説明

サックバックバルブシステム及びその閉弁動作制御方法

【課題】サックバック機能の不具合を解消したサックバックバルブシステムを提供すること。
【解決手段】第1の空気圧アクチュエータにより開閉動作する開閉弁が、閉動作に連動するダイヤフラムによって液だれを防止するサックバック機能を備えている一体型サックバックバルブSVと、一体型サックバックバルブSVの動作不良対策として上流側に隣接して設けられ、第2の空気圧アクチュエータにより開閉動作する保護開閉弁3とを具備してなるサックバックシステムにおいて、一体型サックバックバルブSVの全閉操作時に、一体型サックバックバルブSVが全閉となるより早く保護開閉弁3の全閉動作を完了させる開閉制御部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サックバックバルブシステム及びその閉弁動作制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば薬液等の液体を取り扱う配管系統に設置される開閉弁においては、全閉操作時に生じる液だれ(流体のボタ落ち)を防止するため、別体のサックバック専用バルブを併設することが行われている。このようなサックバック専用バルブは、開閉弁の閉動作に同期して作動するものであり、サックバック室の空間容積を増す方向へダイヤフラムを動作させることにより、出口側の液体をサックバック室側に吸引して液だれを防止することができる。(たとえば、特許文献1参照)
【0003】
また、上述した開閉弁及びサックバックバルブは別体であるため、装置全体の設置スペース低減やアクチュエータを同期させる困難性等を解消することなどを目的として、両者を一体化した構成の一体型サックバックバルブが本出願人により提案されている。
一方、一体型サックバックバルブに動作不良が生じた場合の保護対策として、一体型サックバックバルブの上流側に保護開閉弁を設置する場合がある。このように、一体型サックバックバルブと保護開閉弁とを併設して構成されるサックバックバルブシステムにおいては、一体型サックバックバルブの動作不良対策として設置される保護開閉弁を、まんがいち一体型サックバックバルブが閉じない(動作しない)場合の流体流出量を最小限に抑えるため、できるだけ一体型サックバックバルブに近い位置でタイムラグを最小限にして動作させることが望ましい。
【特許文献1】特開2002−316085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したサックバックシステムにおいては、保護開閉弁を一体型サックバックバルブに近い上流位置で略同時に閉じると、ウォーターハンマーの影響により一体型サックバックバルブから液だれを生じることがある。すなわち、一体型開閉弁の上流側に保護開閉弁を設けたことにより、一体型サックバックバルブのサックバック機能に不具合を生じることが認められた。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サックバック機能の不具合を解消したサックバックバルブシステム及びその閉弁動作制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係るサックバックバルブシステムは、第1の空気圧アクチュエータにより開閉動作する開閉弁が、閉動作に連動するダイヤフラムによって液だれを防止するサックバック機能を備えている一体型サックバックバルブと、該一体型サックバックバルブの動作不良対策として上流側に隣接して設けられ、第2の空気圧アクチュエータにより開閉動作する保護開閉弁とを具備してなるサックバックシステムにおいて、前記一体型サックバックバルブの全閉操作時に、前記一体型サックバックバルブが全閉となるより早く前記保護開閉弁の全閉動作を完了させる開閉制御部が設けられていることを特徴とするものである。
【0006】
このようなサックバックバルブシステムによれば、一体型サックバックバルブの全閉操作時に、一体型サックバックバルブが全閉となるより早く保護開閉弁の全閉動作を完了させる開閉制御部を備えているので、保護開閉弁より遅れて全閉となる一体型サックバックバルブによりウォーターハンマーが生じることを防止できる。
【0007】
