説明

サイフォン排水システム

【課題】流体輸送具を適切に使用してサイフォン開始時間を早めることの可能なサイフォン排水システムを提供する。
【解決手段】サイフォン排水システム10は、床スラブに沿って無勾配で配管される横引き管20と、横引き管20よりも下流側に配置され、排水を流下させることによりサイフォン力を発生させる竪管22とを備えている。竪管22よりも上流側の上流側配管には、上流側配管へ圧縮気体を送る圧縮気体供給具が連結されている。圧縮気体供給具は、上流側配管との連結部よりも上側から圧縮空気を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水システム、特にサイフォン力を用いて排水を行う、サイフォン排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の勾配排水システムに代わって、サイフォン排水システムが提案されている。サイフォン排水システムは、特許文献1、2に記載されるように、水廻り器具とサイフォン排水管を含んで構成されており、サイフォン排水管は、床スラブに沿って無勾配で配管された横引き管、及び、垂下部をなす竪管で構成されている。そして、サイフォン排水システムでは、竪管にて発生するサイフォン力(負圧力)を利用して、水廻り器具からの排水効率の向上が図られている。
【0003】
このサイフォン排水システムにおいては、水廻り器具から排出された排水はサイフォン排水管に流入し、サイフォン排水管の水平部をなす横引き管及びサイフォン排水管の垂下部をなす竪管を満たす。サイフォン排水管の竪管が排水で満たされると、竪管内の排水は重力により落下し、竪管における水頭差に対応する吸引力、即ちサイフォン力が発生するため、このサイフォン力により横引き管内の排水が下流へ向かって吸引され流下する。
【0004】
このようなサイフォン排水システムにおいては、サイフォン開始時間が重要な管理項目である。サイフォン開始時間とは、水廻り器具からの排水開始からサイフォン力が発生するまでのタイムラグのことである。そのタイムラグの間に水廻り器具から排出される水は、トラップ内、配管内に貯留された状態になる。したがって、サイフォン開始時間が遅いと、サイフォン開始前に水廻り器具側に水が溢れたり、滞留することになる。サイフォン排水システムの設計を行うにあたっては、サイフォン開始時間をできるだけ早くしたいという要請がある。
【0005】
一方、サイフォン排水システムに限らず、排水設備において、排水配管内の排水を下流へ向かって流すために、ポンプが用いられる場合がある。例えば、特許文献3に開示されている技術では、排水貯留槽内の貯留水を排水ポンプで吸引し、排水管内を流れる排水の先端がサイフォン力を発生させる位置まで到達すると、ポンプを停止させてサイフォン力を用いて排水を行っている。
【0006】
しかしながら、引用文献3の技術では、ポンプ内を液体が通過することが必須であるため、排水によってポンプが汚れたり、ポンプが詰まったり、固形物が流入してダメージを与えたり、液体のポンプへの流入によりポンプの負荷が大きくなったりして、ポンプの寿命を短くしてしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−297447号公報
【特許文献2】特開2003−201727号公報
【特許文献3】特開平11−61922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、サイフォン排水システムにおいて、サイフォン開始時間を早めるために、サイフォン力発生に必要な吸引力をポンプ等の流体輸送具を用いて得ることが考えられる。しかしながら、単にポンプを使用するのでは、前述のように、ポンプが汚れ、ポンプの故障、損傷などが発生しやすくなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事実を考慮して成されたものであり、流体輸送具を適切に使用してサイフォン開始時間を早めることの可能なサイフォン排水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係るサイフォン排水システムは、床スラブに沿って無勾配で配管される横引き管と、前記横引き管よりも下流側に配置され、排水を流下させることによりサイフォン力を発生させる竪管と、前記竪管よりも上流側の上流側配管に連結部で連結され、前記上流側配管の外から前記上流側配管へ圧縮気体を送る圧縮気体供給具と、を備えている。
【0011】
