説明

サイプを備えたトレッドを含む二輪車用タイヤ

本発明は、二輪自動車用のタイヤに関し、このタイヤは、サイプ(41,42,43,44,45)を備えたトレッドを有する。本発明によれば、サイプの長さは、接触パッチの表面の幅の1.2倍未満であり、少なくとも1つのサイプは、トレッドに設けられていて、幅が2.5mmを超え、長さが2.5〜10mmのトレッド溝中に開口した少なくとも1つの端を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に二輪車、例えばモーターバイクに取り付けられるようになったタイヤ、より具体的には、270km/hに相当するWよりも高い速度定格を備えたモーターバイクに取り付けられるようになったタイヤに関する。
【0002】
本発明はこのような用途には限定されないが、本発明を特にこのようなモーターサイクル又はモーターバイク用タイヤに関して説明する。
【背景技術】
【0003】
他の全てのタイヤの場合と同様、モーターバイク用タイヤも又、ラジアルに移行しており、このようなタイヤのアーキテクチャは、周方向と65°〜90°の場合のある角度をなす補強要素の1つ又は2つの層で構成されたカーカス補強材を有し、このカーカス補強材には半径方向に補強要素で構成されたクラウン補強材が載っている。しかしながら、依然として非ラジアルタイヤのままであるものがあり、本発明は、このような非ラジアルタイヤにも関する。本発明は、更に、部分的にラジアルであるタイヤに関し、このような部分的ラジアルタイヤは、カーカス補強材の補強要素が例えばタイヤのクラウンに相当する部分においてカーカス補強材の少なくとも一部にわたってラジアルであるタイヤを意味している。
【0004】
タイヤがモーターバイクのフロントに取り付けられるかリヤに取り付けられるかに応じて多くのクラウン補強材アーキテクチャが提案された。クラウン補強材用の第1の構造体では、周方向コードだけが用いられ、このような構造体は、特にリヤタイヤのために用いられる。乗用車用タイヤに通常用いられている構造体により直接示唆された第2の構造体は、耐摩耗性を向上させるために用いられ、このような第2の構造体では、各層内において互いに実質的に平行であるが、1つの層と次の層との間ではクロス掛け関係にあり、周方向と鋭角をなす補強要素の少なくとも2つの実働クラウン層が用いられ、このようなタイヤは、特にモーターバイクのフロント用タイヤとして適している。2つの実働クラウン層を一般に、少なくとも1つのゴム被覆補強要素のストリップの螺旋巻きにより得られた周方向要素の少なくとも1つの層と組み合わせるのが良い。
【0005】
タイヤクラウンアーキテクチャの選択は、タイヤの或る特定の性質、例えば耐摩耗性、耐久性、グリップ若しくは駆動性又は特にモーターバイクの場合、安定性に直接的な影響を及ぼす。しかしながら、他の種類のパラメータ、例えばトレッドを構成するゴムコンパウンドの性状も又、タイヤの性質に影響を及ぼす。トレッドを構成するゴムコンパウンドの選択及び性状は、例えば、耐摩耗性に関する限り極めて重要なパラメータである。トレッドを構成するゴムコンパウンドの選択及び性状は又、タイヤのグリップに影響を及ぼす。
【0006】
また、他形式のタイヤに関し、雪、ブラックアイス又は湿り気で覆われた路面上を走行するようになったタイヤについて切り込みを有するトレッドを製作することが慣例である。
【0007】
このようなトレッドは、通常、横方向及び/又は周方向溝によって周方向及び/又は横方向に互いに隔てられたリブ又はブロック形の隆起要素を備えている。この場合、これらトレッドは、切り込み又はスリットを更に有し、これら切り込み又はスリットのゼロではない幅は、上述の溝の幅よりも極めて小さい。踏み面(トレッド表面)上に開口した複数個の切れ目を作ることにより、複数個のゴムエッジが作られ、これらは、路面上に存在する場合のある水の層に切り込むが、その目的は、タイヤを路面と接触状態に保つと共に潜在的にダクトを形成することができる空所を形成することにあり、ダクトは、タイヤを路面に接触させる接触パッチに存在する水を集め、これらダクトが接触パッチの外側に開口するよう構成されている場合には、このような水を除去するようになっている。
