説明

サイフォン管構造

【課題】容器の開口部に取り付けるコネクタに接続されているサイフォン管構造において、サイフォン管先端に設けられる開口部が、少なくとも容器の深さ寸法に定めた公差内で常に容器底部付近まで到達するサイフォン管構造を提供する。
【解決手段】液体を貯蔵する容器50の上部に設けた円筒ノズル51Aにコネクタ10を取り付け、該コネクタ10に接続したサイフォン管20を容器50内の底部近傍まで挿入するとともに、サイフォン管20の下端部近傍に開口する吸入口22から容器50内の液体を引き出すためのサイフォン管構造が、サイフォン管20に軸方向長さを可変とする伸縮部30を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に貯蔵された液体を取り出すためのサイフォン管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体高純度薬品や一般化学薬品等の液体は、生産工場にてタンクなどの容器に充填され、この容器に形成された少なくとも一対の開口部にキャップ(蓋)を嵌め込んだ状態で出荷されている。
この容器に貯留された液体を取り出す場合には、まず、容器の開口部に嵌め込まれていたキャップを取り外し、サイフォン管が接続されたプラグと、サイフォン管が接続されていないプラグがそれぞれ取り付けられる。そして、液送ホースが接続されたソケットをサイフォン管が接続されたプラグに接続し、また、気送ホースが接続されたソケットをサイフォン管が接続されていないプラグに接続する。
【0003】
この状態において、ポンプによって容器内の液体がサイフォン管からプラグへと吸い上げられ、ソケットに接続された液送ホースへと送り出されていた。このとき、容器内が負圧とならないように、他方のソケットに接続された気送ホースから窒素等の気体が取り入れられていた。
このように、ソケットをプラグにワンタッチで接続するための技術としては、コネクタが知られている。従来のコネクタにおいては、容器内から引き出せない液体量(以下「残液量」という)を減らすため、容器の底面に向かって伸びるサイフォン管の開口部が底面近傍に配置されている。すなわち、サイフォン管の先端部を容器底面に当接させ、サイフォン管の下端部または下端部近傍に開口する開口部(吸入口)から容器内の液体を取り出すようになっている。なお、従来のコネクタには、液体吸い上げ用の液送ホース及び気体取り入れ用の気送ホースについて、1つのコネクタに両方のホースを接続可能に構成されたものもある。
【0004】
また、コネクタを取り付けて使用する容器には、底面を下方(外側)へ湾曲させて凹部を形成したものがある。この容器に取り付けて使用するコネクタは、サイフォン管の下端部側を水平方向へ向けて略90度の湾曲をさせることにより、サイフォン管先端の開口部を容器内底面に形成された凹部の最も深い領域に配置させて、残液量を低減することができる。
さらに、サイフォン管の下端部を湾曲させたコネクタにおいては、結合部及びコネクタ本体を中心軸回りに相対回転可能に接続する構造が提案されている。このようなコネクタは、コネクタ本体に配置されたプラグ部に固定されたサイフォン管を回転させることなくコネクタを容器に設置できるため、容器内において液体が残存する領域(凹部)にサイフォン管の先端を配置しやすくなり、従って、容器内の残液量を減らすことができる。(たとえば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−182400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したコネクタに接続されるサイフォン管を用いて液体を取り出す容器には樹脂の成型品が多く、容器の深さ等に所定の寸法公差が存在する。たとえば200リットルの容量を有するドラム形容器の場合、1000mmの深さ寸法に対して±8mmの公差が認められており、従って、深さ寸法には最大16mmの寸法差が存在する。
一方、従来のサイフォン管は所定の寸法公差内で長さが一定とされ、従って、容器側の寸法公差に追従して寸法差を吸収することはできなかった。このため、サイフォン管の長さについては、深さ寸法が公差内で異なる多数の容器に対応可能とするため、一般的に深さが最も小さく(浅く)なる容器にも使用可能となるように設定されており、従って、先端部を容器底面に当接させるには長さが不足する場合もある。すなわち、サイフォン管が汎用品である場合、サイフォン管の製造時、寸法公差を有する容器毎にサイフォン管長さを調整して最適化することは困難であり、現実性もない。