上記構成のサイフォン排水システムでは、圧縮気体供給具からの圧縮気体が上流側配管へ送られる。ここで、上流側配管は、水廻り器具から竪管までの間に配設される配管であり、横引き管や、排水を貯留する貯留槽を含むものである。上流側配管へ送られた圧縮空気は、上流側配管内を流れる排水に対して圧力を加える。この圧力は、横引き管、竪管内で下流へ向かって排水を移動させ、竪管において、排水を下側へ向かって押し込む。これにより、サイフォン力が起動する。
【0012】
本発明によれば、圧縮気体供給具からの圧縮空気により、積極的にサイフォン力を発生させるので、圧縮気体供給具を用いない場合と比較して、サイフォン開始時間を早めることができる。また、圧縮気体供給具は、前記上流側配管の外から連結部を経て上流側配管へ圧縮気体を送るので、器具内への排水の流入を必要とせず、圧縮気体供給具が排水によって汚れることがなく、圧縮気体供給具の故障、損傷を抑制することができる。
【0013】
本発明の請求項2に係るサイフォン排水システムは、前記圧縮気体供給具は、前記連結部から上方へ延びる連結管を介して前記上流側配管に連結されていることを特徴とする。
【0014】
このように、連結管を介して圧縮気体供給具を連結することにより、圧縮気体供給具への排水の流入をより確実に防止して、連結部よりも上方から圧縮気体を供給することができる。
【0015】
本発明の請求項3に係るサイフォン排水システムは、前記上流側配管の前記連結部よりも上流側には、流体の下流側から上流側への逆流を阻止する逆止機構が設けられていること、を特徴とする。
【0016】
このように、逆止機構を設けることにより、圧縮気体供給具から上流側配管へ送られた圧縮空気が逆止機構よりも上流へ逆流することが阻止され、効率的にサイフォン力を発生させることができる。また、水廻り器具(排水トラップ)が設けられている場合には、水廻り器具からの排水の吹き出しを防止することができる。
【0017】
本発明の請求項4に係るサイフォン排水システムは、前記圧縮気体供給具は、前記上流側配管への排水の流入開始タイミングに対応して前記上流側配管への圧縮気体の供給を開始し、所定のサイフォン開始タイミングに対応して前記上流側配管への圧縮気体の供給を停止すること、を特徴とする。
【0018】
このように、上流側配管への排水の流入とサイフォン開始のタイミングに対応させて、圧縮気体の供給の開始を行うことにより、サイフォン力を発生させるための適切なタイミングで圧縮空気の供給を行うことができ、より効率的にサイフォン力を発生させることができる。また、サイフォン開始のタイミングに対応させて、圧縮気体の供給の停止を行うことにより、排水がすべて排出されるよりも前に圧縮気体供給具を停止させることができ、圧縮気体供給具の作動時間を短くすることができる。
【0019】
本発明の請求項5に係るサイフォン排水システムは、前記横引き管の上流側に、排水を一時貯留する貯留槽が設けられていること、を特徴とする。
【0020】
このように、貯留槽を設けることにより、サイフォン力の発生に必要な排水を貯留して効率よくサイフォン力を発生させることができる。
【0021】
なお、圧縮気体供給具は、貯留槽に連結されていてもよいし、他の上流側配管に連結されていてもよい。
【0022】
本発明の請求項6に係るサイフォン排水システムは、前記横引き管の上流側に、ディスポーザが設置され、前記圧縮気体供給具は、前記ディスポーザに連動して作動されること、を特徴とする。
【0023】
このように、ディスポーザの作動に連動して圧縮気体供給具を作動させて、サイフォン力を発生させることができる。
【0024】
本発明の請求項7に係るサイフォン排水システムは、前記横引き管の上流側に、食洗機が設置され、前記圧縮気体供給具は、前記食洗機に連動して作動されること、を特徴とする。
【0025】
このように、食洗機の作動に連動して圧縮気体供給具を作動させて、サイフォン力を発生させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、上記構成としたので、圧縮気体供給具を適切に使用してサイフォン開始時間を早めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係るサイフォン排水システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】第1実施形態に係るサイフォン排水システムの一部拡大構成を示す概略図である。
【図3】第1実施形態に係るサイフォン排水システムの制御系ブロック図である。
【図4】第1実施形態に係るサイフォン排水システムにおいて、排水の状態(A)〜(C)を示す説明図である。
【図5】第1実施形態の圧縮空気供給処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の変形例に係るサイフォン排水システムの全体構成を示す概略図である。