【0008】
問題の表面に対するタイヤのグリップを向上させる目的で多くの形式の切り込みが既に提案されている。
【0009】
仏国特許第2418719号明細書は、例えば、トレッドの表面に垂直であり又はこの表面に垂直な方向に対して傾けられている場合のある切り込みを記載している。
【0010】
仏国特許第791250号明細書は、トレッドの表面に沿って波形のパターンをなして延びる切り込みを記載している。
【0011】
特に濡れた路面に対するグリップの点におけるモーターバイクの性能を考慮して、駆動又は制動トルクの伝達の向上に寄与し、かくしてモーターバイクが加速し又は制動する能力を向上させるために切り込みが設けられたトレッドを有するタイヤが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】仏国特許第2418719号明細書
【特許文献2】仏国特許第791250号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
周方向平面で見て、半径方向に差し向けられた切り込みの壁が特にタイヤの中央部分に現れるようにトレッドに切り込まれた切り込みを有するタイヤに対して試験を行ったが、その結果、これらタイヤは、不規則な摩耗パターンを示す。このような摩耗パターンは、摩耗が増大するにつれて顕著になり、その結果、タイヤの摩耗速度が増大する。
【0014】
したがって、本発明の目的は、濡れた表面に対するグリップの面における特性を一段と向上させたモーターバイク用タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、本発明によれば、電動二輪車用のタイヤであって、タイヤの各側でビードに繋留された補強要素で形成されているカーカス型の補強構造体を有し、ビードのベースは、リムシートに取り付けられるようになっており、各ビードの半径方向外方の延長部としてサイドウォールが設けられ、サイドウォールは、半径方向外側に向かって、切り込みを備えたトレッドに合体している、タイヤにおいて、切り込みの長さは、接触パッチの表面の幅の1.2倍未満であり、少なくとも1つの切り込みは、トレッドに設けられていて、幅が2.5mmを超え、長さが2.5〜10mmの切れ目で終端した少なくとも1つの端を有することを特徴とするタイヤを用いて達成された。
【0016】
本発明の意味の範囲内において、切り込みは、2つの壁を形成する切れ目であり、形成し、壁のうちの一方に接する平面に垂直に沿って測定された壁相互間の距離が1.5mm未満、好ましくは1mm未満の切れ目である。トレッドの表面上のこのような距離は、切り込みの底部のところ(これは、トレッドの表面から最も遠くに位置する箇所のところであることを意味する)の距離に少なくとも等しい。特に、モーターバイク用タイヤの場合、トレッドの厚さが比較的小さいので、トレッドの表面から切り込みの底部に向かってこのような距離が大きくなることにより切り込みのエッジがトレッドの表面のところでつぶれ、かくしてトレッドが路面と接触する接触パッチの面積が減少する場合、このようにトレッド表面から切り込み底部に向かってこのような距離が大きくなることが生じてはならない。
【0017】
1つの切り込みの長さは、この切り込みの一方の壁の湾曲した横座標に沿って測定される。
【0018】
接触パッチの表面積は、ETRTOにより推奨される公称リムに取り付けられて非潤滑プレート上で2.5barにインフレートされたタイヤをこのタイヤの荷重指数(最大推奨荷重)の60%に相当する荷重を用いてタイヤの回転軸線に垂直な方向に垂直方向に圧縮する(このことは、ホイールが垂直平面内に位置した状態で圧縮が垂直方向に行われることを意味する)ことによって測定される。接触パッチにおけるトレッドの表面の幅は、軸方向において最も長い距離により与えられ、長さは、周方向における最も長い距離によって与えられる。
【0019】
本発明の意味の範囲内において、切れ目の幅は、この切れ目を包囲している長方形の幅に等しく、このことは、この切れ目全体を含むことができる最も小さな長方形を意味している。
【0020】