【0007】
しかしながら、上述した従来のサイフォン管を使用すると、公差内で最も深さが大きい(深い)容器の場合、サイフォン管の先端に設けた開口部が容器の底部まで到達せず、従って、容器の底部には取り出しできずに残る残液量が存在する。たとえば上述した200リットルドラム形容器の場合には、16mm程度の最大寸法差が生じると4リットル程度の残液量となる。
このため、特に高価な薬液等の液体を取り扱う場合には、サイフォン管が容器底面まで到達(当接)できないことに起因する残液量を最小限まで低減することが望まれる。
【0008】
このような背景から、深さ寸法に公差を有する容器に対し、少なくとも寸法公差の範囲内でサイフォン管長さが追従し、寸法差を吸収して容器底部に当接できるようにしたサイフォン管構造が望まれる。すなわち、容器が有する寸法公差内の最小深さ〜最大深さに追従できるサイフォン管構造を開発し、サイフォン管先端の開口部が必ず容器底部まで到達(当接)できるようにして、取り出しできずに容器内に残る残液量を低減またはなくすことが望まれる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、容器側の開口部に取り付けるコネクタに接続されているサイフォン管構造において、サイフォン管先端に設けられる開口部が、少なくとも容器の深さ寸法に定めた公差内で常に容器底部付近まで到達できるようにしたサイフォン管構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係るサイフォン管構造は、液体を貯蔵する容器の上部に設けた円筒ノズルにコネクタを取り付け、該コネクタに接続したサイフォン管を前記容器内の底部近傍まで挿入するとともに、前記サイフォン管の下端部近傍に開口する吸入口から前記容器内の液体を引き出すためのサイフォン管構造であって、前記サイフォン管に軸方向長さを可変とする伸縮部を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明のサイフォン管構造によれば、前記サイフォン管に軸方向長さを可変とする伸縮部を設けたので、容器内の深さ寸法が寸法公差内で変動しても、サイフォン管自体が軸方向に伸縮して常に容器の底部付近まで到達できるようになる。すなわち、伸縮部を備えたサイフォン管の長さは、少なくとも伸びた状態で容器内の深さ寸法に許容される最大深さを確保しておけば、寸法公差内の最小深さ〜最大深さに追従して、サイフォン管の下端部が常に容器底面に到達(当接)するようになる。
この場合に好適な伸縮部の構造としては、部分的に設けた蛇腹構造部や、Oリングを介在させたインロー構造等があり、サイフォン管の下端部が容器底面に当接して発生する圧縮力を受けて縮むとともに、自重で伸びるものであればよい。
【0011】
上記の発明において、前記伸縮部は、伸縮方向を限定するガイド部を備えていることが好ましく、これにより、伸縮するサイフォン管に芯ずれが生じることを防止できる。
この場合、前記ガイド部は、液体受け面に開口するドレン孔を備えていることが好ましく、これにより、ガイド部に液だれした液体を容器内へ流下させて戻すことができる。従って、液だれした液体が、ガイド部と伸縮部との間で固化することを防止できる。
【0012】
上記の発明において、前記吸入口は、前記サイフォン管の先端開口から連続して下端部側面に開口していることが好ましく、これにより、容器底面に当接した先端開口の液レベル付近まで略全量の液体を確実に取り出すことができる。
【0013】
上記の発明において、前記吸入口は、前記サイフォン管の先端開口から所望の高さとなる下端部近傍の側面に開口していることが好ましく、これにより、容器底面に沈殿物が沈下・滞留するような液体を取り扱う場合であっても、吸入口の高さ設定を適切に行うことにより、液体とともに取り出される沈殿物量を最小限に抑えることができる。
この場合、前記サイフォン管は、前記吸入口の下端位置を境にして上下に分断されていることが好ましく、これにより、容器内の沈殿物が液体とともに取り出されることをより確実に防止または抑制できる。なお、上述した上下の分断は、たとえばサイフォン管の側面に開口する吸入口の下端位置より下端部側に取り付けた栓による封止や、サイフォン管の内部に取り付けた仕切板による封止が有効であり、サイフォン管内部の吸入口より上部を先端開口から確実に分断して液体及び沈殿物の流通を防止できる。