【図7】第1実施形態の他の変形例に係るサイフォン排水システムの全体構成を示す概略図である。
【図8】第1実施形態の他の変形例に係るサイフォン排水システムの一部拡大構成を示す概略図である。
【図9】第2実施形態に係るサイフォン排水システムの全体構成を示す概略図である。
【図10】第2実施形態に係るサイフォン排水システムの制御系ブロック図である。
【図11】第2実施形態に係るサイフォン排水システムにおいて、排水の状態(A)〜(C)を示す説明図である。
【図12】第2実施形態の圧縮空気供給処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】第2実施形態の変形例に係るサイフォン排水システムの一部拡大構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1実施形態]
以下に、本発明に係るサイフォン排水システムの第1実施形態について、図面に基づき説明する。図1には、本実施形態に係るサイフォン排水システムの全体構成の概略図が示されている。本実施形態に係るサイフォン排水システム10は、サイフォン力を利用して水廻り器具からの排水を効率よく排出する排水システムである。
【0029】
本実施形態において、サイフォン排水システム10は、複数階で構成された集合住宅に用いられ、図1に示すように、排水を下方へ流す排水立て管12を備えている。この排水立て管12は、集合住宅の上下方向(縦方向)に延設され、集合住宅の各階の床スラブ14を貫いている。
【0030】
集合住宅の各階には、浴槽、洗濯機、洗面所、トイレ及び台所流し等の水廻り器具16が設けられており、この水廻り器具16には、水廻り器具16から排出される排水を流すサイフォン排水管23が接続されている。
【0031】
サイフォン排水管23は、水廻り器具16に接続される器具排水管18と、この器具排水管18と連通する横引き管20と、この横引き管20と連通する竪管22とを備えて構成されている。
【0032】
器具排水管18は、水廻り器具16から排出される排水を下方へ流すように構成されている。なお、図1においては、一の水廻り器具16、一のサイフォン排水管23のみを図示している。
【0033】
この器具排水管18と連通する横引き管20は、床スラブ14上で横方向に延設されている。この横引き管20は、無勾配で配置され、器具排水管18から横引き管20へ流入した排水を横方向へ流す。本実施形態では、横引き管20と器具排水管18で本発明の上流側配管が構成されている。
【0034】
この横引き管20と連通する竪管22は、排水立て管12に沿って、上下方向(縦方向)に延設されている。この竪管22は、横引き管20から竪管22へ流入した排水を下方へ落下させることによりサイフォン力を発生させる。
【0035】
この竪管22と排水立て管12とを連結する排水継手50が設けられている。この排水継手50は、竪管22からの排水を排水立て管12へ合流させる。
【0036】
器具排水管18、横引き管20及び竪管22は、他の水廻り器具16からの排水と途中で合流することなく、そのまま排水立て管12へ排水を導くようになっている。また、器具排水管18、横引き管20及び竪管22は、水廻り器具16からの排水が満水の状態で流れるように、管の内径が設定され、例えば、具体的サイズとして呼び径20Aに設定されている。
【0037】
図2にも示されるように、横引き管20には、連結管30が連結されている。連結管30は、連結部30Aで横引き管20に連通され、上方へ延出されている。連結管30の先端には、圧縮気体供給具32が取り付けられている。圧縮気体供給具32は、圧縮空気を横引き管20へ供給可能とされている。圧縮気体供給具32の圧縮空気吐出口には、圧縮逆止弁(不図示)が設けられている。圧縮気体供給具32としては、空気ポンプ、コンプレッサーなどを用いることができる。
【0038】
なお、圧縮気体供給具32が横引き管20と連結される連結部30Aの位置は、圧縮気体供給具32から供給される圧縮空気を竪管22に直接流入させない位置であることが好ましく、横引き管20の全長の1/2よりも上流側に配置されることが好ましい。
【0039】
横引き管20の連結部30Aよりも上流側には、逆止機構としての逆止弁34が設置されている。逆止弁34は、逆止弁34の上流側から下流側への流体の移動を許容し、逆止弁34の下流側から上流側への流体の移動を阻止するように構成されている。逆止弁34としては、自封式トラップを用いることができる。本実施形態では、自封式トラップ(メンブレンバルブ)を用いた例について説明するが、逆止弁34は、他の様式のものを用いることもできる。自封式トラップを用いない場合には、器具排水管18に別途トラップを設けることが必要となる。
