説明

サウンドシステム及びその動作方法

サウンドシステムは、オーディオ信号を放出するための少なくとも3つのオーディオ駆動装置101,103,105を有する。オーディオ駆動装置101,103,105は、少なくとも45°離れて角度付けされた異なる方向にサウンド信号を放出するために、互いに対して角度付けされている。駆動ユニット201,203,205は、駆動信号を生成するために各オーディオ駆動装置101,103,105のために設けられる。互いに対して最も角度付けされたオーディオ駆動装置103,105は、90°〜270°の位相ずれであるオーディオ信号を放出するように構成される。第3のオーディオ駆動装置101のための駆動装置201は、第1の他のオーディオ駆動装置103から放出された信号に近い第1の位相間隔と第2の他のオーディオ駆動装置105から放出された信号に近い第2の位相間隔との間で変動する放出されたオーディオ信号をもたらす変動を伴う変動位相応答をもつ。本発明は、例えば、スピーカ位置及び聴取位置に対する低減された感度を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サウンドシステム及びその動作方法に関し、詳細には、排他的ではないが、ステレオ又はサラウンドサウンド信号のような、空間的なマルチチャンネルの信号の再生に関する。
【背景技術】
【0002】
サウンドのステレオ再生は、長年の間、例えばレコード音楽及び他のアプリケーションで普及しており、近年においては、例えばサラウンドサウンドシステムの人気からも明らかなように、2つよりも多いチャンネルをもつ高度なマルチチャンネルのサウンドの再生がますます普及している。しかしながら、従来のマルチチャンネルサウンドの再生は、幾つかの固有の欠点及び制約をもつ。例えば、従来のシステムは、所望のサウンド供給源の位置に対応する位置に、各チャンネルのための個別のスピーカを必要とする。しかしながら、ユーザが特定の位置にスピーカを配置するのは典型的には非現実的であり、スピーカ位置に対する削減された制約で、並びに/又は、より少ない位置及び/若しくはスピーカから、マルチチャンネルサウンドの再生を供給し得ることが望まれるだろう。
【0003】
また、聴取者が強い空間的サウンドの再生を体験するために、典型的には、聴取者は、"最適聴取場所(sweet spot)"としばしば呼ばれる小さなエリアに配置される必要がある。例えば、ステレオ再生のための実際のサウンドステージを体験するために、聴取者は、2つのラウドスピーカまでの距離が同じになるように配置され、好ましくは聴取者及び2つのラウドスピーカにより形成された正三角形の頂点に配置されることが必要とされる。
【0004】
しかしながら、サウンドの再生は、多くの場合、専用の聴取環境において実行されるものではないので、これは、一般的に不便であるか又は実用的ではない。例えば、消費者向けシステムに関して、スピーカ及び聴取点の位置は、典型的には、部屋のレイアウト、家具の位置等のような多くの他の要件により決定される。また、例えば異なる聴取者が(例えば部屋の周りに配置された異なる家具において)異なる位置に配置され得るときには、複数の聴取位置が満足されるべきである。
【0005】
斯様な欠点に対処するために、特により少ないスピーカ位置を用いるために幾つかの製品が導入されている。
【0006】
例えば、全ての方向に同等に放射し部屋中に均一なサウンド分布をもたらす全方向式スピーカを用いることが提案されている。これは、スピーカを配置することについてのユーザの増加した自由度を可能にするが、幅のないサウンドステージをもたらす傾向にある。実際には、斯様なシステムは、拡散されたサウンドを生成する傾向にある。拡散されたサウンドは、ユーザに対する多くの強力な空間的手掛かりを含まない。これにより劣化した空間的体験をもたらす。
【0007】
また、ステレオスピーカの位置よりも更に離れた位置が発生源であるように体験されるように、例えばステレオスピーカに供給された信号を処理することが提案されている。信号の処理は、典型的には、スピーカから聴取者までのオーディオチャネル及び信号処理に由来する全伝達関数が、仮想位置に配置されたスピーカからのオーディオチャンネルの仮想伝達関数に対応するように行う。それ故、仮想伝達関数が推定され、信号の処理を決定するために用いられる。しかしながら、斯様なアプローチは、実在しないか又は仮想の供給源(例えば広く間隔を取ったスピーカ)を生成することができ、スピーカによってもたらされる直接的なサウンドを弱め得るが、その結果は、スピーカから聴取者までのオーディオチャンネルの伝達関数の変動に対して高感度になる傾向にある。従って、本アプローチは、聴取者の位置の変動に対して高感度であり、典型的には、聴取者が小さな最適聴取場所内に配置されることを必要とする。
【0008】
更に、スピーカアレイを用いることが提案されており、複数の前方に対面する駆動部に対する信号が、聴取者に対する所望の応答を生成するために個別に処理される。信号の処理は複雑であり、典型的には、オーディオビーム形成アルゴリズム(audio beamforming algorithm)、ノッチ生成アルゴリズム(notch generation algorithm)等を含む。斯様なスピーカアレイ及び複雑な処理は、多くの実施形態において有利な性能を提供し得るが、これらは、複雑であり、コストがかかり、比較的大きくなる傾向にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故、改良されたサウンドシステムは有利になるだろう。詳細には、増大されたフレキシビリティ、促進された実装、削減された数のスピーカ位置及び/若しくはスピーカ、削減されたサイズ、削減された複雑さ、削減されたコスト、増大されたスピーカ位置の非依存性、増大された聴取者位置の非依存性、増大された最適聴取場所、広いサウンドステージ、向上した空間的知覚、並びに/又は、向上した性能を可能とするサウンドシステムが有利であるだろう。
【0010】
従って、本発明は、1又はそれ以上の前述された欠点を個々に又は任意の組み合わせにおいて好ましくは軽減し、緩和し、又は除去しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、サウンドを生成するためのサウンドシステムであって、第1のオーディオ信号を出力し、第1の軸上方向をもつ第1のオーディオ駆動装置と、第2のオーディオ信号を出力し、第2の軸上方向をもつ第2のオーディオ駆動装置と、第3のオーディオ信号を出力し、第3の軸上方向をもつ第3のオーディオ駆動装置と、前記第1のオーディオ駆動装置のための第1の駆動信号を第1の信号から生成する第1の駆動装置と、前記第2のオーディオ駆動装置のための第2の駆動信号を第2の信号から生成する第2の駆動装置と、前記第3のオーディオ駆動装置のための第3の駆動信号を第3の信号から生成する第3の駆動装置とを有し、前記第1の軸上方向と前記第2の軸上方向との間の角度は、90°よりも大きく、前記第1の軸上方向と前記第3の軸上方向との間の角度は、45°よりも大きく、前記第2の軸上方向と前記第3の軸上方向との間の角度は、45°よりも大きく、前記第1の駆動装置及び前記第1のオーディオ駆動装置は、ともに第1の位相応答をもち、前記第2の駆動装置及び前記第2のオーディオ駆動装置は、ともに第2の位相応答をもち、前記第3の駆動装置及び前記第3のオーディオ駆動装置は、ともに第3の位相応答をもち、前記第1の信号、前記第2の信号及び前記第3の信号は、少なくとも1つの共通の信号成分を有し、前記第1の位相応答は、第1の周波数を超える周波数間隔において、90°〜270°の間で前記第2の位相応答からずれており、前記第3の位相応答は、前記第1の位相応答に近い第1の位相間隔と前記第2の位相応答に近い第2の位相間隔との間で変動を伴う変動位相応答である、サウンドシステムが提供される。
