説明

サスポエマルジョン製剤

【課題】貯蔵安定性や希釈時の分散性等に優れたサスポエマルジョン製剤を提供する。
【解決手段】下記のA成分、B成分、C成分、D成分及びE成分を含有して成るものとした。
A成分:液状の農薬薬効成分又は農薬薬効成分の有機溶剤溶液
B成分:固状の農薬薬効成分
C成分:特定のポリエチレンポリアミンのポリアルキレングリコールエーテル誘導体であって、平均分子量2万〜10万のもの
D成分:特定のフェノール化合物及び該フェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合物から選ばれるもの
E成分:セピオライト

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサスポエマルジョン製剤に関し、更に詳しくは、農薬用のサスポエマルジョン製剤であって、貯蔵安定性や希釈時の分散性等に優れたサスポエマルジョン製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異なる活性を持つ二つ以上の農薬薬効成分を混合して使用することが、散布作業の省力化等の観点から広く行われている。しかし、水に難溶性の液状の農薬薬効成分と水に難溶性の固状の農薬薬効成分とを混合した場合には、それぞれの農薬薬効成分の活性が異なることに起因して、長期的に安定な混合状態を保持することが困難である。かかる問題を解決するものとして、サスポエマルジョン製剤が知られている。サスポエマルジョン製剤は、液状の農薬薬効成分をエマルジョン化したものと、固状の農薬薬効成分をサスペンジョン化したものとの混合物であり、取扱いの容易さ等から、種々のものが検討されている。具体的にかかるサスポエマルジョン製剤としては、いずれも活性の異なる農薬薬効成分の他に、1)ポリビニルアルコール、界面活性剤、グリコール類、ベントナイト及びラテックスを用いたもの(例えば、特許文献1参照)、2)芳香族系ビニル系樹脂を用いたもの(例えば、特許文献2参照)、3)ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ジアルキルスルホコハク酸塩及びソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる界面活性剤を用いたもの(例えば、特許文献3参照)、4)水難溶性溶剤、保護コロイド剤及び芳香族系ビニル系樹脂を用いたもの(例えば、特許文献4参照)等、各種の提案がある。
【0003】
しかし、前記のような従来提案には、調製したサスポエマルジョン製剤の貯蔵安定性が不充分であり、貯蔵中に懸濁粒子又は乳化粒子の沈降、凝集、ゲル化等が生じるため、結果としてサスポエマルジョン製剤の効果も劣るようになるという問題がある。この場合、サスポエマルジョン製剤の粘度を高くしてその貯蔵安定性を保持することも考えられるが、そのようにすると、希釈時の分散性等が不良になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−35408号公報
【特許文献2】特開2000−344604号公報
【特許文献3】特開2000−281502号公報
【特許文献4】特開2002−293701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、貯蔵安定性や希釈時の分散性等に優れたサスポエマルジョン製剤を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかして本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、サスポエマルジョン製剤としては、活性の異なる農薬薬効成分の他に、複数の特定の成分を含有して成るものを用いることが正しく好適であることを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、下記のA成分、B成分、C成分、D成分及びE成分を含有して成ることを特徴とするサスポエマルジョン製剤に係る。
【0008】
A成分:液状の農薬薬効成分又は農薬薬効成分の有機溶剤溶液
【0009】
B成分:固状の農薬薬効成分
【0010】
C成分:下記の化1で示されるポリエチレンポリアミンのポリアルキレングリコールエーテル誘導体であって、分子量が2万〜10万のもの
【0011】
【化1】

【0012】
化1において、
,R,R,R:水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルカノイル基、炭素数2〜18のアルケノイル基及びオキシエチレン単位/オキシプロピレン単位=100/0〜50/50(質量比)の範囲にあるオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位から構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレングリコールの一方の水酸基を除いた残基(但し、R〜Rのうちで少なくとも一つは前記の残基)
n:2〜250の整数
【0013】
D成分:下記の化2で示されるフェノール化合物及び該フェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合物から選ばれるもの
【0014】
【化2】

