説明

サスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、およびハードディスクドライブ

【課題】 本発明は、溶融した半田がカバー層に接触することを抑制し、それゆえ、上述のようなカバー層の損傷を防止することができ、磁気ヘッドスライダや外部回路との電気的な接合信頼性を確保できるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、およびハードディスクドライブを提供することを目的とするものである。
【解決手段】 前記サスペンション用基板の配線と端子部との間に、前記端子部の幅よりも小さい線幅を有する接続線を形成し、前記接続線の前記配線と接続されている側をカバー層で被覆し、前記接続線の前記端子部と接続されている側を前記カバー層から露出させて、前記端子部の上には前記カバー層を形成しないことにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ(HDD)に用いられるサスペンション用基板(フレキシャ)に関し、より詳しくは、端子部近傍のカバー層の損傷を防止し、磁気ヘッドスライダや外部回路の端子部との電気的な接合信頼性を向上させることができるサスペンション用基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハードディスクドライブ(HDD)は、データが記憶されるディスクに対してデータの書き込み、および読み取りを行う磁気ヘッドスライダが実装されるサスペンション用基板を備えている。
このサスペンション用基板は、バネ性を有する金属支持体と、前記金属支持体の上に形成されたベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の上に形成された配線および端子部と、を有している。前記端子部は、磁気ヘッドスライダや外部回路と電気的に接続するためのものである。
【0003】
ここで、一般に、前記配線は銅(Cu)を含む材料からなり、外気との接触による腐食を防止するために、ポリイミド等からなるカバー層によって被覆保護されている。一方、前記端子部の大部分は、磁気ヘッドスライダや外部回路と電気的に接続するために、カバー層から露出しており、その表面には、金(Au)等を含む材料からなるめっき膜が形成されている。
なお、前記配線と前記端子部の境界においては、例えば、図14および図15に示すように、一般に、前記配線のみならず、前記端子部の一部もカバー層で覆われている形態になっている。
ここで、図14は、従来のサスペンション用基板の一例における端子部近傍の構成の説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)からカバー層およびめっき膜を削除した図であり、図15は、図14(a)のG−G断面図である。
【0004】
このサスペンション用基板の端子部と、磁気ヘッドスライダや外部回路の端子部とを電気的に接続する方法としては、例えば、両者の端子部の間を、溶融した半田で接合する方法(ソルダージェット法)が知られている(特許文献1)。
【0005】
また、球状の半田(半田ボール)を、配線の端子部の上に配置して、その後、レーザ照射で加熱して半田ボールを溶融させて接合する方法(半田ボールボンディング法)もある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−50018号公報
【特許文献2】特開2003−123217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、HDDの大容量化に伴って磁気ヘッドの高機能化が進んでおり、磁気ヘッドスライダの端子部の数は増加する傾向にあり、これに伴って、サスペンション用基板の端子部の数も増加する傾向にある。そして、サスペンション用基板の限られた領域に多くの端子部を配置するために、個々の端子部の平面サイズは縮小化される傾向にある。
【0008】
しかしながら、上述のように、前記端子部の平面サイズが縮小化される場合、端子部の一部もカバー層で覆われている構造の従来のサスペンション用基板においては、磁気ヘッドスライダや外部回路との接続の際に前記端子部の上に形成される半田と、前記端子部の一部を被覆するカバー層とが、従来よりも接近することになり、溶融した半田が前記端子部の上を濡れ広がってカバー層に接触し、場合によっては、半田の熱でカバー層が損傷してしまうという恐れがある。
そして、カバー層が損傷してしまうと、その損傷部近傍の端子部や配線が腐食されてしまい、磁気ヘッドスライダや外部回路との電気的接続の信頼性が低下してしまうという恐れも生じる。