本発明の意味の範囲内において、トレッドに設けられていて、幅が2.5mmを超える切れ目で終端した端は、開口していると考えられ、このことは、壁の端相互間の幅がゴムの塊に一致していない端であることを意味している。
【0021】
有利には、本発明によれば、切り込みの端の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%は、トレッドに設けられていて、幅が2.5mmを超える切れ目で終端する。
【0022】
これ又有利には、本発明によれば、切れ目の端の少なくとも25%は、トレッドに設けられていて、幅が2.5mmを超え、長さが2.5〜10mmの切れ目で終端する。
【0023】
タイヤの長手方向又は周方向は、タイヤの周囲に対応すると共にタイヤの走行方向によって定められる方向である。
【0024】
タイヤの横方向又は軸方向は、タイヤの回転軸線に平行である。
【0025】
タイヤの回転軸線は、タイヤが通常の使用の際に回転する中心となる軸線である。
【0026】
周方向平面又は周方向断面平面は、タイヤの回転軸線に垂直な平面である。赤道面は、トレッドの中心又はクラウンを通り、従ってトレッドの中央部分に位置する周方向平面である。
【0027】
半径方向平面又は子午面は、タイヤの回転軸線を含む。
【0028】
半径方向は、タイヤの回転軸線と交差し且つこれに垂直な方向である。半径方向は、周方向平面と半径方向平面の交線である。
【0029】
本発明に従ってこのようにして製造され、モーターバイクのホイールに取り付けられたタイヤについて実施した試験は、実際に、グリップの面において、長い長さの切り込みを有するタイヤよりも良好な性能を実証した。
【0030】
本発明者は、モーターバイク用タイヤの複雑な形状、及び特に極めてその顕著な曲率により、相当な二重撓み現象が接触パッチのエッジに集中して生じることを実証した。具体的に説明すると、接触パッチのエッジのところには、接触パッチの実質的に平らな表面を子午線方向における曲率が大きいタイヤの輪郭形状に連結する極めて小さな曲率半径の曲率が見受けられる。極めて小さい曲率半径のこの曲率が存在することにより、実際に、第1に接触パッチの表面に二重撓みが生じ、第2にタイヤの子午線方向における曲率に関して二重撓みが生じる。接触パッチのエッジのところでのこの二重撓み現象は、切り込みの一方の壁と他方の壁の係合を少なくとも局所的に制限するように思われる。切り込みの壁の係合のこの制限は、グリップ及びトルク伝達特性にとって有害である。
【0031】
幅が接触パッチの表面の幅の1.2倍未満である切り込みとトレッドに設けられていて、幅が2.5mmを超える切れ目で終端した少なくとも1つの端を有する少なくとも1つの切り込みを組み合わせると、切り込みの壁の係合を促進し、優れたグリップ特性が得られるように思われる。
【0032】
本発明の好ましい一実施形態によれば、切り込みの見掛けの面積は、トレッドに設けられていて、幅が2.5mmを超え、長さが2.5〜10mmの切れ目の見掛けの面積よりも大きい。
【0033】
本発明の意味の範囲内において、切り込みの見掛けの面積は、トレッドの表面の上述の切り込みの壁によって画定された材料のない空所又は領域の面積である。これは、公称圧力までインフレートされて無負荷状態のタイヤについて測定される。
【0034】
また、好ましくは、トレッドに設けられていて、幅が2.5mmを超え、長さが2.5〜10mmの切れ目の見掛けの面積は、切れ目の見掛けの面積の75%未満である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態によれば、切り込みの長さは、接触パッチの面積の幅よりも小さい。
【0036】
本発明によれば、少なくとも1つの切り込みの少なくとも1つの端は、トレッドを形成するゴムコンパウンドのブロックを画定する上述の溝かこの目的のために特に設けられた切れ目かのいずれかで終端する。
【0037】
特にこの目的のために設けられたこのような切れ目は、例えば、切り込みの深さに実質的に等しい深さの切れ目である。
【0038】
また、有利には、本発明によれば、特に設けられたこれら切れ目は、トレッドのところに楕円形の断面を有する。
【0039】
他の実施形態によれば、トレッドの表面のところでの特に設けられたこれら切れ目の断面は、任意の幾何学的形状のものであって良く、例えば多角形のものである。