【0015】
化2において、
:水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又はフェニル基
X:アルカリ金属、アンモニウム又はアミン
【0016】
E成分:セピオライト
【0017】
本発明に係るサスポエマルジョン製剤(以下、単に本発明のサスポエマルジョン製剤という)は、いずれも前記のA成分、B成分、C成分、D成分及びE成分を水に安定に分散させたものである。
【0018】
本発明のサスポエマルジョン製剤に供するA成分は、液状の農薬薬効成分又は農薬薬効成分の有機溶剤溶液である。かかる農薬薬効成分としては、融点60℃以下のものが好ましく、融点20℃以下のものがより好ましい。具体的にかかる農薬薬効成分としては、それ自体は公知の各種の殺虫剤、殺菌剤、除草剤等が挙げられる。これには例えば、0,0−ジメチル−O−4−メチルチオ−m−トリルホスホロチオエート(フェンチオン)、S−4−クロロベンジルジエチルチオカーバメイト(ベンチオカルブ)、S−α−エトキシカルボニルベンジル−0,0−ジメチルホスホロジチオエート(フェントエート)、0,0−ジエチル−O−3,5,6−トリクロロ−2−ピリジルホスホロチオエート(クロルピリホス)、2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル−3−フェノキシベンジルエーテル(エトフェンプロックス)、o−sec−ブチルフェニルメチルカーバメイト(フェノブカルブ)、2−クロロ−2’,6’−ジエチル−N−(ブトキシメチル)アセトアニリド(ブタクロール)等が挙げられる。
【0019】
農薬薬効成分の有機溶剤溶液を調製するために用いる有機溶剤としては、脂肪族、脂環族又は芳香族の炭化水素系溶剤やこれらの混合溶剤が挙げられるが、なかでも芳香族炭化水素を含有する初留点が150℃以上の炭化水素系溶剤が好ましい。具体的にかかる炭化水素系溶剤としては、メチルナフタレン、ドデシルベンゼン、ソルベッソ150(エクソン化学社製の商品名)、日石ハイゾールSAS−296(日本石油化学社製の商品名)等が挙げられる。
【0020】
本発明のサスポエマルジョン製剤に供するB成分は、固状の農薬薬効成分である。かかる農薬薬効成分としては融点100℃以上のものが好ましい。具体的にかかる農薬薬効成分としては、それ自体は公知の各種の殺虫剤、殺菌剤、除草剤等が挙げられる。例えば殺虫剤としては、1)1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリジン−2−イリデンアミン(イミダクロプリド)等のニトロ系殺虫剤、2)1−[3,5−ジクロロ−4−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジロキシ)フェニル]−3−(2,6−ジフルオロベンゾイル)ウレア(クロルフルアズロン)、1−(3,5−ジクロロ−2,4−ジフルオロフェニル)−3−(2,6−ジフルオロベンゾイル)ウレア(テフルベンズロン)等のベンゾイルウレア系殺虫剤、3)3,7,9,13−テトラメチル−5,11−ジオキサ−2,8,14−トリチア−4,7,9,12−テトラアザペンタデカ−3,12−ジエン−6,10−ジオン(チオジカルブ)等のカーバメート系殺虫剤等が挙げられる。
【0021】
また殺菌剤としては、1)ジメチル4,4−(o−フェニレン)ビス(3−チオアロファネート)(チオファネートメチル)等の有機硫黄剤系殺菌剤、2)6−(3,5−ジクロロ−4−メチルフェニル)−3−(2H)ピリダジノン(ジクロメジン)等の含窒素ヘテロ環系殺菌剤、3)4,5,6,7−テトラクロロフタリド(フサライド)、テトラクロロ−イソフタロニトリル(ダコニール)等の有機塩素系殺菌剤等が挙げられる。
【0022】
更に除草剤としては、1)3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)−1−[(2−メトキシカルボニルベンジル)スルホニル]ウレア(ベンスルフロンメチル)、メチル3−クロロ−5−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イルカルバモイルスルファモイル)−1−メチルピラゾール−4−カルボキシレート(ハロスルフロンメチル)等のスルホニルウレア系除草剤、2)2−ベンゾチアゾール−2−イルオキシ−N−メチル−アセトアニリド(メフェナセット)、(RS)−2−(2,4−ジクロロ−m−トリロキシ)−プロピオンアニリド(クロメプロップ)等のアニリド系除草剤、3)4−(2,4−ジクロロベンゾイル)−1,3−ジメチルピラゾール−5−イルオキシトルエン−4−スルホン(ピラゾレート)等のピラゾール系除草剤、4)1−(α,α−ジメチルベンジル)(p−トリル)ウレア(ダイムロン)等の尿素系除草剤等が挙げられる。
【0023】
本発明のサスポエマルジョン製剤に供するC成分は、化1で示されるポリエチレンポリアミンのポリアルキレングリコールエーテル誘導体であって、平均分子量2万〜10万のものあるが、なかでも平均分子量が5万〜9万のものが好ましい。C成分についての平均分子量は水酸基価から算出される値である。化1中のR〜Rは、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルカノイル基、炭素数2〜18のアルケノイル基又はオキシエチレン単位/オキシプロピレン単位=100/0〜50/50(質量比)の範囲にあるオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位から構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレングリコールの一方の水酸基を除いた残基(但し、R〜Rのうちで少なくとも一つは前記の残基)であるが、かかるR〜Rとしては、水素原子又は前記の残基(但し、R〜Rのうちで少なくとも一つは前記の残基)が好ましい。かかるポリエチレンポリアミンのポリアルキレングリコールエーテル誘導体は、1)分子内にアミノ基を3個以上有するポリエチレンポリアミン、2)該ポリエチレンポリアミンのアミノ基を部分的にアルキル化した部分アルキル化ポリエチレンポリアミン又は3)該ポリエチレンポリアミンのアミノ基を部分的にアシル化した部分アシル化ポリエチレンポリアミンのアミノ基にアルキレンオキサイドを付加することによって得られるが、原料となるポリエチレンポリアミンは分子量300以上のもの(化1中のnが7以上のもの)が好ましい。
【0024】
前記1)のポリエチレンポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン又はエチレンイミンの開環重合物であって、その平均分子量が300〜10000のものが挙げられる。また前記2)の部分アルキル化ポリエチレンポリアミンとしては、N−メチルポリエチレンポリアミン、N−ブチルポリエチレンポリアミン、N−オクチルポリエチレンポリアミン、N−オクタデセニルポリエチレンポリアミン等が挙げられる。更に前記3)の部分アシル化ポリエチレンポリアミンとしては、N−アセチルポリエチレンポリアミン、N−ブタノイルポリエチレンポリアミン、N−オクタノイルポリエチレンポリアミン、N−オレオイルポリエチレンポリアミン、N−オクタデカノイルポリアミン等が挙げられる。これらのポリエチレンポリアミン、部分アルキル化ポリエチレンポリアミン及び部分アシル化ポリエチレンポリアミンをポリアルキレングリコール誘導体とするためのアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド又はエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの混合物が挙げられる。具体的にポリエチレンポリアミンのポリアルキレングリコールエーテル誘導体は、エチレンオキサイドが単独で付加したポリエチレンポリアミンのポリエチレングリコールエーテル誘導体又はエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドがブロック状若しくはランダム状に付加したポリエチレンポリアミンのポリアルキレングリコールエーテル誘導体が挙げられるが、アルキレンオキサイドがエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの混合物の場合には該エチレンオキサイドの比率を50質量%以上とする。またC成分の原料となるポリエチレンポリアミンの分子量は300以上(n≧7)が好ましい。
【0025】