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、溶融した半田がカバー層に接触することを抑制し、それゆえ、上述のようなカバー層の損傷を防止することができ、磁気ヘッドスライダや外部回路との電気的な接合信頼性を確保できるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、およびハードディスクドライブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、種々研究した結果、前記サスペンション用基板の配線と端子部との間に、前記端子部の幅よりも小さい線幅を有する接続線を形成し、前記接続線の前記配線と接続されている側をカバー層で被覆し、前記接続線の前記端子部と接続されている側を前記カバー層から露出させて、前記端子部の上には前記カバー層を形成しないことにより、上記課題を解決できることを見出して本発明を完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、金属支持体と、前記金属支持体の上に形成されたベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の上に形成された配線および端子部と、を有するサスペンション用基板であって、前記配線と前記端子部とは、接続線を介して電気的に接続されており、前記配線、および、前記接続線の前記配線と接続されている側の一部が、カバー層によって被覆されており、前記接続線は、前記配線から複数本に分岐して前記端子部に接続されており、前記端子部に接続される前記複数本に分岐した接続線の線幅は、前記端子部の幅よりも小さいことを特徴とするサスペンション用基板である。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記接続線の線幅が、前記配線の線幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用基板である。
【0013】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記複数本に分岐した接続線の線幅を合計した大きさが、前記配線の線幅と同じ大きさ、またはそれ以上の大きさであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサスペンション用基板である。
【0014】
また、本発明の請求項4に係る発明は、金属支持体と、前記金属支持体の上に形成されたベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の上に形成された配線および端子部と、を有するサスペンション用基板であって、前記配線と前記端子部とは、接続線を介して電気的に接続されており、前記配線、および、前記接続線の前記配線と接続されている側の一部が、カバー層によって被覆されており、前記接続線の線幅は、前記端子部の幅よりも小さく、前記接続線の前記カバー層から露出する部分の長さは、前記カバー層と前記端子部との間の距離よりも長いことを特徴とするサスペンション用基板である。
【0015】
また、本発明の請求項5に係る発明は、前記接続線の前記カバー層から露出する部分が、屈曲部を有することを特徴とする請求項4に記載のサスペンション用基板である。
【0016】
また、本発明の請求項6に係る発明は、前記接続線の線幅が、前記配線の線幅と同じ大きさ、またはそれ以上の大きさであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のサスペンション用基板である。
【0017】
また、本発明の請求項7に係る発明は、前記端子部の表面、および、前記接続線のカバー層から露出する部分の表面には、めっき膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のサスペンション用基板である。
【0018】
また、本発明の請求項8に係る発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のサスペンション用基板と、ロードビームとを含むことを特徴とするサスペンションである。
【0019】
また、本発明の請求項9に係る発明は、請求項8に記載のサスペンションと、前記サスペンションに実装された磁気ヘッドスライダとを有することを特徴とするヘッド付サスペンションである。
【0020】
また、本発明の請求項10に係る発明は、請求項9に記載のヘッド付サスペンションを含むことを特徴とするハードディスクドライブである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、溶融した半田がカバー層に接触することを抑制でき、カバー層の損傷を防止し、磁気ヘッドスライダや外部回路との電気的な接合信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るサスペンション用基板の一例を示す概略平面図である。
【図2】本発明に係るサスペンション用基板の第1の実施形態における端子部近傍の構成の説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)からカバー層およびめっき膜を削除した図である。
【図3】図2(a)のA−A断面図である。
【図4】本発明に係るサスペンション用基板の第1の実施形態における端子部近傍の構成と半田の関係を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【図5】本発明に係るサスペンション用基板の第2の実施形態における端子部近傍の構成の説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)からカバー層およびめっき膜を削除した図である。
【図6】図5(a)のC−C断面図である。