【0040】
横引き管20の連結部30A近傍には、センサ36が設置されている。センサ36は、水廻り器具16からの排水の通過を検知可能とされている。センサ36は、後述するコントローラー40と接続されており、水廻り器具16からの排水の通過を検知すると、コントローラー40へ排水検知信号S1を出力する。
【0041】
コントローラー40は、不図示のCPU、ROM、RAM、を含んで構成されており、図3に示されるように、圧縮気体供給具32、センサ36、及び、メモリ42と接続されている。メモリ42には、排水検知信号S1の入力(排水がセンサ36を通過するタイミング)からサイフォン力起動のために圧縮気体供給具32の作動を開始する時間(作動開始待機時間T1)、及び、作動開始待機時間T1の経過後、圧縮気体供給具32をさせておく時間(作動時間T2)が予め記録されている。
【0042】
作動開始待機時間T1は、排水がセンサ36を通過してから横引き管20が所定の充填状態となるまでの時間で設定することができる。所定の充填状態は、圧縮空気を供給することにより効果的にサイフォン力起動を行うことが可能な程度に排水が横引き管20に満たされている状態をいい、横引き管20全体の60%〜90%程度が排水で充填されている状態である。この充填状態は、排水が連結部30Aを通過してから当該充填状態となるまでの平均的な所定時間を予め実験などにより求めておくことができる。
【0043】
作動時間T2は、作動開始待機時間T1の経過後、圧縮気体供給具32をさせておく時間であり、圧縮空気の供給によって、サイフォン力が起動するまでに要する時間が設定される。
【0044】
(本実施形態の作用)
次に、上記の実施形態について作用を説明する。
【0045】
水廻り器具16から排出された排水は、器具排水管18、横引き管20及び竪管22を流れる(図4(A)参照)。排水がセンサ36を通過すると、センサ36により排水の通過が検知され、排水検知信号S1がコントローラー40へ出力される。排水検知信号S1が入力されると、コントローラー40では、図5に示される、圧縮空気供給処理が実行される。
【0046】
先ず、ステップS10で、作動開始待機時間T1待機し、作動開始待機時間T1が経過したら、ステップS12で圧縮気体供給具32へ作動開始信号S2を出力する。この作動開始信号S2により、圧縮気体供給具32が作動し、圧縮空気が横引き管20へ供給される。そして、ステップS14で、作動時間T2が経過するまで待機する。
【0047】
このとき、横引き管20は、図4(B)に示されるように、全体の60%〜90%程度が排水で充填されている状態となっている。圧縮空気が横引き管20へ供給されることにより、排水に圧力がかかり、竪管22において排水が下方へ押し込まれる(図4(C)参照)。これにより、下流側の排水に吸引力が作用し、サイフォン力が発生する。
【0048】
作動時間T2が経過したら、ステップS16で圧縮気体供給具32へ、作動停止信号S3を出力する。この作動停止信号S3により、圧縮気体供給具32の作動が停止し、横引き管20への圧縮空気の供給が停止される。圧縮空気の供給が停止された後も、サイフォン力は作用し、サイフォン力により排水が排出される。
【0049】
本実施形態によれば、圧縮気体供給具32からの圧縮空気により、積極的にサイフォン力を発生させるので、圧縮気体供給具32を用いない場合と比較して、サイフォン開始時間を早めることができる。また、圧縮気体供給具32は、横引き管20との連結部30Aを介して、排水の通過する配管の外側から圧縮気体を送るので、器具内への排水の流入を必要とせず、圧縮気体供給具32が排水によって汚れることがなく、圧縮気体供給具32の故障、損傷を抑制することができる。
また、単なる圧送排水の場合にポンプを稼働させておく時間と比較して、圧縮気体供給具32の稼働時間が少ないので、圧縮気体供給具32の耐用年数を延ばすことができる。
【0050】
なお、本実施形態では、逆止弁34を設置したが、逆止弁34はなくてもよい。本実施形態のように逆止弁34を用いることにより、効率的にサイフォン力を発生させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、圧縮気体供給具32を横引き管20と連結させたが、図6に示されるように、圧縮気体供給具32を器具排水管18と連結させてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、連結管30を介して圧縮気体供給具32を横引き管20と連結させたが、連結管30は、必ずしも必要ではなく、圧縮気体供給具32を直接、横引き管20と連結してもよい。この場合には、圧縮気体供給具32を連結部30Aの上方で連結させることにより、排水の圧縮気体供給具32への流入を抑制することができる。また、圧縮気体供給具32の圧縮空気流出口に逆止弁を設けておくことにより、確実に排水の流入を防止することができる。