【0012】
本発明は、多くの実施形態において向上した性能を可能にする。特に、これは、多くの実施形態において、スピーカ位置及び/又は聴取位置に対する聴取体験の削減された感度を供給する。具体的には、増大した最適聴取場所が典型的に実現され得る。
【0013】
本発明は、向上したユーザ体験を可能にし、多くのアプリケーションにおいて、知覚される広範なサウンドステージをもたらす。多くの実施形態において、本発明は、従来のステレオスピーカ設定から実現されるものよりも広範なサウンドステージの知覚を可能にする。多くの実施形態において、本発明は、広範なサウンドイメージが大きな聴取エリアにおいて体験されることを可能にする。これは、特に、削減されたサイズのサウンドシステムから実現され得る。特に、1つのスピーカ装置が用いられ、供給されるべきスピーカ位置を1つだけしか必要としない。
【0014】
また、本発明は、多くの実施形態において、削減されたサイズ、複雑さ及び/又はコストを可能にする。
【0015】
第3の位相応答は、2つの応答間の位相の差が所与の閾値よりも小さい場合に、所与の位相応答に近い位相間隔にあると見なされ得る。正確な閾値は個々の実施形態に依存するが、特に有利な性能は、典型的には、20°の閾値で実現され、より有利な性能は、典型的には、5°の閾値で実現される。同等に、間隔は、最も離れた位相応答までの位相差に対して規定され得る。例えば、第3の位相応答は、第2の位相応答との位相差が所与の閾値を超える場合には、第1の間隔にあり、第1の位相応答との位相差が所与の閾値を超える場合には、第2の間隔にあると見なされる。閾値は、例えば、個々の実施形態の優先度及び要件に依存して、30°、90°、120°、145°又は170°である。特に、第1及び第2の位相間隔は、重複するものではなく、典型的には、全ての周波数に対して少なくとも45°だけ異なる。
【0016】
変動位相応答は、第1の位相間隔から第2の位相間隔まで、及び/又は、第2の位相間隔から第1の位相間隔まで行われる。変動位相応答は、第1の位相間隔と第2の位相間隔との間の少なくとも1つの遷移を有する。
【0017】
幾つかの実施形態において、向上した性能は、80°よりも大きい第1の軸上方向と第3の軸上方向との間の角度、及び/又は、80°よりも大きい第2の軸上方向と第3の軸上方向との間の角度で実現される。
【0018】
多くの実施形態において、第3の軸上方向は、第1の軸上方向と第2の軸上方向との間の角度をもつ。特に、サウンドシステムは、第1のオーディオ駆動装置及び第2のオーディオ駆動装置が第3の軸上方向の周りで実質的に対称になるように設けられる。
【0019】
向上した性能は、多くの実施形態において、50cmよりも小さいか、又は、より多くの場合、有利には30cmよりも小さい、第1のオーディオ駆動装置のオーディオ駆動部と第2のオーディオ駆動装置のオーディオ駆動部との間の距離で実現される。
【0020】
第1の周波数は、特に400Hz若しくは800Hzであり、及び/又は、周波数間隔は、少なくとも1Hz,3Hz若しくは5Hzの帯域幅をもつ。
【0021】
本発明のオプション的な特徴によれば、位相変動は、周波数間隔における周波数領域変動を有する。
【0022】
これは、多くの実施形態において、向上した性能、促進された実装、及び/又は、削減された複雑さを可能にする。
【0023】
本発明のオプション的な特徴によれば、第3の位相応答は、周波数間隔の少なくとも第1の周波数サブ間隔における第1の位相間隔の範囲内であって、周波数間隔の少なくとも第2の周波数サブ間隔における第2の位相間隔の範囲内にある。
【0024】
これは、多くの実施形態において、向上した性能、促進された実装、及び/又は、削減された複雑さを可能にする。
【0025】
特に、第1の周波数サブ間隔及び第2の周波数サブ間隔は、それぞれ、少なくとも200,400,800Hzの最小帯域幅、及び/又は、500Hz,1kHz若しくは3kHzの最大帯域幅をもつ。
【0026】
幾つかの実施形態において、第3の位相応答は、周波数間隔の少なくとも第1の周波数サブ間隔の範囲内において第1の位相応答に対して20°よりも小さい位相差と、周波数間隔の少なくとも第2の周波数サブ間隔の範囲内において第2の位相応答に対して20°よりも小さい位相差をもつ。
【0027】
本発明のオプション的な特徴によれば、第3の位相応答は、周波数間隔の範囲内において第1の位相間隔と第2の位相間隔との間の2つの最小遷移をもつ。
【0028】
これは、向上した性能を可能にする。特に、これは、スピーカ及び/又は聴取者の位置に対する増大した非依存性及び/又は増大した空間的知覚を可能にする。
【0029】
本発明のオプション的な特徴によれば、第3の位相応答は、周波数間隔の範囲内において第1の位相間隔と第2の位相間隔との間の6つの最大遷移をもつ。
【0030】
これは、向上した性能を可能にし、例えば、知覚されたオーディオ品質の劣化を低減する。特に、これは、知覚されたオーディオ品質と増大した空間的知覚との間の向上したトレードオフ、並びに/又は、スピーカ及び/若しくは聴取者の位置に対する増大した非依存性を可能にする。
【0031】
本発明のオプション的な特徴によれば、第3の駆動装置は、周波数変動位相応答をもつ少なくとも1つの全域通過フィルタを有する。
【0032】
これは、多くの実施形態において、向上した性能、促進された実装、及び/又は、削減された複雑さを可能とする。
【0033】
本発明のオプション的な特徴によれば、位相変動は、時間領域変動を有する。
【0034】
これは、多くの実施形態において、向上した性能、促進された実装、及び/又は、削減された複雑さを可能にする。特に、これは、多くの実施形態において、促進された位相変動、及び/又は、向上したオーディオ品質の知覚を可能にする。
【0035】
幾つかの実施形態において、位相変動は、時間領域変動及び周波数領域変動の双方を有する。
【0036】
本発明のオプション的な特徴によれば、サウンドシステムは、ステレオ信号の第1の信号のみから第1の信号を、ステレオ信号の第2の信号のみから第2の信号を、及び、ステレオ信号の第1の信号及び第2の信号の双方から第3の信号を生成する手段を更に有する。
【0037】
