したその他の添加剤を添加することができる。ただし、加硫剤および加硫促進剤については、第2混合工程の後(第3混合工程)に添加することが好ましい。
【0043】
上記第2混合工程においては、あらかじめエポキシ化天然ゴム(ENR)と液状ゴムとを混合して得られた混練物と、第1混合工程で得られた混練物と混合することが好ましい。このような添加手法によれば、天然ゴム(NR)からなる海相に、エポキシ化天然ゴム(ENR)および液状ゴムからなる島相が分散した状態のゴム組成物が得られるが、これにより、耐屈曲亀裂成長性および引き裂き強度(耐クラック性)の向上を図ることが可能になる。
【0044】
本発明の空気入りタイヤは、上記本発明のサイドウォール用ゴム組成物からなるサイドウォールゴムを備える空気入りタイヤである。以下、図1を参照して本発明の空気入りタイヤを説明する。図1は、本発明に係る空気入りタイヤを例示したものである。空気入りタイヤ1は、キャップトレッド部とベーストレッド部とを備えるトレッド部2と、そのトレッド部2の両端からタイヤ半径方向内方に延びる一対のサイドウォール部3と、各サイドウォール部3の内方端に位置するビード部4とを備える構造を有するのが一般的である。そして、それらのビード部4間にはカーカス6が架け渡されるとともに、このカーカス6の外側かつトレッド部2の内側にはタガ効果を有してトレッド部2を補強するベルト層7が配される。
【0045】
上記カーカス6は、カーカスコードをタイヤ赤道COに対して、たとえば70〜90°の角度で配列する1枚以上のカーカスプライ6aから形成され、このカーカスプライ6aは、上記トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5の廻りをタイヤ軸方向の内側から外側に折返されて係止される。
【0046】
上記ベルト層7は、ベルトコードをタイヤ赤道COに対して、たとえば40°以下の角度で配列した2枚以上のベルトプライ7aからなり、各ベルトコードがプライ間で交差するよう向きを違えて重置している。
【0047】
またビード部4には、上記ビードコア5から半径方向外方に延びるビードエイペックスゴム8が配されるとともに、カーカス6の内側には、タイヤ内腔面をなすインナーライナゴム9が隣設され、カーカス6の外側は、クリンチゴム4Gおよびサイドウォールゴム3Gで保護される。
【0048】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物は、上記サイドウォールゴム3Gに使用されるものである。
【0049】
本発明の空気入りタイヤは、上記本発明のサイドウォール用ゴム組成物を用いて、従来公知の方法により製造される。すなわち、上記構成のサイドウォール用ゴム組成物を混練りし、未加硫の段階でタイヤのサイドウォール部の形状に合わせて押出し加工し、タイヤの他の部材とともに、タイヤ成形機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本発明の空気入りタイヤを得ることができる。
【0050】
かかる本発明の空気入りタイヤは、サイドウォールゴムに、石油外資源からなる材料の含有比率がより高く、省資源および環境保護への配慮が十分なされているとともに、耐久性(耐熱性、耐クラック性、耐オゾン性等)および耐亀裂成長性に優れるゴム組成物が使用されているため、地球環境に優しい「エコタイヤ」として、たとえば乗用車などに好適に使用することができる。
【0051】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
<実施例1〜10>
表1に示す配合処方に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、第1混合工程に示す配合成分を、充填率が58%になるように充填し、回転数80rpmで140℃に到達するまで3分間混練し、混練物1を得た。次に、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、第2混合工程に示す配合成分を、充填率が58%になるように充填し、回転数80rpmで120℃に到達するまで5分間混練し、混練物2を得た。ついで、上記混練物1と混練物2とを、ロールを用いて混練した後(第2混合工程)、さらに加硫剤(硫黄)および加硫促進剤を、8インチロールを用いて、50℃の条件下で混合した(第3混合工程)。次に、当該未加硫ゴム組成物を160℃で、20分間加硫することにより、実施例1〜10の加硫ゴムシートを作製した。
【0053】
<比較例1>
表1に示す配合処方に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、第1混合工程に示す配合成分を、充填率が58%になるように充填し、回転数80rpmで140℃に到達するまで3分間混練し、混練物1を得た。ついで、加硫剤(硫黄)および加硫促進剤を、8インチロールを用いて、40℃、30rpmの条件下で混合した(第3混合工程。比較例1は第2混合工程を有しない。)後、当該未加硫ゴム組成物を160℃で、20分間加硫することにより、比較例1の加硫ゴムシートを作製した。
【0054】
【表1】

【0055】
上記実施例および比較例で使用した各種配合成分の詳細は以下のとおりである。
(1)天然ゴム(NR):TSR20
(2)エポキシ化天然ゴム(ENR25):クンプーランガスリー社製の「ENR25」(エポキシ化率25モル%)
(3)エポキシ化天然ゴム(ENR50):クンプーランガスリー社製の「ENR50」(エポキシ化率50モル%)
(4)シリカ:デグッサ社製の「ウルトラジルVN3」(BET比表面積:175m2/g)
(5)シランカップリング剤:デグッサ社製の「Si69」(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
(6)老化防止剤:大内新興化学工業(株)製の「ノクラック6C」(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