【図7】本発明に係るサスペンション用基板の第2の実施形態における端子部近傍の構成と半田の関係を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のD−D断面図である。
【図8】本発明に係るサスペンション用基板の第3の実施形態における端子部近傍の構成の説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)からカバー層およびめっき膜を削除した図である。
【図9】図8(a)のE−E断面図である。
【図10】本発明に係るサスペンション用基板の第3の実施形態における端子部近傍の構成と半田の関係を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のF−F断面図である。
【図11】本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図12】本発明のヘッド付サスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図13】本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略斜視図である。
【図14】従来のサスペンション用基板の一例における端子部近傍の構成の説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)からカバー層およびめっき膜を削除した図である。
【図15】図14(a)のG−G断面図である。
【図16】従来のサスペンション用基板の一例における端子部近傍の構成と半田の関係を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のH−H断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、およびハードディスクドライブについて詳細に説明する。
【0024】
[サスペンション用基板]
まず、本発明に係るサスペンション用基板について説明する。
図1は、本発明に係るサスペンション用基板の全体像を例示する概略平面図である。
図1に示すように、本発明に係るサスペンション用基板1は、先端部分に磁気ヘッドスライダを搭載するタング部2、および、磁気ヘッドスライダのスライダ端子部と電気的に接続される端子部が配設された端子部領域3を有し、テール側端部に外部回路と電気的に接続される端子部が配設された端子部領域4を有し、端子部領域3と端子部領域4との間に、少なくとも、前記磁気ヘッドと前記外部回路とを電気的に接続するための配線群5、6を有している。
【0025】
ここで、配線群5と配線群6は、相互の電気的な影響を極力避けるため、および、サスペンション用基板の力学的平衡を保つため、各々、サスペンション用基板1の長手方向の両外縁に沿うように配設されている。配線群5、6を構成する配線は、書込配線、読取配線、電源配線、グランド配線等である。
次に、本発明に係るサスペンション用基板の端子部近傍の構成について説明する。
【0026】
(第1の実施形態)
まず、本発明に係るサスペンション用基板の第1の実施形態における端子部近傍の構成について説明する。
図2は、本発明に係るサスペンション用基板の第1の実施形態における端子部近傍の構成の説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)からカバー層およびめっき膜を削除した図である。そして、図3は、図2(a)のA−A断面図である。また、図4は、本発明に係るサスペンション用基板の第1の実施形態における端子部近傍の構成と半田の関係を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【0027】
一方、図14は、従来のサスペンション用基板の一例における端子部近傍の構成の説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)からカバー層およびめっき膜を削除した図である。そして、図15は、図14(a)のG−G断面図である。また、図16は、従来のサスペンション用基板の一例における端子部近傍の構成と半田の関係を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のH−H断面図である。
【0028】
まず、図14および図15に示すように、従来のサスペンション用基板100は、金属支持体111と、前記金属支持体111の上に形成されたベース絶縁層112と、前記ベース絶縁層112の上に形成された配線113および端子部114と、を有するサスペンション用基板であって、配線113と端子部114とは、直接接続されており、端子部114の外縁部(主に、配線113と接続されている部位を含む外縁部)は、カバー層116に覆われているが、端子部114の中央部を含む大部分はカバー層116から露出しており、その表面には、めっき膜117が形成されている。
【0029】
このような構成を有する従来のサスペンション用基板の端子部114においては、外部回路の端子部等と半田接続する際に、図16に示すように、溶融した半田118が、冷えて固まる前に、端子部114のめっき膜117上を濡れ拡がってカバー層116に接触し、場合によっては、半田118の熱によって、カバー層116が損傷してしまうという恐れがある。