【0014】
上記の発明において、前記吸入部は、前記サイフォン管の先端部を水平方向へ向けて略90度に湾曲させた先端開口とされ、前記容器の底部に設けた凹部の最深部付近に前記先端開口を配置することが好ましく、これにより、容器内の最深部付近に液体を集め、容器内の液体を略全量取り出すことができる。
この場合、前記サイフォン管の上端部を固定するコネクタは、前記円筒ノズルに形成された容器側のねじ部と螺合するねじ部を有する結合部と、前記円筒ノズルに挿入して取り付けられ、前記結合部と中心軸を共有して組付可能とされた本体とを具備し、前記サイフォン管の上端部を固定した前記本体が、前記円筒ノズルに対して回転することを阻止する回り止め機構を備えていることが好ましく、これにより、円筒ノズルから容器内に挿入されたサイフォン管の回転方向位置(湾曲したサイフォン管の向き)が変動することを防止し、容器内の残液量を最小限にする所定の位置及び方向に保持して液体を吸い出すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のサイフォン管構造によれば、サイフォン管に軸方向長さを可変とする伸縮部を設けたので、容器内の深さ寸法が寸法公差内で変動しても、サイフォン管自体が軸方向に伸縮して寸法差を吸収できる。すなわち、サイフォン管は、先端部(下端部)が容器底面に当接すると軸方向に作用する圧縮力を受けて縮むので、圧縮力の有無に応じて伸縮部が軸方向に伸縮し、自らの軸方向長さを変化させる。
このため、サイフォン管の先端部は、常に容器の底部付近まで到達する長さを有するものとなり、深さ寸法に公差を有する容器に対し、少なくとも寸法公差の範囲内ではサイフォン管長さを追従させて寸法差を吸収できるようになる。従って、サイフォン管の先端部は、容器の底部付近まで必ず到達し、容器底部の面に当接できるようになる。
【0016】
このように、容器が有する寸法公差の範囲内では、最小深さから最大深さまで追従して伸縮できるサイフォン管構造となるため、サイフォン管の先端部が必ず容器底部まで到達(当接)し、吸入口の位置に応じて、容器内の液体を略全量、あるいは、所望の液面まで確実に取り出すことが可能になる。
この結果、たとえば吸入口をサイフォン管の先端開口から連続して下端部側面に設けると、容器内に残る液体の残液量を確実に低減またはなくすことができる。また、吸入口をサイフォン管の先端開口から所望の高さとなる下端部近傍の側面に設けると、容器底面に沈下・滞留する沈殿物が液体とともに取り出されることを最小限に抑え、容器内の液体を最大限に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るサイフォン管構造を示す要部の断面図であり、紙面左側は伸縮部が伸びた状態、紙面右側は伸縮部が縮んだ状態である。
【図2】図1のA−A断面図であり、ガイド部に設けたドレン孔が示されている。
【図3】本発明のサイフォン管を容器に取り付けた状態を示す部分断面正面図である。
【図4】第1の実施形態に係るサイフォン管構造において、吸入口に関する第1変形例を示す要部の断面図であり、紙面左側は伸縮部が伸びた状態、紙面右側は伸縮部が縮んだ状態である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るサイフォン管構造を示す要部の断面図であり、紙面左側は伸縮部が伸びた状態、紙面右側は伸縮部が縮んだ状態である。
【図6】第2の実施形態に係るサイフォン管構造において、吸入口に関する第1変形例を示す要部の断面図であり、紙面左側は伸縮部が伸びた状態、紙面右側は伸縮部が縮んだ状態である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るサイフォン管構造において、吸入口に関する第2変形例として容器底部及び容器に取り付けたサイフォン管の下端部側を示す部分断面正面図である。
【図8】図7に示す第3の実施形態に係るコネクタ(ねじがシール部の上部)の一例として、容器に取り付けた状態を示す断面図であり、上部には円筒ノズルに結合部を接続する前の状態が示され、下部には円筒ノズルに結合部を接続して固定した状態が示されている。