【0040】
これ又有利には、特に設けられると共に幅が2.5mmを超える切れ目の各々は、2.5〜10mm、より好ましくは5mm未満の長さを有する。一部分の長さは、これらが連結している切り込みの2つの端相互間で測定され、これは、上記において定義したようにこの一部分包囲した長方形の長さに等しい。
【0041】
本発明の実施形態の別の変形形態によれば、長さが接触パッチの領域の幅の0.7倍を超える切り込みの端は、トレッドに設けられていて、幅が2.5mmを超える切れ目で終端する。
【0042】
トレッドに設けられたこのような切れ目は、本発明の実施形態の第1の変形形態の場合と同様、この目的のために特に設けられた溝又は切れ目である。
【0043】
本発明の有利な一変形形態では、切り込みの深さは、特にタイヤの軸方向における種々の摩耗速度を考慮に入れると共に軸方向に変化するトレッド剛性を得るために軸方向に変化している。
【0044】
本発明の有利な変形形態によれば、トレッドの少なくとも表面は、中央部分の少なくとも一部にわたって延びる第1のポリマー配合物と、第1のポリマー配合物の物理化学的性質とは異なる物理化学的性質を有していて、トレッドの軸方向外側部分の少なくとも一部を覆っている少なくとも1種類の第2のポリマー配合物とから成る。
【0045】
本発明のこのような変形形態により、例えばトレッドの中央について耐摩耗性が向上し、軸方向外側部分についてグリップ特性が向上したトレッドを作ることができる。
【0046】
本発明のこのような変形実施形態は、特に、トレッドが切り込みの存在に一致して向上した耐摩耗性を有することを提案しており、かくして、耐摩耗性の向上と組み合わせて満足の行くグリップ特性を維持することが可能である。
【0047】
本発明の有利な実施形態によれば、タイヤに対称という性質を与えるため、中央周方向バンドの中心は、有利には、赤道面上に配置される。例えばカーブが全てに本質的に同一方向であるサーキット上で走行するようになったタイヤ向きの他の実施形態では、中央周方向バンドの中心を赤道面上に配置しないようにすることが可能である。
【0048】
本発明の有利な変形実施形態では、トレッドの少なくとも表面を形成し、かくしてトレッドの特性を赤道面からショルダに向かって次第に変化させる5本又は6本以上の周方向バンドを設けることが想定できる。従前通り、このような実施形態は、赤道面に関して対称であっても良く、又は非対称であっても良く、バンドの分布状態は、これらの組成の点において又は赤道面周りのこれらの分布状態の点かのいずれかにおいて異なっている。
【0049】
本発明の好ましい実施形態によれば、第2のポリマー配合物は、第1のポリマー配合物の組成とは異なる組成のものであり、より好ましくは、第2のポリマー配合物は、第1のポリマー配合物のグリップ特性よりも優れたグリップ特性を有する。
【0050】
他の実施形態によれば、異なる加硫条件を用いることによって同種の配合物で互いに異なる特性を得ることができる。
【0051】
また、有利には、第1のポリマー配合物の半径方向厚さと第2のポリマー配合物の半径方向厚さは、軸方向におけるトレッドの耐摩耗性を最適化するよう互いに異なっているのが良い。また、有利には、厚さは、次第に異なる。
【0052】
本発明の好ましい一実施形態によれば、第2のポリマー配合物は、第1のポリマー配合物のショアAスケール硬度とは異なるショアAスケール硬度を有する。
【0053】
硬化後におけるポリマー配合物のショアAスケール硬度は、ASTM・D2240‐86規格に従って評価される。
【0054】
本発明の好ましい一実施形態によれば、カーカス型補強構造体の補強要素は、周方向と65°〜90°の角度をなす。
【0055】
本発明の変形例によれば、クラウン補強構造体は、周方向と10°〜80°の角度をなす補強要素の少なくとも1つの層を有する。
【0056】
この変形形態によれば、クラウン補強構造体は、有利には、補強要素の少なくとも2つの層を有し、1つの層から次の層にこれら補強要素相互は20°〜160°、好ましくは40°より大きい角度をなす。
【0057】