本発明に係るサックバックシステムの閉弁動作制御方法は、第1の空気圧アクチュエータにより開閉動作する開閉弁が、閉動作に連動するダイヤフラムによって液だれを防止するサックバック機能を備えている一体型サックバックバルブと、該一体型サックバックバルブの動作不良対策として上流側に隣接して設けられ、第2の空気圧アクチュエータにより開閉動作する保護開閉弁とを具備してなるサックバックシステムの閉弁動作制御方法において、前記一体型サックバックバルブの全閉操作時に、前記一体型サックバックバルブが全閉となるより早く前記保護開閉弁の全閉動作を完了させることを特徴とするものである。
【0008】
このようなサックバックバルブシステムの閉弁動作制御方法によれば、一体型サックバックバルブの全閉操作時に、一体型サックバックバルブが全閉となるより早く保護開閉弁の全閉動作を完了させるように閉弁動作制御をするので、保護開閉弁より遅れて全閉となる一体型サックバックバルブによりウォーターハンマーが生じることを防止できる。
【発明の効果】
【0009】
上述した本発明によれば、一体型サックバックバルブを全閉操作する際、一体型サックバックバルブが全閉となるより早く保護開閉弁の全閉動作を完了するようにしたので、保護開閉弁より遅れて全閉となる一体型サックバックバルブによりウォーターハンマーが生じることを防止し、このウォーターハンマーにより生じるサックバック機能の不具合を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るサックバックバルブシステム及びその閉弁動作制御方法の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図2に示すサックバックシステム1は、流体として薬液を流す配管流路等に設けられている。このサックバックシステム1において、薬液を流す配管2には、上流側から順に、保護開閉弁3及び一体型サックバックバルブSVが設けられている。従って、一体型サックバックバルブSVを全閉にした際、一体型サックバックバルブSVの下流側となる配管2の出口側端部2aから液だれが生じないようになっている。
【0011】
保護開閉弁3は、上部に設けた空気圧アクチュエータ3aにより動作する空気圧操作弁である。この保護開閉弁3は、一体型サックバックバルブSVの動作不良対策として、すなわち、一体型サックバックバルブSVが完全に閉じなかった場合等の安全対策として、上流側近傍に隣接して設けられている。
空気圧アクチュエータ3aは、図示省略のエア供給源に連結された空気圧配管4から所定圧力に調整された空気圧の供給をピストンに受けて動作するものであり、空気圧のON/OFFにより弁体を開閉動作させることができる。
【0012】
空気圧配管4は、保護開閉弁3の空気圧アクチュエータ3aへ連結される空気圧配管4aと、後述する一体型サックバックバルブSVの空気圧アクチュエータ30へ連結される空気圧配管4bとに分岐される。空気圧配管4a,4bは、それぞれに電磁弁5a,5b及びスピードコントローラ6a,6bが設けられている。
【0013】
電磁弁5a,5bは、空気圧供給のON/OFFを行う開閉弁である。この場合の電磁弁5a,5bは、空気圧供給をOFFとした場合に空気圧アクチュエータ3a,30側の空気圧を排気するため、三方弁が採用されている。
スピードコントローラ6a,6bは、空気圧アクチュエータ3a,30へ供給される空気圧の流量調整機能を有するものである。従って、このスピードコントローラ6a、6bの設定を変えることにより、空気圧アクチュエータ3a,30が動作するタイミング、すなわち、保護開閉弁3及び一体型サックバックバルブSVが開閉動作するタイミングを調整することができる。なお、ここで使用するスピードコントローラ6a,6bは、メータアウト型とする。
制御部7は、電磁弁5a,5bの開閉制御等を行うものである。
【0014】
一体型サックバックバルブSVは、たとえば図3〜図5に示すように構成されている。
図示のサックバックバルブSVは、薬液等の液体を流す流路に設置され、全閉時の液だれを防止するサックバック機能を備えている開閉弁10と、開閉操作用のアクチュエータ30とが一体に構成されている。すなわち、サックバックバルブSVは、アクチュエータ操作用の空気圧を受けるアクチュエータ30のピストン31と、開閉弁10の開閉操作を行う弁体11とが軸部50を介して連結され、空気圧により開閉動作を行う開閉弁10がサックバック機能を備えたものとなる。