本発明のサスポエマルジョン製剤に供するD成分は、化2で示されるフェノール化合物及び該フェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合物から選ばれるものであるが、なかでも化2中のRが水素原子又はフェニル基である場合のフェノール化合物又は該フェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合物が好ましく、化2中のRが水素原子である場合のフェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合物であって平均分子量(D成分についての平均分子量はGPC法によるプルラン換算の数平均分子量、以下同じ)が1000〜50000のものがより好ましく、平均分子量5000〜20000のものが特に好ましい。また化2中のXとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属、アンモニウム、アミンが挙げられるが、なかでもナトリウム、カリウム又はアンモニウムが好ましい。
【0026】
化2で示されるフェノール化合物としては、フェノールスルホン酸、メチルフェノールスルホン酸、エチルフェノールスルホン酸、プロピルフェノールスルホン酸、ブチルフェノールスルホン酸、オクチルフェノールスルホン酸、ノニルフェノールスルホン酸、ドデシルフェノールスルホン酸、ジブチルフェノールスルホン酸、ジノニルフェノールスルホン酸、フェニルフェノールスルホン酸、p−フェニルフェノールスルホン酸等のフェノールスルホン酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩が挙げられる。なかでもフェノールスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩が好ましい。
【0027】
化2で示されるフェノール化合物又は該フェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合物は、公知の合成方法によって得ることができる。例えば、化2で示されるフェノール化合物としては、フェノールや、フェニルフェノールに濃硫酸を若干過剰に加え、130〜170℃で加熱してスルホン化した後、水酸化ナトリウム等のアルカリにより中和することによって得られる。化2で示されるフェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合物としては、フェノールや、フェニルフェノールに濃硫酸を若干過剰に加え、130〜170℃で加熱してスルホン化した後、更に所定量のホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドを加え、100〜150℃でメチレン架橋反応による縮合をしてから水酸化ナトリウム等のアルカリにより中和することによって得られる。得られた化合物はそのまま又はスプレードライヤー等により乾燥して粉末としてから使用する。
【0028】
本発明のサスポエマルジョン製剤に供するE成分はセピオライトである。セピオライトは、天然の含水マグネシウム・シリケートのことで、粘土鉱物に属するものである。化学式は一般的に、MgSi1230(OH(OH)・6〜8HOであるが、その化学成分にはばらつきがあり、Mg含有量の高いもの、少量のCa、Cu、NHを含有するもの及びMgの一部がAl、Fe3+、Fe2+及び/又はMgにより置換されたもの等が存在する。またこれらのものの粒子表面に各種の有機分子をコーティング処理したものも使用できる。
【0029】
本発明のサスポエマルジョン製剤は公知の方法によって調製できる。本発明のサスポエマルジョン製剤を調製するに際して、各成分の混合方法は特に制限されないが、A成分を含有するエマルジョン及びB成分を含有するサスペンジョンを別々に調製した後、双方のエマルジョン及びサスペンジョンを混合してサスポエマルジョン製剤を得る方法が好ましい。
【0030】
A成分を含有するエマルジョンは、A成分、C成分、D成分及び乳化剤を水中に分散させた後、ホモミキサーやホモジナイザー等を使用して機械的に乳化させることによって得ることができる。
【0031】
前記の乳化剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤の単独物又は混合物が挙げられる。なかでも、ノニオン界面活性剤が好ましく、ソルビトール、ソルビタン、グリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコールと炭素数16〜22の不飽和脂肪酸との部分エステルがより好ましく、該多価アルコールと不飽和脂肪酸との部分エステルの水酸基にエチレンオキサイドを付加したものが特に好ましい。
【0032】
前記の炭素数16〜22の不飽和脂肪酸のなかでも、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸及びリシノレイン酸が好ましい。また多価アルコールとかかる不飽和脂肪酸との部分エステルとしては、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート、グリセリンモノオレート、グリセリンモノセスキ,ジ大豆油脂肪酸エステル、グリセリンモノエルシン酸エステル、ジグリセリンジオレート及びトリグリセリントリオレート等が挙げられる。これらの多価アルコールと不飽和脂肪酸との部分エステルの水酸基にエチレンオキサイドを付加させる場合には、部分エステル1モルに対してエチレンオキサイドを1〜20モルの割合で付加させたものが好ましい。
【0033】
B成分を含有するサスペンジョンは、B成分、C成分、D成分及びE成分を水中に分散させた後、粒径0.5〜2.2mmのガラスビーズ等の無機質メディアを用いたサンドグラインダーやサンドミル等の湿式粉砕機を使用して懸濁させることによって得ることができる。
【0034】
本発明では、A成分を乳化してエマルジョンとする工程及びB成分を懸濁させてサスペンジョンとする工程において、それぞれの液温は、水の融点である0℃以上、且つ水の沸点である100℃未満とするが、生産性や製品の安定性のため、10〜60℃の範囲とするのが好ましい。
【0035】
以上説明したA成分を含有するエマルジョン及びB成分を含有するサスペンジョンを混合することにより本発明のサスポエマルジョン製剤を調製することができる。
【0036】
本発明のサスポエマルジョン製剤に供するC成分とD成分の比率は、特に制限はないが、C成分/D成分=99/1〜70/30(質量比)の範囲とするのが好ましく、95/5〜80/20(質量比)の範囲とするのがより好ましい。
【0037】
以上説明したA成分、B成分、C成分、D成分及びE成分は、本発明のサスポエマルジョン製剤中にこれらを合計で1〜95質量%となるよう含有させるのが好ましいが、なかでもA成分を0.1〜50質量%、B成分を0.1〜50質量%、C成分とD成分を合計で0.1〜15質量%及びE成分を0.1〜5質量%の割合となるよう含有させるのがより好ましく、A成分を1〜25質量%、B成分を1〜25質量%、C成分とD成分を合計で2〜8質量%及びE成分を0.1〜1質量%の割合となるよう含有させるのが特に好ましい。
【0038】
以上、本発明の構成を説明したが、本発明のサスポエマルジョン製剤を調製するに際しては、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜、他の成分、例えば増粘剤、凍結防止剤、消泡剤、防腐剤、pH緩衝剤等を併用することもできる。
【発明の効果】
【0039】
以上説明した本発明のサスポエマルジョン製剤には、貯蔵安定性や希釈時の分散性等に優れるという効果がある。
【0040】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【実施例】
【0041】
試験区分1
・化1で示されるポリエチレンポリアミンのポリアルキレングリコールエーテル誘導体(C−1)の合成
ポリエチレンイミン(平均分子量1200)1200gをオートクレーブに仕込み、反応系内を窒素ガスで置換した後、80℃でプロピレンオキサイド2055gを3時間かけて加圧導入した。80〜100℃で30分間反応を継続した後、水酸化カリウム83gを加え、更にプロピレンオキサイド6165gとエチレンオキサイド73980gとの混合物を120〜150℃にて約24時間かけて加圧導入した。同温度で2時間反応を継続し、ポリエチレンポリアミンのポリアルキレングリコールエーテル誘導体(C−1)83400gを得た。この誘導体(C−1)の水酸基価は20.5であり、該水酸基価から算出される平均分子量は83400であった。
【0042】
・化1で示されるポリエチレンポリアミンのポリアルキレングリコールエーテル誘導体(C−2)〜(C−8)及び比較のためのポリエチレンポリアミンのポリアルキレングリコールエーテル誘導体(r−1)〜(r−2)の合成
ポリエチレンポリアミンのポリアルキレングリコールエーテル誘導体(C−1)と同様にして、表1に記載のポリエチレンポリアミンのポリアルキレングリコールエーテル誘導体(C−2)〜(C−8)及び(r−1)〜(r−2)を合成した。
【0043】
【表1】