本発明の好ましい一実施形態によれば、実働層の補強要素は、繊維材料で作られる。
【0058】
本発明の別の実施形態によれば、実働層の補強要素は、金属で作られる。
【0059】
本発明の有利な一実施形態では、特に、タイヤの子午線に沿う、特に実働層の縁部のところの補強構造体の剛性を最適化する目的で、実働層の補強要素と長手方向とのなす角度は、このような角度がタイヤの赤道面のところで測定した角度と比較して、補強要素の層の軸方向外側の縁のところの方が大きいように横方向に変化しているのが良い。
【0060】
本発明の一実施形態では、タイヤは、特に、周方向補強要素の少なくとも1つの層を有するクラウン補強構造体から成り、周方向補強要素の層は、下側長手方向に対して5°未満の角度をなして差し向けられた少なくとも1つの補強要素から成る。
【0061】
また、好ましくは、周方向補強要素の層の補強要素は、金属及び/又は繊維及び/又はガラスで作られる。本発明は、特に、周方向補強要素の同一の層内に互いに異なる種類の補強要素の使用を想定している。
【0062】
また、好ましくは、周方向補強要素の層の補強要素は、6000N/mm2を超える弾性率を有する。
【0063】
本発明の一変形実施形態では、有利には、周方向補強要素は、可変ピッチで横方向に分布して配置される。
【0064】
周方向補強要素相互間のピッチの変化は、横方向における単位長さ当たりの周方向補強要素の数の変化及びかくして横方向における周方向補強要素の密度の変化、それ故、横方向における周方向剛性の変化の形態を取る。
【0065】
本発明の別の細部及び別の有利な特徴は、図1及び図2を参照して与えられる本発明の実施形態についての説明から以下においてより明確に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施形態としてのタイヤの上から見た部分図である。
【図2】本発明の第2の実施形態としてのタイヤの上から見た部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1及び図2を理解しやすくするため、図1及び図2は、縮尺通りには描かれていない。
【0068】
図1は、モーターバイクのサイズ120/70ZR17の前輪に取り付けられるようになったタイヤ1、特にそのトレッドの外面2の部分斜視図である。図1は、0.15を超え、好ましくは0.3を超える曲率を有する。この曲率は、比Ht/Wtによって定められ、この比は、タイヤのトレッドの高さとトレッドの最大幅の比である。
【0069】
図には示されていない仕方で、図1は、繊維(テキスタイル)型の補強要素を有する層から成るカーカス補強材を有する。この層は、半径方向に布設された補強要素から成る。補強要素の半径方向位置決めは、補強要素の布設角度で定められ、半径方向配置は、これら補強要素がタイヤの長手方向に対して65°〜90°の角度をなして布設されている状態に一致している。
【0070】
カーカス補強材は、タイヤ1の各側でビード内に繋留され、ビードのベースは、リムシート(受座)に取り付けられるようになっている。各ビードの半径方向外方の延長部として、サイドウォールが設けられ、このサイドウォールは、半径方向外側寄りがトレッドに合体している。
【0071】
タイヤ1は、例えば周方向と角度をなす補強要素の2つの層から成るクラウン補強材を更に有しており、補強要素は、1つの層と次の層との間でクロス掛け関係にあり、赤道面の付近においてこれら補強要素のなす角度は、例えば50°であり、これら層の各々に属する補強要素は、周方向と例えば25°の角度をなしている。
【0072】
クラウン補強材は、周方向と角度をなす補強要素の層ではなく、周方向補強要素の層から成っていても良く又は変形例としてこれら層の組み合わせであっても良い。
【0073】
図1のトレッド2は、溝3から成るトレッドパターンを有し、これら溝の主要方向は、このトレッドパターンに方向を与えるために半径方向に対して僅かな角度をなしている。
【0074】
トレッド2は、トレッドの幅全体にわたって分布して配置された切り込み4を更に有する。
【0075】
本発明によれば、切り込み4の端の大部分は、溝3又は幅が切り込みの幅よりも大きい切れ目内に開口しており、これら切れ目をウェル5と称することができる。図1の場合、これらウェル5は、トレッド2の表面上に楕円形の形状を有している。