なお、図示のサックバックバルブSVにおいて、図3は開閉弁10が全開の状態、図4は開閉弁10を全閉にしてサックバック機能が動作する前の状態、図5は図4の状態からサックバック機能が動作した状態を示している。
【0015】
開閉弁10の基本構成は、バルブ本体(ケーシング)12に流体入口13及び流体出口14を備え、バルブ本体12の内部空間15には流体流路16を開閉する弁体11が配設されている。流体流路16の上方には、流体流路16を介して内部空間15と連通するサックバック室17が形成されている。このサックバック室17は、開閉弁10内において液体を流す流路(以下、「弁内流路」と呼ぶ)の一部となり、かつ、弁体11に連結された軸部50の一部が配設された空間である。また、このサックバック室17は、後述するダイヤフラム60を動作させることにより、空間容積を増してサックバック機能を発揮する空間でもある。
なお、流体入口13は入口流路13aを介して内部空間15と連通し、流体出口14は出口流路14aを介してサックバック室17と連通している。
【0016】
上述した弁体11は、後述するアクチュエータ30に連動してピストン31及び軸部50とともに内部空間15内を上下方向へ動作し、開閉弁10内に形成された流体流路16を開閉する。内部空間15の上端部には、換言すれば、流体流路16の入口部には、シート部18が設けられている。そして、この開閉弁10においては、弁体11が上方へ動作してシート部18に密着すると流体流路16を閉じ、弁体11が下方へ移動してシート部18から離間すると流体流路16を開く。
【0017】
開閉弁10内に形成された弁内流路は、開閉弁10内の流れ方向から順に、流体入口13、入口流路13a、内部空間15、流体流路16、サックバック室17、出口流路14a及び流体出口14に配列されている。
また、図示の開閉弁10において、図中の符号19は基部19aが弁体11の下部に連結された下部ダイヤフラム、20は基部19aを上向きに付勢するコイルバネ、21は排気流路である。なお、弁体11の下部を絞って小径にしているので、下部ダイヤフラム19を小径化することができる。
【0018】
アクチュエータ30は、アクチュエータ本体32に形成された内部空間のシリンダ部33内にピストン31を配設し、ピストン31により分割されたシリンダ部33のいずれか一方に空気圧を供給して開閉弁10を開閉操作するものである。図示の構成例では、アクチュエータ本体32には二つの空気圧供給口34,35が設けられ、いずれか一方を選択して使用できるようになっている。この場合、上方に配置された空気圧供給口34は、シリンダ部33内を軸方向に摺動するピストン31の上面側に空気圧を供給し、下方に配置された空気圧供給口35は、シリンダ部33を軸方向に摺動するピストン31の下面側に空気圧を供給するようになっている。
なお、図示の例では、上方の空気圧供給口34から空気圧が供給され、下方の空気圧供給口35はプラグ36により閉じられている。
【0019】
上述したピストン31は、コイルバネ37から上向き(弁体11が閉の方向)の付勢を常時受けており、従って、図示の開閉弁10は空気圧の供給がない状態で常時閉のノーマルクローズ型となる。すなわち、弁体11はコイルバネ37の付勢により常時閉の状態にあるが、空気圧供給口34から空気圧を供給してピストン31を下向きに押圧すると、コイルバネ20,37の付勢に打ち勝って軸部50を介して連結された弁体11を押し下げる。この結果、弁体11はシート部18から離間して開状態となる。
なお、空気圧供給口34の空気圧供給を停止すると、ピストン31による下向きの押圧力がなくなるので、弁体11はコイルバネ20,37の付勢を受けてシート部18に密着する閉状態となる。
【0020】
また、上述したアクチュエータ30は、後述するサックバック機能について、ピストン31側の軸部50の軸方向動作量を規制するサックバック量調整手段を備えている。このサックバック整量調整手段は、ハンドル38の操作により軸方向へ移動する螺合軸39であり、先端部39aがシリンダ部33内へ突出する量の調整を可能とするものである。すなわち、先端部39aがシリンダ部33内へ突出する量を増せば、ピストン31が上昇可能となる範囲(ピストンストローク)が減少するので、後述するダイヤフラム60の動作量(変形量)によって定まるサックバック量(サックバック室17の容積変化量)も減少する。
なお、図中の符号40はコイルバネ設置スペースであり、開閉弁10やアクチュエータ30の動作方式(ノーマルクローズやノーマルオープン)を選択して変更する場合等において、必要に応じて使用される。