【図9】図8のB−B断面図であり、回り止め構造が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の一実施形態に係るサイフォン管構造について、以下に図面を参照して説明する。
図3は、コネクタ10に接続されたサイフォン管20を容器50の上部に取り付けた状態を示す図である。液体を貯蔵する容器50の上部を塞ぐ面には、開口部となる二つの円筒ノズル51A、51Bが形成されている。一方の円筒ノズル51Aには、液体引き出し用のコネクタ10が取り付けられている。このコネクタ10には、液体取り出し用のホース(不図示)を有するソケット(不図示)が着脱可能に取り付けられる。なお、他方の開口部51Bには、図示しない気体流通用のコネクタ、ソケット及びホースが取り付けられる。
【0019】
容器50内から液体を取り出す場合、円筒ノズル51A側のホース他端を図示しないポンプ設備に接続し、たとえば図1に示すように、容器50内の容器底面50a付近までサイフォン管20の管本体21を挿入する。そして、管本体21の下端部近傍に開口する吸入口22を設け、この吸入口22から容器50内の液体をポンプで吸引して引き出す。このとき、気体流通用の円筒ノズル51B側では、容器50の内部が負圧とならないようにするため、コネクタ(不図示)に取り付けたソケット(不図示)及びホース(不図示)から容器50の内部へ気体を供給する。
なお、気体流通用のコネクタ及びソケットについては、上述した構成に限定されることはなく、たとえば液体引き出し用のソケットに気体流通系統を接続して容器50内へ気体を供給する構成としてもよい。
【0020】
<第1の実施形態>
以下では、本発明に係るサイフォン管構造について、第1の実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。なお、図1は、本実施形態に係るサイフォン管20を接続したコネクタ10が円筒ノズル51Aに取り付けられた状態の断面図であり、紙面左側は後述する伸縮部30が伸びた状態を示し、紙面右側は伸縮部30が縮んだ状態を示している。
コネクタ10は、コネクタ10の本体部分であるコネクタ本体11と、容器50の円筒ノズル51Aに形成された雌ねじ部52と螺合することにより容器50に結合される結合部12と、上述したソケットとの連結部であるプラグ部13と、プラグ部13に固定して接続され、容器50の内部に向けて伸びるサイフォン管20とにより、概略構成されている。すなわち、サイフォン管20は、コネクタ10のプラグ部13に接続された長尺の管状部材であり、その長さは、コネクタ10を容器50の円筒ノズル51Aに取り付けた状態で、容器底面50aまで到達できるように設定されている。
なお、図中の符号53は雄ねじ部であり、円筒ノズル51Aの開口を塞ぐキャップが取り付けられる。
【0021】
上述したサイフォン管20は、軸方向長さを可変とする伸縮部30を備えている。図示の構成例では、プラグ部13の下端部近傍に蛇腹構造部31を接続し、この蛇腹構造部31が伸縮部30として機能するようになっている。すなわち、本実施形態のサイフォン管20は、プラグ部13と管本体21との間に蛇腹構造部31を介在させたものであり、この蛇腹構造部31がサイフォン管20の軸方向に伸縮することにより、軸方向長さを可変にして容器50に許容される深さ寸法の寸法公差に追従可能となる。換言すれば、蛇腹構造部31は、図1に示す容器50の容器深さ公差範囲Hと略同じ長さとなる最小伸縮長さH′を有しているので、容器50に存在する深さ寸法差を吸収することができる。
【0022】
具体的に説明すると、本実施形態のサイフォン管構造は、サイフォン管20に軸方向長さを可変とする蛇腹構造部31の伸縮部30を設けたので、容器50内の深さ寸法が寸法公差内で変動しても、サイフォン管20自体が軸方向に伸縮して、常に容器50の容器底部50a付近まで到達できるようになる。
すなわち、蛇腹構造部31を備えたサイフォン管20の長さは、長さが不変の管本体21と蛇腹構造部31の長さとを合計した値であるから、少なくとも蛇腹構造部31を圧縮しない伸びた状態で容器50内の深さ寸法に許容される最大深さに対応(到達)可能な長さを確保して必要な伸縮長さを設けておけば、寸法公差内の最小深さ〜最大深さに追従して、サイフォン管20の下端部を常に容器底面50aに到達(当接)させることが可能になる。
【0023】