【0076】
トレッドの表面上には、端の各々がウェル5で終端した切り込み41が設けられている。端の各々が溝3で終端した他の切り込み42が設けられている。一端がウェル5で終端し、他端が溝3で終端した切り込み43が設けられている。さらに、一端が溝3で終端し、他端がトレッドのゴムの塊で閉じられた切り込み44が設けられると共に一端がウェル5で終端し、他端がトレッドのゴムの塊で閉じられた切り込み45が設けられている。
【0077】
上述したように、溝3又はウェル5との連結部は、有利には、切り込みを途切れさせ、かくして、長さが接触パッチの幅の1.2倍未満である切り込みを作るよう設計されている。
【0078】
タイヤ1の場合、上述の条件下(これは、1390ニュートンの荷重及び2.5barの圧力下であり、タイヤが3.50MT17リムに取り付けられていることを意味している)において測定された接触パッチの幅は、47mmである。
【0079】
切り込み41,42,43の長さは、10〜31mmであり、従って、本発明のトレッドの幅よりも短い。
【0080】
切り込み44,45の長さは、17〜24mmであり、従って、トレッドの幅の0.7倍未満であり、本発明によれば、このような長さの切り込みは、非開口端を有するのが良い。
【0081】
タイヤの切り込み4の全ての見掛けの面積は、5245mm2に等しい。
【0082】
タイヤのウェル5の全ての見掛けの面積は、2000mm2に等しい。
【0083】
本発明によれば、切り込み4の全ての見掛けの面積は、ウェル5の全ての見掛けの面積よりも大きい。
【0084】
図2は、タイヤ21の上から見た部分図であり、特に、モーターバイクの後輪に取り付けられるようになったタイヤ21のトレッド22の表面の上から見た部分図である。これは、180/55ZR17サイズのタイヤである。
【0085】
溝23の延長部として、ウェル25によって分離された一連の切り込み24が設けられている。
【0086】
この図2では、端の各々がウェル25で終端した切り込み241及び一端がウェル25で終端し、他端が溝3で終端した切り込み234が設けられている。図2に示されているこの実施例では、一端がトレッドのゴムの塊で閉じられた切り込みは存在しない。
【0087】
タイヤ21の場合、上述の条件下、即ち、タイヤが3.50MT17リムに取り付けられた状態において2150ニュートンの荷重及び2.5barの圧力下において測定された接触パッチの幅は、70mmである。
【0088】
切り込み241,243の長さは、実質的に互いに等しく、54〜56mmであり、従って、本発明のトレッドの幅よりも短い。
【0089】
タイヤの切り込み24の全ての見掛けの面積は、7194mm2に等しい。
【0090】
タイヤのウェル25の全ての見掛けの面積は、4320mm2に等しい。
【0091】
本発明によれば、切り込み24の全ての見掛けの面積は、ウェル25の全ての見掛けの面積よりも大きい。
【0092】
本発明に従って製造された120/70ZR17サイズのタイヤについて試験を実施した。
【0093】
このタイヤを本発明のタイヤと同種であり、同一の溝が設けられている2つの基準(コントロール)タイヤと比較した。第1の基準タイヤR1は、切り込みを備えていなかった。基準タイヤR2は、本発明のタイヤと同一の切り込みを有していたがウェルを備えていなかった。
【0094】
試験では、3人のライダーが濡れたサーキット場でタイヤを走行させた。結果は、6回のラップにわたり各ライダーによって達成された時間の平均値であり、最初のラップの時間を無視した。
【0095】
基準タイヤR1に100の値を割り当てた。
【0096】
基準タイヤR2は、115の評点を得たが、これは、トレッドに設けられた切り込みの利点を既に実証している。
【0097】