このサウンドシステムは、向上したステレオ信号の再生を提供することができる。特に、広範囲のサウンドイメージが提供され、並びに/又は、ステレオ信号の知覚に関する増大したスピーカ及び/若しくは聴取者の非依存性が実現され得る。更に、本特徴は、向上したステレオイメージが生成されることを可能にし、特に、受信した信号からのステレオ特性が、生成されたサウンド信号に次第に保持されていくことを可能にする。
【0038】
第3の信号は、特に、ステレオ信号からの第1及び第2の信号の平均又は(スケーリングされるか若しくは重み付けされた)合計として生成され得る。特に、第3の信号は、受信したステレオ信号のモノラル成分として生成され得る。
【0039】
幾つかの実施形態において、サウンドシステムは、サラウンド信号における一方の側に関する信号のみから第1の信号を、サラウンド信号における他方の側に関する信号のみから第2の信号を、サラウンド信号における少なくとも1つの中央信号から第3の信号を生成する手段を有する。
【0040】
このサウンドシステムは、それ故、サラウンドサウンド信号の向上した再生を供給することができる。
【0041】
本発明のオプション的な実施形態によれば、第1の位相応答及び第2の位相応答は、第1のオーディオ信号及び第2のオーディオ信号の共通の信号成分が実質的に位相ずれであるようなものである。
【0042】
これは、多くの実施形態において、向上した性能、促進された実装、及び/又は、削減された複雑さを可能にする。
【0043】
多くの状況において、有利な性能は、共通の信号が、少なくとも90°〜270°の位相ずれである場合に実現され、それよりも有利な性能は、少なくとも170°〜190°の位相ずれである場合に実現される。
【0044】
本発明のオプション的な特徴によれば、第1の位相応答と第2の位相応答との間の差は、第1の周波数よりも低い第2の周波数を下回る周波数に対して45°を下回る。
【0045】
これは、多くの実施形態において、向上した性能、促進された実装、及び/又は、削減された複雑さを可能にする。特に、これは、増大したサウンドレベルがより低い周波数に対して生成されることを可能にする。本特徴は、例えば、低音を向上させることができ、及び/又は、サブウーファの要件を低減することができる。
【0046】
第2の周波数は、多くの状況において、有利には、200Hz、400Hz又は600Hzである。
【0047】
本発明のオプション的な特徴によれば、第1の位相応答と第3の位相応答との差は、第2の周波数を下回る周波数に対して45°を下回る。
【0048】
これは、多くの実施形態において、向上した性能、促進された実装、及び/又は、削減された複雑さを可能にする。特に、これは、増大したサウンドレベルがより低い周波数に対して生成されることを可能にする。本特徴は、例えば、低音を向上させることができ、及び/又は、サブウーファの要件を低減することができる。
【0049】
第2の周波数は、多くの状況において、有利には、200Hz、400Hz又は600Hzである。
【0050】
本発明のオプション的な特徴によれば、第1の駆動装置及び第2の駆動装置のうち少なくとも一方の利得応答は、2kHzの周波数を超える少なくとも1つの周波数間隔において周波数を増大させるための増大利得を有する。
【0051】
これは、多くの実施形態において、向上した性能、促進された実装、及び/又は、削減された複雑さを可能にする。特に、これは、向上した方向の手掛かりが、第1及び第2のオーディオ駆動装置から聴取者に供給されることを可能にし、特に、多くの実施形態において、向上した空間的手掛かりが、第1及び第2のオーディオ駆動装置から、反射された横向きに放射されたサウンド信号を介して供給される。
【0052】
少なくとも1つの周波数間隔は、少なくとも1kHz、2kHz又は3kHzの帯域幅をもち得る
【0053】
本発明のオプション的な特徴によれば、第1のオーディオ駆動装置及び第2のオーディオ駆動装置のうち少なくとも一方は、複数のドライバユニットを有する。
【0054】
これは、多くの実施形態において、向上した性能、促進された実装、及び/又は、削減された複雑さを可能にする。例えば、これは、増大したサウンドレベルが、前方に指向されたオーディオ信号よりも横方向に指向されたオーディオ信号に対して放出されることを可能にする。
【0055】
各ドライバユニットは、個々のラウドスピーカユニット又はオーディオ変換ユニットに対応し得る。
【0056】
第1のオーディオ駆動装置及び第2のオーディオ駆動装置のうち少なくとも一方におけるドライバユニットの数は、第3の駆動装置におけるドライバユニットの数を上回る。
【0057】
本発明のオプション的な特徴によれば、第3のオーディオ駆動装置は、複数の駆動ユニットを有する。
【0058】
これは、多くの実施形態において、向上した性能、促進された実装、及び/又は、削減された複雑さを可能にする。例えば、これは、筺体の中央位置に駆動ユニットが配置されることを必要とすることなく、中央のオーディオ信号が聴取者の位置に向かって指向されることを可能にする。例えば、これは、中央に配置されたディスプレイが含まれることを可能にする一方で、依然として中央のサウンド信号が放出されることを可能にする。
【0059】
本発明の他の態様によれば、サウンドを生成するためのサウンドシステムの動作方法であって、第1のオーディオ信号を出力し、第1の軸上方向をもつ第1のオーディオ駆動装置と、第2のオーディオ信号を出力し、第2の軸上方向をもつ第2のオーディオ駆動装置と、第3のオーディオ信号を出力し、第3の軸上方向をもつ第3のオーディオ駆動装置と、前記第1のオーディオ駆動装置のための第1の駆動信号を第1の信号から生成する第1の駆動装置と、前記第2のオーディオ駆動装置のための第2の駆動信号を第2の信号から生成する第2の駆動装置と、前記第3のオーディオ駆動装置のための第3の駆動信号を第の信号から生成する第3の駆動装置とを有し、前記第1の軸上方向と前記第2の軸上方向との間の角度は、90°よりも大きく、前記第1の軸上方向と前記第3の軸上方向との間の角度は、45°よりも大きく、前記第2の軸上方向と前記第3の軸上方向との間の角度は、45°よりも大きく、前記第1の駆動装置及び前記第1のオーディオ駆動装置は、ともに第1の位相応答をもち、前記第2の駆動装置及び前記第2のオーディオ駆動装置は、ともに第2の位相応答をもち、前記第3の駆動装置及び前記第3のオーディオ駆動装置は、ともに第3の位相応答をもち、前記第1の信号、前記第2の信号及び前記第3の信号は、少なくとも1つの共通の信号成分を有し、前記第1の位相応答は、第1の周波数を超える周波数間隔において、90°〜270°の間で前記第2の位相応答からずれており、前記第3の位相応答は、前記第1の位相応答に近い第1の位相間隔と前記第2の位相応答に近い第2の位相間隔との間で変動を伴う変動位相応答である、サウンドシステムの動作方法が提供される。
【0060】
本発明のこれら並びに他の態様、特徴及び利点は、後述される実施形態から明らかになり、前記実施形態を参照して説明される。
【0061】
本発明の実施形態は、単なる例により、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の幾つかの実施形態によるスピーカ装置の例を示す。