換言すれば、図1の紙面左側に示すように、容器50の深さ寸法が最大の許容値を有して最大深さとなる状態では、少なくとも蛇腹構造部31が最大限まで伸びた状態にあり、従って、管本体21の下端部開口は容器底面50aに当接した状態となる。このため、図1の紙面右側に示すように、少なくとも容器50の深さ寸法が最小の許容値を有して最小深さとなる状態までは、管本体21の下端部が容器底面50aに当接しているため、深さ寸法の減少につれて蛇腹構造部31が圧縮されて縮み、この結果、サイフォン管20の全長が短くなって容器50に許容される深さ寸法の寸法公差を吸収するのである。
【0024】
このとき、上述した吸入口22が、サイフォン管の先端開口から連続して下端部側面に開口していれば、すなわち、管本体21の先端開口から連続して下端部側面に開口していると、容器底面50aに当接した先端開口の液レベル付近まで、残液量をほとんど出すことなく略全量の液体を確実に取り出すことができる。
また、上述した実施形態では、伸縮部30を蛇腹構造部31としたが、これに限定されることはない。他の好適な伸縮部構造としては、Oリングを介在させたインロー構造、すなわち、軸方向にスライド可能な内筒及び外筒間をOリングでシールした二重筒構造等があり、サイフォン管20の下端部が容器底面50aに当接して発生する圧縮力を受けて縮むとともに、自重で伸びるものであればよい。
【0025】
ところで、上述した図1の実施形態では、伸縮部30となる蛇腹構造部31が、伸縮方向を限定するガイド部40を備えている。このガイド部40は、蛇腹構造部31の伸縮を軸方向に限定し、圧縮を受けた蛇腹の折曲等を防止するものであり、円錐台形状の接続部41と、円筒状のガイド本体42とを備えている。
【0026】
接続部41は、下端部側を小径とした円錐台形状(ロート形状)であり、液体受け面となる傾斜面41aを形成する底部の上端部側に設けた円筒部41bが、螺合等によりコネクタ本体11に固定して取り付けられている。なお、この接続部41は、図示の円錐台形状に限定されることはなく、たとえば円筒部41bの下端部に略水平なドーナツ状の底部(液体受け面)を設けたものでもよい。
【0027】
ガイド本体42は、剛性を有する樹脂等の筒状部材である。このガイド本体42は、筒状部材が蛇腹構造部31の外周部を取り囲むようにして、蛇腹構造部31が最も伸びた状態で管本体21の位置まで、すなわち伸縮部30の伸縮を妨げないように考慮して設置されている。なお、管本体21がガイド本体42の下端部を通り抜ける貫通孔43は、蛇腹構造部31の伸縮により管本体21が軸方向にスライドすることを妨げないようにするため、そして、管本体21の芯ずれを最小限に抑えるため、管本体21の外径よりもやや大きな内径を有していることが望ましい。
【0028】
このようなガイド部40を設けることにより、伸縮するサイフォン管20に芯ずれが生じることを防止でき、従って、蛇腹構造部31等の伸縮部30が有する伸縮長さを有効かつ確実に活用することができる。
【0029】
また、上述したガイド部40は、ガイド本体42より上方に形成された底部の液体受け面に開口するドレン孔44を備えている。このドレン孔44は、ソケットの着脱時等に液だれした固化しやすい薬液等の液体が、ガイド部40を通って蛇腹構造部31等の伸縮部30まで到達することを防止し、ガイド部40内に液だれした液体を容器50内へ流下させて戻すものである。このため、ガイド部40を流下する液体は、ガイド部40と伸縮部30との間で固化することがなく、従って、固化した液体により伸縮部30の伸縮機能が損なわれることを防止できる。なお、図示の構成例では、たとえば図2に示すように、周方向に4箇所のドレン孔44を設けてあるが、これに限定されることはない。
【0030】
図4に示す第1変形例は、上述したサイフォン管20に設けた吸入口22の位置を変更したものである。なお、以下の説明では、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
この第1変形例において、吸入口22Aは、サイフォン管20Aの先端開口から所望の高さとなる下端部近傍の側面に開口している。すなわち、この場合の吸入口22Aは、吸入口22Aの下端部が管本体21Aの先端開口から高さhとなるように、換言すれば、吸入口22Aの下端部が容器底面22aから高さhとなるように、管本体21Aの下端部側となる側面に設けられている。