そして、カバー層116が損傷してしまうと、半田接触部120近傍の端子部114や配線113が腐食されてしまい、磁気ヘッドスライダや外部回路との電気的接続の信頼性が低下してしまうという恐れも生じる。
【0030】
一方、本実施形態における本発明に係るサスペンション用基板1は、図2および図3に示すように、金属支持体11と、前記金属支持体11の上に形成されたベース絶縁層12と、前記ベース絶縁層12の上に形成された配線13および端子部14と、を有するサスペンション用基板であって、前記配線13と前記端子部14とは、接続線15を介して電気的に接続されており、前記配線13、および、前記接続線15の前記配線13と接続されている側の一部が、カバー層16によって被覆されており、前記接続線15は、前記配線13から複数本に分岐して前記端子部14に接続されており、前記端子部14に接続される前記複数本に分岐した接続線15の線幅(W1、W2、W3、W4)は、前記端子部14の幅(L)よりも小さいことを特徴とする。
【0031】
すなわち、図11および図12に示す従来のサスペンション用基板においては、端子部114の配線113と接する部位を含む外縁部の上はカバー層116に覆われていたが、図2および図3に示す本発明に係るサスペンション用基板1においては、端子部14の上にはカバー層16が形成されておらず、代わりに接続線15の配線13に近い側の一部がカバー層16に覆われている。
なお、前記端子部14の表面、および、前記接続線15のカバー層16から露出する部分の表面には、めっき膜17が形成されている。
【0032】
図2において、接続線15は1本の配線13から2本に分岐して端子部14に接続されており、分岐した接続線15の線幅(W1、W2、W3、W4)は、端子部14の幅(L)よりも小さくなっている。
なお、図2においては、接続線15が1本の配線13から2本に分岐して端子部14に接続されている例を示しているが、本発明においては、接続線の分岐は2本に限られず、3本以上に分岐していても良い。
また、分岐した接続線の線幅(W1、W2、W3、W4)は、互いに同じ大きさであっても良く、異なる大きさであっても良い。
【0033】
上述のような構成を有するため、本発明に係るサスペンション用基板1においては、溶融した半田がカバー層に接触することを抑制でき、それゆえ、カバー層の損傷を防止でき、磁気ヘッドスライダや外部回路との電気的な接合信頼性も確保することができる。
【0034】
具体的に説明すると、図4に示すように、本発明に係るサスペンション用基板1においては、端子部14の上にはカバー層16は形成されておらず、配線13、および、接続線15の一部が、カバー層によって被覆されている。すなわち、カバー層16は、端子部14とは隔てられた位置に形成されている。
そして、上述のように、接続線15の線幅は端子部14の幅に比べて小さいため、溶融した半田18は、接続線15の上を流動しにくくなり、それゆえ、半田18とカバー層16とが、直接接触することを抑制できる。
【0035】
また、溶融した半田18から端子部14に与えられた熱は、端子部14に接続する接続線15のカバー層16から露出する部分において放熱されるため、カバー層への伝熱を抑制でき、それゆえ、伝熱によるカバー層の損傷も抑制することができる。
【0036】
さらに、本発明においては、接続線15は配線13から複数本に分岐して端子部14に接続する構成を有するため、カバー層16に接触する複数本の接続線15の各線幅をより小さくすることができ、かつ、カバー層16に接触する複数本の接続線15を、間隔をあけて配設することができる。それゆえ、接続線15を伝わってカバー層16が受ける熱も分散させることができ、カバー層16の損傷をより抑制することができる。
【0037】
したがって、本発明によれば、カバー層が損傷することによる配線の腐食を効果的に防止でき、従来のサスペンション用基板に比べて、磁気ヘッドスライダや外部回路との電気的な接合信頼性を確保することができる。
【0038】
ここで、本発明においては、前記接続線15の線幅は、前記配線13の線幅よりも小さいことが好ましい。接続線15の線幅がより小さくなることで、溶融した半田18が接続線15の上を流動することを、より抑制できるからである。
【0039】
また、前記複数本に分岐した接続線15の線幅を合計した大きさは、前記配線13の線幅と同じ大きさ、またはそれ以上の大きさであることが好ましい。
このような構成であれば、配線13と端子部14の間に接続線15を介することによる電気抵抗の増加を防止することができ、良好な信号特性を確保できるからである。
なお、配線13と接続線15は、通常、ベース絶縁層12の上に形成された同一の導体層から、レジスト製版工程やエッチング工程を経て形成されるものであるため、その厚みは同程度の大きさである。
それゆえ、上述のような、前記複数本に分岐した接続線15の線幅を合計した大きさが、前記配線13の線幅と同じ大きさ、またはそれ以上の大きさであるということは、前記複数本に分岐した接続線15の断面積を合計した大きさが、前記配線13の断面積と同じ大きさ、またはそれ以上の大きさであるということと同義である。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係るサスペンション用基板の第2の実施形態における端子部近傍の構成について説明する。