【0044】
表1において、
PEPA:ポリエチレンイミン
TETA:トリエチレンテトラミン
EDA:エチレンジアミン
EO:エチレンオキサイド
PO:プロピレンオキサイド
AO:アルキレンオキサイド
【0045】
試験区分2
・化2で示されるフェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合物(D−1)の合成
フェノール94g(1.0mol)をフラスコに仕込み、加温して溶解後、100〜110℃にて濃硫酸147g(1.5mol)を滴下し、スルホン化した。スルホン化後、水を90g添加して室温まで冷却した後、70〜90℃で37%ホルマリン水溶液56.8g(0.7mol)を滴下し、100〜110℃で2.5時間熟成を行った。90℃以下に冷却した後、温水(65℃)を添加して有効成分30%となるように調整し、フェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を得た。30%水酸化ナトリウム水溶液133g(1.0mol)、水酸化カルシウム37g(0.5mol)及び水96gの混合物に、前記のフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を70℃以下で滴下して中和し、100〜110℃で1時間熟成した後、濾過し、濾液を105℃にて3日間乾燥してフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩(D−1)を得た。
【0046】
・化2で示されるフェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合物(D−2)〜(D−6)の合成
フェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(D−1)と同様にして、表2に記載のフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩(D−2)〜(D−6)を合成した。
【0047】
・化2で示されるフェノール化合物(D−7)〜(D−9)の合成方法
フェノール94g(1.0mol)をフラスコに仕込み、加温して溶解後、100〜110℃にて濃硫酸147g(1.5mol)を滴下し、スルホン化した。30%水酸化ナトリウム水溶液133g(1.0mol)、水酸化カルシウム37g(0.5mol)及び水96gの混合物に、前記でスルホン化したフェノールスルホン酸を70℃以下で滴下して中和し、100〜110℃で1時間熟成した後、濾過し、濾液を105℃にて3日間乾燥してフェノールスルホン酸ナトリウム塩(D−7)を得た。フェノールスルホン酸ナトリウム塩(D−7)と同様にして、表2に記載のフェノールスルホン酸の塩(D−8)〜(D−9)を合成した。
【0048】
【表2】