【0031】
上述した高さhは、容器50の容器底面50aに沈殿物が沈下・滞留するような液体を取り扱う場合、沈殿物の滞留高さを考慮して定めることが望ましい。すなわち、容器底面50aに沈殿物が沈下・滞留するような液体を取り扱う場合には、管本体21Aに開口する吸入口22Aの下端部が沈殿物の滞留高さより若干高くなるように設定すればよい。
このような吸入口22Aを採用すれば、吸入口22Aの高さ設定を液体の性状に応じて適切に行うことにより、液体とともに容器50から取り出される沈殿物量を最小限に抑えることができる。
【0032】
上述した吸入口22Aを設けたサイフォン管20Aは、液体とともに沈殿物が取り出されることをより確実に防止するため、吸入口22Aの下端位置を境にして上下に分断されていることが望ましい。
具体的には、吸入口22Aの下端部より低い管本体21Aの先端部側を、たとえばゴム等の栓23を圧入して取り付けることにより封止する。この場合の栓23は、液体の性状等により適宜材質を選択すればよい。
【0033】
このようにすれば、容器50内の液体をサイフォン管20Aに吸い込む入口が吸入口22Aに限定されるので、先端開口からの液体流入がなくなったことにより、液体とともにようき50の外部へ取り出される沈殿物量は減少する。
なお、上述した上下の分断は、栓23の圧入による封止に限定されることはなく、たとえばサイフォン管20Aを構成する管本体21Aの内部に仕切板を取り付けて封止してもよい。
【0034】
<第2の実施形態>
続いて、本発明に係るサイフォン管構造について、第2の実施形態を図5に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態では、サイフォン管20の伸縮部30Aとなる蛇腹構造部31が、外周部に上述したガイド部40を備えていない。このため、蛇腹構造部31の伸縮を軸方向に限定し、圧縮を受けた蛇腹の折曲等を防止することはできないものの、容器50の深さ寸法については、上述した実施形態と同様に寸法公差内の追従が可能である。
【0035】
また、図6に示す本実施形態の第1変形例は、図4に示した変形例と同様の吸入口22Aを採用したものである。従って、この場合の吸入口22Aは、吸入口22Aの下端部が管本体21Aの先端開口から高さhとなるように、管本体21Aの下端部側側面に設けられている。この結果、吸入口22Aの高さ設定を液体の性状に応じて適切に行うことにより、液体とともに容器50から取り出される沈殿物量を最小限に抑えることができる。
なお、この変形例においても、液体とともに沈殿物が取り出されることをより確実に防止するため、吸入口22Aの下端位置を境にして栓23等により上下に分断されていることが望ましい。
【0036】
<第3の実施形態>
最後に、本発明に係るサイフォン管構造について、第3の実施形態を図7から図9に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態の吸入部22Bは、サイフォン管20Bの先端部を水平方向へ向けて略90度に湾曲させた先端開口となる。この場合の容器50Aは、底部に容器50A内の液体を集めるため、最深部となる凹部50bが設けられている。すなわち、容器50Aの底部に設けた凹部50bの最深部付近には、先端部を湾曲させたサイフォン管20Bの先端開口が吸入口22Bとして配置されることで、容器50A内の最深部付近に集めた液体を略全量取り出すことができる。なお、本実施形態のサイフォン管20Bは、上述した実施形態の伸縮部30は勿論のこと、必要に応じてガイド部40を備えている。
【0037】
このように構成されたサイフォン管20Bは、湾曲した先端開口の向きが凹部50bと確実に一致するように、サイフォン管20Bの上端部を固定するコネクタ10Aが、回り止め機構を備えていることが望ましい。
ここで、図8及び図9に基づいて、回り止め機構60の一例を示して説明する。図8において、コネクタ本体(本体)11は略有底円筒状に形成され、その内部にプラグ部13が一体に形成されている。また、コネクタ本体11の開口端側には、略円筒状に形成された結合部12が設けられており、この結合部12は、コネクタ本体11及び結合部12の中心軸C回りに回転可能となっている。
【0038】