図5は、本発明に係るサスペンション用基板の第2の実施形態における端子部近傍の構成の説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)からカバー層およびめっき膜を削除した図である。そして、図6は、図5(a)のC−C断面図である。また、図7は、本発明に係るサスペンション用基板の第2の実施形態における端子部近傍の構成と半田の関係を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のD−D断面図である。
【0041】
図5および図6に示すように、本実施形態における本発明に係るサスペンション用基板1は、金属支持体11と、前記金属支持体11の上に形成されたベース絶縁層12と、前記ベース絶縁層12の上に形成された配線13および端子部14と、を有するサスペンション用基板であって、前記配線13と前記端子部14とは、接続線15を介して電気的に接続されており、前記配線13、および、前記接続線15の前記配線13と接続されている側の一部が、カバー層16によって被覆されており、前記接続線15の線幅(W5、W6)は、前記端子部14の幅(L)よりも小さく、前記接続線15の前記カバー層16から露出する部分の長さは、前記カバー層16と前記端子部14との間の距離(Z)よりも長いことを特徴とする。
なお、前記端子部14の表面、および、前記接続線15のカバー層から露出する部分の表面には、めっき膜17が形成されている。
【0042】
本実施形態における本発明に係るサスペンション用基板1においても、上述の第1の実施形態と同様に、カバー層16は、端子部14とは隔てられた位置に形成されており、接続線15の線幅(W5、W6)は、端子部14の幅(L)に比べて小さいため、図7に示すように、溶融した半田18が端子部14の上を濡れ広がる場合でも、半田18が接続線15の上を流動することは困難になり、それゆえ、半田18とカバー層16とが直接接触することを抑制できる。
【0043】
また、本実施形態においては、例えば、図5に示すように、配線13は、端子部14の左右方向から端子部14に向かって進行(直進)するように配設されているのに対し、接続線15は、カバー層16から露出した後に、配線13の進行方向とは異なる方向(斜め方向)に進行して端子部14に接続するように配設されている。
それゆえ、接続線15のカバー層16から露出する部分の長さは、カバー層16と端子部14との間の距離(Z)よりも長いことになる。
すなわち、本実施形態においては、接続線15が、配線13の進行方向と同じ方向(平行)に進行して端子部14に接続するように配設される場合よりも、接続線15の経路を長くすることができる。
それゆえ、仮に、溶融した半田が接続線15の上を流動した場合でも、カバー層に接触する恐れを小さくすることができる。
【0044】
また、上述のように、本実施形態においては、接続線15の経路を長くすることができるため、その長さの増加分に相当して、放熱性が向上し、伝熱によるカバー層の損傷も抑制することができる。
【0045】
したがって、本発明によれば、カバー層が損傷することによる配線の腐食を効果的に防止でき、従来のサスペンション用基板に比べて、磁気ヘッドスライダや外部回路との電気的な接合信頼性を確保することができる。
【0046】
なお、前記接続線15の線幅は、前記配線13の線幅と同じ大きさ、またはそれ以上の大きさであることが好ましい。
このような構成であれば、配線13と端子部14の間に接続線15を介することによる電気抵抗の増加を防止することができ、良好な信号特性を確保できるからである。
なお、配線13と接続線15は、通常、ベース絶縁層12の上に形成された同一の導体層から、レジスト製版工程やエッチング工程を経て形成されるものであるため、その厚みは同程度の大きさである。
それゆえ、上述のような、前記接続線15の線幅が、前記配線13の線幅と同じ大きさ、またはそれ以上の大きさであるということは、前記接続線15の断面積が、前記配線13の断面積と同じ大きさ、またはそれ以上の大きさであるということと同義である。
【0047】
(第3の実施形態)
次に、本発明に係るサスペンション用基板の第3の実施形態における端子部近傍の構成について説明する。
図8は、本発明に係るサスペンション用基板の第3の実施形態における端子部近傍の構成の説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)からカバー層およびめっき膜を削除した図である。そして、図9は、図8(a)のE−E断面図である。また、図10は、本発明に係るサスペンション用基板の第3の実施形態における端子部近傍の構成と半田の関係を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のF−F断面図である。
【0048】
図8および図9に示すように、本実施形態における本発明に係るサスペンション用基板1は、金属支持体11と、前記金属支持体11の上に形成されたベース絶縁層12と、前記ベース絶縁層12の上に形成された配線13および端子部14と、を有するサスペンション用基板であって、前記配線13と前記端子部14とは、接続線15を介して電気的に接続されており、前記配線13、および、前記接続線15の前記配線13と接続されている側の一部が、カバー層16によって被覆されており、前記接続線15の線幅(W7、W8)は、前記端子部14の幅(L)よりも小さく、前記接続線15の前記カバー層16から露出する部分の長さは、前記カバー層16と前記端子部14との間の距離(Z)よりも長いことを特徴とし、さらに、前記接続線15の前記カバー層16から露出する部分が、屈曲部を有することを特徴とするものである。