【図2】本発明の幾つかの実施形態によるサウンドシステムの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下の説明は、ステレオ信号のサウンド再生に適用可能な本発明の実施形態にフォーカスしている。しかしながら、本発明は、このアプリケーションに限定されるものではなく、例えばモノラル又はサラウンドサウンド信号を含む多くの他のタイプの信号のサウンド再生に適用され得ることが理解されるだろう。
【0064】
図1は、本発明の幾つかの実施形態によるスピーカ装置の例を示している。本例において、3つの駆動部101,103,105が筺体107内に搭載されている。各駆動部は、特に、ラウドスピーカ、又は、供給された(電気)信号からオーディオ信号を生成し得る他のサウンド変換器であり得る。本例において、3つの駆動部101,103,105は、実質的に同一のものである(即ち、これらは、全て同じタイプのスピーカであり、製造上のばらつき及び公差に起因して異なるだけである)。しかしながら、他の実施形態において異なるタイプの駆動部が用いられてもよいことが理解されるだろう。
【0065】
本例において、駆動部101,103,105は、これらが異なる方向にサウンド信号を放射するように、互いに角度付けされる(即ち、これらのオーディオビームは、互いに角度付けされる)。特に、各駆動部101,103,105は、軸上方向109,111,113をもち、駆動部101,103,105は、軸上方向109,111,113が互いに角度付けされるように設けられる。
【0066】
駆動部の軸上方向は、特に、対称性をもつ放射軸である。例えば、駆動部は、回転不変性であるか、又は、軸上方向の周りで対称性をもつ。軸上方向は、駆動部の最も高いサウンド出力の方向である。それ故、軸上方向は、最大サウンドエネルギが放射される方向に対応する。軸上方向は、特に、駆動部の中央を通る軸により規定され得る。
【0067】
特定の例において、第3の駆動部105が中央に設けられ、他の2つの駆動部101,103が、第3の駆動部105の軸上方向109の周りに対称的に設けられる。使用状況において、第3の駆動部105は、名目上の聴取位置に向かって指向されることが多い中央駆動部であるだろう。それ故、第3の駆動部105は、特に、前方発射型の駆動部であり、筺体107の中央に聴覚中枢をもつ。それ故、典型的には、第3の駆動部105は、スピーカ装置のための前方対面式のスピーカと見なされるだろう。
【0068】
本例において、2つの他の駆動部101,103は、これらが実質的に横方向にオーディオ信号を放出するように、横向きの配置で搭載されている。それ故、本例において、第3の駆動部103の軸上方向109と第1及び第2の駆動部101,103の軸上方向111,113との間のそれぞれの角度α及びβは実質的に90°であり、第1及び第2の駆動部101,103の軸上方向111,113の間の角度α+βは実質的に180°である。しかしながら、他の実施形態において他の配置が用いられ、述べられたスピーカ装置の利点が他の角度に対して見出され得ることが理解されるだろう。
【0069】
特に、有利な性能は、それぞれの角度α及びβが少なくとも45°である場合に見出され得ることが理解されている。向上した性能は、135°よりも小さいα及びβの角度に対して見出されることも理解されている。実際には、多くの実施形態において、向上した性能は、65°〜115°、特に80°〜110°の角度α及びβに対して実現される。
【0070】
特定の例において、αがβに等しい対称的な配置が用いられる。しかしながら、他の実施形態において、α及びβが異なる値をもつように非対称的な配置が用いられてもよいことが理解されるだろう。しかしながら、斯様な配置は、双方のα及びβが45°を上回り、それ故に軸上方向111,113の間の角度α+βが90°を上回るように設けられるだろう。
【0071】
本装置において、駆動部101,103,105の間の距離は、短く保たれ、特に、駆動部101,103,105の間の距離は、50cmよりも短く保たれる。特に、外側駆動部101,103の間の距離は、50cmよりも短く、多くの実施形態においては30cmよりも短く保たれる。
【0072】
これは、駆動部101,103,105から聴取者へのオーディオ経路の経路長についての任意の差分をオーディオ信号の波長よりも大幅に小さくする。結果として、経路長についての前記差分によりもたらされた位相差は、比較的小さく維持され得る。特に、小さな距離は、駆動部101,103,105が、分散されたオーディオ供給源というよりむしろ、1つの場所のオーディオ供給源と見なされることを可能にする。特に、これは、外側駆動部101,103がオーディオ双極子として動作することを可能にする。
【0073】
それ故、述べられたスピーカ装置は、1つのボックススピーカシステム107が異なる方向にサウンド信号を放射することを可能にする。特に、異なる駆動部101,103,105は、前方向及び横方向にサウンドを放射するために用いられ、これにより、サウンドが、直接的に、及び、本システムが配置される音響環境内の面に反射されて受信されることを可能にする。
【0074】
本例においては、スピーカ装置の指向特性が多くの聴取状況において多くの利点を提供するために用いられることを可能にするために、専用のサウンド処理が各駆動部101〜105のために用いられる。
【0075】
図2は、図1のスピーカ装置を用いたサウンドシステムの一例を示す。本例において、第1の駆動部101は、第1の駆動ユニット入力信号から第1の駆動部101のための第1の駆動信号を生成する第1の駆動ユニット201に結合され、第2の駆動部103は、第2の駆動ユニット入力信号から第2の駆動部103のための第2の駆動信号を生成する第2の駆動ユニット203に結合され、第3の駆動部105は、第3の駆動ユニット入力信号から第3の駆動部105のための第3の駆動信号を生成する第3の駆動ユニット205に結合される。
【0076】
各駆動ユニット210〜205は、オーディオ変換器のための適切な駆動信号を生成可能な任意の駆動ユニットである。各駆動ユニット201〜205は、特に、信号を処理するためのアナログ及び/又はデジタル機能部を有し得る。特定の例において、各駆動ユニット201〜205は、信号処理アルゴリズムを実行するためのデジタル信号処理機能部と、生ずる駆動信号をアナログ領域に変換するように設けられたデジタルアナログコンバータとを有する。その後、アナログ信号は、駆動ユニット201〜205の適切なオーディオ増幅部分において増幅され得る。
【0077】
本例において、サウンドシステムは、ステレオ信号からサウンドを再生するように設けられ、3つの駆動ユニット201〜205は、ステレオプロセッサ207に結合され、ステレオプロセッサ207は、右チャンネルR及び左チャンネルLを有するステレオ信号を受信し、駆動ユニット201〜205のための3つの入力信号を生成するように設けられる。
【0078】
本例において、ステレオ信号は、デジタルサンプリングされた(非符号化の)PCM(Pulse Code Modulated)信号として受信され、ステレオプロセッサ207は、駆動ユニット201〜205のそれぞれに送られるPCM信号を生成する。