(7)ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸「椿」
(8)亜鉛華:三井金属鉱業(株)製の「亜鉛華1号」
(9)硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
(10)加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製の「ノクセラーCZ」(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
(11)PX300N:ヤスハラケミカル社製の「PX300N」(テルペン系炭化水素樹脂 100%(C1016n、数平均分子量50,000)
(12)LIR:クラレ社製の「LIR−250」(液状ポリイソプレンゴム、数平均分子量50,000)
(13)LNR:クラレ社製の液状天然ゴム
(14)H−LIR:クラレ社製の「LIR−290」(液状ポリイソプレンゴムの水素添加物、数平均分子量40,000)
(15)H−LNR:次のようにして調製した液状天然ゴムの水素添加物である。まず、天然ゴム(KR7)1kgを2N NaOH 1kg中に入れ、オートクレーブ中(95℃、3h、2MPa)で圧力処理することにより液状NRを得た。得られた液状NR 1kgとPdCl2 20gとを、トルエン 2kgに溶解させた後、再度オートクレーブ中で80℃、24h、水素圧力5MPaの条件下で処理することによりH−LNRを得た。
【0056】
実施例1〜10および比較例1の加硫ゴムシートについて、下記に示す試験を実施した。結果を表1に示す。
【0057】
(硬度)
JIS−K6253の「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に準じて、スプリング式タイプAにて硬度を測定した。
【0058】
(引き裂き試験)
JIS−K6252の「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−引き裂き強さの求め方」に準じて、切り込み無しのアングル形試験片を使用して、引き裂き強さ(N/mm)を測定した。引き裂き強度が大きいほど、耐クラック性に優れることを示す。
【0059】
(耐屈曲亀裂成長試験)
JIS−K6260の「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムのデマッチャ屈曲亀裂成長試験方法」に準じて、室温25℃の条件下で、加硫ゴムシートに1mmの破断が生じるまでの回数を測定し、得られた回数を対数で表わした。数値が大きいほど、耐屈曲亀裂性能に優れることを示す。表1における70%、110%とは、もとの加硫ゴムシートの長さに対する伸び率を示す。
【0060】
(耐オゾン性試験)
JIS−K6259「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−耐オゾン性の求め方」に準じて、往復運動の周波数0.5±0.025Hz、オゾン濃度50±5pphm、40℃、48時間の条件下、耐オゾン性を評価した。表1において、Aは、亀裂をほとんど有しないことを示し、Bは、亀裂数が多い、Cは亀裂数がかなり多いことを示す。
【0061】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の空気入りタイヤの一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 タイヤ、2 トレッド部、2a キャップトレッド部、2b ベーストレッド部、3 サイドウォール部、4 ビード部、5 ビードコア、6 カーカス、7 ベルト層、8 ビードエイペックスゴム、9 インナーライナーゴム、4G クリンチゴム、3G サイドウォールゴム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
30〜70質量%の天然ゴムおよび70〜30質量%のエポキシ化天然ゴムからなる第1のゴム成分100質量部に対して、シリカを20〜60質量部と、液状ゴムからなる第2のゴム成分を3〜60質量部含有するサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項2】
前記液状ゴムは、イソプレン単独重合体またはイソプレン共重合体からなる請求項1に記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項3】
前記液状ゴムは、液状天然ゴムである請求項2に記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項4】
前記液状ゴムは、イソプレン単独重合体またはイソプレン共重合体の水素添加物からなる請求項1に記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のサイドウォール用ゴム組成物の製造方法であって、
少なくとも天然ゴムおよびシリカを混練する第1混合工程と、
前記第1混合工程により得られた混練物と、エポキシ化天然ゴムとを混合する第2混合工程と、
を含むサイドウォール用ゴム組成物の製造方法。
【請求項6】
前記第2混合工程において、前記第1混合工程により得られた混練物と、エポキシ化天然ゴムおよび液状ゴムからなる混練物とが混合される請求項5に記載のサイドウォール用ゴム組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物からなるサイドウォールゴムを備える空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2009−13190(P2009−13190A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173132(P2007−173132)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】