なお、前記端子部14の表面、および、前記接続線15のカバー層から露出する部分の表面には、めっき膜17が形成されている。
【0049】
本実施形態における本発明に係るサスペンション用基板1においても、上述の第1の実施形態、および第2の実施形態と同様に、カバー層16は、端子部14とは隔てられた位置に形成されており、接続線15の線幅(W7、W8)は、端子部14の幅(L)に比べて小さいため、図10に示すように、溶融した半田18が端子部14の上を濡れ広がる場合でも、半田18が接続線15の上を流動することは困難になり、それゆえ、半田18とカバー層16とが直接接触することを抑制できる。
【0050】
また、本実施形態においては、例えば、図8に示すように、配線13は、端子部14の左右方向から端子部14に向かって進行(直進)するように配設されているのに対し、
接続線15は、カバー層16から露出した後に、まず、配線13の進行方向に進んだ後、配線13の進行方向に対して垂直な方向に屈曲し、次に、配線13の進行方向に平行な方向に屈曲し、次いで、配線13の進行方向に垂直な方向であって先とは逆の方向に屈曲し、その後、再度、配線13の進行方向に平行な方向に屈曲して、端子部14に接続されている。
【0051】
それゆえ、接続線15のカバー層16から露出する部分の長さは、カバー層16と端子部14との間の距離(Z)よりも長いことになる。
すなわち、本実施形態においても、上述の第2の実施形態と同様に、接続線15が、配線13の進行方向と同じ方向(平行)に進行して端子部14に接続するように配設される場合よりも、接続線15の経路を長くすることができる。
それゆえ、仮に、溶融した半田が接続線15の上を流動した場合でも、カバー層に接触する恐れを小さくすることができる。
【0052】
また、上述のように、本実施形態においては、接続線15の経路を長くすることができるため、その長さの増加分に相当して、放熱性が向上し、伝熱によるカバー層の損傷も抑制することができる。
【0053】
したがって、本発明によれば、カバー層が損傷することによる配線の腐食を効果的に防止でき、従来のサスペンション用基板に比べて、磁気ヘッドスライダや外部回路との電気的な接合信頼性を確保することができる。
【0054】
なお、前記接続線15の線幅は、前記配線13の線幅と同じ大きさ、またはそれ以上の大きさであることが好ましい。
このような構成であれば、配線13と端子部14の間に接続線15を介することによる電気抵抗の増加を防止することができ、良好な信号特性を確保できるからである。
なお、配線13と接続線15は、通常、ベース絶縁層12の上に形成された同一の導体層から、レジスト製版工程やエッチング工程を経て形成されるものであるため、その厚みは同程度の大きさである。
それゆえ、上述のような、前記接続線15の線幅が、前記配線13の線幅と同じ大きさ、またはそれ以上の大きさであるということは、前記接続線15の断面積が、前記配線13の断面積と同じ大きさ、またはそれ以上の大きさであるということと同義である。
【0055】
続いて、以下、本発明のサスペンション用基板を構成する各要素について説明する。
【0056】
[金属支持体]
金属支持体11の材料としては、サスペンション用基板の支持体として機能し、所望のばね性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばステンレス鋼を挙げることができる。
金属支持体11の厚さは、例えば10μm〜30μmの範囲内、中でも15μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。
【0057】
[ベース絶縁層]
次に、本発明におけるベース絶縁層12について説明する。ベース絶縁層12は、金属支持体11の表面上に形成されるものであり、ベース絶縁層12の上に形成される配線13、端子部14、および接続線15と、金属支持体11とを電気的に絶縁するものである。
ベース絶縁層12の材料としては、所望の絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばポリイミド等を挙げることができる。また、ベース絶縁層12の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。絶縁層12の厚さは、例えば5μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜15μmの範囲内であることがより好ましい。
【0058】
[配線、端子部、および接続線]
次に、本発明における配線13、端子部14、および接続線15の材料について説明する。
配線13、端子部14、および接続線15の材料としては、例えば、金属を挙げることができ、具体的には、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)、および、これらの金属の合金等を挙げることができ、中でも銅(Cu)が好ましい。導電性が高く、安価だからである。