【0053】
また、本実施形態では、圧縮気体供給具32の作動をセンサ36からの信号のタイミングで設定したが、他の機器を用いて設定してもよい。また、圧縮気体供給具32の停止についても、他の方法、例えば圧縮空気の供給量や横引き管20内の圧力などに基づいて設定してもよい。
【0054】
さらに、圧縮気体供給具32の作動及び停止を、ユーザーによるスイッチのオン・オフにより行うこともできる。例えば、図7に示されるように、水廻り器具の排出口に投入された投入物を粉砕し、その粉砕物を排水と共に流下可能にするディスポーザ37の設置された水廻り器具16の場合、ディスポーザ37のオン・オフに連動させて、圧縮気体供給具32の作動及び停止を行うことができる。
また、ディスポーザ37と共に、または、ディスポーザ37に代えて、食洗機を水廻り器具16の上流側に配置し、食洗機のオン・オフに連動させて、圧縮気体供給具32の作動及び停止を行ってもよい。
【0055】
また、図8に示されるように、本実施形態の器具排水管18に、膜体で形成された袋状の袋部材38を取り付けてもよい。袋部材38は、管状の連結管38Aを介して器具排水管18と連通させ、逆止弁34よりも上流側に取り付ける。袋部材38は、室内が拡縮可能な密閉空間とされている。袋部材38は、水廻り器具16からの排水の開始時に、器具排水管18内に滞留していた空気が流入して膨張し、サイフォン力が起動した後は、内部の空気が流出する。袋部材38を取り付けることにより、排水の抵抗となる空気を効率よく逃がすことが可能となる。
【0056】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して図示し、詳細な説明は省略する。
【0057】
本実施形態のサイフォン排水システム60は、図9に示されるように、貯留槽52を備えている。貯留槽52は、複数の水廻り器具16からの排水を貯留可能とされている。貯留槽52は、横引き管20と器具排水管18との間に配置され、上流側に器具排水管18が接続されている。器具排水管18は、貯留槽52側が低くなるように勾配をもって配設されるのが好ましい。貯留槽52の下流側には、横引き管20が接続されている。
【0058】
圧縮気体供給具32は、貯留槽52よりも下流側の横引き管20に、連結管30を介して連結されている。なお、本実施形態では、逆止弁34は設置されていないが、器具配水管18に逆止弁34を設置してもよい。
【0059】
本実施形態においては、センサ36に代えて、貯留槽52にレベルセンサ44が設けられている。レベルセンサ44は、貯留槽52内における排水の水位を検知可能とされている。図10に示されるように、レベルセンサ44は、コントローラー40と接続されており、貯留槽42内における排水の水位が所定の作動水位L1になると、レベル到達信号S4をコントローラー40に出力する。作動水位L1は、貯留槽42内にある程度、排水が貯留されて、横引き管20へ圧縮空気を供給するとサイフォン力を発生させることができる程度の水位が設定される。当該水位は、実験などにより予め求めておくことができる。
なお、レベルセンサ44に代えて、貯留槽52内における圧力を検知可能な圧力センサを設け、予め設定されている所定の圧力を超えた場合に、レベル到達信号S4をコントローラー40に出力するようにしてもよい。
【0060】
メモリ42には、レベル到達信号S4の入力後、圧縮気体供給具32をさせておく時間(作動時間T3)が予め記録されている。
【0061】
(本実施形態の作用)
次に、上記の実施形態について作用を説明する。
【0062】
水廻り器具16から排出された排水は、器具排水管18を経て一時貯留槽42へ流入する。(図11(A)参照)。排水が一時貯留槽42に貯留されて、一時貯留槽42内の水位が作動水位L1になると、レベルセンサ44は、レベル到達信号S4をコントローラー40に出力する。レベル到達信号S4が入力されると、コントローラー40では、図12に示される、圧縮空気供給処理が実行される。
【0063】
先ず、ステップS20で、圧縮気体供給具32へ作動開始信号S2を出力する。この作動開始信号S2により、圧縮気体供給具32が作動し、圧縮空気が横引き管20へ供給される(図11(B)参照)。そして、ステップS22で、作動時間T3が経過するまで待機する。圧縮空気が横引き管20へ供給されることにより、排水に圧力がかかり、竪管22において排水が下方へ押し込まれる(図11(C)参照)。これにより、下流側の排水に吸引力が作用し、サイフォン力が発生する。
【0064】