本発明のタイヤは、120の評点を達成した。この最後の結果により確認されることとして、特にウェルの存在として得られ、少なくとも一端がトレッドに設けられていて、幅の大きな切れ目で終端した短い切り込みがグリップ性能を一段と向上させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動二輪車用のタイヤであって、前記タイヤの各側でビードに繋留された補強要素で形成されているカーカス型の補強構造体を有し、前記ビードのベースは、リムシートに取り付けられるようになっており、各ビードの半径方向外方の延長部としてサイドウォールが設けられ、前記サイドウォールは、半径方向外側に向かって、切り込みを備えたトレッドに合体しているタイヤにおいて、
切り込みの長さは、接触パッチの表面の幅の1.2倍未満であり、少なくとも1つの切り込みは、前記トレッドに設けられ、幅が2.5mmを超え、長さが2.5〜10mmの切れ目で終端した少なくとも1つの端を有する、
ことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記切り込みの見掛けの面積は、前記トレッドに設けられていて、幅が2.5mmを超え、長さが2.5〜10mmの前記切れ目の見掛けの面積よりも大きい、
請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記トレッドに設けられていて、幅が2.5mmを超え、長さが2.5〜10mmの前記切れ目の見掛けの面積は、前記切れ目の見掛けの面積の75%未満である、
請求項2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記切り込みの長さは、前記接触パッチの面積の幅よりも小さい、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記トレッドに設けられていて、幅が2.5mmを超える前記切れ目の長さは、5mm未満である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
長さが前記接触パッチの領域の幅の0.7倍を超える切り込みの端は、前記トレッドに設けられていて、幅が2.5mmを超える切れ目で終端している、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記トレッドは、少なくとも1つの中央部分及び2つの軸方向外側部分を有し、前記トレッドの少なくとも表面は、前記中央部分の少なくとも一部にわたって延びる第1のポリマー配合物と、前記第1のポリマー配合物の物理化学的性質とは異なる物理化学的性質を有していて、前記トレッドの前記軸方向外側部分の少なくとも一部を覆っている少なくとも1種類の第2のポリマー配合物とから成る、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記カーカス型補強構造体の前記補強要素は、周方向と65°〜90°の角度をなす、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記クラウン補強構造体は、実働層と呼ばれている補強要素の少なくとも1つの層を有し、前記補強要素は、周方向と10°〜80°の角度をなす、
請求項1〜8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの実働層の前記補強要素と長手方向とのなす角度は、横方向において様々であるのが良い、
請求項9記載のタイヤ。
【請求項11】
前記クラウン補強構造体は、周方向補強要素の少なくとも1つの層を有する、
請求項1〜10のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記周方向補強要素は、可変ピッチで横方向に分布して配置されている、
請求項11記載のタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−519563(P2013−519563A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552350(P2012−552350)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051638
【国際公開番号】WO2011/098406
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)