【0079】
ステレオプロセッサ207は、特に、受信した左側のステレオ信号として、"左"向きの駆動部101のための第1の駆動ユニット入力信号を生成し、第2の駆動ユニット入力信号は、受信された右側のステレオ信号として、"右"向きの駆動部103のために生成される。更に、中央の第3の駆動部105のために生成された第3の駆動ユニット入力信号は、左側及び右側で受信したステレオ信号の組み合わせとして生成され、特に、これらの2つの信号の合計として生成される。それ故、駆動ユニット201〜205のための入力信号は、
【数1】

として生成される。
【0080】
他の実施形態において、ステレオ信号から3つの駆動ユニット信号を生成する他のアプローチが用いられてもよいことが理解されるだろう。しかしながら、述べられた例において、第1の駆動ユニット入力信号は、ステレオ信号の第1のチャンネルだけに応答して生成され、ステレオ信号の第2のチャンネルからは独立している。これに対し、第2の駆動ユニット入力信号は、第2のチャンネルのみに応答して生成され、第1のチャンネルからは独立している。それ故、各ステレオチャンネルは、横向きに搭載された駆動部101,103のうち一方だけの駆動信号に寄与する。これに対し、中央の第3の駆動部105のための駆動信号は、ステレオ信号の双方のチャンネルからの貢献を有する。
【0081】
駆動部101〜105及び関連付けられた駆動ユニット201〜205からなる駆動経路のそれぞれは、放出されたオーディオ信号が経路のための駆動ユニット入力信号にどのように関連するかを特徴付ける関連付けられた伝達関数をもつ。伝達関数は、時間及び周波数の双方に依存し得る振幅応答及び位相応答により特徴付けられ得る。
【0082】
図2のサウンドシステムにおいて、各経路の位相応答は、これらが互いの組み合わせ及び図1のスピーカ装置の物理的な駆動部の配置について多くの有利な効果を提供するように慎重に制御される。
【0083】
多くの実施形態において、実質的に同一の駆動部が用いられ、従って、各駆動部の位相応答は実質的に同一である。従って、駆動部の位相応答は、多くの実施形態において、無視され、経路間の位相応答の差分は、駆動ユニットの位相応答のみにより決定される。
【0084】
簡潔さ及び明確さのために、以下の説明は、駆動部101〜105は実質的に同一であり、これらが僅かな位相応答(及び振幅)の差分だけをもつと仮定される実施形態にフォーカスするだろう。従って、駆動部の位相応答は無視され、経路の位相応答が、対応する駆動ユニットの位相応答のみにより制御されるものとみなされるだろう。しかしながら、斯様な前提が適さない実施形態において、駆動ユニット201〜205及び駆動部101〜105から生ずる位相応答が一緒に考慮されるだろう。特に、各駆動ユニット201〜205の位相応答は、駆動部101〜105の測定された位相応答の差分に対して補償され得る。
【0085】
本システムにおいて、第1の駆動ユニット201及び第2の駆動ユニット203は、第1の周波数より大きい周波数間隔において90°〜270°だけ異なる位相応答をもつように構成される。第1の周波数は、特に、聴取者が典型的にサウンドの方向を知覚する最も大きな周波数を示す位相差をもたらす周波数である。例えば、第1の周波数は、前記間隔において200Hz〜800Hzである。更に、典型的には可聴であり方向の手掛かりを供給する最も大きな周波数を含めるために、周波数間隔は十分に大きい。
【0086】
特定の例として、第1の周波数間隔は、少なくとも1kHz〜4kHzであり、これにより、大部分の方向の手掛かりを聴取者に供給する間隔内に位相差が存在することを確実にする。多くの実施形態において、向上した性能は、周波数の差分がより大きな周波数範囲に当てはまることを確実にすることにより実現される。例えば、多くの実施形態において、周波数範囲は、少なくとも800Hz〜5kHzである。
【0087】
多くの実施形態において、第1及び第2の駆動ユニット201,203の第1及び第2の位相応答は、それぞれ、実質的に位相ずれであるように構成される。例えば、位相応答間の位相差は、周波数間隔の範囲内において170°〜190°である。
【0088】
第1及び第2の位相応答は、典型的には、時間的に不変であり、従って、常に位相差の要件を満たすことが理解されるだろう。しかしながら、幾つかの実施形態において、位相応答は、時間変動であり、ほとんどの時間で前記要件をおそらく満たすだけである。例えば、前記要件は、時間の少なくとも70%,90%又は95%で満たされ、ほとんどの時間で向上したサウンド再生をもたらす。
【0089】
図2のシステムにおいて、第3の駆動部205の第3の位相応答は、第1の位相応答に近い第1の位相間隔と第2の位相応答に近い第2の位相間隔との間の変動を伴う変動位相応答である。それ故、中央の第3の駆動部105からの放出されたオーディオ信号は、第1の駆動部101からの信号に近く第2の駆動部103からの信号から遠いものから、第2の駆動部103からの信号に近く第1の駆動部101からの信号から遠いものに(及び/又は逆もまた同様に)変動する。
【0090】
第3の駆動ユニット205の位相応答の変動は、周波数領域及び/又は時間領域において供給され得る。以下の説明は、周波数領域における位相変動にフォーカスしている。
【0091】
それ故、斯様な例において、第3の駆動ユニットの位相応答は、幾つかの周波数での第1の駆動ユニット201の位相応答に近いものから、他の周波数での第2の駆動ユニット203の位相応答に近いものに変動する。
【0092】
本システムにおいて、3つの駆動ユニット入力信号は、ステレオ信号から生成され、概して同一ではない。しかしながら、これらは、少なくとも幾つかの共通信号成分を含む。例えば、音楽の再生の間、サウンドステージの中央に含まれる機器が3つ全ての駆動ユニット入力信号中に存在し、それ故、3つ全ての駆動部101〜105の放出されたオーディオ信号において再生されるだろう。しかしながら、放出されたオーディオ信号の位相は異なり、この機器の横方向に放出されたサウンドは、互いに異相であり、これに対し、中央に放出されたサウンドの位相は、機器の周波数に依存し、典型的には異なる位相の範囲を含む。
【0093】
それ故、本システムにおいて、横向きの駆動部101,103には、実質的に位相ずれの信号が供給され、中央の駆動部105には、幾つかの周波数で左側の駆動部と同相(及び右側の駆動部と異相)になり、他の周波数で右側の駆動部と同相(及び左側の駆動部と異相)になるような位相変動信号が供給される。
【0094】
セットアップにおいて、横向きの駆動部101,103は双極子を形成する。これは、聴取者がスピーカ装置の目の前にいるときに非常に広範なサウンドをもたらす。しかしながら、その効果は、非常に強力であり、スピーカ装置の前の比較的小さなエリアにフォーカスされる。しかしながら、中央の駆動部105の存在は、横向きの駆動部101,103の双極子効果を弱め、異なる周波数の位相に依存する異なる周波数の他の双極子を生成するだろう。これは、より広い聴取エリアにおいて体験される実質的に増大したサウンド空間をもたらす。