配線13、端子部14、および接続線15の厚さは、例えば、1μm〜18μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜12μmの範囲内であることがより好ましい。
配線13、端子部14、および接続線15は、通常、同一材料からなり、その厚みも同じである。同一工程で製版やエッチングを行うことができ、製造工程が簡略になるからである。ただし、本発明においては、配線13、端子部14、または接続線15を、それぞれ異なる材料で形成してもよい。
【0059】
[カバー層]
次に、本発明に用いられるカバー層16について説明する。腐食等による劣化を防止するため、配線13はカバー層16で覆われている。カバー層16の材料としては、例えば、ポリイミドを挙げることができる。また、カバー層16の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。カバー層16の厚さは、例えば3μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
【0060】
[めっき膜]
次に、本発明に用いられるめっき膜17について説明する。めっき膜17は、端子部14の表面、および、接続線15のカバー層16から露出する部分の表面に形成され、露出する各導体の腐食からの保護や、半田との接合強度の向上を目的とするものである。
めっき膜17は、電解めっき法により形成され、その材料としては、サスペンション用基板の端子部に用いることができるものであれば、特に制限されず、例えば、Au(金)、Ni(ニッケル)、パラジウム(Pd)などが用いられる。
めっき膜17は、多層膜として形成してもよく、例えば、電解Niめっきと電解Auめっきとを順次実施して、下層にNi、上層にAuの多層膜構造とすることができる。この場合、Ni層の厚さは、例えば、0.1μm〜3μm程度であり、Au層の厚さは、例えば、1μm〜5μm程度である。
【0061】
[サスペンション]
次に、本発明のサスペンションについて説明する。本発明のサスペンションは、上述したサスペンション用基板と、ロードビームとを含むことを特徴とするものである。
【0062】
図11は、本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。図11に示されるサスペンション30は、上述したサスペンション用基板1と、サスペンション用基板1の裏面側(金属支持体11側)に備え付けられたロードビーム31、及びベースプレート(図示せず)とを有するものである。ロードビーム、及びベースプレートは、一般的なサスペンションに用いられるロードビーム、ベースプレートと同様のものを用いることができる。
【0063】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、磁気ヘッドスライダや外部回路との電気的な接続信頼性が良好なサスペンションとすることができる。
【0064】
[ヘッド付サスペンション]
次に、本発明のヘッド付サスペンションについて説明する。本発明のヘッド付サスペンションは、上述したサスペンションと、該サスペンションに実装された磁気ヘッドスライダとを有するものである。
【0065】
図12は、本発明のヘッド付サスペンションの一例を示す概略平面図である。図12に示されるヘッド付サスペンション40は、上述したサスペンション30と、サスペンション30のタング部2に実装された磁気ヘッドスライダ41とを有するものである。
【0066】
なお、サスペンション30については、上述した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、磁気ヘッドスライダ41は、一般的なヘッド付サスペンションに用いられる磁気ヘッドスライダと同様のものを用いることができる。
【0067】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、磁気ヘッドスライダや外部回路との電気的な接続信頼性が良好なヘッド付サスペンションとすることができる。
【0068】
[ハードディスクドライブ]
次に、本発明のハードディスクドライブについて説明する。本発明のハードディスクドライブは、上述したヘッド付サスペンションを含むことを特徴とするものである。
【0069】
図13は、本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略斜視図である。
図13に示されるハードディスクドライブ50は、ケース51と、このケース51に回転自在に取り付けられ、データが記憶されるディスク52と、このディスク52を回転させるスピンドルモータ53と、ディスク52に所望のフライングハイトを保って近接するように設けられ、ディスク52に対してデータの書き込みおよび読み込みを行うスライダを含むヘッド付サスペンション40とを有している。このうちヘッド付サスペンション40は、ケース51に対して移動自在に取り付けられ、ケース51にはヘッド付サスペンション40のスライダをディスク52上に沿って移動させるボイスコイルモータ54が取り付けられている。また、ヘッド付サスペンション40は、ボイスコイルモータ54にアーム55を介して取り付けられている。
【0070】