【0049】
試験区分3
・エマルジョン(EM−1)の調製
A成分として農薬殺生成分(A−1)15部、C成分としてポリエチレンポリアミンのポリアルキレングリコールエーテル誘導体(C−1)3部、D成分としてフェノールスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(D−1)0.15部、乳化剤としてソルビタントリオレート(G−1)1部、凍結防止剤としてプロピレングリコール(F−1)3.5部及び水5部をホモジナイザー(日本精機製作所社製の商品名EXCEL−AUTO HOMOGENIZER)にて10000rpmの回転数で10分間処理してエマルジョン(EM−1)を得た。
【0050】
・エマルジョン(EM−2)〜(EM−21)及び(RM−1)〜(RM−5)の調製
エマルジョン(EM−1)と同様にして表3に記載のエマルジョン(EM−2)〜(EM−21)及び(RM−1)〜(RM−5)を調製した。農薬殺生成分(A−3)はキシレンで溶解したものを使用した。
【0051】
・サスペンジョン(SU−1)の調製
B成分として農薬薬効成分(B-1)18部、C成分としてポリエチレンポリアミンのポリアルキレングリコールエーテル誘導体(C−1)4.5部、D成分としてフェノールスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(D−1)0.35部、E成分としてセピオライト((近江鉱業社製の商品名ミラクレーP−150)0.5部、凍結防止剤としてプロピレングリコール(F−1)3.5部及び水45.5部を混合し、これに2mmφのガラスビーズ70部を加えて湿式粉砕した後、ガラスビーズを除去して、サスペンジョン(SU−1)を得た。
【0052】
・サスペンジョン(SU−2)〜(SU−21)及び(RU−1)〜(RU−5)の調製
サスペンジョン(SU−1)と同様にして表4に記載のサスペンジョン(SU−2)〜(SU−21)及び(RU−1)〜(RU−5)を調製した。
【0053】
【表3】