【0095】
それ故、異なる放出されたオーディオ信号間の位相変動は、スピーカ装置の物理的な配置と一緒に、多くの利点を提供する。特に、これは、(例えば反射により)増大したサウンド空間の知覚を供給し得るより拡散されたサウンドを提供する。更に、本システムは、スピーカ及び聴取者位置に対する増大した感度を提供することができる。特に、広範なサウンドステージは、広範な聴取エリア内のユーザに対して供給され得る。
【0096】
ステレオ再生の特定の例において、左側及び右側の駆動部は、周波数間隔において厳密に位相ずれになるようには設けられない。むしろ、左側駆動部101には、左側ステレオ入力信号が与えられ、右側駆動部103には、位相ずれの右側ステレオ入力信号が与えられる。(リードボイス又はリード楽器のような)サウンドエネルギのほとんどは、大抵、左側及び右側のステレオ信号で同一であり、それ故、左側及び右側駆動部101,103は、主に双極子を形成している。
【0097】
しかしながら、元のステレオ信号における任意の"パンされた(panned)"信号(例えば、右側ステレオチャンネルにおいて主に現れるギター)は、最後に知覚されたサウンドステージにおける対応する位置に残り、これにより、向上したステレオ効果を供給するだろう。
【0098】
それ故、本システムは、コンパクトで1つのボックスのスピーカ装置から広範なサウンドステージの知覚を可能にする。ステレオの知覚は、幾つかのフルステレオセットアップに対して低減され得るが、これは、多くの状況において、大きな聴取エリアの聴取者に対して利用可能な改良された広範なサウンドステージという観点で、完全に受け入れ可能であるだろう。
【0099】
特に、サウンドシステムは、これがスピーカ装置を実装するために必要とされる制限された物理的寸法よりも非常に大きい場合のように音を出す。更に、聴取者がスピーカの目の前に配置されるという要件がない。それ故、本システムは、聴取環境において増大した配置の自由度を提供する。例えば、本システムは、部屋の壁、角又は中央に配置され得る。本システムは、聴取者が聴取環境において移動するという増大した自由度を提供し、又は、増大した数の聴取者又は聴取位置が生成されることを可能にする。加えて、本システムは、小さな物理的寸法をもち、低い複雑さをもち、低コストで製造される。
【0100】
第3の駆動ユニット105の位相変動は、異なる実施形態において異なることが理解されるだろう。例えば、幾つかの実施形態において、その変動は、近い位相間隔が基準位相応答の20°の範囲内にあり、これに対し、他の実施形態においては、近い位相間隔が基準位相応答の5°の範囲内にある。実際には、多くの実施形態において、位相変動は、幾つかの周波数で、第3の駆動ユニット105の位相応答と第1又は第2の駆動ユニット101,103の最も異なる位相応答との間の位相差が所与の量を上回る。例えば、位相変動は、第3の位相応答が、第1の位相応答から離れた所与の量よりも多いものから、第2の位相応答から離れた所与の量よりも多いものに変動するようになる。この値は、例えば、特定の実施形態の特定の要件に依存して60°,90°,120°,150°又は170°になる。
【0101】
特定の実施形態において、位相変動は周波数領域において実行され、位相変動は、第3の位相応答が、少なくとも第1の周波数サブ間隔における(第1の位相応答に近い)第1の位相間隔の範囲内にあり、少なくとも第2の周波数サブ間隔における(第2の位相応答に近い)第2の位相間隔の範囲内にあるというものである。
【0102】
それ故、位相変動が取り込まれた周波数間隔に関して、第3の位相応答は、両側の駆動部101,103のうち一方の位相応答に近い周波数間隔から、両側の駆動部101,103のうち他方の位相応答に近い周波数間隔への少なくとも1つの遷移をもつ。
【0103】
周波数間隔の範囲内において生ずる位相遷移の数は、生ずるサウンドの知覚に対して顕著な効果をもつ。特に、より少ない遷移に関しては、位相変動により得られた利点が低減される傾向にあり、効果が小さくなる。更に、増大した数の遷移に関しては、生成されたサウンドの知覚は劣化する傾向にあり、特に、聴取者は、位相変動により取り込まれたアーチファクトを知覚し始める(換言すれば、位相変動自体が目立ち始め得る)。
【0104】
多くの体験が実行され、多くの状況及びアプリケーションにおいて、第3の位相応答が2つの最小遷移をもつときに、向上した性能が実現されることを示した。同様に、体験は、第3の位相応答が6つの最大遷移をもつときに、向上した性能が実現されることを示した。
【0105】
所望の位相応答の変動を制御及び供給する任意の適切な手法が用いられ得ることが理解されるだろう。例えば、第3の駆動ユニット205は、駆動ユニット入力信号を周波数領域に変換する離散型フーリエ変換を含み得る。そして、それぞれの結果としてのビン(bin)の位相は、(例えば、複雑な乗算により)位相変動を生成するために変更され得る。その後、生ずる信号は、時間領域に戻すように変換され、第3の駆動部105への供給のためのアナログ領域に変換される。
【0106】
特定の例において、第3の駆動装置は、周波数変動位相応答をもつ少なくとも1つの全域通過フィルタを有する。特に、駆動装置は、中央の駆動部105が異なる周波数の左側及び右側の駆動部101,103と同相又は位相ずれに交互になるようにデザインされた一次全域通過フィルタのカスケードを有する。これは、所望の位相変動の効率的な依然として低減された複雑な取り込み及び制御を可能にする。
【0107】
幾つかの実施形態において、位相変動は、代わりに又は追加的に、時間領域において実行され得る。例えば、第3の駆動ユニット205の全域通過フィルタの第1の特性は、時間的に動的に変動され得る。他の例として、第3の駆動ユニット205の位相応答は、小さな時間変動遅延を取り込むことにより、時間的に動的に変動され得る。
【0108】
幾つかのアプリケーションおよび状況において、追加又は代わりの時間領域変動は、改良された性能を提供し、改良されたユーザ体験を可能にする。また、幾つかの実施形態において、時間領域変動は取り込み易くなる。
【0109】
幾つかの実施形態において、駆動ユニット201〜205の動作は、低周波数では高周波数と異なる。特に、駆動ユニット201〜205は、放出されたサウンド信号が低周波数でより多く同相になる信号を生成するように構成され得る。
【0110】
例えば、第1及び第2の駆動ユニット201,203は、第1の位相応答と第2の位相応答との間の差分が所与の周波数の下の周波数に対して45°を超えないように構成される。実際には、幾つかの実施形態において、位相差は、低周波数に対して20°又は10°を超えないように維持される。
【0111】
同様に、第3の駆動ユニット205は、第1の位相応答と第3の位相応答との間の差分が所与の周波数の下の周波数に対して45°を超えないように構成される。実際には、幾つかの実施形態において、位相差は、低周波数に対して20°又は10°を超えないように維持される。
【0112】