【0021】
続いて、ピストン31と弁体11との間を連結し、アクチュエータ30の動作により開閉弁10の弁体11を開閉させる部材である軸部50について説明する。
この軸部50は、ピストン31の下面側に設けられたピストン軸部51と、弁体11の上部に設けられた弁体軸部22とを備えている。ピストン軸部51には、下面から下方へ突出するようにして、遊嵌軸部52が軸中心位置に螺合されている。この遊嵌軸部52には、下端面52aから軸中心位置を通って軸側面へ連通する排気流路53が設けられている。この排気流路53は、後述するサックバック機能をスムーズに動作させるため、遊嵌軸部52により狭められる遊嵌部54内の空気を大気へ流出させる流路となる。なお、排気流路53を通って遊嵌部54の外部へ流出した空気は、アクチュエータ本体32に設けた貫通孔41を通って大気へ流出する。
【0022】
弁体軸部22の上面には、ダイヤフラム60の基部61が螺合により連結されている。基部61には、上述した遊嵌軸部52の周囲を覆うベローズ62が一体に設けられ、さらに、ベローズ62の上端部は、遊嵌軸部52に係合された上端基部63aが設けられている。この上端基部63aは、遊嵌軸部52と一体に軸方向へ動作するように、互いの凹凸により係合されている。
そして、上端基部63aには、水平方向へ延びるダイヤフラム本体63が一体に設けられている。さらに、ダイヤフラム本体63の外周部には、開閉弁10とアクチュエータ30との間に挟み込んで固定される外縁部64が設けられている。従って、ダイヤフラム本体63は、サックバルブ室17の上部を覆ってアクチュエータ30側との間を分離するとともに、ダイヤフラム本体63が遊嵌軸部52と一体に動作するようになっている。
【0023】
また、基部61の上面側には、遊嵌軸部52を軸方向に移動可能とする遊嵌部54がベローズ62の内側に形成されている。従って、遊嵌部54は、ダイヤフラム60よりアクチュエータ30側に設けられており、開閉弁10の内部を流れる流体は、ダイヤフラム60によりアクチュエータ30の駆動部から完全に分離されている。すなわち、ダイヤフラム60は、開閉弁10側のサックバック室17とアクチュエータ30とを分離するように設置されており、アクチュエータ30の遊嵌軸部52は、薬液等の流体と接触しない領域で動作するように構成されている。
【0024】
このように、サックバックバルブSVは、開閉弁10の弁内流路に形成されたサックバック室17とピストン11を動作させるアクチュエータ30との間が軸部50に連結されて一体に動作するダイヤフラム60により分離されている。また、軸部50は、弁体軸部22により構成される弁体側軸部と、ピストン軸部51及び遊嵌軸部52により構成されるピストン側軸部とに分割され、弁体側軸部22と一体に連結されたダイヤフラム60の基部61にはピストン側軸部の遊嵌軸部52を遊嵌して軸方向の独立した動作を許容している。
【0025】
従って、弁体11の閉動作時には、軸部50がピストン11及びダイヤフラム60とともに弁体11の全閉位置まで移動する閉弁動作段階と、ピストン側軸部のピストン軸部51及び遊嵌軸部52がピストン31及びダイヤフラム60のダイヤフラム本体61とともに移動してサックバック室17の空間容積を増すサックバック動作段階との二段階動作を行うようになっている。
【0026】
より具体的に説明すると、図3に示す全開状態にあるサックバックバルブSVは、空気圧供給口34への空気圧供給を停止することにより、ピストン31による下向きの押圧力がなくなるので、コイルバネ20,37の付勢により弁体11がピストン及び軸部50とともに押し上げられる。この結果、開閉弁10は、図4に示すように、弁体11がシート部18に密着して流体流路16を閉じる全閉状態となるので、弁体11の閉弁動作段階が完了する。なお、この段階では、上述した図3の全開状態と同様に、遊嵌軸部52の下端面52aがダイヤフラム60の基部61に密着しているので、サックバック機能は動作していない。
【0027】