作動時間T3が経過したら、ステップS24で圧縮気体供給具32へ、作動停止信号S3を出力する。この作動停止信号S3により、圧縮気体供給具32の作動が停止し、横引き管20への圧縮空気の供給が停止される。圧縮空気の供給が停止された後も、サイフォン力は作用し、サイフォン力により排水が排出される。
【0065】
本実施形態によれば、圧縮気体供給具32からの圧縮空気により、積極的にサイフォン力を発生させるので、圧縮気体供給具32を用いない場合と比較して、サイフォン開始時間を早めることができる。また、圧縮気体供給具32は、横引き管20との連結部30Aよりも上側から圧縮気体を送るので、器具内への排水の流入を必要とせず、圧縮気体供給具32が排水によって汚れることがなく、圧縮気体供給具32の故障、損傷を抑制することができる。
また、サイフォン開始時間を早めることができるので、一時貯留槽42の容量を小さくすることができる。
また、横引き管20の長さが長くなると、サイフォン開始のために必要なサイフォン起動基準水頭も高くなるため、従来は、横引き管20の長さを長くするために一時貯留槽42の高さも高くする必要があった。本実施形態では、圧縮気体供給具32を用いることにより、従来必要とされていたサイフォン起動基準水頭に達していない場合でも、サイフォン力を起動させることができる。したがって、従来と比較して、横引き管20の長さを長くすることができる。
【0066】
なお、本実施形態では、圧縮気体供給具32を横引き管20と連結させたが、図13(A)に示されるように、貯留槽52に設置して、貯留槽52の内部に圧縮空気を供給してもよい。また、図13(B)に示されるように、圧縮気体供給具32を器具排水管18と連結させてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 サイフォン排水システム
18 器具排水管
20 横引き管
22 竪管
23 サイフォン排水管
30 連結管
30A 連結部
32 圧縮気体供給具
34 逆止弁
36 センサ
37 ディスポーザ
38 袋部材
42 メモリ
40 コントローラー
50 サイフォン排水システム
52 貯留槽
44 レベルセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床スラブに沿って無勾配で配管される横引き管と、
前記横引き管よりも下流側に配置され、排水を流下させることによりサイフォン力を発生させる竪管と、
前記竪管よりも上流側の上流側配管に連結部で連結され、前記上流側配管の外から前記上流側配管へ圧縮気体を送る圧縮気体供給具と、
を備えた、サイフォン排水システム。
【請求項2】
前記圧縮気体供給具は、前記連結部から上方へ延びる連結管を介して前記上流側配管に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のサイフォン排水システム。
【請求項3】
前記上流側配管の前記連結部よりも上流側には、流体の下流側から上流側への逆流を阻止する逆止機構が設けられていること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載のサイフォン排水システム。
【請求項4】
前記圧縮気体供給具は、前記上流側配管への排水の流入開始タイミングに対応して前記上流側配管への圧縮気体の供給を開始し、所定のサイフォン力開始タイミングに対応して前記上流側配管への圧縮気体の供給を停止すること、を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のサイフォン排水システム。
【請求項5】
前記横引き管の上流側に、排水を一時貯留する貯留槽が設けられ、前記圧縮気体供給具は、前記上流側配管または前記貯留槽に連結されていること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のサイフォン排水システム。
【請求項6】
前記横引き管の上流側に、ディスポーザが設置され、前記圧縮気体供給具は、前記ディスポーザに連動して作動されること、を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のサイフォン排水システム。
【請求項7】
前記横引き管の上流側に、食洗機が設置され、前記圧縮気体供給具は、前記食洗機に連動して作動されること、を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のサイフォン排水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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