放出されたオーディオ信号が低周波数でより多く同相になることを確実にすることにより、3つの駆動部101〜105から放出されたサウンド信号が聴取位置で(より多く)確実にまとまることが実現され、これにより、増大した音圧レベルを供給する。
【0113】
特に、低周波数は、知覚可能な方向の手掛かりを有さない傾向にあり、任意の顕著な空間的効果を供給しない(聴取者は、低周波音が聞こえる場所では効果的に聞くことができない)。それ故、低周波数に対する最適化は、より高い音圧レベルを提供することを目的とし得る。
【0114】
所与の周波数を超えない放出されたサウンド信号が(より高い周波数に対して)分離されるよりむしろ同相に調整される所与の周波数は、個々の実施形態及びアプリケーションの嗜好及び特性に依存するだろう。しかしながら、多くの状況において、向上した性能は、400Hzの周波数に対して実現される。幾つかのアプリケーションにおいて、特に有利な性能は、200Hz〜800Hzの周波数に対して実現される。
【0115】
幾つかの実施形態において、第1及び第2の駆動ユニット201,203のうち少なくとも一方の利得応答は、2kHzの周波数より大きい少なくとも1つの周波数間隔における周波数を増大させるための増大する利得を有する。周波数間隔は、少なくとも2〜5kHzの周波数範囲をカバーし得る。
【0116】
特に、横向きの駆動部101,103用の駆動ユニット201,203のそれぞれは、ブーストを高周波数に供給するための機能性を有する。例えば、駆動ユニット201,203のそれぞれは、3kHzよりも高い周波数に対して利得を増大させるハイパスフィルタを含み得る。
【0117】
これは、多くのアプリケーションにおいて、向上した性能を提供することができ、特に、横向き方向の手掛かりを生成するために反射されるのに最も適した周波数の増大した強調を提供することができる。それ故、向上した空間的体験が実現される。
【0118】
前記の説明は、1つだけの駆動部が、放射されたサウンド経路の各方向に対して用いられることにフォーカスしたが、複数の駆動部が他の実施形態において用いられてもよいことが理解されるだろう。
【0119】
例えば、幾つかの実施形態において、横向きの装置のうちの一方又は双方は、複数の駆動ユニットを有してもよい。例えば、1つのラウドスピーカよりもむしろ、横向きに搭載された装置のそれぞれは、同一方向に角度付けされた2又はそれ以上のスピーカを有してもよい。
【0120】
典型的な使用状況において、横向きに配置された駆動部101,103は、中央の駆動部105よりも多くのパワーを放射する必要があり、これは、同一方向に放射する多くの駆動部の使用により促進され得る。
【0121】
幾つかの実施形態において、前方対面式スピーカ装置が複数の駆動ユニットを有してもよい。それ故、1つの中央の駆動部105は、幾つかの実施形態において、前方に角度付けされた複数の駆動部により置き替えられてもよい。これは、例えば、個々の駆動ユニットの配置について追加の自由度を提供することができる。例えば、中央の駆動部105は、間に或る空間をもつ2つの駆動部に置き替えられ、これにより、筺体107が、例えばディスプレイのような中央にあるべき部品を含めることを可能にする。
【0122】
述べられた実施形態はステレオ信号からの再生にフォーカスされたが、述べられた原理は、他のタイプの信号に適用されてもよいことが理解されるだろう。
【0123】
例えば、モノラル信号は、入力信号として3つ全ての駆動ユニット201〜205に供給されてもよく、中央の駆動部105からの変動位相を伴い横向きの駆動部101,105により位相ずれで出力される同一の信号の生成をもたらす。これは、分配されたサウンドステージとして、強化された聴取体験を提供することができ、及び/又は、拡散されたサウンドが単純なモノラル信号から体験され得る。
【0124】
他の例として、サウンドシステムは、サラウンドサウンド信号を再生するために用いられてもよい。例えば、サラウンドサウンドプロセッサは、図2のステレオプロセッサをと置き換えて、第1の駆動ユニット入力信号を左前の信号と左後ろの信号との合計として、第2の駆動ユニット入力信号を右前の信号と右後ろの信号との合計として、第3の駆動ユニット入力信号を中央の前の信号として生成する。
【0125】
明確に前述されたが、信号の処理は、適切なボリューム調節、増幅、アナログ及びデジタル領域間の変換、周波数及び時間領域間の変換を含み得ることが理解されるだろう。
【0126】
前記説明は、明確さのために、異なる機能のユニット及びプロセッサを参照して本発明の実施形態を説明したことが理解されるだろう。しかしながら、異なる機能のユニット又はプロセッサ間の機能性の任意の適切な分配が、本発明から逸脱することなく用いられ得ることが明らかであろう。例えば、別個のプロセッサ又はコントローラにより実行されるように示された機能性は、同一のプロセッサ又はコントローラにより実行されてもよい。それ故、特定の機能のユニットへの言及は、単に、厳密に論理的又は物理的な構造又は組織を示すよりもむしろ、述べられた機能を提供するための適切な手段への言及として理解されるものである。
【0127】
本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はこれらの任意の組み合わせを含む任意の適切な形式で実装され得る。本発明は、少なくとも部分的に、1又はそれ以上のデータプロセッサ及び/又はデジタル信号プロセッサを実行するコンピュータソフトウェアとしてオプション的に実装され得る。本発明の一実施形態の要素及び部品は、任意の適切な手法で物理的に、機能的に、及び、論理的に実装され得る。実際には、機能性は、1つのユニットにおいて、複数のユニットにおいて、又は、他の機能のユニットの部分として実装され得る。本発明は、1つのユニットにおいて実装されてもよく、又は、異なるユニット及びプロセッサの間で物理的及び機能的に分配されてもよい。
【0128】
本発明は幾つかの実施形態と組み合わせて説明されたが、ここに記載された特定の形式に限定されることを意図するものではない。むしろ、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定される。追加的に、特徴が特定の実施形態と組み合わせて述べられているように見えるが、当業者は、述べられた実施形態の種々の特徴が本発明に従って組み合わせられ得ることを理解するだろう。特許請求の範囲において、"有する"という用語は、他の要素又はステップの存在を除外するものではない。
【0129】