【0054】
【表4】

【0055】
表3及び4において、
割合:部
A−1:ブタクロール(融点:−2.8〜1.7℃)
A−2:ベンチオカルブ(融点:3.3℃)
A−3:エトフェンプロクス(融点:37.4℃)
A−4:フェンチオン(融点:<−80℃)
B−1:ダイムロン(融点:203℃)
B−2:ベンスルフロンメチル(融点:185〜188℃)
B−3:イミダクロプリド(融点:144℃)
B−4:チオジカルブ(融点:173℃)
C−1〜C−8,r−1〜r−2:試験区分1で合成した表1に記載のポリエチレンポリアミンのポリアルキレングリコールエーテル誘導体
D−1〜D−9:試験区分2で合成した表2に記載のフェノール化合物等
F−1:プロピレングリコール
F−2:エチレングリコール
G−1:ソルビタントリオレート(竹本油脂社製の商品名ニューカルゲンD−935−T、HLB=1.8)
G−2:ソルビタンモノオレート(竹本油脂社製の商品名ニューカルゲンD−935、HLB=4.3)
G−3:ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノオレート(竹本油脂社製の商品名ニューカルゲンD−945、HLB=15)
【0056】
試験区分4
実施例1(サスポエマルジョン製剤の調製)
前記のエマルジョン(EM−1)27.65部と、前記のサスペンジョン(SU−1)72.35部とを混合して、実施例1のサスポエマルジョン製剤を調製した。
【0057】
実施例2〜21及び比較例1〜5
実施例1のサスポエマルジョン製剤と同様にして表5に記載の実施例2〜21及び比較例1〜5のサスポエマルジョン製剤を調製した。
【0058】
【表5】