なお、ヘッド付サスペンションについては、上述した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、その他の部材についても、一般的なハードディスクドライブに用いられる部材と同様のものを用いることができる。
【0071】
本発明によれば、上述したヘッド付サスペンションを用いることで、より高機能化されたハードディスクドライブとすることができる。
【0072】
以上、本発明に係るサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、およびハードディスクドライブについて説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0073】
1・・・サスペンション用基板
2・・・タング部
3、4・・・端子部領域
5、6・・・配線群
10・・・端子部領域
11・・・金属支持体
12・・・ベース絶縁層
13・・・配線
14・・・端子部
15・・・接続線
16・・・カバー層
17・・・めっき膜
18・・・半田
30・・・サスペンション
31・・・ロードビーム
40・・・ヘッド付サスペンション
41・・・磁気ヘッドスライダ
50・・・ハードディスクドライブ
51・・・ケース
52・・・ディスク
53・・・スピンドルモータ
54・・・ボイスコイルモータ
55・・・アーム
100・・・サスペンション用基板
110・・・端子部領域
111・・・金属支持体
112・・・ベース絶縁層
113・・・配線
114・・・端子部
116・・・カバー層
117・・・めっき膜
118・・・半田
120・・・半田接触部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属支持体と、前記金属支持体の上に形成されたベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の上に形成された配線および端子部と、を有するサスペンション用基板であって、
前記配線と前記端子部とは、接続線を介して電気的に接続されており、
前記配線、および、前記接続線の前記配線と接続されている側の一部が、カバー層によって被覆されており、
前記接続線は、前記配線から複数本に分岐して前記端子部に接続されており、
前記端子部に接続される前記複数本に分岐した接続線の線幅は、前記端子部の幅よりも小さいことを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項2】
前記接続線の線幅が、前記配線の線幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用基板。
【請求項3】
前記複数本に分岐した接続線の線幅を合計した大きさが、前記配線の線幅と同じ大きさ、またはそれ以上の大きさであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサスペンション用基板。
【請求項4】
金属支持体と、前記金属支持体の上に形成されたベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の上に形成された配線および端子部と、を有するサスペンション用基板であって、
前記配線と前記端子部とは、接続線を介して電気的に接続されており、
前記配線、および、前記接続線の前記配線と接続されている側の一部が、カバー層によって被覆されており、
前記接続線の線幅は、前記端子部の幅よりも小さく、
前記接続線の前記カバー層から露出する部分の長さは、前記カバー層と前記端子部との間の距離よりも長いことを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項5】
前記接続線の前記カバー層から露出する部分が、屈曲部を有することを特徴とする請求項4に記載のサスペンション用基板。
【請求項6】
前記接続線の線幅が、前記配線の線幅と同じ大きさ、またはそれ以上の大きさであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のサスペンション用基板。
【請求項7】
前記端子部の表面、および、前記接続線のカバー層から露出する部分の表面には、めっき膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のサスペンション用基板。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のサスペンション用基板と、ロードビームとを含むことを特徴とするサスペンション。
【請求項9】
請求項8に記載のサスペンションと、前記サスペンションに実装された磁気ヘッドスライダとを有することを特徴とするヘッド付サスペンション。
【請求項10】
請求項9に記載のヘッド付サスペンションを含むことを特徴とするハードディスクドライブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−84320(P2013−84320A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222218(P2011−222218)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】