コネクタ本体11の外周面には、半径方向外側に突出する鍔部14が形成されている。この鍔部14は、サイフォン管20B側の面(図中下方の面)に配置されたシール部材のOリング15を備えている。このOリング15は、円筒ノズル51Aにコネクタ本体11を圧入した際、容器50内の液体が漏出するのを防止するものである。
コネクタ本体11の開口端側内周面には、円周方向にわたって半径方向の内側(軸中心側)へ突出する本体側突起16が設けられている。この本体側突起16は、結合部12と係合するように形成されている。
【0039】
結合部12には、外周面に円筒ノズル51Aの雌ねじ部52と螺合する雄ねじ部12aが形成され、外周面の下端には、円周方向にわたって半径方向外側へ突出し、コネクタ本体11の本体側突起16と係合する結合部側突起17が形成されている。
結合部側突起17の外径は本体側突起16の内径よりも大きく形成され、結合部12をコネクタ本体11に圧入することにより、結合部側突起17を本体側突起部16に係合させている。そのため、結合部12とコネクタ本体11とは、中心軸C回りに回転可能に係合されており、さらに、結合部12は、コネクタ本体11側に形成されて上端部が本体側突起16となる凹部18により制限される範囲を上下方向にスライド可能となっている。
【0040】
プラグ部13は略円筒状に形成され、図8に示すように、コネクタ本体11の底面と一体に形成されるとともに、その内部は液体が流通する流通孔13aとなっている。また、プラグ部13の外周面には、液体流出防止用のプラグキャップ(不図示)と螺合するキャップ用ねじ部12bが下方端側に形成され、さらに、ソケットと係合する環状の係止溝12c及び係止突条12dが中間部付近に形成されている。なお、プラグキャップは、コネクタ1にソケットが取り付けられる際にプラグ部13から取り外され、それ以外の場合には、プラグ部13に取り付けられて流体が流出することを防止している。
また、プラグ部13の下端部には上述した管状部材のサイフォン管20Bが伸縮部30を介して接続され、流通孔23と連通して先端開口9aから液体を取り出す液体流路を形成している。
【0041】
本実施形態では、上述したコネクタ10に対して、サイフォン管20Bの上端部を固定したコネクタ本体11が円筒ノズル51Aに対して回転することを阻止するため、回り止め機構60を設けている。
この回り止め機構60は、円筒ノズル51A及びコネクタ本体11に形成した1組または複数組の凹凸係合部及び/または面取係合部である。すなわち、回り止め機構60が複数組の凹凸係合部や面取係合部により構成される場合には、凹凸係合部のみを複数組、面取係合部のみを複数組、あるいは、凹凸係合部と面取係合部との組合せた複数組のいずれでもよい。
【0042】
図9に示す本実施形態の回り止め機構60は、円筒ノズル51Aの内周面に設けた1個の凸部61と、コネクタ本体11の外周面に設けた1個の凹部62とにより構成された1組の凹凸係合部である。この場合、凸部61及び凹部62は略同じ断面形状を有し、円筒ノズル51Aにコネクタ本体11を圧入することにより、凹部62に凸部61が入り込んで係合する。
この結果、結合部12を容器50の円筒ノズル51Aにねじ込んでコネクタ10を固定する際には、凸部61と凹部62とが係合ずる回り止め機構60の作用により、コネクタ本体11及びサイフォン管20が連れ廻りすることを防止できるようになる。
【0043】
従って、円筒ノズル51Aから容器50内にコネクタ本体11を圧入して挿入されたサイフォン管20Bは、その回転方向位置(湾曲したサイフォン管20Bの湾曲方向)が連れ回りにより変動することを防止できる。この結果、サイフォン管20Bの吸入口22Bは、容器50内の所定位置まで確実に挿入され、すなわち、最深部となる凹部50bに位置して液体を取り出すことが可能になる。換言すれば、コネクタ本体11の回り止め機構60を設けたことにより、サイフォン管20Bを容器50内の残液量を最小限にする所定位置に保持し、容器50内の液体を最大限に吸い出すことができる。
【0044】
このような回り止め機構60においては、凹凸係合部が1組の場合、凸部61を設ける円筒ノズル51Aの円周方向位置について、サイフォン管20Bの湾曲方向と一致させることが望ましい。すなわち、凸部61と凹部62を設ける円周方向位置をサイフォン管20Bの湾曲方向と一致させておくことにより、コネクタ本体11を円筒ノズル51Aに圧入して挿入する際には、回り止め機構60の凸部61が先端を湾曲させたサイフォン管20Bの挿入方向を定める目安となり、容器50内に挿入さするサイフォン管20Bの向き(湾曲方向)を作業者が容易に認識できるようになる。