更に、個々に記載したが、複数の手段、要素又は方法ステップは、例えば1つのユニット又はプロセッサにより実装されてもよい。追加的に、個々の特徴が異なる請求項に含まれるが、これらは有利に組み合わせられてもよく、異なる請求項における包含は、特徴の組み合わせが実現可能及び/又は有利ではないことを意味するものではない。請求項の一のカテゴリにおける特徴の包含は、このカテゴリへの限定を意味するものではなく、むしろ、その特徴が必要に応じて他の請求項のカテゴリに同等に適用可能であることを示す。更に、請求項における特徴の順序は、特徴がもたらされるべき任意の特定の順序を意味するものではなく、特に、方法に係る請求項における個々のステップの順序は、ステップがこの順序で実行されるべきことを意味するものではない。むしろ、ステップは、任意の適切な順序で実行され得る。加えて、単数の言及は複数を除外するものではない。それ故、単数表記、"第1"、"第2"等への言及は複数を除外するものではない。明確な例として単に提供された請求項中の参照符号は、如何なる手法においても請求項の範囲を限定するものとして考慮されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サウンドを生成するためのサウンドシステムであって、
第1のオーディオ信号を出力し、第1の軸上方向をもつ第1のオーディオ駆動装置と、
第2のオーディオ信号を出力し、第2の軸上方向をもつ第2のオーディオ駆動装置と、
第3のオーディオ信号を出力し、第3の軸上方向をもつ第3のオーディオ駆動装置と、
前記第1のオーディオ駆動装置のための第1の駆動信号を第1の信号から生成する第1の駆動装置と、
前記第2のオーディオ駆動装置のための第2の駆動信号を第2の信号から生成する第2の駆動装置と、
前記第3のオーディオ駆動装置のための第3の駆動信号を第3の信号から生成する第3の駆動装置とを有し、
前記第1の軸上方向と前記第2の軸上方向との間の角度は、90°よりも大きく、
前記第1の軸上方向と前記第3の軸上方向との間の角度は、45°よりも大きく、
前記第2の軸上方向と前記第3の軸上方向との間の角度は、45°よりも大きく、
前記第1の駆動装置及び前記第1のオーディオ駆動装置は、ともに第1の位相応答をもち、
前記第2の駆動装置及び前記第2のオーディオ駆動装置は、ともに第2の位相応答をもち、
前記第3の駆動装置及び前記第3のオーディオ駆動装置は、ともに第3の位相応答をもち、
前記第1の信号、前記第2の信号及び前記第3の信号は、少なくとも1つの共通の信号成分を有し、
前記第1の位相応答は、第1の周波数を超える周波数間隔において、90°〜270°の間で前記第2の位相応答からずれており、
前記第3の位相応答は、前記第1の位相応答に近い第1の位相間隔と前記第2の位相応答に近い第2の位相間隔との間で変動を伴う変動位相応答である、サウンドシステム。
【請求項2】
位相の前記変動は、周波数間隔において周波数領域変動を有する、請求項1に記載のサウンドシステム。
【請求項3】
前記第3の位相応答は、前記周波数間隔の少なくとも第1の周波数サブ間隔における前記第1の位相間隔の範囲内であって、前記周波数間隔の少なくとも第2の周波数サブ間隔における前記第2の位相間隔の範囲内にある、請求項2に記載のサウンドシステム。
【請求項4】
前記第3の位相応答は、前記周波数間隔の範囲内において前記第1の位相間隔と前記第2の位相間隔との間の2つの最小遷移をもつ、請求項2に記載のサウンドシステム。
【請求項5】
前記第3の位相応答は、前記周波数間隔の範囲内において前記第1の位相間隔と前記第2の位相間隔との間の6つの最大遷移をもつ、請求項2に記載のサウンドシステム。
【請求項6】
前記第3の駆動装置は、周波数変動位相応答をもつ少なくとも1つの全域通過フィルタを有する、請求項2に記載のサウンドシステム。
【請求項7】
位相の前記変動は、時間領域変動を有する、請求項1に記載のサウンドシステム。
【請求項8】
ステレオ信号の第1の信号のみから前記第1の信号を、前記ステレオ信号の第2の信号のみから前記第2の信号を、及び、前記ステレオ信号の前記第1の信号及び前記第2の信号の双方から前記第3の信号を生成する手段を更に有する、請求項1に記載のサウンドシステム。
【請求項9】
前記第1の位相応答及び前記第2の位相応答は、前記第1のオーディオ信号及び前記第2のオーディオ信号の共通の信号成分が実質的に位相ずれとなる、請求項1に記載のサウンドシステム。
【請求項10】
前記第1の位相応答と前記第2の位相応答との間の差は、前記第1の周波数よりも低い前記第2の周波数を下回る周波数に対して45°を下回る、請求項1に記載のサウンドシステム。
【請求項11】
前記第1の位相応答と前記第3の位相応答との差は、前記第2の周波数を下回る周波数に対して45°を下回る、請求項10に記載のサウンドシステム。
【請求項12】
前記第1の駆動装置及び前記第2の駆動装置のうち少なくとも一方の利得応答は、2kHzの周波数を超える少なくとも1つの周波数間隔において周波数を増大させるための増大利得を有する、請求項1に記載のサウンドシステム。
【請求項13】
前記第1のオーディオ駆動装置及び前記第2のオーディオ駆動装置のうち少なくとも一方は、複数のドライバユニットを有する、請求項1に記載のサウンドシステム。
【請求項14】
前記第3のオーディオ駆動装置は、複数の駆動ユニットを有する、請求項1に記載のサウンドシステム。
【請求項15】
サウンドを生成するためのサウンドシステムの動作方法であって、
第1の軸上方向をもつ第1のオーディオ駆動装置が、第1のオーディオ信号を出力し、
第2の軸上方向をもつ第2のオーディオ駆動装置が、第2のオーディオ信号を出力し、
第3の軸上方向をもつ第3のオーディオ駆動装置が、第3のオーディオ信号を出力し、
第1の駆動装置が、前記第1のオーディオ駆動装置のための第1の駆動信号を第1の信号から生成し、
第2の駆動装置が、前記第2のオーディオ駆動装置のための第2の駆動信号を第2の信号から生成し、
第3の駆動装置が、前記第3のオーディオ駆動装置のための第3の駆動信号を第3の信号から生成し、
前記第1の軸上方向と前記第2の軸上方向との間の角度は、90°よりも大きく、
前記第1の軸上方向と前記第3の軸上方向との間の角度は、45°よりも大きく、
前記第2の軸上方向と前記第3の軸上方向との間の角度は、45°よりも大きく、
前記第1の駆動装置及び前記第1のオーディオ駆動装置は、ともに第1の位相応答をもち、
前記第2の駆動装置及び前記第2のオーディオ駆動装置は、ともに第2の位相応答をもち、
前記第3の駆動装置及び前記第3のオーディオ駆動装置は、ともに第3の位相応答をもち、
前記第1の信号、前記第2の信号及び前記第3の信号は、少なくとも1つの共通の信号成分を有し、
前記第1の位相応答は、第1の周波数を超える周波数間隔において、90°〜270°の間で前記第2の位相応答からずれており、
前記第3の位相応答は、前記第1の位相応答に近い第1の位相間隔と前記第2の位相応答に近い第2の位相間隔との間で変動を伴う変動位相応答である、サウンドシステムの動作方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−515926(P2011−515926A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550296(P2010−550296)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際出願番号】PCT/IB2009/050894
【国際公開番号】WO2009/112980
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】