上述した閉弁動作段階が完了した後には、弁体11がシート部18に係止されてこれ以上の上昇を阻止されるため、遊嵌軸部52が基部60から離間してピストン31及び軸部50とともに上昇する。この結果、ダイヤフラム本体63の上端基部63aが遊嵌軸部52とともに引き上げられることにより、図5に示すように、ダイヤフラム本体63が変形してサックバック室17の容積を増すこととなる。そして、ピストン31がアクチュエータ本体32の上端部まで戻ると、サックバック室17内の容積増加も終了し、サックバック動作段階が完了する。こうしてサックバック室17の容積が増すと、弁体11が閉じて分断された開閉弁10の弁内流路では、弁体11より下流側に残った流体がサックバック室17側へ吸引されるため、液だれの防止が可能となる。
【0028】
また、ハンドル38を操作して螺合軸39aの突出量を変化させれば、ピストン31が上昇して戻る位置が変化するので、遊嵌軸部52のストローク量及びダイヤフラム本体63の変形量も変化する。従って、ダイヤフラム本体17が変形することに応じて増加するサックバック室17の容積は、変化量(サックバック量)の調整が可能となる。
【0029】
このように、上述したサックバックバルブSVによれば、開閉弁10の開閉操作及びダイヤフラム60によるサックバック機能をひとつのアクチュエータ30により実施できるようになる。すなわち、開閉弁10にサックバック機能を備えたサックバックバルブSVとなるので、開閉弁の機能及びサックバック機能が一体化したサックバックバルブSVにより、設置スペースの低減が可能となるばかりか、アクチュエータの同期問題も解消される。
【0030】
また、サックバック動作を行う遊嵌部54においては、サックバック機能の動作を行う軸部52がベローズ62により分離されて、弁内流路を流れる流体と接触することのない構成になっているので、取り扱う薬液等の液体が遊嵌部に固着することはない。従って、サックバック機能の動作不良が生じることを防止するとともに、信頼性の高いサックバックバルブSVとなっている。
【0031】
このように、第1の空気圧アクチュエータ30により開閉動作する開閉弁10が閉動作に連動するダイヤフラム60によって液だれを防止するサックバック機能を備えている一体型サックバックバルブSVと、この一体型サックバックバルブSVの動作不良対策として上流側に隣接して設けられ、第2の空気圧アクチュエータ3aにより開閉動作する保護開閉弁3とを具備して構成されたサックバックバルブシステム1は、一体型サックバックバルブSVの全閉操作時に、一体型サックバックバルブSVが全閉となるより早く保護開閉弁3の全閉動作を完了させる開閉制御部を備えている。
【0032】
この場合の開閉制御部は、電磁弁5a,5bを同時に開閉操作する制御部(CPU)7と、空気圧アクチュエータ3a,30へ供給される空気圧の流量調整機能を有するスピードコントローラ6a,6bとなる。そこで、スピードコントローラ6a、6bが互いに異なる設定とすることにより、空気圧アクチュエータ3a,30が動作するタイミング、すなわち、保護開閉弁3及び一体型サックバックバルブSVが開閉動作するタイミングを調整することができる。
【0033】
図1は、サックバックバルブシステム1を構成する保護開閉弁3及び一体型サックバックバルブSVについて、閉動作を行う場合のタイムチャートを示している。
この図によれば、制御部7により電磁弁5a,5bの開閉動作が同時に開始されると、設定の異なるスピードコントローラ6a,6bが機能し、保護開閉弁3を時間Δtだけ早く全閉とする。すなわち、電磁弁5a,5bを閉じて空気圧アクチュエータ3a,30から空気圧を排気する閉動作を行うと、空気圧はスピードコントローラ6a,6bを通過して流れるので、保護開閉弁3と一体型サックバックバルブSVの開閉弁10との間には、全閉動作が完了するまでに時間的な差を生じることとなる。
【0034】
従って、一体型サックバックバルブSVの全閉操作時に、開閉制御部により一体型サックバックバルブSVが全閉となるより早く保護開閉弁3の全閉動作を完了させることにより、保護開閉弁3より遅れて全閉となる一体型サックバックバルブSVによりウォーターハンマーが生じることを防止できる。すなわち、一体型サックバックバルブSVの開閉弁10が全閉となるより先に保護開閉弁3が全閉となっているので、開閉弁10の上流側ではすでに薬液の流れが遮断された状態となるので、開閉弁10側でウォーターハンマーが生じることはない。
【0035】
このようにして、一体型サックバックバルブSVの全閉操作時に、一体型サックバックバルブSVが全閉となるより早く保護開閉弁3の全閉動作を完了させる閉弁動作制御方法により、保護開閉弁3より遅れて全閉となる一体型サックバックバルブSVによるウォーターハンマーが防止されると、ウォーターハンマーの影響を受けたダイヤフラム60の余分な動作がなくなるため、配管2の出口側端部2aから液だれすることを防止できる。