【0045】
上述した本発明の各実施形態によれば、サイフォン管20に軸方向長さを可変とする伸縮部30を設けたので、容器50内の深さ寸法が寸法公差内で変動しても、サイフォン管自体が軸方向に伸縮して寸法差を吸収できる。すなわち、サイフォン管20は、先端部が容器底面50aに当接すると軸方向に作用する圧縮力を受けて縮むので、圧縮力の有無に応じて伸縮部30が軸方向に伸縮し、その軸方向長さが変化する。このため、サイフォン管20の先端部は、常に容器50の底部付近まで到達する長さを有するものとなり、深さ寸法に公差を有する容器50に対し、少なくとも寸法公差の範囲内ではサイフォン管長さを追従させて寸法差を吸収できるようになる。従って、サイフォン管20の先端部は、容器50の底部付近まで必ず到達し、容器底部50aの面に当接できるようになる。
【0046】
このように、容器50が有する寸法公差の範囲内では、最小深さから最大深さまで追従して伸縮できるサイフォン管構造となるため、サイフォン管20の先端部が必ず容器底部50aまで到達し、吸入口22の位置に応じて、容器50内の液体を略全量、あるいは、所望の液面まで確実に取り出すことが可能になり、残液量の低減が可能になる。
また、サイフォン管20の先端開口から所望の高さとなる下端部近傍の側面に吸入口22Aを設けると、容器底面50aに沈下・滞留する沈殿物が液体とともに取り出されることを最小限に抑え、容器内の液体を最大限に取り出すことができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、たとえば上述したコネクタ本体3及びプラグ部7等について、一体構造あるいは別体部品の結合構造を適宜選択可能であるなど、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 コネクタ
11 コネクタ本体(本体)
12 結合部
13 プラグ部
14 鍔部
20,20A,20B サイフォン管
21,21A 管本体
22,22A,22B 吸入口
23 栓
30 伸縮部
31 蛇腹構造部
40 ガイド部
44 ドレン孔
50,50A 容器
50a 容器底面
50b 凹部
51A 円筒ノズル
60 回り止め機構
61 凸部
62 凹部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯蔵する容器の上部に設けた円筒ノズルにコネクタを取り付け、該コネクタに接続したサイフォン管を前記容器内の底部近傍まで挿入するとともに、前記サイフォン管の下端部近傍に開口する吸入口から前記容器内の液体を引き出すためのサイフォン管構造であって、
前記サイフォン管に軸方向長さを可変とする伸縮部を設けたことを特徴とするサイフォン管構造。
【請求項2】
前記伸縮部が、伸縮方向を限定するガイド部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のサイフォン管構造。
【請求項3】
前記ガイド部が、液体受け面に開口するドレン孔を備えていることを特徴とする請求項2に記載のサイフォン管構造。
【請求項4】
前記吸入口が、前記サイフォン管の先端開口から連続して下端部側面に開口していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のサイフォン管構造。
【請求項5】
前記吸入口が、前記サイフォン管の先端開口から所望の高さとなる下端部近傍の側面に開口していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のサイフォン管構造。
【請求項6】
前記サイフォン管は、前記吸入口の下端位置を境にして上下に分断されていることを特徴とする請求項5に記載のサイフォン管構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−157123(P2011−157123A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22108(P2010−22108)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(591257111)サーパス工業株式会社 (60)
【Fターム(参考)】