【0059】
表5において、
割合:部
【0060】
試験区分5(サスポエマルジョン製剤の評価)
試験区分4で調製した各例のサスポエマルジョン製剤について、外観、安定性、粒子成長及び希釈分散性を以下のように評価した。結果を表6にまとめて示した。
【0061】
・外観の評価
調製直後の製剤の外観を目視にて観察し、下記の基準で評価した。
◎:良好な懸濁又は乳化状態を示す
○:ほぼ良好な懸濁又は乳化状態を示す
×:懸濁又は乳化状態が不良
【0062】
・安定性の評価
調製直後の製剤50gを直径38mmで容量100mLのガラスビンに入れて密封し、これを−5℃で3日間、そして50℃で3日間放置するという操作を1回として合計10回(合計60日)繰返した後、沈殿やケーキングの状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。
◎:沈殿やケーキングは無し
◎〜○:わずかに沈殿を認める
○:沈殿を認めるが振とうにより容易に再分散する。
×:ケーキングを認め、振とうしても容易に再分散しない。
【0063】
・粒子成長の評価
外観の評価後の製剤と安定性の評価後の製剤とについて、乳化分散している粒子の粒子径(μ)を、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA社製のLA−920)を用いて測定し(測定溶媒:イオン交換水)、下記の数1より成長率を算出し、下記の基準で評価した。
【0064】
【数1】

【0065】
◎:成長率が2%未満
◎〜○:成長率が2%以上〜5%未満
○:成長率が5%以上〜10%未満
×:成長率が10%以上
【0066】
・希釈分散性
30℃のWHO硬水80mLを100mLのビーカーに入れ、各例の製剤を2滴、水面より1cmの高さから滴下した後、滴下した製剤の水中での分散状態を目視にて観察し、下記の基準で評価した。
◎:製剤が水中で速やかに広がり霧状に分散する。
◎〜○:製剤が水中で徐々に広がり霧状に分散する。
○:製剤が少しボタおちぎみに分散する
×:液滴のままビーカー底面に到達する。








【0067】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のA成分、B成分、C成分、D成分及びE成分を含有して成ることを特徴とするサスポエマルジョン製剤。
A成分:液状の農薬薬効成分又は農薬薬効成分の有機溶剤溶液
B成分:固状の農薬薬効成分
C成分:下記の化1で示されるポリエチレンポリアミンのポリアルキレングリコールエーテル誘導体であって、平均分子量2万〜10万のもの
【化1】

{化1において、
,R,R,R:水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルカノイル基、炭素数2〜18のアルケノイル基又はオキシエチレン単位/オキシプロピレン単位=100/0〜50/50(質量比)の範囲にあるオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位から構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレングリコールの一方の水酸基を除いた残基(但し、R〜Rのうちで少なくとも一つは前記の残基)
n:2〜250の整数}
D成分:下記の化2で示されるフェノール化合物及び該フェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合物から選ばれるもの
【化2】

(化2において、
:水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又はフェニル基
X:アルカリ金属、アンモニウム又はアミン
E成分:セピオライト
【請求項2】
A成分の農薬薬効成分が融点60℃以下のものであり、またB成分の農薬薬効成分が融点100℃以上のものである請求項1記載のサスポエマルジョン製剤。
【請求項3】
C成分が、化1中のR、R、R及びRが水素原子又はオキシエチレン単位/オキシプロピレン単位=100/0〜50/50(質量比)の範囲にあるオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位から構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレングリコールの一方の水酸基を除いた残基(但し、R〜Rのうちで少なくとも一つは前記の残基)である場合のものである請求項1又は2記載のサスポエマルジョン製剤。
【請求項4】
C成分が、平均分子量5万〜9万のものである請求項1〜3のいずれか一つの項記載のサスポエマルジョン製剤。
【請求項5】
D成分が、化2中のRが水素原子又はフェニル基である場合のフェノール化合物又は該フェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合物である請求項1〜4のいずれか一つの項記載のサスポエマルジョン製剤。
【請求項6】
D成分が、化2中のRが水素原子である場合のフェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合物であって、平均分子量5000〜20000のものである請求項1〜5のいずれか一つの項記載のサスポエマルジョン製剤。
【請求項7】
C成分とD成分を、C成分/D成分=99/1〜70/30(質量比)の割合で含有する請求項1〜6のいずれか一つの項記載のサスポエマルジョン製剤。
【請求項8】
A成分を0.1〜50質量%、B成分を0.1〜50質量%、C成分とD成分を合計で0.1〜15質量%及びE成分を0.1〜5質量%の割合で含有し、且つこれらを合計で1〜95質量%となるよう含有する請求項1〜7のいずれか一つの項記載のサスポエマルジョン製剤。

【公開番号】特開2011−116671(P2011−116671A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273065(P2009−273065)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000210654)竹本油脂株式会社 (138)
【Fターム(参考)】