すなわち、一体型サックバックバルブSVを全閉操作する際、一体型サックバックバルブSVが全閉となるより早く保護開閉弁3の全閉動作を完了するようにしたので、保護開閉弁3より遅れて全閉となる一体型サックバックバルブSVによりウォーターハンマーが生じることを防止し、このウォーターハンマーにより液だれを生じるというサックバック機能の不具合を解消することができる。
【0036】
ところで、上述した実施形態では、サックバックバルブシステム1が別体の保護開閉弁3及び一体型サックバックバルブSVにより構成されているが、たとえば図6の示すように、両者を一体化(ユニット化)した構成として小型化してもよい。この場合、保護開閉弁3及び一体型サックバックバルブSVは、配管2に相当する流路70が形成された共通ベース71に組み付けられて一体化されている。なお、図中の符号3bは、保護開閉弁3の弁体である。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るサックバックバルブシステム及びその閉弁動作制御方法の一実施形態として、保護開閉弁及び一体型サックバックバルブについて閉動作を行う場合のタイムチャートを示している。
【図2】サックバックシステムの構成例を示す図である。
【図3】一体型サックバックバルブの構成例を示す図で、開閉弁が全開の状態を示している。
【図4】一体型サックバックバルブの構成例を示す図で、開閉弁を全閉にしてサックバック機能が動作する前の状態を示している。
【図5】一体型サックバックバルブの構成例を示す図で、図4の状態からサックバック機能が動作した状態を示している。
【図6】保護開閉弁及び一体型サックバックバルブを一体化した構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 サックバックバルブシステム
3 保護開閉弁
5a,5b 電磁弁
6a,6b スピードコントローラ
10 開閉弁
11 弁体
12 バルブ本体
13 流体入口
13a 入口流路
14 流体出口
14a 出口流路
15 内部空間
16 流体流路
17 サックバック室
18 シート部
19 下部ダイヤフラム
19a 基部
20 コイルバネ
21 排気流路
22 弁体軸部
30 アクチュエータ
31 ピストン
32 アクチュエータ本体
33 シリンダ部
34,35 空気圧供給口
36 プラグ
37 コイルバネ
38 ハンドル
39 螺合軸
39a 先端部
40 コイルバネ設置スペース
41 貫通孔
50 軸部
51 ピストン軸部
52 遊嵌軸部
52a 下端面
53 排気通路
54 遊嵌部
60 ダイヤフラム
61 基部
62 ベローズ
63 ダイヤフラム本体
64 外縁部
70 流路
71 共通ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の空気圧アクチュエータにより開閉動作する開閉弁が、閉動作に連動するダイヤフラムによって液だれを防止するサックバック機能を備えている一体型サックバックバルブと、該一体型サックバックバルブの動作不良対策として上流側に隣接して設けられ、第2の空気圧アクチュエータにより開閉動作する保護開閉弁とを具備してなるサックバックシステムにおいて、
前記一体型サックバックバルブの全閉操作時に、前記一体型サックバックバルブが全閉となるより早く前記保護開閉弁の全閉動作を完了させる開閉制御部が設けられていることを特徴とするサックバックバルブシステム。
【請求項2】
第1の空気圧アクチュエータにより開閉動作する開閉弁が、閉動作に連動するダイヤフラムによって液だれを防止するサックバック機能を備えている一体型サックバックバルブと、該一体型サックバックバルブの動作不良対策として上流側に隣接して設けられ、第2の空気圧アクチュエータにより開閉動作する保護開閉弁とを具備してなるサックバックシステムの閉弁動作制御方法において、
前記一体型サックバックバルブの全閉操作時に、前記一体型サックバックバルブが全閉となるより早く前記保護開閉弁の全閉動作を完了させることを特徴とするサックバックバルブシステムの閉弁動作制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate